(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571935
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】車両用映像表示ミラー
(51)【国際特許分類】
B60R 1/04 20060101AFI20190826BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20190826BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20190826BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20190826BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
B60R1/04 Z
G02F1/1335 520
G02B5/08 D
G02B5/30
G09F9/00 313
G09F9/00 362
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-5098(P2015-5098)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2016-130097(P2016-130097A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】高田 勝則
(72)【発明者】
【氏名】亀山 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】北村 ▲吉▼紹
(72)【発明者】
【氏名】木村 啓介
(72)【発明者】
【氏名】倉本 浩貴
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−527773(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/112525(WO,A1)
【文献】
実開昭60−169620(JP,U)
【文献】
特表2009−529452(JP,A)
【文献】
特開平11−183895(JP,A)
【文献】
特開2012−116357(JP,A)
【文献】
特開2011−145331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/04
G02B 5/08
G02B 5/30
G02F 1/1335
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認側から順に、第1の偏光板と、ハーフミラーと、映像表示装置とを備え、
該第1の偏光板が吸収型偏光子を備え、
該映像表示装置が、偏光子を含む第2の偏光板を備え、
該第2の偏光板の偏光子の吸収軸と、該第1の偏光板の吸収型偏光子の吸収軸とが、実質的に平行である、
車両用映像表示ミラー。
【請求項2】
前記第1の偏光板を透過する前記映像表示装置からの出射光の透過率が最大となるように、前記吸収型偏光子の吸収軸の方向が設定されている、
請求項1に記載の映像表示ミラー。
【請求項3】
前記第1の偏光板と前記ハーフミラーとが、層間充填により密着している、請求項1または2に記載の車両用映像表示ミラー。
【請求項4】
前記ハーフミラーと前記映像表示装置とが、層間充填により密着している、請求項1から3のいずれかに記載の車両用映像表示ミラー。
【請求項5】
前記第1の偏光板の視認側にλ/4板をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の車両用映像表示ミラー。
【請求項6】
前記映像表示装置が、液晶セルを含む液晶表示装置であり、
該液晶表示装置が、液晶セルの視認側には偏光板を備えない、
請求項1から5のいずれかに記載の車両用映像表示ミラー。
【請求項7】
前記ハーフミラーの反射面と、前記映像表示装置の映像表示面とのなす角度が、0°より大きく45°以下である、請求項1から6のいずれかに記載の車両用映像表示ミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用映像表示ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のバックミラーに映像表示装置を組み合わせて映像を表示する技術が知られている。例えば、特許文献1においては、モニタの前面(視認側面)にハーフミラーを配置して構成される映像表示ミラーが開示されている。この映像表示ミラーでは、ハーフミラーによる反射像により後方の視認が可能となり、一方、モニタに映像を表示した際にはその映像がハーフミラーを通して視認可能となる。
【0003】
このような映像表示ミラーにおいては、車両後方からの光量が多い場合などには、反射像が、モニタに表示された映像の視認性を阻害するという問題がある。引用文献1においては、視認者(乗員)が後方を視認する際とモニタ映像を視認する際とで、ハーフミラーの角度を異なる角度にすることで、反射像の影響を低減するという技術が提案されている。このような技術によれば、モニタ映像を視認する際、ハーフミラーによる反射像がモニタ映像の視認性を阻害しないような像となるように、具体的には、反射により天井が写るようにハーフミラーの角度を調整して、反射像の影響が低減され得る。
【0004】
しかしながら、ハーフミラーによる反射像をモニタ映像の視認性を阻害しないような像とすることが困難な場合、例えば、パノラミックルーフ、サンルーフ等の光を透過する天井を備える車両またはオープンカーに適用する場合、引用文献1の映像表示ミラーでは、反射像の影響を低減することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5273286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ハーフミラーと映像表示装置を備え、ハーフミラーによる反射像の影響を低減して、映像表示装置に表示された映像の視認性に優れた映像表示ミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用映像表示ミラーは、視認側から順に、第1の偏光板と、ハーフミラーと、映像表示装置とを備える。
1つの実施形態においては、上記第1の偏光板が偏光子を備え、該第1の偏光板を透過する前記映像表示装置からの出射光の透過率が最大となるように、該偏光子の吸収軸の方向が設定されている。
1つの実施形態においては、上記映像表示装置が、偏光子を含む第2の偏光板を備え、 該第2の偏光板の偏光子の吸収軸と、上記第1の偏光板の偏光子の吸収軸とが、実質的に平行である。
1つの実施形態においては、上記第1の偏光板とハーフミラーとが、層間充填により密着している。
1つの実施形態においては、上記ハーフミラーと前記映像表示装置とが、層間充填により密着している。
1つの実施形態においては、上記第1の偏光板の視認側にλ/4板をさらに備える。
1つの実施形態においては、上記映像表示装置が、液晶セルを含む液晶表示装置であり、該液晶表示装置が、液晶セルの視認側には偏光板を備えない。
1つの実施形態においては、上記ハーフミラーの反射面と、上記映像表示装置の映像表示面とのなす角度が、0°より大きく45°以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、視認側から順に、偏光板(第1の偏光板)と、ハーフミラーと、映像表示装置とを備えることにより、ハーフミラーによる反射像の影響を低減して、映像表示装置に表示された映像の視認性に優れた映像表示ミラーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態による映像表示ミラーの概略断面図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による作用を説明する概略図である。
【
図3】本発明の別の実施形態による映像表示ミラーの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0011】
A.車両用映像表示ミラーの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による映像表示ミラーの概略断面図である。車両用映像表示ミラー100は、視認側から順に、第1の偏光板110と、ハーフミラー120と、映像表示装置130とを備える。本実施形態の車両用映像表示ミラーは、例えば、車両のバックミラー(ルームミラー)として用いられ得る。ハーフミラー120は、光反射機能と光透過機能とを備える。車両用映像表示ミラー100は、ハーフミラー120の光反射機能により、車両の乗員による後方の視認を可能とする。また、車両用映像表示ミラー100においては、ハーフミラー120の光透過機能により、映像表示装置130に表示された映像を視認することが可能となる。映像表示装置130は、例えば、車両の後方を写す外部カメラによる映像を表示する。このようにすれば、車両内に障害物(例えば、同乗者、荷物等)があり、ハーフミラーの反射像では車両後方を十分に確認できない場合などでも、映像表示装置に外部カメラによる映像を表示して、車両の安全を確保することができる。
【0012】
第1の偏光板110は、映像表示装置からの出射光が該第1の偏光板をより多く透過するようにして配置することが好ましい。より詳細には、偏光子を備える第1の偏光板を用い、該第1の偏光板を透過する映像表示装置からの出射光の透過率が最大となるように、該偏光子の吸収軸の方向を設定することが好ましい。このような実施形態の一例としては、偏光子を含む第2の偏光板132を備える映像表示装置を用い、第2の偏光板132の偏光子の吸収軸と、第1の偏光板110の偏光子の吸収軸とを実質的に平行になるよう構成された車両用映像表示ミラーが挙げられる。なお、「実質的に平行」という表現は、2つの方向のなす角度が0°±10°である場合を包含し、好ましくは0°±7°であり、さらに好ましくは0°±5°である。
【0013】
図2は、本発明の1つの実施形態による作用を説明する概略図である。本発明においては、ハーフミラー120の視認側に第1の偏光板110を配置することにより、ハーフミラーによる反射像の影響を低減して、映像表示装置130に表示された映像の視認性を高めることができる。より詳細には、ハーフミラー120で反射する視認側からの光の経路は、入射時および反射後において、第1の偏光板を2回通過し、これにより、視認側からの光の量が減少する。一方、ハーフミラーを透過する背面側からの光(すなわち、映像表示装置130からの出射光)の経路は、第1の偏光板を1回だけ通過する。本発明によれば、視認側からの光の量の減少度合いを、背面側からの光の減少度合いよりも多くすることができ、その結果、反射像の影響が少なく、映像表示装置の映像が視認しやすい車両用映像表示ミラーを提供することができる。さらに、上記のように、映像表示装置からの出射光が第1の偏光板をより多く透過するようにして第1の偏光板を配置すれば、第1の偏光板を透過する背面側からの光(すなわち、映像表示装置130からの出射光)が多くなり、本発明の効果はより顕著となる。なお、映像表示装置に映像が表示されていない状態においては、背面から入射してハーフミラーを透過する光は実質的にゼロであるため、ハーフミラーによる反射像が視認され得る。
【0014】
第1の偏光板とハーフミラー、および/またはハーフミラーと映像表示装置とは、接していてもよく、接していなくてもよい。好ましくは、第1の偏光板とハーフミラーとの間には透明樹脂が充填され、両部材が密着している。同様に、ハーフミラーと映像表示装置との間にも、透明樹脂が充填されていることが好ましい。これらのように、第1の偏光板とハーフミラー、および/またはハーフミラーと映像表示装置とを密着させることにより、光の利用効率に優れ、かつ、映像表示の視認性に優れる車両用映像表示ミラーを得ることができる。層間充填には、任意の適切な樹脂フィルム、粘着剤等を用いることができる。粘着剤としては、透明性に優れる粘着剤が好ましく用いられる。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0015】
第1の偏光板の視認側(すなわち、ハーフミラーとは反対側)には、λ/4板が配置され得る。λ/4板は、その遅相軸を、第1の偏光板の吸収軸に対して+45°または−45°程度に配置することで、直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する(詳細は、後述)。λ/4板を配置すれば、偏光サングラスの使用者に対する視認性に優れる車両用映像表示ミラーを得ることができる。なお、λ/4板は、第1の偏光板に接していてもよく、接していなくてもよい。また、λ/4板と第1の偏光板とは粘着剤層を介して貼り合わされていてもよい。さらには、λ/4板は、着脱自在に配置されていてもよい。
【0016】
1つの実施形態においては、
図3に示すように、ハーフミラーの反射面と映像表示装置の映像表示面とのなす角度aを、0°より大きく45°以下に設定する。このような構成の車両用映像表示ミラーにおいては、車両用映像表示ミラーの向きを変えることにより、
図3(a)に示すように乗員が反射像を視認しようとする際(すなわち、ハーフミラーが反射像として後方を写す際)のハーフミラーの向きと、
図3(b)に示すように乗員が映像表示装置に表示された映像を視認しようとする際(すなわち、ハーフミラーの反射像の影響を抑えたい場合)のハーフミラーの向きとを、異なる向きとすることができる。このようにすれば、反射像の影響が少なく、映像表示装置の映像が視認しやすくなる場合がある。この実施形態において、ハーフミラーの反射面と映像表示装置の映像表示面とのなす角度は、好ましくは5°〜40°であり、より好ましくは10°〜30°である。
【0017】
B.第1の偏光板
偏光板は、代表的には、偏光子と、偏光子の片側または両側に配置された保護層とを有する。偏光子は、代表的には吸収型偏光子である。
【0018】
上記偏光子の波長589nmの透過率(単体透過率ともいう)は、好ましくは41%以上であり、より好ましくは42%以上である。なお、単体透過率の理論的な上限は50%である。また、偏光度は、好ましくは99.5%〜100%であり、更に好ましくは99.9%〜100%である。
【0019】
上記偏光子としては、任意の適切な偏光子が用いられる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く、特に好ましい。偏光子の厚みは、好ましくは、0.5μm〜80μmである。
【0020】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、代表的には、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3倍〜7倍に延伸することで作製される。延伸は染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、延伸してから染色してもよい。延伸、染色以外にも、例えば、膨潤、架橋、調整、水洗、乾燥等の処理が施されて作製される。
【0021】
上記保護層としては、任意の適切なフィルムが用いられる。このようなフィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、(メタ)アクリル系、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。上記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0022】
C.ハーフミラー
上記ハーフミラーとしては、入射光の一部を透過し、かつ一部を反射し得る限り、任意の適切なミラーが用いられ得る。例えば、透明基材と該透明基材上に形成された金属薄膜とを備えるハーフミラー、透明基材と該透明基材上に形成された誘電体多層膜とを備えるハーフミラー等が挙げられる。上記第1の偏光板を配置することの効果を効率よく得る観点から、ハーフミラーは、偏光機能を有さないことが好ましい。
【0023】
上記透明基材を構成する材料としては、任意の適切な材料が用いられ得る。該材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の透明樹脂材料;ガラス;等が挙げられる。透明基材の厚みは、例えば、20μm〜5000μmである。上記透明基材は、位相差を有さないことが好ましい。
【0024】
上記金属薄膜を構成する材料としては、光反射率の高い金属が用いられ得、例えば、アルミニウム、銀、錫等が挙げられる。金属薄膜は、例えば、メッキ、蒸着等により、形成することができる。金属薄膜の厚みは、例えば、2nm〜80nmであり、好ましくは3nm〜50nmである。
【0025】
上記誘電体多層膜は、ミラーとしての機能を有するように、所定の厚さの高屈折率材料と低屈折率材料とが積層されている。好ましくは、高屈折率材料と低屈折率材料とが交互に積層されており、低屈折材料から高屈折材料に入射する際に発生する光の干渉を利用して、ハーフミラーとしての機能が発現する。誘電体多層膜を含むハーフミラーは、光の吸収が少ない点で好ましい。
【0026】
上記高屈折材料の屈折率は、好ましくは2.0より高く、より好ましくは2.0より高く3.0以下である。高屈折材料の具体例としては、例えば、ZnS−SiO
2、TiO
2、ZrO
2、Ta
2O
3等が挙げられる。上記低屈折材料の屈折率は、好ましくは1.2〜2.0であり、より好ましくは1.4〜1.9である。低屈折材料の具体例としては、例えば、SiO
2、Al
2O
3、MgF等が挙げられる。
【0027】
上記ハーフミラーの可視光反射率は、好ましくは20%〜80%であり、より好ましくは30%〜70%であり、さらに好ましくは40%〜60%である。また、上記ハーフミラーの可視光透過率は、好ましくは20%〜80%であり、より好ましくは30%〜70%であり、さらに好ましくは40%〜60%である。可視光反射率、可視光透過率およびこれらの比(後述)は、金属薄膜または誘電体多層膜の厚みを制御することにより、調整することができる。
【0028】
上記ハーフミラーの可視光反射率と可視光透過率との比(反射率:透過率)は、好ましくは2:8〜8:2であり、より好ましくは3:7〜7:3であり、さらに好ましくは4:6〜6:4である。可視光反射率と可視光透過率との比は、映像表示装置の輝度等に応じて、適切に調整され得る。
【0029】
D.映像表示装置
上記映像表示装置としては、任意の適切なものが使用され得る。例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマ表示装置等が挙げられる。以下、液晶表示装置を代表例として説明する。1つの実施形態において、液晶表示装置は、
図1に示すように、液晶セル131と、該液晶セル131の視認側に配置された第2の偏光板132と、該液晶セル131の背面側に配置された第3の偏光板133とを含む液晶パネルを備える。なお、図示していないが、映像表示装置は、必要に応じて、任意の適切な他の部材(例えば、バックライトユニット等)を備え得る。この実施形態において、第2の偏光板と第3の偏光板とは、それぞれの偏光子の吸収軸が実質的に直交または平行となるようにして映像を視認可能に配置され得る。
【0030】
D−1.液晶セル
液晶セル131は、一対の基板と、当該基板間に挟持された表示媒体としての液晶層とを有する。一般的な構成においては、一方の基板に、カラーフィルター及びブラックマトリクスが設けられており、他方の基板に、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線及びソース信号を与える信号線と、画素電極及び対向電極とが設けられている。上記基板の間隔(セルギャップ)は、スペーサー等によって制御できる。上記基板の液晶層と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜等を設けることができる。
【0031】
1つの実施形態においては、液晶層は、電界が存在しない状態でホモジニアス配列に配向させた液晶分子を含む。このような液晶層(結果として、液晶セル)は、代表的には、nx>ny=nzの3次元屈折率を示す。なお、本明細書において、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、nyとnzとが実質的に同一である場合も包含する。このような3次元屈折率を示す液晶層を用いる駆動モードの代表例としては、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフィールドスイッチング(FFS)モード等が挙げられる。なお、上記のIPSモードは、V字型電極又はジグザグ電極等を採用した、スーパー・インプレーンスイッチング(S−IPS)モードや、アドバンスド・スーパー・インプレーンスイッチング(AS−IPS)モードを包含する。また、上記のFFSモードは、V字型電極又はジグザグ電極等を採用した、アドバンスド・フリンジフィールドスイッチング(A−FFS)モードや、ウルトラ・フリンジフィールドスイッチング(U−FFS)モードを包含する。
【0032】
別の実施形態においては、液晶層は、電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を含む。このような液晶層(結果として、液晶セル)は、代表的には、nz>nx=nyの3次元屈折率を示す。電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を用いる駆動モードとしては、例えば、バーティカル・アライメント(VA)モードが挙げられる。VAモードは、マルチドメインVA(MVA)モードを包含する。
【0033】
D−2.第2の偏光板、第3の偏光板
第2の偏光板および第3の偏光板としては、上記B項で説明したような偏光板が用いられる。
【0034】
ひとつの実施形態においては、
図1に示した映像表示装置(液晶表示装置)130から第2の偏光板132が省略される。すなわち、この実施形態においては、液晶セルの視認側には偏光板を含まない液晶表示装置が用いられる。この場合には、第1の偏光板と第2の偏光板とは、それぞれの偏光子の吸収軸が実質的に直交または平行となるように映像を視認可能に配置される。この形態では第2の偏光板による光ロスをなくすことができるため、車両用映像表示ミラーを高輝度化することができる。
【0035】
E.λ/4板
1つの実施形態においては、上記のとおり、第1の偏光板の視認側(すなわち、ハーフミラーとは反対側)には、λ/4板が配置される。
【0036】
上記λ/4板の波長590nmにおける正面位相差R
0は、90nm〜190nmであり、好ましくは100nm〜180nmであり、さらに好ましくは110nm〜170nmである。なお、本明細書において正面位相差R
0は、23℃下において、面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率をnxとし、面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率をnyとし、位相差フィルムの厚みをd(nm)としたとき、R
0=(nx−ny)×dによって求められる。λ/4板は、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率楕円体を示す。例えば、λ/4板の屈折率楕円体は、nx>nz>nyまたはnx>ny≧nzの関係を示す。
【0037】
上記第1の偏光板が備える偏光子の吸収軸と、λ/4板の遅相軸との角度は、好ましくは+40°〜+50°または−40°〜−50°であり、より好ましくは+43°〜+47°または−43°〜−47°であり、さらに好ましくは+45°または−45°である。第1の偏光板とλ/4板をこのような関係で配置することにより、第1の偏光板とλ/4板との積層構造が、円偏光板として機能し得る。
【0038】
上記λ/4板を構成する材料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な材料で形成され得る。代表例としては、高分子フィルムの延伸フィルムである。当該高分子フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。λ/4板の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、高分子フィルムを、温度100〜250℃程度で1.1〜2.5倍程度延伸することによりλ/4板を得ることができる。高分子フィルムの延伸倍率および延伸温度を調整して、λ/4板の正面位相差および厚み方向の位相差を制御することができる。前記λ/4板の厚みおよび光透過率は、特にこれに限定されるものではないが、200μm以下程度であり、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。
【符号の説明】
【0039】
100 車両用映像表示ミラー
110 第1の偏光板
120 ハーフミラー
130 映像表示装置
131 液晶セル
132 第2の偏光板
133 第3の偏光板