特許第6571968号(P6571968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571968
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】光学材料用重合性組成物および光学材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/79 20060101AFI20190826BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20190826BHJP
   B29C 39/18 20060101ALI20190826BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20190826BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20190826BHJP
   G02C 7/12 20060101ALI20190826BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   C08G18/79 010
   C08G18/75 080
   B29C39/18
   B32B27/40
   G02C7/02
   G02C7/12
   G02B1/04
【請求項の数】15
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-80624(P2015-80624)
(22)【出願日】2015年4月10日
(62)【分割の表示】特願2015-514254(P2015-514254)の分割
【原出願日】2014年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-47910(P2016-47910A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-218733(P2013-218733)
(32)【優先日】2013年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-175758(P2014-175758)
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】塚田 英孝
(72)【発明者】
【氏名】後藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】中川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】森田 広一
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−178898(JP,A)
【文献】 特表2012−515814(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/121291(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/051114(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/087829(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 18/00 − 18/87
C08G 71/00 − 71/04
B29C 39/18
B32B 27/40
G02B 1/00 − 1/08
G02B 3/00 − 3/14
G02C 1/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(a)と、
脂環族ポリイソシアネート(b)と、
水酸基価が300〜650mgKOH/gであり、平均官能基数が2以上7未満である植物由来原料から得られたポリオール(c)と、
植物由来の化合物であるポリオール(d)と、
を含み、
ポリイソシアネート(a)は、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート,ダイマー酸ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、およびデカメチレンジイソシアネートから選択される少なくとも1種の植物由来の脂肪族ポリイソシアネート(a1)と、ポリイソシアネート(a)中に45重量%以上80重量%以下含まれる、脂肪族ポリイソシアネート(a1)のイソシアヌレート1核体(a2)と、を含み、
ポリオール(d)は、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、α−メチルグリコシド、マンニトール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、および1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種であり、
ポリイソシアネート(a)および脂環族ポリイソシアネート(b)の総イソシアネート基に対する、脂環族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比((b)/(a)+(b))は、0.8〜0.95である、光学材料用重合性組成物。
【請求項2】
ポリイソシアネート(a)中にイソシアヌレート1核体(a2)が45重量%以上70重量%以下含まれる、請求項1に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項3】
ポリオール(c)およびポリオール(d)の総水酸基に対する、ポリオール(d)の水酸基のモル比((d)/(c)+(d))は、0.5〜0.9である、請求項に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項4】
ポリオール(c)は、植物由来原料である、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種を原料として得られる、請求項1に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項5】
ポリオール(c)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオールから選択される少なくとも一種である、請求項に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項6】
ポリオール(d)は、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種である、請求項に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項7】
非金属触媒を含む、請求項1〜のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を重合硬化して得られた、ポリウレタン成形体。
【請求項9】
バイオマス度が、20%以上50%未満である、請求項に記載のポリウレタン成形体。
【請求項10】
Tgが60℃以上である、請求項またはに記載のポリウレタン成形体。
【請求項11】
請求項10のいずれかに記載のポリウレタン成形体からなる光学材料。
【請求項12】
請求項11に記載の光学材料からなる、プラスチック眼鏡レンズ。
【請求項13】
偏光フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1〜のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を重合硬化して得られる層が積層している、プラスチック偏光レンズ。
【請求項14】
レンズ注型用鋳型内に、請求項1〜のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化する工程と、
を含む、プラスチック眼鏡レンズの製造方法。
【請求項15】
レンズ注型用鋳型内に、偏光フィルムの少なくとも一方の面がモールドから離隔した状態で、該偏光フィルムを固定する工程と、
前記偏光フィルムと前記モールドとの間の空隙に、請求項1〜のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面にポリウレタン樹脂からなる層を積層する工程と、
を含む、プラスチック偏光レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しい光学材料用重合性組成物、およびそれを用いて得られる地球環境と調和した光学材料、プラスチックレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料として用いられる素材は古来ガラスが主であったが、近年では光学材料用のプラスチックが種々開発され、ガラスの代替として利用が広がっている。メガネなどのレンズ材料としても、優れた光学特性を有し、軽量で割れず、成形性にも優れることから、アクリル樹脂、脂肪族カーボネート樹脂、ポリカーボネート、ポリチオウレタンなどのプラスチック材料が主として用いられるようになっている。
【0003】
プラスチック材料が性能改善の目的で利用されるようになる一方で、化石資源を使用するプラスチック材料は、資源枯渇や炭酸ガス排出といった地球環境への影響が懸念されるようになり、材料の開発にも植物由来原料のようなバイオマス資源の活用が検討されるようになってきた。
【0004】
植物由来原料を用いて得られるプラスチックレンズ材料としては、イソソルビドから誘導される構成単位を含むポリカーボネート樹脂を主成分とし、射出成形により得られるメガネレンズ(特許文献1)が提案されている。
【0005】
また、脂肪族ポリイソシアネートの変性体を含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とからなる光学用ポリウレタン樹脂組成物(特許文献2)が提案されている。しかし、植物由来原料を用いて得られたものではなく、光学物性にも改善の余地があった。
【0006】
さらに、特許文献3では、植物由来の原料を用いたバイオポリウレタン樹脂を提案しているが、光学材料としての用途ではなく得られた、樹脂の光学特性などは示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−190919号公報
【特許文献2】特開2011−12141号公報
【特許文献3】特開2011−225863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非化石資源の活用の観点からは、植物由来原料を用い、高いバイオマス度を有する材料を用いることが好ましい。
しかしながら、バイオマス度を上げると、透明性、耐熱性等の物性が低下することがあった。そこで鋭意検討したところ、所定の組成においてバイオマス度を上げながらも、これらの物性を改善することができることを見出した。
【0009】
つまり、本発明が解決しようとする課題は、植物由来原料から得られる化合物を用いてバイオマス度を上げるとともに、透明性、耐熱性などの性能的にも満足する光学材料用ポリウレタン成形体を提供することであり、これにより地球環境に調和するプラスチックレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、植物由来原料から得られる化合物を用いた所定の組成物により、物性が改善された光学材料用ポリウレタン成形体が得られ、当該成形体を用いて地球環境に調和するプラスチックレンズを提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0011】
[1] ポリイソシアネート(a)と、
脂環族ポリイソシアネート(b)と、
水酸基価が300〜650mgKOH/gであり、平均官能基数が2以上7未満である植物由来原料から得られたポリオール(c)と、
植物由来の化合物であるポリオール(d)と、
を含み、
ポリイソシアネート(a)は、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート,ダイマー酸ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、およびデカメチレンジイソシアネートから選択される少なくとも1種の植物由来の脂肪族ポリイソシアネート(a1)と、ポリイソシアネート(a)中に45重量%以上80重量%以下含まれる、脂肪族ポリイソシアネート(a1)のイソシアヌレート1核体(a2)と、を含み、
ポリオール(d)は、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、α−メチルグリコシド、マンニトール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、および1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種であり、
ポリイソシアネート(a)および脂環族ポリイソシアネート(b)の総イソシアネート基に対する、脂環族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比((b)/(a)+(b))は、0.8〜0.95である、光学材料用重合性組成物。
[2] ポリイソシアネート(a)中にイソシアヌレート1核体(a2)が45重量%以上70重量%以下含まれる、[1]に記載の光学材料用重合性組成物。
[3] ポリオール(c)およびポリオール(d)の総水酸基に対する、ポリオール(d)の水酸基のモル比((d)/(c)+(d))は、0.5〜0.9である、[]に記載の光学材料用重合性組成物。
[4] ポリオール(c)は、植物由来原料である、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種を原料として得られる、[1]に記載の光学材料用重合性組成物。
[5] ポリオール(c)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオールから選択される少なくとも一種である、[]に記載の光学材料用重合性組成物。
[6] ポリオール(d)は、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種である、[]に記載の光学材料用重合性組成物。
[7] 非金属触媒を含む、[1]〜[]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[8] [1]〜[]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を重合硬化して得られた、ポリウレタン成形体。
[9] バイオマス度が、20%以上50%未満である、[]に記載のポリウレタン成形体。
[10] Tgが60℃以上である、[]または[]に記載のポリウレタン成形体。
[11] []〜[10]のいずれかに記載のポリウレタン成形体からなる光学材料。
[12] [11]に記載の光学材料からなる、プラスチック眼鏡レンズ。
[13] 偏光フィルムの少なくとも一方の面に、[1]〜[]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を重合硬化して得られる層が積層している、プラスチック偏光レンズ。
[14] レンズ注型用鋳型内に、[1]〜[]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化する工程と、
を含む、プラスチック眼鏡レンズの製造方法。
[15] レンズ注型用鋳型内に、偏光フィルムの少なくとも一方の面がモールドから離隔した状態で、該偏光フィルムを固定する工程と、
前記偏光フィルムと前記モールドとの間の空隙に、[1]〜[]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面にポリウレタン樹脂からなる層を積層する工程と、
を含む、プラスチック偏光レンズの製造方法。
【0012】
なお、本明細書において、例えば、「300〜650mgKOH/g」との表記は、「300mgKOH/g以上、650mgKOH/g以下」を意味し、他の数値範囲においても同様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学材料用重合性組成物によれば、植物由来原料を用いており地球環境の保全に貢献するとともに、透明性、耐熱性などの実用性に優れた光学材料用ポリウレタン成形体を提供することができ、さらに、地球環境に調和したプラスチックレンズを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の光学材料用重合性組成物を第1の実施形態、第2の実施形態に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、
植物由来原料から得られた、脂肪族ポリイソシアネートの変性体を含むポリイソシアネート(a)と、
脂環族ポリイソシアネート(b)と、
水酸基価が300〜650mgKOH/gであり、平均官能基数が2以上7未満である植物由来原料から得られたポリオール(c)と、を含む。
【0015】
(ポリイソシアネート(a))
ポリイソシアネート(a)は、植物由来原料から得られ、脂肪族ポリイソシアネートの変性体を必須成分として含む。
植物由来の脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0016】
植物由来の脂肪族ポリイソシアネートとしては、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート,ダイマー酸ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0017】
また、植物由来のポリイソシアネートは、植物由来原料であるアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても得ることができる。
例えば、ペンタメチレンジイソシアネートは、リシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。ペンタメチレンジイソシアネートとしては、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを挙げることができる。
脂肪族ポリイソシアネートの変性体としては、例えば、前記脂肪族ポリイソシアネートの多量体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、オキサジアジントリオン変性体、ポリオール変性体などが挙げられる。
【0018】
脂肪族ポリイソシアネートの多量体としては、例えば、ウレットジオン、ウレトイミン、カルボジイミド等の二量体、イソシアヌレート、イミノオキサジアンジオン等の三量体以上の多量体が挙げられる。
【0019】
脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレートは、脂肪族ポリイソシアネートを公知のイソシアヌレート化触媒の存在下において反応させることにより得ることができる。
【0020】
脂肪族ポリイソシアネートのビウレット変性体は、脂肪族ポリイソシアネートと、例えば、水、第三級アルコール(例えば、t−ブチルアルコールなど)、第二級アミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)などとを反応させた後、公知のビウレット化触媒の存在下でさらに反応させることにより得ることができる。
【0021】
脂肪族ポリイソシアネートのアロファネート変性体は、脂肪族ポリイソシアネートとモノアルコール(1価アルコール、例えば、C1〜C10アルコール)とを反応させた後、公知のアロファネート化触媒の存在下でさらに反応させることにより得ることができる。
脂肪族ポリイソシアネートのオキサジアジントリオン変性体は、脂肪族ポリイソシアネートと二酸化炭素との反応により得ることができる。
脂肪族ポリイソシアネートのイミノオキサジアンジオン変性体は、脂肪族ポリイソシアネートを公知のイミノオキサジアンジオン化触媒の存在下でさらに反応させることにより得ることができる。
脂肪族ポリイソシアネートのポリオール変性体は、脂肪族ポリイソシアネートと、アルコールとの反応により得ることができる。脂肪族ポリイソシアネートの変性体を得るために用いられるアルコールとしては、第三級アルコール、モノアルコールおよびポリオール、好ましくは、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価のアルコールを挙げることができ、これらは植物由来の化合物がより好ましい。
これら脂肪族ポリイソシアネートの変性体は、単独または2種以上併用することができる。
【0022】
脂肪族ポリイソシアネートの変性体のうち、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートの多量体が挙げられ、さらに好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体である。
【0023】
ポリイソシアネート(a)は、前記変成体以外に、ポリイソシアネートを含み、当該ポリイソシアネートとしては、植物由来の脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができ、前述の脂肪族ポリイソシアネートであってもよい。つまり、ポリイソシアネート(a)は、ポリイソシアネート組成物として表すこともできる。
【0024】
具体的には、本実施形態において、ポリイソシアネート(a)は、脂肪族ポリイソシアネートの変性体を調製する際に得られた反応液として用いることができる。この場合、ポリイソシアネート(a)は、前記変成体と、前記脂肪族ポリイソシアネートとを含む。
なお、この反応液に、反応に用いられた脂肪族ポリイソシアネートを別途添加することもできる。
【0025】
ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基濃度は、例えば、5〜30重量%、好ましくは、10〜30重量%、さらに好ましくは20〜30重量%である。
本実施形態において、ポリイソシアネート(a)は、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート1核体(三量体)を、当該ポリイソシアネート(a)中に、10重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは45重量%以上含むことができる。イソシアヌレート1核体(三量体)を上記範囲で含むことで、耐熱性により優れた実用性の高いポリウレタン成形体を提供することができる。イソシアヌレート1核体含量の上限は、得られるポリウレタン成形体の耐熱性の確保の観点から、80重量%以下、好ましくは70重量%以下とすることができる。
【0026】
(脂環族ポリイソシアネート(b))
脂環族ポリイソシアネート(b)としては、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、1,4−または1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物、1,4−または1,3−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサンもしくはその混合物、ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−または1,3−シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0027】
なお、ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンは、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの異性体の混合物である。本実施形態において、この異性体の混合物からなる当該化合物は、1種の化合物として用いられる。
これら脂環族ポリイソシアネートは、単独使用または2種以上併用することができる。本実施形態においては、得られる成形体の耐熱性改善の観点から、脂環族ポリイソシアネート(b)として、ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを用いることが好ましい。
【0028】
脂環族ポリイソシアネート(b)は植物由来原料から得られたものが好ましいが、植物由来原料から得られたものではない化合物も使用することができる。その際、ポリウレタン成形体のバイオマス度が所定の範囲(25%以上50%未満)となるように用いることができる。
【0029】
ポリイソシアネート(a)および脂環族ポリイソシアネート(b)の総イソシアネート基に対する、脂環族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比((b)/(a)+(b))は、0.5以上0.8未満であればよく、好ましくは0.55以上0.65以下である。
【0030】
ポリイソシアネート(a)および脂環族ポリイソシアネート(b)の総イソシアネート基に対する、脂環族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比を上記範囲内にし、さらに後述する「ポリオール(c)」または「ポリオール(c)およびポリオール(d)」を含むことにより、一定範囲(25%以上50%未満)のバイオマス度を有するポリウレタン成形体を提供することができる。本実施形態の組成物から得られるポリウレタン成形体によれば、透明性、耐熱性等の物性にも優れ、さらに他の光学物性とのバランスにも優れた光学材料を得ることができる。
【0031】
(ポリオール(c))
ポリオール(c)は、植物由来原料から得られる。
ポリオール(c)は、水酸基価が300〜650mgKOH/g、好ましくは350〜600mgKOH/gであり、平均官能基数が2以上7未満、好ましくは2以上6.5以下である。
なお、水酸基価は、公知の滴定法から求めることができ、水酸基価と水酸基当量とは、次式(1)の関係にある。
水酸基価=56100/水酸基当量 (1)
【0032】
ポリオール(c)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール等を挙げることができる。
ポリエーテルポリオールは、例えば、上記した平均官能基数となるように、適宜、2価アルコール、3価アルコールおよび水酸基を4個以上有するアルコールから選択される1種以上の植物由来の化合物であるポリオールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得ることができる。
【0033】
通常、ポリオールとしては、ヒドロキシル基を2つ以上有する数平均分子量40以上400未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、アルカン(炭素数7〜22)ジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ペンタオキシエチレングリコール、ヘキサオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、テトラオキシプロピレングリコール、ペンタオキシプロピレングリコール、ヘキサオキシプロピレングリコール、イソソルビドなどの2価アルコール;
グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などの3価アルコール;
テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール;
キシリトールなどの5価アルコール;
ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール;
ペルセイトールなどの7価アルコール;ショ糖などの8価アルコール;シュークロース、キチン、キトサンなどが挙げられる。
【0034】
開始剤として用いるポリオールは、植物由来原料である、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0035】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオールおよび/またはポリエチレンポリプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)などのポリオキシC2〜C3アルキレン(エチレンおよび/またはプロピレン)ポリオール等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
ポリエステルポリオールは、例えば、上記した平均官能基数となるように、適宜、上記した、2価アルコール、3価アルコールおよび水酸基を4個以上有するアルコールから選択される1種以上の植物由来の化合物であるポリオールと、植物由来の多塩基酸またはその酸無水物あるいはその酸ハライドとの反応により得ることもできる。
【0037】
多塩基酸およびその酸無水物またはその酸ハライドとしては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(C11〜C13);水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸;これらのカルボン酸などから誘導される酸無水物;これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド等が挙げられる。
【0038】
酸無水物としては、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(C12〜C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸が挙げられる。
酸ハライドとしては、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0039】
また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した平均官能基数となるように、適宜、上記した2価アルコール、3価アルコールおよび水酸基を4個以上有するアルコールを組み合わせたポリオールを処方して、それを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。ポリエステルポリオールはこれらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
さらに、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した2価アルコール、3価アルコールおよび水酸基を4個以上有するアルコールを組み合わせて処方したポリオールと、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸とを、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0041】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記したポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0042】
アクリルポリオールとしては、例えば、ヒドロキシル基含有アクリレートと、ヒドロキシル基含有アクリレートと共重合可能な共重合性ビニルモノマーとを、共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
【0043】
ヒドロキシル基含有アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート(炭素数1〜15)、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を含むビニルモノマー、または、そのアルキルエステル、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレンなどのイソシアネート基を含むビニルモノマーなどが挙げられる。
【0045】
そして、アクリルポリオールは、これらヒドロキシル基含有アクリレート、および、共重合性ビニルモノマーを、適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることにより得ることができる。
【0046】
また、アクリルポリオールには、例えば、シリコーンポリオールやフッ素ポリオールが含まれる。
【0047】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニル基を含むシリコーン化合物が配合されたアクリルポリオールが挙げられる。
【0048】
フッ素ポリオールは、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が10質量%以上であり、二重結合含有モノマーのうち、5〜30モル%が水酸基を含有し、10〜50モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有する弱溶剤可溶性の含フッ素共重合体である。
【0049】
フルオロオレフィンは、耐候性の観点より、好ましくは、フッ素付加数が2以上、より好ましくは、3〜4のフルオロオレフィンが挙げられ、具体的には、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンなどが挙げられ、好ましくは、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンが挙げられる。これら、フルオロオレフィンは、単独使用または2種以上併用することもできる。
【0050】
二重結合含有モノマーは、フルオロオレフィンと共重合可能であり、フルオロオレフィン以外のビニル系モノマーが好ましく使用される。該ビニル系モノマーとは、CH2=CH−で表される炭素―炭素二重結合を有する化合物である。該ビニル系モノマーとしては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を含有するアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル等が挙げられる。
【0051】
また、二重結合モノマーは、水酸基を含有する二重結合含有モノマー(以下、水酸基含有モノマーと略する。)と炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有する二重結合含有モノマー(以下、分岐アルキル基含有モノマーと略する。)の両方を含む。なお、水酸基含有モノマーが炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有していてもよく、分岐アルキル基含有モノマーが水酸基を含有していてもよい。
【0052】
また、二重結合含有モノマーのうち、5〜30モル%が水酸基を含有する。水酸基含有モノマーの含有量が、5モル%以上であると、硬度の高い塗膜を得ることができ、また、水酸基含有モノマーの含有量が30モル%以下であると、弱溶剤に対して、十分な溶解性を維持することができる。
【0053】
水酸基含有モノマーの炭素数は、特に制限はないが、例えば、2〜10、好ましくは、2〜6、より好ましくは、2〜4である。
【0054】
このような水酸基含有モノマーとしては、例えば、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル類、例えば、ヒドロキシエチルアリルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノアリルエーテルなどのヒドロキシアルキルアリルエーテル類、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類などが挙げられる。
【0055】
共重合性に優れ、形成される塗膜の耐候性の向上を図る観点から、好ましくは、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類が挙げられる。とりわけ、弱溶剤に対する溶解性に優れる観点から、好ましくは、炭素数2〜4のヒドロキシアルキルビニルエーテル、より好ましくは、HBVEが挙げられる。これらの水酸基含有モノマーは、単独使用または2種以上併用することもできる。
【0056】
また、二重結合含有モノマーのうち、10〜50モル%が炭素数3以上の分岐アルキル基を含有する。分岐アルキル基含有モノマーが10〜50モル%であれば、上記の割合で水酸基含有モノマーを配合しても、弱溶剤に対する溶解性を確保することができる。
【0057】
分岐アルキル基含有モノマーにおける分岐アルキル基の炭素数は、3以上であれば特に制限されないが、好ましくは、4〜15、より好ましくは、4〜10である。
【0058】
このような分岐アルキル基含有モノマーとしては、例えば、分岐アルキル基を含有するビニルエーテル類、アリルエーテル類または(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。分岐アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基などが挙げられる。また、分岐アルキル基含有モノマーとしては、共重合性に優れる観点から、好ましくは、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2−EHVE)、tert−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類が挙げられ、より好ましくは、2−EHVEが挙げられる。これら分岐アルキル基含有モノマーは、単独使用または2種以上併用することもできる。
【0059】
二重結合含有モノマーとして、さらに、水酸基含有モノマー、分岐アルキル基含有モノマー以外の他の二重結合含有モノマーを含有させることもできる。
【0060】
他の二重結合含有モノマーとしては、好ましくは、アルキル基を含有するモノマーが挙げられ、そのアルキル基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。また、アルキル基の炭素数は、例えば、2〜8、好ましくは、2〜6である。とりわけ、環状アルキル基を含有する二重結合含有モノマーを配合すれば、含フッ素共重合体のガラス転移温度(Tg)を上昇させることができ、塗膜の硬度をさらに高めることができる。
【0061】
このような環状アルキル基を含有する二重結合含有モノマーとしては、例えば、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテルなどの環状アルキルビニルエーテル類、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル類などが挙げられる。これら他の二重結合含有モノマーは、単独使用または2種以上併用することもできる。また、他の二重結合含有モノマーの割合は、二重結合含有モノマーの全量に対して、好ましくは、70モル%以下、より好ましくは、30〜60モル%である。
【0062】
フルオロオレフィンに基づく重合単位と、二重結合含有モノマーに基づく重合単位との割合は、フルオロオレフィンに基づく重合単位が、好ましくは、30〜70モル%、より好ましくは、40〜60モル%であり、二重結合含有モノマーに基づく重合単位が、好ましくは、70〜30モル%、より好ましくは、60〜40モル%である。フルオロオレフィンに基づく重合単位の割合が、70モル%以下であると、含フッ素共重合体の弱溶剤に対する溶解性が十分となり、30モル%以上であると、十分な耐候性を確保することができる。なお、含フッ素共重合体は、塗料組成物に配合する量の弱溶剤に完全に溶解することが好ましいが、一部が弱溶剤に不溶であってもよい。
【0063】
そして、含フッ素共重合体は、フルオロオレフィンと、水酸基含有モノマーおよび分岐アルキル基含有モノマーを含む二重結合含有モノマーとを配合して、重合媒体の存在下または非存在下で、重合開始剤または電離性放射線などの重合開始源を添加して、共重合することにより、得ることができる。この共重合反応は、公知のラジカル共重合反応であり、反応温度、反応時間、反応圧力などの反応条件は適宜選択される。
【0064】
また、含フッ素共重合体は、さらに、カルボキシル基を含有することもできる。カルボキシル基を含有することにより、例えば、塗料として用いる際に顔料の分散性が向上する。含フッ素共重合体のカルボキシル基含有量は、含フッ素共重合体に対し、例えば、1〜5mgKOH/g、好ましくは、2〜5mgKOH/gである。
【0065】
該カルボキシル基は、例えば、フルオロオレフィンと二重結合含有モノマーとの重合反応後、含フッ素共重合体の水酸基に多価カルボン酸またはその無水物を反応させることにより導入することもできる。また、カルボキシル基を有する二重結合含有モノマーの直接重合によっても導入できる。
【0066】
また、含フッ素共重合体は、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が、含フッ素共重合体の全量に対して10質量%以上であり、好ましくは、20〜30質量%である。フッ素の含有量が10質量%以上であると、塗膜の耐候性を向上させることができる。
【0067】
また、含フッ素共重合体は、ポリイシアネート成分のイソシアネート基と反応させるための水酸基を含有しており、その水酸基価(以下、OHVという。)は、例えば、30〜55mgKOH/g、好ましくは、35〜50mgKOH/gである。OHVが30mgKOH/g以上であれば、塗膜の硬度を高めることができる。また、OHVが55mgKOH/g以下であれば、弱溶剤に対して含フッ素共重合体を十分に溶解させることができる。
【0068】
ポリオール(c)として、水酸基価300〜650mgKOH/g、平均官能基数が2以上7未満である植物由来原料から得られるポリエーテルポリオールが好ましく、グリセリン(官能基数3)、ソルビトール(官能基数6)、シュークロース(官能基数8)、イソソルビド(官能基数2)から選ばれる少なくとも1種の植物由来の化合物を開始剤とするポリプロピレンポリオールおよび/またはポリエチレンポリプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。特に好ましいのは、ソルビトール(官能基数6)およびグリセリン(官能基数3)から選ばれる少なくとも1種を開始剤とする、ポリプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)である。
これらポリオール(c)は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0069】
(ポリオール(d))
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、さらに植物由来の化合物であるポリオール(d)を含むことができる。
ポリオール(d)は、ポリオール(c)において例示した、2価アルコール、3価アルコールおよび水酸基を4個以上有するアルコールから選択される1種以上を用いることができる。
【0070】
ポリオール(d)として、好ましくは、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、α−メチルグリコシド、マンニトール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種である。
ここで用いられる植物由来の化合物であるポリオール(d)は、水酸基価が700〜2000mgKOH/gであることが好ましく、これらの化合物の水酸基価は以下のとおりである。
【0071】
グリセリン:1827mgKOH/g
ソルビトール:1848mgKOH/g
イソソルビド:768mgKOH/g
シュークロース:1311mgKOH/g
1,3−ブタンジオール:1245mgKOH/g
1,4−ブタンジオール:1245mgKOH/g
1,3−プロパンジオール:1475mgKOH/g
α−メチルグリコシド:1155mgKOH/g
マンニトール:1848mgKOH/g
【0072】
ポリオール(d)を含む場合、ポリイソシアネート(a)および脂環族ポリイソシアネート(b)の総イソシアネート基に対する、脂環族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比((b)/(a)+(b))が、0.8〜0.95、好ましくは0.85〜0.95である。
さらに、ポリオール(c)およびポリオール(d)の総水酸基に対する、ポリオール(d)の水酸基のモル比((d)/(c)+(d))は、0.5〜0.9、好ましくは0.6〜0.9、さらに好ましくは、0.7〜0.85である。
【0073】
本実施形態の組成物において前記のモル比を何れも満たすことにより、ポリウレタン成形体のバイオマス度が一定範囲(25%以上50%未満)において、透明性、耐熱性等の物性にも優れ、さらに他の光学物性とのバランスにも優れたポリウレタン成形体を得ることができる。
【0074】
(触媒)
本実施形態の光学材料用重合性組成物からポリウレタン樹脂を得る重合反応の触媒としては、有機金属化合物、アミン類や酸等の公知の触媒を用いることができる。
【0075】
有機金属化合物としては、スズ、チタン、水銀、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、コバルト、銅、鉛等を含有する化合物をあげられる。例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウレート、ジメチル錫ジクロリド、ジブチル錫ジクロリド等の有機錫化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛等の有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物、例えば、ナフテン酸マンガン等の有機マンガン化合物、例えば、ナフテン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルト等の有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅等の有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物が挙げられる。
【0076】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリン、N,N'−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、ビシクロオクタンジアミン(DABCO)等の3級アミン類、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩類、例えば、イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、ベンジルメチルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール等のイミダゾール類、例えば、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール類、例えば、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシエチル−4−ピペリジノール、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとの混合物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のヒンダードアミン類が挙げられる。
【0077】
アミン類としては、イソシアネート基のブロック剤としても機能しうるイミダゾール類、ピラゾール類、ヒンダードアミン類などのアミン類が好ましく、ヒンダードアミン類がより好ましい。
【0078】
ヒンダードアミンは光安定化剤としても使用されるもので、市販品としてChemtura社製のLowilite76、Lowilite92、BASF社製のTinuvin144、Tinuvin292、Tinuvin765、ADEKA社製のアデカスタブLA−52、LA−72、城北化学工業社製のJF−95等を挙げることができる。
【0079】
酸類としては例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のスルホン酸、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル等の酸性リン酸エステルが挙げられる。酸性リン酸エステルの具体例は一般式(2)で表される。
【0080】
【化2】
【0081】
式中、mは1または2の整数を示し、nは0〜18の整数を示し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または、メチル基、エチル基を示す。[ ]m内の炭素数は4から20であることが好ましい。
【0082】
一般式(2)中のRとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、へキサデカン等の直鎖の脂肪族化合物から誘導される有機残基;
2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、3−エチルペンタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2−メチルへプタン、3−メチルへプタン、4−メチルへプタン、3−エチルへプタン、4−エチルへプタン、4−プロピルへプタン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、4−メチルオクタン、3−エチルオクタン、4−エチルオクタン、4−プロピルオクタン等の分岐鎖の脂肪族化合物から誘導される有機残基;
シクロペンタン、シクロへキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン等の脂環族化合物から誘導される有機残基;
等を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0083】
酸性リン酸エステルはプラスチックレンズの製造における離型剤としても使用されるもので、市販品として、STEPAN社製のZelecUN、城北化学工業社製のJPシリーズ、東邦化学工業社製のフォスファノールシリーズ、大八化学工業社製のAP、DPシリーズ等を挙げることができる。
【0084】
本実施形態の重合触媒としては、特に限定されるものではないが、植物由来原料から光学材料用ポリウレタン樹脂を合成し、地球環境に調和するプラスチックレンズを提供する目的に鑑み、非金属触媒であることが好ましい。非金属触媒としてはアミン類、酸類の触媒が用いられるが、中でも触媒自体が植物由来の化合物を用いて得ることのできるアミン類、酸類が特に好ましい。また、アミン類として特定の環状アミン類をリン酸エステル類と併用すると、ウレタン化反応性を調節する観点から好ましい場合がある。
【0085】
アミン類として特に好ましい例としてはメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとの混合物(BASF社製のTinuvin292)が挙げられる。またその酸類として特に好ましい例としては、酸性リン酸エステル(STEPAN社製のZelecUN)が挙げられる。
これらの触媒は単独または2種類以上併用して用いることができる。
【0086】
触媒としてのアミン類の添加量は構成成分(a)〜(d)の合計100重量部に対して、0.1重量部から6.0重量部が好ましく、1.0重量部から3.0重量部がより好ましい。触媒としての酸類の添加量は構成成分(a)〜(d)の合計100重量部に対して、0.1重量部から6.0重量部が好ましく、1.0重量部から3.0重量部がより好ましい。
【0087】
(その他の成分)
本実施形態の重合性組成物は、目的に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、ブルーイング剤、樹脂改質剤等の添加剤を含むことができる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物を用いることができる。
【0088】
ヒンダードアミン系化合物は、Chemtura社製のLowilite76、Lowilite92、BASF社製のTinuvin123、Tinuvin144、Tinuvin292、Tinuvin765、Tinuvin770DF、ADEKA社製のアデカスタブLA−52、LA−72、城北化学工業社製のJF−90、JF−95等を挙げることができる。
【0089】
ブルーイング剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂からなる光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。ブルーイング剤は、さらに具体的には、青色から紫色を示す物質を含む。
【0090】
用いられる紫外線吸収剤としては、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシ−5−tert−ブチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシ−2',4'−ジクロロベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、
2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2,4−tert−ブチルフェノール、2,2'−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられるが、好ましくは2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノールや2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェノールのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独でも2種以上を併用することもできる。
【0091】
これら添加剤の添加量は構成成分(a)〜(d)の合計100重量部に対して、0.05重量部から2.0重量部が好ましく、0.05重量部から1.5重量部がより好ましい。
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、前述の成分を混合することにより得ることができる。混合方法は、従来公知の方法により行うことができる。
【0092】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、構成成分(a)〜(b)の総イソシアナト基に対する構成成分(c)〜(d)の総水酸基のモル比は0.8〜1.2の範囲内であり、好ましくは0.85〜1.15の範囲内であり、さらに好ましくは0.9〜1.1の範囲内である。前記範囲内で、光学材料、特に眼鏡レンズとして好適に使用される成形体を得ることができる。
【0093】
[ポリウレタン成形体]
本実施形態の光学材料用重合性組成物を重合硬化することにより、植物由来原料から得られ、地球環境に調和するポリウレタン成形体を得ることができる。ポリウレタン成形体のバイオマス度を25%以上50%未満とすることができる。
【0094】
非化石資源の活用の観点からは、植物由来原料を用い、高いバイオマス度を有する材料を用いることが好ましい。しかしながら、成形体のバイオマス度を向上させていくと、物性等が低下する場合があった。
【0095】
本発明者らが鋭意検討したところ、本実施形態の組成物により、バイオマス度が25%以上50%未満のポリウレタン成形体および光学材料が得られ、非化石資源の活用に貢献することができるとともに、さらに透明性、耐熱性に優れ、かつ、屈折率、アッベ数、離型性等の物性のバランスにも優れるポリウレタン成形体および光学材料が得られることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0096】
ポリウレタン成形体のTgは、60℃以上、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。
【0097】
<第2の実施形態>
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、
植物由来原料から得られた、脂肪族ポリイソシアネートの変性体を含むポリイソシアネート(a)と、
脂環族ポリイソシアネート(b)と、
一般式(1)で表される(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)と、
【0098】
【化3】
【0099】
(式中、Rは炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示し、アルキル基又はアルケニル基は、直鎖又は分岐鎖を有していても良い。Xは、水素原子又はRCO(Rは前記の意味を示す)で表される基を示し、複数個のXは同一でも異なっていても良い。nは、0〜3の整数である。)
植物由来の化合物であるポリオール(d)と、
を含む。
なお、ポリイソシアネート(a)は第1の実施形態と同様のものを用いることができるため、説明を省略する。
【0100】
(脂環族ポリイソシアネート(b))
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、脂環族ポリイソシアネート(b)を含む。脂環族ポリイソシアネート(b)は第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0101】
脂環族ポリイソシアネート(b)は植物由来原料から得られたものが好ましいが、植物由来原料から得られたものではない化合物も使用することができる。その際、ポリウレタン成形体のバイオマス度が所定の範囲(20%以上75%以下)となるように用いることができる。
【0102】
((ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e))
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、一般式(1)で表される(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)を含む。
【0103】
【化4】
【0104】
式中、Rは炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示し、アルキル基又はアルケニル基は、直鎖又は分岐鎖を有していても良い。Rは、炭素数6〜19のアルキル基が好ましい。
Xは、水素原子又はRCO(Rは前記の意味を示す)で表される基を示し、複数個のXは同一でも異なっていても良い。Xは水素原子であることが好ましい。nは、0〜3の整数である。
【0105】
一般式(1)で表される(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)は、グリセリン、又はポリグリセリンと炭素数6〜20の脂肪酸とをエステル化することにより得られる。
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)の具体例としては、ジグリセリンカプリレート、テトラグリセリンモノラウリエート、テトラグリセリンリシノレート、イソステアリン酸ジグリセリル、ジグリセリンラウレート、ステアリン酸グリセリル等が例示される。
【0106】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)の添加量は構成成分(a)、(b)、(d)および(e)の合計100重量部に対して、3.0重量部〜20.0重量部が好ましく、5.0重量部〜15.0重量部がより好ましい。
【0107】
(ポリオール(d))
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、植物由来の化合物であるポリオール(d)を含む。
ポリオール(d)は、2価アルコール、3価アルコールおよび水酸基を4個以上有するアルコールから選択される一種以上を用いることができる。
【0108】
ポリオール(d)として、好ましくは、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、α−メチルグリコシド、マンニトール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種である。
ここで用いられる植物由来の化合物であるポリオール(d)は、水酸基価が700〜2000mgKOH/gであることが好ましく、これらの化合物の水酸基価は以下のとおりである。
なお、本明細書において、例えば、「300〜650mgKOH/g」との表記は、「300mgKOH/g以上、650mgKOH/g以下」を意味し、他の数値範囲においても同様である。
【0109】
グリセリン:1827mgKOH/g
ソルビトール:1848mgKOH/g
イソソルビド:768mgKOH/g
シュークロース:1311mgKOH/g
1,3−ブタンジオール:1245mgKOH/g
1,4−ブタンジオール:1245mgKOH/g
1,3−プロパンジオール:1475mgKOH/g
α−メチルグリコシド:1155mgKOH/g
マンニトール:1848mgKOH/g
【0110】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)およびポリオール(d)の総水酸基に対する、ポリオール(d)の水酸基のモル比((d)/(e)+(d))は、0.5〜0.9、好ましくは0.6〜0.9、さらに好ましくは、0.6〜0.81である。
【0111】
本実施形態の組成物において前記のモル比を満たすことにより、ポリウレタン成形体のバイオマス度が一定範囲(20%以上75%以下)において、離型性、透明性、耐熱性等の物性にも優れ、さらに他の光学物性とのバランスにも優れたポリウレタン成形体を得ることができる。
【0112】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)およびポリオール(d)の総水酸基に対する、ポリオール(d)の水酸基のモル比((d)/(e)+(d))を満たし、さらにポリイソシアネート(a)および脂環族ポリイソシアネート(b)の総イソシアネート基に対する、脂環族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比((b)/(a)+(b))は、0.2〜0.85、好ましくは0.2〜0.65、さらに好ましくは、0.35〜0.65である。
【0113】
この範囲を何れも満たすことにより、一定範囲(20%以上75%以下)のバイオマス度を有するポリウレタン成形体を提供することができる。本実施形態の組成物から得られるポリウレタン成形体によれば、離型性、透明性、耐熱性等の物性にも優れ、さらに他の光学物性とのバランスにも優れた光学材料を得ることができる。
【0114】
(ポリオール(c))
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、さらにポリオール(c)を含むこともできる。ポリオール(c)は、植物由来原料から得られる。ポリオール(c)は第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0115】
(触媒)
本実施形態の光学材料用重合性組成物からポリウレタン成形体を得る重合反応の触媒としては、有機金属化合物、アミン類や酸等の公知の触媒を用いることができる。これらの触媒は、第1の実施形態と同様のものを用いることができるため、説明を省略する。
【0116】
触媒としてのアミン類の添加量は構成成分(a)、(b)、(d)および(e)の合計100重量部に対して、0.1重量部から6.0重量部が好ましく、1.0重量部から3.0重量部がより好ましい。触媒としての酸類の添加量は構成成分(a)、(b)、(d)および(e)の合計100重量部に対して、0.1重量部から7.0重量部が好ましく、1.0重量部から4.0重量部がより好ましい。
【0117】
(その他の成分)
本実施形態の重合性組成物は、目的に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、ブルーイング剤、樹脂改質剤等の添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、第1の実施形態と同様のものを用いることができるため、説明を省略する。
【0118】
これら添加剤の添加量は構成成分(a)〜(e)の合計100重量部に対して、0.05重量部〜2.0重量部が好ましく、0.05重量部〜1.5重量部がより好ましい。
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、前述の成分を混合することにより得ることができる。混合方法は、従来公知の方法により行うことができる。
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、構成成分(a)〜(b)の総イソシアナト基に対する構成成分(c)〜(e)の総水酸基のモル比は0.8〜1.2の範囲内であり、好ましくは0.85〜1.15の範囲内であり、さらに好ましくは0.9〜1.1の範囲内である。前記範囲内で、光学材料、特に眼鏡レンズとして好適に使用される成形体を得ることができる。
【0119】
[ポリウレタン成形体]
本実施形態の光学材料用重合性組成物を重合硬化することにより、植物由来原料から得られ、地球環境に調和するポリウレタン成形体を得ることができる。ポリウレタン成形体のバイオマス度を20%以上75%以下とすることができる。
【0120】
非化石資源の活用の観点からは、植物由来原料を用い、高いバイオマス度を有する材料を用いることが好ましい。しかしながら、成形体のバイオマス度を向上させていくと、物性等が低下する場合があった。
【0121】
本発明者らが鋭意検討したところ、本実施形態の組成物により、バイオマス度が20%以上75%以下のポリウレタン成形体および光学材料が得られ、非化石資源の活用に貢献することができるとともに、さらに離型性、透明性、耐熱性に優れ、かつ、屈折率、アッベ数、離型性等の物性のバランスにも優れるポリウレタン成形体および光学材料が得られることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0122】
ポリウレタン成形体のTgは、60℃以上、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。
【0123】
[用途]
第1の実施形態および第2の実施形態(以下、本実施形態)の光学材料用ポリウレタン成形体からなる光学材料は、注型重合時のモールドを変えることにより種々の形状として得ることができる。具体的には、プラスチックレンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター、発光ダイオード、自動車用光学レンズ、ロボット用光学レンズ等の各種用途に使用することが可能である。特に、プラスチックレンズ、カメラレンズ、発光ダイオード等の光学材料、光学素子として好適である。
【0124】
プラスチックレンズとしては、ポリウレタン成形体からなるプラスチック眼鏡レンズ、偏光フィルムの少なくとも一方の面に、ポリウレタン樹脂からなる層が積層しているプラスチック偏光レンズを挙げることができる。
【0125】
[プラスチック眼鏡レンズの製造方法]
本実施形態のプラスチック眼鏡レンズの製造方法は、以下の工程を備える。
工程(1):レンズ注型用鋳型内に、本実施形態の光学材料用重合性組成物を注入する。
工程(2):レンズ注型用鋳型内の光学材料用重合性組成物を重合硬化する。
以下、各工程に沿って順に説明する。
【0126】
工程(1)
本工程においては、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド(レンズ注型用鋳型)内に、本実施形態の重合性組成物を注入する。この時、得られる成形体に要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい。
【0127】
工程(2)
本工程においては、所定の温度で成型モールド内に注型された重合性組成物の重合を開始し、該組成物を重合する。重合条件については、使用するポリイソシアネートやアルコールの種類、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定されるものではないが、およそ0〜140℃の温度で1〜48時間かけて行われる。
【0128】
得られたプラスチック眼鏡レンズは必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。コーティング層としては、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用してもよい。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0129】
これらのコーティング層はそれぞれ、紫外線からレンズや目を守る目的で紫外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0130】
プライマー層は通常、後述するハードコート層と光学レンズとの間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズとの密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層には得られた光学レンズに対する密着性の高いものであればいかなる素材でも使用できるが、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラニン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は組成物の粘度を調整する目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。無論、無溶剤で使用してもよい。
【0131】
プライマー組成物は塗布法、乾式法のいずれの方法によっても形成させることができる。塗布法を用いる場合、レンズへスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布された後、固化させることによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズの表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行っておいてもよい。
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能を与えることを目的としたコーティング層である。
【0132】
ハードコート層は、一般的には硬化性を有する有機ケイ素化合物とSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,InおよびTiの元素群から選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上および/またはこれら元素群から選ばれる2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上を含むハードコート組成物が使用される。
【0133】
ハードコート組成物には前記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。ハードコート組成物にはレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。無論、無溶剤で使用してもよい。
【0134】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。干渉縞の発生を抑制するため、ハードコート層の屈折率は、レンズとの屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0135】
反射防止層は、通常、必要に応じて前記ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系および有機系があり、無機系の場合、SiO、TiO等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ−ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。有機系の場合、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
【0136】
反射防止層は単層および多層があり、単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、ZnO、TiO、CeO、Sb、SnO、ZrO、Ta等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO膜等が挙げられる。
【0137】
反射防止層の上には、必要に応じて防曇コート層、防汚染層、撥水層を形成させてもよい。防曇コート層、防汚染層、撥水層を形成する方法としては、反射防止機能に悪影響をもたらすものでなければ、その処理方法、処理材料等については特に限定されずに、公知の防曇コート処理方法、防汚染処理方法、撥水処理方法、材料を使用することができる。例えば、防曇コート、防汚染処理方法では、表面を界面活性剤で覆う方法、表面に親水性の膜を付加して吸水性にする方法、表面を微細な凹凸で覆い吸水性を高める方法、光触媒活性を利用して吸水性にする方法、超撥水性処理を施して水滴の付着を防ぐ方法などが挙げられる。また、撥水処理方法では、フッ素含有シラン化合物等を蒸着やスパッタによって撥水処理層を形成する方法や、フッ素含有シラン化合物を溶媒に溶解したあと、コーティングして撥水処理層を形成する方法等が挙げられる。
【0138】
本実施形態のプラスチック眼鏡レンズはファッション性やフォトクロミック性の付与などを目的として、目的に応じた色素を用い、染色して使用してもよい。レンズの染色は公知の染色方法で実施可能であるが、通常、以下に示す方法で実施される。
【0139】
一般的には、使用する色素を溶解または均一に分散させた染色液中に所定の光学面に仕上げられたレンズ生地を浸漬(染色工程)した後、必要に応じてレンズを加熱して色素を固定化(染色後アニール工程)する方法である。染色工程に用いられる色素は公知の色素であれば特に限定されないが、通常は油溶染料もしくは分散染料が使用される。染色工程で使用される溶剤は用いる色素が溶解可能もしくは均一に分散可能なものであれば特に限定されない。この染色工程では、必要に応じて染色液に色素を分散させるための界面活性剤や、染着を促進するキャリアを添加してもよい。染色工程は、色素及び必要に応じて添加される界面活性剤を水又は水と有機溶媒との混合物中に分散させて染色浴を調製し、この染色浴中に光学レンズを浸漬し、所定温度で所定時間染色を行う。染色温度及び時間は、所望の着色濃度により変動するが、通常、120℃以下で数分から数十時間程度でよく、染色浴の染料濃度は0.01〜10重量%で実施される。また、染色が困難な場合は加圧下で行ってもよい。必要に応じて実施される染色後アニール工程は、染色されたレンズ生地に加熱処理を行う工程である。加熱処理は、染色工程で染色されたレンズ生地の表面に残る水を溶剤等で除去したり、溶媒を風乾したりした後に、例えば大気雰囲気の赤外線加熱炉、あるいは抵抗加熱炉等の炉中に所定時間滞留させる。染色後アニール工程は、染色されたレンズ生地の色抜けを防止する(色抜け防止処理)と共に、染色時にレンズ生地の内部に浸透した水分の除去が行われる。
【0140】
[プラスチック偏光レンズの製造方法]
本実施形態のプラスチック偏光レンズの製造方法は、以下の工程を備える。
工程(a):レンズ注型用鋳型内に、偏光フィルムの少なくとも一方の面がモールドから離隔した状態で、該偏光フィルムを固定する。
工程(b):前記偏光フィルムと前記モールドとの間の空隙に、本実施形態の光学材料用重合性組成物を注入する。
工程(c):前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面にポリウレタン樹脂からなる層を積層する。
以下、各工程に沿って順に説明する。
【0141】
工程(a)
レンズ注型用鋳型の空間内に、熱可塑性ポリエステル等からなる偏光フィルムを、フィルム面の少なくとも一方が対向するモールド内面と並行となるように設置する。偏光フィルムとモールドとの間には、空隙部が形成される。偏光フィルムは予め附形されていてもよい。
【0142】
工程(b)
次いで、レンズ注型用鋳型の空間内において、モールドと偏光フィルムとの間の空隙部に、所定の注入手段により本実施形態の光学材料用重合性組成物を注入する。
【0143】
工程(c)
次いで、光学材料用重合性組成物が注入された偏光フィルムが固定されたレンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて数時間から数十時間かけて加熱して硬化成型する。
【0144】
重合硬化の温度は、重合性組成物の組成、触媒の種類、モールドの形状等によって条件が異なるため限定できないが、0〜140℃の温度で1〜48時間かけて行われる。
【0145】
硬化成形終了後、レンズ注型用鋳型から取り出すことで、偏光フィルムの少なくとも一方の面にポリウレタン樹脂からなる層が積層された、本実施形態のプラスチック偏光レンズを得ることができる。
本実施形態のプラスチック偏光レンズは、重合による歪みを緩和することを目的として、離型したレンズを加熱してアニール処理を施すことが望ましい。
【0146】
本実施形態のプラスチック偏光レンズは、必要に応じ、片面又は両面にコーティング層を施して用いられる。コーティング層としては、プラスチック眼鏡レンズと同様の、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等を挙げることができる。
【0147】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0148】
以下に、実施例A、Bにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下説明中、特に言及が無い限り「部」、%は重量基準である。
【0149】
<実施例A>
(ポリイソシアネート中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネート濃度(単位:重量%)の測定方法)
以下の装置を用い、後述する製造例A2で得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを標品として作成した検量線からポリイソシアネート中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの濃度を求めた。
【0150】
装置:Prominence(島津製作所社製)
カラム:SHISEIDO SILICA SG−120
カラム温度:40℃
溶離液:n−ヘキサン/メタノール/1,2−ジクロロエタン=90/5/5(体積比)
流量:0.2ml/min
検出器:UV 225nm
R.Time:16.9min
測定溶液調整:50mlのメスフラスコに試料0.1gおよび試料の約20倍モルのジベンジルアミンを加え、1,2−ジクロロエタンでメスアップし測定溶液とした。
測定:測定溶液1μLを注入して測定を行った。
【0151】
(ポリイソシアネートのイソシアネート基濃度(単位:重量%)の測定方法)
電位差滴定装置を用いて、JIS K−1556に準拠したn−ジブチルアミン法により測定し、求めた。
【0152】
(ポリイソシアネート中のイソシアヌレート1核体濃度(単位:重量%)の測定方法)
以下の装置を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められたクロマトグラムより、全ピーク面積に対する1,5−ペンタメチレンイソシアネートの3倍の分子量に相当するピークの面積比率をポリイソシアネート中のイソシアヌレート1核体濃度(重量%)とした。
【0153】
装置:HLC−8020(東ソー社製)
カラム:G1000HXL、G2000HXL、G3000HXL(東ソー社製)の直列連結
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.8ml/min
検出器:示差屈折系
R.Time:イソシアヌレート1核体 27.2min
標準物質:ポリエチレンオキシド(東ソー社製 TSK標準ポリエチレンオキシド)
測定:試料30mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、得られた溶液100μLを注入して測定を行った。
【0154】
(ポリイソシアネートの平均官能基数の算出方法)
ポリイソシアネートの平均官能基数は、ポリイソシアネート中のイソシアヌレート1核体濃度と同様の測定にて得られた数平均分子量およびポリイソシアネートのイソシアネート基濃度を用い、以下の式より算出した。
(ポリイソシアネートの平均官能基数)=(ポリイソシアネートの数平均分子量)×(ポリイソシアネートのイソシアネート基濃度)/4202
【0155】
(ポリオールの水酸基価の測定方法)
水酸基価(mgKOH/g): JIS K1557−1(B法)の規格に準拠し測定した。
【0156】
(ポリオールの平均官能基数の算出方法)
ポリオールの平均官能基数は、以下の式より算出した。
Σ(Mn/MWn×fn)/Σ(Mn/MWn)
Mn:多官能アルコールの重量部
MWn:多官能アルコールの分子量
fn:多官能アルコール1分子中のヒドロキシル基数
【0157】
(ポリイソシアネート(a)およびポリオール(c)のバイオマス度(単位:%)の算出方法)
合成例A1〜A11に記載したポリイソシアネートおよびポリオールのバイオマス度は以下の式より算出した。
植物由来炭素数/(植物由来炭素数+石油由来炭素数)×100
【0158】
(ポリウレタン成形体のバイオマス度(単位:%)の算出方法)
実施例A1〜A8、比較例A1〜A4に記載したポリウレタン成形体のバイオマス度は以下の式により算出した。
【0159】
{[(a)の重量部×(a)のバイオマス度/100]+[(c)の重量部×(c)のバイオマス度/100]+[(d)の重量部×(d)のバイオマス度/100]}/[(a)+(b)+(c)+(d)の総重量(重量部)]
上記式における(a)〜(d);は以下のとおりである。
(a):ポリイソシアネート(a)
(b):脂環族ポリイソシアネート(b)
(c):ポリオール(c)
(d):ポリオール(d)
【0160】
ポリイソシアネート(a)、ポリオール(c)のバイオマス度については、上記算出方法にて計算した値を用い、ポリウレタン成形体のバイオマス度を求めた。ポリオール(d)については、バイオマス度100%とし、ポリウレタン成形体のバイオマス度を求めた。
【0161】
(レンズの性能試験法)
重合により得られたレンズは性能試験を行い評価した。性能試験は、屈折率・アッベ数、耐熱性、比重とし、以下の試験法により評価した。
・ 屈折率(ne)アッベ数(νe): 島津製作所製プルフリッヒ屈折計KPR−30を用いて、20℃で測定した。
・ 耐熱性: 島津製作所製TMA−60を使用し、TMAペネトレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ)でのガラス転移温度(Tg)を耐熱性とした。
・ 比重:20℃にてアルキメデス法により測定した。
【0162】
[参考調製例A]
(植物由来原料を用いた1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの合成]
調製例A1(菌体破砕液の調製)
(リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)のクローニング)
Escherichia coli W3110株(ATCC27325)から常法に従い調製したゲノムDNAをPCRの鋳型に用いた。
【0163】
PCR用のプライマーには、リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)(GenBank Accession No.AP009048)の塩基配列に基づいて設計した配列番号1および2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(インビトロジェン社に委託して合成した)を用いた。これらのプライマーは、5'末端付近にそれぞれKpnIおよびXbaIの制限酵素認識配列を有する。
【0164】
上記のゲノムDNA1ng/μLおよび各プライマー0.5pmol/μLを含む25μLのPCR反応液を用いて、変性:94℃、30秒間、アニーリング:55℃、30秒間、伸長反応:68℃、2分間からなる反応サイクルを30サイクルの条件で、PCRを行った。
【0165】
PCR反応産物およびプラスミドpUC18(宝酒造社製)をKpnIおよびXbaIで消化し、ライゲーション・ハイ(東洋紡社製)を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、Eschrichia coli DH5α(東洋紡社製)を形質転換した。形質転換体を、アンピシリン(Am)100μg/mLおよびX−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)を含むLB寒天培地で培養し、Am耐性でかつ白色コロニーとなった形質転換体を得た。このようにして得られた形質転換体よりプラスミドを抽出した。
【0166】
通常の塩基配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片の塩基配列が配列番号3に示す塩基配列であることを確認した。
【0167】
得られたリシン脱炭酸酵素をコードするDNAを持つプラスミドをpCADAと命名した。pCADAを用いて形質転換した大腸菌を培養することで、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するリシン脱炭酸酵素を生産することができた。
【0168】
(形質転換体の作製)
pCADAを用いてEscherichia coli W3110株を通常の方法で形質転換し、得られた形質転換体をW/pCADAと命名した。
この形質転換体をバッフル付き三角フラスコ中のAm100μg/mLを含むLB培地500mlに接種し、30℃にてOD(660nm)が0.5になるまで振盪培養した後、IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)が0.1mmol/Lとなるように添加し、さらに14時間振盪培養した。培養液を8000rpmで20分間遠心分離し、菌体を得た。この菌体を20mmol/L リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に懸濁した後、超音波破砕を行い、菌体破砕液を調製した。
【0169】
調製例A2(1,5−ペンタメチレンジアミン水溶液の製造)
フラスコに、L−リシン一塩酸塩(和光純薬製)を、終濃度が45重量%となるように、および、ピリドキサールリン酸(和光純薬製)を、終濃度が0.15mmol/Lとなるように調製した基質溶液120重量部を加えた。次に、上記のW/pCADA菌体破砕液(仕込み乾燥菌体換算重量0.3g)を添加し反応を開始した。反応条件は37℃、200rpmとした。反応液のpHは6mol/Lの塩酸にてpH6に調整した。24時間後の1,5−ペンタメチレンジアミンの反応収率は99%に達していた。上記の反応24時間後の反応液を、6mol/Lの塩酸にてpH2に調整し、0.6重量部の活性炭(三倉化成社製 粉末活性炭PM−SX)を添加し、25℃で1時間攪拌を行った後、濾紙(ADVANTEC社製 5C)にて濾過を行った。次に、この濾液を水酸化ナトリウムにてpH12に調整し、1,5−ペンタメチレンジアミン水溶液(17.0重量%水溶液)を得た。
【0170】
製造例A1(1,5−ペンタメチレンジアミンの調製)
23℃にて、分液ロートに1,5−ペンタメチレンジアミン水溶液100重量部とn−ブタノール100重量部とを仕込み、10分間混合し、その後30分間静置した。水層である下層を抜き出し、次いで有機層(1,5−ペンタメチレンジアミンを含むn−ブタノール)である上層を抜き出した。抽出率を測定した結果、91.6%であった。次いで、温度計、蒸留塔、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに有機層の抽出液80重量部を仕込み、オイルバス温度を120℃とし、10kPaの減圧下でn−ブタノールを留去させた。次いで、オイルバス温度を140℃とし、10kPaの減圧下で1,5−ペンタメチレンジアミンを留去させ、純度99.9重量%の1,5−ペンタメチレンジアミンを得た。
【0171】
製造例A2(1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの製造)
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、o−ジクロロベンゼン2000重量部を仕込んだ。次いで、ホスゲン2300重量部をホスゲン導入ラインから加え、撹拌を開始した。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、製造例A1で得た1,5−ペンタメチレンジアミン400重量部をo−ジクロロベンゼン2600重量部に溶解した溶液を、フィードポンプにて60分かけてフィードし、30℃以下、常圧下で冷ホスゲン化を開始した。フィード終了後、加圧反応器内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0172】
次いで、反応器の内液を徐々に160℃まで昇温しながら、0.25MPaに加圧し、さらに圧力0.25MPa、反応温度160℃で90分間熱ホスゲン化した。なお、熱ホスゲン化の途中で、ホスゲン1100重量部を、さらに添加した。熱ホスゲン化の過程で、加圧反応器内液は、淡褐色澄明溶液となった。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/時で通気し、脱ガスした。
【0173】
次いで、減圧下でo−ジクロルベンゼンを留去した後、同じく減圧下で1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを留去させ、純度98.7%の1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを558重量部得た。
【0174】
次いで、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート558重量部、およびトリス(トリデシル)ホスファイト(城北化学社製、商品名:JP−333E)を1,5−ペンタメチレンジイソシアネート100重量部に対し0.02重量部を、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに装入し、窒素を導入しながら、常圧下で、210℃、2時間加熱処理を行い、純度98.3%の1,5−ペンタメチンジイソシアネートを553重量部得た。熱処理における1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの収率は、99.6%であった。
【0175】
次いで、加熱処理後の1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを、ガラス製フラスコに装入し、充填物(住友重機械工業社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学社製、商品名:蒸留頭K型)、および、冷却器を装備する精留装置を用いて、127〜132℃、2.7KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、純度99.9重量%の1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを得た。下記記載の方法でバイオマス度を測定した結果、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートのバイオマス度は71%であった。
【0176】
(1,5−ペンタメチレンジイソシアネートのバイオマス度測定法)
バイオマス度は、ASTM D6866 METHOD−Bの規格に準拠し測定した。
1,5−ペンタメチレンジイソシアートをメタノールでメチルカーバメート化(ウレタン化)し、メチルカーバメート体のバイオマス度を測定した。その結果、バイオマス度56%であった。この値を元に、次の式より1,5−ペンタメチレンジイソシアネートのバイオマス度を求めた。
植物由来炭素数/(植物由来炭素数+石油由来炭素数)×100
【0177】
[合成例A1]
(ポリイソシアネートA1の合成)
攪拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに製造例A2で得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(以下、PDIと略記する場合がある)500部、イソブチルアルコール(以下、IBAと略記する場合がある)を1部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノール(以下、BHTと略記する場合がある)を0.3部、トリス(トリデシル)ホスファイト(城北化学(株)製、商品名:JP−333E)を0.3部装入し、80℃で2時間反応させた。次に、イソシアヌレート化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート(エアープロダクツジャパン(株)製、商品名:DABCO(R)TMR)を0.05部添加した。50分反応後o−トルエンスルホンアミド(以下、OTSと略記する場合がある)を0.12部添加しポリイソシアネートA1を502部得た。ポリイソシアネートA1を構成する1,5−ペンタメチレンジイソシアネート由来の量は、99.6重量%であった。
このポリイソシアネートA1中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネート濃度は82重量%、イソシアヌレート1核体濃度は12重量%、イソシアネート基濃度は49%、平均官能基数は2.1、バイオマス度71%であった。
【0178】
以下に、バイオマス度の計算方法を示す。用いたイソシアヌレート化触媒のDABCO(R)TMRは、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートが33.8重量%、2−エチルヘキサン酸が41.2重量%、エチレングリコールが25重量%の混合物であった。
ポリイソシアネートA1のバイオマス度={502(ポリイソシアネートA1の重量部)×99.8(ポリイソシアネートA1を構成するPDI由来の量)/100/154.2(PDIの分子量)×5(PDI 1分子中の植物由来炭素数)}/{502(ポリイソシアネートA1の重量部)×99.8(ポリイソシアネートA1を構成するPDI由来の量)/100/154.2(PDIの分子量)×7(PDI 1分子中の炭素数)+1(IBAの重量部)/74.1(IBAの分子量)×4(IBA 1分子中の炭素数)+0.3(BHTの重量部)/220.4(BHTの分子量)×15(BHT 1分子中の炭素数)+0.3(JP−333Eの重量部)/628(JP−333Eの分子量)×39(JP−333E一分子中の炭素数)+0.02(N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートの重量部)/118.2(N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートの分子量)×6(N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート1分子中の炭素数)+0.02(2−エチルヘキサン酸の重量部)/144.2(2−エチルヘキサン酸の分子量)×8(2−エチルヘキサン酸1分子中の炭素数)+0.01(エチレングリコールの重量部)/62.1(エチレングリコールの分子量)×2(エチレングリコール1分子中の炭素数)+0.12(OTSの重量部)/171.2(OTSの分子量)×7(OTS1分子中の炭素数)}×100=71%
【0179】
[合成例A2]
(ポリイソシアネートA2の合成)
攪拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに製造例A2で得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネート500部、イソブチルアルコールを1部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノールを0.3部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.3部装入し、80℃で2時間反応させた。次に、トリマー化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート(エアープロダクツジャパン(株)製、商品名:DABCO(R)TMR)を0.05部添加した。50分反応後o−トルエンスルホンアミドを0.12部添加した。得られた反応液を薄膜蒸留装置に通液して真空度0.09KPa、温度150℃で蒸留し、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを401部得た。さらに得られた組成物100部に対してo−トルエンスルホンアミドを0.02部添加しポリイソシアネートA2を100部得た。ポリイソシアネートA2を構成する1,5−ペンタメチレンジイソシアネート由来の量は、98重量%であった。
このポリイソシアネートA2中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネート濃度は1重量%未満、イソシアヌレート1核体濃度は65重量%、イソシアネート基濃度は25%、平均官能基数は3.3、バイオマス度70%であった。
【0180】
[合成例A3]
(ポリイソシアネートA3の合成)
攪拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに製造例A2で得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネート500部、イソブチルアルコールを5部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノールを0.3部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.3部装入し、80℃で2時間反応させた。次に、イソシアヌレート化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート(エアープロダクツジャパン(株)製、商品名:DABCO(R)TMR)を0.05部添加した。40分反応後o−トルエンスルホンアミドを0.12部添加した。得られた反応液を薄膜蒸留装置に通液して真空度0.09KPa、温度150℃で蒸留し、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを405部得た。さらに得られた組成物100部に対してo−トルエンスルホンアミドを0.02部添加しポリイソシアネートA3を101部得た。ポリイソシアネートA3を構成する1,5−ペンタメチレンジイソシアネート由来の量は、94重量%であった。
このポリイソシアネートA3中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネート濃度は1重量%未満、イソシアヌレート1核体濃度は50重量%、イソシアネート基濃度は24%、平均官能基数は3、バイオマス度67%であった。
【0181】
[合成例A4]
(ポリイソシアネートA4の合成)
攪拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに製造例A2で得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネート500部、イソブチルアルコールを1部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノールを0.3部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.3部装入し、80℃で2時間反応させた。次に、イソシアヌレート化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート(エアープロダクツジャパン(株)製、商品名:DABCO(R)TMR)を0.05部添加した。130分反応後o−トルエンスルホンアミドを0.12部添加した。得られた反応液を薄膜蒸留装置に通液して真空度0.09KPa、温度150℃で蒸留し、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを341部得た。さらに得られた組成物100部に対してo−トルエンスルホンアミドを0.02部添加しポリイソシアネートA4を161部得た。ポリイソシアネートA4を構成する1,5−ペンタメチレンジイソシアネート由来の量は、99重量%であった。
このポリイソシアネートA4中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネート濃度は1重量%未満、イソシアヌレート1核体濃度は46重量%、イソシアネート基濃度は23%、平均官能基数は3.5、バイオマス度70%であった。
【0182】
[合成例A5]
(ポリイソシアネートA5の合成)
滴下ロートにトリメチロールプロパン(以下、TMPと略記する。)を12部仕込み、リボンヒーターにより加熱し、TMPを溶解させた。次いで、攪拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに製造例A2で得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネート500部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノールを0.3部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.3部装入し、窒素雰囲気下、攪拌しながら95℃まで昇温した後、溶解したTMPを約60分間かけて、滴下した。その後、イソシアネート基濃度が計算値に達するまで、反応を継続した。
次に、イソシアヌレート化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート(エアープロダクツジャパン(株)製、商品名:DABCO(R)TMR)を0.05部添加した。100分反応後o−トルエンスルホンアミドを0.12部添加した。得られた反応液を薄膜蒸留装置に通液して真空度0.09KPa、温度150℃で蒸留し、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを292部得た。さらに得られた組成物100部に対してo−トルエンスルホンアミドを0.02部添加しポリイソシアネートA5を221部得た。ポリイソシアネートA5を構成する1,5−ペンタメチレンジイソシアネート由来の量は、94重量%であった。
このポリイソシアネートA5中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネート濃度は1重量%未満、イソシアヌレート1核体濃度は30重量%、イソシアネート基濃度は22%、平均官能基数は4.4、バイオマス度67%であった。
【0183】
[合成例A6]
(ポリオールA1の合成)
ポリオールとして、植物由来のグリセリン(阪本薬品工業(株)製、商品名:精製グリセリン)を77重量部、シュークロースを244重量部、および96%純度の水酸化カリウムを2重量部オートクレーブに仕込み、窒素置換後、90℃に昇温して、内圧が0.4MPa(ゲージ圧)を超えないように、プロピレンオキシド(以下、POと略記する場合がある)685重量部を徐々に装入した。装入終了後、オートクレーブの内圧低下が見られなくなるまで110℃で反応を継続した。反応終了後、減圧下で残存するプロピレンオキシドを除去、計量したところ、未反応のPOは5重量部であった。仕込み時に加えた水酸化カリウムと等モルの85%燐酸水溶液および50重量部の純水を添加して中和精製を行った。その後、仕込んだグリセリン、シュークロースおよび反応したプロピレンオキシドから計算したポリオールの質量に対して、0.2重量%の吸着剤(富田製薬(株)製、商品名:トミックスAD−600)を添加し、減圧脱水後、ろ過操作を行った。さらに、ろ過液100重量部に対してBHTを0.03重量部添加し、ポリオールA1を得た。ポリオールA1は、水酸基価459mgKOH/g、平均官能基数5.3およびバイオマス度24%であった。
【0184】
以下に、平均官能基数の計算方法を示す。
ポリオールA1の平均官能基数={77(グリセリンの重量部)/92.1(グリセリンの分子量)×3(グリセリン1分子中のヒドロキシル基数)+244(シュークロースの重量部)/342.3(シュークロースの分子量)×8(シュークロース1分子中のヒドロキシル基数)}/{77(精製グリセリンの重量部)/92.1(グリセリンの分子量)+244(シュークロースの重量部)/342.3(シュークロースの分子量)}
以下に、バイオマス度の計算方法を示す。
ポリオールA1のバイオマス度={77(グリセリンの重量部)/92.1(グリセリンの分子量)×3(グリセリン一分子中の植物由来炭素数)+244(シュークロースの重量部)/342.3(シュークロースの分子量)×12(シュークロース1分子中の植物由来炭素数)}/{77(グリセリンの重量部)/92.1(グリセリンの分子量)×3(グリセリン一分子中の植物由来炭素数)+244(シュークロースの重量部)/342.3(シュークロースの分子量)×12(シュークロース1分子中の植物由来炭素数)+680(反応したプロピレンオキシドの重量部)/58.1(プロピレンオキシドの分子量)×3(プロピレンオキシド1分子中の炭素数)+0.3(BHTの重量部)/220.4(BHTの分子量)×15(BHT 1分子中の炭素数)}×100=24%
【0185】
[合成例A7]
(ポリオールA2の合成)
植物由来のグリセリンを121重量部、シュークロースを182重量部、およびプロピレンオキサイドを700重量部用いた以外は合成例A6と同様の操作にてポリオールA2を得た。付加重合反応したプロピレンオキサイドは697重量部であった。ポリオールA2は、水酸基価451mgKOH/g、平均官能基数4.4およびバイオマス度22%であった。
【0186】
[合成例A8]
(ポリオールA3の合成)
植物由来のソルビトールを216重量部、およびプロピレンオキサイドを790重量部用いた以外は合成例A6と同様の操作にてポリオールA3を得た。付加重合反応したプロピレンオキサイドは784重量部であった。ポリオールA3は、水酸基価396mgKOH/g、平均官能基数6およびバイオマス度15%であった。
【0187】
[合成例A9]
(ポリオールA4の合成)
植物由来のソルビトールを265重量部、およびプロピレンオキサイドを740重量部用いた以外は合成例A6と同様の操作にてポリオールA4を得た。付加重合反応したプロピレンオキサイドは735重量部であった。ポリオールA4は、水酸基価489mgKOH/g、平均官能基数6およびバイオマス度19%であった。
【0188】
[合成例A10]
(ポリオールA5の合成)
植物由来のソルビトールを232重量部、植物由来のグリセリンを16重量部、およびプロピレンオキサイドを760重量部用いた以外は合成例A6と同様の操作にてポリオールA5を得た。付加重合反応したプロピレンオキサイドは752重量部であった。ポリオールA5は、水酸基価450mgKOH/g、平均官能基数5.6およびバイオマス度17%であった。
【0189】
[合成例A11]
(ポリオールA6の合成)
ポリオールとして、植物由来のイソソルビド(ROQUETTE社製、商品名:POLYSORB P)を716重量部、およびジメチルパルミチルアミンを2重量部、オートクレーブに仕込み、窒素置換後、内圧が0.4MPa(ゲージ圧)を超えないように、プロピレンオキシド286重量部を徐々に装入した。装入終了後、オートクレーブの内圧低下が見られなくなるまで110℃で反応を継続した。反応終了後、減圧下で残存するプロピレンオキシドを除去した。付加重合反応したプロピレンオキサイドは284重量部であった。さらに、反応液100重量部に対してBHTを0.03重量部添加し、ポリオールA6を得た。ポリオールA6は、水酸基価557mgKOH/g、平均官能基数2およびバイオマス度67%であった。
【0190】
[実施例A1]
Zelec UN(酸性リン酸エステル:登録商標、Stepan社製)1.3gとポリオールA3 19.8gを混合し、室温で5分間攪拌分散させた後、ポリイソシアネートA2を9.8g、ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物)を8.4g加え、さらにTinuvin292(ヒンダードアミン:登録商標、BASF社製)1.0gを加えて室温で1時間攪拌混合させた。この液を同じく室温で3時間脱泡を行った後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入してオーブンへ投入し、30℃〜130℃までおよそ24時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して成形体を得た。得られた成形体は無色透明な外観を有し、屈折率(ne)1.51、アッベ数(νe)51、耐熱性76℃、比重1.16、バイオマス度26%であった。
【0191】
[実施例A2〜実施例A5]
実施例A1と同様にしてポリオールとポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートを触媒とともに表1に示す種別、仕込み量で混合させ、その後も実施例A1と同様にして脱泡、モールド型への注入、重合を行い、離型して成形体を得た。得られた成形体の物性も表1にまとめて示す。
【0192】
[実施例A6]
Zelec UN(酸性リン酸エステル:登録商標、Stepan社製)3.6gとポリオールA5 8.0g、そしてグリセリン8.0gを混合し室温で5分間攪拌分散させた後、ポリイソシアネートA2を7.0g、ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを29.2g加え、さらにTinuvin292(ヒンダードアミン:登録商標、BASF社製)2.6gを加えて室温で1時間攪拌混合させた。この液を同じく室温で3時間脱泡を行った後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入してオーブンへ投入し、30℃〜130℃までおよそ24時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して成形体を得た。得られた成形体は無色透明な外観を有し、屈折率(ne)1.52、アッベ数(νe)51、耐熱性124℃、比重1.21、バイオマス度28%であった。
【0193】
[実施例A7〜実施例A8]
実施例A6と同様にしてポリオールおよびポリオールとポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートを触媒とともに表1に示す種別、仕込み量で混合させ、その後も実施例A6と同様にして脱泡、モールド型への注入、重合を行い、離型して成形体を得た。得られた成形体の物性も表1にまとめて示す。
【0194】
[比較例A1]
Zelec UN(酸性リン酸エステル:登録商標、Stepan社製)3.2gとポリオールA3 20.0gを混合し室温で5分間攪拌分散させた後、参考調製例Aで得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを10.9g加え、さらにTinuvin292(ヒンダードアミン:登録商標、BASF社製)2.4gを加えて室温で1時間攪拌混合させた。この液を同じく室温で3時間脱泡を行った後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入してオーブンへ投入し、30℃〜130℃までおよそ24時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して成形体を得た。得られた成形体は無色透明な外観を有し、屈折率(ne)1.49、アッベ数(νe)51、耐熱性45℃、比重1.17、バイオマス度35%であった。
【0195】
[比較例A2〜比較例A4]
比較例A1と同様にしてポリオールとポリイソシアネートを触媒とともに表1に示す種別、仕込み量で混合させ、その後も比較例A1と同様にして脱泡、モールド型への注入、重合を行い、離型して成形体を得た。得られた成形体の物性も表1にまとめて示す。
【0196】
【表1】
【0197】
上記のように、ポリイソシアネート(a)と、脂環族ポリイソシアネート(b)と、ポリオール(c)と、所定の条件下において適宜含まれるポリオール(d)と、を含む光学材料用重合性組成物によれば、バイオマス度25%以上50%未満であるとともに、透明性、耐熱性などの実用性に優れた光学材料用ポリウレタン成形体を得ることができた。
また、比較例A1および比較例A2のように、イソシアヌレート1核体濃度が10重量%未満であり、かつ脂環族ポリイソシアネート(b)を含まない場合、バイオマス度25%以上50%未満のポリウレタン成形体が得られたとしても、ポリウレタン成形体の耐熱性が低かった。また、比較例A3および比較例A4のように、イソシアヌレート1核体濃度は10重量%以上であったとしても、脂環族ポリイソシアネート(b)を含まない場合、バイオマス度は25%以上50%未満のポリウレタン成形体が得られたとしても、ポリウレタン成形体の耐熱性が低かった。
【0198】
<実施例B>
(ポリイソシアネート中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネート濃度(単位:重量%)の測定方法)
以下の装置を用い、後述する製造例B2で得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを標品として作成した検量線からポリイソシアネート中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの濃度を求めた。
【0199】
装置:Prominence(島津製作所社製)
カラム:SHISEIDO SILICA SG−120
カラム温度:40℃
溶離液:n−ヘキサン/メタノール/1,2−ジクロロエタン=90/5/5(体積比)
流量:0.2ml/min
検出器:UV 225nm
R.Time:16.9min
測定溶液調整:50mlのメスフラスコに試料0.1gおよび試料の約20倍モルのジベンジルアミンを加え、1,2−ジクロロエタンでメスアップし測定溶液とした。
測定:測定溶液1μLを注入して測定を行った。
【0200】
(ポリイソシアネートのイソシアネート基濃度(単位:重量%)の測定方法)
電位差滴定装置を用いて、JIS K−1556に準拠したn−ジブチルアミン法により測定し、求めた。
【0201】
(ポリイソシアネート中のイソシアヌレート1核体濃度(単位:重量%)の測定方法)
以下の装置を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められたクロマトグラムより、全ピーク面積に対する1,5−ペンタメチレンイソシアネートの3倍の分子量に相当するピークの面積比率をポリイソシアネート中のイソシアヌレート1核体濃度(重量%)とした。
【0202】
装置:HLC−8020(東ソー社製)
カラム:G1000HXL、G2000HXL、G3000HXL(東ソー社製)の直列連結
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.8ml/min
検出器:示差屈折系
R.Time:イソシアヌレート1核体 27.2min
標準物質:ポリエチレンオキシド(東ソー社製 TSK標準ポリエチレンオキシド)
測定:試料30mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、得られた溶液100μLを注入して測定を行った。
【0203】
(ポリイソシアネートの平均官能基数の算出方法)
ポリイソシアネートの平均官能基数は、ポリイソシアネート中のイソシアヌレート1核体濃度と同様の測定にて得られた数平均分子量およびポリイソシアネートのイソシアネート基濃度を用い、以下の式より算出した。
(ポリイソシアネートの平均官能基数)=(ポリイソシアネートの数平均分子量)×(ポリイソシアネートのイソシアネート基濃度)/4202
【0204】
(ポリオールの水酸基価の測定方法)
水酸基価(mgKOH/g): JIS K1557−1(B法)の規格に準拠し測定した。
【0205】
(ポリオールの平均官能基数の算出方法)
ポリオールの平均官能基数は、以下の式より算出した。
Σ(Mn/MWn×fn)/Σ(Mn/MWn)
Mn:多官能アルコールの重量部
MWn:多官能アルコールの分子量
fn:多官能アルコール1分子中のヒドロキシル基数
【0206】
(ポリイソシアネート(a)のバイオマス度(単位:%)の算出方法)
合成例B1に記載したポリイソシアネートのバイオマス度は以下の式より算出した。
植物由来炭素数/(植物由来炭素数+石油由来炭素数)×100
【0207】
(ポリウレタン成形体のバイオマス度(単位:%)の算出方法)
実施例B1に記載したポリウレタン成形体のバイオマス度は以下の式により算出した。
【0208】
{[(a)の重量部×(a)のバイオマス度/100]+[(b)の重量部×(b)のバイオマス度/100]+[(e)の重量部×(e)のバイオマス度/100]+[(d)の重量部×(d)のバイオマス度/100]}/[(a)+(b)+(e)+(d)の総重量(重量部)]
上記式における(a)、(b)、(d)および(e)は以下のとおりである。
(a):ポリイソシアネート(a)
(b):脂環族ポリイソシアネート(b)
(d):ポリオール(d)
(e):(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)
【0209】
ポリイソシアネート(a)のバイオマス度については、上記算出方法にて計算した値を用い、ポリウレタン成形体のバイオマス度を求めた。ポリオール(d)、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)については、バイオマス度100%とし、ポリウレタン成形体のバイオマス度を求めた。
【0210】
(レンズの性能試験法)
重合により得られたレンズは性能試験を行い評価した。性能試験は、屈折率・アッベ数、耐熱性、比重とし、以下の試験法により評価した。
・ 屈折率(ne)アッベ数(νe): 島津製作所製プルフリッヒ屈折計KPR−30を用いて、20℃で測定した。
・ 耐熱性: 島津製作所製TMA−60を使用し、TMAペネトレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ)でのガラス転移温度(Tg)を耐熱性とした。
・ 比重:20℃にてアルキメデス法により測定した。
【0211】
[参考調製例B]
(植物由来原料を用いた1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの合成]
調製例B1(菌体破砕液の調製)
(リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)のクローニング)
Escherichia coli W3110株(ATCC27325)から常法に従い調製したゲノムDNAをPCRの鋳型に用いた。
【0212】
PCR用のプライマーには、リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)(GenBank Accession No.AP009048)の塩基配列に基づいて設計した配列番号1および2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(インビトロジェン社に委託して合成した)を用いた。これらのプライマーは、5'末端付近にそれぞれKpnIおよびXbaIの制限酵素認識配列を有する。
【0213】
上記のゲノムDNA1ng/μLおよび各プライマー0.5pmol/μLを含む25μLのPCR反応液を用いて、変性:94℃、30秒間、アニーリング:55℃、30秒間、伸長反応:68℃、2分間からなる反応サイクルを30サイクルの条件で、PCRを行った。
【0214】
PCR反応産物およびプラスミドpUC18(宝酒造社製)をKpnIおよびXbaIで消化し、ライゲーション・ハイ(東洋紡社製)を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、Eschrichia coli DH5α(東洋紡社製)を形質転換した。形質転換体を、アンピシリン(Am)100μg/mLおよびX−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)を含むLB寒天培地で培養し、Am耐性でかつ白色コロニーとなった形質転換体を得た。このようにして得られた形質転換体よりプラスミドを抽出した。
【0215】
通常の塩基配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片の塩基配列が配列番号3に示す塩基配列であることを確認した。
【0216】
得られたリシン脱炭酸酵素をコードするDNAを持つプラスミドをpCADAと命名した。pCADAを用いて形質転換した大腸菌を培養することで、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するリシン脱炭酸酵素を生産することができた。
【0217】
(形質転換体の作製)
pCADAを用いてEscherichia coli W3110株を通常の方法で形質転換し、得られた形質転換体をW/pCADAと命名した。
この形質転換体をバッフル付き三角フラスコ中のAm100μg/mLを含むLB培地500mlに接種し、30℃にてOD(660nm)が0.5になるまで振盪培養した後、IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)が0.1mmol/Lとなるように添加し、さらに14時間振盪培養した。培養液を8000rpmで20分間遠心分離し、菌体を得た。この菌体を20mmol/L リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に懸濁した後、超音波破砕を行い、菌体破砕液を調製した。
【0218】
調製例B2(1,5−ペンタメチレンジアミン水溶液の製造)
フラスコに、L−リシン一塩酸塩(和光純薬製)を、終濃度が45重量%となるように、および、ピリドキサールリン酸(和光純薬製)を、終濃度が0.15mmol/Lとなるように調製した基質溶液120重量部を加えた。次に、上記のW/pCADA菌体破砕液(仕込み乾燥菌体換算重量0.3g)を添加し反応を開始した。反応条件は37℃、200rpmとした。反応液のpHは6mol/Lの塩酸にてpH6に調整した。24時間後の1,5−ペンタメチレンジアミンの反応収率は99%に達していた。上記の反応24時間後の反応液を、6mol/Lの塩酸にてpH2に調整し、0.6重量部の活性炭(三倉化成社製 粉末活性炭PM−SX)を添加し、25℃で1時間攪拌を行った後、濾紙(ADVANTEC社製 5C)にて濾過を行った。次に、この濾液を水酸化ナトリウムにてpH12に調整し、1,5−ペンタメチレンジアミン水溶液(17.0重量%水溶液)を得た。
【0219】
製造例B1(1,5−ペンタメチレンジアミンの調製)
23℃にて、分液ロートに1,5−ペンタメチレンジアミン水溶液100重量部とn−ブタノール100重量部とを仕込み、10分間混合し、その後30分間静置した。水層である下層を抜き出し、次いで有機層(1,5−ペンタメチレンジアミンを含むn−ブタノール)である上層を抜き出した。抽出率を測定した結果、91.6%であった。次いで、温度計、蒸留塔、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに有機層の抽出液80重量部を仕込み、オイルバス温度を120℃とし、10kPaの減圧下でn−ブタノールを留去させた。次いで、オイルバス温度を140℃とし、10kPaの減圧下で1,5−ペンタメチレンジアミンを留去させ、純度99.9重量%の1,5−ペンタメチレンジアミンを得た。
【0220】
製造例B2(1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの製造)
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、o−ジクロロベンゼン2000重量部を仕込んだ。次いで、ホスゲン2300重量部をホスゲン導入ラインから加え、撹拌を開始した。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、製造例B1で得た1,5−ペンタメチレンジアミン400重量部をo−ジクロロベンゼン2600重量部に溶解した溶液を、フィードポンプにて60分かけてフィードし、30℃以下、常圧下で冷ホスゲン化を開始した。フィード終了後、加圧反応器内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0221】
次いで、反応器の内液を徐々に160℃まで昇温しながら、0.25MPaに加圧し、さらに圧力0.25MPa、反応温度160℃で90分間熱ホスゲン化した。なお、熱ホスゲン化の途中で、ホスゲン1100重量部を、さらに添加した。熱ホスゲン化の過程で、加圧反応器内液は、淡褐色澄明溶液となった。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/時で通気し、脱ガスした。
【0222】
次いで、減圧下でo−ジクロルベンゼンを留去した後、同じく減圧下で1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを留去させ、純度98.7%の1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを558重量部得た。
【0223】
次いで、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート558重量部、およびトリス(トリデシル)ホスファイト(城北化学製、商品名:JP−333E)を1,5−ペンタメチレンジイソシアネート100重量部に対し0.02重量部を、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに装入し、窒素を導入しながら、常圧下で、210℃、2時間加熱処理を行い、純度98.3%の1,5−ペンタメチンジイソシアネートを553重量部得た。熱処理における1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの収率は、99.6%であった。
【0224】
次いで、加熱処理後の1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを、ガラス製フラスコに装入し、充填物(住友重機械工業社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学社製、商品名:蒸留頭K型)、および、冷却器を装備する精留装置を用いて、127〜132℃、2.7KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、純度99.9重量%の1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを得た。下記記載の方法でバイオマス度を測定した結果、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートのバイオマス度は71%であった。
【0225】
(1,5−ペンタメチレンジイソシアネートのバイオマス度測定法)
バイオマス度は、ASTM D6866 METHOD−Bの規格に準拠し測定した。
1,5−ペンタメチレンジイソシアートをメタノールでメチルカーバメート化(ウレタン化)し、メチルカーバメート体のバイオマス度を測定した。その結果、バイオマス度56%であった。この値を元に、次の式より1,5−ペンタメチレンジイソシアネートのバイオマス度を求めた。
植物由来炭素数/(植物由来炭素数+石油由来炭素数)×100
【0226】
[合成例B1]
(ポリイソシアネートB1の合成)
攪拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに製造例B2で得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネート500部、イソブチルアルコールを1部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノールを0.3部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.3部装入し、80℃で2時間反応させた。次に、トリマー化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート(エアープロダクツジャパン(株)製、商品名:DABCO(R)TMR)を0.05部添加した。50分反応後o−トルエンスルホンアミドを0.12部添加した。得られた反応液を薄膜蒸留装置に通液して真空度0.09KPa、温度150℃で蒸留し、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを401部得た。さらに得られた組成物100部に対してo−トルエンスルホンアミドを0.02部添加しポリイソシアネートB1を100部得た。ポリイソシアネートB1を構成する1,5−ペンタメチレンジイソシアネート由来の量は、98重量%であった。
このポリイソシアネートB1中の未反応1,5−ペンタメチレンジイソシアネート濃度は1重量%未満、イソシアヌレート1核体濃度は65重量%、イソシアネート基濃度は25%、平均官能基数は3.3、バイオマス度70%であった。
【0227】
以下に、バイオマス度の計算方法を示す。用いたイソシアヌレート化触媒のDABCO(R)TMRは、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートが33.8重量%、2−エチルヘキサン酸が41.2重量%、エチレングリコールが25重量%の混合物であった。
ポリイソシアネートB1のバイオマス度={500(ポリイソシアネートB1の重量部)×98.0(ポリイソシアネートB1を構成するPDI由来の量)/100/154.2(PDIの分子量)×5(PDI一分子中の植物由来炭素数)}/{500(ポリイソシアネートB1の重量部)×98.0(ポリイソシアネートB1を構成するPDI由来の量)/100/154.2(PDIの分子量)×7(PDI 1分子中の炭素数)+1(IBAの重量部)/74.1(IBAの分子量)×4(IBA1分子中の炭素数)+0.3(BHTの重量部)/220.4(BHTの分子量)×15(BHT1分子中の炭素数)+0.3(JP−333Eの重量部)/628(JP−333Eの分子量)×39(JP−333E1分子中の炭素数)+0.05(N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートの重量部)/118.2(N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートの分子量)×6(N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート1分子中の炭素数)+0.05(2−エチルヘキサン酸の重量部)/144.2(2−エチルヘキサン酸の分子量)×8(2−エチルヘキサン酸1分子中の炭素数)+0.05(エチレングリコールの重量部)/62.1(エチレングリコールの分子量)×2(エチレングリコール1分子中の炭素数)+0.12(OTSの重量部)/171.2(OTSの分子量)×7(OTS1分子中の炭素数)}×100=70%
【0228】
[実施例B1]
1,3−プロパンジオール(Dupont社製)3.0重量部、グリセリン(花王株式会社製)3.0重量部およびジグリセリンカプリレート3.0重量部の混合物にZelecUN(酸性リン酸エステル:登録商標、Stepan社)1.4重量部およびTinuvin292(ヒンダードアミン:登録商標、BASF社)1.0重量部を順次加え、10分間室温で撹拌した。
合成例B1で製造したポリイソシアネートB1を20.0重量部および2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの異性体の混合物(三井化学株式会社製)11.4重量部を順次加え、減圧下で3時間撹拌しつつ脱気した後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入してオーブンへ投入し、混合液を25〜120℃まで21時間かけて昇温し、その後、1時間かけて25℃まで降温し、成形体を得た。モールドからのレンズの離型はスムーズであった。得られたレンズは屈折率(ne)1.53、アッベ数45、Tg89℃、計算により算出されたバイオマス度は54%、ASTMD6866−12測定法で測定されたバイオマス度は51%であった。
【0229】
上記のように、ポリイソシアネート(a)と、脂環族ポリイソシアネート(b)と、ポリオール(d)と、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)とを、所定の条件下において適宜含まれるポリオール(c)と、を含む光学材料用重合性組成物によれば、バイオマス度20%以上75%以下であるとともに、離型性に優れ、透明性、耐熱性などの実用性に優れた光学材料用ポリウレタン成形体を得ることができた。
【0230】
この出願は、2013年10月21日に出願された日本出願特願2013−218733号および2014年8月29日に出願された日本出願特願2014−175758号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0231】
[a1] 植物由来原料から得られた、脂肪族ポリイソシアネートの変性体を含むポリイソシアネート(a)と、
脂環族ポリイソシアネート(b)と、
水酸基価が300〜650mgKOH/gであり、平均官能基数が2以上7未満である植物由来原料から得られたポリオール(c)と、
を含む光学材料用重合性組成物。
[a2] 前記変性体は脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体であり、ポリイソシアネート(a)中にイソシアヌレート1核体が10重量%以上含まれる、[a1]に記載の光学材料用重合性組成物。
[a3] ポリイソシアネート(a)および脂環族ポリイソシアネート(b)の総イソシアネート基に対する、脂環族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比((b)/(a)+(b))は、0.5以上0.8未満である、[a2]に記載の光学材料用重合性組成物。
[a4] さらに植物由来の化合物であるポリオール(d)を含み、
ポリイソシアネート(a)および脂環族ポリイソシアネート(b)の総イソシアネート基に対する、脂環族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比((b)/(a)+(b))は、0.8〜0.95である、[a2]に記載の光学材料用重合性組成物。
[a5] ポリオール(c)およびポリオール(d)の総水酸基に対する、ポリオール(d)の水酸基のモル比((d)/(c)+(d))は、0.5〜0.9である、[a4]に記載の光学材料用重合性組成物。
[a6] ポリオール(c)は、植物由来原料である、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種を原料として得られる、[a1]〜[a5]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[a7] 前記ポリオール(d)は、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種である、[a4]〜[a6]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[a8] 非金属触媒を含む、[a1]〜[a7]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[a9] [a1]〜[a8]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物から得られた、ポリウレタン樹脂。
[a10] バイオマス度が、25%以上50%未満である、[a9]のポリウレタン樹脂。
[a11] Tgが60℃以上である、[a9]または[a10]に記載のポリウレタン樹脂。
[a12] [a9]〜[a11]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂からなる光学材料。
[a13] [a12]に記載の光学材料からなる、プラスチック眼鏡レンズ。
[a14] 偏光フィルムの少なくとも一方の面に、[a9]〜[a11]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂からなる層が積層している、プラスチック偏光レンズ。
[a15] レンズ注型用鋳型内に、[a1]〜[a8]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化する工程と、
を含む、プラスチック眼鏡レンズの製造方法。
[a16] レンズ注型用鋳型内に、偏光フィルムの少なくとも一方の面がモールドから離隔した状態で、該偏光フィルムを固定する工程と、
前記偏光フィルムと前記モールドとの間の空隙に、[a1]〜[a8]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面にポリウレタン樹脂からなる層を積層する工程と、
を含む、プラスチック偏光レンズの製造方法。
【0232】
[b1] 植物由来原料から得られた、脂肪族ポリイソシアネートの変性体を含むポリイソシアネート(a)と、
一般式(1)で表される(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)と、
【化5】
(式中、Rは炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示し、アルキル基又はアルケニル基は、直鎖又は分岐鎖を有していても良い。Xは、水素原子又はRCO(Rは前記の意味を示す)で表される基を示し、複数個のXは同一でも異なっていても良い。nは、0〜3の整数である。)
植物由来の化合物であるポリオール(d)と、
を含む光学材料用重合性組成物。
[b2] 前記変性体は脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体であり、前記ポリイソシアネート(a)中にイソシアヌレート1核体10重量%以上含まれる、[b1]に記載の光学材料用重合性組成物。
[b3] 前記(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類(e)およびポリオール(d)の総水酸基に対する、ポリオール(d)の水酸基のモル比((d)/(e)+(d))は、0.5〜0.9である、[b2]に記載の光学材料用重合性組成物。
[b4] さらに、ポリオール(c)及び/又は、脂環族ポリイソシアネート(b)とを含む、[b2]または[b3]に記載の光学材料用重合性組成物。
[b5] ポリイソシアネート(a) および脂環族ポリイソシアネート(b)の総イソシアネート基に対する、脂環族ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比((b)/(a)+(b))は、0.2〜0.85である、[b4]に記載の光学材料用重合性組成物。
[b6] ポリオール(d)は、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、α−メチルグリコシド、マンニトール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種である、[b1]〜[b5]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[b7] ポリオール(c)は、植物由来原料である、グリセリン、ソルビトール、イソソルビド、シュークロース、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールから選択される少なくとも一種を原料として得られる、[b4]〜[b6]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[b8] ポリオール(c)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオールから選択される少なくとも一種である、[b7]に記載の光学材料用重合性組成物。
[b9] 非金属触媒を含む、[b1]〜[b8]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[b10] [b1]〜[b9]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物から得られた、ポリウレタン成形体。
[b11] バイオマス度が、20%以上75%以下である、[b10]に記載のポリウレタン成形体。
[b12] Tgが60℃以上である、[b10]または[b11]に記載のポリウレタン成形体。
[b13] [b10]〜[b12]のいずれかに記載のポリウレタン成形体からなる光学材料。
[b14] [b13]に記載の光学材料からなる、プラスチック眼鏡レンズ。
[b15] 偏光フィルムの少なくとも一方の面に、[b10]〜[b12]のいずれかに記載のポリウレタン成形体からなる層が積層している、プラスチック偏光レンズ。
[b16] レンズ注型用鋳型内に、[b1]〜[b9]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化する工程と、
を含む、プラスチック眼鏡レンズの製造方法。
[b17] レンズ注型用鋳型内に、偏光フィルムの少なくとも一方の面がモールドから離隔した状態で、該偏光フィルムを固定する工程と、
前記偏光フィルムと前記モールドとの間の空隙に、[b1]〜[b9]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面にポリウレタン成形体からなる層を積層する工程と、
を含む、プラスチック偏光レンズの製造方法。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]