(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の実施形態の原理を利用した例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明及び添付図面を参照することにより、本開示の特徴及び利点がより良く理解されるであろう。
【0028】
詳細な説明は、多くの詳細を含むが、これらの詳細については、本開示の範囲を限定するものとしてではなく、本開示の異なる例及び態様を例示するものにすぎないと解釈すべきである。本開示の範囲は、上記で詳細に説明していない他の実施形態も含むと理解されたい。本明細書に示す本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、本明細書に示す本開示の方法及び装置の構成、動作及び詳細において、当業者に明らかになる他の様々な修正、変更及び変形を行うこともできる。
【0029】
本明細書で使用する「A及び/又はB」は、A又はBの一方又は両方、並びにAとBなどのこれらの組み合わせを含む。
【0030】
走査ファイバ装置は、光エネルギーによる組織などの材料の撮像又は処置の一方又は両方に使用することができる。
【0031】
本明細書に開示する実施形態を多くの方法のうちの1つ又は2つ以上の方法で組み合わせて、改善された光ファイバスキャナを提供することができる。光ファイバスキャナは、標的面上に所定のパターンで光を走査するように圧電アクチュエータによって駆動される(本明細書では「ファイバオプティック」とも呼ぶ)片持ち式光ファイバを含むことができる。このような光ファイバスキャナは、画像取得及び画像表示を含む様々な用途に使用することができる。いくつかの実施形態では、圧電アクチュエータがアクチュエータ及び走査光ファイバ用センサの両方として機能するように、本明細書に示すスキャナを自己検知回路に結合することができる。圧電アクチュエータによって取得される自己検知した位置データは、変化する動作条件(例えば、温度の変化)を補償するようにスキャナの制御入力を調整するために使用できる様々な適応的制御スキームで使用することができる。本明細書に示す方法は、光ファイバスキャナのコスト及びサイズを増加させたはずのさらなるセンサコンポーネント(例えば、位置検知式検出器)に関わりなく、圧電アクチュエータ及び/又は光ファイバの自己検知された位置データを提供するという利点を有する。さらに、本明細書で提供する適応的(フィードフォワード)制御のための技術は、光ファイバスキャナを様々な動作条件で使用できるようにし、従って撮像用途のためのスキャナの精度及び柔軟性を改善することができる。
【0032】
本明細書の実施形態は、画像取得及び撮像システムの文脈で説明するものであるが、このように限定されるわけではなく、開示する実施形態は、小型ビデオディスプレイ及びプロジェクタのためのファイバ走査ディスプレイなどの、走査光ファイバを利用するあらゆる好適な用途(例えば、頭部装着型ディスプレイ、眼球投射法)に使用することもできると理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に示す技術が、毎秒約111フレーム(fps)、約100%の負荷サイクル、最小歪みでの2xインターリーブで操作されるファイバ走査式ディスプレイ/プロジェクタにおける使用に適用される。
【0033】
本明細書では、同じ要素を同じ符号によって識別する。
【0034】
走査光ファイバシステム
図1に、実施形態による極細走査ファイバ内視鏡(SFE)100を示す。SFE100は、医師が内部組織を視覚的に検査できるように、自然開口部又は外科ポートを介して患者の体内に挿入することができる。SFE100は、長い可撓性シャフト102と、走査光ファイバアセンブリを収容する遠位端104とを含む。SFEは、体内の小径通路及び/又は小空間に挿入するのに適した寸法を有することができる。例えば、SFEの外径は、約2mm、1.5mm、1.2mm又は1mm以下などのように、従来の内視鏡の外径よりも小さくすることができる。
【0035】
図2に、実施形態による、SFEの遠位端における走査光ファイバアセンブリ200を示す。走査アセンブリ200は、片持ち式走査光ファイバ202と、圧電アクチュエータ204と、アクチュエータ204の複数の電気入力(例えば、電極206)と、1又は2以上のレンズ208とを含むことができ、これらは全て第1のハウジング210に収容される。圧電アクチュエータ204の周囲には、圧電アクチュエータ204を第1のハウジング210内で支持するように取り付けカラー211を配置することができる。第1のハウジング210の周囲であって第2のハウジング214の内部には、複数の集光光ファイバ212を配置することができる。走査光ファイバ202、集光光ファイバ212及び複数の電極配線216は、SFEの遠位端に結合された可撓性シャフト218を通って延びることができる。
【0036】
圧電アクチュエータ204には、圧電管、圧電積層アクチュエータ、(例えば、作動を増幅するための)1又は2以上の屈曲部を有する圧電積層アクチュエータ、又はこれらの組み合わせなどの様々なタイプの圧電装置を使用することができる。いくつかの実施形態では、圧電アクチュエータ204を、内部を走査光ファイバ202が延びる中空の4象限圧電管アクチュエータとして構成することができる。任意に、ファイバ接着取り付け具(図示せず)によって走査光ファイバ202を圧電アクチュエータ204の遠位部に結合することもできる。走査光ファイバ202を通じて、患者の体外のレーザ照明220などの光源によって供給された光が導かれ、その遠位端から排出されて、走査アセンブリ200に隣接する標的面(例えば、照射面222)の一部を照明する。光ファイバ202から離れた光は、標的面に到達する前にレンズ208を用いて平行にし、又は集束させることができる。いくつかの実施形態では、この平行になった又は集束された光を、レンズ208によって走査アセンブリ200の中心軸からさらに離れて屈曲させ、これによってSFEの視野を広げることもできる。例えば、SFEの視野は、約80°、90°、100°、110°又は120°以上とすることができる。
【0037】
圧電アクチュエータ204は、光ファイバの遠位端を走査パターンで偏向させるように、走査光ファイバをその機械的共振振動数のうちの1つの付近で駆動させ、これによって出射光を対応するパターンで標的面上に走査することができる。この走査パターンは、拡大する螺旋パターン又は縮小する螺旋パターンなどのあらゆる好適な2次元パターンとすることができる。いくつかの実施形態では、圧電アクチュエータ204に交互に付与される、各々が走査光ファイバ202の移動軸に対応する2つの振幅変調正弦波駆動信号によって、共振する光ファイバ202の動きを制御することができる。この駆動信号は、電極配線216に結合された外部コントローラによって生成し、4つに分かれた電極206の1つを介して圧電アクチュエータ204の各象限に付与することができる。4つに分かれた電極206の各直交する対は、走査光ファイバ202の軸に対応することができる。駆動信号によって圧電管アクチュエータ204に生じる動きにより、光ファイバ202は、基部が励振する片持ち梁のように挙動できるようになる。結果として生じる光ファイバ202の動きは、中心から外向きに動く拡大する螺旋状の動きとすることができる。任意に、光ファイバ202が螺旋パターンの最も外側の環に達すると、ファイバ202を速やかに螺旋パターンの中心に押し戻すように、圧電アクチュエータ204にファイバ202の動きとは逆方向に制動信号を付与することができる。制動信号は、画像歪みを生じる恐れがある残留振動を最小化するように選択された周波数及び位相で付与することができる。例えば、共振振動数にほぼ等しい励起周波数で光ファイバ202が振動するように制動信号を付与して、ファイバの根元を先端の動きと逆方向に変位させることができる。或いは、制動信号を使用せずに光ファイバ202を駆動することにより、連続的な又はほぼ連続的な撮像を可能にすることもできる。例えば、光ファイバ202を、外向き走査パターンと内向き走査パターン(例えば、外向き(拡大)螺旋パターンと内向き(縮小)螺旋パターン)で交互に駆動して、ファイバ202の外向き軌道及び内向き軌道の両方で撮像が行われるようにすることができる。いくつかの実施形態では、アセンブリ200の負荷サイクルが、光ファイバが活発に走査パターンで駆動されている各期間のパーセンテージに対応することができ、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99.9%、99.99%、或いは99.999%のうちのいずれか2つの間の範囲内に存在することができる。
【0038】
集光光ファイバ212は、標的面から戻ってくる反射光224を集光することができる。6個、8個、10個、12個又は14個の光ファイバなどの、あらゆる好適な数の集光光ファイバ212を使用することができる。集光光ファイバ212は、反射光224を光検出器(例えば、電荷結合素子(CCD)又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)装置)に伝達することができる。光検出器からの信号は、標的面のリアルタイム画像を生成するために体外の1又は2以上の処理モジュールに送って処理及び/又は記憶することができる。
【0039】
図3A〜
図3Dに、実施形態による走査光ファイバの駆動を示す。
図3Aに示す駆動信号300、302は、4つに分かれた圧電管アクチュエータの各直交する電極対にそれぞれ付与されて、拡大する螺旋パターン304を生成することができる。例えば、一方の対をランピング正弦波信号で駆動し、他方の対をランピング余弦信号で駆動することができる。これらの駆動信号を付与して、光ファイバを第1及び第2の軸(例えば、x軸及びy軸)に沿って同時に走査させることができる。各軸は、物理次元に沿った圧電アクチュエータ及び/又は光ファイバの移動軸とすることができる。
図3Bには、x軸及びy軸に沿った駆動によって生じる走査光ファイバの旋回応答を示す。いくつかの実施形態では、圧電管の一方の電極対を励起すると、旋回応答として認められる光ファイバの両軸に沿った変位が生じ得るという点で、光ファイバの2つの軸がクロスカップリングすることができる。旋回応答の結果、光ファイバの走査軌道及び結果として得られる画像に歪みが生じることがある。
図3Cには、固有方向に沿った駆動によって生じる走査光ファイバの直線応答を示す。固有方向とは、直線応答が観察される(例えば、旋回がほとんど又は全く観察されない)光ファイバの駆動方向を意味することができる。固有方向は、通常は電極対の軸(「実際の軸」)と一致しない2つの非結合直交軸(「仮想軸」)とすることができる。固有方向は、ランダムな欠陥及び/又はファイバの楕円性(ovularity)に依存することができ、各製造された走査光ファイバによって変化し得る。光ファイバを固有方向に沿って駆動するには、両方の圧電管電極対を作動させて、以下のような「仮想電極」の概念を導くことができる。
(式1)
(式2)
及び
は、2つの実際の圧電管電極対信号である。仮想電極VE
1及びVE
2は、これらの両方の組み合わせとすることができ、2つの固有方向を定める回転角θ
1及びθ
2によって規定することができる。これらの固有方向は分離しているので、固有方向に沿った駆動により、この固有方向に沿った応答、例えば直線応答を生じることができる。
図3Dには、走査光ファイバの実際の軸306及び仮想軸308を示す。仮想軸308は、回転によって実際の軸306上にマッピングすることができる。本明細書における走査光ファイバの駆動に関するあらゆる説明は、1又は2以上の仮想軸、1又は2以上の実際の軸、又はこれらの好適な組み合わせに沿った光ファイバの駆動にも当てはまることができる。
【0040】
圧電性自己検知
走査光ファイバを用いて高画質を得るには、(例えば、本明細書に示す走査プロファイルに従う)正確なファイバ駆動にとって重要ないくつかのファイバ走査パラメータを識別することが望ましいと考えられる。画質を向上させるために識別できる例示的なファイバ走査パラメータとしては、ファイバの固有方向、ファイバの第1のモードの共振振動数、第1のモードの減衰固有振動数、及びファイバを制動する制動位相が挙げられる。しかしながら、いくつかの実施形態では、これらのパラメータの一部又は全部が時間と共に変化し得る。例えば、走査ファイバ内視鏡を生体内環境に導入することに関連する行為(例えば、体液との接触、生理食塩水洗浄)は、ファイバの動作温度の変化、従ってスキャナの機械的特性の変化を引き起こすことがある。
【0041】
図4は、走査光ファイバの共振振動数の変化を示すグラフ400である。いくつかの実施形態では、光ファイバアセンブリが曝される動作条件によって、走査光ファイバの特性が影響を受けることがある。例えば、温度変化、材料の特性、ファイバーアクチュエータの結合又は疲労などの条件によって、ファイバの共振振動数が変位することがある。通常、走査の駆動振動数は、光ファイバの共振振動数よりもわずかに低い振動数に設定することができるので、共振振動数を正確に知っていることは、駆動制御パラメータの決定にとって極めて重要となり得る。共振振動数を知っていることは、使用する制動信号の決定にとっても重要となり得る。従って、動作条件の変化(例えば、温度変化)に起因する光ファイバの特性の予期せぬ変化により、画像歪み及び/又は画質の低下が生じることがある。
【0042】
説明する圧電アクチュエータなどの圧電材料は、電場が加わると変形し、変形すると電荷を生じることにより、センサ及びアクチュエータの両方として使用できるようになる。従って、本明細書に示す圧電アクチュエータは、走査光ファイバを駆動するアクチュエータ、並びに結果として生じる圧電アクチュエータ及び/又は光ファイバの変位を検出するセンサの両方として使用することができる。この変位データを用いて、光ファイバの遠位端の位置などの光ファイバの位置を特定することができる。本明細書における光ファイバの位置又は変位について言及するあらゆる説明は、光ファイバの遠位端の位置又は変位にも当てはまることができる。
【0043】
圧電アクチュエータによって取得された変位データをフィードバックとして用いて、動作中に駆動精度を高めるようにスキャナ制御を動的に調整することができる。また、この変位データを用いて、駆動精度の維持に関連する様々なシステムパラメータを決定するとともに、例えば動作条件の変化に起因するこれらのパラメータのあらゆる変化を検出又は追跡することもできる。本明細書では「自己検知」と呼ぶこの方法を用いて、さらなるコンポーネント(例えば、位置検知式検出器などの外部光センサ)の使用を必要とせずに光ファイバスキャナの適応的制御を行って光ファイバの先端位置を特定することができる。外部の位置検知装置は、実質的に走査光ファイバシステム自体より大きなものとなり得るので、小型の走査光ファイバシステム(例えば、2mm、1.5mm、1.2mm又は1mm未満のハウジング径を有するシステム)にとっては、自己検知が特に有利となり得る。さらに、本明細書に示す自己検知法では、走査アセンブリの動作環境をモニタ及び/又は制御するスキャナコンポーネント(例えば、温度センサ、加熱コイル)の手動による再較正又は追加が不要であることにより、このような装置のサイズ、コスト、消費電力及び複雑性を低減する一方で、様々な動作条件での使用を可能にすることができる。
【0044】
図5に、実施形態による自己検知型走査光ファイバシステム500を示す。システム500は、本明細書において上述したように、標的面上に光(例えば、レーザスポット506)を走査するように圧電アクチュエータ504(例えば、圧電管)によって駆動される走査光ファイバ502を含むことができる。圧電アクチュエータ504は、電極配線510を介してインターフェイス回路508に結合することができる。インターフェイス回路508は、(例えば、パーソナルコンピュータなどのコンピュータシステムの)プロセッサ512に結合することができる。
【0045】
インターフェイス回路508は、能動的又は受動的回路要素のいずれかの好適な組み合わせを含むことができる。インターフェイス回路508は、圧電アクチュエータ504を介して光ファイバ502を作動するための圧電駆動信号を生成して出力するように構成された駆動回路514を含むことができる。いくつかの実施形態では、駆動回路514が、各々が光ファイバ502の軸に沿ってアクチュエータ504の駆動信号を供給するように圧電アクチュエータ504の直交する電極対に結合された2つの駆動回路を含むことができる。本明細書に示す圧電駆動信号は、圧電電圧駆動信号、圧電電荷駆動信号又は圧電電流駆動信号のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。駆動信号は、プロセッサ512が提供する制御情報に基づいて生成することができる。
【0046】
インターフェイス回路は、圧電アクチュエータ504の変位及び/又は変形によって生成された圧電性変位信号を検出する(「自己検知回路」としても知られている)検知回路516を含むこともできる。検知回路516は、各々が光ファイバ502の一軸に沿ったアクチュエータ504の変位信号を取得するように圧電アクチュエータ504の直交する電極対に結合された2つの検知回路を含むことができる。本明細書で使用する「変位信号」は、圧電素子の変位及び/又は変位速度を示す信号を意味することができる。本明細書に示す圧電変位信号は、圧電電圧変位信号、圧電電荷変位信号又は圧電電流変位信号のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、検知回路と駆動回路が、いくつかの回路要素を共有することができる。或いは、検知回路と駆動回路を別個の回路とすることもできる。任意に、検知回路516が圧電アクチュエータ504から受け取った信号を増幅するために増幅回路518を設けることもできる。検知回路が受け取った変位信号はプロセッサ512に送信され、これを処理して圧電アクチュエータ504の変位及び対応する光ファイバ502の変位を特定することができる。この変位データは、光ファイバ502の駆動制御のためのフィードバックとして使用することができる。さらに、この変位データを用いて、後述するようなシステム500の適応的(フィードフォワード)制御に後程使用できる、システム500の様々なパラメータを決定することもできる。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書に示す駆動信号及び変位信号を、検知回路516によって検出されるように同じ電気チャネルを介して送信することができる。例えば、駆動回路及び検知回路を、いずれも圧電アクチュエータ504の電極に結合することができる。この結果、検知回路516が変位信号と駆動信号とを識別することよって光ファイバ502の変位を特定できるようにする好適な方法を実装することができる。1つの方法では、駆動信号及び変位信号が検知回路516によって個別に検出されるように、アクチュエータ504の作動及び検知を異なる時点で(例えば、順番に)行うことができる。例えば、上述したように、光ファイバ502を走査パターンに沿って繰り返し走査するように、駆動信号と制動信号を交互にすることによって圧電アクチュエータ504を駆動することができる。
【0049】
変位信号は、アクチュエータ504及び光ファイバ502の駆動サイクル中のいかなる時にも検知回路516によって測定することができる。例えば、駆動信号を付与した後であって制動信号を付与する前の時間間隔中に、アクチュエータ504及び/又はファイバ502の残留振動に起因してアクチュエータ504によって生成された変位信号を検知回路によって測定することができる。或いは、制動信号を付与した後であって駆動信号を付与する前に、残留振動から変位信号を取得することもできる。いくつかの実施形態では、走査パターンを形成するために使用される駆動信号の初期部分中に、光ファイバ502及び/又はアクチュエータ504の初期過渡応答から変位信号を測定することもできる。さらに、駆動回路514は、若干のホワイトノイズを有する駆動信号を用いて光ファイバ502を駆動し、従ってアクチュエータ504及び/又は光ファイバ502の変位信号内に複数の応答周波数を生成することができる。
【0050】
取得された変位信号は、システム500の様々なパラメータを決定するためにプロセッサ512によって処理することができる。この方法を用いて決定できる例示的なパラメータとしては、システム500の2つの固有方向を定める2つの回転角θ
1、θ
2、2つの固有方向に対応するファイバ502の2つの減衰された第1の固有振動数(共振振動数)f
1、f
2、2つの減衰された第1の固有振動数のための走査ファイバ502の制動信号の2つの制動時位相φ
1、φ
2、第2の又はそれ以上の共振振動数に対する制動位相、或いは他の制動パラメータ(例えば、周期数、振幅、任意の制動パターンなど)が挙げられる。例えば、固有方向は、ファイバ502及びアクチュエータ504を第1及び/又は第2の軸に沿って駆動し、取得された変位信号を用いて直線(又は直線に近い)応答が得られる方向を求めることによって決定することができる。減衰固有振動数は、ファイバ502及び/又はアクチュエータ504の残留振動の振動数スペクトルを解析することによって取得することができる。通常、強制力が除去された後の残留運動は、減衰された第1の固有振動数における減衰振動になる。この振動数は、5周期未満などの比較的少ない周期の減衰するファイバ運動を用いて決定することができる。制動時位相は、残留運動の振動数スペクトルを解析して各振動数成分に関するエネルギー量を求め、振動するシステムから最も多くのエネルギーを取り去る(単複の)制動位相を求めることによって決定することができる。いくつかの実施形態では、ファイバ502の作動を止める必要がないように、本明細書に示す振動解析を連続して実行することができる。
【0051】
別の方法では、検知回路516が、駆動信号から変位信号を分離するように適合された、後述するブリッジ回路などの回路要素を含むことができる。従って、駆動回路514が駆動信号を用いてアクチュエータ504を駆動した時に検知回路516が変位信号を測定できるように、圧電アクチュエータ504の作動と検知とを同時に(又はほぼ同時に)行うことができる。この方法は、光ファイバ502の連続走査中に制動信号を用いずに使用することができ、従って画像取得及び/又は表示のための高画像フレームレートを可能にするという利点を有する。
【0052】
図6に、実施形態による、本明細書に示すシステム及び装置に組み込むのに適した自己検知型容量性ブリッジ回路600を示す。ブリッジ回路600は、圧電材料602のための圧電駆動信号から圧電変位信号を分離するように設計された、自己検知回路の一部として実装されるモノポーラ回路とすることができる。圧電材料602は、回路600内に、内部電圧源606を有するコンデンサ604としてモデル化することができる。内部発生電圧は、圧電材料602の位置に関連する圧電材料602の歪みに比例することができる。圧電材料602の静電容量は、ブリッジ回路600を用いて(例えば、複数のコンデンサを用いて)平衡させることができ、従って圧電材料の作動中に歪みを測定することができる。例えば、ブリッジ回路600は、第1及び第2の平行なレッグ608、610を含むことができ、第1のレッグ608は、2つのコンデンサを直列に有し、第2のレッグ610は、圧電材料602と直列に1つのコンデンサを有する。
【0053】
図7に、実施形態による自己検知型ブリッジ容量性回路700を示す。ブリッジ回路700は、上述したように、圧電アクチュエータ702のための駆動信号から変位信号を分離するように自己検知回路の一部として使用することができる。ブリッジ回路700は、ブリッジ回路700によって測定される駆動信号及び変位信号が圧電アクチュエータ702及び光ファイバの第1の軸に対応するように、圧電アクチュエータ702の直交する電極対に結合することができる。第2の軸のための駆動信号及び変位信号は、ブリッジ回路700と同様の第2のブリッジ回路によって測定することができる。本明細書では、ブリッジ回路700をバイポーラ回路として示しているが、ブリッジ回路700は、基礎となる走査光ファイバシステムの電気的構成に応じてモノポーラ回路として構成することもできる。
【0054】
ブリッジ回路700では、圧電アクチュエータ702を、コンデンサ704(C
p)及び電流源706としてモデル化することができる。圧電アクチュエータ702の変形及び/又は変位に関連する力は、電流708(f)としてモデル化することができる。電圧源710(V
s)は、圧電駆動信号のための差動電圧を生じることができる。ブリッジ回路700は、第1のレッグ712(「アクチュエータレッグ」)と第2のレッグ714(「バランスレッグ」)とを互いに並列に含むことができる。第1及び第2のレッグ712、714の1又は2以上の要素は、第1及び第2のレッグ712、714が少なくとも部分的に対称になるように左右反対とすることができる。第1のレッグ712は、抵抗器とコンデンサのいずれかの好適な組み合わせを含むことができ、少なくともその一部は圧電アクチュエータ702に直接結合される。例えば、第1のレッグ712は、複数の抵抗器(例えば、抵抗器対R、R
w)間に結合された1又は2以上のコンデンサ(例えば、C
w1)を含むことができる。圧電アクチュエータ702は、複数の抵抗器間に直列に結合することができる。また、第1のレッグ712は、圧電アクチュエータ702に結合された1又は2以上の電極配線の抵抗及び/又は静電容量にそれぞれ対応する少なくともいくつかの抵抗器及び/又はコンデンサを含むこともできる。例えば、第1のレッグ712は、電極配線の抵抗及び静電容量にそれぞれ対応する2つの配線抵抗器(R
w)と1つの配線コンデンサ(C
w1)とを含むことができる。配線抵抗器は、配線抵抗に関連し、配線コンデンサは、配線容量及び配線電荷に関連することができる。この方法は、電極配線の長さが約2m以上などの比較的に長い実施形態において有利である。
【0055】
第2のレッグ714は、抵抗器及び/又はコンデンサのいずれかの好適な組み合わせを含むことができる。例えば、第2のレッグ714は、複数の抵抗器(例えば、抵抗器対R、R
w)間に結合された1又は2以上のコンデンサ(例えば、C
b、C
w2)を含むことができる。第2のレッグ714は、複数の抵抗器間に結合されたバランスコンデンサ(C
b)を含むことができる。バランスコンデンサは、バランス容量及びバランス電荷に関連することができる。第1のレッグ712と同様に、第2のレッグ714は、圧電アクチュエータ702に結合された1又は2以上の電極配線の抵抗及び/又は静電容量にそれぞれ対応する、2つの配線抵抗器(R
w)及び1つの配線コンデンサ(C
w2)などの少なくともいくつかの抵抗器及び/又はコンデンサを含むことができる。配線抵抗器は、配線抵抗に関連し、配線コンデンサは、配線容量及び配線電荷に関連することができる。
【0056】
ブリッジ回路700の出力は、ノードAの電圧(V
A)とノードBの電圧(V
B)との差分によって測定することができる。結果として得られる電圧出力(V
out)は、圧電アクチュエータ702内でアクチュエータの変位及び/又は変形によって生成される変位信号に対応することができる。いくつかの実施形態では、当業者に周知の技術を用いて、ブリッジ回路700を、その出力が変位電荷信号又は変位電流信号に対応するように修正することができる。
【0057】
圧電アクチュエータの作動中に変位信号を検知する自己検知型ブリッジ回路の使用について言及しているが、本明細書に示すブリッジ回路は、圧電変位信号の検知を伴うあらゆる用途に使用できるので、この言及は限定を意図するものではない。例えば、圧電アクチュエータの作動及び検知が異なる時点で行われる実施形態でも、自己検知型ブリッジ回路を用いて圧電変位信号を測定することができる。
【0058】
適応的制御
上述したような環境条件の変化に起因する変化などのファイバ特性の変化を動的に検出して補償するために、走査光ファイバシステムの適応的制御スキームを実装することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に示す制御スキームが、フィードフォワード及び/又はフィードバック制御を利用することができる。フィードフォワード制御器は、例えばハードウェアのタイミング要件及び計算速度の点で他タイプの制御器よりも経済的になり得る。また、本明細書に示すシステムの変動は、典型的には温度変動及び人間のオペレータの動きによって生じ、従ってそれほど急速なものにはなり得ない(例えば、約コンマ数秒)ので、約数マイクロ秒での補償を伴う真のフィードバック制御器は存在しなくてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、フィードフォワード制御器が、1又は2以上の数学的モデルを利用して、光ファイバスキャナに適した入力駆動信号を決定することができる。あるモデルは、自己検知回路、圧電アクチュエータ及び/又は走査光ファイバなどの、本明細書に示す自己検知型走査光ファイバシステムの様々なコンポーネントの表現を提供することができる。例えば、このモデルを用いて、圧電アクチュエータに付与される制御入力(例えば、駆動信号)に応答する走査光ファイバの挙動(例えば、ファイバの位置)を説明することができる。これとは逆に、このモデルを用いて、望ましい光ファイバの軌道を所与として、その軌道を生じるのに適した制御入力を推定することもできる。本明細書で使用する「軌道」は、光ファイバの遠位端の位置取りを意味することができる。あるモデルを用いて、単一の軸又は2つの軸に沿ったシステムの挙動を説明することもできる。いくつかの実施形態では、2つの単一軸モデルを組み合わせて、圧電アクチュエータの電気的クロスカップリングを考慮した、両軸に沿ったシステムの完全な挙動を表現することもできる。本明細書に示す方法との使用に適した例示的なタイプのモデルとしては、状態空間電気機械モデル及び振動モードモデルが挙げられる。モデルの特性パラメータは、本明細書に示す自己検知回路を介して取得されるデータに基づくシステム同定及び/又はパラメータ推定などのあらゆる好適な技術を用いて決定することができる。
【0060】
状態空間電気機械モデル
状態空間電気機械モデルを用いて、本明細書に示す走査光ファイバシステムの1又は2以上の部分を表現することができる。このモデルにとって興味深い施設は、自己検知回路(例えば、ブリッジ回路700)、圧電管及び/又は走査光ファイバを含む電気機械システムとすることができる。状態空間モデルを用いて、5つの電荷状態Q
1~5を有する5つの電気エネルギー要素によって容量性ブリッジ回路及び圧電管の電気的部分をモデル化することができる。機械的スキャナは、2重質量−ばね−減衰器システムとしてモデル化することができる。このモデルを適用して、単一軸に沿った機械的スキャナの挙動(例えば、単軸振動)を表現することができる。従って、2つの速度状態v
1~2及び2つの位置状態p
1~2によって2つの質量をモデル化することができる。この結果、9×1状態ベクトル
とする、以下の9次状態空間モデルを得ることができる。
入力uは、容量性ブリッジ回路に付与される駆動電圧とすることができる。出力yは、圧電自己検知信号とすることができる。対象の特定状態は、光ファイバの位置p
2とすることができる。
【0061】
図8A〜
図8Dに、実施形態による、走査光ファイバシステムのための状態空間電気機械モデルの例示的な導出を示す。以下の表1に、この導出において使用する標準名称の一部を示す。
【0062】
図8Aには、圧電変換器の電圧モデル800を示す。このモデル800を用いて、本明細書に示す圧電アクチュエータを表現することができる。モデル800では、圧電変換器を、容量C
pと、電荷Q
pと、k
pvによって特徴付けられる電流源とを有するコンデンサとして表現することができる。別の実施形態では、電流源ではなく同等の直列電圧源を用いて圧電変換器を表現することもできる。圧電変換器に力fを付与して速度vを生成することができる。当業者であれば、モデル800のノードAにおいてエネルギー保存の法則及びキルヒホッフの電流法則を適用して、力fが状態Q
p(圧電電荷)にどのように関連するかを記述する以下の関係式を得ることができる。
【0063】
図8Bには、電気機械モデル内の機械的要素を表現するために使用できる回路同等物802を示す。当業者には周知のように、抵抗器要素は減衰器要素に対応し、インダクタ要素はばね要素に対応し、コンデンサ要素は質量要素に対応することができる。同様に、
図8Bに示すように、機械的要素に関連する機械的パラメータは、対応する電気的要素に関連する類似の電気的パラメータによって表現することができる。
【0064】
図8Cには、(本明細書ではまとめて「機械的スキャナ」と呼ぶ)圧電アクチュエータ及び走査光ファイバの機械的モデル804を示す。機械的スキャナは、2重質量−ばね−減衰器システムとしてモデル化することができる。要素m
1、k
1、c
1は、圧電アクチュエータのパラメータに対応し、要素m
2、k
2、c
2は光ファイバのパラメータに対応する。圧電アクチュエータの質量m
1に力fを付与して機械的スキャナの変位を生じることができる。
【0065】
図8Dには、電気機械的システムの完全なモデル806を示す。とりわけ、モデル806は、ブリッジ回路808及び圧電アクチュエータの電気的部分810のみならず、圧電アクチュエータの機械的部分812及び走査光ファイバ814を含むこともできる。モデル806は、上述した電気的同等物によって機械的コンポーネントが表現されるように電気的モデルとすることができる。ブリッジ回路808は、本明細書で上述した自己検知型ブリッジ回路のいずれかの実施形態(例えば、回路700)とすることができる。モデル806は、差動増幅器818及び低域通過フィルタ820を含むことができる計装用増幅器816を含むこともできる。差動増幅器818の非反転入力及び反転入力は、ブリッジ回路808のノードA及びBにそれぞれ結合することができ、これによって出力電圧(V
out)は、ノードAの電圧(V
A)とノードBの電圧(V
B)との差分に対応するようになる。出力電圧は、光ファイバ814及び/又は圧電アクチュエータの機械的部分812のエネルギー出力(例えば、光ファイバ及びアクチュエータの変形及び/又は変位に関連するエネルギー)に対応することができる。
【0066】
当業者であれば理解するように、モデル806にキルヒホッフの電圧法則及びキルヒホッフの電流法則を適用して、以下の関係を得ることができる。
(式3)
(式4)
(式5)
(式6)
(式7)
(式8)
(式9)
(式10)
(式11)
(式12)
式3〜11を用いて、入力V
sを有する9次状態空間モデルを形成することができる。モデルの9つの状態は、Q
w1、Q
w2、Q
p、Q
b、i
1、i
2、Q
1、Q
2、Q
fである。式12は、出力V
outを表す式である。状態空間電気機械モデルの特性パラメータは、剛性、質量、及び/又は、圧電アクチュエータ及び/又は走査光ファイバの減衰性などの、走査光ファイバシステムの物理的特性に対応することができる。これらのパラメータは、ブリッジ回路、電極配線又は圧電アクチュエータなどの、走査システムの様々なコンポーネントの静電容量及び/又は抵抗を含むこともできる。いくつかの実施形態では、モデルパラメータが、C
p、m
1、k
1、c
1、m
2、k
2、c
2、C
w1又はC
w2を含むことができる。
【0067】
図9に、実施形態による適応的フィードフォワード制御スキーム900を示す。制御スキーム900は、本明細書に示すいずれかのシステムを制御するように実装することができる。制御スキーム900では、フィードフォワード制御器902が、走査光ファイバの所望の軌道rを受け取ることができる。フィードフォワード制御器902は、この軌道rに基づいて、電気回路及び機械的スキャナ(「自己検知スキャナ」)904に付与すべき入力uを決定することができる。本明細書で上述したように、入力uは、自己検知型容量性ブリッジ回路に付与される駆動電圧信号とすることができる。この入力uは、自己検知スキャナ904を、圧電アクチュエータ(「圧電管」)を圧電管位置yに変位させ、走査光ファイバを光ファイバ一位置p
2に変位させるように駆動することができる。自己検知スキャナ804の自己検知回路は、圧電管位置y(「出力」)を示す圧電変位信号を検知することができる。これらの入力u及び位置yは、同定器906に送信することができる。同定器906は、一群の入力u及び出力yデータを用いて、施設(走査光ファイバシステム)の新たな状態空間モデルを所定の間隔で推定することができる。例えば、状態空間モデルは、本明細書に示す状態空間電気機械モデルのいずれかを含むことができる。新たなモデルの推定では、このモデルの1又は2以上のシステムパラメータを決定することができる。同定されたパラメータを有する新たなモデルは、フィードフォワード制御器902に提供することができる。従って、フィードフォワード制御器902は、この新たなモデルに基づいて、所望の軌道を得るために使用する入力uを決定することができる。
【0068】
同定器906は、いずれかの好適な方法を用いて状態空間モデルのシステムパラメータを決定することができる。いくつかの実施形態では、走査光ファイバシステムを線形システム又は線形パラメータシステムとすることができ、従って線形システム同定技術の使用が可能になる。
【0069】
例えば、バッチ最小二乗法を用いてシステムパラメータを同定することができる。システムの出力は、以下のようなリグレッサの形で表現することができ、
式中、y(t)は、観測される出力であり、φは、測定可能なリグレッサのベクトルであり、θは、(θ
0が真のパラメータを表す)同定すべきパラメータである。損失関数
を減少(例えば、最小化)することにより、一群のデータ全体にわたる最良のパラメータ推定値以下の式によって与えることができ、
式中、Yは、測定時間にわたって観察される出力のベクトルであり、(φ
Tφ)は、正則である必要がある。
【0070】
同定器は、特定の状態p2(例えば、光ファイバの位置)を得るために、状態空間モデルとリグレッサモデルとの間で変換を行うことができる。これを行うために、変換行列Tを用いて、離散時間状態空間モデルを正準モード形式に変換することができる。その後、このモード形式を離散時間伝達関数に変換し、さらにこれを用いてリグレッサ方程式に投入することができる。新たなパラメータを同定して伝達関数に代入した後には、新たなモード行列を形成し、逆変換T
Tを用いて新たな状態空間モデルを再生することができる。
【0071】
本明細書に示すシステム同定技術に使用する入出力データセットは、走査光ファイバシステムの動作前(例えば、テスト運転又は較正運転中)及びシステムの通常動作中など、いつでも取得することができる。入力信号には、正弦波信号、ガウス性ホワイトノイズ、ノイズを含む正弦波信号(例えば、10%のガウス性ホワイトノイズ振幅を有する正弦波信号)、又はこれらの好適な組み合わせなどの様々なタイプの信号を使用することができる。
【0072】
システム状態空間モデルが同定されると、フィードフォワード制御器902は、このモデルを用いて、上述のような所望の軌道に沿って光ファイバ状態を駆動するように正しいフィードフォワード入力を計算することができる。例えば、フィードフォワード制御器は、同定されたモデルを用いて、制御入力uから光ファイバ状態p
2への伝達関数を計算することができる。任意に、この伝達関数を、所望の軌道に沿った光ファイバの追従性を高めるように調整することもできる。非限定的な例では、その後にフィードフォワード制御器が逆伝達関数を計算し、この逆伝達関数を用いて、所望の軌道に基づいて制御入力uを計算することができる。適切なフィードフォワード制御入力を発見するための他の非限定的な例は、伝達関数を(状態空間、振動数空間などの)別の空間に変換した後で低次元の逆数を計算することを含む。
【0073】
振動モードモデル
別の実施形態では、本明細書に示す走査光ファイバシステムを、振動モードモデルを用いて表現することができる。本明細書で上述した状態空間モデルと同様に、振動モードモデルを用いて、走査光ファイバの所望の軌道と、この軌道を生じるために使用されるフィードフォワード制御入力駆動信号との間の関係を求めることができる。振動モードモデルは、状態空間モデルとは異なり、走査光ファイバシステムの電気機械モデルを提供せずに決定することができる。
【0074】
図10に、実施形態による、適応的フィードフォワード制御のための振動モードモデルの決定方法1000を示す。方法1000は、本明細書に示すシステム及び装置のいずれかの好適なコンポーネント(例えば、プロセッサ、フィードフォワード制御器及び/又は同定器)によって実施することができる。
【0075】
ステップ1010において、自己検知型走査光ファイバシステムのための制御入力データ及び自己検知出力データを取得する。自己検知型走査光ファイバシステムは、本明細書に示すシステムのいずれかの実施形態とすることができる。上述したように、自己検知システムへの制御入力は、圧電駆動信号とすることができ、自己検知出力は、自己検知回路によって測定される圧電変位信号とすることができる。入力及び出力データは、光ファイバスキャナの通常動作の前又は最中に取得することができる。
【0076】
ステップ1020において、自己検知出力を複数の異なる振動モードに分解することができる。
図11は、実施形態による、圧電変位信号を6つの異なる状態又はトレース(但し、2つの調和振動モード、すなわち振動モード毎に2つのトレースが存在する)に分解する例示的な分解を示すグラフ1100である。この分解は、あらゆる好適な技術を用いて行うことができる。例えば、外因性入力を含む自己回帰移動平均回帰(ARMAX)モデルへの最小二乗適合を行うことができる。その後に行列変換を用いて、変位信号のための複数の異なる振動モードを含むモード行列を得ることができる。
【0077】
ステップ1030において、これらの複数の異なる振動モードから1つの振動モードを選択する。振動モードは、あらゆる好適な方法を用いて選択することができる。例えば、モードの形状及び所望の関数に基づいて振動モードを選択することができる。いくつかの実施形態では、第1のモードが、相対的に大きな光ファイバの偏向を特徴とすることができ、第2のモードが、相対的に小さなファイバの偏向を特徴とすることができる。第1のモードは、光ファイバの先端からレーザスポットが放射されるという理由で、及びその他の光学的考察に基づいて選択することができる。
【0078】
ステップ1040において、選択した振動モードに基づいて、制御入力と走査光ファイバシステムの所望の軌道との間の関係を決定する。例えば、ステップ1020及び1030を用いて、入力−モード伝達関数を取得することができる。モード−入力伝達関数を取得するには、入力−モード伝達関数を逆にすることができる。このモード−入力伝達関数に基づいて、所望の軌道−制御入力伝達関数を決定することができる。
【0079】
この振動モードモデルは、本明細書で上述した制御スキーム900と同様の適応的制御スキームにおいて適用することができる。例えば、同定器(例えば、同定器906)を使用し、方法1000などを用いて、制御入力及び自己検知出力(例えば、圧電管位置)に基づいて、自己検知スキャナ(例えば、電気回路及び機械的スキャナ904)のための振動モードモデルを決定することができる。振動モードモデルは、所望の軌道−制御入力伝達関数を含むことができる。適応的制御器(例えば、フィードフォワード制御器902)は、決定された伝達関数を用いて、所望の軌道に沿って自己検知スキャナを導くための入力を生成することができる。同定器は、バッチ入力及び出力データから新たな定期的に振動モードモデルを生成することにより、ファイバ特性及び/又は環境条件の変化を補償するようにフィードフォワード制御スキームを適応的に更新することができる。
【0080】
図12A〜
図12Dに、実施形態による、振動モードモデルに基づいて生成される走査光ファイバの例示的な軌道を示す。これらの軌道は、半正弦包絡線1200、宝石状包絡線1202、正弦−歯状包絡線1204、正弦−余弦包絡線1206、反復正弦−歯状包絡線1208、反復半正弦包絡線1210、及び反復ダイアモンド状包絡線1212を含む。これらの軌道は、目標とする軌道包絡線及び低残留振動(例えば、
図12B及び
図12Dの拡大図を参照)を含む光ファイバ一位置の良好な追跡を示す。
【0081】
別のモードモデル化
いくつかの実施形態では、モード解析に基づく別のモデル化方法を使用する。いくつかの実施形態では、圧電管及び光ファイバの片持ち式構造を2質点として表現する代わりに、様々な他のモデル化方法を使用する。
【0082】
例えば、1つの代替方法は、連続体力学に基づいて動的応答を解析的に計算するものである。光ファイバの片持ち梁の解析に、以下のようなオイラーベルヌーイ動力学梁方程式を使用することができる。
式中、ρAは単位長さ当たりの質量、Eは弾性係数、Iは断面慣性モーメント、vは横方向変位、xは光ファイバの軸に沿った距離、そしてtは時間である。スキャナの圧電管部分を考慮していないいくつかの実施形態では、EIが、片持ち梁の長さに沿った定数として設定される。
【0083】
以下のように、オイラーベルヌーイ方程式の解は、無限数の固有振動数を与え、
対応する光ファイバ片持ち梁のモード形状は、以下によって与えられ、
式中、c、d、e、fは、境界条件に依存する。いくつかの実施形態では、これらの線形モード形状が、想定されるモード形状として使用される。
【0084】
別の実施形態では、(例えば、有限要素法を用いて)機械的構造を離散化して、その動力学の数値解析を実行する。例えば、以下の非線形片持ち梁の支配方程式に基づいて有限要素法を実行することができる。
式中、ドット記号は時間微分を表し、ダッシュ記号は空間微分を表し、u及びvは2つの直交する横方向変位である。これらの支配方程式は、有限差分によって以下の形になる。
式中、Mは質量行列、Cは減衰行列、Kは剛性行列、xは変位ベクトル、そしてfは非線形関数である。この方程式の線形形式は以下のようになり、
式中、Fは強制関数である。減衰行列Cを形成するには、単純化されたレイリー減衰モデルを使用することができ、この場合、減衰行列は剛性行列に比例し、C=γKである。Mが正定値であってKが半正定値である実施形態では、以下の固有値問題を解くことによって見つけられる固有振動数ω
n及びモード形状φ
nで解を記述することができる。
【0085】
さらに、CがKに比例する(すなわち、モード減衰モデルの一部であるレイリー減衰の)場合、以下のように行列M、C、Kの全てを(非減衰の場合のモード形状行列と同一の)モード形状行列φによって対角化することができる。
これにより、方程式
は、
に変換されるようになる。
は対角行列であるため、解法は、n個の振動モードの変位p
nを記述するn個の非連成微分方程式である。変換された強制力入力
は、各直交する振動モードと同等の強制力入力Fの寄与物である。
【0086】
いくつかの実施形態では、モード減衰の仮定が、構造沿いの各点が連動してゼロ軸を同時に横切るモード形状をもたらす。以下でさらに詳細に説明する
図14A及び
図14Bに、実施形態による、圧電管及び光ファイバ構造の予想される最初の2つのモードを示す。モード形状を知り、これらの直交動力学を仮定することにより、いくつかの重要な結果を求めることができる。まず、圧電管と光ファイバは連動するので、圧電管の変位を検知することによって光ファイバの先端の位置及び位相を推測することができる。光ファイバの先端からは、撮像/表示用のレーザビーム(又はその他の光源)を誘導することができる。次に、いくつかの実施形態では、実験モード解析における方法を適用し、異なる構造点における励起から応答への伝達関数を用いて、本明細書に示す非連成微分方程式のパラメータを同定することができる。システム同定を用いて、制御下にある第1の(場合によっては他の)振動モードの動力学を正確に特定及び/又は制御することができる。
【0087】
上記の解析は、主に機械的スキャナの動力学に関連するものであったが、いくつかの実施形態では、検知回路の動力学を考慮することもできる。任意に、検知回路はコンデンサ及び抵抗器で構成されるので、共振動力学を有していないと想定することができる。従って、検知回路は、作動信号及び検知信号に受動フィルタ処理効果を及ぼすことができる。このようなフィルタ処理効果は、好適な方法を用いて識別することができる。
【0088】
システム同定
本開示は、本明細書に示すモデルのパラメータを決定するシステム同定のための様々な方法を検討する。このような方法の例としては、以下に限定されるわけではないが、グレーボックス同定及びバッチ最小二乗(BLS)同定(例えば、ARMAXモデル上のBLS、ブルートフォースBLS)が挙げられる。いくつかの実施形態では、BLS同定が、他の方法に比べて操作の複雑性及び計算時間を低減する。いくつかの実施形態では、モデル次数を低減した高次BLSを使用する。実験的入出力データと正確に一致させるには、高次単純自己回帰外因性(ARX)モデルを使用し、そのデータに対してBLSを使用することができる。(以下でさらに詳細に説明する)
図20Bに示すように、相関ノイズの存在下においても、実験データとの良好な一致(すなわち、出力を正確に予測するモデル)を得ることができる。例えば、ガウス性ホワイトノイズ(GWN)をe(t)とするが、有効な外乱が動特性
を有する未知のフィルタを反映した以下の入出力モデルについて検討する。
このモデルでは、qは左時間シフト演算子であり、y(t)は出力信号であり、u(t)は入力信号であり、A、Bはそれぞれの信号に作用する演算子を表す。再整理すると、以下のようになる。
この時点で、この方程式は、GWN外乱を有するARX形式であるが、
及び
の次数は増加している。
【0089】
図20A〜
図20Cに、実施形態による、システム同定に使用する入出力データと、同定されたシステムモデルのシミュレートした軌道とを示す。
図20Aには、入力データを示す。
図20Bには、測定された出力データと同定された高次モデルの予測出力との対比を示す。
図20Cには、全ての状態軌道が同じように見える、高次識別モデルの50個のシミュレートした状態を示す。機械的スキャナは、その後の減衰に時間を要する減衰振幅振動で共振励起に応答する。あるモデルをこのデータに一致させると、ブリッジ回路の不均衡に起因する「フィニング」効果と、共振性スキャナの機械的特性とが取り込まれる。
【0090】
実験データと極めて良く一致するモデルを取得した後の次のステップは、不規則に広がるモデルから有用な特徴を抽出することである。BLS−ARX同定では、モデル伝達関数の分子
及び分母
の係数が与えられる。いくつかの実施形態では、この伝達関数が正準状態空間の形になっている場合、
図20Cに示すように50個の状態全てが結合され、システムモデルを縮小することは不明である。
【0091】
代わりにモード正準状態空間の実現を用いた場合、結果は、
図21に示すような分離状態のブロックになる。
図21には、実施形態による、変換された識別モデル状態を示す。
図21の暗色の状態対は、その共振振動数近くでの励起後に振動し続ける共振機械システムを強く示唆する。上述した状態対に対応するA行列のブロック対角エントリの固有値を調べると、等価固有振動数は13.322kHzであることが判る。実際の機械的スキャナの名目上の第1のモード固有振動数は、13.3kHzであった。他のA行列ブロック対角エントリの固有値の等価固有振動数は、最も近いもので22.671kHzとさらに離れており、実際には、22.520kHzにおける名目上の第2のモード固有振動数に近い。上記の一致する固有振動数推定は、実際のシステム情報を高次モデルから抽出できることを示唆する。
【0092】
いくつかの実施形態では、第1のモードの機械的振動に対応する共振サブシステムが、上述した固有振動数解析を用いて分離される。
図22A及び
図22Bに、出力信号に対する2状態サブシステムの寄与を示す。
図22Aには、実施形態による、抽出された共振サブシステムの測定出力信号全体に対する寄与を示しており、
図22Bには、実施形態による、抽出された共振サブシステムを除去した後の残りを示す。抽出された共振サブシステムの寄与分を差し引くと、残留信号は、ブリッジ回路の不均衡に起因する駆動信号のノイズ及びフィードスルーの寄与であると解釈することができる。
【0093】
なお、いくつかの実施形態では、制御下にある共振モードの伝達関数を識別したが、この伝達関数は終端(「入力ー測定出力」)間の伝達関数であり、アクチュエータ及びセンサのフィルタ処理効果を含む。
図23に、実施形態による一般的終端間モデルをさらに完全に示す。
図23の実施形態では、アクチュエータ及びセンサ動特性の効果を一般形式のフィルタに注入している。所望の出力は、共振性スキャナの内部状態に関連することができる。明確な9次電気機械モデルを利用できるいくつかの実施形態では、同定されたモデル内で光ファイバの偏向を直接分離することができる。別の実施形態では、終端間伝達関数から真の光ファイバ変位を分離することができる。真の機械的共振システムを仮定すると、振動を支配する方程式はゼロを有さない。
【0094】
対照的に、本明細書において確認される共振サブシステムはゼロを有することができ、これによって出力信号の位相が変化する。この位相変化は、作動及びセンサのフィルタの寄与であると解釈することができる。異なる探査信号を用いることにより、アクチュエータ及びセンサのフィルタの効果を分離することができる。しかしながら、他の実施形態では、アクチュエータ及びセンサのフィルタ処理効果を無視しながら、依然として良好な追跡を行うこともできる。
【0095】
制御器の最適化
本明細書に示す走査光ファイバシステムを駆動する制御入力(例えば、圧電駆動信号)は、様々な技術を用いて最適化することができる。本明細書に示す技術の一部又は全部は、走査光ファイバシステムの好適なプロセッサ及び/又は制御器によって実装することができる。いくつかの実施形態では、これらの方法を上述の適応的制御法と併用して、走査光ファイバの制御の向上及び撮像結果の品質改善を図ることができる。
【0096】
例えば、パラメータ空間調整を用いて、圧電アクチュエータを駆動するために使用する制御入力を、走査光ファイバの所望の軌道を生成するように最適化することができる。制御入力は、本明細書で上述した適応的フィードフォワード方法のうちの1つ又は2つ以上を使用するパラメータ化制御器によって生成することができる。パラメータ化制御器のフィードフォワード伝達関数は、比較的単純にすることができる。パラメータ化制御器は、当業者に周知の方法を用いて制御器のパラメータ空間を探索することによってさらに調整することができる。パラメータ空間探索によって最小化すべきコストは、圧電アクチュエータ及び/又は光ファイバの残留振動とすることができる。
【0097】
別の例として、望ましくない振動モードにおける振動数成分を低減させながら視野を良好に埋めるファイバ走査軌道を生じるように、入力成形を用いて制御入力を最適化することもできる。入力成形は、例えば駆動信号の包絡線設計(例えば、正弦波包絡線、正弦−歯状包絡線、ダイアモンド型包絡線、宝石状包絡線など)を制御することによって行うことができる。包絡線設計は、満足できる画質を生じるために使用する滞留時間を維持しながら、走査パターンが所望の視野部分を確実にカバーするように選択することができる。さらに、入力形状は、駆動信号の振動数成分に影響を与えることができる。例えば、望ましくない振動モード(例えば、振動モードモデルに関して選択されたのものを除くモード)に関連する振動数成分を抑制又は低減するように包絡線設計を選択することもできる。本明細書に示す包絡線設計に基づく技術は、結果として得られるファイバ軌道の歪み、又は駆動信号中の時間延長を伴わずに制御入力形状の制御を行うという利点を有する。
【0098】
別の例では、フィードバックループを用いて圧電アクチュエータのための制御入力を改善又は最適化することもできる。駆動信号は、例えばリアルタイムフィードバック理論に基づいて調整することができる。例えば、アクチュエータに駆動信号を付与して光ファイバの遠位端を一連の画素位置に向け、自己検知回路を用いて各画素位置におけるアクチュエータ及び/又は光ファイバの変位を測定することができる。この変位をフィードバックとして用いて各画素位置における誤差を測定し、この誤差を補正するようにリアルタイムで駆動信号を調整することができる。上述したように、このような自己検知回路は、位置検知式検出器などのさらなる位置検知コンポーネントを使用する必要なく位置情報を提供し、従って光ファイバスキャナのサイズ及びコストを低減することができるという利点を有する。
【0099】
フィードバック制御は、あらゆる好適な形で適用することができる。例えば、光ファイバスキャナによって生成される複数の連続画像フレームの各画像フレームにフィードバックを適用することができ、本明細書ではこれを「フレーム連続フィードバック」と呼ぶ。画像フレームは、スキャナの駆動サイクルに対応することができる。或いは、連続画像フレームの各画素又は一連の画素にフィードバックを適用することもでき、本明細書ではこれを「画素連続フィードバック」と呼ぶ。いくつかの実施形態では、本明細書に示す光ファイバ走査システムが、アクチュエータの各駆動サイクル又は「掃引」間の比較的高いシステム再現性を特徴とすることができる。従って、駆動信号は、フィードバック制御信号(例えば、変位データ)に基づいて、リアルタイムではあるがフィードバック制御信号よりも遅い時間スケールで調整することができる。本明細書では、このような方法を「反復学習制御」(ILC)と呼ぶこともできる。
【0100】
反復学習制御(ILC)
いくつかの実施形態では、本明細書に示す制御器が、継続的適応のために学習型制御を利用する。学習型制御は、その最も一般的な形態では、制御器が以前の情報を用いてその制御信号を調整する制御戦略である。学習型制御は、ILC、反復制御(RC)及びラン・ツー・ラン制御(R2R)を含むことができる。本質的に参照及び/又は外乱が繰り返されるシステムでは、適応的制御に比べて学習型制御の方が注目されている。ILCは、システムの初期条件が周期毎にリセットされることを前提として、有限周期内で反復軌道を追跡することに関与する。RCは、連続動作において周期信号を追跡又は拒絶するものである。R2Rは、まばらなフィードバックデータのみを利用でき、パラメータセットを変化させることによってシステムが出力を達成しようとするプロセスについて定められる。
【0101】
ILCは、以下の形式のシステムに関与し、
式中、u
k(t)は入力であり、y
kは出力であり、P(q)は施設を定める適切な有理関数であり、d(t)は繰り返し外乱であって繰り返し数である。ILCでは、入力を更新する学習アルゴリズムを用いて繰り返し外乱d(t)を拒絶する。所望の参照軌道をr(t)とする追跡誤差を以下のように定めると、
ILCアルゴリズムの一般形式は以下のようになり、
Q(q)は、通常、Qフィルタと呼ばれ、L(q)は、通常、学習関数と呼ばれる。なお、e
k(t)の時間シフトは、式を一般化するためにL(q)項に吸収される。
【0102】
ILCの1つの特徴は、非常に緩い条件の下で(ノイズレスシステムにおいて)誤差がゼロに収束する点である。
【0103】
これらは、十分条件ではあるが必要条件ではない。また、この収束は単調収束でない場合もあり、すなわち収束が大きな過渡応答を伴うこともある。入力ノイズ又は測定ノイズが存在する場合、誤差は、ゼロ誤差の周囲の、ノイズ振幅の連続関数のサイズを有する球に収束する。
【0104】
いくつかの実施形態では、完全な追跡に収束するためにQ(z)が1である。従って、好適な学習関数L(q)を選択することができる。Q(z)=1の設定は共通するが、他の関数は、追跡性能とロバスト性とがトレードオフになるように選択することができる。それにも関わらず、Q(z)=1を用いて良好なロバスト性を達成することができる。
【0105】
学習関数L(q)は、単純な比例利得、PID又はその関連、ロバストな又は最適な定式化、或いは予想されるシステム動特性の逆数とすることができる。いくつかの実施形態では、正しい設計時には、上記の方法が全て(速度は異なるが)非常に良く収束する。いくつかの実施形態では、単純なPDスキームが最も安全であるが、システムの逆数の良好な推測によってILCを所望の軌道に非常に素早く収束させることもできる。
【0106】
いくつかの実施形態では、ILCの実装に以下の式が用いられ、
式中、関数は、(離散フーリエ変換を通じて変換された)振動数領域で記述され、P
+(ω)は、推定されるシステム伝達関数
の疑似逆数であり、ρ(ω)は所望の軌道への収束を確実にする利得関数である。
【0107】
いくつかの実施形態では、疑似逆数が使用され、
αは、調整できるパラメータである。
図24に、実施形態による、疑似逆数伝達関数の振幅及び位相を示す。
図24には、正確な逆数、α=0.001とする疑似逆数、及びα=0.000001とする疑似逆数を用いた振幅及び位相を示している。なお、正確な逆数P
-1(ω)と比べて位相差は存在しない。また、疑似逆数は、αが減少するにつれて正確な逆数に収束するが、それでもなお高振動数では振幅のロールオフが存在する。
【0108】
収束条件は、以下のように言い換えることができる。
L(ω)=ρ(ω)P
+(ω)を代入すると、以下のようになる。
取りあえず(ρ(ω)=1として)ρ(ω)を無視すると、特定のωにおいてP
+(ω)=P
-1(ω)である場合、この式は、これらの振動数において「非常に良く」満たされ、すなわちこれらのωでは、追跡誤差ゼロへの収束が速い。
【0109】
高振動数においてP
+(ω)がロールオフすると、ρ(ω)P
+(ω)P(ω)→0になり、この式の方法は満たされなくなる。このことは、高振動数における学習がはるかに遅いと解釈することができ、この場合、「学習」が望まれていないランダムな外乱は拒絶される。
【0110】
この疑似逆数は、振動数依存コスト関数を最小化した結果として解釈することもでき、
これを最小化する解は、以下のよく知られた形式を有し、
この式は、R=α、Q=1の場合、
に相当する。
【0111】
いくつかの実施形態では、学習アルゴリズムの形が以下のようになる。
【0112】
ここでは、疑似逆数の概念と反復利得関数の概念とを組み合わせる。上述したように、P
+(ω)が厳密に真のシステムの逆数である場合、収束は1回の繰り返しで達成される。一方、P
+(ω)が厳密に逆数でない(モデル化誤差)場合、制御器が不安定になることがある。
【0113】
いくつかの実施形態では、以下のようなモデル化誤差を考慮する。P
0(ω)が真のシステムであり、
が推定されたシステムである場合、モデル化誤差は以下のように定義される。
Δ
α(ω)は振幅モデル化誤差であり、Δ
θ(ω)は位相モデル化誤差である。以下の場合、反復は収束すると保証される。
1.位相変動の大きさがπ/2未満であり、振動数ωにおいて
である場合。
2.反復係数P(ω)が以下ように選択された場合。
【0114】
さらに、測定ノイズの存在下であっても、ρ(ω)が十分に低く、繰り返し数が十分に大きい場合には、反復が収束すると保証される。
【0115】
図25に、実施形態による最大許容ρ(ω)のプロットを示す。
図25の実施形態は、調和振動子システムの真のモデル及び予測モデルが、上述の方程式に基づいて10%の固有振動数及び減衰因子誤差を有するようなシミュレーションを実行した時に得られる。水平線は、ρ(ω)=0.3である。従って、ρ(ω)を用いて、モデル化誤差の存在時に収束を確実にすることができる。ρ(ω)の値は、ロバスト性と積極的収束速度との間でトレードオフが生じるように選択することができる。ρ(ω)は、異なるωにおいて収束速度を合わせるための振動数関数とすることもできる。
【0116】
いくつかの実施形態では、実現された軌道の測定が正確である時にILCの実装が最適化される。ファイバ先端の偏向は、直接観測することはできないが、システムモデルから分離することができる。第1の振動モードに対応するサブシステムは時間的に変化すると推測できるので、実施形態によっては、ファイバ先端の状態に通常の観測器を使用することは適していない。1つの方法は、ファイバ先端の補完的な観測を行うことであり、モデルの他の部分(電気回路)は時間的に不変であると想定されるので、入出力データ、及びf信号から減分したの入出力データの寄与分から他の状態を予測することができる。残りの「補完物」によってファイバ偏向の読み取りを行うことができる。
【0117】
自己較正走査ファイバシステム
上述したように、本明細書に示す適応的技術又は適応的フィードフォワード技術を用いて、光ファイバスキャナの自動自己較正を実現することができる。例えば、本明細書に開示する自己検知回路を圧電アクチュエータと組み合わせて使用して様々なスキャナパラメータの変化を検出し、最新のパラメータに基づいて、光ファイバの走査を駆動するために使用する駆動入力を修正することができる。このような自己検知回路は、圧電アクチュエータによって光ファイバが駆動されている時、光ファイバが駆動されていない時(例えば、静置中)、或いはこれらの好適な組み合わせにおいて(例えば、圧電自己検知信号を介して)光ファイバの変位を測定するように設計することができる。
【0118】
図13Aに、実施形態による、走査光ファイバを駆動する圧電駆動信号1300を示す。圧電駆動信号1300は、各固有方向に沿って光ファイバに付与することができる。圧電駆動信号1300は、撮像相、制動相及び静置相を含むことができる。撮像相は、両仮想軸に沿って付与された時に上述したような螺旋走査パターンを形成するランピング正弦波信号を含むことができる。制動信号は、光ファイバに付与されると直ちに停止させる大振幅方形波を含むことができる。静置相は、駆動信号を付与せずにファイバの残留振動を減衰させることができる。静置相の後には、このシーケンスを繰り返して新たな画像フレームを取得することができる。これらの3つの撮像相、制動相及び静置相は、まとめて「走査プロファイル」と呼ぶことができる。
図13Bには、実施形態による、駆動信号に応答して生じる例示的なスキャナ応答1350を示す。例えば、スキャナ応答1350は、駆動信信号1300に応答して生じることができる。スキャナ応答1350は、駆動信号の撮像相、制動相及び静置相に対応する撮像相、制動相及び静置相を含む。
【0119】
例えば、撮像相の最中には、各固有方向にランピング正弦波及びランピング余弦波を加えることができる。
(式13)
式中、A
1及びA
2は励起振幅であり、励起振動数ωは、以下になるように選択され、
(式14)
ω
rは、次式によって与えられる第1の振動モードの共振振動数である。
(式15)
【0120】
ωは、大きなスキャナ偏向と、従って広視野(FOV)とを生成するために、両固有方向に沿って第1のモード共振ピークに最も近付くように選択することができる。いくつかの実施形態では、撮像相の最適な動作のために、振動数ω
r,1及びω
r,2(下付き文字の1及び2は、それぞれ第1及び第2の固有方向を意味する)を、高(例えば、最大)FOVが達成されるように決定することができる。
【0121】
制動相中には、各固有方向に大振幅の方形波(制動駆動)を適用して走査を急速に崩壊させることができる。制動駆動は、第1の減衰固有振動数とすることができる。
(式16)
【0122】
この位相は、正確には
ラジアンだけ遅延することができる。例えば、基準時間t=0において、
及び
とする。位相遅延
ラジアンで制動駆動を適用すると、以下の関係を得ることができる。
(式17)
式中、
である。この初期値問題を解くと、以下が得られる。
(式18)
(式19)
【0123】
の場合、
及び
であるため、
でスキャナを停止させることができる。これには、非常に大きな電圧の付与が伴うことがある。代わりに、
(式20)
の場合、以下のようになる。
(式21)
【0124】
すなわち、振動振幅は、式20が成り立たなくなるまで(A
Brakeが大きいほど速く)減少する。この時点で、制動をオフにすることができ、又は振幅が増加し始めることができる。
【0125】
制動は
ラジアンにおいて適用することができ、そうでなければ式17は成り立たない。制動位相が正しくない(例えば、
)場合には、
となり、すなわち制動駆動によって実際に動きの振幅を増加させることができる。なお、
は、固有方向に沿ったスキャナの変位に対して相対的なものである。スキャナの応答は、スキャナの励起及び機械的特性に依存し得る絶対位相φ
Motionを有することができる。従って、絶対制動位相は、φ
Brake=φ
Brake,Rel+φ
Motionであり、これは固有方向間で、及びシステム毎に変化することができる。
【0126】
制動相の終了時にスキャナが完全に停止していないこともあるので、静置相は適切である。式20がもはや成り立たなくなった後で制動がオフになると、|x(t)|は小さいかもしれないが、式21の不等式はx(t)=0を保証しない。また、高次振動モードなどのモデル化されていない動特性が励起され減衰することもある。制動の適用が正確であればあるほど静置相は短くなり、光ファイバスキャナのビデオフレームレートを高めることができる。
【0127】
図14A及び
図14Bに、実施形態による、光ファイバ及び圧電アクチュエータの変位についての拡張モード形状1400、1450をそれぞれ示す。第1の拡張モード形状1400は、走査光ファイバシステムの動作モードとすることができる。圧電管の歪み(又は変位)は、光ファイバの偏向に正比例することができる。従って、光ファイバの位置は、圧電管の歪みを検知することによって測定することができる。本明細書に示す方法では、厳格な基準としての取り付けカラーを用いて、複合圧電管−光ファイバ片持ち式構造の変形を考慮することができる。この方法では、圧電管の動特性を考慮せずに光ファイバに焦点を当てる別の方法に比べ、システム挙動をより完全に分析することができる。
【0128】
図15A及び
図15Bには、実施形態による、圧電自己検知回路1500の集中定数回路モデルを示す。圧電アクチュエータの動作及び検知を異なる時点で行う実施形態では、回路1500を用いて圧電変位信号を測定することができる。回路1500は、駆動電圧源(V
drive)を含むことができる。圧電管は、コンデンサC
pと直列に存在する電圧源V
p(t)としてモデル化することができる。電圧V
p(t)は、圧電素子の歪みに比例する圧電生成電圧である。
【0129】
図15Aに示すようにV
Drive(t)がアクティブな時(例えば、スキャナの作動時)には、検知電圧V
Sence(t)をラプラス領域において以下のように与えることができ、
(式22)
式中、R
wは配線抵抗であり、C
wは配線容量であり、Rは
図15A及び
図15Bに示す抵抗器であり、sはラプラス変数である。通常、
であるため、式22では
となり、従って作動時にV
pを直接測定できないこともある。
【0130】
しかしながら、
図15Bに示すように駆動がアクティブではない時には以下のようになり、
(式23)
非作動時にも圧電管の歪みを直接測定することができる。なお、式23では、圧電信号が、
及び設計変数Rによって与えられる極を有するフィルタを通じて帯域通過する。
【0131】
光ファイバスキャナが不足減衰共振システムである実施形態では、強制力が除去された後でもスキャナが振動し続けることができる。従って、式23は、圧電管に駆動信号を付与した後で、圧電検知を介して残留振動を測定できることを意味する。この方法を用いて、固有方向、共振及び減衰共振振動数、並びに制動位相などの、高精度な走査光ファイバ撮像のための関連パラメータを識別することができる。
【0132】
圧電管に加わる(トルクを生み出す)応力は、入射電場に比例することができる。片持ち式ファイバスキャナに作用する力は、圧電管に電気駆動信号を付与することによって制御することができる。固有方向を識別するには、以下の診断信号を付与することができ、
(式24)
式中、ωnomは、共振振動数の公称推測値であり、αは、0〜πラジアンまで掃引できる「試験角度」である。α=θ(固有方向角度)の時には、直線応答を得ることができる。t=T
finalで強制力がオフになると、自由減衰のための初期条件は、当業者に周知の方法で決定することができる。自由振動は、以下のように計算することができ、
(式25)
式中、振幅A
1及び位相φ
1は初期条件に依存する。式25は、一次元信号を記述するものである。直線幾何学では、いくつかの実施形態において、半長軸の長さをαとし、半短軸の長さをbとする以下の扁平化基準
(式26)
が、1の時に最大値又はほぼ最大値をとることができる。いくつかの実施形態では、αを0からπラジアンまで掃引することにより、
の時に最大又はほぼ最大の扁平度を達成することができる。従って、固有方向パラメータθを同定することができる。
【0133】
図16A〜
図16Cに、実施形態による、本明細書に示す方法を用いて取得できる例示的な光ファイバの応答を示す。
図16Aには、α≠θの時に観察される旋回運動(低扁平)を示す。
図16Bには、本明細書に示す識別手順の結果を示す。
の時に最大扁平度を達成することができる。
図16Cには、識別された固有方向に沿って駆動した時に旋回が排除されたことを検証する光学位置センサのデータを示す。
【0134】
式15と式16を比べると、有効減衰ζが小さい時には、
である。走査光ファイバシステムでは、指標ω
dを正確に測定することができ、上述した仮定をω
rに使用することができる。ω
dは、正確な制動及び歪みのない画像に使用することができる。ω
rが不正確な場合、わずかに小さなFOVが生じることがあるが、画質にとってそれほど有害ではないと思われる。
【0135】
固有方向が識別されると、診断信号
を付与することができ、その後に強制力がオフになる。これにより、式25に示す第1の固有方向(固有方向1)に沿った自由振動を生じることができる。x
1,decay(t)のフーリエ変換は以下のようになり、
(式27)
式中、jは虚数単位、ωはフーリエ変換の振動数変数、そしてB1及びC1は、自由減衰前の初期条件に依存する係数である。式27の振幅プロットは、ω=ω
d,1でピークを有することができる。x
1,decay(t)の測定サンプルから離散高速フーリエ変換(FFT)を行い、FFT振幅プロットからω
d,1を識別することができる。この過程を、第2の固有方向(固有方向2)について繰り返すことができる。
【0136】
図17に、実施形態による、圧電検知を用いて取得される例示的なデータのFFT振幅プロットを示す。FFTプロットの非常に顕著なピークは、ω
dの正確な識別を可能にすることができる。また、光学位置センサからのデータを用いて、識別された振動数を検証することもできる。
【0137】
本明細書で上述したように、正確な位相φ
Brakeで制動を適用して、スキャナを可能な限り停止に近付けることができる。φ
Brakeの厳密値は、「試験」位相βを
〜
ラジアン間で掃引することによって実験的に求めることができる。スキャナの変位及び速度は、
の時に低減する(例えば、最小化する)ことができる。
【0138】
第1の拡張モードでの動作時には、不連続な強制力に起因して、第2の及びそれよりも高次の拡張モードがわずかに励起されることがある。
図14Bを参照すると、第2の拡張モードは、(
図14Aに示す)第1の拡張モードに比べて圧電管の大きな相対的変形を含むことがある。従って、第1の拡張モードの振幅が小さい時には、(圧電検知を用いて)圧電管の変位を観察することのみによって第1の拡張モードの振幅と第2の拡張モードの振幅とを分離することが困難な場合がある。φ
Brakeを正確に識別するには、第1の拡張モードのわずかな残留振動を定量化することが役に立つこともある。
【0139】
第1の拡張モードの振幅と第2の拡張モードの振幅とを分離するには、振動数解析を使用することができる。第2の拡張モードの減衰固有振動数は、第1の拡張モードのものよりもはるかに高くなり得るので、これらは明確な振動数スペクトルのピークを有することができる。式27より、固有方向1の自由減衰では、ω=ω
d,1におけるFFT振幅ピークの高さ|X
1,decay(ω
d,1)|が
に比例することができ、式中、B
1及びC
1は、自由減衰開始時の初期変位x
i及び初期速度v
iに正比例する。
(式28)
(式29)
【0140】
すなわち、|X
1,decay(ω
d,1)|は、固有方向1の第1の拡張モードの初期変位及び速度に比例できるということであり、従って「停止時」に第1の拡張モードがどれほどであるかを測定する方法を提供するものである。
【0141】
以下の処理手順を用いて、制動位相を識別することができる。固有方向1において、名目上のランピング正弦波を用いて走査光ファイバシステムを走査した後に制動を適用することができる。制動中、異なる試行のために、「試験」位相βを
〜
ラジアンで掃引することができる。これによって、診断信号を構成することができる。各試行における制動後に|X
1,decay(ω
d,1)|を測定することができる。いくつかの実施形態では、|X
1,decay(ω
d,1)|の最小値又はほぼ最小値を用いて
を示すことができる。この処理を固有方向2において繰り返してφ
Brake,2を識別することができる。
【0142】
図18Aに、実施形態による、異なる識別試行の例示的なFFT振幅プロットを示す。式27〜29によって予測されるように、異なる制動位相では第1のピークの高さが変化する。
図18Bには、実施形態による、異なるβについてのピーク高さを追跡して最小点又はほぼ最小点を発見することによる最適な制動位相の例示的な識別を示す。
図18Cには、実施形態による、最適な制動後の例示的な圧電検知信号を示す。圧電検知を用いて、圧電管位置を追跡することができる。制動が効果的な場合、第1の拡張モードの低振動数振動は存在しないが、第2の拡張モードの高振動数振動が検出される。
図18Dには、実施形態による、光ファイバの先端位置を追跡する例示的な光学位置センサのデータを示す。第1の拡張モードは事実上停止しているので、ファイバ先端の偏向は無視することができる。
【0143】
本明細書に示すように、走査光ファイバシステムに関連するパラメータを圧電検知によって識別できるので、変化する動作条件にわたってこれらのパラメータを追跡することができる。光ファイバスキャナの固有方向及び第1の拡張モードの減衰固有振動数は、時間と共にほんのわずかにドリフトすることがある。システムは、これらのパラメータの新たな値を識別するために、上述した処理手順を定期的に繰り返すことができる。また、パラメータのドリフトは連続する傾向にあるので、新たなパラメータ値の推定を出発点として使用し、従って識別を繰り返す回数を減少させることができる。各識別の繰り返しには、50ミリ秒未満(例えば、毎秒500kサンプルで取得できるデータサンプルはせいぜい25kである)しか掛からないと考えられ、(例えば、内視鏡用途について)スキャナの操作者にとって目に付いたり、又は混乱を生じたりすることはないと考えられる。
【0144】
光ファイバスキャナは、制動位相の不正確さの影響を受けやすいことがある。新たな制動位相を識別するには、上述の手順を繰り返すことも、或いは時間信号位相φ
Motionの変化量を求めることもできる。
なので、φ
Motionの変化は、φ
Brakeの変化に等しい。この方法は、制動位相の素早い更新を可能にする。
【0145】
図19Aに、2つの異なる温度における固有方向の例示的な識別を示しており、44℃では、24℃に対して1.1°の時計回り回転を示している。
図19Bには、異なる温度における例示的な追跡された減衰固有振動数ピークを示しており、わずかな減少傾向を示している。
図19Cには、例示的な時間信号、及び温度の上昇と共に観察される位相ドリフトを示す。
図19Dには、本明細書に示す圧電検知方法を用いた再較正の前後の、44℃における例示的なスキャナ変位プロファイルを示す。再較正前には、次の画像サイクルが始まった時に未だスキャナが力強く振動して歪んだ画像をもたらすことがある。再較正後は、走査制御及び制動がはるかに効果的になり、次の画像サイクル前にスキャナを停止させることができ、従って歪みが最小限しか又は全くない鮮明な画像を得ることができる。
【0146】
本明細書に示す設計された識別手順は、扁平度を高めて(例えば、最大化して)固有方向を発見し、スペクトルピーク(例えば、最大値又はほぼ最大値)を特定して減衰固有振動数を識別し、スペクトル高さを減少させて(例えば、最小化して)制動位相を発見することを最適化するための定量化できる手段を含むことができる。従って、システムは、これらの識別ステップを定期的に繰り返して、人間の支援及び外部較正装置(例えば、較正室)を利用せずにシステム自体を再較正できるようにコンピュータ自動化することができる。例えば、本明細書に示す走査光ファイバシステムを利用する内視鏡では、圧電センサが内視鏡プローブの内部に存在するので、自動化較正を、高画質を維持する完全自己完結プロセスとすることができ、従って長期にわたる医療処置における内視鏡の利便性、柔軟性及び適応性が向上する。
【0147】
実施例:スパイラルアウト及びスパイラルイン撮像
この実施例は、走査光ファイバシステムを用いて行われる撮像手順について説明するものである。走査光ファイバを、外向き及び内向きが交互になった螺旋走査パターン(「スパイラルアウト」及び「スパイラルイン」)で駆動した。本明細書に示す実施形態による動的モデルに基づいて、光ファイバの軌道を制御する駆動信号を生成した。このモデルは、固有振動数及び減衰因子パラメータの手動調整を用いて自動的に同定したものである。撮像中にLABVIEWソフトウェアを用いて手動で行われる動的モデルの高速再計算及び調整により、スパイラルアウト及びスパイラルイン軌道を十分良好に追跡できたことにより、両走査部分からのデータを交互に差し込み、二重画像を伴わずに撮像に使用することができた。
【0148】
図26に、スパイラルアウト及びスパイラルイン撮像を用いて取得された微小正方形チェッカーボードパターンの例示的な画像データを示す。チェッカーボードの真っ直ぐな縁部が保持されたことを示すために、画像上には水平線及び垂直線を重ねている。
図27A〜
図27Cは、スパイラルアウト及びスパイラルイン撮像に使用した例示的な画素サンプリング分布を示す(円はスパイラルアウトに対応し、短線はスパイラルインに対応する)。内向き走査及び外向き走査の密度及び面積は同じであったが、配置は異なっていた。
【0149】
これらの結果は、モデル化方法を用いて、スパイラルアウト画像データとスパイラルイン画像データを交互にするのに十分な精度でファイバ軌道を制御し、これによって走査が行われていない制動相及び静置相の使用を避けることができることを示すものである。スパイラルアウト及びスパイラルイン撮像の使用は、スパイラルアウト走査のみを撮像に利用する方法とは対照的に、走査効率、フレームレート及び画像解像度を高めるとともに、走査光ファイバシステムのほぼ100%の負荷サイクル動作を実現できるという利点を有する。
【0150】
本明細書に示す様々な技術は、記憶媒体及びコンピュータ可読媒体に記憶可能であるとともにコンピュータシステムの1又は2以上のプロセッサによって実行可能なコードを用いて部分的に又は完全に実装することができる。プロセッサは、本明細書に示す技術を実行するように構成されたプログラマブルアレイロジック(以下、PAL)などのアレイロジックを含むことができる。コード又はコードの一部を含む記憶媒体及びコンピュータ可読媒体としては、以下に限定されるわけではないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又はその他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又はその他の磁気記憶装置、或いは所望の情報を記憶するために使用でき、システム装置がアクセスできるいずれかの他の媒体を含む、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータなどの情報の記憶及び/又は伝達のためにいずれかの方法又は技術で実装される揮発性及び不揮発性、リムーバブル及び非リムーバブルな媒体などの記憶媒体及び通信媒体を含む、当業で認識又は使用されているあらゆる適切な媒体を挙げることができる。当業者であれば、本明細書に示す開示及び教示に基づいて、様々な実施形態を実装する他の手段及び/又は方法を理解するであろう。
【0151】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態を図示し説明したが、当業者には、このような実施形態は一例にすぎないことが明らかであろう。当業者には、本発明から逸脱することなく既に数多くの変形、変更及び置換が浮かんでいるであろう。本発明を実施する際には、本明細書に示す発明の実施形態の様々な代替例を使用できると理解されたい。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲に定められ、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造、並びにこれらの同等物がその対象範囲として意図される。