特許第6571987号(P6571987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571987
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】継手部の構造および管の敷設方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/08 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   F16L21/08 B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-106900(P2015-106900)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2016-223456(P2016-223456A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 正蔵
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一也
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔太
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−180366(JP,A)
【文献】 米国特許第03637239(US,A)
【文献】 特開2003−185069(JP,A)
【文献】 特開昭57−065489(JP,A)
【文献】 特開2004−125129(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/031174(WO,A2)
【文献】 特開2004−340228(JP,A)
【文献】 特開2003−214572(JP,A)
【文献】 特開2005−140138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L21/04,21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受口に挿口が挿入され、
受口の内面に形成されたロックリング収容溝にロックリングが収容され、
挿口の外表面に形成された突部が挿口の離脱方向において受口奥側からロックリングに当接することにより、挿口が受口から離脱することを防止可能な継手部の構造であって、
ロックリング収容溝は、受口開口側の面と、この受口開口側の面の径方向外周端部につながる溝底面とを有し、
ロックリングと挿口の外表面とが当接する第1当接箇所において、ロックリングの外表面が横断面視において円弧形状を有しており、
ロックリングがロックリング収容溝の受口開口側の面と挿口の突部との間に挟まれた状態で、ロックリングの外周とロックリング収容溝の溝底面との間に空間が形成され、
継手部において受口と挿口とのいずれか一方が他方に対して屈曲可能であり、
受口と挿口とのいずれか一方が他方に対して屈曲した際、ロックリングがロックリング収容溝内の空間を径方向に変位可能であることを特徴とする継手部の構造。
【請求項2】
ロックリングがロックリング収容溝の受口開口側の面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングと挿口の突部とが当接する第2当接箇所において、ロックリングの外表面が横断面視において円弧形状を有していることを特徴とする請求項1記載の継手部の構造。
【請求項3】
ロックリングがロックリング収容溝の受口開口側の面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングとロックリング収容溝の受口開口側の面とが当接する第3当接箇所において、ロックリングの外表面が横断面視において円弧形状を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の継手部の構造。
【請求項4】
ロックリングは横断面視において略円形状であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の継手部の構造。
【請求項5】
ロックリング収容溝の受口開口側の面は挿口の離脱方向において縮径するテーパー面として形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の継手部の構造。
【請求項6】
ロックリングがロックリング収容溝の受口開口側の面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングと挿口の突部とが当接する第2当接箇所において、突部の外表面が横断面視において円弧形状を有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の継手部の構造。
【請求項7】
挿口の突部は溶接ビードにて形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の継手部の構造。
【請求項8】
上記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の継手部の構造を用いた管の敷設方法であって、
管の敷設場所に敷設用溝を形成し、
挿口を受口に挿入して管同士を接続し、
接続した管同士を、継手部において屈曲させながら、敷設用溝内に設置することを特徴とする管の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受口に挿口が挿入され、内蔵されたロックリングにより離脱防止機能を有する管等の継手部の構造および管の敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の継手部の構造としては、例えば図9に示すように、一方の管81の受口82に他方の管83の挿口84が挿入され、受口82の内周にはロックリング収容溝85が形成されており、このロックリング収容溝85には、環状で周方向に分割部を有するロックリング86が収容されている。このロックリング86は横断面視において台形状である。
【0003】
挿口84の外周には挿口突部87が形成されており、ロックリング86と受口82における奥端面との間に挿口突部87が位置するまで挿口84が受口82内に挿入されて受口82と挿口84とが接合される。
【0004】
ロックリング収容溝85の受口開口側における一側面88は、挿口84の離脱方向Aにおいて縮径するテーパー面として形成されている。また、ロックリング収容溝85の受口奥側における他側面89は、管軸心90に垂直な面として形成されている。
【0005】
継手部91において、一方の管81に対して他方の管83が屈曲した場合、ロックリング86がロックリング収容溝85の両側面88,89に係り合うことで屈曲に対する抵抗となり、継手部91が円滑に屈曲し難くなるとともに、ロックリング86にも大きな負荷がかかる。尚、上記のような継手部91は下記特許文献1に記載されている。
【0006】
そこで、図10に示すように、横断面視において山型状のロックリング106を備えた継手部114がある(下記特許文献2参照)。このロックリング106は、受口開口側において、円弧状の一方の凸面112を有し、受口奥側において、円弧状の他方の凸面113を有することで、ロックリング106の凸面112,113がロックリング収容溝105の側面109,110を円滑に移動し、屈曲時の抵抗とならないため、屈曲し易くなるとともに、ロックリング106への負荷を軽減することが提案されている。
【0007】
ここで、ロックリング106は挿口104に外嵌されており、ロックリング106の内周面106aは、管軸心方向Cにおけるロックリング106の全幅W1で、挿口104の外周面に面接触している。
【0008】
これによると、受口102に対して挿口104が離脱方向Aへ移動した際、挿口104はロックリング106に対して離脱方向Aへ摺動し、図10に示すように、挿口突部107が受口奥側からロックリング106に係合することにより、挿口104が受口102から離脱するのを防止することができる。
【0009】
また、継手部114において、一方の管101に対して他方の管103が屈曲した場合、ロックリング106は、ロックリング収容溝105の一側面109に摺接しながら、挿口104と一体に屈曲方向Dへ変位する。
【0010】
そして、図10に示すように、ロックリング106の一方の凸面112がロックリング収容溝105の一側面109に当接し、ロックリング106の他方の凸面113がロックリング収容溝105の他側面110に当接した場合、一方の管101と他方の管103との屈曲角度αが最大になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第5312181
【特許文献2】特開2003−214573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記図10に示したものでは、屈曲角度αを増大させるためには、管軸心方向Cにおけるロックリング収容溝105の幅W2を拡大する必要があり、受口102が管軸心方向Cにおいて大型化するといった問題があった。
【0013】
また、ロックリング106の内周面106aと挿口104の外周面とはロックリング106の全幅W1において面接触しているため、挿口104がロックリング106に対して管軸心方向Cへ摺動する際、両者の摩擦抵抗が大きく、挿口104がロックリング106に対して管軸心方向Cへスムーズに滑りながら移動することは困難であるといった問題もあり、継手114の屈曲性を向上させるには、改善の余地があった。
【0014】
そこで本発明は、挿口がロックリングに対して管軸心方向へスムーズに滑りながら移動することが可能であり、継手部の屈曲性を向上させることが可能な継手部の構造および管の敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本第1発明は、受口に挿口が挿入され、
受口の内面に形成されたロックリング収容溝にロックリングが収容され、
挿口の外表面に形成された突部が挿口の離脱方向において受口奥側からロックリングに当接することにより、挿口が受口から離脱することを防止可能な継手部の構造であって、
ロックリング収容溝は、受口開口側の面と、この受口開口側の面の径方向外周端部につながる溝底面とを有し、
ロックリングと挿口の外表面とが当接する第1当接箇所において、ロックリングの外表面が横断面視において円弧形状を有しており、
ロックリングがロックリング収容溝の受口開口側の面と挿口の突部との間に挟まれた状態で、ロックリングの外周とロックリング収容溝の溝底面との間に空間が形成され、
継手部において受口と挿口とのいずれか一方が他方に対して屈曲可能であり、
受口と挿口とのいずれか一方が他方に対して屈曲した際、ロックリングがロックリング収容溝内の空間を径方向に変位可能であるものである。
【0016】
これによると、挿口は、受口に挿入された状態で、ロックリングを貫通している。この際、ロックリングは挿口に外嵌され、ロックリングと挿口の外表面とが当接する第1当接箇所において、ロックリングの外表面が横断面視において円弧形状を有しているため、挿口がロックリングに対して管軸心方向へ摺動するときの両者の摩擦抵抗が低減され、挿口はロックリングに対して管軸心方向へスムーズに滑りながら移動することができる。
【0017】
また、上記のように第1当接箇所において、ロックリングの外表面が横断面視において円弧形状を有しているため、ロックリングに対して挿口が屈曲方向へスムーズに変位することができ、これにより、継手部の屈曲性を従来よりも向上させることができる。
【0018】
本第2発明における継手部の構造は、ロックリングがロックリング収容溝の受口開口側の面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングと挿口の突部とが当接する第2当接箇所において、ロックリングの外表面が横断面視において円弧形状を有しているものである。
【0019】
これによると、継手部において接続された一方の管に対して他方の管が屈曲した場合、第2当接箇所において、挿口の突部がロックリングの円弧形状の外表面を滑りながらスムーズに屈曲方向へ変位するため、継手部における管同士の屈曲が容易になる。
【0020】
本第3発明における継手部の構造は、ロックリングがロックリング収容溝の受口開口側の面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングとロックリング収容溝の受口開口側の面とが当接する第3当接箇所において、ロックリングの外表面が横断面視において円弧形状を有しているものである。
【0021】
これによると、継手部において接続された一方の管に対して他方の管が屈曲した場合、第3当接箇所において、受口のロックリング収容溝の受口開口側の面がロックリングの円弧形状の外表面を滑りながらスムーズに屈曲方向へ変位するため、継手部における管同士の屈曲が容易になる。
【0022】
本第4発明における継手部の構造は、ロックリングは横断面視において略円形状であるものである。
これによると、丸棒状の鋼材等を用いてロックリングを容易に製作することができるため、ロックリングの生産性が良い。
【0023】
本第5発明における継手部の構造は、ロックリング収容溝の受口開口側の面は挿口の離脱方向において縮径するテーパー面として形成されているものである。
これによると、挿口が受口に対して離脱方向へ移動し、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、挿口の離脱方向の力に応じて、ロックリングに径方向内向きの力が作用するため、ロックリングが挿口の外表面に押し付けられ、ロックリングが挿口の外表面から径方向外向きに離間するのを防止することができる。これにより、ロックリングが挿口から離脱し難くなり、ロックリングが挿口から外れるのを防止できる。
【0024】
本第6発明における継手部の構造は、ロックリングがロックリング収容溝の受口開口側の面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングと挿口の突部とが当接する第2当接箇所において、突部の外表面が横断面視において円弧形状を有しているものである。
【0025】
これによると、継手部において接続された一方の管に対して他方の管が屈曲した場合、第2当接箇所において、挿口の突部の円弧形状の外表面がロックリングの外表面を滑りながらスムーズに屈曲方向へ変位するため、継手部における管同士の屈曲が容易になる。
【0026】
本第7発明における継手部の構造は、挿口の突部は溶接ビードにて形成されているものである。
これによると、突部を挿口に容易に形成することができ、突部の生産性が良い。
【0027】
本第8発明における継手部の構造は、上記第1発明から第7発明のいずれか1項に記載の継手部の構造を用いた管の敷設方法であって、
管の敷設場所に敷設用溝を形成し、
挿口を受口に挿入して管同士を接続し、
接続した管同士を、継手部において屈曲させながら、敷設用溝内に設置するものである。
【0028】
これによると、挿口を受口に挿入して管同士を接続する接続作業が容易に行える。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によると、挿口がロックリングに対して管軸心方向へスムーズに滑りながら移動することが可能であり、また、継手部の屈曲性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施の形態における継手部の断面図である。
図2】同、継手部に用いられるロックリングの正面図である。
図3】同、継手部の一部拡大断面図であり、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれた状態を示す。
図4】同、継手部の断面図であり、挿口が受口に対して屈曲した状態を示す。
図5】同、継手部の一部拡大断面図であり、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれた状態を示す。
図6】本発明の第2の実施の形態における継手部の一部拡大断面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態における継手部の一部拡大断面図である。
図8】本発明の第4の実施の形態における管の敷設方法を示す図であり、(a)は地上で管同士を接続する接続作業を示し、(b)は接続した管の継手部を屈曲させて管を敷設用溝内に設置した状態を示す。
図9】従来の継手部の断面図である。
図10】従来の別の継手部の断面図であり、挿口が受口に対して屈曲した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示すように、1は一方の管2と他方の管3とを接続するプッシュオンタイプの継手部であり、以下のような構成を有している。尚、各管2,3には例えばダクタイル鋳鉄管を用いているが、ダクタイル鋳鉄以外の材質の管を用いてもよい。
【0032】
一方の管2の受口4に他方の管3の挿口5が挿入されている。受口4の内周面には、シール部材収容溝6とロックリング収容溝7とが形成されている。シール部材収容溝6はロックリング収容溝7よりも受口開口部12に近い位置にあり、シール部材収容溝6には、受口4の内周と挿口5の外周との間をシールするゴム製の環状のシール部材8が収納されている。
【0033】
ロックリング収容溝7の受口開口側の面は、挿口5の離脱方向Aにおいて縮径するテーパー面9として形成されている。テーパー面9の角度Bは受口4の管軸心14に対して30°以上で70°以下の範囲内に設定されている。また、ロックリング収容溝7の受口奥側の面16は受口4の管軸心14に対して垂直に設定されている。尚、受口開口側のテーパー面9と受口奥側の面16とは管軸心方向Cにおいて対向している。また、図3に示すように、ロックリング収容溝7は、テーパー面9の径方向外周端部と受口奥側の面16の径方向外周端部とにつながる溝底面30を有している。
【0034】
ロックリング収容溝7には、ロックリング10が収容されている。図2に示すように、ロックリング10は、周方向における一箇所が切断された一つ割りの円環状の金属製部材であり、図1に示すように横断面視(円周方向に垂直な断面視すなわち図2におけるX−X断面視)において円形状を有している。
【0035】
挿口5の先端部の外表面5aには、突部11が全周にわたり形成されている。突部11の受口開口側の端面11a(以下、手前端面11aと言う)は挿口5の管軸心14に垂直な面である。挿口5の外表面5aおよび突部11には塗装が施されている。挿口5はロックリング10を受口開口側から受口奥側へ貫通しており、ロックリング10は挿口5に外嵌される。
【0036】
尚、上記のようにロックリング10は横断面視において円形状であるため、ロックリング10と挿口5の外表面5aとが当接する第1当接箇所P1において、ロックリング10の外表面が横断面視において円弧形状を有している。
【0037】
また、図3に示すように、ロックリング10がロックリング収容溝7のテーパー面9(受口開口側の面)と挿口5の突部11との間に挟まれたとき、ロックリング10と突部11とが当接する第2当接箇所P2において、ロックリング10の外表面が横断面視において円弧形状を有している。尚、第2当接箇所P2は、挿口5の外表面5a(外周面)よりも径方向外方に位置している。挿口5の外表面5aから第2当接箇所P2までの間には、ロックリング10と突部11とが当接しない非接触空間15が形成されている。
【0038】
また、ロックリング10とロックリング収容溝7のテーパー面9とが当接する第3当接箇所P3において、ロックリング10の外表面が横断面視において円弧形状を有している。尚、第1〜第3当接箇所P1〜P3はそれぞれ、図3の断面図においては点で接触(点接触)しているように示されているが、実際には円周方向に長い線で接触(線接触)している。
また、図3に示すように、ロックリング10がロックリング収容溝7のテーパー面9と挿口5の突部11との間に挟まれた状態で、ロックリング10の外周とロックリング収容溝7の溝底面30との間に空間31が形成される。
【0039】
以下、上記構成における作用を説明する。
図1に示すように、挿口5は、受口4に挿入された状態で、ロックリング10を貫通している。この際、ロックリング10は挿口5に外嵌され、第1当接箇所P1において、ロックリング10の外表面が横断面視において円弧形状を有しているため、挿口5がロックリング10に対して管軸心方向Cへ摺動するときの両者の摩擦抵抗が低減され、挿口5はロックリング10に対して管軸心方向Cへスムーズに滑りながら移動することができる。
【0040】
また、上記のように第1当接箇所P1において、ロックリング10の外表面が横断面視において円弧形状を有しているため、ロックリング10に対して挿口5が屈曲方向Dへスムーズに変位することができる。これにより、図4の実線で示すように、継手部1において接続された一方の管2に対して他方の管3が屈曲した場合、ロックリング10の周方向における一箇所がロックリング収容溝7のテーパー面9に当接し、ロックリング10の周方向における別の箇所がロックリング収容溝7の受口奥側の面16に当接し、さらにこの状態から、ロックリング10が拡径する変形を伴いながら、図4の仮想線で示すように、挿口5がロックリング10に対して屈曲方向Dへスムーズに変位することができる。このため、ロックリング収容溝7の幅W2を拡大せずに、最大屈曲角度αを大きくすることができ、従って、受口4を大型化せずに管2,3同士の屈曲角度αを増大させることができる。
【0041】
また、図1に示すように、外表面5aに塗装を施した挿口5を受口4に挿入して管2,3同士を接続する際、第1当接箇所P1においてロックリング10と挿口5の外表面5aとが当接するが、ロックリング10の外表面は横断面視において円弧形状を有しているため、挿口5の外表面5aに施された塗装がロックリング10によって傷付けられ難くなる。
【0042】
これにより、従来では、挿口の外表面とロックリングとの両者に塗装を施して、いずれか片方の塗装が傷付いた場合であっても、挿口の外表面(金属面)とロックリングの表面(金属面)とが直接に接触することを防止していたが、本発明の第1の実施の形態では、ロックリング10に塗装をしなくても、挿口5の外表面5aのみに塗装を施すことにより、挿口5の外表面5aとロックリング10の表面とが直接に接触することを防止することが可能となり、ロックリング10を塗装する手間を省くことができる。
【0043】
また、受口4に対して挿口5が離脱方向Aへ移動した際、突部11が受口奥側からロックリング10に係合(当接)することにより、挿口5が受口4から離脱するのを防止することができる。
【0044】
また、図3の実線で示すように、挿口5がロックリング10に対して摺動しながら受口4に対して離脱方向Aへ移動し、ロックリング10がロックリング収容溝7のテーパー面9と挿口5の突部11との間に挟まれたとき、挿口5の離脱方向Aの力に応じて、ロックリング10に径方向内向きの力Fが作用するため、ロックリング10が挿口5の外表面5aに押し付けられ、ロックリング10の内周が挿口5の外表面5aから径方向外向きに離間する(浮き上る)のを防止することができる。これにより、ロックリング10が挿口5から離脱し難くなり、ロックリング10が挿口5から外れるのを防止できる。
【0045】
また、上記のようにロックリング10がロックリング収容溝7のテーパー面9と挿口5の突部11との間に挟まれた状態で、図3の仮想線で示すように、一方の管2に対して他方の管3が屈曲した場合、第2当接箇所P2において、突部11がロックリング10の円弧形状の外表面を滑りながらスムーズに屈曲方向Dへ変位するため、管2,3同士の屈曲が容易になる。
【0046】
さらに、図5の仮想線で示すように、第3当接箇所P3において、テーパー面9がロックリング10の円弧形状の外表面を滑りながらスムーズに屈曲方向Dへ変位するため、管2,3同士の屈曲がさらに容易になる。
【0047】
また、ロックリング10は横断面視において円形状を有しているので、丸棒状の鋼材等を円環状に曲げ加工することにより、ロックリング10を容易に製作することができ、ロックリング10の生産性が良い。
【0048】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、図6に示すように、挿口5の突部11は、横断面視において略半円形状を有しており、溶接ビードにて形成されている。これにより、ロックリング10がロックリング収容溝7のテーパー面9と挿口5の突部11との間に挟まれたとき、第2当接箇所P2において、突部11の外表面が横断面視において円弧形状を有している。
【0049】
以下、上記構成における作用を説明する。
一方の管2に対して他方の管3が屈曲した場合、第2当接箇所P2において、突部11とロックリング10とが円弧形状の外表面同士で当接するため、突部11の外表面がロックリング10の外表面を滑りながらスムーズに屈曲方向Dへ変位することができ、管2,3同士の屈曲が容易になる。
【0050】
また、溶接ビードにて突部11を形成しているため、突部11を挿口5に容易に形成することができ、突部11の生産性が良い。
(第3の実施の形態)
上記第1および第2の実施の形態では、図1図6に示すように、ロックリング10を横断面視において円形状に形成しているが、第3の実施の形態では、図7に示すように、ロックリング10を横断面視において長円形状又は楕円形状に形成してもよい。
【0051】
これによると、上記第1および第2の実施の形態と同様な作用および効果が得られる。また、ロックリング10の横断面を長円形状又は楕円形状にすることにより、横断面を円形状にした場合に比べて、ロックリング10の外径と内径との差の半分の寸法R(円形状断面の場合は円の直径に相当する寸法)を維持しつつロックリング10の横断面の面積を縮小することができる。これにより、横断面が長円形状又は楕円形状の棒鋼からなる素材を容易に円環状に曲げ加工してロックリング10を製造することができる。また、ロックリング10が少ない力で容易に拡径するため、挿口5の突部11がロックリング10の内周を通過する際に必要な力(挿口挿入時の挿入力)を小さくすることができる。さらに、突部11が通過した後のロックリング10の縮径が容易となるため、挿口5の外表面5aへの抱き付き性を向上させることができる。
【0052】
尚、上記各実施の形態では、ロックリング10の横断面視における形状を円形状、長円形状、楕円形状のいずれかにしているが、これらの形状に限定されるものではなく、第1〜第3当接箇所P1〜P3において円弧状の外表面を有している形状であればよい。また、ロックリング10とロックリング収容溝7の一部が上記のような形状であってもよい。尚、本明細書および特許請求の範囲では、これらの形状を全て含む形状を略円形状と定義している。また、このように上記各実施の形態では、ロックリング10の横断面視における形状を略円形状にしているが、これは、ロックリング10の切断部26(図2参照)を除いた範囲を全て略円形状にしてもよく、ロックリング収容溝7に当接するロックリング10の当接部分が上記のような形状であればよい。
【0053】
また、本発明は、プッシュオンタイプの継手のみでなく、メカニカルタイプの継手にも適用可能な技術であり、継手の形状等に特定されるものではない。
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、以下のような方法で管を敷設する。すなわち、図8(a)に示すように、管の敷設場所の地面23を掘削して、敷設用溝24を形成する。その後、敷設用溝24の外部である地上において、内部にシール部材8およびロックリング10を装着した受口4に、挿口5を挿入して、一方の管2と他方の管3とを接続する。このようにして接続した管2,3同士を、図8(b)に示すように、継手部1において屈曲させながら、下に降ろし、敷設用溝24内に設置する。
【0054】
これによると、図8(a)に示すように、作業者は、挿口5を受口4に挿入して管2,3同士を接続する接続作業を、地上(すなわち敷設用溝24の外部)から行うことができる。このため、作業者が敷設用溝24内に入って接続作業を行う場合に比べて、接続作業が容易に行える。
【0055】
尚、上記第4の実施の形態では、挿口5を受口4に挿入して管2,3同士を接続する接続作業を地上で行っているが、この接続作業を敷設用溝24内の上部で行ってもよい。この場合においても、作業者は、敷設用溝24内に入らずに、上記接続作業を地上から行うことができるため、上記接続作業が容易に行える。
【0056】
上記各実施の形態では、ロックリング10は、周方向における一箇所が切断された一つ割り構造を有しているが、複数箇所が切断された複数割り構造を有していてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 継手部
2,3 管
4 受口
5 挿口
5a 外表面
7 ロックリング収容溝
9 テーパー面(受口開口側の面)
10 ロックリング
11 突部
14 管軸心
24 敷設用溝
A 離脱方向
B テーパー面の角度
P1〜P3 第1〜第3当接箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10