特許第6571842号(P6571842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571842
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】インバータ内の電力半導体の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20190826BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H02M7/48 F
   H02P27/08
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-121736(P2018-121736)
(22)【出願日】2018年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-13141(P2019-13141A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2018年6月27日
(31)【優先権主張番号】10 2017 114 526.5
(32)【優先日】2017年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルケル, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ザンツェン, グレゴール
(72)【発明者】
【氏名】レンツ, マリオ
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−211847(JP,A)
【文献】 特開2016−046830(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/033657(WO,A1)
【文献】 特開2001−128463(JP,A)
【文献】 特開2001−346393(JP,A)
【文献】 特開2015−154683(JP,A)
【文献】 特開2011−109510(JP,A)
【文献】 特開2001−296935(JP,A)
【文献】 特開2003−175157(JP,A)
【文献】 特開2000−152640(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155013(WO,A1)
【文献】 特開2008−224703(JP,A)
【文献】 特開2003−324944(JP,A)
【文献】 特開2000−184731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/48
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅変調(PWMPulse Width Modulation)を制御するマイクロプロセッサを用いてインバータの電力半導体を活性化する際に発生する電磁妨害波を減少させるための方法であって、
(i所定の数値範囲か第1因数(factor)とし数値を生成、算出又は選択する段階
(ii前記生成、算出、又は選択された第1因数を基本スイッチング周波数値に掛けて前記パルス幅変調(PWM)のクロック周波数算出する段階
(iii)所定個数(X)のクロック周期が終了は前記算出されクロック周波数有する所定の時間区間(T)が終了た後、前記基本スイッチング周波数値に新たな因数として前記所定の数値範囲から新たに生成算出又は選択された数値の何れかを掛けて新たなクロック周波数算出する段階と、
(iv前記所定個数(X)のクロック周期が終了直前の段階(iii)で算出されたクロック周波数を有する所定の時間区間(T)が終了た後、前記段階(iii)毎に前記基本スイッチング周波数値にたな因数として生成算出又は選択された数値の何れかを掛けて新たなクロック周波数算出、前記段階(iii)を複数回繰返すことで、前記パルス幅変調(PWM)のクロック周波数をランダムに変更する段階と、有し、
前記算出されたクロック周波数は、干渉周波数として公知であるか又は干渉周波数として同定されている場合、削除されるか又は直ちに中止され、前記パルス幅変調(PWM)のクロック周波数が新たに算出されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記段階(i)は、(i’所定の数値範囲から、前記所定の数値範囲内でガウス分布(Gaussian distribution)又は均一分布(uniform distribution)に対応する確率密度(probability density)分布を有する所定個数(Y)の乱数(random number)を含むテーブル生成し、前記第1因数として前記テーブル内の第1乱数値を選択る段階を含み
前記段階(ii)は、(ii’前記基本スイッチング周波数値に前記第1乱数値を掛けて前記パルス幅変調(PWM)のクロック周波数算出る段階を含み
前記段階(iii)は、(iii’前記所定個数(X)のクロック周期が終了は前記算出されたクロック周波数有す所定の時間区間(T)が終了た後、前記基本スイッチング周波数値に新たな因数として前記テーブル内からシーケンシャルに選択された次の乱数値を掛けて新たなクロック周波数算出る段階を含み、
前記段階(iv)は、(iv’前記所定個数(X)のクロック周期が終了るか又は直前の段階(iii’)で算出されたクロック周波数を有す所定の時間区間(T)が終了た後、前記段階(iii’)毎に前記基本スイッチング周波数値に新たな因数として前記テーブル内からシーケンシャルに選択された後続する乱数値を掛けて新たなクロック周波数算出、前記テーブルの最後の乱数到達する段階まで前記段階(iii’)複数回繰り返段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テーブル内の最後の乱数到達た後、前記段階(ii(iv繰り返ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記段階(i)は、(i’前記マイクロプロセッサの作動時間の間に、数学的公式により所定の数値範囲内に制限された数列(R)算出、前記数列(R)の第1要素算出前記マイクロプロセッサ実行される乱数発生器を用いて乱数値を成する段階を含み
前記段階(ii)は、(ii’前記基本スイッチング周波数値前記数列(R)から算出された第1要素は前記生成された乱数を掛けて前記パルス幅変調(PWM)のクロック周波数算出る段階を含み
前記段階(iii)は、(iii’前記所定個数(X)のクロック周期が終了するかは前記算出されたクロック周波数有す所定の時間区間(T)が終了た後、前記基本スイッチング周波数値に新たな因数として前記数列(R)から算出された次の要素値又は前記された次の乱数値を掛けて新たなクロック周波数算出る段階を含み、
前記段階(iv)は、(iv’前記所定個数(X)のクロック周期が終了るか又は直前の段階(iii’)で算出されたクロック周波数を有す所定の時間区間(T)が終了た後、前記段階(iii’)毎に前記基本スイッチング周波数値に新たな因数として前記数列(R)の新たな要素は新たな乱数値を掛けて新たなクロック周波数算出、前記段階(iii’)複数回繰り返さ段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記数学的公式は、又は複数個の非線型関数を含ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記数列(R及び/又は前記数列の要素、或いは前記乱数値は、の演算ユニットはパルス幅変調(PWM)を制御するマイクロプロセッサにより算出されことを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記数列(R及び/又は前記数列の要素、或いは前記乱数値は、外部入力手段によって算出されことを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記段階(i)は、(i’)所定の時点所定の数値範囲内の乱数が使用されるよう乱数発振器(random number oscillator)を援用し電子回路のクロック周波数を算出するための乱数値を生成する段階を含み
前記段階(ii)は、(ii’前記基本スイッチング周波数値に第1時点における乱数値を掛けて前記パルス幅変調(PWM)のクロック周波数(A)算出る段階を含み
前記段階(iii)は、(iii’前記所定個数(X)のクロック周期が終了は前記算出されたクロック周波数有す所定の時間区間(T)が終了た後、前記基本スイッチング周波数値に新たな因数としてこの時点に生成された乱数値を掛けて新たなクロック周波数算出る段階を含み、
前記段階(iv)は、(iv’前記所定個数(X)のクロック周期が終了るか又は直前の段階(iii’)で算出されたクロック周波数を有す所定の時間区間(T)が終了た後、前記段階(iii’)毎に前記基本スイッチング周波数値に新たな因数としてこの時点に生成された乱数値を掛けて新たなクロック周波数算出、前記段階(iii’)複数回繰り返段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記クロック周波数を決定する乱数の確率密度分布は、均一分布又はガウス分布から選択されことを特徴とする請求項2、4、又は8の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ内にある電力半導体を活性化するための方法に係り、特に、パルス幅変調(PWM、 Pulse Width Modulation)を制御するマイクロプロセッサを用いてインバータの電力半導体を活性化するための方法に関する。本発明は、電磁気的適合性(EMC)の向上に役立ち、特に車両の電動式冷媒圧縮機に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
車両の電動式冷媒圧縮機においては、インバータとも命名される逆変換装置の助けを借りて多相回転磁界、通常は3相回転磁界が発生される。この過程は、インバータ内の電力半導体を周期的にスイッチングしてバッテリ直流電圧(DC)から得られる正弦波(sine)電流又は正弦波類似(sinusoidal)電流がモータのインダクタンスに印加されることによって行われる。従来技術では、一定のクロック周波数(constant clock frequency)で電力半導体を制御する。電力半導体の制御のためには、出力等級に応じて5乃至30kHzの周波数が選択される。
【0003】
電流の強度及びモータの回転速度は、パルス幅変調を用いて個別の電力半導体のスイッチ−オン時間を制御することで調節される。パルス幅変調(PWM: Pulse Width Modulation)は、一般的に変調類型(modulation type)の一種を表し、このような変調類型では、技術的変数、例えば電圧が2つの値の間で交互に変更され、パルスデューティファクタ、即ち、時間周期内における活性化(パワーオン)時間の持続時間の比率が変更できる。
【0004】
電力半導体のスイッチングは周期時間の逆数、即ち周波数に応じて干渉(interference、妨害)を引起こす。この周波数の波形は基調波と称される。同様に、電力半導体のスイッチングは高調波(harmonics)、即ち基調波周波数の整数倍の周波数における干渉を引起こし、従って電磁気的適合性(compatibility)に著しい影響を与える。前記電磁気的適合性(EMC)は、意図せざる、又は偶発的な電気的又は電磁気的作用を通じて他の装置を妨害せず、又は他の装置から干渉を受けない技術的な装置能力を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基本課題は、電力半導体の活性化制御時にインバータ内から発生するEMC干渉を減少することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記本発明の課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって解決される。該方法の具体的な実施形態は、各従属請求項に記載の特徴を有する方法に係る。
【0007】
本発明に係るインバータ電力半導体の活性化(制御)方法は、パルス幅変調(PWM)を制御するマイクロプロセッサによって行われ、この場合の前記方法は次の段階(i)乃至(iv)を含む。
(i) 所定の数値範囲、望ましくは0.1乃至1、特に望ましくは0.3乃至1の数値範囲から第1因数(first factor)として数値を生成、算出、及び/又は選択する段階、
(ii) 前記第1因数を基本スイッチング周波数(basic switching frequency)値に掛けて前記パルス幅変調(PWM)のクロック周波数(A)を算出する段階、
(iii) 或る個数(X)のPWMクロック周期が終了されるか、又は、予め算出された前記クロック周波数(A)を有する所定の時間区間(T)が終了された後、新しい因数として前記所定の数値範囲から新たに生成された、算出された、又は選択された数値の何れかに基本スイッチング周波数を掛けて新しいクロック周波数(A)を算出する段階、並びに、
(iv) 前記段階(iii)を複数回繰返す段階であって、この場合、前記所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、又は、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する所定の時間区間(T)が終了された後、前記基本スイッチング周波数に、各々の前記段階(iii)ごとに新たに、生成された、算出された、又は選択された数値の何れかを掛けて新しいクロック周波数を算出する段階。
【0008】
ランダム周波数を備えるPWMを具現するために、クロック周波数は、駆動回路を通じて電力半導体を活性化制御するマイクロプロセッサにおいて上述の過程を通して変更される。
【0009】
本発明の第1の実施形態によれば、前記方法の段階(i)乃至(iv)は各々、下記の段階((i’)乃至(iv’))として実行される。
(i’) 所定の数値範囲から、望ましくは乱数発生器(random number generator)によって或る個数(Y)の乱数(random number)を含むルックアップテーブル(lookup table)を生成し、この時、前記乱数の確率密度(probability density)分布は、前記所定の数値範囲内におけるガウス分布(Gaussian distribution)又は均一分布(uniform distribution)に対応し、及び、前記テーブルの第1乱数を第1因数として選択する段階。
(ii’) 前記基本スイッチング周波数値と前記第1因数を掛けてパルス幅変調のクロック周波数(A)を算出する段階、
(iii’) 前記所定個数(X)のクロック周波数が終了されるか、又は、前記予め算出されたクロック周波数(A)を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、前記テーブル内にある次の乱数を前記基本スイッチング周波数値に掛けて新しいクロック周波数(A)を算出する段階、並びに、
(iv’) 前記所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、前記基本スイッチング周波数値に前記テーブル内で各々の前記段階(iii’)ごとに後続する乱数値を掛けて新しいクロック周波数を算出し、前記テーブルの最後の乱数が到達された段階まで前記段階(iii’)を複数繰返す段階。
【0010】
前記実施形態の望ましい一改善例によれば、前記テーブル内の最後の乱数が到達された後、段階(ii’) 乃至(iv’)が繰り返される。換言すれば、前記段階(iv’)のルーチンが前記テーブルの始めから終わりの乱数に亘って実行された後、即ち、最後の乱数が使われた後、前記テーブルの始めに再び移動されることを意味する。
【0011】
本発明の第2の実施形態によれば、前記方法の段階(i)乃至(iv)は各々、次のような段階(i’)乃至(iv’)として実行される:
(i’) 各々、前記マイクロプロセッサの作動時間の間に、数学的公式によって所定の数値範囲内に制限された数列を算出し、且つ前記数列(R)の第1要素を算出するか、又は、前記マイクロプロセッサにおいて実行される乱数発生器を用いて乱数を発生させる段階、
(ii’) 前記基本スイッチング周波数値に、前記数列(R)から算出された第1要素、又は前記発生された乱数を掛けてパルス幅変調のクロック周波数(A)を算出する段階、
(iii’) 前記所定個数(X)のククロック周期が終了されたか、又は、前記予め算出されたクロック周波数(A)を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、前記基本スイッチング周波数値に、前記数列(R)から算出された次の要素値、又は乱数発生器によって発生された次の乱数値を掛けて新しいクロック周波数(A)を算出する段階、
(iv’) 前記段階(iii’)を複数回繰り返す段階であって、この場合、前記所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する前記所定の決まった時間区間(T)が終了された後、前記基本スイッチング周波数値に、前記段階(iii’)ごとに前記数列(R)の新たな要素、又は新たな乱数値を掛けて新しいクロック周波数を算出する。
【0012】
望ましくは前記数学的公式は、単数又は複数の非線形関数、例えば、SIN、COS、及び/又はTAN、のような非線形関数、ARCSIN、ARCCOS、及び/又はARCTANのような前記SIN、COS、及び/又はTANの逆関数のような非線形関数、並びに/若しくは、log(対数関数)、及び/又はe(指数関数)のような非線形関数を含む。
【0013】
前記数列(R)、及び/又は、その数列の要素、或いは前記乱数の算出は、望ましくは別途のユニット又はパルス幅変調を制御するマイクロプロセッサにおいて実行される。特に、望ましくは、前記数列(R)、及び/又は、その数列の要素、或いは前記乱数の算出は、外部入力変数によって実行される。前記数列(R)、及び/又は、その数列の要素、或いは前記乱数の算出のための入力変数としては任意のプロセス、望ましくは、例えば、熱的抵抗雑音、又は散弾雑音(shot noise)とのような雑音、又は温度変動が利用可能である。しかし前記の乱数算出は外部入力変数に頼ることなく実行可能である。
【0014】
乱数発生器は一般的に乱数列を発生させるプロセスを意味し、基本的に非決定論的(non−deterministic)乱数発生器と決定論的(deterministic)乱数発生器とに区分される。同一の初期条件から相異なる値を供給する非決定論的乱数発生器には、特に物理的乱数発生器が含まれるし、このような乱数発生器は乱数を発生させるために、例えば熱的抵抗雑音のような物理的プロセスを利用する。
決定論的乱数発生器は、擬似乱数(pseudo random number)を発生させるので、一般的に擬似乱数発生器と称される。いわゆる擬似乱数からなる乱数列は、コンピュータによって、熱的抵抗雑音などに頼るよりも非常に簡単に形成可能であり、事実上全ての高級プログラム言語によるプログラムが利用可能である。ソースとしては、例えば、MS−ExcelTM(登録商標)、MATLABTM(登録商標)、及びLinux(登録商標)−Kernelが適合する。
【0015】
本発明の第3実施形態によれば、前記方法の段階(i)乃至(iv)は各々、次のような段階(i’)乃至(iv’)として実行される。
(i’) 任意の与えられた時点において所定の数値範囲内の乱数が使用できるように、乱数発振器(random number oscillator)を援用した、電子回路のクロック周波数を算出するための乱数入力変数を発生させる段階、
(ii’) 前記基本スイッチング周波数値に第1時点における乱数値を掛けてクロック周波数(A)を算出する段階、
(iii’) 前記所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、又は、前記予め算出されたクロック周波数(A)を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、基本スイッチング周波数値に、この前記時点に用意された乱数値を掛けて新しいクロック周波数(A)を算出する段階、並びに、
(iv’) 前記段階((iii’)を複数回反復する方式の段階であって、この場合、前記所定個数(X)のクロック周期が終了されたか、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する前記所定の時間区間(T)が終了された後、基本スイッチング周波数値に、前記段階(iii’)ごとに、この時点に各々用意された新たな乱数値を掛けて新しいクロック周波数が算出される。
【0016】
ランダム入力変数は、また今回も、例えば熱的抵抗雑音、又は散弾雑音のようなランダムな物理的プロセスを処理することにより生成可能である。
【0017】
本発明に係る方法の特に望ましい実施例によれば、干渉周波数として公知となっているか、又は干渉周波数として同定されている特定のクロック周波数は削除されるか又は直ちに中止され、その際、クロック周波数が新しく算出される。この文脈においては、「削除」は、特定の個別的なクロック周波数が算出/呼出し/発生不可能であることを意味する。
このような「削除」は、例えば、抹消(blank_out)されるべき周波数、又はその高調波が万一抹消されないと、システムにおいて、例えば自動車両システムにおいて、強度の干渉(妨害)を惹起する場合に望ましい。
【0018】
例として、50kHz周波数の干渉に対してある誤作動をもって反応する車両部品を仮定する。16.6kHzのPWMクロック周波数の第3高調波は丁度、50kHzの周波数に相応する。車両部品の誤作動を防止しようとするなら、50kHzのクロック周波数を引き起こすことができる16.6kHzの周波数値だけルックアップテーブルから除去することが好ましい。
【0019】
本発明のメリットは、上述のようにインバータクロック周波数のランダム選択、又は擬似ランダム選択によって干渉スペクトラムが平滑化される点にある。干渉スペクトラムの出力密度が同一に維持されるものの、干渉高調波の顕著な呈示、即ち、ピーキングが明確に減少する。このような措置によっては、物理的に設計されるべきインバータ向けEMCフィルタに対する要求が減少できる。その結果、製造上の複雑性、費用及び設置面積が減少できる。
【0020】
前記方法の具現例によれば、この方法は、更に追加段階(v)を含むが、この段階では、アプリケーションモード、又は作動モードに応じて選択されるべきクロック周波数を決定する乱数の確率密度分布が選択され、この場合、このような確率密度間における切替え(switch_over)が行われ得る。
前述した第1実施形態では、このために、例えば相異なる確率密度分布を有する2つのルックアップテーブルが格納されることが好ましい。前述した第2実施形態では、数列(R)及び数列(R)の要素、即ち擬似乱数を算出するための式が変更される。前述した第3の実施形態では、乱数発振器の回路における切替えが想定される。
クロック周波数の確率密度分布は、均一分布とガウス分布との何れかが選ばれ、この場合、クロック周波数の均一分布とガウス分布との間で切替えが可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、クロック周波数が或る所定の範囲内からランダムに選択されているので、干渉スペクトラムが平滑化(smoothing_out)される。従来の場合(クロック周波数が固定されている)と比較して、干渉スペクトラムの下方の領域の総面積に当たる干渉スペクトラムの出力密度は同一であるけれども、従来技術において基本スイッチング周波数(実施形態では20kHz)ごとに存在する高調波によるピーキングが本発明では著しく減少する。これは高調波分布の平準化を引き起こす、PWMのクロック周波数の無作為化(randomization)、即ち、PWMのクロック周波数を微小且つランダムに変動させた結果である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の実施例のもう一つの細部事項、特徴及びメリットは、関連図面を参照して行われる実施冷に対する下記の詳細な説明から示される。図面中、
図1】は、従来技術によるインバータのEMC干渉スペクトラムである。
図2】は、時間の進行に伴うクロック周波数分布である。(周波数の確率密度分布が均一分布の場合)
図3】は、本発明による電力半導体を制御する方法の第1実施類型の概略図である。
図4】は、本発明による電力半導体を制御する方法の第2実施類型の概略図で或る。
図5】は、本発明による電力半導体を制御する方法の第3実施類型の概略図である。
図6】は、本発明によるランダムパルス幅変調(PWM)下におけるインバータのEMC干渉スペクトラムである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、20kHzのクロック周波数でスイッチングするインバータのEMC測定記録を図示するが、より正確に言えば、固定設定されたクロック周波数を有する電動式エアコン圧縮機の典型的なEMC測定記録を図示する。この場合、100kHz乃至1MHz範囲でクロック周波数の干渉高調波が明確に表れる。あらゆる高調波の周波数はクロック周波数の倍数である。EMC干渉レベル表示はデシベルマイクロボルト(dBμV)単位で行われる。
【0024】
従来技術によれば、クロック周波数は、例えば20kHzのクロック周波数値で一定である。これに対して、ランダムモードにおいて、即ち本発明に沿って使われるランダムパルス幅変調(PWM)が使われる場合、クロック周波数は短い時間間隔で、例えば50μs毎に基本周波数の百分率偏差の特定の変動範囲内で変動される。図2に図示された実施例では、クロック周波数がクロック周波数の下限界の16kHz乃至クロック周波数上限線の20kHz範囲内で変動され、この場合、平均クロック周波数は18kHzで、最大百分率偏差は20%に達する。図2に図示されたように、クロック周波数は時間に沿って分布し、この場合には、均一分布が表れる。
【0025】
ランダムPWMを具現するために、電力半導体を制御するマイクロプロセッサにおいてPWMのクロック周波数は、ランダムに、又は擬似ランダムに、変更される。このような場合、様々な実施類型が与えられる。
【0026】
図3に図示された第1実施類型によれば、
第1段階(i’)で、まず、或る個数(Y)の乱数(Y=6の場合、乱数値1乃至乱数値6)を有するルックアップテーブルが所定の数値の範囲から、望ましくは、乱数発生器によって、そして特に望ましくは0.5乃至1の数値範囲内で生成される。乱数確率密度は、所定の数値範囲内でガウス分布、又は均一分布に相応する。テーブル内の第1乱数が第1因数として選ばれ、そして
第2段階(ii’)で基本スイッチング周波数値、例えば20kHzの基本スイッチング周波数値に前記第1因数を掛けてパルス幅変調(PWM)のクロック周波数(A)が算出される。所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、又は予め算出されたクロック周波数(A)を有する所定の時間区間(T)が終了されれば、後続して、
第3段階(iii’)で基本スイッチング周波数値にテーブルの次の乱数を掛けて新しいクロック周波数(A)が算出される。
追加段階(iv’)は、テーブル内の最後の乱数に至るまで第3段階(iii’)の反復を含む。言い換えれば、所定個数(Xの)クロック周期が終了されるか、各々直前の段階で(テーブル内のN番目の乱数Nを用いたものとする)予め算出されたクロック周波数を有する所定の時間区間(T)が終了されれば、各々基本スイッチング周波数値にテーブル内で各々の段落ごとに後続する乱数(乱数(N+1))値を掛けて新しいクロック周波数が算出される。テーブル内の乱数が最後の乱数に達すれば、先立って言及した段階(ii’)乃至(iv’)が繰り返される。即ち、テーブルが初めから終わりまで実行されて最後の乱数が使われた後、またテーブルの初めに戻って、第1乱数により後続クロック周波数が再び算出される。
【0027】
また、周波数を決定する乱数の確率密度分布と関しては、アプリケーションモード、又は作動モードに応じて選択が可能である。例えば、切替え(switch_over)は、クロック周波数を算出するための因数に関して均一分布とガウス分布との間で可能である。
【0028】
図4に概略的に図示された第2実施類型によれば、第1段階でマイクロプロセッサの作動時間の間に乱数が算出される。この場合、第1段階(i’)では、所定の数値範囲内に限られた数列Rが数学的公式によって算出され、このような数列の要素として乱数が決定される。乱数はマイクロプロセッサ内に具現された乱数発生器の助けを借りても算出できる。数列、及び/又は、該数列の要素、又は乱数は、図示された実施例によれば、外部入力変数から算出される。
【0029】
その次に、第2段階(ii’)では、基本スイッチング周波数値に数列(R)から算出された第1要素、又は乱数発生器によって発生された第1乱数を掛けてクロック周波数(A)が算出され、該クロック周波数を用いてパルス幅変調が出力される。
【0030】
所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、又は、予め算出されたクロック周波数(A)を有する所定の時間区間(T)が終了された後、基本スイッチング周波数値に数列(R)から算出された次の要素値、又は乱数発生器によって発生された次の乱数値を掛けて新しいクロック周波数(A)が算出され、そのクロック周波数によってパルス幅変調(PWM)が出力される。この過程は任意の回数だけ繰り返される。即ち、所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する所定の時間区間(T)が終了されれば、基本スイッチング周波数値に新たな数列(R)要素、又は新たな乱数値を掛けて新しいクロック周波数が算出され、前記クロック周波数を用いてパルス幅変調(PWM)が出力される。
【0031】
図5に概略的に図示された第3実施類型によれば、電子回路でクロック周波数を算出するためにランダム入力変数が乱数発生器の助けを借りて生成され、その結果、任意の所与の時点に所定の数値範囲内の乱数が用意される。従って、第1時点では、パルス幅変調のクロック周波数(A)は、基本スイッチング周波数値に該乱数値を掛けて算出される。このクロック周波数(A)を用いてパルス幅変調が出力される。
【0032】
所定個数(X)のクロック周期が終了されるか、又は、予め算出されたクロック周波数(A)を有する所定の時間区間(T)が終了された後、基本スイッチング周波数値に、この時点に用意された乱数値を掛けて新しいクロック周波数(A)が算出されて、該クロック周波数を用いてパルス幅変調(PWM)が出力される。
【0033】
上述の過程は、引き続き任意の回数だけ繰り返される。即ち、所定の個数(X)のクロック周期が終了されるか、各々直前の段階で予め算出されたクロック周波数を有する所定の時間区間(T)が終了された後、基本スイッチング周波数値に、この時点に各々用意された新たな乱数値を掛けて新しいクロック周波数が算出され、そのクロック周波数によってパルス幅変調が出力される。
【0034】
本発明のメリットは、ランダムな、クロック周波数の選択を介して干渉スペクトラムが平滑化(smoothing_out)される点にある。曲線の下方の領域を通じて決定可能な干渉スペクトラムの出力密度は同一に維持されているけれども、図1と比べて図6が図示するように、図1における干渉高調波の数と顕著な形態(図1において、20kHzごとに存在する高調波のピーキング波形を指す)が図6では著しく減少する。これは高調波分布の平準化を引き起こす、PWMのクロック周波数の無作為化(randomization)、即ち、PWMのクロック周波数の微小且つランダムな変動、の結果である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6