【課題を解決するための手段】
【0006】
前記本発明の課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって解決される。該方法の具体的な実施形態は、各従属請求項に記載の特徴を有する方法に係る。
【0007】
本発明に係るインバータ電力半導体の活性化(制御)方法は、パルス幅変調(PWM)を制御するマイクロプロセッサによって行われ、この場合の前記方法は次の段階(i)乃至(iv)を含む。
(i) 所定の数値範囲、望ましくは0.1乃至1、特に望ましくは0.3乃至1の数値範囲から第1因数(first factor)として数値を生成、算出、及び/又は選択する段階、
(ii) 前記第1因数を基本スイッチング周波数(basic switching frequency)値に掛けて前記パルス幅変調(PWM)のクロック周波数(A)を算出する段階、
(iii) 或る個数(X)のPWMクロック周期が終了されるか、又は、予め算出された前記クロック周波数(A)を有する所定の時間区間(T)が終了された後、新しい因数として前記所定の数値範囲から新たに生成された、算出された、又は選択された数値の何れかに基本スイッチング周波数を掛けて新しいクロック周波数(A)を算出する段階、並びに、
(iv) 前記段階(iii)を複数回繰返す段階であって、この場合、前記所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、又は、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する所定の時間区間(T)が終了された後、前記基本スイッチング周波数に、各々の前記段階(iii)ごとに新たに、生成された、算出された、又は選択された数値の何れかを掛けて新しいクロック周波数を算出する段階。
【0008】
ランダム周波数を備えるPWMを具現するために、クロック周波数は、駆動回路を通じて電力半導体を活性化制御するマイクロプロセッサにおいて上述の過程を通して変更される。
【0009】
本発明の第1の実施形態によれば、前記方法の段階(i)乃至(iv)は各々、下記の段階((i’)乃至(iv’))として実行される。
(i’) 所定の数値範囲から、望ましくは乱数発生器(random number generator)によって或る個数(Y)の乱数(random number)を含むルックアップテーブル(lookup table)を生成し、この時、前記乱数の確率密度(probability density)分布は、前記所定の数値範囲内におけるガウス分布(Gaussian distribution)又は均一分布(uniform distribution)に対応し、及び、前記テーブルの第1乱数を第1因数として選択する段階。
(ii’) 前記基本スイッチング周波数値と前記第1因数を掛けてパルス幅変調のクロック周波数(A)を算出する段階、
(iii’) 前記所定個数(X)のクロック周波数が終了されるか、又は、前記予め算出されたクロック周波数(A)を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、前記テーブル内にある次の乱数を前記基本スイッチング周波数値に掛けて新しいクロック周波数(A)を算出する段階、並びに、
(iv’) 前記所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、前記基本スイッチング周波数値に前記テーブル内で各々の前記段階(iii’)ごとに後続する乱数値を掛けて新しいクロック周波数を算出し、前記テーブルの最後の乱数が到達された段階まで前記段階(iii’)を複数繰返す段階。
【0010】
前記実施形態の望ましい一改善例によれば、前記テーブル内の最後の乱数が到達された後、段階(ii’) 乃至(iv’)が繰り返される。換言すれば、前記段階(iv’)のルーチンが前記テーブルの始めから終わりの乱数に亘って実行された後、即ち、最後の乱数が使われた後、前記テーブルの始めに再び移動されることを意味する。
【0011】
本発明の第2の実施形態によれば、前記方法の段階(i)乃至(iv)は各々、次のような段階(i’)乃至(iv’)として実行される:
(i’) 各々、前記マイクロプロセッサの作動時間の間に、数学的公式によって所定の数値範囲内に制限された数列を算出し、且つ前記数列(R)の第1要素を算出するか、又は、前記マイクロプロセッサにおいて実行される乱数発生器を用いて乱数を発生させる段階、
(ii’) 前記基本スイッチング周波数値に、前記数列(R)から算出された第1要素、又は前記発生された乱数を掛けてパルス幅変調のクロック周波数(A)を算出する段階、
(iii’) 前記所定個数(X)のククロック周期が終了されたか、又は、前記予め算出されたクロック周波数(A)を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、前記基本スイッチング周波数値に、前記数列(R)から算出された次の要素値、又は乱数発生器によって発生された次の乱数値を掛けて新しいクロック周波数(A)を算出する段階、
(iv’) 前記段階(iii’)を複数回繰り返す段階であって、この場合、前記所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する前記所定の決まった時間区間(T)が終了された後、前記基本スイッチング周波数値に、前記段階(iii’)ごとに前記数列(R)の新たな要素、又は新たな乱数値を掛けて新しいクロック周波数を算出する。
【0012】
望ましくは前記数学的公式は、単数又は複数の非線形関数、例えば、SIN、COS、及び/又はTAN、のような非線形関数、ARCSIN、ARCCOS、及び/又はARCTANのような前記SIN、COS、及び/又はTANの逆関数のような非線形関数、並びに/若しくは、log(対数関数)、及び/又はe(指数関数)のような非線形関数を含む。
【0013】
前記数列(R)、及び/又は、その数列の要素、或いは前記乱数の算出は、望ましくは別途のユニット又はパルス幅変調を制御するマイクロプロセッサにおいて実行される。特に、望ましくは、前記数列(R)、及び/又は、その数列の要素、或いは前記乱数の算出は、外部入力変数によって実行される。前記数列(R)、及び/又は、その数列の要素、或いは前記乱数の算出のための入力変数としては任意のプロセス、望ましくは、例えば、熱的抵抗雑音、又は散弾雑音(shot noise)とのような雑音、又は温度変動が利用可能である。しかし前記の乱数算出は外部入力変数に頼ることなく実行可能である。
【0014】
乱数発生器は一般的に乱数列を発生させるプロセスを意味し、基本的に非決定論的(non−deterministic)乱数発生器と決定論的(deterministic)乱数発生器とに区分される。同一の初期条件から相異なる値を供給する非決定論的乱数発生器には、特に物理的乱数発生器が含まれるし、このような乱数発生器は乱数を発生させるために、例えば熱的抵抗雑音のような物理的プロセスを利用する。
決定論的乱数発生器は、擬似乱数(pseudo random number)を発生させるので、一般的に擬似乱数発生器と称される。いわゆる擬似乱数からなる乱数列は、コンピュータによって、熱的抵抗雑音などに頼るよりも非常に簡単に形成可能であり、事実上全ての高級プログラム言語によるプログラムが利用可能である。ソースとしては、例えば、MS−ExcelTM(登録商標)、MATLABTM(登録商標)、及びLinux(登録商標)−Kernelが適合する。
【0015】
本発明の第3実施形態によれば、前記方法の段階(i)乃至(iv)は各々、次のような段階(i’)乃至(iv’)として実行される。
(i’) 任意の与えられた時点において所定の数値範囲内の乱数が使用できるように、乱数発振器(random number oscillator)を援用した、電子回路のクロック周波数を算出するための乱数入力変数を発生させる段階、
(ii’) 前記基本スイッチング周波数値に第1時点における乱数値を掛けてクロック周波数(A)を算出する段階、
(iii’) 前記所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、又は、前記予め算出されたクロック周波数(A)を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、基本スイッチング周波数値に、この前記時点に用意された乱数値を掛けて新しいクロック周波数(A)を算出する段階、並びに、
(iv’) 前記段階((iii’)を複数回反復する方式の段階であって、この場合、前記所定個数(X)のクロック周期が終了されたか、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、基本スイッチング周波数値に、前記段階(iii’)ごとに、この時点に各々用意された新たな乱数値を掛けて新しいクロック周波数が算出される。
【0016】
ランダム入力変数は、また今回も、例えば熱的抵抗雑音、又は散弾雑音のようなランダムな物理的プロセスを処理することにより生成可能である。
【0017】
本発明に係る方法の特に望ましい実施例によれば、干渉周波数として公知となっているか、又は干渉周波数として同定されている特定のクロック周波数は削除されるか又は直ちに中止され、その際、クロック周波数が新しく算出される。この文脈においては、「削除」は、特定の個別的なクロック周波数が算出/呼出し/発生不可能であることを意味する。
このような「削除」は、例えば、抹消(blank_out)されるべき周波数、又はその高調波が万一抹消されないと、システムにおいて、例えば自動車両システムにおいて、強度の干渉(妨害)を惹起する場合に望ましい。
【0018】
例として、50kHz周波数の干渉に対してある誤作動をもって反応する車両部品を仮定する。16.6kHzのPWMクロック周波数の第3高調波は丁度、50kHzの周波数に相応する。車両部品の誤作動を防止しようとするなら、50kHzのクロック周波数を引き起こすことができる16.6kHzの周波数値だけルックアップテーブルから除去することが好ましい。
【0019】
本発明のメリットは、上述のようにインバータクロック周波数のランダム選択、又は擬似ランダム選択によって干渉スペクトラムが平滑化される点にある。干渉スペクトラムの出力密度が同一に維持されるものの、干渉高調波の顕著な呈示、即ち、ピーキングが明確に減少する。このような措置によっては、物理的に設計されるべきインバータ向けEMCフィルタに対する要求が減少できる。その結果、製造上の複雑性、費用及び設置面積が減少できる。
【0020】
前記方法の具現例によれば、この方法は、更に追加段階(v)を含むが、この段階では、アプリケーションモード、又は作動モードに応じて選択されるべきクロック周波数を決定する乱数の確率密度分布が選択され、この場合、このような確率密度間における切替え(switch_over)が行われ得る。
前述した第1実施形態では、このために、例えば相異なる確率密度分布を有する2つのルックアップテーブルが格納されることが好ましい。前述した第2実施形態では、数列(R)及び数列(R)の要素、即ち擬似乱数を算出するための式が変更される。前述した第3の実施形態では、乱数発振器の回路における切替えが想定される。
クロック周波数の確率密度分布は、均一分布とガウス分布との何れかが選ばれ、この場合、クロック周波数の均一分布とガウス分布との間で切替えが可能であることが好ましい。