(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
本実施形態に係る塗装基材1は、基材10上に、下塗層12と、上塗層13と、が順次積層されている。下塗層12は金属酸化物20を含有するアクリル樹脂系塗料から形成される。下塗層12に含まれる金属酸化物20の割合は0.1〜5質量%の範囲内である。上塗層13は金属酸化物21を含有する有機無機複合樹脂系塗料から形成される。上塗層13に含まれる金属酸化物21の割合は0.1〜5質量%の範囲内である。
【0016】
下塗層12と上塗層13との両方の層に、それぞれ金属酸化物20、21が含まれ、更に、上塗層13が有機無機複合樹脂系塗料から形成されるため、長期に亘って塗装基材1の耐候性及び遮熱性を維持することができる。
【0017】
本実施形態に係る塗装基材1では、基材10と下塗層12との間に、着色層11があってもよい。
【0018】
本実施形態に係る塗装基材1では、着色層11の明度が5.5〜7の範囲内であってもよい。
【0019】
本実施形態に係る塗装基材1の製造方法では、下塗層12を形成した後、基材10のオートクレーブ養生を行い、続いて、上塗層13を形成してもよい。
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1を参照して、更に詳しく説明する。
【0021】
本実施形態に係る塗装基材1は、基材10上に、着色層11と、下塗層12と、上塗層13と、が順次積層されている。
【0022】
基材10は、例えば、水硬性膠着材に対して無機充填剤、繊維質材料等を配合するなどしてセメント系材料(第一のセメント系材料)を調製し、これを成形することにより成形体を作製し、この成形体を養生硬化させることで得られる。基材10の成形方法は、例えば、押出成形、注型成形、抄造成形、及びプレス成形等からなる群から選択される。基材10を養生硬化する方法は、例えば、オートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生からなる群から選択される。
【0023】
水硬性膠着材は、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム及び石膏からなる群から選択される一種以上の材料を含有する。また、無機充填剤は、例えば、フライアッシュ、ミクロシリカ、及び珪砂からなる群から選択される一種以上の材料を含有する。また繊維質材料は、例えば、パルプ、合成繊維等の有機繊維、ガラス繊維等の無機繊維、スチールファイバー等の金属繊維からなる群から選択される一種以上の材料を含有する。
【0024】
本実施形態では、基材10の上に着色層11が積層されている。基材10上に着色層11を設けることにより、塗装基材1に任意の色をつけることができる。
【0025】
着色層11は、例えば、顔料を含有するセメント系材料(第二のセメント系材料)を成形することにより成形体を作製し、この成形体を養生硬化させることで得られる。本実施形態では、例えば、第一のセメント系材料の成形体上に、第二のセメント系材料の成形体を積層した後、二つの成形体を同時に養生硬化することにより、基材10が形成されると共に、この基材10上に着色層11が形成される。
【0026】
第二のセメント系材料は、例えば、顔料を含有すること以外は、第一のセメント系材料と同じ組成を有していてもよい。
【0027】
第二の成形材料に含まれる顔料は、例えば、無機顔料又は有機顔料、あるいはその両方である。
【0028】
無機顔料は、例えば、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化チタン(チタンホワイト)、紺青、群青、アルミペースト、ブロンズ粉及びカーボンブラックからなる群から選択される一種以上の材料を含有する。有機顔料は、例えば、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、キノリンエローレーキ、マラカイトグリーンレーキ、アリザリンレーキ、カーミン6B、レーキレットC、ジスアゾエロー、レーキレット4R、クロモフタルエロー3G
、クロモフタルスカーレットRN、ニッケルアゾエロー、パーマネントオレンジHL、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、フラバンスロンエロー、チオインジゴボルドー、ペリノンレッド、ジオキサドンバイオレット、キナクリドンレッド、ナフトールエローS、ピグロントグリーンB、ルモゲンエロー、シグナルレッド、アルカリブルー、及びアニリンブラックからなる群から選択される一種以上の材料を含有する。
【0029】
また、着色層11は上記の形成方法に限られない。着色層11は、例えば、基材10の上に着色塗料を塗布することで形成してもよい。
【0030】
着色塗料は、例えば、着色剤を含有するアクリルエマルション樹脂塗料である。このアクリルエマルション樹脂塗料は、アクリルエマルション樹脂やシリル基含有アクリルエマルション樹脂等のマトリックス樹脂と、着色剤と、を含有し、必要に応じて有機溶媒、充填剤、染料、硬化促進剤、増粘剤、顔料分散剤等の各種添加剤を含有する。
【0031】
着色塗料から着色層11を形成する場合には、例えば、第一のセメント系材料の成形体の養生硬化を行い、次いで着色塗料を刷毛塗布、スプレー塗布、ロールコーター、フローコーター、シャワーコーター、及びディッピングからなる群から選択される塗布方法により塗布した後、乾燥することで、この基材10上に着色層11が形成される。
【0032】
本実施形態では、着色層11の明度が5.5〜7の範囲内であることが好ましい。本発明における明度とは、JIS Z 8721で規定される明度のことである。着色層11の明度が5.5未満の場合、遮熱性が低下する。着色層11の明度が7を超えた場合、着色層11が白くなり過ぎて、屋根材としての意匠性が低下する。着色層11の明度がこの範囲内であることにより、塗装基材1に照射される光を効果的に反射することができる。つまり、塗装基材1の日射反射率を向上させることができる。塗装基材1の日射反射率を向上させることにより、塗装基材1の遮熱性を向上させることができる。尚、本明細書における日射反射率とは、JIS K 5602で規定される日射反射率のことである。
【0033】
本実施形態では、着色層11上に、下塗層12と、上塗層13とが、この順に積層される。
【0034】
下塗層12は、例えば、着色層11の上に、アクリル樹脂系塗料を塗布することで形成される。
【0035】
アクリル樹脂系塗料は、例えば、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料、又は、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料であることが好ましい。アクリル樹脂系塗料には、紫外線吸収剤、光安定化剤などを添加してもよい。これにより、塗装基材1の耐候性を向上させることができる。また、アクリル樹脂系塗料には、アクリルビーズ、マイカ等の骨材を配合してもよい。これにより、塗装基材1の意匠性を向上させることができる。
【0036】
本実施形態のアクリル樹脂系塗料には、金属酸化物20が添加されている。
【0037】
この金属酸化物20は、例えば、鉄、アルミニウム、マンガン、及びコバルトからなる群から選択される少なくとも一種以上の金属の酸化物を含有する。金属酸化物20は、少なくとも鉄の酸化物を含むことが好ましい。鉄の酸化物は、例えば、FeO、Fe
2O
3、及びFe
3O
4のうち一種以上を含む。また金属酸化物20が、鉄と鉄以外の金属を含む複合酸化物を含むことも好ましい。鉄以外の金属は、例えば、アルミニウム、マンガン、及びコバルトからなる群から選択される少なくとも一種の金属である。金属酸化物20は、例えば、コアと、コアを被覆する被覆層を備え、コアと被覆層とのいずれか一方が鉄の酸化物を含んでもよい。
【0038】
本実施形態では、下塗層12に含まれる金属酸化物20の割合が、0.1〜5質量%の範囲内である。下塗層12に含まれる金属酸化物20の割合がこの範囲内であることにより、塗装基材1の遮熱性を向上させることができる。これは、塗装基材1に照射され光に含まれる赤外線を、下塗層12に含まれる金属酸化物20によって効果的に反射することができ、塗装基材1の温度上昇を抑制することができるためである。また、下塗層12に含まれる金属酸化物の割合が0.1質量%未満である場合、塗装基材1に照射された光に含まれる赤外線を効果的に反射することができない。また、下塗層12に含まれる金属酸化物21の割合が5質量%より大きい場合、金属酸化物20が有する紫外線劣化に対する触媒作用(光触媒作用)によって、下塗層12が劣化してしまう。
【0039】
下塗層12の形成にあたっては、アクリル樹脂系塗料を、刷毛塗布、スプレー塗布、ロールコーター、フローコーター、シャワーコーター、ディッピングからなる群から選択される塗布方法によって着色層11上に塗布し、焼付乾燥することにより、下塗層12を形成することができる。アクリル樹脂系塗料の塗布量は80〜100g/m
2の範囲内であることが好ましい。また、下塗層12の平均膜厚は5〜15μmの範囲内であることが好ましい。アクリル樹脂系塗料の塗布量及び下塗層12の平均膜厚が、この範囲内であることにより、塗装基材1の耐候性を十分に向上させることができる。塗布したアクリル樹脂系塗料の焼付乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、180〜220℃で20〜25秒間の範囲内で行うことが好ましい。
【0040】
本実施形態では、下塗層12を形成した後、基材10をオートクレーブ養生することが好ましい。オートクレーブ養生の条件は、例えば160℃以上、5時間以上である。オートクレーブ養生を行うことにより、基材10にエフロレッセンスが発生することを防止することができると共に、基材10の強度及び耐久性を確保することができる。また、基材10にエフロレッセンスが発生することを防止することにより、下塗層12と上塗層13との密着耐久性を向上させることができる。本実施形態では、下塗層12を形成した基材10をオートクレーブ養生した後、上塗層13を形成する。なお、オートクレーブ養生のタイミングはこれに限られ無い。例えば、下塗層12を形成する前にオートクレーブ養生しても良い。
【0041】
上塗層13は、例えば、下塗層12上に有機無機複合樹脂系塗料を塗布することで形成される。
【0042】
有機無機複合樹脂系塗料は、例えば、オルガノアルコキシシラン(a)及びその加水分解縮合物(部分加水分解縮合物を含む)のうち少なくともいずれかと、加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有するシリル基含有ビニル系樹脂(b)との加水分解縮合反応物を、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン等の中和剤で中和することで得られる樹脂(A)を含有する。
【0043】
オルガノアルコキシシラン(a)としては、例えば一般式R
1nSi(OR
2)
4−n(式中、R
1は炭素数1〜8の有機基、R
2は炭素数1〜5のアルキル基、nは1又は2)で示される化合物が挙げられる。
【0044】
シリル基含有ビニル系樹脂(b)は、ビニル系樹脂の末端あるいは側鎖に加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を樹脂1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上有し、好ましくは酸価が20〜150mgKOH/g、分子量が、例えば約1000〜50000である。
【0045】
このシリル基含有ビニル系樹脂(b)は、例えば、一般式(X)
P(R
3)
(3−P)Si−H(Xはアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン基、ケトキシメート基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、フェノキシ基等の加水分解性基又は水酸基、R
3は水素又は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基、Pは1〜3の整数)で示されるヒドロシラン化合物と、炭素−炭素二重結合を有するビニル系樹脂と、を反応させることにより製造される。ヒドロシラン化合物は、例えば、メチルジクロロヒドロシラン、メチルジエトキシヒドロシラン、メチルジアセトキシヒドロシランからなる群から選択される。また、炭素−炭素二重結合を有するビニル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボン酸又は無水マレイン酸等の酸無水物を必須モノマー単位として含有し、更に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルからなる群から選択されるビニル系モノマーをコモノマー単位として含有する共重合体が挙げられる。シリル基含有ビニル系樹脂(b)を製造する際のヒドロシラン化合物の使用量は、ビニル系樹脂中に含まれる炭素−炭素二重結合の数に対して0.5〜2倍となるモル量が適当である。シリル基含有ビニル系樹脂(b)の具体例としては、例えば、市販品である株式会社カネカ製のゼムラック(登録商標)等が挙げられる。
【0046】
このような(A)成分を含有することにより、上塗層13の耐候性を向上させることができる。また、有機無機複合樹脂系塗料に、硬化剤としてアミノ基を有する加水分解縮合反応可能なアルコキシシラン(B)と、この(B)成分のアミノ基との反応性を有するエポキシ基を分子内に有する化合物(C)とを含有させることにより、上塗層13の耐候性を更に向上させることができる。
【0047】
この(B)成分としては、例えば、一般式(R
6−NH−R
5−)
nSi(OR
4)
4-n(R
4は炭素数1〜5のアルキル基、R
5は炭素数1〜5のアルキレン基、R
6は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、又は置換若しくは未置換のアミノ基、nは1又は2)で示される化合物が挙げられ、具体例としてはγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−シクロへキシルーγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0048】
(C)成分としては、例えば、エポキシ基含有アルコキシシラン、アルキルグリシジルエーテル及びエステル、シクロエポキシ化合物、ビスフェノールAF系の低分子量エポキシ樹脂、あるいはこれらの乳化物等が挙げられ、具体例としてはγ−グリシドキシプロピルトリメキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイミノオキシシラン、β―(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリイソプロペニルオキシシランとグリシドールとの付加物、ブチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリシジルエーテル、カージュラーE(シェル社製商品名)、ブチルフェニルグリシジルエーテル、エピコート815、828、834(油化シェルエポキシ社製商品名)等及びこれらの乳化物が挙げられる。
【0049】
本実施形態の有機無機複合樹脂系塗料には、金属酸化物21が添加されている。このため、下塗層12と上塗層13との両方の層に、それぞれ金属酸化物20、21が含まれている。
【0050】
有機無機複合樹脂系塗料に添加される金属酸化物21は、例えば、下塗層12に含まれる金属酸化物20と同じであってもよい。このため、有機無機複合樹脂系塗料に添加される金属酸化物21は、少なくとも鉄の酸化物を含むことが好ましく、鉄と鉄以外の金属とを含む複合酸化物であることも好ましい。
【0051】
本実施形態では、上塗層13に含まれる金属酸化物21の割合が、0.1〜5質量%の範囲内である。上塗層13に含まれる金属酸化物21の割合がこの範囲内であることにより、塗装基材1の遮熱性が向上する。これは、塗装基材1に照射される光に含まれる赤外線を上塗層13に含まれる金属酸化物21によって効果的に反射することができ、塗装基材1の温度上昇を抑制することができるためである。また、上塗層13に含まれる金属酸化物21の割合が0.1質量%未満である場合、紫外線が下塗層12へと透過して、下塗層12が劣化してしまう。また、上塗層13に含まれる金属酸化物21の割合が5質量%より大きい場合、金属酸化物が有する紫外線劣化に対する触媒作用(所謂、光触媒作用)によって、上塗層13が劣化してしまう。上塗層13に含まれる金属酸化物21の割合は、下塗層12に含まれる金属酸化物20の割合よりも多くてもよく、少なくてもよく、同じであってもよい。
【0052】
有機無機複合樹脂系塗料は、必要に応じて、水、有機溶媒及び充填剤、硬化促進剤、増粘剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0053】
上塗層13の形成にあたっては、有機無機複合樹脂系塗料を、刷毛塗布、スプレー塗布、ロールコーター、フローコーター、シャワーコーター、ディッピングからなる群から選択される塗布方法により、下塗層12上に塗布し、焼付乾燥することで、上塗層13を形成することができる。有機無機複合樹脂系塗料の塗布量は100〜150g/m
2の範囲内であることが好ましい。上塗層13の平均膜厚は15〜25μmの範囲内であることが好ましい。有機無機複合樹脂系塗料の塗布量、及び上塗層13の平均膜厚が、上記の範囲内であることにより、塗装基材1の耐候性を十分に向上させることができる。塗布した有機無機複合樹脂系塗料の焼付乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、180〜220℃で20〜25秒間の範囲内で行うことが好ましい。
【0054】
本実施形態の塗装基材1が上記構成を備えるため、以下の効果を奏する。
【0055】
本実施形態の塗装基材1は、下塗層12の上に、有機無機複合樹脂系塗料から形成された上塗層13を備えるため、長期間に亘って塗装基材1の耐候性を維持することができる。
【0056】
また、本実施形態の塗装基材1は、下塗層12と上塗層13の両方の層にそれぞれ金属酸化物20、21を含有しているため、塗装基材1に照射される光に含まれる赤外線を、下塗層12及び上塗層13によって効果的に反射することができる。また、本実施形態の塗装基材1は、明度が5.5〜7の範囲内の着色層11を備えるため、塗装基材1に照射される光に含まれる赤外線を、着色層11で効果的に反射することができる。このため、長期間に亘って塗装基材1の遮熱性を維持することができる。
【0057】
つまり、本実施形態の塗装基材1は、長期に亘る耐候性の維持と、長期に亘る遮熱性の維持を両立させることができる。このため、本実施形態の塗装基材1は、長期に亘って屋外に曝露しても、紫外線、赤外線等の影響による塗装基材1の変褪色現象が生じにくい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0059】
(塗装基材の製造)
まず、セメント系成形材料を成形して基材10を作製した。次に、セメント系材料に酸化鉄及び酸化チタンからなる顔料を添加した着色セメント系材料を成形して着色層11を作製し、基材10上に設けた。
【0060】
そして、基材10及び着色層11を、25℃、24時間の条件で養生硬化することにより、基材10及び着色層11を硬化させた。このとき、色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング製)を用いて着色層11の明度を測定したとことろ、5.8であった。
【0061】
続いて、アクリル樹脂系塗料を着色層11に塗布した。このアクリル樹脂系塗料は、アクリルエマルション樹脂100重量部に対し、酸化鉄及び酸化アルミニウムからなる金属酸化物20、水20重量部を加え、混合撹拌して調整した。
【0062】
そして、このアクリル樹脂系塗料をスプレー塗装し、ジェット乾燥機を用いて160℃、30秒間の条件で焼付硬化することにより、下塗層12を形成した。このとき、各実施例及び比較例の下塗層12に含まれる金属酸化物20の割合は、下記表1中の「金属酸化物の含有量」の「下塗層」の欄に記載されている通りである。
【0063】
更に、実施例6、比較例1以外については、下塗層12を形成した後、基材10のオートクレーブ養生を行った。このとき、オートクレーブ養生の条件は、170℃、10時間である。
【0064】
続いて、有機無機複合樹脂系塗料を下塗層12に塗布した。この有機無機複合樹脂系塗料は、アクリルシリコン系樹脂100重量部に対し、酸化鉄及び酸化アルミニウムからなる金属酸化物21、水20重量部を加え、混合撹拌して調整した。
【0065】
そして、有機無機複合樹脂系塗料をスプレー塗装し、ジェット乾燥機を用いて160℃、30秒間の条件で焼付硬化することにより、上塗層13を形成した。このとき、各実施例及び比較例の上塗層13に含まれる金属酸化物21の割合は、下記表1中の「金属酸化物の含有量」の「上塗層」の欄に記載されている通りである。但し、比較例1〜3の塗装基材については、上塗層を形成していない。
【0066】
上記工程により、各実施例及び比較例の塗装基材が得られた。そして、各塗装基材について試験を行い、耐候性、日射反射率、及び基材強度の評価を行った。
【0067】
(耐候性の評価)
メタルウェザー試験機(ダイプラ・ウィンテス製)を用いて、各実施例及び各比較例の塗装基材の促進耐候性試験を行った。
【0068】
具体的には、塗装基材に対して、光を1800時間照射した後、上塗層の割れ・剥がれの有無及び塗装基材の褪色の程度を調べた。
【0069】
この結果に基づき、下記のように評価した。
○:光沢保持率50%以上、著しい変褪色なし
△:光沢保持率50%未満、
×:光沢保持率50%未満、上塗層・下塗層が剥がれ喪失し基材が露出
(日射反射率の評価)
各実施例及び比較例の塗装基材について、JIS K 5602の規定に準じ、日射反射率を求めた。
【0070】
具体的には、波長が300〜2500nmの範囲である光を照射可能なランプ及び分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、全波長域(300nm〜25000nm)について塗装基材の分光反射率を測定した。この分光反射率の測定結果から日射反射率を算出した。
【0071】
この結果に基づき、下記のように評価した。
○:日射反射率が非遮熱の同系色に対し5%以上
△:日射反射率が3%以上、5%未満
×:日射反射率が3%未満。
【0072】
(基材強度の評価)
各実施例及び比較例の塗装基材について、JIS K 5423の規定に準じ、曲げ破壊荷重試験を行った。
【0073】
具体的には、JIS4号サイズの塗装基材の中央に、10mm/minの速度で荷重を加え、塗装基材が破壊したときの荷重(最大荷重)を測定した。曲げ試験機としては、1トン万能試験機(島津オートグラフAG−1000D製)を用いた。
【0074】
この結果に基づき、下記のように評価した。
○:最大荷重が280N以上
×:最大荷重が280N未満。
【0075】
上記試験の結果を、表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1によると、上塗層が形成されていない比較例1〜3の塗装基材、上塗層に金属酸化物が含まれていない比較例4,5の塗装基材、及び上塗層に含まれる金属酸化物の割合が5質量%を超えている比較例6〜8の塗装基材は、耐候性が良好でない。
【0078】
また、下塗層に含まれる金属酸化物の割合が5質量%を超えている比較例10の塗装基材も、耐候性が良好でない。
【0079】
表1によると、上塗層が形成されていない比較例1〜3の塗装基材、上塗層に金属酸化物が含まれていない比較例4,5の塗装基材は、日射反射率が低い。
【0080】
また、上塗層に含まれる金属酸化物の割合が0.1〜5質量%の範囲内であるが、下塗層に金属酸化物が含まれていない比較例9の塗装基材も、日射反射率が低い。
【0081】
これに対して、下塗層に含まれる金属酸化物の割合と、上塗層に含まれる金属酸化物の割合とが、それぞれ0.1〜5質量%の範囲内である実施例1〜6の塗装基材は、耐候性が良好であると共に、日射反射率も高い。
【0082】
すなわち、本実施形態の塗装基材では、下塗層と上塗層との両方の層に金属酸化物が含まれ、両方の層に含まれる金属酸化物の割合がそれぞれ0.1〜5質量%範囲内であることにより、良好な耐候性と、高い日射反射率とを両立させることができている。
【0083】
また、下塗層の形成後にオートクレーブ養生を行っていない実施例6と比較例1の塗装基材は、基材強度が低い。
【0084】
これに対して、下塗層の形成後にオートクレーブ養生を行っている実施例1〜5の塗装基材は、基材強度が高い。すなわち、下塗層の形成後に、基材のオートクレーブ養生を行うことにより、塗装基材の強度を向上させることができる。