(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571823
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】減速機構付き制御モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 9/22 20060101AFI20190826BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20190826BHJP
H02K 11/38 20160101ALI20190826BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20190826BHJP
H02K 9/28 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
H02K9/22 Z
H02K11/33
H02K11/38
H02K7/116
H02K9/28 Z
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-40325(P2018-40325)
(22)【出願日】2018年3月7日
(62)【分割の表示】特願2017-6332(P2017-6332)の分割
【原出願日】2010年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-88822(P2018-88822A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2018年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2009-178154(P2009-178154)
(32)【優先日】2009年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕人
(72)【発明者】
【氏名】金井 猛
(72)【発明者】
【氏名】木村 正秋
(72)【発明者】
【氏名】土屋 公司
【審査官】
島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0226802(US,A1)
【文献】
特開2007−116829(JP,A)
【文献】
特開2007−143278(JP,A)
【文献】
特開2005−184892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/22
H02K 7/116
H02K 9/28
H02K 11/33
H02K 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正逆回転可能な電気モータと、
前記電気モータに駆動され、前記電気モータの回転を減速する減速機構と、
前記電気モータの回転を制御する制御基板と、
を備えた減速機構付き制御モータであって、
前記電気モータは、
円筒状のヨークと、
前記ヨークの内周面上に配置されて、異なる磁極が交互に配置された4極のマグネットと、
前記ヨークに回転可能に支持されたアーマチュアシャフト、前記アーマチュアシャフトに形成されたウォーム部、前記アーマチュアシャフトに固定され、複数のセグメントを有するコンミテータ、前記アーマチュアシャフトに固定され、前記コンミテータの複数のセグメントの数と同数である複数のティースが形成されたコア、前記コアの所定のティースの周りに巻装される複数の巻線、前記複数のセグメントのうち、互いに対向する一対のセグメント間に電気的に接続された複数の接続部材からなり、前記ヨーク内に収容されたアーマチュアと、
前記複数のセグメントに摺接される第1のブラシ、前記複数のセグメントに摺接され、前記第1のブラシに対して略90度離れた位置に配置された第2のブラシ、前記第1のブラシおよび前記第2のブラシに対してそれぞれ電気的に接続された一対の第1のブラシターミナル部からなるブラシホルダユニットと、
を有し、
前記減速機構は、
前記アーマチュアシャフトの前記ウォーム部に噛合されるウォームホイール部、前記ウォームホイール部の回転軸となる出力軸からなり、前記アーマチュアの回転を減速させる減速ギヤ部と、
前記ブラシホルダユニットを収容するブラシホルダ収容部、前記ブラシホルダ収容部に連なって形成され、前記減速ギヤ部および前記ウォーム部および前記一対の第1のブラシターミナル部が配置される開口が形成された減速ギヤ部収容部からなり、ダイカスト成形品で形成され、前記ヨークに結合されたギヤハウジングと、
絶縁材料によって形成され、前記減速ギヤ部収容部の開口を覆い、前記一対の第1のブラシターミナル部に対してそれぞれ電気的に接続される一対の第2のブラシターミナル部が部分的に埋設されたギヤハウジングカバーと、
前記アーマチュアシャフトの前記ウォーム部に塗布されたグリスと、
前記制御基板と前記ウォームホイール部との間に配置され、絶縁性材料からなる制御基板カバーと、
を有し、
前記制御基板は、前記ギヤハウジングカバーに固定され、かつ前記減速ギヤ部収容部内に収容され、
前記制御基板の第1の面上に、前記アーマチュアの回転を駆動制御する複数のFETが設けられ、
前記制御基板の前記第1の面に対向する第2の面と、前記ギヤハウジングの内周面に形成されたFET放熱部との間には、前記制御基板カバーが介在することなく、前記複数のFETによって発生された熱を前記ギヤハウジングに伝達し、かつ熱伝導性の高い材料よりなるFET放熱部材のみが設けられ、
前記減速ギヤ部収容部の外周面上には、前記FET放熱部材と前記複数のFETとにオーバーラップして設けられ、前記複数のFETによって発生され、かつ前記制御基板から前記FET放熱部材を介して前記ギヤハウジングに伝達された熱を放熱するヒートシンクが形成され、
前記減速ギヤ部収容部には、前記ブラシホルダ収容部に向けて貫通する貫通孔が設けられ、前記ブラシホルダユニットの前記第1のブラシターミナル部は、前記貫通孔を貫通して前記減速ギヤ部収容部に配置されており、
前記減速ギヤ部収容部の前記開口から見て、前記制御基板と重ならない位置で、前記ギヤハウジングカバーの前記第2のブラシターミナル部に電気的に接続されており、前記複数のFETのうちの少なくとも2個のFETは、前記減速ギヤ部収容部の、前記ウォーム部に対して前記ウォームホイール部側とは反対側の位置に配置され、前記アーマチュアシャフトの長手方向に並んで配置されていることを特徴とする減速機構付き制御モータ。
【請求項2】
前記制御基板カバーは、前記制御基板に前記グリスが付着するのを防止する部分を有することを特徴とする請求項1に記載された減速機構付き制御モータ。
【請求項3】
前記減速ギヤ部収容部には、前記減速ギヤ部収容部の底面から前記減速ギヤ部収容部の開口に向けてFET放熱部が突出して形成されており、前記減速ギヤ部収容部の前記開口から見て、前記FET,前記制御基板,前記FET放熱部材,前記FET放熱部および前記ヒートシンクがオーバーラップしていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された減速機構付き制御モータ。
【請求項4】
前記制御基板は、前記ギヤハウジングカバーと前記制御基板カバーとの間に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された減速機構付き制御モータ。
【請求項5】
前記制御基板カバーが介在することなく、前記第1のブラシターミナル部と前記第2のブラシターミナル部とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された減速機構付き制御モータ。
【請求項6】
前記減速機構付き制御モータは、車両のウインドシールドを払拭するワイパ装置に用いられるワイパモータであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された減速機構付き制御モータ。
【請求項7】
正逆回転可能な電気モータと、
前記電気モータに駆動され、前記電気モータの回転を減速する減速機構と、
前記電気モータの回転を制御する制御基板と、
を備えた減速機構付き制御モータであって、
前記電気モータは、
円筒状のヨークと、
前記ヨークの内周面上に配置されて、異なる磁極が交互に配置された4極のマグネットと、
前記ヨークに回転可能に支持されたアーマチュアシャフト、前記アーマチュアシャフトに形成されたウォーム部、前記アーマチュアシャフトに固定されて18個のセグメントを備えたコンミテータ、前記アーマチュアシャフトに固定されて18本のティースが形成されたコア、前記コアの所定のティースの周りに巻装される複数の巻線からなり、前記ヨーク内に収容されたアーマチュアと、
前記複数のセグメントに摺接される第1のブラシ、前記複数のセグメントに摺接され、前記第1のブラシに対して略90度離れた位置に配置された第2のブラシ、前記第1のブラシおよび前記第2のブラシに対してそれぞれ電気的に接続された一対の第1のブラシターミナル部からなるブラシホルダユニットと、
を有し、
前記減速機構は、
前記アーマチュアシャフトの前記ウォーム部に噛合されるウォームホイール部、前記ウォームホイール部の回転軸となる出力軸からなり、前記アーマチュアの回転を減速させる減速ギヤ部と、
前記ブラシホルダユニットを収容するブラシホルダ収容部、前記ブラシホルダ収容部に連なって形成され、前記減速ギヤ部および前記ウォーム部および前記一対の第1のブラシターミナル部が配置される開口が形成された減速ギヤ部収容部からなり、ダイカスト成形品で形成され、前記ヨークに結合されたギヤハウジングと、
絶縁材料によって形成され、前記減速ギヤ部収容部の開口を覆い、前記一対の第1のブラシターミナル部に対してそれぞれ電気的に接続される一対の第2のブラシターミナル部が部分的に埋設されたギヤハウジングカバーと、
前記アーマチュアシャフトの前記ウォーム部、または前記減速ギヤ部に塗布されたグリスと、
前記制御基板と前記ウォームホイール部との間に配置され、絶縁性材料からなる制御基板カバーと、
を有し、
前記制御基板は、前記ギヤハウジングカバーに固定され、かつ前記減速ギヤ部収容部内に収容され、
前記制御基板の第1の面上に、前記アーマチュアの回転を駆動制御する複数のFETが設けられ、
前記制御基板の前記第1の面に対向する第2の面と、前記ギヤハウジングの内周面に形成されたFET放熱部との間には、前記制御基板カバーが介在することなく、前記複数のFETによって発生された熱を前記ギヤハウジングに伝達し、かつ熱伝導性の高い材料よりなるFET放熱部材のみが設けられ、
前記減速ギヤ部収容部の外周面上には、前記FET放熱部材と前記複数のFETとにオーバーラップして設けられ、前記複数のFETによって発生され、かつ前記制御基板から前記FET放熱部材を介して前記ギヤハウジングに伝達された熱を放熱するヒートシンクが形成され、
前記減速ギヤ部収容部には、前記ブラシホルダ収容部に向けて貫通する貫通孔が設けられ、前記ブラシホルダユニットの前記第1のブラシターミナル部は、前記貫通孔を貫通して前記減速ギヤ部収容部に配置されており、
前記減速ギヤ部収容部の前記開口から見て、前記制御基板と重ならない位置で、前記ギヤハウジングカバーの前記第2のブラシターミナル部に電気的に接続されており、前記複数のFETのうちの少なくとも2個のFETは、前記減速ギヤ部収容部の、前記ウォーム部に対して前記ウォームホイール部側とは反対側の位置に配置され、前記アーマチュアシャフトの長手方向に並んで配置されていることを特徴とする減速機構付き制御モータ。
【請求項8】
前記制御基板カバーは、前記制御基板に前記グリスが付着するのを防止する部分を有することを特徴とする請求項7に記載された減速機構付き制御モータ。
【請求項9】
前記減速ギヤ部収容部には、前記減速ギヤ部収容部の底面から前記減速ギヤ部収容部の開口に向けてFET放熱部が突出して形成されており、前記減速ギヤ部収容部の前記開口から見て、前記FET,前記制御基板,前記FET放熱部材,前記FET放熱部および前記ヒートシンクがオーバーラップしていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載された減速機構付き制御モータ。
【請求項10】
前記制御基板は、前記ギヤハウジングカバーと前記制御基板カバーとの間に設けられていることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載された減速機構付き制御モータ。
【請求項11】
前記制御基板カバーが介在することなく、前記第1のブラシターミナル部と前記第2のブラシターミナル部とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載された減速機構付き制御モータ。
【請求項12】
前記減速機構付き制御モータは、車両のウインドシールドを払拭するワイパ装置に用いられるワイパモータであることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項に記載された減速機構付き制御モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、減速機構付き制御モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に搭載されるワイパ装置には、ワイパアームを揺動させるための駆動源としての減速機構付き制御モータが用いられている。この減速機構付き制御モータは、ブラシおよびアーマチュアを有するモータ部と、モータ部のアーマチュアの回転を減速する減速機構部とを有している。減速機構部には、アーマチュアの回転を制御する制御装置が設けられ、制御装置によりワイパアームの払拭位置や払拭速度が制御されている。また、制御装置には、スイッチ素子としての複数の電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、以下、単に「FET」とする。)が設けられ、これらFETのオンオフ動作により、電源からモータ部に供給される電流が制御される。
【0003】
FETは、このオンオフ動作のときに生じるスイッチング損失により発熱し、オンオフ動作が頻繁に行われた場合には高温となる。そして、FETから発熱した熱は、モータ部からの熱とともに制御基板に伝達される。それゆえ、減速機構部のカバーには、制御装置の制御基板上に配置されたFETに近接する位置にヒートシンクが設けられており、FETから発生した熱は、ヒートシンクにより外部に放熱される。
【0004】
しかしながら、モータ部が連続運転したときなどには、FETおよびモータ部のコイルから多くの熱が発生し、この熱は制御基板に伝達され、制御基板の温度がその仕様(耐用)温度を超えることが懸念される。そこで、制御基板上には温度検出回路が設けられ、温度検出回路により、制御基板の温度が予め定められた温度を超えたと判断した場合には、電源からFETを介して、モータ部に供給される電流が遮断される設定となっている。そして、電流を遮断することにより、制御基板の故障が防止される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−097352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、制御基板に伝達する熱の主な熱源は、FETおよびモータ部のコイルである。しかしながら、近年、モータの小型化のために、ワイパ装置に用いられるモータにおいて、マグネットの磁極数が4極以上の多極モータが提案され、ブラシも制御基板に伝達する熱源となりえる。この多極モータにおいて、ブラシ収容部内に配置された接地側のブラシと電源側のブラシとの距離が短くなるものがある。このように、接地側および電源側のブラシが近づいた場合、ブラシで発熱した熱により、ブラシに近接して設けられ、減速機構部に一体的に取り付けられている樹脂製のカバーの温度が上昇する。そのため、カバーと、制御基板を備える減速機構部との温度勾配が大きくなり、FETおよびモータ部のコイルのみならず、ブラシから発生した熱によっても制御基板の温度が上昇する。
【0007】
そして、ブラシからの熱が制御基板にさらに加わることにより、制御基板の温度はより高温になりやすく、温度検出回路の温度が予め定められた温度に達しやすくなり、減速機構付き制御モータを長時間作動させることが困難になるという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ブラシから発生する熱を効率よく放熱し、制御基板に伝達されるブラシからの熱を減少させることができる減速機構付き制御モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の減速機構付き制御モータでは、正逆回転可能な電気モータと、前記電気モータに駆動され、前記電気モータの回転を減速する減速機構と、前記電気モータの回転を制御する制御基板と、を備えた減速機構付き制御モータであって、前記電気モータは、円筒状のヨークと、前記ヨークの内周面上に配置されて、異なる磁極が交互に配置された4極のマグネットと、前記ヨークに回転可能に支持されたアーマチュアシャフト、前記アーマチュアシャフトに形成されたウォーム部、前記アーマチュアシャフトに固定され、複数のセグメントを有するコンミテータ、前記アーマチュアシャフトに固定され、前記コンミテータの複数のセグメントの数と同数である複数のティースが形成されたコア、前記コアの所定のティースの周りに巻装される複数の巻線、前記複数のセグメントのうち、互いに対向する一対のセグメント間に電気的に接続された複数の接続部材からなり、前記ヨーク内に収容されたアーマチュアと、前記複数のセグメントに摺接される第1のブラシ、前記複数のセグメントに摺接され、前記第1のブラシに対して略90度離れた位置に配置された第2のブラシ、前記第1のブラシおよび前記第2のブラシに対してそれぞれ電気的に接続された一対の第1のブラシターミナル部からなるブラシホルダユニットと、を有し、前記減速機構は、前記アーマチュアシャフトの前記ウォーム部に噛合されるウォームホイール部、前記ウォームホイール部の回転軸となる出力軸からなり、前記アーマチュアの回転を減速させる減速ギヤ部と、前記ブラシホルダユニットを収容するブラシホルダ収容部、前記ブラシホルダ収容部に連なって形成され、前記減速ギヤ部および前記ウォーム部および前記一対の第1のブラシターミナル部が配置される開口が形成された減速ギヤ部収容部からなり、ダイカスト成形品で形成され、前記ヨークに結合されたギヤハウジングと、絶縁材料によって形成され、前記減速ギヤ部収容部の開口を覆い、前記一対の第1のブラシターミナル部に対してそれぞれ電気的に接続される一対の第2のブラシターミナル部が
部分的に埋設
されたギヤハウジングカバーと、前記アーマチュアシャフトの前記ウォーム部に塗布されたグリスと、前記制御基板と前記ウォームホイール部との間に配置され、絶縁性材料からなる制御基板カバーと、を有し、前記制御基板は、前記ギヤハウジングカバーに固定され、かつ前記減速ギヤ部収容部内に収容され、前記制御基板の第1の面上に、前記アーマチュアの回転を駆動制御する複数のFETが設けられ、前記制御基板の前記第1の面に対向する第2の面と、前記ギヤハウジングの内周面に形成されたFET放熱部との間には、前記制御基板カバーが介在することなく、前記複数のFETによって発生された熱を前記ギヤハウジングに伝達し、かつ熱伝導性の高い材料よりなるFET放熱部材のみが設けられ、前記減速ギヤ部収容部の外周面上には、前記FET放熱部材と前記複数のFETとにオーバーラップして設けられ、前記複数のFETによって発生され、かつ前記制御基板から前記FET放熱部材を介して前記ギヤハウジングに伝達された熱を放熱するヒートシンクが形成され、
前記減速ギヤ部収容部には、前記ブラシホルダ収容部に向けて貫通する貫通孔が設けられ、前記ブラシホルダユニットの前記第1のブラシターミナル部は、前記貫通孔を貫通して前記減速ギヤ部収容部に配置されており、前記減速ギヤ部収容部の前記開口から見て
、前記制御基板と重ならない位置で、前記ギヤハウジングカバーの前記第2のブラシターミナル部に電気的に接続されており、前記複数のFETのうちの少なくとも2個のFETは、前記減速ギヤ部収容部の、前記ウォーム部に対して前記ウォームホイール部側とは反対側の位置に配置され、前記アーマチュアシャフトの長手方向に並んで配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の形態では、前記制御基板カバーは、前記制御基板に前記グリスが付着するのを防止する部分を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の形態では、前記減速ギヤ部収容部には、前記減速ギヤ部収容部の底面から前記減速ギヤ部収容部の開口に向けてFET放熱部が突出して形成されており、前記減速ギヤ部収容部の前記開口から見て、前記FET,前記制御基板,前記FET放熱部材,前記FET放熱部および前記ヒートシンクがオーバーラップしていることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の形態では、前記制御基板は、前記ギヤハウジングカバーと前記制御基板カバーとの間に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の形態では、前記制御基板カバーが介在することなく、前記第1のブラシターミナル部と前記第2のブラシターミナル部とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の形態では、前記減速機構付き制御モータは、車両のウインドシールドを払拭するワイパ装置に用いられるワイパモータであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の減速機構付き制御モータでは、正逆回転可能な電気モータと、前記電気モータに駆動され、前記電気モータの回転を減速する減速機構と、前記電気モータの回転を制御する制御基板と、を備えた減速機構付き制御モータであって、前記電気モータは、円筒状のヨークと、前記ヨークの内周面上に配置されて、異なる磁極が交互に配置された4極のマグネットと、前記ヨークに回転可能に支持されたアーマチュアシャフト、前記アーマチュアシャフトに形成されたウォーム部、前記アーマチュアシャフトに固定されて18個のセグメントを備えたコンミテータ、前記アーマチュアシャフトに固定されて18本のティースが形成されたコア、前記コアの所定のティースの周りに巻装される複数の巻線からなり、前記ヨーク内に収容されたアーマチュアと、前記複数のセグメントに摺接される第1のブラシ、前記複数のセグメントに摺接され、前記第1のブラシに対して略90度離れた位置に配置された第2のブラシ、前記第1のブラシおよび前記第2のブラシに対してそれぞれ電気的に接続された一対の第1のブラシターミナル部からなるブラシホルダユニットと、を有し、前記減速機構は、前記アーマチュアシャフトの前記ウォーム部に噛合されるウォームホイール部、前記ウォームホイール部の回転軸となる出力軸からなり、前記アーマチュアの回転を減速させる減速ギヤ部と、前記ブラシホルダユニットを収容するブラシホルダ収容部、前記ブラシホルダ収容部に連なって形成され、前記減速ギヤ部および前記ウォーム部および前記一対の第1のブラシターミナル部が配置される開口が形成された減速ギヤ部収容部からなり、ダイカスト成形品で形成され、前記ヨークに結合されたギヤハウジングと、絶縁材料によって形成され、前記減速ギヤ部収容部の開口を覆い、前記一対の第1のブラシターミナル部に対してそれぞれ電気的に接続される一対の第2のブラシターミナル部が
部分的に埋設
されたギヤハウジングカバーと、前記アーマチュアシャフトの前記ウォーム部、または前記減速ギヤ部に塗布されたグリスと、前記制御基板と前記ウォームホイール部との間に配置され、絶縁性材料からなる制御基板カバーと、を有し、前記制御基板は、前記ギヤハウジングカバーに固定され、かつ前記減速ギヤ部収容部内に収容され、前記制御基板の第1の面上に、前記アーマチュアの回転を駆動制御する複数のFETが設けられ、前記制御基板の前記第1の面に対向する第2の面と、前記ギヤハウジングの内周面に形成されたFET放熱部との間には、前記制御基板カバーが介在することなく、前記複数のFETによって発生された熱を前記ギヤハウジングに伝達し、かつ熱伝導性の高い材料よりなるFET放熱部材のみが設けられ、前記減速ギヤ部収容部の外周面上には、前記FET放熱部材と前記複数のFETとにオーバーラップして設けられ、前記複数のFETによって発生され、かつ前記制御基板から前記FET放熱部材を介して前記ギヤハウジングに伝達された熱を放熱するヒートシンクが形成され、
前記減速ギヤ部収容部には、前記ブラシホルダ収容部に向けて貫通する貫通孔が設けられ、前記ブラシホルダユニットの前記第1のブラシターミナル部は、前記貫通孔を貫通して前記減速ギヤ部収容部に配置されており、前記減速ギヤ部収容部の前記開口から見て
、前記制御基板と重ならない位置で、前記ギヤハウジングカバーの前記第2のブラシターミナル部に電気的に接続されており、前記複数のFETのうちの少なくとも2個のFETは、前記減速ギヤ部収容部の、前記ウォーム部に対して前記ウォームホイール部側とは反対側の位置に配置され、前記アーマチュアシャフトの長手方向に並んで配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の形態では、前記制御基板カバーは、前記制御基板に前記グリスが付着するのを防止する部分を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の他の形態では、前記減速ギヤ部収容部には、前記減速ギヤ部収容部の底面から前記減速ギヤ部収容部の開口に向けてFET放熱部が突出して形成されており、前記減速ギヤ部収容部の前記開口から見て、前記FET,前記制御基板,前記FET放熱部材,前記FET放熱部および前記ヒートシンクがオーバーラップしていることを特徴とする。
【0018】
本発明の他の形態では、前記制御基板は、前記ギヤハウジングカバーと前記制御基板カバーとの間に設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明の他の形態では、前記制御基板カバーが介在することなく、前記第1のブラシターミナル部と前記第2のブラシターミナル部とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の他の形態では、前記減速機構付き制御モータは、車両のウインドシールドを払拭するワイパ装置に用いられるワイパモータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、制御基板に伝達されるブラシからの熱を減少させることができる。このため、制御基板に熱が伝わりにくく、温度検出回路の温度が予め定められた温度に達しにくくなるため、減速機構付き制御モータを長い時間作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態における減速機構付き制御モータをギヤハウジングカバー側から見た図である。
【
図2A】
図1からギヤハウジングカバーを除いた図である。
【
図2B】
図2Aのヨーク部のA−A断面図においてアーマチュアを除いた図である。
【
図3A】
図1の減速機構付き制御モータの一部断面展開図である。
【
図4A】減速機構付き制御モータのモータ部を除いた図である。
【
図5A】ブラシホルダユニットのブラシターミナル接続部側から見た斜視図である。
【
図5B】ブラシホルダユニットのブラシホルダ側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態における減速機構付き制御モータの出力軸側から見た図である。
【
図7】本発明の実施形態における減速機構付き制御モータのモータ部を除いた出力軸側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に適用される減速機構付き制御モータとしてのワイパモータ1は、
図1および
図2Aに示されるように、通電により回転動作を行うモータ部(電気モータ)10と、モータ部10の回転動作を減速して出力軸(減速ギヤ部)24に伝達する減速機構部(減速機構)25からなる。
【0024】
図1、
図2Aおよび
図2Bに示されるように、モータ部10は、有底状の円筒形状に形成され、その内周面上に少なくとも4極からなるマグネット11が固定され、一方の端面にギヤハウジング26が固定され、他方に軸受部12が固定されるヨーク13を備えている。
【0025】
また、
図2Aおよび
図3Aに示されるように、モータ部10は、一端が軸受部12によって回転自在に支承され、先端にウォーム部14aが形成されるアーマチュアシャフト14と、アーマチュアシャフト14に固定されるコンミテータ15と、コンミテータ15に隣接してアーマチュアシャフト14に固定されるアーマチュアコア(コア)16と、アーマチュアコア16に巻回された巻線部(巻線)17とからなり、複数のマグネット11の内側に回転自在に配置されるアーマチュア18を備えている。さらに、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、モータ部10は、アーマチュア18の回転により、コンミテータ15に摺動する複数のブラシ(第1のブラシ,第2のブラシ)20,20と、それぞれのブラシ20,20を保持するブラシホルダ21,21とからなるブラシホルダユニット19とを備えている。
【0026】
減速機構部25は、モータ部10の回転を減速するウォームホイール部(減速ギヤ部)25aと、ウォームホイール部25aを収容する有底形状の減速機構収容部26fを有するギヤハウジング26とを備えている。また、減速機構収容部26fの開口を覆うギヤハウジングカバー29と、ブラシホルダユニット19を収容するブラシホルダ収容部26dとを備えている。そして、ウォームホイール部25aは、モータ部10のアーマチュア18の回転を減速して伝達する出力軸24を備えており、ブラシホルダ収容部26dは、筒状に形成され、ギヤハウジング26と一体に成形されている。ギヤハウジング26とギヤハウジングカバー29とは、複数本のネジ40によって互いに固定されている。
【0027】
減速機構部25に備わるウォームホイール部25aは、ポリアセタール等の樹脂によって円盤状に形成され、外周面上にアーマチュアシャフト14のウォーム部14aと噛合する噛合部25bが形成されている。ウォームホイール部25aの回転中心には出力軸24が一体的に取り付けられている。これにより、アーマチュア18が回転を行うと、ウォーム部14aの回転により、ウォーム部14aと噛合するウォームホイール部25aが減速された回転数で回転し、アーマチュア18の回転が減速されて出力軸24に伝達される。
【0028】
ウォームホイール部25aの出力軸24の基端の近傍には、円環状マグネット25cが、出力軸24の回転軸心とその回転軸心とが一致するように取付けられている。また、円環状マグネット25cは、周方向90度の範囲にN極、その他の周方向270度の範囲にS極となるように着磁されている。円環状マグネット25cに近接して、後述する制御基板29c上に2つの絶対位置検出用のホールIC29d,29dが設けられている。絶対位置検出用のホールIC29d,29dは、出力軸24の回転によって円環状マグネット25cから発生する磁極の切り替わりを検出する。そして、2つの絶対位置検出用のホールIC29d,29dが発生する円環状マグネット25cから発生する磁極の切り替わりに対応する信号に基づき、減速機構付き制御モータの出力軸24の先端に取付けられたワイパ装置の移動方向と移動位置とが検出される。
【0029】
次に、本発明の特徴となるギヤハウジング26の放熱構造を
図2A、
図3A、
図6および
図7に基づき説明する。
【0030】
ヨーク13は、プレス加工によって板材から有底状の円筒形状に一体成形されており、ヨーク13には、その内周面上に複数のマグネット11が固定されているマグネット固定部13aと、マグネット固定部13aに一体に連結し、一対の湾曲部13bと一対の平面部13cとが交互に連結され、軸方向から見た端面の形状は小判形状になっているヨーク連結部13dとが形成されている。そして、ヨーク13の端面には、フランジ状の固定部13eが形成されており、後述するギヤハウジング26がフランジ状の固定部13eに固定されている。ヨーク連結部13dは、マグネット固定部13aからヨーク端面に向かうに従って、円弧径が漸次広がるように形成されている。マグネット固定部13aの内周面上には、4個のマグネット11が接着剤などにより固定されており、異なる磁極であるN極とS極とが交互に2個ずつ、つまり同極が対向するように配置されている。
【0031】
アーマチュアシャフト14は、その一端がヨーク13の軸受部12に回転自在に支承されており、4個のマグネット11の内側に配置されている。そして、アーマチュアシャフト14の他端には、転造加工によって螺旋状に形成されたウォーム部14aが形成されている。アーマチュアシャフト14には、円筒状のリングマグネット14bが固定されており、リングマグネット14bには、N極とS極とが30度ずつ離れて交互に、つまり12極の磁極が着磁形成されている。そして、後述する制御基板29c上には、2つの回転方向検出用のホールIC29b,29bが、リングマグネット14bに対向した位置に設けられている。回転方向検出用のホールIC29b,29bは、アーマチュア18の回転に伴ってリングマグネット14bから発生する磁極の切り替わりを検出し、それぞれのホールIC29b,29bは、互いに位相が90度ずれた回転信号を発生する。そして、アーマチュア18の回転方向が、互いに位相が90度ずれた回転信号に基づき検出される。
【0032】
図3Aおよび
図4Aに示されるように、コンミテータ15は、熱硬化性樹脂などの絶縁材料によって円筒状に形成された絶縁円筒部15aと、絶縁円筒部15aの外周面上に周方向に所定間隔を空けて配置され、銅などの導電部材から形成される複数のセグメント部(セグメント)15bとから構成されている。コンミテータ15は、絶縁円筒部15aの内周面とアーマチュアシャフト14の外周面とを嵌合させてアーマチュアシャフト14に固定されている。各セグメント部15bの外周面上の一端には、コイル接続部15cが形成されており、各コイル接続部15cにコイル17aが接続されている。
【0033】
アーマチュアコア16は、プレス加工によって打抜かれたコア基板を所定枚数積層することによって円筒状に形成されており、アーマチュアシャフト14が固定されるシャフト固定部と、シャフト固定部から放射状に延びる18本のティース部(ティース)と、を備えている。
【0034】
図3Aおよび
図3Cに示されるように、アーマチュアコア16には銅線からなるコイル17aが巻回されている。コイル17aの一端が、セグメント部15bのコイル接続部15cに固定され、コイル17aが所定のティース部の間に、重ね巻きにより複数回巻回される。さらに、コイル17aが、所定のティース部の間に、重ね巻きにより複数回巻回された後、コイル17aの他端が異なるセグメント部15bのコイル接続部15cに固定される。続いて、セグメント部15bと対向したセグメント部15bに、接続部材としての接続線(電流供給線)17bが接続される。このように、コイル17aを各ティース部に巻回する工程を繰り返して、コイル17aがアーマチュアコア16に巻回される。これにより、ブラシ20,20に電力が供給されると、コイル17aに電流が流れ、アーマチュア18が回転することで、ワイパモータ1が駆動される。
【0035】
本発明のように、4極のマグネットを用いた場合、通常4つのブラシが必要になるが、対向するセグメント同士を接続線(電流供給線)17bで繋ぐことにより、ブラシ20からセグメント部に流れる電流が、接続線17bを介して対向したセグメント部にも流れる。これにより、ブラシの数を4本から2本に減らすことができる。
【0036】
図5Aおよび
図5Bに示されるように、ブラシホルダユニット19は、一対の湾曲部19aと、一対の平面部19bとが交互に連結された小判形状に形成されたベース部19cを備えている。
【0037】
ベース部19cには、アーマチュアシャフト14が貫通する開口部19c1と、ネジ41が貫通し、ブラシホルダユニット19とギヤハウジング26との固定を行う固定用開口部19c2とが形成されている。そして、ベース部19cには、真鍮などの金属材料からなるブラシホルダ21,21が固定されており、ブラシホルダ21,21内には、2本のブラシ20,20が、コンミテータ15に対して接近離反できるように配置されている。
図4Aおよび
図5Bに示されるように、本発明では、2本のブラシ20,20がアーマチュア18の回転軸心Oを中心として略90度ずれて配置されている。
【0038】
ブラシホルダ21は、ベース部19cの一対の平面部19bのうちの一方の平面部19bに近接して配置されている。そして、ブラシホルダ21の固定爪21aがベース部19cに形成されたブラシホルダ固定部19c3に差し込まれ、固定爪21aがベース部19cの裏面に折り曲げられることで、ブラシホルダ21がベース部19cに固定される。
【0039】
さらに、ブラシホルダユニット19は、ブラシホルダ案内壁19dとブラシターミナル接続部19eとを備え、ブラシホルダ案内壁19dは、ベース部19cの外形(小判形状)とほぼ同形状に形成されてベース部19cから直角に延出して配置されている。また、ブラシターミナル接続部19eは、ベース部19cからブラシホルダ案内壁19dとは反対方向に、かつベース部19cに対し直角に突出している。そして、ブラシターミナル接続部19eは、ブラシ20と対向した位置、つまり、ブラシ20,20が配置される一方の平面部19bと離れた他方の平面部19bに配置されている。これにより、ブラシ20から発生した熱がブラシターミナル接続部19eおよびブラシターミナル接続部19eに電気的に接続された制御基板29cに伝達されにくくなる。
【0040】
ベース部19cには、雑音防止素子としてのチョークコイル22、22が取付けられ、チョークコイル22、22の一端とブラシ20,20とが、ピグテール20a、20aを介して電気的に接続されている。チョークコイル22の他端には、雌形ブラシターミナル(ブラシターミナル部)23が電気的に接続されており、雌形ブラシターミナル23はギヤハウジングカバー29に設けられた雄型ターミナル29gと電気的に接続される。雌形ブラシターミナル23の先端は、ブラシターミナル接続部19eの内部に収容されており、ギヤハウジングカバー29の雄型ターミナル29gと電気的に接続できるようにブラシターミナル接続部19eから露出している。ブラシホルダユニット19をブラシホルダ収容部26dに組付ける際、ブラシホルダ案内壁19dは、ブラシホルダ収容部26dの内壁26d1に当接して、ブラシホルダユニット19は、ブラシホルダ収容部26dの底部(壁部)26d2に案内される。そして、ブラシホルダユニット19とギヤハウジング26とが、ベース部19cに形成された固定用開口部19c2に貫通されたネジ41によって固定される。
【0041】
図2A、
図3Aおよび
図4Bに示されるように、ギヤハウジング26は、アルミ等の金属材料を用いてダイカスト成形によって形成されている。そして、ギヤハウジング26には、ヨーク固定部26aが形成され、ヨーク固定部26aとヨーク13のフランジ状の固定部13eとが互いに当接されて、複数のネジ42によりギヤハウジング26にヨーク13が取り付けられる。
【0042】
ヨーク固定部26aは、フランジ状の固定部13eの形状に合わせて一対の湾曲部26bと、一対の平面部26cとが交互に連結された小判形状に形成されている。そして、ギヤハウジング26には、ブラシホルダ収容部26dがヨーク固定部26aと一体に形成されており、ブラシホルダ収容部26dにブラシホルダユニット19が収容されている。ブラシホルダ収容部26dの底部26d2には、ブラシホルダ21の固定爪21aと当接するブラシホルダ当接部(壁部)26eが、底部26d2から突出して形成されており、ブラシ20、20から発生した熱が、ブラシホルダ21の固定爪21aからブラシホルダ当接部26eを介してギヤハウジング26に伝達され、ギヤハウジング26から外部に放熱される。
【0043】
さらに、ギヤハウジング26には、ウォームホイール部25aを収容する減速機構収容部(減速ギヤ部収容部)26fが、ブラシホルダ収容部26dに隣接して形成される。そして、ギヤハウジング26には、出力軸24を支承する出力軸支承部26gが、減速機構収容部26fの開口と反対方向に形成されている。
【0044】
さらに、減速機構収容部26fには、カバー接続部(貫通孔)26hが開口しており、前述したブラシホルダユニット19がブラシホルダ収容部26dに収容された後、ギヤハウジングカバー29の底面から減速機構収容部26fに向けて突出して設けられた2本の雄型ターミナル29gが、カバー接続部26hを貫通して減速機構収容部26fに配置されたブラシホルダユニット19の雌形ブラシターミナル23に電気的に接続される。
【0045】
出力軸支承部26gから突出した出力軸24は、出力軸固定部(ティースワッシャ)27によって固定される。そして、出力軸24の先端にはワイパ装置固定部24aが形成され、ワイパ装置(図示せず)を構成する部品が機械的に結合される。
【0046】
図6および
図7に示されるように、減速機構収容部26fの裏面に位置するギヤハウジング26の外周面上には、電気的な要因であるブラシ20、20とコンミテータ15の間の接触抵抗により発生したジュール熱、および機械的な要因であるブラシ20、20とコンミテータ15との摺動により発生した摩擦熱を放出する第1のヒートシンク26iと、後述する制御基板上に取付けられたFET29eから発生する熱を放出する第2のヒートシンク(ヒートシンク)26jおよび第3のヒートシンク(ヒートシンク)26kと、が形成されている。
【0047】
第1のヒートシンク26iは、ブラシホルダ収容部26dの一対の平面部26cのうち、ブラシ20、20が近接して配置される一方の平面部26cの外周面から突出しており、所定間隔を空けて平行に複数形成される。第1のヒートシンク26iは、アーマチュアシャフト14の長手方向に平行になるように形成される。
【0048】
図7に示されるように、本発明では、互いに略90度の角度を隔てて配置された2本のブラシ20,20が、第1のヒートシンク26iに近接した位置に配置されているため、ブラシ20,20から発生した熱は、第1のヒートシンク26iに伝達されて外部に放熱される。また、ブラシ20,20は、第1のヒートシンク26iに対し、制御基板29cから離間した位置に配置されているため、ブラシから発生した熱は、第1のヒートシンク26iに伝達されやすく、制御基板29cには伝達され難い。
【0049】
さらに、
図5Aに示されるようにベース部19cとギヤハウジング26のブラシホルダ当接部26eとの間には、ゲル状の熱伝導部材(第1の熱伝導部材,第2の熱伝導部材)28が配置され、ブラシ20,20から発生した熱が、熱伝導部材28を介して第1のヒートシンク26iに容易に伝達される。
【0050】
ギヤハウジング26の開口には、絶縁材料によって形成された有底状のギヤハウジングカバー29が設けられており、ギヤハウジング26の開口した端面とギヤハウジングカバー29とが当接され、複数本のネジ40によりギヤハウジングカバー29はギヤハウジング26に固定されている。
【0051】
図3A、
図3Bおよび
図4Aに示されるように、ギヤハウジングカバー29は、カプラ部29aを備えており、カプラ部29aには複数のターミナル29fが設けられている。複数のターミナル29fの一端は、車両に設けられたコネクタ部(図示せず)に電気的に接続されており、複数のターミナル29fの他端は、制御基板29cに電気的に接続されている。そして、ターミナル29fの中間部はギヤハウジングカバー29に埋設される。
【0052】
さらに、ギヤハウジングカバー29の底部29hから2本の雄型ターミナル29gが突出しており、ブラシホルダユニット19に配置された雌形ブラシターミナル23と電気的に接続されている。この構成により、車両の電源から供給された電力は、複数のターミナル29f、制御基板29c、雄型ターミナル29g、雌形ブラシターミナル23、ピグテール20a、ブラシ20,20を通って、モータ部10に電流が供給される。
【0053】
図8に示されるように、制御基板29cは、ギヤハウジングカバー29の底部29hに複数本のネジによって取り付けられ、ギヤハウジング26の減速機構収容部26fの内部に収容されている。
【0054】
ギヤハウジングカバーの底部29hに対向する制御基板29cの面上には、回転検出用のホールIC29b,29bと、絶対位置検出用のホールIC29d,29dが設けられている。回転検出用のホールIC29b,29bは、アーマチュア18のアーマチュアシャフト14に設けられたリングマグネット14bに近接して配置され、アーマチュア18の回転状態を検出する。また、絶対位置検出用のホールIC29d,29dは、ウォームホイール部25aに設けられた円環状マグネット25cに近接して配置され、ウォームホイール部25aに一体的に取り付けられているワイパモータ1の出力軸24の回転状態を検出する。
【0055】
そして、制御基板29cは、モータ部10のアーマチュア18の回転状態や、ワイパモータ1の出力軸24の回転状態に基づき、モータ部10のアーマチュア18の回転を制御する。
【0056】
制御基板29cには、FET29eが複数設けられ、FET29eのオンオフ動作により、モータ部10に供給される電流が制御され、モータ部10のアーマチュア18の正方向および逆方向の回転が制御される。さらに、制御基板29c上には、図示しない温度検出部が配置され、制御基板29cの温度が検出される。
【0057】
ワイパモータ1に負荷が加わり、温度検出部により、制御基板29cの温度が、予め定められた温度以上になったと検出された場合には、温度検出部からの予め定められた温度以上になった旨の信号に基づき、制御基板29cは、アーマチュア18の回転数を低くし、さらには、アーマチュア18の回転を停止させて、温度検出部により、ワイパモータ1の制御基板29cの保護が図られる。
【0058】
また、減速機構収容部26fのFET29eに近接した面上には、FET放熱部26mが形成されている。FET放熱部26mは、減速機構収容部26fの底面から開口方向に向けて突出し、FET29eが固定された制御基板29cの裏面に近接して形成される。FET放熱部26mには、ゲル状であって、熱伝導性の高い材料によって形成されたFET放熱部材30が制御基板29cとFET放熱部26mとの隙間を埋めるように取付けられており、FET29eから発生した熱が、制御基板29cおよびFET放熱部材30を介してFET放熱部26mに伝達され、ギヤハウジング26の外周面上に形成された第2のヒートシンク26jおよび第3のヒートシンク26kからギヤハウジングの外部に放熱される。これにより、FET29eの発熱による制御基板29cの温度上昇を抑えることができる。このため、ワイパモータ1をより長く作動させることができる。
【0059】
さらに、減速機構収容部26fに収容されたウォームホイール部25aと制御基板29cとの間には、絶縁性材料からなる制御基板カバー31が、ギヤハウジングカバー29に取り付けられている。制御基板カバー31は、ウォームホイール部25aと制御基板29cとの間に配置されており、減速機構部25に塗布されたグリスが制御基板29cに付着しないように固定されている。
【0060】
ワイパ装置を長時間作動させた場合、ブラシ20、20、モータ部10およびFET29eが熱を発生し、ワイパ装置の連続作動ができなくなるおそれがある。このため、本発明では、さらに、第1のヒートシンク26iに近接して、ギヤハウジング26の外周面上に、第2のヒートシンク26jおよび第3のヒートシンク26kが外部(ギヤハウジングカバー29と反対側)に延出して形成されている。複数のFET29eが、制御基板29cを挟んで第2のヒートシンク26jおよび第3のヒートシンク26kに近接して配置されている。これにより、FET29eから発生した熱が、制御基板29cを介して第2のヒートシンク26jおよび第3のヒートシンク26kからギヤハウジング26の外部に放熱される。
【0061】
以上のように、実施するための形態では、接続線を有するワイパモータに適用した場合につき説明したが、本発明はこれに限らず、小判形状を有するギヤハウジングに収容されるブラシと、ブラシに近接したギヤハウジングの外周面上にヒートシンクを配置する構造を有する減速機構付き制御モータ全般に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
減速機構付き制御モータは、自動車等の車両に搭載されるワイパ装置の駆動源として用いられ、ワイパアームを揺動駆動してウインドシールドに付着した雨水等を払拭するために用いられる。
【符号の説明】
【0063】
1 ワイパモータ(減速機構付き制御モータ)
10 モータ部(電気モータ)
11 マグネット
12 軸受部
13 ヨーク
13a マグネット固定部
13b 湾曲部
13c 平面部
13d ヨーク連結部
13e 固定部
14 アーマチュアシャフト
14a ウォーム部
14b リングマグネット
15 コンミテータ
15a 絶縁円筒部
15b セグメント部(セグメント)
15c コイル接続部
16 アーマチュアコア(コア)
17 巻線部(巻線)
17a コイル
17b 接続線(接続部材)
18 アーマチュア
19 ブラシホルダユニット
19a 湾曲部
19b 平面部
19c ベース部
19c1 開口部
19c2 固定用開口部
19c3 ブラシホルダ固定部
19d ブラシホルダ案内壁
19e ブラシターミナル接続部
20 ブラシ(第1のブラシ,第2のブラシ)
20a ピグテール
21 ブラシホルダ
21a 固定爪
22 チョークコイル
23 雌形ブラシターミナル(ブラシターミナル部)
24 出力軸(減速ギヤ部)
24a ワイパ装置固定部
25 減速機構部(減速機構)
25a ウォームホイール部(減速ギヤ部)
25b 噛合部
25c 円環状マグネット
26 ギヤハウジング
26a ヨーク固定部
26b 湾曲部
26c 平面部
26d ブラシホルダ収容部
26d1 内壁
26d2 底部(壁部)
26e ブラシホルダ当接部(壁部)
26f 減速機構収容部(減速ギヤ部収容部)
26g 出力軸支承部
26h カバー接続部(貫通孔)
26i 第1のヒートシンク
26j 第2のヒートシンク(ヒートシンク)
26k 第3のヒートシンク(ヒートシンク)
26m FET放熱部
28 熱伝導部材(第1の熱伝導部材,第2の熱伝導部材)
29 ギヤハウジングカバー
29a カプラ部
29b ホールIC
29c 制御基板
29d ホールIC
29e FET
29f ターミナル
29g 雄型ターミナル
29h 底部
30 FET放熱部材
31 制御基板カバー
40,41,42 ネジ
O 回転軸心