【実施例1】
【0020】
本発明に係る金属マグネシウムの製造装置1は、
図1に示すように、容器2と、前記容器2の中で原料3aの無水ハロゲン化マグネシウムを載置する載置台3と、前記容器2の中を減圧する真空装置4と、前記容器2の中に還元ガスを供給するガス供給装置6と、前記容器2の中の前記原料3aに当該容器2に設けられたプラズマ照射窓(石英窓)5aからプラズマを照射するプラズマ装置5とからなる。
【0021】
この金属マグネシウムの製造装置1を使用して、以下のように、金属マグネシウムを得るものである。前記容器2として、アルミナ(Al
2O
3)容器を使用する。原料として、無水ハロゲン化マグネシウムである、フッ素マグネシウム,塩化マグネシウム,臭素マグネシウム,ヨウ素マグネシウムなどが有り、これらのうち、最も適当なものとして無水塩化マグネシウムを使用する。
【0022】
前記容器2内を大気圧以下に減圧する真空ポンプ4aとして、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、等の公知のものを使用する。プラズマ装置5は、マイクロ波表面波プラズマを発生させる装置であり、例えば、マイクロ波発生器が発信周波数2.45GHz、出力1500W(UM−1500IS:ミクロ電子製)である。また、アイソレータ、パワーモニター、EHチューナ、そのほか、導波管、分光器、窓5aがある。
【0023】
前記プラズマは、マイクロ波表面波プラズマとしたが、これ以外にも、高周波プラズマ(RFプラズマ:13.5MHz)を用いても良いが、その場合、無水ハロゲン化マグネシウムの温度上昇が極めて遅いので、例えば、原料である無水ハロゲン化マグネシウムをプラズマ雰囲気下で昇華開始温度まで加熱する加熱手段(例えば、抵抗加熱、誘導加熱、誘電加熱、赤外線加熱、レーザ加熱、電子線加熱、マイクロ波加熱など)を設けるようにするのが好ましい。
【0024】
前記加熱手段の例として、
図2−A乃至
図2−Cに概略構成断面図を各々示す。
図2−Aに示すように、直流バイアス方式で、容器2の外部に直流バイアス電源9を設け、電極(タングステン等)10aを載置台3の上の試料容器の底に設置し、その上に原料(塩化マグネシウム)3aを置く。電極10aを電源9のプラス側に接続し、電源9のマイナスは金属製容器2の外壁に接続する。プラズマ点灯中にプラスの直流バイアス(約2V〜数十ボルト)を印可すると、電極10aに加速した電子が集まるため、電極10aが加熱すると塩化マグネシウムをプラズマ雰囲気中での発火温度まで加熱し反応が開始する。電極10aは、高温になるため、タングステン、モリブテン、タンタル、炭素、あるいは、これらの合金が好ましい。
【0025】
図2−Bに示すように、載置台3の上の試料容器の底にヒーター(フィラメント、板)10bを設け、容器2の外部に設ける電源(直流若しくは交流)9に接続する。電流を流してヒーター10bを加熱し、原料(塩化マグネシウム)3aをプラズマ雰囲気中での発火温度まで加熱すると、反応を開始する。
【0026】
図2−Cに示すように、光源11として、赤外線、レーザ等を用意する。光源11から出た光は、原料3aに照射される。原料3aを光によりプラズマ雰囲気中での発火温度まで加熱すると、反応を開始する。
尚、前記マイクロ波表面波プラズマの場合においても、適切に反応速度を高める上で、前記加熱手段を使用するようにしても良い。
【0027】
前記窓5aは、円形の石英板であり、この板の真空側の板面にマイクロ波表面波プラズマが励起されるものである。尚、前記載置台3と窓5aとの距離は、一例として3cm程度である。
【0028】
前記還元ガスは、水素ガスが還元ガス供給装置6から、10ccm程度で供給される。尚、この水素ガス以外にも、メタン(CH
4)、エタン(C
2H
6)などの還元ガスでも良い。また、プラズマ点灯を容易にするためにヘリウム(He),ネオン(Ne),アルゴン(Ar),クリプトン(Kr),キセノン(Xe)等の不活性ガスを混合してもよい。
【0029】
このように本発明に係金属マグネシウムの製造装置1を用意して、金属マグネシウムの製造方法により実施する。容器2の載置台3に原料3aを、原料取出し口8の外から内部へ差し入れて置く。
【0030】
容器2の外から還元ガス供給装置6により、還元ガス(水素ガス)を容器2内に供給する。真空装置4の真空ポンプ4aを駆動させて、容器2内を減圧(10〜20Pa、一例として17Pa)する。
【0031】
プラズマ装置5によりマイクロ波を導波管から窓5aに導き、プラズマを発生させる。このマイクロ波プラズマにより、還元ガス(例えば水素)をプラズマ化する。更に詳しくは、マイクロ波により、供給した水素ガスから荷電粒子(電子と水素イオン)と、活性種(水素ラジカル、励起水素など)と、プラズマ発光により光子(紫外や可視光)が発生する。
【0032】
前記荷電粒子や活性種と、無水ハロゲン化マグネシウムと出会うことや、プラズマ発光した紫外や可視光からの光子からエネルギーを受け取ることにより、化学反応が起きる。例えば、塩化マグネシウムでは、当該塩化マグネシウムの温度が高まる。塩化マグネシウムが分解して、マグネシウム,塩素,塩化水素,水素,あるいは、マグネシウムイオン,塩素イオン,塩化水素イオン,水素イオンを生成する。また、電子+イオン(マグネシウムイオン等)→中性粒子(マグネシウム,水素分子,塩酸など)、光子+水素分子→水素イオン+電子、光子+塩化マグナシウム→マグネシウム+塩素、等が生成される。
【0033】
こうして、得られたマグネシウムやマグネシウムイオンは、壁に衝突して金属マグネシウムが得られる。
【0034】
具体的には、このプラズマ(電子温度が1eV、電子密度が10
11〜12cm
−3)を、載置台3の原料3aに均一に照射して、その加熱により還元反応を起こさせる。
この還元反応は、
MgCl
2+H
2(活性種としての励起水素)→Mg+2HClである(発熱反応、マグネシウム,塩酸,マグネシウムイオン,塩酸イオン,塩素,塩素イオンなど)。
【0035】
塩化マグネシウムと水素との反応は吸熱反応であるため、解離温度以上の非常に高い温度まで加熱しないとマグネシウムと塩素との結合を解くことができないので、この反応は起きない。しかし、本プラズマ中にのように、活性種としての励起水素あるいは水素イオン等やエネルギーの大きい光子が大量にある環境下では、塩化マグネシウムと反応し発熱するが、このとき、周囲の温度が低い固体や液体の状態では、反応熱が周囲に奪われてしまうために、反応は持続すること無く停止する。
【0036】
しかし、ある程度以上の温度(点火温度)になると塩化マグネシウムは気体になり、真空中を自由工程の範囲内で他の粒子と出会うこと無く飛び回るようになる。気体の塩化マグネシウムが活性種、電子、光子と出会うと発熱反応を起こしたり、電子、光子、イオン、励起状態等を産み出す。反応で発生した熱は、周囲を熱する。例えば、固体であった塩化マグネシウムは液体化(融解)もしくは気体化(昇華)する。気体になった塩化マグネシウムは活性種や、電子、光子と出会うと更に周囲温度を高める。温度が高まると上記を更に繰り返すために、熱が出る現象が発生し、連続した発熱反応が開始する。
【0037】
前記発熱反応の大きさはプラズマ中の活性種の量や、イオンや、電子密度、光子によってきまる。即ち、マイクロ波の周波数やパワーが大きければプラズマ密度が高まり,活性種の量や電子、光子が多くなり、反応速度が高まる。以上のように、連続したかかる反応を起動するには、上記の火種温度以上にプラズマ中の塩化マグネシウムを加熱することが必要である。
【0038】
前記発熱反応により、塩化マグネシウムと活性種との反応速度を速め、塩化マグネシウムを昇温し、融解,昇華,沸点へと温度を高めることで、気体状の塩化マグネシウムとなる。この気体状の塩化マグネシウムは、マイクロ波により塩化マグネシウムプラズマ(電子+マグネシウムイオン,塩素イオン)となってプラズマ化する。このプラズマにより水素が活性種になり、プラズマ中の活性濃度が高くなる。そして、前記塩化マグネシウムと活性種との反応速度を速める、というような循環が引き起こされる。
【0039】
マイクロ波プラズマは、その電子温度がイオンや中性粒子と比べ約2桁若しくは3桁ほど温度が高く、質量も数千倍〜数万倍、高いという非平行プラズマである。よって、粒子速度は、電子の方が圧倒的に早いので、電子と粒子との衝突周波数と比べて、イオンとイオン、イオンと中性粒子、中性粒子と中性粒子との衝突周波数は低い。そこで、マグネシウムあるいはマグネシウムイオンが、塩素(ハロゲン)や塩酸と反応する反応速度は遅いので、壁面温度を下げることで、壁面に付着したマグネシウムが再反応する反応は、起きにくくすることができるのである。実施例では、照射時間3分後に、前記窓5aの真空側板面に、マグネシウム蒸着物が確認された。
【0040】
石英板の窓5aの真空側板面に付着した前記金属マグネシウムの確認は、
1.蒸着物の金属光沢を目視で確認、
2.テスターでの導通を確認(3cm離れた場所で5オーム以下)、
3.SEM(走査型電子顕微鏡)によるEDS(エネルギー分散形分光器)解析で製膜部でのマグネシウムの検出、
4.プラズマ分光分析にて約525nm近辺のマグネシウム発光(青)あり、
5.金属光沢部に水滴をたらして放置すると、水滴部は透明化する。
【0041】
以上のことにより、無水ハロゲン化マグネシウムが水素ガスによるマイクロ波表面波プラズマに晒されて、マグネシウム還元が行われたことが確認できる。マグネシウム発光は、マイクロ波分光分析では、無水塩化マグネシウムが約700℃以上に加熱が進むと、マグネシウム発光が観察された。
【0042】
これはプラズマ雰囲気で塩化マグネシウムが昇華を始める。気体となった塩化マグネシウムは、プラズマ雰囲気においてイオンやプラズマ中の活性種との反応(発熱反応)を開始する。火種となる発熱反応が小さい場合はすぐに冷却してこの反応は停止する。しかし、火種となる反応がある程度以上大きくなると、発熱した熱が更に塩化マグネシウムを加熱するため温度が高くなり、昇華して気体になる塩化マグネシウムが多くなり、更に、この反応が大きくなる。発熱反応の大きさは、プラズマ中の活性種の量によって決まるので、ある一定の大きさにとどまる。このため、火種となる加熱手段があれば、塩化マグネシウムの加熱温度を低く抑えることができる。
【0043】
還元ガスに関しては、水素ガス以外のメタンガスあるいはエタンガスなどの混合ガスを使用できるが、炭素成分を含む不純物がマグネシウムとのコンタミが生じる恐れがある。水素ガスはそのようなことが無く、還元ガスとして好ましいものである。
【0044】
前記金属マグネシウムの蒸着物は、前記容器2の排気流路部に、冷却したコンデンサを設置する(図示せず)。なお、塩化マグネシウムの融点(712℃)と、マグネシウムの融点(650℃)とが近い温度であるので、両者のコンタミを避ける上で、マグネシウムの融点以上、塩化マグネシウムの融点以下の温度にコンデンサを設置して、ガス状の塩化マグネシウムをトラップ後、マグネシウムを凝縮させるのが好ましい。
【0045】
以上の様にして、大気圧以下の減圧下で、無水ハロゲン化マグネシウムを還元ガス雰囲気中でプラズマに晒すことにより、前記無水ハロゲン化マグネシウムを還元させて、金属マグネシウムを得るのである。