特許第6571920号(P6571920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6571920電磁シールド部材及びそれを備える電磁シールドテント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571920
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】電磁シールド部材及びそれを備える電磁シールドテント
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20190826BHJP
   E04B 1/92 20060101ALI20190826BHJP
   E04H 15/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H05K9/00 C
   E04B1/92
   E04H15/00
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-214772(P2014-214772)
(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-82172(P2016-82172A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年1月17日
【審判番号】不服2018-9957(P2018-9957/J1)
【審判請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康夫
【合議体】
【審判長】 井上 信一
【審判官】 西村 泰英
【審判官】 五十嵐 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−15381(JP,A)
【文献】 特表2002−532689(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/093027(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0008188(US,A1)
【文献】 特許第4957481(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
E04B 1/92
E04H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し、互いにその主面が対向するように配置されている第1シート及び第2シートと、
互いに対向する、前記第1シートの主面及び前記第2シートの主面のうち、少なくとも一方の主面と接触するように配置されているスペーサ部材と、を備え、
電磁波の波長λとした場合に、前記第1シート及び前記第2シートは、前記第1シートの主面と前記第2シートの主面との間の距離が0.57λ以上となるように配置されている、電磁シールド部材。
【請求項2】
前記スペーサ部材は、その特性インピーダンスが、空気の特性インピーダンスよりも大きくなるように構成されている、請求項1に記載の電磁シールド部材。
【請求項3】
前記スペーサ部材は、コバルト、ニッケル、及び鉄からなる金属元素群より選ばれる1以上の金属元素を含有している、請求項2に記載の電磁シールド部材。
【請求項4】
前記電磁波の波長が、2MHz〜40GHzである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁シールド部材。
【請求項5】
前記電磁波の波長が、400MHz〜18GHzである、請求項4に記載の電磁シールド部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁シールド部材と、
前記第1シートを保持するためのフレームと、を備える、電磁シールドテント。
【請求項7】
サスペンダー部材をさらに備え、
前記第1シートは、前記サスペンダー部材により前記フレームに吊り下げられて保持されている、請求項6に記載の電磁シールドテント。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁シールド部材及びそれを備える電磁シールドテントに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器からの電磁波漏洩、又は電子機器への電磁波干渉を軽減するために用いられる電磁波シールド材(導電性薄材)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されている電磁波吸収体では、抵抗膜層及び電磁波反射膜層が空間を隔てて略平行に設置され、抵抗膜層と電磁波反射膜層との間の距離を、使用する電磁波の波長をλとした場合、λ/12〜λ/4と規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4957481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている電磁波吸収体では、抵抗膜層と電磁波反射膜層との間の距離について、電磁波反射層が相互の影響し合う波動インピーダンスに関して、充分に検討されておらず、電磁波障害の軽減効果が不充分であるという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電磁波障害の軽減効果が従来の導電性薄材よりも優れている、電磁シールド部材及びそれを備える電磁シールドテントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明に係る電磁シールド部材は、導電性を有し、互いにその主面が対向するように配置されている第1シート及び第2シートと、互いに対向する、第1シートの主面及び第2シートの主面のうち、少なくとも一方の主面と接触するように配置されているスペーサ部材と、を備え、電磁波の波長λとした場合に、前記第1シート及び前記第2シートは、前記第1シートの主面と前記第2シートの主面との間の距離が0.38λ以上となるように配置されている。
【0007】
これにより、第1シートと第2シートとの間の距離を小さくしつつ、第1シートの主面及び/又は第2シートの主面の反射損失を大きくすることにより、電磁波に対するシールド効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電磁シールド部材及びそれを備える電磁シールドテントによれば、第1シートと第2シートとの間の距離を小さくしつつ、電磁波に対するシールド効果を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施の形態1に係る電磁シールドテントの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す電磁シールドテントにおける電磁シールド部材の要部断面図である。
図3図3は、シート間の距離が1.0λのときのシールド効果を基準にして、2枚のシートを密着した場合のシールド効果よりも高いシールド効果が得られる距離、99%のシールド効果が得られる距離、及び99.9%のシールド効果が得られる距離を、スペーサ部材内の特性インピーダンスが真空のとき、特性インピーダンスが真空よりも大きいときに算出した結果を示すグラフである。
図4図4は、本実施の形態1における変形例1の電磁シールド部材の概略構成を示す模式図である。
図5図5は、本実施の形態2に係る電磁シールドテントの概略構成を示す模式図である。
図6図6は、図5に示す電磁シールドテントの要部断面図である。
図7図7は、2枚のシートを密着した場合のシールド効果と、2枚のシート間の距離を変動させることによるシールド効果と、を算出した結果を示すグラフである。
図8図8は、2枚のシートを密着した場合のシールド効果と、2枚のシート間の距離を変動させることによるシールド効果と、を算出した結果を示すグラフである。
図9図9は、2枚のシートを密着した場合のシールド効果と、2枚のシート間の距離を変動させることによるシールド効果と、を算出した結果を示すグラフである。
図10図10は、シート間の距離が1.0λのときのシールド効果を基準にして、2枚のシートを密着した場合のシールド効果よりも高いシールド効果が得られる距離、99%のシールド効果が得られる距離、及び99.9%のシールド効果が得られる距離を算出した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[発明者の知見]
一般的に、シールド材のシールド効果(SE)は、シェルクノフの式(数(1))によって、説明される。
【0011】
【数(1)】
また、数(1)のR(シールド材表面における反射損失)、A(シールド材内部における減衰損失)、及びB(シールド材の表面と裏面で多重反射する効果)は、それぞれ、数(2)で表される。
【0012】
【数(2)】
本発明者は、シェルクノフの式から、シールド材の厚み(d)とシールド材近傍の波動インピーダンス(Zc)が、シールド効果に寄与することに着目した。シールド材の厚み(d)は、数(2)の(b)から、厚みが増大すれば、シールド効果は増大するが、厚みの増加に伴い、その改善効果は指数関数的に減少することがわかる。また、シールド材の厚みを増大すると、シールド材を用いたシールドテントの製造コストが増加し、また、シールドテントの設置及び撤去が困難になる等の不具合が生じることになる。
【0013】
一方、シールド材近傍の波動インピーダンスは、数(2)の(a)から、当該波動インピーダンスを大きくし、シールド材の特性インピーダンスをできるだけ小さくすると、シールド表面における反射損失が増大することがわかる。
【0014】
そこで、本発明者は、シールドテントに用いるシート(シールド材)を多層に配置した場合に、シート間の距離と波動インピーダンスとの関係を検証した。具体的には、周波数を2MHz〜40GHzの間の任意の周波数で、2枚のシートを密着した場合のシールド効果と、2枚のシート間の距離を変動させることによるシールド効果と、を算出した。
【0015】
図7図9は、2枚のシートを密着した場合のシールド効果と、2枚のシート間の距離を変動させることによるシールド効果と、を算出した結果を示すグラフである。なお、図7図9において、破線は、2枚のシートを密着した場合のシールド効果を示し、実線は、2枚のシート間の距離を変動させることによるシールド効果を示す。また、図7においては、周波数を2、4、20、及び40MHzにしたときのシールド効果は、ほぼ同じとなり、グラフが重なった状態で示されている。
【0016】
図7図9に示すように、シート間の距離が小さい領域において、シールド効果(反射損失)が、2枚のシートを密着した場合のシールド効果に比して、小さくなっている。これは、シート間の距離が小さく、シートによる波動インピーダンスへの影響が相互に大きくなるほど、シート近傍の波動インピーダンスが小さくなる。このため、シート近傍の波動インピーダンスとシートの特性インピーダンスとの差が小さくなり、反射損失が小さくなったためであると考察している。
【0017】
一方、シート間の距離が大きい領域では、シールド効果が、2枚のシートを密着した場合のシールド効果に比して、大きくなり、ほぼ一定の反射損失となっている。これは、シート間の距離が大きくなり、シートによる波動インピーダンスへの影響が相互に小さくなることにより、波動インピーダンスがほぼ真空中の波動インピーダンスと同じになり、ほぼ一定の反射損失となったものと考察している。
【0018】
このように、2枚のシートを所定の距離以上に離して配置することにより、2枚のシートを重ね合わせた場合に比して、シールド効果を向上させることができることがわかった。なお、特許文献1に記載されているように、抵抗膜層と電磁波反射膜層との間の距離をλ/12〜λ/4と規定すると、図7図9からわかるように、シールド効果が、2枚のシートを密着した場合のシールド効果に比して、小さくなる場合がある。このため、特許文献1に開示されている電磁波吸収体では、電磁波障害の軽減効果が不充分となる場合がある。
【0019】
次に、シート間の距離の閾値を設定するために、図7図9で示したデータを基に、シート間の距離が1.0λのときのシールド効果を基準にして、99%のシールド効果が得られる距離、99.9%のシールド効果が得られる距離、及び2枚のシートを密着した場合のシールド効果より高いシールド効果が得られる距離を算出した。その結果を示したものが、図10である。
【0020】
なお、図10では、各周波数において、2枚のシートを密着した場合のシールド効果より高いシールド効果が得られる距離を丸印(●)で示し、99%のシールド効果が得られる距離を三角(▲)で示し、99.9%のシールド効果が得られる距離を四角(■)で示している。また、近似曲線は、2区間の移動平均を記載している。
【0021】
図10に示すように、0.48λ以上にシート間の距離を設定することにより、99%のシールド効果が得られることがわかる。また、0.66λ以上にシート間の距離を設定すると、99.9%のシールド効果が得られることがわかる。
【0022】
ところで、シート間の距離を大きくすると、シールドテントの設置スペースが大きくなり、設置場所が制限される、及び材料コストが増加することになる。そこで、本発明者は、シート間の距離を大きい領域では、波動インピーダンスがほぼ真空(空気)中の波動インピーダンスと同じになることに着目し、シート間の距離を保持するために配置するスペーサ部材の特性インピーダンスを空気の特性インピーダンスよりも大きくすることで、シート間の距離を小さくしても、同等のシールド効果が得られることを見出し、本発明を想到した。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するために必要となる構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る電磁シールド部材は、導電性を有し、互いにその主面が対向するように配置されている第1シート及び第2シートと、互いに対向する、第1シートの主面及び第2シートの主面のうち、少なくとも一方の主面と接触するように配置されているスペーサ部材と、を備え、電磁波の波長λとした場合に、第1シート及び第2シートは、第1シートの主面と第2シートの主面との間の距離が0.38λ以上となるように配置されている。
【0025】
これにより、第1シートと第2シートとの間の距離を小さくしつつ、第1シートの主面及び/又は第2シートの主面の反射損失を大きくすることにより、電磁波に対するシールド効果を向上させることができる。
【0026】
また、本実施の形態1に係る電磁シールド部材では、スペーサ部材が、その特性インピーダンスが、空気の特性インピーダンスよりも大きくなるように構成されていてもよい。
【0027】
また、本実施の形態1に係る電磁シールド部材では、スペーサ部材が、コバルト、ニッケル、及び鉄からなる金属元素群より選ばれる1以上の金属元素を含有していてもよい。
【0028】
また、本実施の形態1に係る電磁シールド部材では、電磁波の波長が、2MHz〜40GHzであってもよい。
【0029】
さらに、本実施の形態1に係る電磁シールド部材では、航空機に関連する電界を基準とする試験で電磁シールド部材を使用する観点から、電磁波の波長が、400MHz〜18GHzであってもよい。
【0030】
また、本実施の形態1に係る電磁シールドテントは、前記電磁シールド部材と、第1シートを保持するためのフレームと、を備える。
【0031】
さらに、本実施の形態1に係る電磁シールドテントでは、サスペンダー部材をさらに備え、第1シートは、サスペンダー部材によりフレームに吊り下げられて保持されていてもよい。
【0032】
以下、本実施の形態1に係る電磁シールド部材及びそれを備える電磁シールドテントの一例について、図1図3を参照しながら説明する。
【0033】
[電磁シールドテントの構成]
まず、図1を参照しながら、本実施の形態1に係る電磁シールドテントの構成について説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態1に係る電磁シールドテントの概略構成を示す模式図である。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態1に係る電磁シールドテント200は、電磁シールド部材100と、フレーム201と、サスペンダー部材202と、を備えていて、直方体状に形成されている。また、電磁シールドテント200は、フレーム201にサスペンダー部材202を介して、電磁シールド部材100が保持されるように構成されている。
【0036】
なお、本実施の形態1においては、電磁シールドテント200が、直方体状に形成されている形態を採用したが、これに限定されず、例えば、円柱状に形成されていてもよく、四角錐状に形成されていてもよい。
【0037】
図1に示すように、フレーム201は、複数のポール部材201aとソケット部材201bを備えている。複数の差込口(ここでは、3又は4つの差込口)を有するソケット部材201bにポール部材201aの端部が差し込まれて、複数のポール部材201aが連結されることで、フレーム201は、直方体状に形成されている。
【0038】
具体的には、フレーム201の下部では、直線状に連結された2本のポール部材201aを一辺とする、矩形状の枠が形成されている。フレーム201の上部では、フレーム201の下部と同様に矩形状の枠が形成されていて、互いに対向する2辺の中央部分が、直線状に連結された2本のポール部材201aで接続されている。そして、上下の矩形状の枠の各頂点間、及び各辺の中央部分間が、ポール部材201aによって接続されている。
【0039】
なお、ソケット部材201bの差込口には、ポール部材201aを固定するための適宜な手段(例えば、スペーサー等)を配置してもよい。また、ポール部材201a及びソケット部材201bは、ステンレス等の金属、又はプラスチック等の合成樹脂で構成されていてもよい。
【0040】
また、図1に示すように、フレーム201の上面外周の適所には、サスペンダー部材202が配設されている。サスペンダー部材202は、接着剤、両面テープ、縫製、又は面ファスナー、フック等の適宜な手段により、第1シート101(電磁シールド部材100)を保持している。換言すれば、第1シート101は、サスペンダー部材202を介して、フレーム201に保持されている。
【0041】
サスペンダー部材202は、フレーム201に対して第1シート101を保持することができれば、取り付け箇所は任意であり、どのような形状であってもよく、例えば、短冊状に形成されていてもよく、帯状に形成されていてもよい。また、サスペンダー部材202は、ゴム、紐、スプリング等で構成されていてもよい。
【0042】
[電磁シールド部材の構成]
次に、図1図3を参照しながら、本実施の形態1に係る電磁シールド部材の構成について説明する。
【0043】
図2は、図1に示す電磁シールドテントにおける電磁シールド部材の要部断面図である。
【0044】
図1及び図2に示すように、電磁シールド部材100は、第1シート101、第2シート102、及びスペーサ部材103を備えていて、第1シート101と第2シート102の間に、スペーサ部材103が配置されている。具体的には、第2シート102が第1シート101の内方に配置されていて、互いに対向する、第1シート101の主面(内面)及び第2シート102の主面(外面)との間には、スペーサ部材103が配置されている。
【0045】
第1シート101及び第2シート102は、袋状に形成されていて、開口が下方を向くように配置されている。また、第1シート101及び第2シート102は、導電性を有する布で構成されていて、直方体状になるように、各面が形成されている。導電性を有する布としては、例えば、金属メッシュ、金属メッキされた繊維布、又は金属を繊維と共に織り上げた布等を用いることができる。
【0046】
また、第1シート101と第2シート102は、電磁波の波長λとした場合に、第1シート101の主面(内面)と第2シート102の主面(外面)との間の距離が0.4λ以上となるように配置されている。
【0047】
ここで、図2及び図3を参照しながら、第1シート101と第2シート102との間の距離と、シールド効果と、の関係について、詳細に説明する。
【0048】
図2に示すように、電磁波が、第1シート101の外面から第2シート102の内面に向かって入射するものとする。このとき、スペーサ部材103が配置されている、第2シート102の外面近傍の波動インピーダンスは、第1シート101と第2シート102との間の距離と、スペーサ部材103を構成する材料の特性と、により変化する。
【0049】
そして、上記シェルクノフの式の数(2)より、第2シート102に入射する電磁波の反射損失は、第2シート102の特性インピーダンス(Zs)と、第2シート102近傍の波動インピーダンス、すなわち、スペーサ部材103の特性インピーダンス(Zc)と、により変化する。
【0050】
ここで、第2シート102の特性インピーダンス(Zs)が一定である場合、第2シート102の反射損失を大きくするためには、スペーサ部材103の特性インピーダンス(Zc)を空気の特性インピーダンスよりも大きくする必要がある。スペーサ部材103の特性インピーダンス(Zc)は、数(3)で示される。
【0051】
【数(3)】
そして、数(3)から、スペーサ部材103の特性インピーダンス(Zc)を大きくするためには、スペーサ部材103の導電率及び比誘電率を小さく、もしくは比透磁率を大きくすればよいことがわかる。導電率及び比誘電率を空気よりも小さくすることは困難なため、特性インピーダンスを大きくするには、比透磁率を大きくする方法が適当である。
【0052】
そこで、2枚のシート間の距離を変動させ、スペーサ部材103の比透磁率を空気の透磁率の10倍としたときのシールド効果を算出し、シート間の距離が1.0λのときのシールド効果を基準にして、99%のシールド効果が得られる距離、99.9%のシールド効果が得られる距離、及び2枚のシートを密着した場合のシールド効果より高いシールド効果が得られる距離を算出した。その結果を示したものが、図3である。
【0053】
なお、図3において、各周波数において、2枚のシートを密着した場合のシールド効果より高いシールド効果が得られる距離を丸印(●)で示し、99%のシールド効果が得られる距離を三角(▲)で示し、99.9%のシールド効果が得られる距離を四角(■)で示している。また、図3において、第1シート101と第2シート102の間にスペーサ部材103を配置した場合の算出結果を実線で示し、第1シート101と第2シート102の間が空気である場合の算出結果を破線で示している。
【0054】
図3に示すように、スペーサ部材103の比透磁率を空気の透磁率の10倍としたときに、99%のシールド効果が得られるシート間の距離は、周波数が40GHzでは、0.38λであり、20GHz以下の周波数では、0.40λ以上である。また、スペーサ部材103の比透磁率を空気の透磁率の10倍としたときに、99.9%のシールド効果が得られるシート間の距離は、周波数が40GHzのとき、0.57λであり、20GHz以下の周波数では、0.58λ以上である。
【0055】
このため、第1シート101の主面(内面)と第2シート102の主面(外面)との間の距離が0.38λ以上となるように配置してもよく、0.40λ以上となるように配置してもよく、0.57λ以上となるように配置してもよく、0.58λ以上となるように配置してもよい。
【0056】
スペーサ部材103は、ここでは、円柱状に形成されており、複数のスペーサ部材103が、第1シート101の主面(内面)及び第2シート102の主面(外面)の少なくとも一方の主面と接触するように配置されている。
【0057】
なお、複数のスペーサ部材103のうち、あるスペーサ部材103は、第1シート101の内面と接触し、かつ、第2シート102の外面とは接触しないように配置されていてもよく、また、あるスペーサ部材103は、第1シート101の内面とは接触せず、かつ、第2シート102の外面と接触するように配置されていてもよく、他のスペーサ部材103は、第1シート101の内面と接触し、かつ、第2シート102の外面と接触するように配置されていてもよい。
【0058】
また、スペーサ部材103は、その特性インピーダンスが、空気の特性インピーダンスよりも大きくなるように構成されている。具体的には、比透磁率が1よりも大きい材料が、スペーサ部材103を構成する材料として、使用されている。
【0059】
スペーサ部材103は、発泡材(例えば、発泡プラスチック、又はスポンジ等)で構成されていてもよく、コバルト、ニッケル、及び鉄からなる金属元素群より選ばれる1以上の金属元素を含有していてもよい。前記金属元素を含有する場合には、発泡材を構成する材料に、コバルト、ニッケル、又は鉄の金属粒子を分散させて、スペーサ部材103を製造してもよい。また、前記金属元素を含有する金属箔をスペーサ部材103内部に配置してもよく、スペーサ部材103の外面を覆うように配置してもよい。
【0060】
[電磁シールド部材及び電磁シールドテントの作用効果]
このように構成された、本実施の形態1に係る電磁シールド部材100及びそれを備える電磁シールドテント200では、電磁波の波長λとした場合に、第1シート101と第2シート102が、第1シート101の主面(内面)と第2シート102の主面(外面)との間の距離が0.38λ以上となるように配置されているので、第1シート101と第2シート102との間の距離が大きくなるのを抑制しつつ、電磁波に対するシールド効果を向上させることができる。
【0061】
ところで、第1シート101及び/又は第2シート102のシールド効果を高めるためには、シートを構成する布に含有される金属の重量を増加させればよいが、金属量が増加すると、シートの重量が増大し、また、布の柔軟性が損なわれる。このため、単にシートを構成する布に含有される金属の重量を増加させると、電磁シールドテント200の組み立て及び撤去が困難となる。
【0062】
しかしながら、本実施の形態1に係る電磁シールド部材100及びそれを備える電磁シールドテント200では、第1シート101及び第2シート102を構成する布の金属量を増加させることなく、充分なシールド効果を奏することができるので、シートの重量の増加を抑制し、また、布の柔軟性を維持できるので、電磁シールドテント200を容易に組み立て、撤去することができる。
【0063】
なお、本実施の形態1においては、電磁シールドテント200の底面部分に、第1シート101及び第2シート102を配置しない形態を採用したが、これに限定されず、電磁シールドテント200の底面部分に、第1シート101及び第2シート102を配置する形態を採用してもよい。また、第1シート101及び第2シート102の下端部は、接地するように形成されていてもよく、接地しないように形成されていてもよい。
【0064】
[変形例1]
次に、本実施の形態1に係る電磁シールド部材の変形例について説明する。
【0065】
図4は、本実施の形態1における変形例1の電磁シールド部材の概略構成を示す模式図である。
【0066】
図4に示すように、本変形例1の電磁シールド部材100は、実施の形態1に係る電磁シールド部材100と基本的構成は同じであるが、スペーサ部材103が板状に形成されている点が異なる。
【0067】
このように構成された、本変形例1の電磁シールド部材100であっても、実施の形態1に係る電磁シールド部材100と同様の作用効果を奏する。
【0068】
また、本変形例1の電磁シールド部材100では、スペーサ部材103が板状に形成されているので、第1シート101の内面と第2シート102の外面との間のスペースに、スペーサ部材103が占める割合が、実施の形態1に係る電磁シールド部材100に比して、大きくなる。このため、本変形例1の電磁シールド部材100は、実施の形態1に係る電磁シールド部材100に比して、シールド効果が大きい領域を増加させることができる。
【0069】
(実施の形態2)
図5は、本実施の形態2に係る電磁シールドテントの概略構成を示す模式図である。図6は、図5に示す電磁シールドテントの要部断面図である。
【0070】
図5及び図6に示すように、本実施の形態2に係る電磁シールド部材は、実施の形態1に係る電磁シールド部材100と基本的構成は同じであるが、第1シート101が直接フレーム201に保持されている点が異なる。
【0071】
このように構成された、本実施の形態2に係る電磁シールドテント200であっても、実施の形態1に係る電磁シールド部材100と同様の作用効果を奏する。
【0072】
なお、本実施の形態2に係る電磁シールドテント200では、実施の形態1に係る電磁シールド部材100を備える形態を採用したが、これに限定されず、変形例1の電磁シールド部材100を備える形態を採用してもよい。
【0073】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良又は他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の電磁シールド部材及びそれを備える電磁シールドテントは、第1シートと第2シートとの間の距離を小さくしつつ、電磁波に対するシールド効果を向上させることができるため、有用である。
【符号の説明】
【0075】
100 電磁シールド部材
101 第1シート
102 第2シート
103 スペーサ部材
200 電磁シールドテント
201 フレーム
201a ポール部材
201b ソケット部材
202 サスペンダー部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10