(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10が接続される体外循環回路が例示される。体外循環回路は、例えば血液透析に用いられる回路であって、動脈側回路50、血液浄化器54、透析装置55、静脈側回路51、及び補液ライン60を備える。なお、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10は、透析治療に用いられる体外循環回路に接続されているが、この形態に限らない。例えば患者から脱血した血液を循環し、浄化治療し得る体外循環回路に、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10が接続されてもよい。例えばアセテートフリーバイオフィルトレーション(AFBF)、持続緩徐式血液濾過療法、血液吸着療法、選択式血球成分除去療法、単純血漿交換療法、二重膜濾過血漿交換療法、血漿吸着療法等で使用される体外循環回路に、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10を接続させてよい。また、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10は、体外循環回路の、後述する動脈側回路50、静脈側回路51、及び補液ライン60に設けることができる。またその他にも、血栓が生じるおそれのある経路上、要するに体外循環回路における、血液または血液成分が流れる経路上に、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10が接続可能である。また加えて、体外循環回路の、血液または血液成分が流れる経路上、生理食塩水が流れる経路上、及びこれらを含めた体外循環回路の流路上に、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10が接続可能となっている。
【0018】
動脈側回路50には、患者の体内から脱血された血液が供給される。動脈側回路50は、上流側から、動脈側穿刺針52及びローラポンプ53を備える。動脈側穿刺針52が患者の血管に穿刺されて動脈側回路50のチューブに血液が送られる(脱血)。
【0019】
ローラポンプ53はチューブの外側から当該チューブをしごくことでチューブ内の血液を血液浄化器54に輸送する。なお、例えばプライミングの際に静脈側回路からプライミング液を回路内に満たす場合もあることから、ローラポンプ53は正逆回転可能であってよい。
【0020】
動脈側穿刺針52からローラポンプ53の間、及び、ローラポンプ53から血液浄化器54の間に、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10が接続されてもよい。エアトラップチャンバ10の構造や機能については後述する。なお、返血時に血液の除泡を確実に行うため、静脈側回路51におけるエアトラップチャンバ10は必須の構成であるのに対して、動脈側回路50に設けられるこれらのエアトラップチャンバ10は任意に設けることができる。
【0021】
動脈側回路50の、ローラポンプ53と血液浄化器54の間に、補液ライン60が設けられる。補液ライン60には、補液バッグ57及びクランプ59が設けられる。また補液バッグ57とクランプ59の間に、エアトラップチャンバ10が設けられる。
【0022】
補液バッグ57には補液である生理食塩水が収容される。例えば体外循環回路のプライミング時に、クランプ59が開放状態にされ補液バッグ57から生理食塩水を体外循環回路に流される。回路内に生理食塩水が満たされることで回路内の気泡が除去される。プライミングが完了するとクランプ59が閉止状態に切り替えられる。
【0023】
また、透析治療の完了後、回路内の血液を患者体内に返血するために、再びクランプ59が開放状態にされ、回路内が補液バッグ57の生理食塩水で満たされる。言い換えると回路内の血液が生理食塩水に置換される。
【0024】
血液浄化器54は動脈側回路50から送られた血液を浄化する。血液浄化器54はいわゆるダイアライザであって、例えば中空糸膜54Aを介して透析液と血液とが物質交換される。血液浄化器54は、複数本の中空糸膜54Aの束(中空糸膜束)がカラム54B内に収容される。
【0025】
カラム54Bは円筒状の収容部材であって、中心軸方向の一端に導入側キャップ54Cが取り付けられ、他端に導出側キャップ54Dが取り付けられる。導入側キャップ54Cには、動脈側回路50の下流末端のコネクタ(図示せず)に接続される血液導入ポート54Eが設けられる。導出側キャップ54Dには、静脈側回路51の上流端のコネクタ(図示せず)に接続される血液導出ポート54Fが設けられる。動脈側回路50から送られる血液は、血液導入ポート54Eから中空糸膜54Aの内部に流れ込む。
【0026】
カラム54Bの、導出側キャップ54D寄りの部分には、透析液導入ポート54Gが設けられる。またカラム54Bの、導入側キャップ54C寄りの部分には、透析液導出ポート54Hが設けられる。透析液導入ポート54Gを介して、透析装置55からカラム54B内に透析液が送られる。中空糸膜54Aを介して透析液と血液とが物質交換され、その結果血液が浄化される。物質交換後の透析液は透析液導出ポート54Hを介して透析装置55に戻される。また浄化後の血液は血液導出ポート54Fを介して静脈側回路51に送られる。
【0027】
静脈側回路51では、静脈側穿刺針56を介して浄化後の血液が患者の体内に返血される。返血の際に血液中の気泡を除去する(除泡)ため、静脈側回路51にエアトラップチャンバ10が設けられる。
【0028】
図2に、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10が例示される。また
図3に、エアトラップチャンバ10の斜視断面図が例示される。エアトラップチャンバ10は、チャンバ本体12及びフィルタ40を備える。
【0029】
なお、透析治療中、エアトラップチャンバ10は紙面上側が上方、紙面下側が下方となる様に立設された状態で使用される。以下では特に説明のない限り、この使用時の立設配置を基準に、各構成の位置や構造を説明する。
【0030】
チャンバ本体12は略円筒形状であってその中心軸C1方向一端(上端)に導入管21及びエア抜き口22が設けられる。また中心軸C1方向他端(下端)に導出口31が設けられる。すなわち、チャンバ本体12内では、導入管21から導出口31まで液体(血液、生理食塩水等)が流下される。なお中心軸C1について、エアトラップチャンバ10の構成部材であるキャップ20及びハウジング30の中心軸がずれている場合には、中心軸C1は、チャンバ本体12の容積の大部分を占めるハウジング30の中心軸C1であってよい。
【0031】
チャンバ本体12は、例えばキャップ20及びハウジング30から構成されてよい。キャップ20及びハウジング30は例えば樹脂を射出成形することにより得られる。キャップ20はチャンバ本体12の上部部材であって、導入管21、エア抜き口22が設けられた断面コ字状の部材である。
【0032】
図4にはキャップ20の斜視断面図が例示される。キャップ20はキャップ本体25、フランジ27、及び導入管21を備える。キャップ本体25は、その上端が上壁25Aにより閉じられた円筒形状であって、下端がフランジ27に接続される。上壁25Aには、エア抜き口22が厚さ方向に貫通される。
【0033】
また上壁25Aからキャップ本体25内部、つまりチャンバ本体12の内部まで、導入管21が延設される。さらに導入管21の下端に導入口23が形成される。このように、導入口23が上壁25Aよりも下方に設けられることで、エアトラップチャンバ10が静脈側回路51に設けられている場合に、チャンバ本体12内の気泡が導入管21から静脈側回路51の上流側に抜けてしまう気泡抜けが防止される。
【0034】
すなわち、例えば導入口23が上壁25Aの下面、つまりエア抜き口22と同じ高さに設けられている場合、チャンバ内の気泡がエア抜き口22に行かずに導入口23に移動してそのまま静脈側回路51の上流側に抜けるおそれがある。そこで本実施形態に係るエアトラップチャンバ10では、導入口23をチャンバの内部まで下げて、静脈側回路51の上流側への気泡の混入を防止している。
【0035】
また、導入口23は、キャップ本体25の内周面26に沿って設けられ、その上、内周面26の周方向にその開口が向けられている。例えば導入管21の下端には下壁21Aが形成され、その側方が切り欠かれて導入口23となっている。例えば導入口23は、内周面26の接線方向に平行に向けられる。また導入口23の切断面21Bは、内周面26の径方向に平行となる様に形成される。
【0036】
導入口23が、キャップ本体25の内周面に、周方向に向けて設けられることで、導入口23から流れ出る液体(血液、生理食塩水等)の流れは、内周面26に沿って流れる旋回流となる。エアトラップチャンバ内10の液体流れが旋回流となることで、特定の流れが形成されない場合と比較して、エアトラップチャンバ10内の液体の滞留が抑制される。
【0037】
キャップ本体25の下端に、フランジ27が接続される。フランジ27の内径はキャップ本体25の内径よりも大きく形成される(拡径される)。
図3を参照して、このフランジ27にハウジング30のフランジ32が挿入される。例えばキャップ20のフランジ27の内周面とハウジング30のフランジ32の外周面との間に接着剤が封入され、キャップ20とハウジング30とが接着される。
【0038】
ハウジング30は略円筒の部材であって、上端にフランジ32が形成され、下端に導出管33が形成される。例えばフランジ32の内径はキャップ本体25(
図4参照)の内径と等しくてよい。
【0039】
ハウジング30の内径が下方で絞られて導出管33に接続される。導出管33の下端には導出口31が形成され、静脈側回路51のチューブに接着等により接続される。また、導出管33を覆うようにしてフィルタ40が設けられる。この詳細な構成については後述する。
【0040】
図5には、透析治療時のエアトラップチャンバ10の様子が例示される。エアトラップチャンバ10は、図中の破線ハッチングで示されるように、チャンバ本体12の内部空間のほぼ全域が液体(血液、生理食塩水等)で満たされている、いわゆるエアレスチャンバであってもよい。
【0041】
このようにチャンバ本体12内が液体で満たされた状態で、導入口23から液体がさらに流入される。上述したように、導入口23はキャップ20の内周面26に、周方向に向けて設けられているため、導入口23から流入した液体の流れは、
図6に例示するように、内周面26に沿った旋回流となる。チャンバ本体12内の液体はそのまま旋回流の状態を保ちながら、フィルタ40を経由して導出口31から静脈側回路51に送られる。
【0042】
なお、旋回流は、その旋回中心ほど流速が低いことから、チャンバ本体12の内周面近傍の流れと比較して、当該内周面から離間した、言い換えると旋回軸上に設けられた、フィルタ40上方の液体は相対的に低速(低流量)となる。後述するように、本実施形態に係るエアトラップチャンバ10では、フィルタ40の開口について、上方の周方向開口幅を下方と比較して拡げている。その結果、当該上方の開口を通過する際の透過抵抗(流通抵抗)が軽減され、低流量(低流速)の液体の滞留が抑制される。
【0043】
図7に、本実施形態に係るフィルタ40が例示される。また
図8に、フィルタ40の斜視断面図が例示される。フィルタ40は、チャンバ本体12内に、導出口31を覆うように設けられ、血液中の血栓等の固形物を捕捉する。またフィルタ40は、例えば樹脂を射出成形することで得られる。フィルタ40の長手方向(軸方向)長さは、導入口23と導出口31との距離未満となるようにフィルタ40が形成される。フィルタ40は、例えば円筒状の本体と当該本体の上端に設けられたドーム状のトップヘッドが設けられ、
図8に例示されるように、内部は中空になっている。また下端は開放される。フィルタ40は、円筒部41、天井部42、及び固定部43を備える。
【0044】
固定部43はフィルタ40の下端部であって、チャンバ本体12の導出管33に嵌め込まれる。例えば
図3に例示するように、導出管33の上端は内径が上方に行くにつれて狭くなるテーパ形状であって、固定部43の外周面はこれに対応したテーパ形状(逆テーパ形状)に形成される。
【0045】
チャンバ本体12にフィルタ40を取り付ける際には、天井部42を先頭にして、導出口31からチャンバ内にフィルタ40を挿入させる。さらに導出管33のテーパ形状の内周面と固定部43のテーパ形状の外周面との間に溶剤(接着剤)が塗布されたチューブ(図示せず)が押し込まれフィルタ40が位置決めされる。この位置決めの際に溶剤によりチューブが導出管33の内周面に接着される。このように、チューブによって、ハウジング30とフィルタ40との間がシールされる。
【0046】
天井部42は、フィルタ40の上端部であって、略ドーム状(半球状)に形成される。つまり、円筒部41の上端、言い換えると、チャンバ本体12の、導出口31側の下端と対向する端部開口が、天井部42により覆われる。
図7〜
図9に示す例では、天井部42に開口が設けられていないが、この形態に限られず、任意の箇所に開口を設けてもよい。
【0047】
円筒部41は、チャンバ本体12の導出口31を囲んでチャンバ本体12の中心軸C1方向に延設される。円筒部41は、中心軸C1方向に延設される第一リブ44、第二リブ45と、周方向に延設されるブレード46を備える。
【0048】
ブレード46は周方向に延設される円環状の部材であって、円筒部41の中心軸に沿って複数段設けられる。例えば
図7、
図8では32段のブレードが設けられる。なお、
図7、
図8に示す例では図の解像度を確保するために32段としたが、より多段構造としてもよい。例えばブレード46は10段以上であってよく、例えば40段に亘ってブレード46を設けてもよい。
【0049】
第一リブ44はフィルタ40の下端である固定部43からフィルタ40の上端である天井部42まで延設される骨格部材である。例えば第一リブ44は円筒部41の中心軸周りに周方向に沿って90°間隔で4個設けられる。
【0050】
第二リブ45は第一リブ44を補強する骨格部材であって、フィルタ40の下端である固定部43からフィルタ40の上端である天井部42に至る手前で終端される。例えば
図7に示す例では、下方から数えてブレード46の全段数(32段)の87.5%(7/8)に当たる28段目に第二リブ45の上端が接続される。言い換えると、上方から数えてブレード46の全段数の12.5%(1/8)に当たる4段目までの開口47が拡幅される。
【0051】
第二リブ45は、例えば円筒部41の中心軸周りに、第一リブ44とは45°ずれた状態で周方向に沿って90°間隔で4個設けられる。また例えば4個の第二リブ45のいずれも、下端から数えて28段目のブレード46に上端が接続される。
【0052】
円筒部41の中心軸方向に沿って延設される第一リブ44、第二リブ45と、周方向に沿って延設される多段のブレード46とが交差することで、フィルタ40の円筒部41に、チャンバ本体12の中心軸C1に沿って複数段の開口47(
図9参照)が形成される。
【0053】
開口47は円筒部41の中心軸方向長さ、つまり目開き高さH1よりも周方向長さ、つまり目開き幅W1が長くなるように形成される。つまり周方向に隣接する第一リブ44,第二リブ45間の距離よりも、高さ方向に隣接するブレード46,46間の距離が短くなるように構成される。
【0054】
このような、いわゆる横長の開口47としたときに、フィルタ40が血液中の固形物を捕捉できる最小径は、開口47の目開き高さH1に依存する。例えば開口47の目開き高さH1は0.2mm以上0.4mm以下であり、好適には0.35mmであってよい。
【0055】
図9を参照して、本実施形態に係るフィルタ40では、第二リブ45が天井部42に至る手前で終端する。その結果、フィルタ40の開口47のうち、天井部42側である上段の開口47、具体的には第二リブ45の終端部より上段の開口47では、その周方向幅W2が、それより下段の開口47の周方向幅W1よりも大きく形成される(W2>W1)。
【0056】
具体的には、第二リブ45が延設される下方領域では、開口47の周方向幅W1は、第一リブ44とこれに周方向に隣接する第二リブ45との間隔で規定される。例えば円筒部41の中心軸を基準にして開き角45°の開口47となる。
【0057】
これに対して、第二リブ45が終端するブレード46より上段の開口47では、その周方向幅W2は、周方向に隣接する第一リブ44,44の間隔で規定される。例えば円筒部41の中心軸を基準にして開き角90°の開口47となる。
【0058】
このように、フィルタ40の上段の開口47の周方向幅W2を、下段の開口47の周方向幅W1と比較して拡げた構造を採ることで、当該上段の開口47に流入する、相対的に低流速の液体(血液及び生理食塩水)の流通抵抗を低減させ、滞留を防止することが可能となる。特に、開口47の拡張方向を、旋回流の流れに沿った周方向とすることで、効果的に流通抵抗を低減可能となる。
【0059】
なお、開口幅W2である複数の開口47の総開口面積A1が、フィルタ40全ての開口47の総面積Aに対して、A1≧0.15Aとなるように、開口47が形成されてよい。
【0060】
図10、
図11には、本実施形態に係るフィルタ40の別例(第一別例及び第二別例)が示される。
図10に示される、第一別例に係るフィルタ40は、第二リブ45の終端位置を、
図7の例よりも下方としている。具体的には、第二リブ45の終端位置を、下方から数えて24段目のブレード46、つまり全段数(32段)に対する75%(3/4)に当たるブレード46に、第二リブ45の上端を接続させている。言い換えると、上方から数えてブレード46の全段数の25%(1/4)に当たる8段目までの開口47が拡幅される。
【0061】
また、
図11に示される、第二別例に係るフィルタ40は、第二リブ45の終端位置を、
図10の第一別例よりも更に下方としている。具体的には、第二リブ45の終端位置を、下方から数えて16段目のブレード46、つまり全段数(32段)に対する50%(1/2)に当たるブレード46に、第二リブ45の上端を接続させている。言い換えると、上方から数えてブレード46の全段数の50%に当たる16段目までの開口47が拡幅される。
【0062】
これら第一別例、第二別例に係るフィルタ40においても、
図7の例と同様に、相対的に上方の開口47の周方向幅が、下方の開口47の周方向幅と比較して拡げられている。したがって、フィルタ40の上方を流れる、相対的に低流速で旋回する液体が当該拡幅された開口47を通過する際の、流通抵抗を軽減可能となる。
【0063】
図12〜
図16を用いて、本実施形態に係るフィルタ40による、流通抵抗の軽減効果について説明する。まず
図12には比較例としてのフィルタ80が例示される。この例では、第二リブ45も第一リブ44と同様に、円筒部41の下端から上端まで、つまり固定部43から天井部42まで延設される。この比較例に係るフィルタ80では、全ての開口47の、周方向幅を含む寸法が均一に形成される。
【0064】
図13〜
図16には、本実施形態に係るフィルタ40及び比較例に係るフィルタ80に対する流体解析結果が例示されている。なお、流体解析に当たり、全てのフィルタの開口47の総面積を等しくしている。例えば全てのフィルタについて、開口47の総面積を115mm
2とした。
【0065】
なお、
図13には、比較例に係るフィルタ80に対する流体解析結果が示される。
図14には、
図7に示されるフィルタ40(上段12.5%拡幅)に対する流体解析結果が示される。
図15には、
図10(第一別例)に示されるフィルタ40(上段25%拡幅)に対する流体解析結果が示される。
図16には、
図11(第二別例)に示されるフィルタ40(上段50%拡幅)に対する流体解析結果が示される。
【0066】
図13〜
図16のいずれの解析結果においても、フィルタ40及びその周辺領域を、流量[m
3/s]別に区画した例が示されている。ここで、流量が多いほど、ピッチの小さいハッチングが掛けられる。さらに図示を明確にするために、最も低流量の領域については、破線のハッチングが掛けられている。
【0067】
図13〜
図16を参照して、最低流量の領域が、フィルタ40,80の上方に分布されていることが理解される。さらに
図13から
図16に掛けて、開口47の周方向幅が拡幅される段数が増加するほど、最低流量の領域が小さくなることが理解される。このように本実施形態では、相対的に低流量となるフィルタ40の上方領域において、開口47の周方向幅をそれより下段の開口47の周方向幅よりも拡げることにより、流通抵抗を低減させ、その結果、エアトラップチャンバ10内の液体の滞留を抑制可能となる。
【0068】
<フィルタの更なる別例>
図17には、本実施形態に係るフィルタ40のまた更なる別例(第三別例)が例示される。この例では、
図7と同様に、第一リブ44及び第二リブ45が、ともに円筒部41の中心軸方向に沿って延設され、また第一リブ44及び第二リブ45が、周方向に沿って複数設けられる。しかしながら、
図7との差異点として、第一リブ44も第二リブ45もともに円筒部41の下端から上端まで延設される。つまり第一リブ44及び第二リブ45が固定部43から天井部42まで延設される。その上で、第一リブ44及び第二リブ45は、フィルタ40の下端(固定部43)から上端(天井部42)に向かうにつれて周方向幅が狭くなる、先細の形状となるように形成される。
【0069】
このような先細の形状となることで、上方に行くほど、隣り合う第一リブ44と第二リブ45との間隔が広くなる。つまり、上段に行くほど、開口47の周方向幅が拡げられる。このような構造によっても、相対的に低流量となるフィルタ40の上方領域において、開口47の周方向幅がそれより下段の開口47の周方向幅よりも拡げられる。したがって、当該上方領域を通過する液体の流通抵抗を低減させ、エアトラップチャンバ10内の液体の滞留を抑制可能となる。
【解決手段】エアトラップチャンバはチャンバ本体及びフィルタ40を備える。チャンバ本体の導入管はチャンバ本体内まで延設され、導入管の端部開口である導入口がチャンバ本体の内周面に、周方向に向けて設けられる。フィルタ40は、チャンバ本体内に設けられ、チャンバ本体の導出口を覆う。フィルタ40は、導出口を囲んでチャンバ本体の中心軸方向に延設される円筒部41と、円筒部41の上端を覆う天井部42とが形成される。フィルタ40の円筒部41には、中心軸方向に沿って複数段に亘って開口47が形成される。フィルタ40の天井部42側である上段の開口47の周方向幅が、導出口側である下段の開口47の周方向幅よりも大きく形成される。