(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571944
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】車いす移動車用のフロアマット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 3/04 20060101AFI20190826BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
B60N3/04 A
B60P3/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-25118(P2015-25118)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-147572(P2016-147572A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390038092
【氏名又は名称】株式会社マツダE&T
(73)【特許権者】
【識別番号】505335935
【氏名又は名称】株式会社すぎはら
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】松下 芳昭
【審査官】
安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−189149(JP,A)
【文献】
特開平07−257291(JP,A)
【文献】
実開昭54−053248(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
B60P 3/00
A47G 27/00 − 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座した状態での車いすの乗車を可能にする拡張スペースが車室の後部に備えられている車いす移動車用のフロアマットであって、
前記拡張スペースにおける左右の床面を覆う一対のサイドマット部と、
前記一対のサイドマット部の間に拡がる床面を覆うリヤマット部と、
前記拡張スペースの前方に拡がる床面を覆うフロントマット部と、
を備え、
前記一対のサイドマット部の各々は、
前記拡張スペースの側面に沿って前後方向に延び、後輪の上方に位置する上面部と、
前記上面部の内縁から垂下して拡がり、前記後輪の内方に位置する内側面部と、
前記上面部及び前記内側面部の各々の前端縁に連なって拡がり、前記後輪の前方に位置する前端面部と、
前記内側面部及び前記前端面部の各々の下縁に沿って前記後輪から離れる方向に張り出すフランジ部と、
を有し、
前記フロントマット部及び前記リヤマット部は、前記フロントマット部の後縁部と前記リヤマット部の前縁部とを、上下に重ねて接合することによって左右方向に延びるように形成される接合帯により一体に接合された状態で、前記フランジ部を介して前記一対のサイドマット部に接合されており、
前記接合帯が、前記一対のサイドマット部の間に入り込んでいるフロアマット。
【請求項2】
請求項1に記載のフロアマットにおいて、
前記接合帯が、車いすの後輪が入り込む位置よりも前方に位置しているフロアマット。
【請求項3】
請求項2に記載のフロアマットにおいて、
前記接合帯が、前記フロントマット部の後縁部の上に前記リヤマット部の前縁部を重ねて構成されているフロアマット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載されているフロアマットを製造する製造方法であって、
前記一対のサイドマット部、前記リヤマット部、及び前記フロントマット部の各々の形状に対応したパーツ型を、1台の金型に接合時の配置で互いに隙間を隔てて形成し、
前記金型を用いてシート状のマット素材を成型することにより、前記一対のサイドマット部、前記リヤマット部、及び前記フロントマット部の各々を一度に成型する製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法において、
前記サイドマット部の各々のパーツ型を、左右の前記上面部の内縁が互いに離れる方向に傾斜させることにより、前記一対のサイドマット部を左右方向に傾けた状態で成型する製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法において、
更に、前記サイドマット部の各々のパーツ型を、前記上面部が後方に傾くように傾斜させることにより、前記一対のサイドマット部を前後及び左右の方向に傾けた状態で成型する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座した状態での車いすの乗車を可能にする拡張スペースが、車室の後部に備えられている車いす移動車用のフロアマット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のフロアマットは、樹脂と繊維とで構成されており、金型を用いた熱成型により、装着部位に対応した立体的形状に形成されている(特許文献1)。
【0003】
建設機械用ではあるが、複数のパーツを組み合わせて1枚のフロアマットにする方法は、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−146744号公報
【特許文献1】特開平11−20531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
着座した状態の車いすを車室の後部に収容する車いす移動車では、車室の後部の床面を一般的な車両より低くしてスペースの拡張を図っている(拡張スペース)。
【0006】
床面の中央部を下げると、後輪が位置している床面の左右の部分が相対的に高くなるため、これらの間で大きな段差が生じる。それに加え、車いすを受け入れ易くするために、拡張スペースの横幅はできるだけ広くしたい要望があることから、その段差の隅部は角張った形状になり易い。
【0007】
その結果、車いす移動車の場合、車室の床面に装着されるフロアマットは、一般的な自動車と比べると、凹凸の大きい角張った形状となるため、成型が難しくなるという問題がある。
【0008】
その点、特許文献2のように、フロアマットを複数のパーツに分割して組み合わせるようにすれば、パーツごとに成型できるため、一体では成型が難しいフロアマットでも製造できるようになる。
【0009】
しかし、パーツ数を増やせば、それだけ金型が増えるため、製造コストの上昇を招くし、パーツ数を少くすれば、それだけ成型が難しくなって成型不良が発生し易くなる。
【0010】
更に、車いす移動車用のフロアマットの場合、その上を車いすが高頻度で走行する。そのため、フロアマットを複数のパーツで構成すると、その継ぎ目が車いすの走行の邪魔になるおそれがあるし、車いすが乗り降りする際の衝撃で、その継ぎ目で捲れ等が発生し易いという問題もある。
【0011】
そこで本発明の目的は、低コストで安定して製造でき、機能的にも優れた車いす移動車用のフロアマットを提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、着座した状態での車いすの乗車を可能にする拡張スペースが車室の後部に備えられている車いす移動車用のフロアマットである。
【0013】
前記フロアマットは、前記拡張スペースにおける左右の床面を覆う一対のサイドマット部と、前記一対のサイドマット部の間に拡がる床面を覆うリヤマット部と、前記拡張スペースの前方に拡がる床面を覆うフロントマット部と、を備えている。
【0014】
前記一対のサイドマット部の各々は、前記拡張スペースの側面に沿って前後方向に延び、後輪の上方に位置する上面部と、前記上面部の内縁から垂下して拡がり、前記後輪の内方に位置する内側面部と、前記上面部及び前記内側面部の各々の前端縁に連なって拡がり、前記後輪の前方に位置する前端面部と、前記内側面部及び前記前端面部の各々の下縁に沿って前記後輪から離れる方向に張り出すフランジ部と、を有している。
【0015】
そして、前記フロントマット部及び前記リヤマット部は、左右方向に延びる接合帯を介して一体に接合された状態で、前記フランジ部を介して前記一対のサイドマット部に接合されており、前記接合帯が、前記一対のサイドマット部の間に入り込んでいる。
【0016】
すなわち、このフロアマットは、一対のサイドマット部、リヤマット部、及びフロントマット部の各々に分割された4つのパーツで構成されていて、これらを互いに接合することによって形成されているため、奥行きが深くて角張った形状のサイドマット部を含んでいても、容易に成型できるし、後述するように1台の金型に集約して効率よく成型することもできる。
【0017】
しかも、リヤマット部とフロントマット部とを接合して左右方向に延びる接合帯が、一対のサイドマット部の間に入り込んでいるため、フロントマット部が、構造的に強度が高くなっている各サイドマット部における前端部の内隅部とフランジ部を介して接合されることとなり、フロアマットの強度及び剛性の向上を図ることができる。
【0018】
前記接合帯は、車いすの後輪が入り込む位置よりも前方に位置しているようにするとよい。
【0019】
車いすの荷重の多くは後輪に加わるため、車いすの乗り降ろしの際に、後輪が接合帯を乗り越えると、その都度、車いすに大きな衝撃が加わるし、接合帯が捲れ上がるおそれもある。それに対し、接合帯が、車いすの後輪が入り込む位置よりも前方に位置していれば、後輪が接合帯を乗り越えることがないため、そのような不具合が発生しない。
【0020】
その場合、前記接合帯は、前記フロントマット部の後縁部の上に前記リヤマット部の前縁部を重ねて構成するのが好ましい。
【0021】
車いすの取り扱い上、車いすの前輪に負荷が加わり易い前進方向で、接合帯を乗り越え易くなり、前輪が持ち上がり易い後退方向で、リヤマット部の前縁部に接触し得る状態となる。従って、前輪が接合帯を乗り越えるようになっていても、衝撃や捲れの発生を効果的に防止できる。
【0022】
このようなフロアマットは、複数のパーツに分割し、各パーツをまとめて成型して製造するのが好ましい。
【0023】
すなわち、前記一対のサイドマット部、前記リヤマット部、及び前記フロントマット部の各々の形状に対応したパーツ型を、1台の金型に接合時の配置で互いに隙間を隔てて形成し、前記金型を用いてシート状のマット素材を成型することにより、前記一対のサイドマット部、前記リヤマット部、及び前記フロントマット部の各々を一度に成型する。
【0024】
パーツごとに金型を作製すると、それだけ金型のコストが増加するが、この製造方法によれば、1台の金型で各パーツを一度に効率よく成型することができ、製造コストを抑制できる。
【0025】
特に、前記サイドマット部の各々のパーツ型を、左右の前記上面部の内縁が互いに離れる方向に傾斜させることにより、前記一対のサイドマット部を左右方向に傾けた状態で成型するとよい。
【0026】
そうすれば、奥行きが深い角張った形状のサイドマット部であっても、成型後に抜き取り易くなる。上面部と内側面部との境界の隅部において、プレス時に力が加わる方向と、マット素材の延びる方向とがずれて一致しなくなるため、成型不良も効果的に抑制できる。
【0027】
更に、前記サイドマット部の各々のパーツ型を、前記上面部が後方に傾くように傾斜させることにより、前記一対のサイドマット部を前後及び左右の方向に傾けた状態で成型するのが好ましい。
【0028】
そうすれば、内側面部と同様に、前端面部も抜き取り易くなって、更に成型が容易になる。そして、上面部と前端面部との境界の隅部においても、プレス時に力が加わる方向と、マット素材の延びる方向とが一致しなくなるため、成型不良をより効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のフロアマットによれば、機能的に優れるうえに、低コストで安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明を適用した車いす移動車を示す概略斜視図である。
【
図4】
図2におけるX−X線での概略断面図である。
【
図5】成型後の金型(凹型)を示す概略平面図である。
【
図6】
図5におけるY−Y線での概略断面図である。
【
図7】
図5におけるZ−Z線での概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0032】
図1に、本発明を適用した車いす移動車(以下、単に車両1ともいう)。
【0033】
この車両1では、車室の後部に大きなスペース(拡張スペース2)が得られるように構成されていて、その拡張スペース2に、1台の車いすが着座した状態のままで乗車できるようになっている。なお、拡張スペース2の前方に拡がる車室の前部には、運転席及び助手席が設置されていて、これらの後方には、折り畳み可能なリアシートが設置されている場合もある。
【0034】
車両1の後端部には、拡張スペース2に通じる大きな乗降口3が設けられていて、その乗降口3を開閉するバックドア4が、乗降口3の上部に揺動可能に設置されている。車両1への車いすの乗り降ろしは、この乗降口3を通じて行われるようになっており、乗降口3の下部には、その際に用いられる折り畳み式のスロープ5が設置されている。
図1には、そのスロープ5を展開した使用状態を示している。
【0035】
車いすが乗り降りする、拡張スペース2の床面における車幅方向の中間部は、一般的な自動車と比べて低くなっており、その横幅も限界近くまで拡張されている(低床部6)。その低床部6の後部は、展開したスロープ5と段差無く連なるように、後方に向かって下る傾斜面となっている。
【0036】
低床部6の左右両側には、後輪7が位置しており、これら後輪7との接触を避けるために、低床部6の左右には、内向きに膨出した高床部8が形成されている。これら低床部6及び高床部8を含む、車室全体の床面を覆うように、フロアマット10が車室に敷設されている。
【0037】
(フロアマット)
図2に、そのフロアマット10を示す。このフロアマット10は、樹脂と繊維とで構成された公知のマット素材を用いて、車室の床面に対応した立体的形状に形成されている。
【0038】
フロアマット10は、一対のサイドマット部11,11、リヤマット部12、及びフロントマット部13を有している。
【0039】
一対のサイドマット部11,11は、左右の高床部8を覆う部分であり、各サイドマット部11は、左右対称状に形成されている。各サイドマット部11は、拡張スペース2の側面に沿って前後方向に延びる略矩形の上面部11aと、上面部11aの内縁から垂下して拡がる内側面部11bと、上面部11a及び内側面部11bの各々の前端縁に連なって拡がる前端面部11cとを有している。
【0040】
上面部11aは後輪7の上方に位置し、内側面部11bは後輪7の内方に位置し、前端面部11cは後輪7の前方に位置している。上面部11aは略水平であり、内側面部11b及び前端面部11cは略垂直である。内側面部11bの後部は、後方に向かって下り傾斜しており、内側面部11bの後端縁は、前端縁よりも大きくなっている。
【0041】
リヤマット部12は、低床部6を覆う幅広な略矩形の部分である。リヤマット部12は、左右の内側面部11bの下縁に沿って拡がっていて、その後部は、後方に向かって下り傾斜している。リヤマット部12と各内側面部11bとの境界の隅部は、略直交している。
【0042】
フロントマット部13は、車室の前部の床面を覆う部分であり、リヤマット部12及び左右のサイドマット部11に連なって略水平に拡がっている。フロントマット部13の左右の幅は、リヤマット部12よりも大きく形成されている。
【0043】
このフロアマット10は、成型が容易にできるように、一対のサイドマット部11,11、リヤマット部12、及びフロントマット部13の各々に分割された4つのパーツで構成されていて、これらを互いに接合することによって一体化されている。
【0044】
図3に、フロアマット10の分解組立図を示す。
【0045】
各サイドマット部11には、リヤマット部12及びフロントマット部13と接合するために、平面視で略L字状のフランジ部11dが設けられている。フランジ部11dは、内側面部11b及び前端面部11cの各々の下縁に沿って後輪7から離れる方向に張り出している。
【0046】
リヤマット部12の前後方向の長さは、サイドマット部11の前後方向の長さよりも短く形成されている。そして、フロントマット部13の後部中央には、リヤマット部12と同一幅で後方に張り出す張出部13aが設けられていて、この張出部13aの後縁部とリヤマット部12の前縁部とを上下に重ねて接合することにより、フロントマット部13とリヤマット部12とは一体化されている。
【0047】
具体的には、張出部13aの後縁部の上に、面ファスナー14を介してリヤマット部12の前縁部を重ね合わせることにより、着脱可能に接合されている。それにより、フロントマット部13とリヤマット部12との境界部分には、上から順にリヤマット部12、面ファスナー14、及びフロントマット部13が積層された帯状の接合帯15が、左右方向に延びるように形成されている。
【0048】
そうして一体化されたフロントマット部13及びリヤマット部12は、面ファスナー14を介してフランジ部11dの上に重ね合わせることにより、左右のサイドマット部11,11と着脱可能に接合されている。
【0049】
その結果、接合帯15が左右のサイドマット部11,11の間に入り込み、フロントマット部13が、構造的に強度が高くなっている各サイドマット部11における前端部の内隅部と、略L字状のフランジ部11dを介して接合されることとなり、フロアマット10の強度及び剛性の向上が図られている。
【0050】
リヤマット部12は、接合帯15及び左右のフランジ部11d,11dにおいて、最も上側に位置しているため、リヤマット部12は、フロントマット部13及び左右のサイドマット部11,11から簡単に引き剥がすことができる。
【0051】
従って、低床部6に、バッテリーボックスや備品庫などの、外部からのアクセスが要求される装置等を設置することができるので、利便性に優れる。
【0052】
接合帯15は、車いすの後輪RWが入り込む位置よりも前方に位置している。
【0053】
図4に、車いすの固定位置と接合帯15との位置関係を示す。車いすは、拡張スペース2に収容された後、フックの付いたベルトを引っ掛け、ウインチで引っ張るなどして所定位置に固定される。その際、車いすの後輪RWが入り込むことができる位置よりも前方に接合帯15が配置されている。
【0054】
車いすの荷重の多くは後輪RWに加わるため、車いすの乗り降ろしの際に、後輪RWが接合帯15を乗り越えると、その都度、車いすに大きな衝撃が加わるし、接合帯15が捲れ上がるおそれもある。それに対し、このフロアマット10では、車いすの後輪RWが接合帯15を乗り越えることがないため、そのような不具合が発生しない。
【0055】
なお、車いすの前輪FWも接合帯15を乗り越えないようにするのが好ましいが、前輪FWは乗り越える位置にあってもよい。前輪FWに加わる負荷は小さうえに、車いすを後傾させることでその負荷も簡単に調整できるので、前輪FWが接合帯15を乗り越えても支障はない。
【0056】
更に、フロントマット部13の上にリヤマット部12を重ね合わせて接合帯15が形成されているので、車いすの取り扱い上、前輪FWに負荷が加わり易い前進方向が乗り越え易くなっており、前輪FWが持ち上がり易い後退方向に、捲れ易いリヤマット部12の前縁部が向いている。従って、接合帯15が、前輪FWが入り込む位置よりも後方に位置していても、衝撃や捲れの発生を効果的に防止できる。
【0058】
フロアマット10を構成している一対のサイドマット部11,11、リヤマット部12、及びフロントマット部13の各パーツは、同一のシート状のマット素材を、金型を用いて熱成型することによって形成される。詳しくは、内部に各パーツの形状をしたキャビティ(パーツ型)を有する金型を作製し、加熱しながら一定時間キャビティ内にマット素材を挟み込んでプレスする。
【0059】
このとき、パーツごとに金型を作製すると、それだけ金型のコストが増加する。そこで、本実施形態では、1台の金型で各パーツを一度に効率よく成型できるようにしている。
【0060】
図5に、その金型30の概要を示す。金型30は、互いに突き合わされる一対の凹型30a及び凸型30bからなり、その突き合わせ面31に、一対のサイドマット部11,11、リヤマット部12、及びフロントマット部13の各々の形状に対応したパーツ型32が形成されている。成型時には、突き合わせ面31と直交する方向に、凹型30aと凸型30bが相対的にスライドして、プレス処理及び抜き処理が行われる。
【0061】
各パーツ型32は、互いに干渉しない程度に隙間を隔てて、接合時の状態で金型30に配置されている。矩形の突き合わせ面31に、各パーツ型32を効率的に配置したことで、金型30の全体が過度に大きくなるのを防いでいる。
【0062】
各パーツ型32に合わせてマット素材をセットし、熱成型すれば、一対のサイドマット部11,11、リヤマット部12、及びフロントマット部13の各々を一度に成型することができ、金型30のコストだけでなく製造コストも抑制できる。なお、開口部分や外縁部分の切断は、成型と同時に行ってもよいし、成型後に行ってもよい。
【0063】
更に、本実施形態では、成型不良を抑制し、成型が容易にできるようにサイドマット部11のパーツ型32を工夫している。
【0064】
すなわち、サイドマット部11は、奥行きが深い角張った立体的形状をしているため、成型後の抜き取りが難しく、また、角部でマット素材が延び過ぎて、厚みが薄くなったり破れたりするなど、成型不良が発生するおそれがある。
【0065】
そこで、この金型30では、
図6に示すように、サイドマット部11の各パーツ型32を、左右の上面部11a,11aの内縁が互いに離れる方向に傾斜するように形成し、一対のサイドマット部11,11が左右方向に傾いた状態で成型されるようにしている。具体的には、金型30のスライド方向に対して内側面部11bに3°〜45°の範囲で抜き勾配θwが設定されている。
【0066】
そうすることで、金型30の抜き方向に向かって両内側面部11b,11bが拡がるように傾斜するため、成型後の各サイドマット部11が抜き取り易くなる。上面部11aと内側面部11bとの境界の角部において、プレス時に力が加わる方向と、マット素材の延びる方向とがずれて一致しなくなるため、角部の薄肉化による成型不良を効果的に抑制できる。
【0067】
更に、この金型30では、
図7に示すように、サイドマット部11の各パーツ型32を、上面部11aが後方に向かって下るように傾斜させ、サイドマット部11が、左右だけでなく前後の方向にも傾いた状態で成型されるようにしている。具体的には、金型30のスライド方向に対して前端面部11cに3°〜45°の範囲で抜き勾配θfが設定されている。
【0068】
従って、内側面部11bと同様に、前端面部11cも抜き取り易くなる。そして、上面部11aと前端面部11cとの境界の角部においても、プレス時に力が加わる方向と、マット素材の延びる方向とが一致しなくなるため、成型不良を効果的に抑制できる。
【0069】
なお、本発明にかかるフロアマットは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0070】
フロントマット部13と両サイドマット部11,11とは、接着するなどして着脱不能に接合してあってもよい。リヤマット部12も同様に、これらに着脱不能に接合してもよい。車いすを乗り降ろしする手段は、スロープに限らない。リフトで昇降させてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 車いす移動車
2 拡張スペース
3 乗降口
4 バックドア
10 フロアマット
11 サイドマット部
11a 上面部
11b 内側面部
11c 前端面部
11d フランジ部
12 リヤマット部
13 フロントマット部
15 接合帯