特許第6571964号(P6571964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6571964-印刷装置 図000002
  • 特許6571964-印刷装置 図000003
  • 特許6571964-印刷装置 図000004
  • 特許6571964-印刷装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571964
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 85/00 20060101AFI20190826BHJP
   B65H 29/58 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   B65H85/00
   B65H29/58 B
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-68103(P2015-68103)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188120(P2016-188120A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】篠原 正晃
(72)【発明者】
【氏名】下田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 徹典
(72)【発明者】
【氏名】青木 和之
(72)【発明者】
【氏名】岡村 琢也
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−271881(JP,A)
【文献】 特開2004−018195(JP,A)
【文献】 特開2010−023943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 85/00
B65H 29/58
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を印刷搬送速度で搬送しつつ印刷する印刷部と、
両面印刷時に片面印刷後の用紙を前記印刷部から受け取り、表裏反転して搬送する循環搬送部と、
前記循環搬送部により搬送されてくる片面印刷後の用紙を前記印刷部に再給紙する再給紙部とを備え、
前記循環搬送部は、
前記印刷搬送速度で用紙を受け取り、用紙をスイッチバックして表裏反転するとともに、スイッチバックにおける一時停止後の搬送再開時に前記印刷搬送速度より高速の循環搬送速度まで用紙を加速する反転部と、
前記反転部によりスイッチバックされた用紙を前記循環搬送速度で搬送する高速搬送部とを有し、
前記反転部は、単一のローラ対により、用紙をスイッチバックするとともに、用紙が前記高速搬送部に到達する前に、用紙を前記循環搬送速度まで加速することを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
両面印刷を行う印刷装置が知られている。
【0003】
両面印刷を行う印刷装置として、特許文献1には、搬送ベルトにより用紙を搬送しつつ印刷する印刷部で用紙の一方の面に印刷した後、循環経路に沿って用紙を搬送しつつ表裏反転して印刷部に再給紙し、他方の面に印刷する印刷装置が開示されている。
【0004】
特許文献1の印刷装置は、片面印刷時と同等の片面印刷当りの生産性で両面印刷を行うことで、高生産性を実現している。さまざまな用紙サイズにおいてこの生産性を実現するために、特許文献1の印刷装置では、循環経路に、印刷部における搬送速度である印刷搬送速度より高速の循環搬送速度で用紙を搬送する高速区間が設けられている。循環搬送速度は、用紙サイズに応じて設定される。これにより、印刷部での生産性に応じたタイミングでの再給紙が可能になっている。
【0005】
特許文献1の印刷装置における循環経路の高速区間では、用紙をニップしつつ搬送するローラ対が循環搬送速度で駆動されている。循環経路において、用紙は、高速区間に達するまでは印刷搬送速度で搬送される。用紙が高速区間に達すると、高速区間のローラ対により、印刷搬送速度で搬送する上流側の区間のローラ対から用紙が引き抜かれる。これにより、印刷搬送速度から循環搬送速度へ用紙が加速される。
【0006】
加速された用紙は、高速区間において循環搬送速度で搬送された後、高速区間の下流側でスイッチバックされることで表裏反転される。そして、表裏反転された用紙が印刷部に再給紙される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−46303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の印刷装置では、高速区間のローラ対が上流側の区間のローラ対から用紙を引き抜くことで加速するので、用紙およびローラ対に大きな負担がかかる。用紙およびローラ対に大きな負担がかかると、用紙が破損したり、ローラが劣化しやすくなったりする。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、用紙および用紙搬送機構の負担を軽減できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第1の特徴は、用紙を印刷搬送速度で搬送しつつ印刷する印刷部と、両面印刷時に片面印刷後の用紙を前記印刷部から受け取り、表裏反転して搬送する循環搬送部と、前記循環搬送部により搬送されてくる片面印刷後の用紙を前記印刷部に再給紙する再給紙部とを備え、前記循環搬送部は、前記印刷搬送速度で用紙を受け取り、用紙をスイッチバックして表裏反転するとともに、スイッチバックにおける一時停止後の搬送再開時に前記印刷搬送速度より高速の循環搬送速度まで用紙を加速する反転部と、前記反転部によりスイッチバックされた用紙を前記循環搬送速度で搬送する高速搬送部とを有することにある。
【0011】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴は、前記反転部は、単一のローラ対により、用紙をスイッチバックするとともに前記循環搬送速度まで加速することにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る印刷装置の第1の特徴によれば、反転部が、スイッチバックにおける一時停止後の搬送再開時に印刷搬送速度より高速の循環搬送速度まで用紙を加速する。これにより、高速の区間に低速の区間から用紙を引き抜くことなく、用紙を加速できる。この結果、用紙およびローラ対等の用紙搬送機構の負担を軽減できる。
【0013】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴によれば、単一のローラ対により、用紙をスイッチバックするとともに循環搬送速度まで加速するので、用紙を加速するための駆動源の負荷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。
図2図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。
図3】両面印刷時の印刷スケジュールの説明図である。
図4】反転ローラ対によるスイッチバック時における用紙の搬送速度の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0016】
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。図2は、図1に示す印刷装置の制御ブロック図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0018】
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が印刷経路RP、一点鎖線で示す経路が循環経路RC、破線で示す経路が排紙経路RD、二点鎖線で示す経路が外部給紙経路RS1および内部給紙経路RS2である。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
【0019】
図1図2に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、循環搬送部4と、排紙部5と、制御部6と、各部を収納または保持する筐体7とを備える。
【0020】
給紙部2は、未印刷の用紙Pを印刷部3に給紙する。また、給紙部2は、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pを印刷部3に再給紙する。給紙部2は、請求項の再給紙部に相当する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部2は、外部給紙台11と、外部給紙ローラ対12と、2つの内部給紙台13と、2つの内部給紙ローラ対14と、2つの内部給紙モータ15と、3つの内部給紙搬送ローラ対16と、内部給紙搬送モータ17と、縦搬送ローラ対18と、縦搬送モータ19と、レジストローラ対20と、レジストモータ21とを備える。
【0021】
外部給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。外部給紙台11は、一部が筐体7の外部に露出して設置されている。
【0022】
外部給紙ローラ対12は、外部給紙台11に積層された用紙Pを1枚ずつ取り出すとともに、レジストローラ対20へ搬送する。外部給紙ローラ対12は、スクレーパローラ12aと、ピックアップローラ12bとを備える。
【0023】
スクレーパローラ12aは、外部給紙台11に積層された用紙Pから最上位(最も上側)の用紙Pを分離する。スクレーパローラ12aは、外部給紙台11の右端部の上側に配置されている。
【0024】
ピックアップローラ12bは、外部給紙台11に積層された用紙Pからスクレーパローラ12aにより分離された用紙Pを、図示しないサバキ板との間でさばいて右方向へ搬送する。ピックアップローラ12bは、スクレーパローラ12aの下流側(右側)に隣接して配置されている。
【0025】
内部給紙台13は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。内部給紙台13は、筐体7の内部に配置されている。
【0026】
内部給紙ローラ対14は、内部給紙台13に積層された用紙Pを1枚ずつ取り出すとともに、内部給紙搬送ローラ対16へ搬送する。内部給紙ローラ対14は、スクレーパローラ14aと、ピックアップローラ14bとを備える。
【0027】
スクレーパローラ14aは、内部給紙台13に積層された用紙Pから最上位の用紙Pを分離する。スクレーパローラ14aは、内部給紙台13の左端部の上側に配置されている。
【0028】
ピックアップローラ14bは、内部給紙台13に積層された用紙Pからスクレーパローラ14aにより分離された用紙Pを、図示しないサバキ板との間でさばいて左方向へ搬送する。ピックアップローラ14bは、スクレーパローラ14aの下流側(左側)に隣接して配置されている。
【0029】
2つの内部給紙モータ15は、それぞれ1つの内部給紙ローラ対14を駆動させる。
【0030】
内部給紙搬送ローラ対16は、内部給紙ローラ対14により内部給紙台13から取り出された用紙Pを縦搬送ローラ対18へ搬送する。内部給紙搬送ローラ対16は、内部給紙経路RS2に沿って配置されている。
【0031】
内部給紙搬送ローラ対16は、内部給紙搬送ローラ16a,16bの対により構成されている。内部給紙搬送ローラ対16は、内部給紙搬送ローラ16a,16bにより用紙Pをニップしつつ搬送する。
【0032】
内部給紙搬送モータ17は、3つの内部給紙搬送ローラ対16を駆動させる。
【0033】
縦搬送ローラ対18は、内部給紙経路RS2に沿って内部給紙搬送ローラ対16により搬送されてくる用紙Pをレジストローラ対20へ搬送する。また、縦搬送ローラ対18は、両面印刷時に循環経路RCに沿って搬送された片面印刷後の用紙Pをレジストローラ対20へ搬送する。縦搬送ローラ対18は、内部給紙経路RS2に循環経路RCが合流する地点の下流側において、内部給紙経路RS2に沿って配置されている。
【0034】
縦搬送ローラ対18は、縦搬送ローラ18a,18bの対により構成されている。縦搬送ローラ対18は、縦搬送ローラ18a,18bにより用紙Pをニップしつつ搬送する。縦搬送ローラ18a,18bのうち、右側の縦搬送ローラ18aには、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pの印刷面が接触する。このため、縦搬送ローラ18aは、汚れ防止処理が施されたローラからなる。例えば、縦搬送ローラ18aは、表面にセラミックの粉体が塗布されたローラからなる。縦搬送ローラ18bは、汚れ防止処理が施されていないローラからなる。
【0035】
縦搬送モータ19は、縦搬送ローラ対18を駆動させる。また、縦搬送モータ19は、外部給紙ローラ対12を駆動させる。縦搬送モータ19は、縦搬送ローラ対18および外部給紙ローラ対12にそれぞれ図示しないワンウェイクラッチを介して接続されている。これにより、縦搬送モータ19の一方向の回転により縦搬送ローラ対18が駆動され、縦搬送モータ19の他方向の回転により外部給紙ローラ対12が駆動されるようになっている。
【0036】
レジストローラ対20は、外部給紙ローラ対12または縦搬送ローラ対18により搬送されてきた用紙Pを一旦止めて斜行補正した後、後述する印刷部3のベルトプラテン31へ搬送する。レジストローラ対20は、外部給紙経路RS1と内部給紙経路RS2との合流地点の下流側近傍の印刷経路RP上に配置されている。
【0037】
レジストローラ対20は、レジストローラ20a,20bの対により構成されている。レジストローラ対20は、レジストローラ20a,20bにより用紙Pをニップしつつ搬送する。レジストローラ20a,20bのうち、下側のレジストローラ20bには、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pの印刷面が接触する。このため、レジストローラ20bは、汚れ防止処理が施されたローラからなる。レジストローラ20aは、汚れ防止処理が施されていないローラからなる。
【0038】
レジストモータ21は、レジストローラ対20を駆動させる。
【0039】
印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに画像を印刷する。印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。印刷部3は、ベルトプラテン31と、ベルトプラテンモータ32と、ヘッドユニット33とを備える。
【0040】
ベルトプラテン31は、レジストローラ対20により搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持しつつ、印刷搬送速度Vgで搬送する。ベルトプラテン31は、レジストローラ対20の下流側に配置されている。
【0041】
ベルトプラテンモータ32は、ベルトプラテン31のベルトを駆動させる。
【0042】
ヘッドユニット33は、ベルトプラテン31により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。ヘッドユニット33は、ベルトプラテン31の上方に配置されている。ヘッドユニット33は、用紙Pの搬送方向と直交する方向(前後方向)に沿って複数のノズルが配列された複数のインクジェットヘッド(図示せず)を有する。ヘッドユニット33は、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する。
【0043】
循環搬送部4は、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pを循環経路RCに沿って搬送して縦搬送ローラ対18へ渡す。循環経路RCは、印刷経路RPの下流端から下降し、ベルトプラテン31の下方を通り、縦搬送ローラ対18の上流側近傍で内部給紙経路RS2に合流する経路である。循環搬送部4は、中間搬送部41と、反転部42と、水平搬送部(請求項の高速搬送部に相当)43とを備える。
【0044】
中間搬送部41は、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pをベルトプラテン31から反転部42へ印刷搬送速度Vgで搬送する。中間搬送部41は、ベルトプラテン31の下流側に配置されている。中間搬送部41は、2つの中間搬送ローラ対46と、中間搬送モータ47とを備える。
【0045】
中間搬送ローラ対46は、ベルトプラテン31から送り出された片面印刷後の用紙Pを印刷搬送速度Vgで受け取り、印刷搬送速度Vgで後述の反転ローラ対48へ搬送する。2つの中間搬送ローラ対46は、ベルトプラテン31と反転ローラ対48との間の循環経路RCに沿って配置されている。
【0046】
中間搬送ローラ対46は、中間搬送ローラ46a,46bの対により構成されている。中間搬送ローラ対46は、中間搬送ローラ46a,46bにより用紙Pをニップしつつ搬送する。中間搬送ローラ46a,46bのうち、右側の中間搬送ローラ46aには、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pの印刷面が接触する。このため、中間搬送ローラ46aは、汚れ防止処理が施されたローラからなる。中間搬送ローラ46bは、汚れ防止処理が施されていないローラからなる。
【0047】
中間搬送モータ47は、2つの中間搬送ローラ対46を駆動させる。また、中間搬送モータ47は、後述する2つの排紙ローラ対57を駆動させる。
【0048】
反転部42は、片面印刷後の用紙Pを表裏反転させる。反転部42は、中間搬送部41の下流側に配置されている。反転部42は、反転ローラ対48と、反転モータ49とを備える。
【0049】
反転ローラ対48は、中間搬送ローラ対46により搬送されてくる用紙Pを印刷搬送速度Vgで受け取り、用紙Pをスイッチバックして表裏反転するとともに、循環搬送速度Vrまで加速して水平搬送部43へ渡す。反転ローラ対48は、循環経路RCに沿って、中間搬送ローラ対46の下流側に配置されている。循環搬送速度Vrは、水平搬送部43における用紙Pの搬送速度である。循環搬送速度Vrは、印刷搬送速度Vgより高速である。
【0050】
反転ローラ対48は、反転ローラ48a,48bの対により構成されている。反転ローラ対48は、反転ローラ48a,48bにより用紙Pをニップしつつ搬送する。反転ローラ48a,48bのうち、右側の反転ローラ48aには、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pの印刷面が接触する。このため、反転ローラ48aは、汚れ防止処理が施されたローラからなる。反転ローラ48bは、汚れ防止処理が施されていないローラからなる。
【0051】
反転モータ49は、反転ローラ対48を正転駆動および逆転駆動させる。正転駆動は、反転ローラ対48が用紙Pを下方向へ搬送する方向に反転ローラ48a,48bを回転させる駆動である。逆転駆動は、反転ローラ対48が用紙Pを上方向へ搬送する方向に反転ローラ48a,48bを回転させる駆動である。
【0052】
水平搬送部43は、反転部42によりスイッチバックされた用紙を給紙部2の縦搬送ローラ対18へ用紙Pを搬送する。水平搬送部43は、反転部42の下流側に配置されている。水平搬送部43は、4つの水平搬送ローラ対50と、2つの水平搬送モータ51とを備える。
【0053】
水平搬送ローラ対50は、反転ローラ対48から用紙Pを循環搬送速度Vrで受け取り、その用紙Pを循環搬送速度Vrで縦搬送ローラ対18へ搬送する。上流側の3つの水平搬送ローラ対50は、ベルトプラテン31の下方の循環経路RCの水平部分に沿って配置されている。最下流の水平搬送ローラ対50は、循環経路RCの水平部分の下流側の上昇部分に沿って配置されている。
【0054】
水平搬送ローラ対50は、水平搬送ローラ50a,50bの対により構成されている。水平搬送ローラ対50は、水平搬送ローラ50a,50bにより用紙Pをニップしつつ搬送する。水平搬送ローラ50a,50bのうち、上側の水平搬送ローラ50aには、両面印刷時に片面印刷後の用紙Pの印刷面が接触する。このため、水平搬送ローラ50aは、汚れ防止処理が施されたローラからなる。水平搬送ローラ50bは、汚れ防止処理が施されていないローラからなる。
【0055】
2つの水平搬送モータ51のうちの一方は、上流側の2つの水平搬送ローラ対50を駆動させる。他方の水平搬送モータ51は、下流側の2つの水平搬送ローラ対50を駆動させる。
【0056】
排紙部5は、印刷済みの用紙Pを印刷部3から受け取り、排紙経路RDに沿って搬送して排紙する。排紙部5は、切替部55と、ソレノイド56と、3つの排紙ローラ対57と、排紙モータ58と、排紙台59とを備える。
【0057】
切替部55は、用紙Pの搬送経路を排紙経路RDと循環経路RCとの間で切り替える。切替部55は、印刷経路RPの下流端であって、排紙経路RDおよび循環経路RCの上流端となる地点に配置されている。排紙経路RDは、印刷経路RPの下流端から上昇して排紙台59へ延びる経路である。
【0058】
ソレノイド56は、切替部55を駆動させる。
【0059】
排紙ローラ対57は、ベルトプラテン31から搬送されてくる用紙Pを受け取って搬送し、排紙台59へ排紙する。排紙ローラ対57は、排紙経路RDに沿って配置されている。
【0060】
排紙ローラ対57は、排紙ローラ57a,57bの対により構成されている。排紙ローラ対57は、排紙ローラ57a,57bにより用紙Pをニップしつつ搬送する。排紙ローラ57a,57bには、両面印刷済みの用紙Pの一方の面、他方の面がそれぞれ接触する。このため、排紙ローラ57a,57bはともに、汚れ防止処理が施されたローラからなる。
【0061】
排紙モータ58は、最下流の排紙ローラ対57を駆動させる。なお、上流側の2つの排紙ローラ対57は、中間搬送モータ47により駆動される。
【0062】
排紙台59は、排紙ローラ対57により排紙された用紙Pが積載されるものである。排紙台59は、排紙経路RDの下流端に配置されている。
【0063】
制御部6は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部6は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0064】
次に、印刷装置1の片面印刷時の動作について説明する。
【0065】
まず、制御部6は、ベルトプラテンモータ32によりベルトプラテン31の駆動を開始させる。制御部6は、ベルトプラテン31による用紙Pの搬送速度が印刷搬送速度Vgとなるよう制御する。ここで、印刷搬送速度Vgは、用紙種類等によって定められる1画素あたりの最大ドロップ数、印刷解像度等に基づいて設定される。
【0066】
また、制御部6は、中間搬送モータ47および排紙モータ58により、3つの排紙ローラ対57の駆動を開始させる。
【0067】
次いで、制御部6は、印刷部3における1枚あたりの印刷時間Tpsごとに印刷部3に用紙Pを給紙するよう給紙部2を制御する。
【0068】
印刷部3における1枚あたりの印刷時間Tpsは、以下の式(1)で表される。
【0069】
Tps=(Lp+Lg)/Vg …(1)
ここで、Lpは用紙長さである。Lgは紙間である。
【0070】
用紙長さLpは、用紙Pの搬送方向における長さである。用紙長さLpは、用紙サイズによって決まるものである。
【0071】
紙間Lgは、ベルトプラテン31における先行の用紙Pの後端と後続の用紙Pの先端との間の距離である。紙間Lgは、短いほど単位時間あたりの用紙出力枚数が増えることになる。本実施の形態では、紙間Lgは、高生産性を達成するために、ヘッドユニット33のインクジェットヘッドの性能等の条件において実現可能な最小の値が設定される。
【0072】
印刷部3に用紙Pが給紙されると、用紙Pは、ベルトプラテン31により印刷搬送速度Vgで搬送される。制御部6は、ベルトプラテン31により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷するようヘッドユニット33を制御する。
【0073】
用紙Pは、先端が切替部55に到達すると、切替部55により排紙経路RDに導かれる。排紙経路RDに導かれた印刷済みの用紙Pは、排紙ローラ対57により搬送されて排紙台59へ排紙される。
【0074】
指定枚数分の用紙Pが排紙されると、制御部6は、ベルトプラテン31および排紙ローラ対57を停止させる。これにより、片面印刷動作が終了となる。
【0075】
次に、両面印刷時の印刷スケジュールについて説明する。
【0076】
両面印刷時の印刷部3における印刷スケジュールは、インターリーフ方式で、片面印刷時と同等の片面あたりの生産性を実現するものである。インターリーフ方式は、複数枚の用紙Pを搬送経路上で搬送させつつ、未印刷の用紙Pの一方の面(表面)と片面印刷後の用紙Pの未印刷面(裏面)とを交互に印刷する方式である。
【0077】
具体的には、両面印刷時の印刷スケジュールは、図3に示すように、表面印刷と裏面印刷とを片面あたりの印刷時間Tpsで交互に行うものである。図3において、用紙Pの内部の数字は、何枚目の用紙であるかを示している。また、白地の用紙Pは表面印刷されるものであり、ドットハッチングされた用紙Pは裏面印刷されるものであることを示す。
【0078】
ただし、片面印刷後の1枚目の用紙Pが再給紙されて裏面印刷されるまでは、表面印刷が連続して行われる。この期間においては、図3に示すように、先行の用紙Pの印刷と後続の用紙Pの印刷との間において1枚分の印刷時間Tpsの空きが生じる。また、最後の用紙Pの表面印刷後は、裏面印刷が連続して行われる。この期間においても、先行の用紙Pの印刷と後続の用紙Pの印刷との間において1枚分の印刷時間Tpsの空きが生じる。このため、片面印刷時と同等の片面あたりの生産性の実現は、実質的には表面印刷と裏面印刷とが交互に行われる期間が対象となる。1枚目が再給紙されて裏面印刷されるまでに連続して表面印刷される枚数(図3の例では3枚)は、用紙サイズ(用紙長さLp)によって決まる。
【0079】
次に、印刷装置1の両面印刷時の動作について説明する。
【0080】
まず、制御部6は、ベルトプラテンモータ32によりベルトプラテン31の駆動を開始させる。制御部6は、ベルトプラテン31による用紙Pの搬送速度が印刷搬送速度Vgとなるよう制御する。
【0081】
また、制御部6は、中間搬送モータ47および排紙モータ58により、2つの中間搬送ローラ対46および3つの排紙ローラ対57の駆動を開始させる。制御部6は、中間搬送ローラ対46による用紙Pの搬送速度が印刷搬送速度Vgとなるよう制御する。
【0082】
また、制御部6は、反転モータ49により反転ローラ対48の正転駆動を開始させる。制御部6は、反転ローラ対48の正転駆動における用紙Pの搬送速度が印刷搬送速度Vgとなるよう制御する。
【0083】
また、制御部6は、2つの水平搬送モータ51により、4つの水平搬送ローラ対50の駆動を開始させる。制御部6は、水平搬送ローラ対50による用紙Pの搬送速度が循環搬送速度Vrとなるよう制御する。
【0084】
循環搬送速度Vrとしては、上述した両面印刷時の印刷スケジュールに応じたタイミングで片面印刷後の用紙Pを再給紙できるように算出された値が設定される。循環搬送速度Vrは、用紙サイズ(用紙長さLp)によって変動する。
【0085】
次いで、制御部6は、片面印刷時の給紙タイミングに対して、各用紙Pの給紙タイミング間の時間が2倍となるタイミングで未印刷の用紙Pを給紙するよう給紙部2を制御する。すなわち、制御部6は、2Tpsごとに未印刷の用紙Pを給紙するよう給紙部2を制御する。
【0086】
印刷部3に未印刷の用紙Pが給紙されると、用紙Pは、ベルトプラテン31により印刷搬送速度Vgで搬送される。制御部6は、ベルトプラテン31により搬送される用紙Pの一方の面(表面)にインクを吐出して画像を印刷するようヘッドユニット33を制御する。
【0087】
用紙Pは、先端が切替部55に到達すると、切替部55により循環経路RCに導かれる。循環経路RCに導かれた片面印刷後の用紙Pは、循環搬送部4の中間搬送部41において中間搬送ローラ対46により印刷搬送速度Vgで搬送される。用紙Pの先端が反転ローラ対48に到達すると、用紙Pは、反転ローラ対48および中間搬送ローラ対46により印刷搬送速度Vgで搬送される。
【0088】
用紙Pの後端が下流側の中間搬送ローラ対46を抜けた後、制御部6は、図4に示すように、反転ローラ対48を停止させる。ここで、制御部6は、反転ローラ対48が停止する時刻t1において、反転ローラ対48の正転駆動時の搬送方向における用紙Pの後端から後端残し量Lsの位置で反転ローラ対48が用紙Pをニップした状態となるよう制御する。後端残し量Lsは、用紙長さLpによらず一定の値である。
【0089】
反転ローラ対48の停止後、所定の一時停止時間が経過すると、その時刻t2において、制御部6は、反転モータ49により反転ローラ対48の逆転駆動を開始させる。これにより、用紙Pが水平搬送ローラ対50へ向けて搬送され始める。
【0090】
制御部6は、用紙Pの先端が最上流の水平搬送ローラ対50に到達する前に、反転ローラ対48による搬送速度が循環搬送速度Vrに到達するよう制御する。これにより、用紙Pは、循環搬送速度Vrで最上流の水平搬送ローラ対50に到達する。反転ローラ対48による搬送速度が循環搬送速度Vrに到達すると、制御部6は、それを維持するよう制御する。
【0091】
用紙Pの先端が最上流の水平搬送ローラ対50に到達すると、用紙Pは、水平搬送ローラ対50および反転ローラ対48により循環搬送速度Vrで搬送される。用紙Pの後端が反転ローラ対48を抜けると、制御部6は、反転ローラ対48の逆転駆動を停止させた後、印刷搬送速度Vgでの正転駆動を開始させる。
【0092】
水平搬送ローラ対50により搬送される用紙Pが縦搬送ローラ対18に到達する前に、制御部6は、縦搬送モータ19により縦搬送ローラ対18を循環搬送速度Vrで駆動させておく。用紙Pの先端が縦搬送ローラ対18に到達すると、用紙Pは、縦搬送ローラ対18および水平搬送ローラ対50により循環搬送速度Vrで搬送される。
【0093】
この後、制御部6は、用紙Pを減速し、用紙Pの先端をレジストローラ対20に突き当てて停止するよう縦搬送ローラ対18を制御する。縦搬送ローラ対18の停止後、制御部6は、印刷スケジュールに応じた所定のタイミングでレジストモータ21によりレジストローラ対20を起動させ、レジストローラ対20からベルトプラテン31へ用紙Pを送り出すよう制御する。これにより、片面印刷後の用紙Pが印刷部3に再給紙される。
【0094】
片面印刷後の用紙Pは、反転ローラ対48によりスイッチバックされたため、未印刷面(裏面)を上向きにして再給紙される。再給紙された片面印刷後の用紙Pは、印刷部3において、ベルトプラテン31により印刷搬送速度Vgで搬送される。制御部6は、ベルトプラテン31により搬送される用紙Pの未印刷面にインクを吐出して画像を印刷するようヘッドユニット33を制御する。
【0095】
用紙Pは、先端が切替部55に到達すると、切替部55により排紙経路RDに導かれる。排紙経路RDに導かれた両面印刷済みの用紙Pは、排紙ローラ対57により搬送されて排紙台59へ排紙される。
【0096】
指定枚数分の用紙Pが排紙されると、制御部6は、ベルトプラテン31、中間搬送ローラ対46、反転ローラ対48、水平搬送ローラ対50、および排紙ローラ対57を停止させる。これにより、両面印刷動作が終了となる。
【0097】
以上説明したように、印刷装置1では、反転部42の反転ローラ対48が、用紙Pをスイッチバックして表裏反転するとともに、スイッチバックにおける一時停止後の搬送再開時の加速により、用紙Pを循環搬送速度Vrまで加速する。これにより、高速の区間に低速の区間から用紙を引き抜くことなく、用紙を加速できる。この結果、用紙およびローラ対等の用紙搬送機構の負担を軽減できる。また、用紙をローラで擦ることがないため、用紙の汚れを軽減できる。
【0098】
また、反転ローラ対48でのスイッチバックにおける一時停止後の搬送再開時に循環搬送速度Vrへの加速が開始されるので、加速および循環搬送速度Vrでの搬送を行う経路の長さは用紙サイズによらず一定になる。これにより、印刷装置内の搬送経路を短縮し、装置本体を小型化することができる。また、用紙Pの搬送速度を過度に高速にする必要がないようにすることができる。
【0099】
また、印刷装置1では、単一の反転ローラ対48により、用紙Pをスイッチバックするとともに循環搬送速度Vrまで加速している。このため、用紙を加速するための駆動源(モータ)の負荷を抑えることができる。
【0100】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 印刷装置
2 給紙部
3 印刷部
4 循環搬送部
5 排紙部
6 制御部
11 外部給紙台
12 外部給紙ローラ対
13 内部給紙台
14 内部給紙ローラ対
15 内部給紙モータ
16 内部給紙搬送ローラ対
17 内部給紙搬送モータ
18 縦搬送ローラ対
19 縦搬送モータ
20 レジストローラ対
21 レジストモータ
31 ベルトプラテン
32 ベルトプラテンモータ
33 ヘッドユニット
41 中間搬送部
42 反転部
43 水平搬送部
46 中間搬送ローラ対
47 中間搬送モータ
48 反転ローラ対
49 反転モータ
50 水平搬送ローラ対
51 水平搬送モータ
55 切替部
56 ソレノイド
57 排紙ローラ対
58 排紙モータ
59 排紙台
図1
図2
図3
図4