【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、本発明は、電気推進システムの温度を制御する方法に関し、その電気推進システムは、放電路と、アノードと、カソードと、放電路内に推進剤ガスを注入するための注入システムと、放電路内に磁場を生成するための少なくとも1つの磁気巻線を含む磁気回路と、を備える。本方法は、
− 電気推進システムの熱基準点における温度を特定するステップと、
− 電気推進システムの停止フェーズ中に、特定された温度が所定の最低温度未満であるときに、磁気回路に電流を印加することよるジュール効果によって電気推進システムを加熱するステップと、を含む。
【0014】
熱基準点とは、特に特性および/または認定の地上試験の際に、温度センサを設置することが可能であるとともに、その温度により電気推進システム内部の熱挙動についての信頼性の高いイメージが得られるような、電気推進システムの特定の物理領域または物理点を指す。
【0015】
この熱基準点は、電気推進システムの内部または電気推進システムの外面の領域に位置し得る。
【0016】
この熱基準点が、電気推進システムと電気推進システムの支持構造との間の連結部に位置している場合、その温度を把握することにより、地上試験または飛行試験において、電気推進システムとその支持構造との間で交換される熱流を特徴付けることも可能となる。この場合、この熱基準点の温度を制御することは、これにより、熱的観点から、電気推進システムおよびこれに連結された衛星領域の両方の正常な機能を同時に確保するのに十分である。
【0017】
加熱ステップにおいて印加される電流は、好ましくは、電気推進システムの推進効果を生じさせるために磁気回路に印加される必要がある電流の強度よりも低強度である。
【0018】
このようなプロセスの後の、電気推進システムの温度制御は、推進システム内部の部品によって、すなわち磁気回路によって行う。
【0019】
これにより、外部再加熱装置を付設する必要なく、電気推進システムの最適な熱制御が可能である。
【0020】
本発明による方法は、効果的には、推進効果を生じさせるために磁気巻線を用いる任意のタイプの電気推進システムにおいて、特にホール効果推進システムにおいて、実施される。
【0021】
具体的な実施形態において、本方法は、さらに以下の特徴の1つ以上を、単独で、または技術的に可能な任意の組み合わせで、備えることができる。
【0022】
好ましい実施形態では、電気推進システムの運転フェーズ中に、特定された温度が所定の最高温度を超えているときに、推進システムを、その冷却を可能とするために一時停止させる。
【0023】
好ましい実施形態では、温度を特定するステップは、電気推進システムの内部または外面の領域において実施し、
− 磁気回路に電流を印加するサブステップと、
− 電気推進システムの電気的パラメータを特定するサブステップであって、磁気回路の電圧を測定するサブステップと、磁気回路に流れる電流の強度を特定するサブステップと、を含むサブステップと、
− 特定された電気的パラメータに基づいて、予め構築されたモデルにより温度を特定するサブステップと、を含む。
【0024】
予め構築されたモデルとは、本発明における意味の範囲内では、電気的パラメータ(強度、電圧)から熱基準点の温度を推定することを可能とする、任意のグラフ、任意のテーブル、または任意の式を指す。
【0025】
従って、このような予め構築されたモデルは、非限定的な例として、対応テーブル、データベース、計算盤、数値モデル、解析モデル、テーブル形式の数値関数、解析関数、半解析モデルまたは準数値モデルのような、様々な形式で提示することができる。
【0026】
予め構築されたモデルによって、電気的パラメータ(強度、電圧)を電気推進システム内の温度に1対1で対応付けることが可能である。
【0027】
一例の実施形態では、一方で電圧と電流強度との比率値と、他方で熱基準点における対応する温度と、を関係付ける対応テーブルを用いる。
【0028】
磁気回路の電流の印加は、PPU(「Power Processing Unit:電源ユニット」)と呼ばれる電気推進システムの電力供給ユニットによって、例えば電流源を介し、電気配線を通して行う。
【0029】
電圧の測定は、少なくとも1つの磁気巻線の両端子で行うか、または電気推進システムの電力供給ユニットにおいて遠隔で行うか、いずれかとすることができる。
【0030】
磁気回路に流れる電流を特定するための一実施形態では、電流強度を測定する。この測定は、少なくとも1つの磁気巻線の両端子で行うか、または電気推進システムの電力供給ユニットにおいて遠隔で行うか、いずれかとすることができる。
【0031】
磁気回路に流れる電流を特定するための他の一実施形態では、電流制御の精度に応じて、場合によっては数値モデルで再調整された、電流源による印加電流の強度値を用いる。これは、すなわち、電流の制御値を単に読み取ることである。
【0032】
このように、本方法は、熱測定自体のための専用ではない部品に電流を流すことを提案する。
【0033】
このようにして、特に電気推進システムにおいて推進効果を生じさせることを可能とするための磁場を生成するために電気推進システムに元々設けられている磁気回路の電気的測定から、電気推進システムの熱基準点における温度を取得する。
【0034】
従って、極めて効果的に、電気推進システムの熱基準点における温度を特定するために、電気推進システムの外部のサーミスタ式または熱電対式の部品は必要としない。
【0035】
このように、電気推進システムの温度を特定するステップは、電気推進システムとこれを衛星に連結する電力供給ユニットとの間のあらゆるタイプの電気配線アーキテクチャの場合に総じて実現可能である。
【0036】
電気的パラメータと電気推進システムの熱基準点における温度との関係付けを可能とする予め構築されたモデルは、特に電気推進システムのタイプに応じて、予め決定されたものである。
【0037】
予め構築されたモデルにより、電気推進システムに関わる部品および電気推進システム周辺の部品に関するいくつかの不確かさを、簡単かつ効果的に解消することが可能となる。従って、同じ衛星に、様々に異なるアーキテクチャを有する様々なタイプの電気推進システムを搭載することが可能であるとともに、各タイプの推進システムに対して特定の予め構築されたモデルを用いつつ、温度を特定する方法は同じに維持することが可能である。
【0038】
あるいは、既に構築されているモデルに、電気推進システムとこれを衛星に連結する電力供給ユニットとの間の電気配線アーキテクチャの影響を組み込むことができる。
【0039】
このようにして、電気推進システムの極めて高温が電気推進システムの正常運転のための推奨最高温度を超えないように制御される場合である電気推進システムの運転フェーズ中、または温度が所定の最低温度を下回らないように制御される場合である電気推進システムの停止フェーズ中のいずれかにおいて、推進システムの熱基準点における温度を特定するステップにより、その点が推進システム内にあるときに、電気推進システムの心臓部における温度を正確に特定することが、特に電圧および電流強度の測定値がPPUにおいて取得される場合に電気推進システムから遠隔で正確に特定することが、効果的に可能となる。
【0040】
具体的な実施形態では、温度を特定するサブステップは、測定された電圧値および特定された電流強度値から、少なくとも1つの磁気巻線の電気抵抗を計算するサブステップを含む。計算された電気抵抗値に対して、予め構築されたモデルにより、対応する温度値を関係付けることが可能である。
【0041】
少なくとも1つの磁気巻線は、その抵抗が温度に応じて変化するコイル状の導線で形成されているので、本方法は、効果的に、この特性を利用して、電気推進システムの熱基準点における温度を特定する。
【0042】
具体的な実施形態では、温度を特定するサブステップは、測定された電圧値および特定された電流強度値から、磁気回路の構成材料の電気抵抗率を計算するサブステップを含む。計算された電気抵抗率値に対して、モデルにより、対応する温度値を関係付けることが可能である。
【0043】
具体的な実施形態では、電気推進システムの運転中に、温度を特定するために印加される電流は、電気推進システムの推進効果を生じさせることを可能とするように適応させて磁気回路に印加される電流である。
【0044】
具体的な実施形態では、電気推進システムの停止フェーズ中に、温度を特定するために印加される電流は、一定または可変である。それは、例えば、電気推進システムの推進効果を生じさせることを可能とするように適応させて磁気回路に印加される電流の強度よりも低強度であり得る。
【0045】
一例の実施形態では、磁気回路への電流の印加は、磁場を生成するために使用される電流源とは別個の電流源によって行う。
【0046】
好ましい一例の実施形態では、少なくとも1つの磁気巻線への電流の印加は、磁場を生成するために使用される電流源によって行う。電力消費を抑えるために、より低強度レベルの電流を印加することができる。
【0047】
このような実施形態は、本方法を、効果的に、電気推進システムの動作範囲外で用いることが可能であることを示している。
【0048】
具体的な実施形態では、温度を特定するステップは、例えばサーミスタ式または熱電対式の温度測定装置のような任意の手段によって実施することができる。
【0049】
例示的な実施形態では、温度の特定は、電気推進システムの外面の領域に位置する熱基準点において行う。このようにして、測定を、特にサーミスタ式または熱電対式の温度測定装置である任意の手段によって実施することができる。
【0050】
本発明は、単一の図面を参照して、非限定的な例として提示される以下の説明を読解することで、より良く理解されるであろう。