(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0019】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部、ヘッドユニット、およびヘッド冷却部の概略構成図である。
図3は、ヘッドユニットおよびヘッド冷却部の平面図である。
図4は、ヘッドユニットおよびヘッド冷却部の分解斜視図である。
図5は、
図3のA−A線に沿った断面図である。
図6は、
図1に示すインクジェット印刷装置のインク循環部、インク補給部、および圧力生成部の概略構成図である。
【0021】
以下の説明において、
図2の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、
図2における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
図2において、左から右へ向かう方向が印刷媒体である用紙Pの搬送方向である。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、ヘッドユニット3と、ヘッド冷却部4と、インク循環部5A,5Bと、インク補給部6A,6Bと、圧力生成部7と、制御部8とを備える。なお、インク循環部5A,5B、インク補給部6A,6Bの符号におけるアルファベットの添え字(A,B)を省略して総括的に表記することがある。
【0023】
搬送部2は、用紙Pを搬送する。
図1、
図2に示すように、搬送部2は、搬送ベルト11と、駆動ローラ12と、従動ローラ13,14,15と、ベルトモータ16と、用紙吸着ファン17とを備える。
【0024】
搬送ベルト11は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト11は、駆動ローラ12および従動ローラ13〜15に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト11には、複数のベルト穴(図示せず)が形成されている。搬送ベルト11は、用紙吸着ファン17の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により、用紙Pを吸着保持する。搬送ベルト11は、
図2における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0025】
駆動ローラ12は、搬送ベルト11を
図2における時計回り方向に回転させる。
【0026】
従動ローラ13〜15は、駆動ローラ12とともに搬送ベルト11を支持する。従動ローラ13〜15は、搬送ベルト11を介して駆動ローラ12に従動する。従動ローラ13は、駆動ローラ12と同じ高さで、駆動ローラ12の左方に配置されている。従動ローラ14,15は、駆動ローラ12および従動ローラ13の下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。
【0027】
ベルトモータ16は、駆動ローラ12を回転駆動させる。
【0028】
用紙吸着ファン17は、下方向への気流を生じさせる。これにより、用紙吸着ファン17は、搬送ベルト11のベルト穴を介して空気を吸引してベルト穴に負圧を発生させ、用紙Pを搬送ベルト11上に吸着させる。用紙吸着ファン17は、環状の搬送ベルト11に囲まれた領域に配置されている。
【0029】
ヘッドユニット3は、搬送部2により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。ヘッドユニット3は、インクジェットヘッド21A,21Bと、ヘッドホルダ22とを備える。なお、インクジェットヘッド21A,21Bの符号におけるアルファベットの添え字(A,B)を省略して総括的に表記することがある。
【0030】
インクジェットヘッド21A,21Bは、用紙Pにインクを吐出する。インクジェットヘッド21A,21Bは、互いに異なる色のインクを吐出する。インクジェットヘッド21A,21Bは、用紙Pの搬送方向(左右方向)に沿って並列して配置されている。インクジェットヘッド21A,21Bは、それぞれヘッドモジュール26を6個ずつ有する。
【0031】
ヘッドモジュール26は、
図3、
図4に示すように、千鳥状に配置されている。すなわち、インクジェットヘッド21において、それぞれ前後方向に沿って等間隔で配置された3つのヘッドモジュール26からなる2列のヘッドモジュール列が、前後方向に半ピッチ分だけずれるように配置されている。
【0032】
ヘッドモジュール26は、インク吐出面26aを有する。インク吐出面26aは、搬送ベルト11に対向するヘッドモジュール26の下面である。インク吐出面26aには、前後方向(主走査方向)に沿って配置された複数のノズル(図示せず)が開口している。ヘッドモジュール26は、インク循環部5により供給されるインクをノズルから吐出する。
【0033】
各ヘッドモジュール26には、それぞれヘッド温度センサ27が設けられている。ヘッド温度センサ27は、ヘッドモジュール26の温度を検出する。
【0034】
ヘッドホルダ22は、インクジェットヘッド21A,21Bを保持する。ヘッドホルダ22は、中空状の直方体形状に形成された函体からなる。
図4、
図5に示すように、ヘッドホルダ22は、底板31と、側板32〜35と、天板36とを有する。
【0035】
底板31は、インクジェットヘッド21A,21Bのヘッドモジュール26を保持して固定する。底板31は、矩形状に形成されている。
図5に示すように、底板31には、取付開口部31aが形成されている。取付開口部31aは、ヘッドモジュール26と同じ数だけ形成されている。
【0036】
取付開口部31aには、インク吐出面26aが底板31の下面より下方に突出するようにヘッドモジュール26が挿入され、固定される。取付開口部31aは、ヘッドモジュール26の水平面に沿った断面より大きい貫通穴からなる。これにより、ヘッドモジュール26の取り付け位置および角度が調整可能になっている。取付開口部31aがこのように形成されているため、
図5に示すように、取付開口部31aには、ヘッドモジュール26が隙間(請求項の開口部に相当)31bを介して取り付けられる。隙間31bにより、ヘッドホルダ22の底板31と搬送部2の搬送ベルト11との間の空間と、ヘッドホルダ22内とが連通されている。
【0037】
側板32,33,34,35は、それぞれヘッドホルダ22の前側、右側、後側、左側の側壁を形成する。側板32〜35は、一体に形成され、底板31の周囲に立設されている。
【0038】
前側の側板32には、4つの通風穴32aが形成されている。通風穴32aは、後述する吹付部41によりヘッドホルダ22内へ空気が吹き付けられる際の空気の流入口である。4つの通風穴32aは、インクジェットヘッド21A,21Bのヘッドモジュール26が形成する4列のヘッドモジュール列の延長線上に1つずつ形成されている。
【0039】
後側の側板34には、4つの通風穴34aが形成されている。通風穴34aは、後述する吸引部42によりヘッドホルダ22から空気が吸引される際の空気の流出口である。4つの通風穴34aは、それぞれ前側の側板32の4つの通風穴32aに対向する位置に配置されている。すなわち、4つの通風穴34aは、インクジェットヘッド21A,21Bのヘッドモジュール26が形成する4列のヘッドモジュール列の延長線上に1つずつ形成されている。
【0040】
天板36は、側板32〜35からなる側壁の上端の開口部を塞ぐ蓋である。天板36は、矩形状に形成されている。
【0041】
ヘッド冷却部4は、ヘッドホルダ22内に冷却風を発生させ、インクジェットヘッド21を冷却する。ヘッド冷却部4は、吹付部41と、吸引部42とを備える。
【0042】
吹付部41は、ヘッドホルダ22内へ外部から空気を吹き付ける。吹付部41は、ヘッドホルダ22の前側に配置されている。吹付部41は、吹付チャンバ46と、吹付ファン47とを備える。
【0043】
吹付チャンバ46は、吹付ファン47とヘッドホルダ22との間の空気の流路を形成する。吹付チャンバ46は、左右方向に細長い形状で中空状に形成されている。吹付チャンバ46は、ヘッドホルダ22の前側の側板32上に配置されている。吹付チャンバ46の側板32に接する面には、4つの吹付穴46aが形成されている。
【0044】
吹付穴46aは、ヘッドホルダ22内へ空気を吹き付ける際の吹付チャンバ46からの空気の流出口である。吹付穴46aは、側板32の通風穴32aに対応する位置に配置されている。すなわち、4つの吹付穴46aは、インクジェットヘッド21A,21Bのヘッドモジュール26が形成する4列のヘッドモジュール列の延長線上に1つずつ形成されている。
【0045】
吹付ファン47は、吹付チャンバ46の一端から吹付チャンバ46内へ送風する。これにより、吹付チャンバ46の吹付穴46aを介してヘッドホルダ22内へ空気が吹き付けられる。
【0046】
吸引部42は、ヘッドホルダ22から空気を吸引する。吸引部42は、ヘッドホルダ22の後側に配置されている。吸引部42は、吸引チャンバ48と、吸引ファン49とを備える。
【0047】
吸引チャンバ48は、ヘッドホルダ22と吸引ファン49との間の空気の流路を形成する。吸引チャンバ48は、左右方向に細長い形状で中空状に形成されている。吸引チャンバ48は、ヘッドホルダ22の後側の側板34上に配置されている。吸引チャンバ48の側板34に接する面には、4つの吸引穴48aが形成されている。
【0048】
吸引穴48aは、ヘッドホルダ22から空気を吸引する際の吸引チャンバ48への空気の流入口である。吸引穴48aは、側板34の通風穴34aに対応する位置に配置されている。すなわち、4つの吸引穴48aは、インクジェットヘッド21A,21Bのヘッドモジュール26が形成する4列のヘッドモジュール列の延長線上に1つずつ形成されている。
【0049】
吸引ファン49は、吸引チャンバ48の一端から空気を吸引する。これにより、吸引チャンバ48の吸引穴48aおよび側板34の通風穴34aを介してヘッドホルダ22から空気が吸引される。
【0050】
インク循環部5は、インクを循環しつつインクジェットヘッド21にインクを供給する。インク循環部5A,5Bは、それぞれインクジェットヘッド21A,21Bにインクを供給する。
図6に示すように、インク循環部5は、加圧タンク51と、分配器52と、集合器53と、負圧タンク54と、インクポンプ55と、インク温度調整部56と、インク温度センサ57と、インク循環管58〜60とを備える。
【0051】
加圧タンク51は、インクジェットヘッド21に供給するインクを貯留する。加圧タンク51のインクは、インク循環管58および分配器52を介してインクジェットヘッド21に供給される。加圧タンク51内には、インクの液面上に空気層61が形成されている。加圧タンク51は、後述の加圧側連通管82を介して、後述の加圧共通気室81に接続されている。加圧タンク51は、インクジェットヘッド21より低い位置に配置されている。
【0052】
加圧タンク51には、加圧タンク液面センサ62と、インクフィルタ63とが設けられている。
【0053】
加圧タンク液面センサ62は、加圧タンク51内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。加圧タンク液面センサ62は、加圧タンク51内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0054】
インクフィルタ63は、インク内のゴミ等を除去する。
【0055】
分配器52は、インク循環管58を介して加圧タンク51から供給されるインクを、インクジェットヘッド21の各ヘッドモジュール26に分配する。
【0056】
集合器53は、インクジェットヘッド21で消費されなかったインクを各ヘッドモジュール26から集める。集合器53により集められたインクは、インク循環管59を介して負圧タンク54へと流れる。
【0057】
負圧タンク54は、インクジェットヘッド21で消費されなかったインクを集合器53から受け取って貯留する。また、負圧タンク54は、後述するインク補給部6のインクカートリッジ76から補給されるインクを貯留する。負圧タンク54内には、インクの液面上に空気層66が形成されている。負圧タンク54は、後述の負圧側連通管89を介して、後述の負圧共通気室88に連通されている。負圧タンク54は、加圧タンク51と同じ高さに配置されている。
【0058】
負圧タンク54には、負圧タンク液面センサ67が設けられている。負圧タンク液面センサ67は、負圧タンク54内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。負圧タンク液面センサ67は、負圧タンク54内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0059】
インクポンプ55は、負圧タンク54から加圧タンク51へインクを送液する。インクポンプ55は、インク循環管60の途中に設けられている。
【0060】
インク温度調整部56は、インク循環部5におけるインクの温度を調整する。インク温度調整部56は、インク循環管58の途中に設けられている。インク温度調整部56は、ヒータ71と、ヒータ温度センサ72と、ヒートシンク73と、インク冷却ファン(請求項のインク冷却部に相当)74とを備える。
【0061】
ヒータ71は、インク循環管58内を通るインクを加熱する。ヒータ温度センサ72は、ヒータ71の温度を検出する。ヒートシンク73は、インク循環管58内を通るインクから熱を受け取って放熱する。インク冷却ファン74は、ヒートシンク73へ送風し、インク循環管58内を通るインクを冷却する。
【0062】
インク温度センサ57は、インク循環部5におけるインクの温度を検出する。インク温度センサ57は、インク循環管58の途中に設けられている。
【0063】
インク循環管58は、加圧タンク51と分配器52とを接続する。インク循環管58の一部は、ヒータ71を経由する部分とヒートシンク73を経由する部分とに分岐している。インク循環管58には、加圧タンク51から分配器52に向かってインクが流れる。インク循環管59は、集合器53と負圧タンク54とを接続する。インク循環管59には、集合器53から負圧タンク54に向かってインクが流れる。インク循環管60は、負圧タンク54と加圧タンク51とを接続する。インク循環管60には、負圧タンク54から加圧タンク51に向かってインクが流れる。
【0064】
インク補給部6A,6Bは、それぞれインク循環部5A,5Bにインクを補給する。インク補給部6は、インクカートリッジ76と、インク補給弁77と、インク補給管78とを備える。
【0065】
インクカートリッジ76は、インクジェットヘッド21による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ76内のインクは、インク補給管78を介してインク循環部5の負圧タンク54に供給される。
【0066】
インク補給弁77は、インク補給管78内のインクの流路を開閉する。負圧タンク54へインクを補給する際、インク補給弁77が開かれる。
【0067】
インク補給管78は、インクカートリッジ76と負圧タンク54とを接続する。インク補給管78には、インクカートリッジ76から負圧タンク54に向かってインクが流れる。
【0068】
圧力生成部7は、インク循環部5の加圧タンク51および負圧タンク54にインク循環のための圧力を生成する。圧力生成部7は、インク循環部5A,5Bに共通のものである。圧力生成部7は、加圧共通気室81と、2本の加圧側連通管82と、加圧側大気開放弁83と、加圧側大気開放管84と、加圧側圧力調整弁85と、加圧側圧力調整管86と、加圧側圧力センサ87と、負圧共通気室88と、2本の負圧側連通管89と、負圧側大気開放弁90と、負圧側大気開放管91と、負圧側圧力調整弁92と、負圧側圧力調整管93と、負圧側圧力センサ94と、エアポンプ95と、エアポンプ用配管96と、合流管97と、エアフィルタ98と、オーバーフローパン99とを備える。
【0069】
加圧共通気室81は、インク循環部5Aの加圧タンク51の圧力とインク循環部5Bの加圧タンク51の圧力とを等しくするための気室である。加圧共通気室81は、2本の加圧側連通管82を介して2つのインク循環部5A,5Bの加圧タンク51の空気層61と連通されている。これにより、インク循環部5A,5Bの加圧タンク51どうしが、加圧共通気室81および加圧側連通管82を介して連通されている。
【0070】
加圧側連通管82は、加圧共通気室81と加圧タンク51の空気層61とを連通させる。2本の加圧側連通管82は、2つのインク循環部5A,5Bに1本ずつ対応して設けられている。加圧側連通管82は、一端が加圧共通気室81に接続され、他端が加圧タンク51の空気層61に接続されている。
【0071】
加圧側大気開放弁83は、加圧共通気室81および加圧側連通管82を介して加圧タンク51を密閉状態(大気から遮断した状態)と大気開放状態(大気に通じた状態)との間で切り替えるために、加圧側大気開放管84内の空気の流路を開閉する。加圧側大気開放弁83は、加圧側大気開放管84の途中に設けられている。
【0072】
加圧側大気開放管84は、加圧共通気室81および加圧側連通管82を介して加圧タンク51を大気開放するための空気の流路を形成する。加圧側大気開放管84は、一端が加圧共通気室81に接続され、他端が合流管97に接続されている。
【0073】
加圧側圧力調整弁85は、加圧共通気室81および加圧タンク51の圧力を調整するために、加圧側圧力調整管86内の空気の流路を開閉する。加圧側圧力調整弁85は、加圧側圧力調整管86の途中に設けられている。
【0074】
加圧側圧力調整管86は、加圧共通気室81および加圧タンク51の圧力調整のための空気の流路を形成する。加圧側圧力調整管86は、一端が加圧共通気室81に接続され、他端が合流管97に接続されている。
【0075】
加圧側圧力センサ87は、加圧共通気室81内の圧力を検出する。加圧共通気室81内の圧力は、インク循環部5A,5Bの加圧タンク51内の圧力と等しい。加圧共通気室81とインク循環部5A,5Bの加圧タンク51の空気層61とが連通されているためである。
【0076】
負圧共通気室88は、インク循環部5Aの負圧タンク54の圧力とインク循環部5Bの負圧タンク54の圧力とを等しくするための気室である。負圧共通気室88は、2本の負圧側連通管89を介して2つのインク循環部5A,5Bの負圧タンク54の空気層66と連通されている。これにより、インク循環部5A,5Bの負圧タンク54どうしが、負圧共通気室88および負圧側連通管89を介して連通されている。
【0077】
負圧側連通管89は、負圧共通気室88と負圧タンク54の空気層66とを連通させる。2本の負圧側連通管89は、2つのインク循環部5A,5Bに1本ずつ対応して設けられている。負圧側連通管89は、一端が負圧共通気室88に接続され、他端が負圧タンク54の空気層66に接続されている。
【0078】
負圧側大気開放弁90は、負圧共通気室88および負圧側連通管89を介して負圧タンク54を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、負圧側大気開放管91内の空気の流路を開閉する。負圧側大気開放弁90は、負圧側大気開放管91の途中に設けられている。
【0079】
負圧側大気開放管91は、負圧共通気室88および負圧側連通管89を介して負圧タンク54を大気開放するための空気の流路を形成する。負圧側大気開放管91は、一端が負圧共通気室88に接続され、他端が合流管97に接続されている。
【0080】
負圧側圧力調整弁92は、負圧共通気室88および負圧タンク54の圧力を調整するために、負圧側圧力調整管93内の空気の流路を開閉する。負圧側圧力調整弁92は、負圧側圧力調整管93の途中に設けられている。
【0081】
負圧側圧力調整管93は、負圧共通気室88および負圧タンク54の圧力調整のための空気の流路を形成する。負圧側圧力調整管93は、一端が負圧共通気室88に接続され、他端が合流管97に接続されている。
【0082】
負圧側圧力センサ94は、負圧共通気室88内の圧力を検出する。負圧共通気室88内の圧力は、インク循環部5A,5Bの負圧タンク54内の圧力と等しい。負圧共通気室88とインク循環部5A,5Bの負圧タンク54の空気層66とが連通されているためである。
【0083】
エアポンプ95は、負圧共通気室88を介してインク循環部5A,5Bの負圧タンク54から空気を吸引するとともに、加圧共通気室81を介してインク循環部5A,5Bの加圧タンク51へ空気を送る。エアポンプ95は、エアポンプ用配管96の途中に設けられている。
【0084】
エアポンプ用配管96は、エアポンプ95により負圧共通気室88から加圧共通気室81へ送られる空気の流路を形成する。エアポンプ用配管96は、一端が加圧共通気室81に接続され、他端が負圧共通気室88に接続されている。
【0085】
合流管97は、一端がオーバーフローパン99に接続され、他端(上端)がエアフィルタ98を介して大気に通じている。合流管97のオーバーフローパン99側の端は、通常時は、後述のオーバーフローボール100により閉鎖されている。合流管97には、加圧側大気開放管84、加圧側圧力調整管86、負圧側大気開放管91、および負圧側圧力調整管93が接続されている。これにより、加圧側大気開放管84、加圧側圧力調整管86、負圧側大気開放管91、および負圧側圧力調整管93が大気に連通される。
【0086】
エアフィルタ98は、合流管97への空気中のゴミ等の進入を防止する。エアフィルタ98は、合流管97の上端に設置されている。
【0087】
オーバーフローパン99は、例えばインク補給弁77の異常により、加圧タンク51、負圧タンク54からインクが溢れ、さらに加圧共通気室81、負圧共通気室88からもインクが溢れ出た場合に、合流管97を流れてくるインクを受け取る。
【0088】
オーバーフローパン99には、オーバーフローボール100が設けられている。オーバーフローボール100は、オーバーフローパン99にインクがない場合に、オーバーフローパン99の底面に開口する合流管97の端を閉鎖し、合流管97への外部の空気の流入を防ぐものである。合流管97からオーバーフローパン99へインクが流れてくると、オーバーフローボール100は浮き上がり、オーバーフローパン99にインクが流入できる。
【0089】
また、オーバーフローパン99には、オーバーフロー液面センサ101が設けられている。オーバーフロー液面センサ101は、オーバーフローパン99内のインクの液面高さが所定高さに達しているか否かを検出するためのものである。
【0090】
オーバーフローパン99は、廃液タンク(図示せず)に接続されており、オーバーフロー液面センサ101で液面が検出されると、廃液タンクへインクが排出されるようになっている。
【0091】
制御部8は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部8は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0092】
具体的には、制御部8は、搬送部2により用紙Pを搬送しつつ、インクジェットヘッド21からインクを吐出して用紙Pに印刷するよう制御する。
【0093】
また、制御部8は、印刷時において、ヘッド冷却部4の吹付部41および吸引部42によりヘッドホルダ22内に冷却風を発生させるよう制御する。この際、制御部8は、ヘッドモジュール26の周囲の隙間31bを介して、ヘッドホルダ22の底板31と搬送ベルト11との間の空間からヘッドホルダ22内にインクミストを含む空気を吸引するよう吹付部41の風量(吹付風量)および吸引部42の風量(吸引風量)を制御する。
【0094】
また、制御部8は、印刷モードとして、生産優先モード(請求項の第1モードに相当)と画像優先モード(請求項の第2モードに相当)とを選択的に用いる。生産優先モードは、インクジェットヘッド21の冷却性能を確保し、印刷物の生産性を落とさないように印刷する印刷モードである。画像優先モードは、生産優先モードよりも印刷画質を重視する印刷モードである。印刷モードは、例えば、ユーザによる操作パネル(図示せず)に対する操作により予め選択されて設定される。制御部8は、印刷モードに応じて吹付風量および吸引風量を制御する。
【0095】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0096】
図7、
図8は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
図7、
図8のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
【0097】
図7のステップS1において、制御部8は、実行する印刷モードが生産優先モードであるか否かを判断する。
【0098】
実行する印刷モードが生産優先モードであると判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部8は、生産優先モード用のヘッド冷却設定を行う。具体的には、制御部8は、吹付ファン47および吸引ファン49を駆動するためのデューティ比として、生産優先モード用の吹付ファン47のデューティ比Dsfおよび吸引ファン49のデューティ比Dskを設定する。
【0099】
デューティ比Dsf,Dskは、吹付風量および吸引風量に応じて決まるヘッドホルダ22内の冷却風W(
図9参照)の風量が、搬送部2による用紙搬送速度に応じたインクジェットヘッド21の冷却に要する風量となるように予め決定され、制御部8に記憶されている。ここで、用紙搬送速度が速いほど、ヘッドモジュール26の駆動周波数が大きくなるため、ヘッドモジュール26の発熱量が大きくなる。このため、用紙搬送速度が速いほど、インクジェットヘッド21の冷却に要する冷却風Wの風量は大きくなる。
【0100】
また、デューティ比Dsf,Dskは、吹付風量より吸引風量のほうが大きくなるような値になっている。吹付風量より吸引風量のほうが大きいとき、不足する吹付風量が、ヘッドホルダ22の底板31と搬送ベルト11との間の空間から補われる。すなわち、底板31の隙間31bを介して、底板31と搬送ベルト11との間の空間からヘッドホルダ22内へ流れる気流F(
図9参照)が発生する。この気流Fにより、空気とともにインクミストがヘッドホルダ22内に回収される。
【0101】
印刷画像の印字率を一定とすれば、印刷物の生産性が大きいほど、単位時間当たりのインクミストの発生量は大きくなる。ここで、印刷物の生産性は、用紙搬送速度が大きいほど、大きくなる。したがって、用紙搬送速度が大きいほど、単位時間当たりのインクミストの発生量が大きくなる。そこで、デューティ比Dsf,Dskは、用紙搬送速度が大きいほど、インクミストを多く回収できるように、隙間31bを介してヘッドホルダ22内に流れる気流Fの風量が大きくなるように決定される。ここで、隙間31bを介してヘッドホルダ22内へ流れる気流Fの風量は、吸引風量と吹付風量との差によって決まるものである。
【0102】
また、デューティ比Dsf,Dskは、隙間31bを介してヘッドホルダ22内へ流れる気流Fの風量が、この気流Fの影響による着弾ずれ量が許容範囲内になるように決定されている。着弾ずれ量は、ヘッドモジュール26から吐出されたインクの用紙Pへの着弾位置のずれ量である。
【0103】
ステップS2に続いて、ステップS3において、制御部8は、印刷動作を開始する。具体的には、まず、制御部8は、加圧側大気開放弁83および負圧側大気開放弁90を閉鎖する。これにより、インク循環部5A,5Bの加圧タンク51が加圧共通気室81等を介して密閉状態となり、負圧タンク54が負圧共通気室88等を介して密閉状態となる。なお、インクジェット印刷装置1が動作しない待機中は、加圧側大気開放弁83および負圧側大気開放弁90は開放され、加圧側圧力調整弁85および負圧側圧力調整弁92は閉鎖されている。
【0104】
次いで、制御部8は、エアポンプ95を起動させる。これにより、負圧共通気室88から加圧共通気室81へ空気が送られることで、負圧共通気室88および負圧タンク54が減圧され、加圧共通気室81および加圧タンク51が加圧される。これにより、加圧タンク51からインクジェットヘッド21へ向けてインクが流れる。
【0105】
制御部8は、加圧側圧力センサ87により検出される加圧共通気室81および加圧タンク51の圧力(加圧側圧力)、負圧側圧力センサ94により検出される負圧共通気室88および負圧タンク54の圧力(負圧側圧力)が、それぞれの設定圧Pk,Pfになると、エアポンプ95を停止する。ここで、制御部8は、エアポンプ95の起動後、加圧側圧力および負圧側圧力が設定圧Pk,Pfになるように、加圧側圧力センサ87および負圧側圧力センサ94の検出値に応じて加圧側圧力調整弁85および負圧側圧力調整弁92の開閉を制御する。
【0106】
設定圧Pk,Pfは、インク循環部5A,5Bにおいて所定のインク循環流量でインクを循環させつつ、ヘッドモジュール26のノズル圧を適正値(負圧)にするための圧力値として予め設定されたものである。
【0107】
加圧側圧力および負圧側圧力が設定圧Pk,Pfになると、制御部8は、ベルトモータ16により駆動ローラ12を起動させる。これにより、搬送ベルト11の周回駆動が開始される。制御部8は、用紙搬送速度が所定の印刷搬送速度となるようにベルトモータ16を制御する。
【0108】
また、制御部8は、用紙吸着ファン17を起動させる。これにより、用紙吸着ファン17により搬送ベルト11のベルト穴を介して空気が吸引され、ベルト穴に吸着力が発生する。
【0109】
また、制御部8は、吹付ファン47および吸引ファン49を起動させる。制御部8は、ステップS2で設定した生産優先モード用のデューティ比Dsf,Dskで吹付ファン47、吸引ファン49をそれぞれ駆動させる。
【0110】
吹付ファン47の駆動により、吹付チャンバ46の吹付穴46aおよびヘッドホルダ22の側板32の通風穴32aを介してヘッドホルダ22内へ空気が吹き付けられる。また、吸引ファン49の駆動により、ヘッドホルダ22の側板34の通風穴34aおよび吸引チャンバ48の吸引穴48aを介してヘッドホルダ22から空気が吸引される。
【0111】
これにより、
図9(a),(b)に示すように、ヘッドホルダ22内に前側から後側へ流れる冷却風Wが生じる。また、隙間31bを介して底板31と搬送ベルト11との間の空間からヘッドホルダ22内へ流れる気流Fが生じる。
【0112】
図示しない給紙部から搬送部2へ用紙Pが給紙されると、用紙Pは、搬送ベルト11に吸着保持されつつ搬送される。制御部8は、ヘッドユニット3の下方を搬送される用紙Pに対し、印刷ジョブに基づき、インクジェットヘッド21A,21Bからインクを吐出させて画像を印刷させる。指定印刷枚数が複数枚の場合、制御部8は、順次給紙されて搬送ベルト11上を搬送される各用紙Pに対して、インクジェットヘッド21A,21Bからインクを吐出させて画像を印刷させる。
【0113】
このような印刷動作中において、制御部8は、液面維持制御を行う。液面維持制御は、加圧タンク51および負圧タンク54の液面を基準高さに維持しつつインク循環を行うためのインクポンプ55およびインク補給弁77の制御である。
【0114】
具体的には、
図10に示すように、加圧タンク液面センサ62および負圧タンク液面センサ67がともにオンの状態では、制御部8は、インクポンプ55をオフとし、インク補給弁77を閉鎖する。加圧タンク液面センサ62がオンで負圧タンク液面センサ67がオフの状態でも同様に、制御部8は、インクポンプ55をオフとし、インク補給弁77を閉鎖する。
【0115】
加圧タンク液面センサ62がオフで負圧タンク液面センサ67がオンの状態では、制御部8は、インクポンプ55をオンとし、インク補給弁77を閉鎖する。
【0116】
加圧タンク液面センサ62および負圧タンク液面センサ67がともにオフの状態では、制御部8は、インクポンプ55をオフとし、インク補給弁77を開放する。
【0117】
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク51からインクジェットヘッド21へインクが供給され、インクジェットヘッド21で消費されなかったインクが負圧タンク54に回収される。加圧タンク液面センサ62がオフで負圧タンク液面センサ67がオンの状態になると、液面維持制御により、インクポンプ55が負圧タンク54から加圧タンク51へインクを送る。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
【0118】
また、インクが消費され、循環されているインク量が減少して加圧タンク液面センサ62および負圧タンク液面センサ67がともにオフの状態になると、液面維持制御により、インク補給弁77が開放され、負圧タンク54へインクが補給される。
【0119】
上述のような液面維持制御を行っても、加圧タンク51、負圧タンク54では細かな液面変動が生じる。例えば、加圧タンク51からインクジェットヘッド21へのインクの流出、およびインクジェットヘッド21で消費されなかったインクの負圧タンク54への帰還により、加圧タンク51および負圧タンク54の液面が変動する。また、インクカートリッジ76からのインク補給により、負圧タンク54の液面が変動する。また、インクポンプ55による送液により、加圧タンク51および負圧タンク54の液面が変動する。
【0120】
加圧タンク51、負圧タンク54の液面変動により、加圧側圧力、負圧側圧力に変動が生じる。これに対し、制御部8は、加圧側圧力および負圧側圧力の設定圧Pk,Pfを維持するように、加圧側圧力センサ87および負圧側圧力センサ94の検出値に応じて、エアポンプ95の駆動、加圧側圧力調整弁85および負圧側圧力調整弁92の開閉を適宜行う。
【0121】
ところで、インクには、印刷可能温度範囲がある。印刷可能温度範囲は、インクが適度の粘度を有し、インクジェットヘッド21での正常なインク吐出が保障できる温度範囲である。印刷動作を開始する際に、インク温度センサ57により検出されたインク温度が印刷可能温度範囲外である場合、制御部8は、インク循環部5においてインクを循環させつつ、インク温度調整部56を制御してインク温度の調整を行う。
【0122】
印刷動作においてインクジェットヘッド21のヘッドモジュール26が駆動されると、ヘッドモジュール26は発熱する。ヘッドモジュール26は冷却風Wにより冷却されるが、ヘッドモジュール26の温度がインク温度より高くなり、インク温度が上昇することがある。これに対し、制御部8は、インク温度が印刷可能温度範囲を逸脱しないように、インク温度センサ57により検出されるインク温度が、印刷可能温度範囲内のインク冷却開始温度Tkに到達すると、インク冷却ファン74を起動させる。これにより、インク循環部5におけるインク温度が低下する。インク温度がインク冷却開始温度Tkから所定温度だけ低下すると、制御部8は、インク冷却ファン74を停止する。
【0123】
印刷動作中は、ヘッドモジュール26によるインク吐出により、インクミストが発生する。インクミストの一部は、搬送ベルト11のベルト穴を介して用紙吸着ファン17に回収される。また、残りのインクミストの一部が、底板31の隙間31bを介してヘッドホルダ22内へ流れる気流Fにより、ヘッドホルダ22内に回収される。
【0124】
図7に戻り、ステップS3に続いて、ステップS4において、制御部8は、各ヘッド温度センサ27の検出温度に基づき、インクジェットヘッド21A,21Bのうちの少なくともいずれか一方がヘッド温度閾値Thに到達したか否かを判断する。ここで、制御部8は、インクジェットヘッド21において、ヘッド温度センサ27の検出温度がヘッド温度閾値Thに到達したヘッドモジュール26がある場合、当該インクジェットヘッド21はヘッド温度閾値Thに到達したと判断する。
【0125】
ヘッド温度閾値Thは、インクジェットヘッド21の冷却が不足しているか否かを判断するための閾値である。ヘッド温度閾値Thは、ヘッド温度上限値Tuより低い温度に設定されている。ヘッド温度上限値Tuは、ヘッドモジュール26の使用可能温度範囲の上限値である。
【0126】
インクジェットヘッド21A,21Bのうちの少なくともいずれか一方がヘッド温度閾値Thに到達したと判断した場合(ステップS4:YES)、ステップS5において、制御部8は、インクジェットヘッド21A,21Bのうちの少なくともいずれか一方がヘッド温度上限値Tuに到達したか否かを判断する。ここで、制御部8は、インクジェットヘッド21において、ヘッド温度センサ27の検出温度がヘッド温度上限値Tuに到達したヘッドモジュール26がある場合、当該インクジェットヘッド21はヘッド温度上限値Tuに到達したと判断する。
【0127】
インクジェットヘッド21A,21Bが両方ともヘッド温度上限値Tuに到達していないと判断した場合(ステップS5:NO)、ステップS6において、制御部8は、吹付ファン47および吸引ファン49のデューティ比を変更済みであるか否かを判断する。吹付ファン47および吸引ファン49のデューティ比を変更済みであると判断した場合(ステップS6:YES)、制御部8は、ステップS4へ戻る。
【0128】
吹付ファン47および吸引ファン49のデューティ比は変更済みではないと判断した場合(ステップS6:NO)、ステップS7において、制御部8は、冷却風Wの風量が大きくなるように、吹付ファン47および吸引ファン49のデューティ比を変更する。例えば、制御部8は、吹付ファン47および吸引ファン49のデューティ比を最大値(100%)に変更する。この後、制御部8は、ステップS4へ戻る。
【0129】
ステップS5において、インクジェットヘッド21A,21Bのうちの少なくともいずれか一方がヘッド温度上限値Tuに到達したと判断した場合(ステップS5:YES)、ステップS8において、制御部8は、印刷動作を停止する。具体的には、制御部8は、インクジェットヘッド21A,21B、駆動ローラ12、用紙吸着ファン17、吹付ファン62、および吸引ファン67を停止する。また、制御部8は、加圧側大気開放弁83および負圧側大気開放弁90を開放する。これにより、一連の動作が終了となる。
【0130】
ステップS4において、インクジェットヘッド21A,21Bが両方ともヘッド温度閾値Thに到達していないと判断した場合(ステップS4:NO)、ステップS9において、制御部8は、指定印刷枚数分の印刷が終了したか否かを判断する。指定印刷枚数分の印刷は終了していないと判断した場合(ステップS9:NO)、制御部8は、ステップS4へ戻る。
【0131】
指定印刷枚数分の印刷が終了したと判断した場合(ステップS9:YES)、制御部8は、駆動ローラ12、用紙吸着ファン17、吹付ファン62、および吸引ファン67を停止し、加圧側大気開放弁83および負圧側大気開放弁90を開放して、一連の動作を終了する。
【0132】
ステップS1において、実行する印刷モードが画像優先モードであると判断した場合(ステップS1:NO)、
図8のステップS10において、制御部8は、画像優先モード用のヘッド冷却設定を行う。具体的には、制御部8は、吹付ファン47および吸引ファン49を駆動するためのデューティ比として、画像優先モード用の吹付ファン47のデューティ比Dgfおよび吸引ファン49のデューティ比Dgkを設定する。
【0133】
デューティ比Dgf,Dgkは、吹付風量および吸引風量が、インクジェットヘッド21の冷却より印刷画質を優先した風量となるように予め決定され、制御部8に記憶されている。
【0134】
具体的には、デューティ比Dgf,Dgkは、冷却風Wの風量が生産優先モードの場合より小さくなるような値になっている。これにより、インクジェットヘッド21が過度に冷却されることを低減できる。インクジェットヘッド21が過度に冷却されると、ヘッドモジュール26内のインクの温度が低下して粘度が上昇することで、インク吐出量が減少する等により印刷画質が低下するおそれがある。
【0135】
デューティ比Dgf,Dgkは、吹付風量より吸引風量のほうが大きくなるような値である。そして、デューティ比Dgf,Dgkは、底板31の隙間31bを介してヘッドホルダ22内へ流れる気流Fの風量が、生産優先モードの場合より小さく、所定の大きさ以下のインク滴(インクミスト)は吸引可能な風量となるような値になっている。また、デューティ比Dgf,Dgkは、気流Fの風量が、ヘッドモジュールから吐出されるインクの主滴の飛翔軌道を曲げない風量となるような値になっている。これにより、気流Fによるインクの着弾ずれは軽減される一方、インクミストは気流Fによりヘッドホルダ22内に吸引される。
【0136】
ステップS10の後、制御部8は、ステップS11へ進む。ステップS11〜S13の処理は、前述した
図7のステップS3〜S5の処理と同様である。
【0137】
ステップS11で印刷動作を開始すると、画像優先モードにおいても、
図9(a),(b)に示した冷却風Wおよび気流Fが生じる。画像優先モードでは、生産優先モードよりも、冷却風Wおよび気流Fの風量は小さい。冷却風Wは、インクジェットヘッド21を過度に冷却しないような風量になっている。気流Fは、用紙Pにおけるインクの着弾ずれを抑えつつ、インクミストをヘッドホルダ22内に吸引可能な風量になっている。
【0138】
ステップS13において、インクジェットヘッド21A,21Bが両方ともヘッド温度上限値Tuに到達していないと判断した場合(ステップS13:NO)、ステップS14において、制御部8は、搬送部2による用紙搬送速度を減速済みであるか否かを判断する。用紙搬送速度を減速済みであると判断した場合(ステップS14:YES)、制御部8は、ステップS12へ戻る。
【0139】
用紙搬送速度は減速済みではないと判断した場合(ステップS14:NO)、ステップS15において、制御部8は、ベルトモータ16を制御して、用紙搬送速度を予め設定された速度まで減速させる。この後、制御部8は、ステップS12へ戻る。
【0140】
用紙搬送速度の減速後、制御部8は、ヘッドモジュール26を減速後の用紙搬送速度に応じた駆動周波数で駆動させる。これにより、ヘッドモジュール26の発熱量が低減し、温度上昇が抑制される。
【0141】
ステップS13において、インクジェットヘッド21A,21Bのうちの少なくともいずれか一方がヘッド温度上限値Tuに到達したと判断した場合(ステップS13:YES)、ステップS16において、制御部8は、印刷動作を停止する。これにより、一連の動作が終了となる。
【0142】
ステップS12において、インクジェットヘッド21A,21Bが両方ともヘッド温度閾値Thに到達していないと判断した場合(ステップS12:NO)、ステップS17において、制御部8は、指定印刷枚数分の印刷が終了したか否かを判断する。指定印刷枚数分の印刷は終了していないと判断した場合(ステップS17:NO)、制御部8は、ステップS12へ戻る。
【0143】
指定印刷枚数分の印刷が終了したと判断した場合(ステップS17:YES)、制御部8は、駆動ローラ12、用紙吸着ファン17、吹付ファン62、および吸引ファン67を停止し、加圧側大気開放弁83および負圧側大気開放弁90を開放して、一連の動作を終了する。
【0144】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部8は、ヘッドホルダ22の底板31の隙間31bを介して、底板31と搬送ベルト11との間の空間からヘッドホルダ22内にインクミストを含む空気を吸引するよう吹付風量および吸引風量を制御する。これにより、ヘッドホルダ22内にインクミストを回収できるので、インクミストによる装置内部の汚れおよび印刷画質の低下を軽減できる。
【0145】
また、インクジェット印刷装置1では、ヘッド冷却部4の吹付風量および吸引風量の制御により、ヘッドホルダ内22にインクミストを回収するので、インクミストを回収するための専用の機構を追加する必要がなく、装置の大型化は抑えられる。
【0146】
したがって、インクジェット印刷装置1によれば、装置の大型化を抑えつつ、インクミストによる装置内部の汚れおよび印刷画質の低下を軽減できる。
【0147】
また、インクジェット印刷装置1では、生産優先モードにおいて、制御部8は、冷却風Wの風量が用紙搬送速度に応じたインクジェットヘッド21の冷却に要する風量となるように吹付風量および吸引風量を制御する。これにより、生産優先モードでは、インクジェットヘッド21の冷却性能を確保し、印刷物の生産性を落とさないように印刷できる。
【0148】
また、画像優先モードでは、制御部8は、冷却風Wの風量が生産優先モードの場合より小さく、底板31の隙間31bを介してヘッドホルダ22内へ流れる気流Fの風量が、生産優先モードの場合より小さく、インクミストは吸引可能な風量となるよう吹付風量および吸引風量を制御する。これにより、画像優先モードでは、生産優先モードの場合よりも、インクジェットヘッド21の過度の冷却を低減するとともに、インクの着弾ずれを軽減しつつ、インクミストをヘッドホルダ22に回収できる。この結果、画像優先モードでは、生産優先モードの場合よりも良好な印刷画質が得られる。
【0149】
制御部8は、このような生産優先モードと画像優先モードとを選択的に用いる。このため、ユーザが印刷物の生産性を重視する場合と印刷画質を重視する場合とに対応でき、利便性が向上する。
【0150】
また、制御部8は、画像優先モードにおいて、インクジェットヘッド21の温度がヘッド温度閾値Thに到達した場合、用紙搬送速度を減速させる。これにより、インクジェットヘッド21のヘッドモジュール26の発熱量が低減し、温度上昇が抑制される。この結果、インクジェットヘッド21の破損を低減できる。
【0151】
なお、画像優先モードにおいて、吹付風量を0(ゼロ)としてもよい。この場合、制御部8は、印刷動作時において、ヘッド冷却部4の吹付ファン62および吸引ファン67のうち、吹付ファン62は駆動させず、吸引ファン67のみを駆動させる。
【0152】
この場合、
図9(a),(b)に示した冷却風Wは発生せず、気流Fが発生する。制御部8は、気流Fの風量が、ヘッドモジュールから吐出されるインクの主滴は吸引せず、所定の大きさ以下のインク滴(インクミスト)を吸引可能な風量となるようなデューティ比で吸引ファン67を駆動させる。これにより、インクの着弾ずれを軽減しつつ、インクミストをヘッドホルダ22に回収できる。
【0153】
なお、冷却風Wは発生しないが、気流Fによるインクジェットヘッド21に対する冷却効果は得られる。
【0154】
また、生産優先モードにおいて、吹付風量と吸引風量とを等しくしてもよい。この場合、吹付ファン62および吸引ファン67による風がヘッドホルダ22内で完結し、底板31の隙間31bを介してヘッドホルダ22内へ流れる気流Fは発生しない。このため、インクミストをヘッドホルダ22内に回収することはできないが、気流Fの影響によるインクの着弾ずれを抑制できる。
【0155】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態における画像優先モードの動作を変更した第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態のインクジェット印刷装置の構造は、第1実施形態のインクジェット印刷装置1と同様である。また、第2実施形態における生産優先モードの動作は、第1実施形態と同様の、
図7のステップS2〜S9の動作である。
【0156】
図11は、第2実施形態における画像優先モードの動作を説明するためのフローチャートである。
【0157】
図11のステップS21において、制御部8は、画像優先モード用の用紙搬送速度設定を行う。具体的には、制御部8は、画像優先モードでの印刷動作時における搬送部2による用紙搬送速度として、画像優先モード用の用紙搬送速度Vgを設定する。画像優先モード用の用紙搬送速度Vgは、生産優先モードにおける用紙搬送速度より遅い速度となるように予め決定され、制御部8に記憶されている。
【0158】
次いで、ステップS22において、制御部8は、画像優先モード用のヘッド冷却設定を行う。具体的には、制御部8は、吹付ファン47および吸引ファン49を駆動するためのデューティ比として、画像優先モード用の吹付ファン47のデューティ比Dgfおよび吸引ファン49のデューティ比Dgkを設定する。
【0159】
デューティ比Dgf,Dgkは、第1実施形態と同様に、冷却風Wの風量が生産優先モードの場合より小さくなるような値になっている。また、デューティ比Dgf,Dgkは、第1実施形態と同様に、底板31の隙間31bを介してヘッドホルダ22内へ流れる気流Fの風量が、生産優先モードの場合より小さく、所定の大きさ以下のインク滴(インクミスト)は吸引可能な風量となるような値になっている。また、デューティ比Dgf,Dgkは、気流Fの風量が、ヘッドモジュールから吐出されるインクの主滴の飛翔軌道を曲げない風量となるような値になっている。デューティ比Dgf,Dgkは予め決定され、制御部8に記憶されている。
【0160】
ここで、第2実施形態の画像優先モードでは、用紙搬送速度Vgが生産優先モードにおける用紙搬送速度より遅いので、生産優先モードの場合より単位時間当たりのインクミストの発生量が小さくなる。このため、第2実施形態の画像優先モードでは、デューティ比Dgf,Dgkの値を、第1実施形態よりも、吹付風量と吸引風量との差が小さく、気流Fの風量が小さくなるような値とすることが可能である。
【0161】
ステップS22の後、制御部8は、ステップS23へ進む。これ以降のステップS23〜S29の処理は、前述した
図8のステップS11〜S17の処理と同様である。
【0162】
以上説明したように、第2実施形態では、画像優先モード用の用紙搬送速度Vgを生産優先モードにおける用紙搬送速度より遅くしている。これにより、画像優先モードでは、生産優先モードよりも、ヘッドモジュール26の駆動周波数が小さくなるので、ヘッドモジュール26の発熱量が低減し、温度上昇が抑制される。この結果、インクジェットヘッド21の破損を低減できる。
【0163】
(第3実施形態)
上述した第1実施形態における画像優先モードの動作を変更した第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態のインクジェット印刷装置の構造は、第1実施形態のインクジェット印刷装置1と同様である。また、第3実施形態における生産優先モードの動作は、第1実施形態と同様の、
図7のステップS2〜S9の動作である。
【0164】
図12は、第3実施形態における画像優先モードの動作を説明するためのフローチャートである。
【0165】
図12のステップS31の処理は、前述した
図8のステップS10の処理と同様である。
【0166】
ステップS31に続いて、ステップS32において、制御部8は、画像優先モード用のインク循環設定を行う。具体的には、制御部8は、圧力生成部7による設定圧として、画像優先モード用の加圧側圧力の設定圧Pkgおよび負圧側圧力の設定圧Pfgを設定する。また、制御部8は、インクポンプ55を駆動するためのデューティ比として、画像優先モード用のインクポンプ55のデューティ比Digを設定する。
【0167】
設定圧Pkg,Pfgおよびデューティ比Digは、画像優先モードでのインク循環部5におけるインク循環流量を、生産優先モードでのインク循環流量よりも大きくするような値として予め決定され、制御部8に記憶されている。
【0168】
具体的には、画像優先モード用の加圧側圧力の設定圧Pkgは、生産優先モードにおける加圧側圧力の設定圧Pkより大きい。画像優先モード用の負圧側圧力の設定圧Pfgは、生産優先モードにおける負圧側圧力の設定圧Pfより絶対値が大きい。画像優先モード用のインクポンプ55のデューティ比Digは、生産優先モードにおけるインクポンプ55のデューティ比より大きい。
【0169】
次いで、ステップS33において、制御部8は、印刷動作を開始する。印刷動作時において、制御部8は、加圧側圧力および負圧側圧力を設定圧Pkg,Pfgとするよう圧力生成部7を制御する。また、制御部8は、液面維持制御によりインポンプ55を駆動させる際は、デューティ比Digで駆動させる。これにより、インク循環部5において、生産優先モードの場合より大きなインク循環流量でインク循環が行われる。
【0170】
ステップS33で印刷動作を開始した後、制御部8は、ステップS34へ進む。ステップS34,S35の処理は、前述した
図7のステップS5,S8の処理と同様である。
【0171】
ステップS34において、インクジェットヘッド21A,21Bが両方ともヘッド温度上限値Tuに到達していないと判断した場合(ステップS34:NO)、ステップS36において、制御部8は、指定印刷枚数分の印刷が終了したか否かを判断する。指定印刷枚数分の印刷は終了していないと判断した場合(ステップS36:NO)、制御部8は、ステップS34へ戻る。
【0172】
指定印刷枚数分の印刷が終了したと判断した場合(ステップS36:YES)、制御部8は、駆動ローラ12、用紙吸着ファン17、吹付ファン62、および吸引ファン67を停止し、加圧側大気開放弁83および負圧側大気開放弁90を開放して、一連の動作を終了する。
【0173】
以上説明したように、第3実施形態では、画像優先モードでのインク循環部5におけるインク循環流量を、生産優先モードでのインク循環流量よりも大きくしている。これにより、画像優先モードでは、生産優先モードの場合より、単位時間当たりのヘッドモジュール26内のインクの流量が増加するので、ヘッドモジュール26からインクへの熱の移動を促進できる。このため、生産優先モードより冷却風Wの風量が小さい画像優先モードでも、印刷搬送速度を減速させることなく、ヘッドモジュール26の温度上昇を軽減できる。しがたって、画像優先モードでも、印刷物の生産性を落とすことなく、インクジェットヘッド21の破損を低減できる。
【0174】
第3実施形態の画像優先モードでは、インク循環流量の増加のため、エアポンプ95およびインポンプ55の負荷が増大するが、画像優先モードのみで行うものであるため、製品寿命の低下は抑えられる。
【0175】
(第4実施形態)
上述した第1実施形態における画像優先モードの動作を変更した第3実施形態について説明する。なお、第4実施形態のインクジェット印刷装置の構造は、第1実施形態のインクジェット印刷装置1と同様である。また、第4実施形態における生産優先モードの動作は、第1実施形態と同様の、
図7のステップS2〜S9の動作である。
【0176】
図13は、第4実施形態における画像優先モードの動作を説明するためのフローチャートである。
【0177】
図13のステップS41の処理は、前述した
図8のステップS10の処理と同様である。
【0178】
ステップS41に続いて、ステップS42において、制御部8は、画像優先モード用のインク冷却設定を行う。具体的には、制御部8は、印刷動作中にインク温度調整部56によりインクの冷却を開始する温度として、画像優先モード用のインク冷却開始温度Tkgを設定する。
【0179】
インク冷却開始温度Tkgは、印刷可能温度範囲内で、生産優先モードにおけるインク冷却開始温度Tkより低い温度である。インク冷却開始温度Tkgの値は予め決定され、制御部8に記憶されている。
【0180】
次いで、ステップS43において、制御部8は、印刷動作を開始する。印刷動作中において、制御部8は、インク温度センサ57により検出されたインク温度がインク冷却開始温度Tkgに到達すると、インク冷却ファン74を起動させる。その後、インク温度がインク冷却開始温度Tkgから所定温度だけ低下すると、制御部8は、インク冷却ファン74を停止する。
【0181】
ステップS43で印刷動作を開始した後、制御部8は、ステップS44へ進む。これ以降のステップS44〜S46の処理は、前述した
図12のステップS34〜S36の処理と同様である。
【0182】
以上説明したように、第4実施形態では、画像優先モード用のインク冷却開始温度Tkgを、生産優先モードにおけるインク冷却開始温度Tkより低くしている。これにより、画像優先モードでは、生産優先モードの場合より、ヘッドモジュール26へ流入するインクの温度を低く抑えることができる。このため、画像優先モードでは、生産優先モードの場合より、ヘッドモジュール26とインクとの間の温度差を大きくして熱の交換効率を上げることができる。これにより、生産優先モードより冷却風Wの風量が小さい画像優先モードでも、印刷搬送速度を減速させることなく、ヘッドモジュール26の温度上昇を軽減できる。しがたって、画像優先モードでも、印刷物の生産性を落とすことなく、インクジェットヘッド21の破損を低減できる。
【0183】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明は第1〜第4実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0184】
上述した第1〜第4実施形態では、取付開口部31aとヘッドモジュール26との間の隙間31bにより、ヘッドホルダ22の底板31の開口部が形成されているが、開口部は他の位置に形成されていてもよい。
【0185】
また、上述した第1〜第4実施形態では、インクジェットヘッド21が複数のヘッドモジュール26で構成されているが、インクジェットヘッドは、単一の長尺状のものであってもよい。
【0186】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。