【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明を詳述する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例における部、%は、断りのない限り、質量基準である。また、塗布量及び付与量を示す値は、断りのない限り、乾燥後の質量基準である。
【0051】
(変法ろ水度)
各実施例及び比較例において、叩解した天然パルプのカナダ変法ろ水度(国際公開第2002/099193号パンフレットに記載されているカナダ変法ろ水度。以下、「変法ろ水度」と記す場合がある)を測定した。
【0052】
変法ろ水度:パルプを絶乾で0.5g採取し、ふるい板を80メッシュの平織りブロンズワイヤーにした以外は、JIS P 8121−2:2012のカナダ標準ろ水度試験方法に準拠して測定した値。
【0053】
(吸湿剤付与量及び難燃剤付与量)
「吸湿剤付与量」及び「難燃剤付与量」は、「付与後の坪量−付与前の坪量」で算出した値である。
【0054】
(吸湿剤付与率)
「吸湿剤付与率」は、<式A>を使用して計算した。
【0055】
<式A>
吸湿剤付与率(%)=吸湿剤付与量/原紙坪量×100
【0056】
(原紙の厚さ、密度、全熱交換素子用紙の厚さ)
原紙の厚さ、密度は、JIS P 8118:2014「紙及び板紙−厚さ、密度及び比容積の試験方法−Paper and board−Determination of thickness,density and specific volume」に準拠して、温度23℃、相対湿度50%下での厚さ、密度を測定した値である。
【0057】
実施例1−1
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量30g/m
2の原紙を抄紙し、原紙の密度が0.82g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行った。原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを4.9g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は18%であった。
【0058】
実施例1−2
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量20g/m
2の原紙を抄紙し、原紙の密度が0.79g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行った。原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを4.0g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は20%であった。
【0059】
実施例1−3
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量40g/m
2の原紙を抄紙し、原紙の密度が0.90g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行った。原紙に、含浸加工機により、難燃剤としてスルファミン酸グアニジンを5.8g/m
2付与させ、さらに、吸湿剤として塩化リチウムを4.2g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は17%であった。
【0060】
比較例1−1
広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を8:3に混合したパルプを濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量30g/m
2の原紙を抄紙し、原紙の密度が0.72g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行った。原紙に、含浸加工機により、難燃剤としてスルファミン酸グアニジンを6.9g/m
2付与させ、さらに、吸湿剤として塩化リチウムを4.2g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は8%であった。
【0061】
比較例1−2
広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を8:3に混合したパルプを濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量40g/m
2の原紙を抄紙し、原紙の密度が0.84g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行った。原紙に、含浸加工機により、難燃剤としてスルファミン酸グアニジンを5.8g/m
2付与させ、さらに、吸湿剤として塩化リチウムを5.0g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は7%であった。
【0062】
比較例1−3
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量30g/m
2の原紙を抄紙し、原紙の密度が1.06g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行った。原紙に、含浸加工機により、難燃剤としてスルファミン酸グアニジンを4.2g/m
2付与させ、さらに、吸湿剤として塩化リチウムを3.2g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は9%であった。
【0063】
上記例で製造した全熱交換素子用紙について、下記の評価方法により評価した。その結果をまとめて表1に示す。
【0064】
(トルエン透過度)
揮発性物質の透過性試験として、JIS Z0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法) Testing Methods for Determination of the Water Vapour Transmission Rate of Moisture−Proof Packaging Materials (Dish Method)」を参考に、下記の方法で測定したトルエン透過度によって、全熱交換素子用紙の気体遮蔽性を評価した。
【0065】
ステンレスカップに約200gの富士フイルム和光純薬(株)製、試薬特級トルエンを入れ、直径70mmの円盤状に全熱交換素子用紙を打ち抜き加工して得られた検体で覆い、内径58mmのリングで挟み、密閉する。温度23℃、相対湿度50%の条件で放置し、30分毎に質量減少を測定する。質量減少の速さが一定となった時点で質量M1を測定し、さらに、30分経過後に質量M2を測定し、<式B>にて24時間値に換算してトルエン透過度を求めた。
【0066】
<式B>
トルエン透過度(g/m
2・24h)=トルエン透過量/ろ過面積×24×60/30
【0067】
トルエン透過量(g)=質量M1−質量M2
ろ過面積=26.42cm
2
【0068】
【表1】
【0069】
<評価>
実施例1−1〜1−3は、叩解した天然パルプを含む原紙と、該原紙に付与させてなる吸湿剤とを含有する全熱交換素子用紙において、叩解した天然パルプにおける繊維長0.05mm以下のファイン分比率が10〜25%である全熱交換素子用紙であり、トルエン透過度は25g/m
2・24h以下であった。比較例1−1〜1−3では、叩解した天然パルプにおけるファイン分比率が10%未満であり、トルエン透過度は500g/m
2・24h以上と、顕著に高く、気体遮蔽性が低いことが判る。
【0070】
実施例2−1
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量30g/m
2の原紙を抄紙した。マシンカレンダー処理を行った結果、原紙の密度は0.81g/cm
3であった。原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを4.7g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は18%で、フィブリル化率は4.4%であった。
【0071】
実施例2−2
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)を濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量20g/m
2の原紙を抄紙した。マシンカレンダー処理を行った結果、原紙の密度は0.77g/cm
3であった。原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを3.8g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は20%で、フィブリル化率は4.0%であった。
【0072】
【表2】
【0073】
<評価>
実施例1−1及び1−2並びに実施例2−1及び2−2は、叩解した天然パルプを含む原紙と、該原紙に付与させてなる吸湿剤とを含有する全熱交換素子用紙において、叩解した天然パルプにおける繊維長0.05mm以下のファイン分比率が10〜25%である全熱交換素子用紙である。実施例1−1及び1−2において、叩解した天然パルプのフィブリル化率は4.5%以上であり、トルエン透過度は25g/m
2・24h以下であるが、実施例2−1及び2−2において、叩解した天然パルプのフィブリル化率は4.5%未満であり、トルエン透過度は100g/m
2・24h以上であり、実施例1−1及び1−2と比べて高かった。叩解した天然パルプのフィブリル化率が4.5%以上の方が、全熱交換素子用紙の気体遮蔽性が高いことが判る。
【0074】
実施例3−1
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)と広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)を1:2の比率とした天然パルプを濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量30g/m
2の原紙を抄紙した。マシンカレンダー処理を行った結果、原紙の密度は0.74g/cm
3であった。原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを4.7g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は10%で、フィブリル化率は4.8%であった。
【0075】
実施例3−2
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)と広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)を1:2の比率とした天然パルプを濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量50g/m
2の原紙を抄紙した。マシンカレンダー処理を行った結果、原紙の密度は0.78g/cm
3であった。原紙に、含浸加工機により、難燃剤としてスルファミン酸グアニジンを5.8g/m
2付与させ、さらに、吸湿剤として塩化リチウムを5.0g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は10%で、フィブリル化率は4.8%であった。
【0076】
実施例3−3
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)と広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)を1:1の比率とした天然パルプを濃度4.5%で離解した後、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、長網抄紙機により、坪量40g/m
2の原紙を抄紙した。マシンカレンダー処理を行った結果、原紙の密度は0.76g/cm
3であった。原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを5.2g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。叩解したパルプのファイン分比率は14%で、フィブリル化率は5.6%であった。
【0077】
(裂断長(縦))
全熱交換素子用紙の強度試験として、JIS P8113:1998「紙及び板紙−引張特性の試験方法 PAPER and board−Determination of tensile properties」に記載されている裂断長を測定した。なお、抄紙機の流れ方向(縦方向)の裂断長を測定した。裂断長は、<式C>によって算出される。
【0078】
<式C>
裂断長(縦)(km)=1/9.8 × 引張強さ(kN/m)/坪量(g/m
2) × 10
3
【0079】
【表3】
【0080】
<評価>
実施例1−1及び1−3並びに実施例3−1、3−2及び3−3は、叩解した天然パルプを含む原紙と、該原紙に付与させてなる吸湿剤とを含有する全熱交換素子用紙において、叩解した天然パルプにおける繊維長0.05mm以下のファイン分比率が10〜25%である全熱交換素子用紙である。また、叩解した天然パルプのフィブリル化率は4.5%以上である。実施例1−1及び1−3において、全パルプに占めるNBKPの質量比率(NBKP比率)は100%であり、全熱交換素子用紙の裂断長(縦)は2.0km以上である。一方、実施例3−1〜3−3において、NBKP比率を33〜50%としても、裂断長(縦)が2.0km未満と、全熱交換素子用紙の強度が若干低下するものの、トルエン透過度は500g/m
2・24h未満であり、良好な気体遮蔽性が得られることが判る。
【0081】
比較例1−4
実施例1−1と同じ条件で抄紙した原紙に、サイズプレスにて、酸化澱粉の1%糊液を0.1g/m
2付与させ、密度が0.82g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行い、全熱交換素子用紙を得た。
【0082】
比較例1−5
実施例1−1と同じ条件で抄紙した原紙に、含浸加工機にて難燃剤としてスルファミン酸グアニジンを5.3g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0083】
比較例1−6
実施例1−2と同じ条件で抄紙した原紙に、サイズプレスにて酸化澱粉の0.8%糊液とアクリロニトリル系表面サイズ剤0.2%の混合液を0.1g/m
2付与させ、密度が0.79g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行い、全熱交換素子用紙を得た。
【0084】
比較例1−7
実施例1−3と同じ条件で抄紙した原紙に、含浸加工機にて難燃剤としてスルファミン酸グアニジンを5.3g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0085】
【表4】
【0086】
(透湿度)
下記条件を変更した以外は、JIS Z0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法) Testing Methods for Determination of the Water Vapour Transmission Rate of Moisture−Proof Packaging Materials (Dish Method)」に準拠して測定した透湿度によって、全熱交換素子用紙の潜熱(湿度)交換性を評価した。
【0087】
JIS B8628:2003「全熱交換器 Air to air heat exchanger」における素子性能の測定条件は、暖房時、室内:乾球20℃、湿球14℃(相対湿度48%)、室外:乾球5℃、湿球2℃(相対湿度53%)冷房時、室内:乾球27℃、湿球20℃(相対湿度50%)、室外:乾球35℃、湿球29℃(相対湿度63%)であり、温度5〜35℃、相対湿度48〜63%の範囲であることから、温度23℃、相対湿度50%の条件に変更した。また、短時間での熱交換性能を評価するため、30分後に質量を測定して、24時間値に換算して透湿度を求めた。
【0088】
<評価>
実施例1−1と比較例1−4及び比較例1−5との比較、実施例1−2と比較例1−6との比較、及び、実施例1−3と比較例1−7との比較より、叩解した天然パルプのファイン分比率が10〜25%であっても、吸湿剤を付与しないと、充分な透湿度が得られないことが判る。つまり、湿度交換性の優れた全熱交換素子用紙とするには、吸湿剤の付与が必須である。
【0089】
上記の結果より、気体遮蔽性に優れ、かつ、湿度交換性の優れた全熱交換素子用紙とするには、ファイン分比率が10〜25%である叩解した天然パルプを含む原紙と、当該原紙に吸湿剤を付与することが必要であることが判る。
【0090】
実施例1−4
実施例1−1と同じ条件で抄紙した原紙に、含浸加工機にて難燃剤としてスルファミン酸グアニジンを5.1g/m
2付与させ、さらに、吸湿剤として塩化リチウムを5.0g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0091】
実施例1−5
実施例1−1と同じ条件で抄紙した原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを5.0g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0092】
実施例1−6
実施例1−1と同じ条件で抄紙した原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを2.5g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0093】
実施例1−7
実施例1−1と同じ条件で抄紙した原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを1.5g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0094】
実施例1−8
実施例1−1と同じ条件で抄紙した原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムと塩化カルシウム(質量比1:1)を6.0g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0095】
実施例1−9
実施例1−1と同じ条件で抄紙した原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムと塩化カルシウム(質量比1:1)を7.6g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0096】
【表5】
【0097】
(露浮き)
全熱交換素子用紙の25mm巾×250mmサンプルを、温度25℃、相対湿度90%の条件下に放置し、紙面の露の有無、及び露が垂れているかどうかを確認した。
【0098】
<評価>
【0099】
実施例1−1、1−4〜1−9、比較例1−4は、叩解した天然パルプを含む原紙を含有する全熱交換素子用紙であり、叩解した天然パルプにおけるファイン分比率が10〜25%である。吸湿剤を含有していない比較例1−4の全熱交換素子用紙と比べて、実施例1−1、1−4〜1−9の全熱交換素子用紙は、吸湿剤を含有しているため、高い透湿度となっている。
【0100】
実施例1−1、1−4〜1−7を比較すると、吸湿剤付与率が多くなるに従い、透湿度が高くなることが判る。特に、吸湿剤付与率が10%以上である実施例1−1、1−4及び1−5では、高い透湿度となり、高い湿度交換効率を得られることが判る。
【0101】
実施例1−8及び1−9の結果から、吸湿剤として塩化カルシウムと塩化リチウムを用いた場合に、吸湿剤付与率をさらに上げて、20%とすると、紙表面に露が浮き、さらに、25%になると、液が垂れる露垂れ現象が発生する。露垂れが発生するような全熱交換素子用紙を使用した場合、全熱交換素子の内部で結露が発生し、流路の閉塞や、流れ出した液による全熱交換器の腐食や電気ショート等の故障が発生する場合がある。そのため、吸湿剤付与率には好ましい範囲が存在し、その範囲は用いる吸湿剤の種類によっても異なるものの、概ね、24%以下が好ましく、より好ましくは20%以下である。
【0102】
実施例1−10
実施例1−2と同じ条件で、坪量15g/m
2の原紙を抄紙し、密度0.77g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行った。当該紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを3.0g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0103】
実施例1−11
実施例1−3と同じ条件で、坪量50g/m
2の原紙を抄紙し、密度0.92g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行った。当該紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを5.0g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0104】
実施例1−12
実施例1−11と同じ条件で、抄紙した原紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化カルシウムを7.6g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0105】
実施例1−13
実施例1−2と同じ条件で、坪量12g/m
2の原紙を抄紙し、密度0.75g/cm
3になるようにマシンカレンダー処理を行った。当該紙に、含浸加工機により、吸湿剤として塩化リチウムを2.4g/m
2付与させ、全熱交換素子用紙を得た。
【0106】
【表6】
【0107】
<評価>
実施例1−1〜1−3、実施例1−10〜1−13は、叩解した天然パルプを含む原紙を含有する全熱交換素子用紙であり、叩解した天然パルプにおけるファイン分比率が10〜25%である。また、原紙に吸湿剤が付与されていて、吸湿剤付与率が10〜20%の全熱交換素子用紙である。しかし、原紙坪量が異なるため、全熱交換素子用紙の厚さ(用紙厚さ)も異なる。これらを比較した結果、用紙厚さとトルエン透過度(気体遮蔽性)及び透湿度とには相関性が見られることが判った。すなわち、用紙厚さが60μmを超える実施例1−11及び1−12では、トルエン透過度は非常に低いものの、透湿度も低下する傾向にあった。また、用紙厚さが20μm未満の実施例1−13の場合、透湿度は非常に高いものの、トルエン透過度が高くなる傾向が見られた。これはピンホール等により通気性が上がったためであると考えられる。
【0108】
以上の結果より、全熱交換素子用紙の厚さは20〜60μmが好ましい。また、30μm以上がより好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0109】
次に、本発明の全熱交換素子用紙を用いた全熱交換素子の実施例を、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0110】
実施例1−14
実施例1−4で得た全熱交換素子用紙を仕切部材2に用い、断面波形構造に成型したコルゲート状の上質紙52g/m
2を間隔保持部材3に用いて、直交流型積層構造であるコルゲート構造の全熱交換素子を得た。間隔保持部材A 10、仕切部材A 8、間隔保持部材B 11、仕切部材B 9の順序で積層し、間隔保持部材A 10と間隔保持部材B 11の波方向が直交する角度(90°)で交差するように積層され、さらに、仕切部材A 8と仕切部材B 9の抄紙機での流れ方向も直交する角度(90°)で交差するように、各部材を貼り合わせて157段を積層し、縦280mm、横280mm、高さ320mmの全熱交換素子を得た。この時、上質紙52g/m
2は、コルゲートマシンにより、波形のピッチが4.8mmで、波形の高さが2.0mmに成型した。また、各部材の貼り合わせには、エチレン酢酸ビニル系の接着剤を使用した。
【0111】
実施例1−15
実施例1−3で得た全熱交換素子用紙を仕切部材2に用い、断面波形構造に成型したコルゲート状の晒クラフト紙60g/m
2を間隔保持部材3に用いて、直交流型積層構造であるコルゲート構造の全熱交換素子を得た。間隔保持部材A 10、仕切部材A 8、間隔保持部材B 11、仕切部材B 9の順序で積層し、間隔保持部材A 10と間隔保持部材B 11の波方向が直交する角度(90°)で交差するように積層され、さらに、仕切部材A 8と仕切部材B 9の抄紙機での流れ方向も直交する角度(90°)で交差するように、各部材を貼り合わせて121段を積層し、縦280mm、横280mm、高さ320mmの全熱交換素子を得た。この時、晒クラフト紙60g/m
2は、コルゲートマシンにより、波形のピッチが5.8mmで、波形の高さが2.6mmに成型した。また、各部材の貼り合わせには、エチレン酢酸ビニル系の接着剤を使用した。
【0112】
実施例1−16
実施例1−2で得た全熱交換素子用紙を仕切部材2に用い、上質紙に難燃剤を含浸加工した難燃紙60g/m
2を断面波形構造に成型したコルゲート状の間隔保持部材3に用いて、直交流型積層構造であるコルゲート構造の全熱交換素子を得た。間隔保持部材A 10、仕切部材A 8、間隔保持部材B 11、仕切部材B 9の順序で積層し、間隔保持部材A 10と間隔保持部材B 11の波方向が直交する角度(90°)で交差するように積層され、さらに、仕切部材A 8と仕切部材B 9の抄紙機での流れ方向も直交する角度(90°)で交差するように、各部材を貼り合わせて170段を積層し、縦280mm、横280mm、高さ320mmの全熱交換素子を得た。この時、難燃紙60g/m
2は、コルゲートマシンにより、波形のピッチが4.8mmで、波形の高さが1.85mmに成型した。また、各部材の貼り合わせには、エチレン酢酸ビニル系の接着剤を使用した。
【0113】
比較例1−8
仕切部材2として比較例1−1で得た全熱交換素子用紙を用いた以外は、実施例1−14と同様に全熱交換素子を得た。
【0114】
比較例1−9
仕切部材2として比較例1−2で得た全熱交換素子用紙を用いた以外は、実施例1−15と同様に全熱交換素子を得た。
【0115】
比較例1−10
仕切部材2として比較例1−5で得た全熱交換素子用紙を用いた以外は、実施例1−14と同様に全熱交換素子を得た。
【0116】
実施例1−17
仕切部材2として実施例1−7で得た全熱交換素子用紙を用い、積層段数を158段とした以外は、実施例1−14と同様に全熱交換素子を得た。
【0117】
実施例1−18
仕切部材2として実施例1−9で得た全熱交換素子用紙を用いた以外は、実施例1−14と同様に全熱交換素子を得た。
【0118】
実施例1−19
仕切部材2として実施例1−11で得た全熱交換素子用紙を用い、積層段数を155段とした以外は、実施例1−14と同様に全熱交換素子を得た。
【0119】
実施例2−3
仕切部材2として実施例2−2で得た全熱交換素子用紙を用いた以外は、実施例1−16と同様に全熱交換素子を得た。
【0120】
実施例3−4
仕切部材2として実施例3−2で得た全熱交換素子用紙を用いた以外は、実施例1−15と同様に全熱交換素子を得た。
【0121】
【表7】
【0122】
上記例で製造した全熱交換素子について、下記の評価方法により評価した。その結果をまとめて表7に示す。
【0123】
(全熱交換効率、温度交換効率、湿度交換効率)
JIS B8628:2003に準じて、実施例1−14〜1−19、2−3、3−4及び比較例1−8〜1−10の全熱交換素子を用いて、この全熱交換素子の全熱交換効率を評価した。
【0124】
(結露)
JIS B8628:2003における素子性能の冷房時の測定条件「室内:乾球27℃、湿球20℃(相対湿度50%)、室外:乾球35℃、湿球29℃(相対湿度63%)」で、24時間通風し、素子に発生する結露等の状態を観察した。
【0125】
<評価>
これらの結果より、実施例1−14と比較例1−8、実施例1−15、3−4と比較例1−9を比較すると、叩解した天然パルプにおけるファイン分比率が10〜25%である実施例の方が、温度交換効率、湿度交換効率共に、高い。また、実施例1−14を基準に、実施例1−16、2−3及び1−19を比較すると、用紙厚さの薄い全熱交換素子用紙を使用した実施例1−16及び2−3の素子の方が、高い交換効率であり、用紙厚さが厚い全熱交換素子用紙を使用した実施例1−19の素子の方が低い変換効率であった。また、実施例1−14を基準に比較例1−10並びに実施例1−17及び1−18を比較すると、全熱交換素子用紙の吸湿剤付与率が高い程、交換効率も高くなる。しかし、実施例1−18については、結露水による液垂れが確認され、全熱交換器の故障や吸湿剤の流失による経時での性能低下が懸念される。なお、結露については、実施例1−14、3−4、1−16及び2−3でも確認されたが、全熱交換素子用紙自体及び間隔保持部材で吸収可能な量であった。