(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
遠心分離機用ロータの一つとしてスイング型ロータがある。このスイング型ロータは、ロータヨークとバケットとによって構成されている。バケットは、試料を入れたチューブが挿入されるもので、有底筒状に形成されてロータヨークに着脱自在かつ回動自在に取付けられている。チューブは、ラックに保持された状態でバケットに収容される。バケットは、ロータの回転に伴って遠心力により0〜90度の角度まで振り上がる。
【0003】
従来のこの種のバケットとしては、例えば特許文献1に記載されているように、バケット内を密閉するためのシールドカバーを備えたものがある。バケット内を密閉する理由は、有害細菌、有害物質などのバケット外への漏洩防止や、キャップのないチューブ内に他の物質が混入することを防ぐためである。
【0004】
特許文献1に記載されているシールドカバーは、有底筒状のバケット本体の開口部を覆う形状に形成されており、クリップ式固定具によってバケット本体に着脱可能に取付けられている。シールドカバーにおけるバケット本体に合わせられる部分にはシール部材が設けられている。このシール部材がバケット本体とシールドカバーとの間に挟まれることによって、密閉性が確保される。
【0005】
シールドカバーをバケット本体に取付けるためには、特許文献1に示すようなクリップ式固定具や、ねじ式の取付構造を用いることが多い。特許文献1に開示されているクリップ式固定具は、レバー状に形成されてバケット本体に回動自在に支持されており、シールドカバーの係合部に係合可能に形成されている。このクリップ式固定具によれば、シールドカバーの係合部に係合することによって、シールドカバーがバケット本体に固定される。
【0006】
ねじ式の取付構造
においては、バケット本体のフランジとシールドカバーのフランジとを重ね、これらのフランジどうしがボルトによって締結されることによって、シールドカバーがバケット本体に固定される。また、ねじ式の取付構造としては、シールドカバーとバケット本体とのうちいずれか一方の部材の開口部に形成された雄ねじと、他方の部材に形成された雌ねじとが螺合する取付構造もある。この場合は、シールドカバーをバケット本体に対して回転させることによって、
シールドカバーが着脱される。
【0007】
シールドカバーをバケット本体に取付ける作業は、いわゆる安全キャビネットなどの中で行われる。この安全キャビネットとは、負圧環境となる作業空間を有する簡易作業室である。シールドカバーをバケット本体に取付けるにあたっては、先ず、試料が入ったチューブをラックとともにバケット本体に収容させる。そして、このバケット本体にシールドカバーを被せ、上述したような取付構造を使用して取付ける。このようにバケット本体にシールドカバーが取付けられることによって、バケット内が密閉される。
【0008】
試料の遠心処理は、シールドカバーが取付けられた状態のバケットを安全キャビネットからロータヨークまで運搬し、このロータヨークに装着して行われる。遠心処理後には、ロータヨークから取外されたバケットが再度安全キャビネットまで運搬され、シールドカバーがバケット本体から取外される。遠心処理中や運搬中には、バケット内の密閉性を確保する必要がある。また、バケットの運搬が容易であることも重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示すバケットは、これを運搬するときに作業者が把持する取手を備えていない。このため、このバケットの運搬は、作業者がバケットを手で持って行われている。バケットは、有底筒状に形成されているから、持ち難く、運搬し難いものであった。なお、この運搬は、シールドカバーを持って行うことはできない。この理由は、シールドカバーにおける取付構造から離れた非固定部を持つと、シールドカバーが上方に弾性変形し、シール部材を挟む力が低下することに起因してシール性が低下してしまうからである。
【0011】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、遠心処理時や運搬時にシール性を確保できるとともに、運搬を容易に行うことが可能な遠心分離機のスイング型ロータ用バケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明に係る遠心分離機のスイング型ロータ用バケットは、遠心処理をする試料が入れられるチューブを収容し、遠心分離機のロータヨークに回動自在かつ着脱自在に支持される有底筒状のバケット本体と、前記バケット本体の開口部に着脱可能に取付けられ、前記開口部を塞ぐカバーと、前記バケット本体と前記カバーとの間に設けられたシール部材と、前記開口部を2分割する位置にそれぞれ配設され、前記カバーを前記バケット本体に向けて押した状態で前記バケット本体に着脱可能に取付ける一対の取付機構とを備え、前記カバーは、前記一対の取付機構によって押される一対の被押圧部を有しかつ前記開口部を覆う蓋部と、前記蓋部と一体に形成され、前記蓋部から前記バケット本体とは反対側に突出する取手部とを有し、前記取手部は、前記一対の被押圧部の間に架け渡され、前記蓋部と前記取手部との間には、前記カバーの外に向けて開口するとともに前記蓋部と前記取手部との間を分断する穴が形成され
、前記取付機構は、前記バケット本体を前記ロータヨークに回動自在に接続するトラニオンピンの軸線方向から見て、前記バケット本体および前記カバーの両端部に位置付けられ、前記取手部は、前記バケット本体とは反対側に向けて凸になる断面円弧状に形成されているものである。
【0013】
本発明に係る遠心分離機のスイング型ロータ用バケットは、
遠心処理をする試料が入れられるチューブを収容し、遠心分離機のロータヨークに回動自在かつ着脱自在に支持される有底筒状のバケット本体と、前記バケット本体の開口部に着脱可能に取付けられ、前記開口部を塞ぐカバーと、前記バケット本体と前記カバーとの間に設けられたシール部材と、前記開口部を2分割する位置にそれぞれ配設され、前記カバーを前記バケット本体に向けて押した状態で前記バケット本体に着脱可能に取付ける一対の取付機構とを備え、前記カバーは、前記一対の取付機構によって押される一対の被押圧部を有しかつ前記開口部を覆う蓋部と、前記蓋部と一体に形成され、前記蓋部から前記バケット本体とは反対側に突出する取手部とを有し、前記取手部は、前記一対の被押圧部の間に架け渡され、前記蓋部と前記取手部との間には、前記カバーの外に向けて開口するとともに前記蓋部と前記取手部との間を分断する穴が形成され、前記穴の中に前記蓋部と前記取手部とを接続する壁をさらに備えているものである。
【0014】
本発明は、前記遠心分離機のスイング型ロータ用バケットにおいて、前記穴の中に前記蓋部と前記取手部とを接続する壁をさらに備えていてもよい。
【0015】
本発明は、前記遠心分離機のスイング型ロータ用バケットにおいて、前記取付機構が、前記バケット本体と前記カバーとのうちいずれか一方の部材に回動自在に支持されたクリップ式固定具と、前記バケット本体と前記カバーとのうち他方の部材に設けられ、前記クリップ式固定具と係合する係合部とによって構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る遠心分離機のスイング型ロータ用バケットは、取手部を把持して容易に運搬することができる。
カバーがバケット本体に取付機構によって取付けられている状態でカバーの取手部を把持し持ち上げると、バケット本体の重量からなる下向きの力が一対の取付機構を介してカバーの被押圧部に加えられる。このとき、取手部を持ち上げることに起因して生じる上向きの力は、伝達方向が穴によって規制されているから、主に一対の被押圧部に加えられる。被押圧部に加えられた上向きの力は、バケット本体の重量からなる下向きの力によって相殺されるから、被押圧部がバケット本体に対して上に変形することはない。
【0017】
このため、取手部を把持してバケットを持ち上げたとしても、カバーの全域においてシール部材の潰し量の低下を最小限に抑えることが可能になるから、シール性の低下を抑止できる。
取手部は、カバーの蓋部と一体に形成されているから、遠心処理時に蓋部に対して移動することがない。このため、上述した取付機構がカバーをバケット本体に向けて押す力は、遠心処理中も変わることがない。
したがって、本発明によれば、遠心処理時や運搬時にシール性を確保できるとともに、運搬を容易に行うことが可能な遠心分離機のスイング型ロータ用バケットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る遠心分離機のスイング型ロータ用バケットの一実施の形態を
図1〜
図12によって詳細に説明する。
図1に示す4個のバケット1は、それぞれロータヨーク2に支持されている。これらの4個のバケット1とロータヨーク2は、図示していない遠心分離機のスイング型ロータ3を構成するものである。ロータヨーク2は、
図1中に一点鎖線C1で示す回転軸周りに回転する。回転軸C1は、上下方向に延びている。
【0020】
ロータヨーク2は、
図2に示すように、水平方向に延びる4本のアーム4を有している。これらのアーム4の先端部には、トラニオンピン5が設けられている。このトラニオンピン5は、バケット1を回転自在かつ着脱自在に支持するもので、円柱状に形成されている。このトラニオンピン5は、バケット1の2側部に設けられたトラニオンピン溝6(
図2参照)の中に下方から回転自在に嵌合している。このようにバケット1がロータヨーク2に装着された状態でロータヨーク2が高速で回転すると、バケット1に作用する遠心力によってバケット1がトラニオンピン5を回転中心として回転し、バケット1の底面が回転中心から見て外側に振り上がる。
【0021】
バケット1は、
図3に示すように、有底筒状に形成されたバケット本体11と、このバケット本体11内に収容されるチューブラック12と、バケット本体11の開口部11aを閉塞するシールドカバー13などを備えている。以下においてバケット1の各部品を説明するにあたっては、バケット本体11の開口する方向を上方とし、この方向とは反対方向を下方として説明する。
【0022】
バケット本体11は、
図4に示すように、外側部に位置する上述したトラニオンピン溝6と、開口部11aの近傍に位置する一対の係合凸部14とを有している。トラニオンピン溝6は、バケット本体11の互いに対向する2つの側壁11b,11cにそれぞれ設けられている。このトラニオンピン溝6は、
図4(C)に示すように、バケット本体11の側壁11b,11cに沿って上下方向に延びており、バケット本体11の側方と下方とに向けて開口している。これら2つのトラニオンピン溝6が並ぶ方向は、トラニオンピン5の軸線方向である。トラニオンピン5の軸線を
図4(A)中に一点鎖線C2で示す。
【0023】
係合凸部14は、後述するシールドカバー13をバケット本体11に固定するためのもので、バケット本体11を上方から見てトラニオンピン5の軸線方向に2分割(2等分)する位置にそれぞれ設けられている。言い換えれば、この係合凸部14が設けられる位置は、
図4(C)に示すように、トラニオンピン溝6と対向する方向から見て(トラニオンピン5の軸線方向から見て)、バケット本体11の両端部となる位置である。以下においては、一対の係合凸部14が並ぶ方向を単に「ロータ3の径方向」という。
【0024】
係合凸部14は、バケット本体11から側方に突出するとともに、ロータ3の径方向に延びる形状に形成されている。この係合凸部14の下端は、
図4(C)に示すように、バケット引掛溝15によって構成されている。バケット引掛溝15の断面形状は、上方に向けて凸になる円弧状である。バケット引掛溝15は、請求項4記載の発明でいう「係合部」を構成するものである。
バケット本体11の開口部11aには、水平方向に延びる平坦な合わせ面16が形成されている。この合わせ面16は、バケット本体11の開口部11aの全域にわたって途切れることなく一連に形成されている。
【0025】
チューブラック12は、
図3に示すように、複数のチューブ17を保持するためのものである。チューブ17は、有底円筒状に形成されており、図示していない試料が入れられる。この実施の形態によるチューブラック12は、バケット本体11の内部に嵌合する形状に形成されている。また、このチューブラック12は、6本のチューブ17を保持するために、6つのチューブ挿入用の非貫通穴18を有している。チューブ17は、これらの非貫通穴18に上方から挿入されて保持される。
【0026】
シールドカバー13は、
図5および
図6に示すように、カバー本体21と、このカバー本体21の下端部に取付けられたパッキン22と、カバー本体21の両端部に回動自在に取付けられたクリップ式固定具23(以下、単にクリップ23という)などによって構成されている。
カバー本体21は、
図7に示すように、バケット本体11の開口部11aを覆う蓋部24と、この蓋部24から上方に(バケット本体11とは反対側に)突出する取手部25とを有している。この実施の形態においては、このカバー本体21によって、本発明でいう「カバー」が構成されている。
【0027】
この実施の形態によるカバー本体21は、プラスチック材料によって所定の形状に成形されたものである。このため、取手部25は、蓋部24と一体に形成されている。
蓋部24は、
図7(E)に示すように、下方に向けて開口する箱状に形成されている。この蓋部24の開口部24aには、
図7(B)および
図7(F)に示すようにパッキン22を保持するための凹溝26と、この凹溝26より下方に延びる突条27とが形成されている。凹溝26は、下方に向けて開口しており、蓋部24の開口部24aの全域にわたって途切れることなく一連に延びている。
【0028】
この凹溝26内に挿入されるパッキン22は、ゴムなどの弾性体によって凹溝26に嵌合可能な環状(
図6参照)に形成されている。また、このパッキン22は、
図7(F)に示すように、凹溝26に挿入された状態で下部が凹溝26より下方に突出する形状に形成されている。このパッキン22は、シールドカバー13をバケット本体11に取付けた状態でバケット本体11の合わせ面16に接触する。この実施の形態においては、このパッキン22によって、本発明でいう「シール部材」が構成されている。
【0029】
突条27は、蓋部24の開口部11aの全域に途切れることなく一連に延びている。この突条27は、
図9に示すように、シールドカバー13をバケット本体11に取付けた状態でバケット本体11の開口部11a内に嵌合する。
蓋部24におけるロータ3の径方向の両端部{
図7(A)においては上下方向の両端部}には、クリップ固定部31が設けられている。このクリップ固定部31は、後述するクリップ23を回動自在に保持する機能を有している。
【0030】
この実施の形態によるクリップ固定部31は、開口部24aの近傍に設けられており、蓋部24からロータ3の径方向の両側に
突出している。このクリップ固定部31の上部は、クリップ23のクリップ軸部32(
図8参照)が回動自在に嵌合する凹溝33によって構成されている。この凹溝33は、上方に向けて開放された断面C字状に形成されている。
クリップ23は、詳細は後述するが、バケット本体11の係合凸部14とともに取付機構34(
図9参照)を構成するものである。取付機構34は、カバー本体21をバケット本体11に着脱可能に取付ける機能と、カバー本体21をバケット本体11に向けて押圧する機能とを有している。このため、カバー本体21のクリップ固定部31は、取付機構34によって下方に向けて押される。この実施の形態においては、このクリップ固定部31によって、本発明でいう「被押圧部」が構成されている。
【0031】
取手部25は、
図7に示すように、上述した一対のクリップ固定部31の間に架け渡されている。この実施の形態による取手部25は、
図7(E)に示すように、一対のクリップ固定部31どうしを結ぶように延びる板状の上板25aと、この上板25aと蓋部24の上壁24bとを接続する縦壁35とによって構成されている。上板25aは、
図7(D)に示すように、トラニオンピン5の軸線方向から見て、上方に向けて(バケット本体11とは反対側に向けて)凸になる断面円弧状に形成されている。
【0032】
縦壁35は、トラニオンピン5の軸線方向{
図7(E)においては左右方向}において、上壁24bおよび上板25aの中央部に位置付けられており、上下方向とロータ3の径方向とに延びている。このため、上板25aと蓋部24の上壁24bとの間には、トラニオンピン5の軸線方向の一方と他方とに向けて開口する取手凹部36が形成されている。この取手凹部36は、カバー本体21の外に向けて開口するとともに、蓋部24と取手部25との間を分断している。この実施の形態においては、この取手凹部36が本発明でいう「穴」に相当し、縦壁35が
請求項2および請求項3記載の発明でいう「蓋部と取手部とを接続する壁」に相当する。
上板25aによって形成される円弧の中心は、トラニオンピン5の軸線方向から見て、トラニオンピン5の軸心である。
【0033】
クリップ23は、
図6および
図8に示すように、円柱状に形成されたクリップ軸部32と、このクリップ軸部32の両端部に接続された一対の側板部41と、側板部41どうしの間に設けられた第1および第2のクリップ繋ぎ部42,43とを備えている。この実施の形態によるクリップ23は、プラスチック材料によって所定の形状に成形されたものである。
【0034】
クリップ軸部32は、上述したクリップ固定部31の凹溝33に回転自在に嵌合する形状に形成されており、側板部41の一端部に接続されている。側板部41の他端部には、第1のクリップ繋ぎ部42が接続されている。第2のクリップ繋ぎ部43は、クリップ軸部32と第1のクリップ繋ぎ部42との間に位置付けられている。
第1のクリップ繋ぎ部42には、作業者(図示せず)が指先を挿入することができるように、2つの凹部44が形成されている。これらの凹部44は、一対の側板部41と、第1のクリップ繋ぎ部42の中央部に位置する補強用リブ45との間に形成されている。
【0035】
第1のクリップ繋ぎ部42における第2のクリップ繋ぎ部43と対向する部分には、クリップ引掛部46が突設されている。このクリップ引掛部46は、
図8(E)に示すように、クリップ軸部32に向けて凸になる断面半円状に形成されている。クリップ引掛部46の位置は、このクリップ23が取付けられたカバー本体21をバケット本体11に重ね、クリップ23をバケット本体11に向けて揺動させることによって、
図10(A),(B)に示すように、クリップ引掛部46がバケット引掛溝15に係入する位置に位置付けられている。また、この係入により、カバー本体21がバケット本体11側に変位してパッキン22が圧縮される構成が採られている。以下においては、
図10(A)に示すように、クリップ引掛部46がバケット引掛溝15に係入してパッキン22が圧縮される状態をロック状態という。また、
図10(B)に示すように、クリップ引掛部46がバケット引掛溝15から外れている状態をロック解除状態という。
【0036】
このように構成されたシールドカバー13をバケット本体11に取付けるためには、先ず、バケット本体11の開口部11aにシールドカバー13を重ね、カバー本体21の突条27をバケット本体11に嵌合させる。このとき、パッキン22がバケット本体11の合わせ面16に接触する。そして、クリップ23を揺動させ、
図9および
図10(A)に示すように、クリップ引掛部46をバケット本体11のバケット引掛溝15に嵌め込んで係合させる。クリップ引掛部46がバケット引掛溝15に係合することにより、カバー本体21がバケット本体11に固定され、シールドカバー13がロック状態になる。また、この係合により、カバー本体21がパッキン22をバケット本体11側に押し、パッキン22が圧縮されて全域において潰れる。
【0037】
このようにバケット本体11の開口部11aをシールドカバー13で覆い、パッキン22がバケット本体11とシールドカバー13との間で圧縮されることによって、バケット1の内部が密閉される。
シールドカバー13をバケット本体11から外すためには、先ず、
図10(B)に示すように、クリップ23を揺動端部がバケット本体11から離間する方向に揺動させる。このようにクリップ23が揺動することにより、クリップ引掛部46と
バケット引掛溝15との係合が解除され、シールドカバー13がロック解除状態になる。この状態でシールドカバー13をバケット本体11から上方に引き上げることによって、シールドカバー13をバケット本体11から取外すことができる。
【0038】
シールドカバー13がバケット本体11に固定されてロック状態になっているバケット1は、シールドカバー13の取手部25を把持することにより容易に運搬することができる。この把持は、作業者が指を取手凹部36に挿入し、上板25aに掛けて行う。このとき、カバー本体21には、取手部25を持ち上げることに起因する上向きの力と、クリップ23を介して伝達されたバケット1の重量に相当する下向きの力とが加えられる。
【0039】
ここで、取手部が設けられていないバケットにおいて運搬時にシール性が低下する理由を
図11によって改めて説明する。
図11において、
図1〜
図10によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付してある。特許文献1に示すような取手部が設けられていないバケット51においては、シールドカバー52を持ち上げると、
図11中に矢印で示すように、カバー本体53の全域に略均等に上向きの力が作用する。カバー本体53は、完全な剛体ではないため、外力が加えられると変形する。
【0040】
クリップ23によりバケット本体11側に押されているクリップ固定部31の周辺、すなわち
図11中に二点鎖線で示すA部は、変形量が相対的に少なくなるためにパッキン22の潰し量の低下は少ない。しかし、クリップ23から力を受けることがない非固定部、すなわち
図11中に二点鎖線で示すB部は、パッキン22の潰し量が大きく低下する。このため、シール性が低くなってしまう。
【0041】
これに対して、この実施の形態によるバケット1においては、
図12に示すように、取手部25にこれを上方へ持ち上げる力F1が加えられると、この力F1が後述する第1および第2の理由からクリップ固定部31の周辺(A部)に集中して作用する。第1の理由は、取手部25が一対のクリップ固定部31の間に架け渡されており、取手部25の上板25aがクリップ固定部31に延びているからである。第2の理由は、取手部25と蓋部24との間に取手凹部36が形成されており、取手部25の上板25aと蓋部24の上壁24bとの間で力が伝達され難いからである。すなわち、上向きの力の伝達方向が取手凹部36によって規制されるからである。
【0042】
このため、取手部25を持ち上げる力の大部分がクリップ固定部31の周辺に作用し、クリップ23によって固定されていない非固定部(B部)に伝達される上向きの力が少なくなる。クリップ固定部31に加えられた上向きの力は、バケット本体11の重量からなる下向きの力によって相殺されるから、クリップ固定部31がバケット本体11に対して上に変形することはない。
したがって、取手部25を把持してバケット1を持ち上げたとしても、カバー本体21の全域においてパッキン潰し量の低下を最小限に抑えることが可能になるから、シール性の低下を抑止できる。
【0043】
取手部25は、カバー本体21の蓋部24と一体に形成されているから、遠心処理時に蓋部24に対して移動することがない。このため、上述した取付機構34がカバー本体21をバケット本体11に向けて押す力は、遠心処理中も変わることがない。
したがって、この実施の形態によれば、遠心処理時や運搬時にシール性を確保できるとともに、運搬を容易に行うことが可能な遠心分離機のスイング型ロータ3用バケット1を提供することができる。
【0044】
この実施の形態によるバケット1は、取手部25が蓋部24と一体に形成されているから、取手部25にカバー本体21をバケット本体11に固定する機能をもたせなくてよく、カバー本体21のロック状態とロック解除状態との切り替えを専用の取付機構34によって行うことができる。このため、図示してはいないが、例えばカバー本体に回動自在に設けられた取手部を起立させたり倒したりすることによりカバー本体のロック状態とロック解除状態との切り替えを行う場合と較べると、密閉状態を確保するうえで信頼性が高くなる。この理由は、取手部がカバー本体に対して起立した状態(運搬時の状態)で遠心処理を行うと、取手部の角度が遠心力で倒れてしまうおそれがあるからである。なお、このような不具合を解消するためには、取手部をカバー本体に対して倒れた非ロック位置とは反対側に倒すことによって、ロック状態を維持しながら取手部を遠心処理時に倒しておくことが可能な構成を採ればよい。しかし、この場合、遠心処理時に取手部を倒す方向を誤ると、シールされていない状態となってしまう。本発明に係るバケット1は、このような不具合がなく、密閉状態の信頼性が高くなるものである。
【0045】
この実施の形態による取付機構34は、
図9に示すように、トラニオンピン5の軸線方向から見て、バケット本体11およびカバーの両端部に位置付けられている。取手部25は、この軸線方向から見て、バケット本体11とは反対側に向けて凸になる断面円弧状に形成されている。このため、遠心処理時に取手部25とロータヨーク2との間隔が大きく変化することがない。したがって、この実施の形態によれば、バケット本体11の開口部11aとロータヨーク2との間の限られたスペースを最大限に使用して取手部25を形成することができる。なお、取手部25の上板25aは、バケット本体11の内部空間や取手凹部36を十分に広く形成することができる場合は、円弧形状に形成しなくてもよい。
【0046】
この実施の形態による取手凹部36の中(底)には、蓋部24と取手部25とを接続する縦壁35が設けられている。このため、この縦壁35が取手部25を補強するから、取手部25に遠心力が加えられたとしても取手部25が変形することがない。このため、カバー本体21の剛性が高く保たれるから、遠心処理中のシール性をより一層高くすることができる。なお、取手部25の上板25aの遠心力に対する強度を十分に確保できる場合は、縦壁35を省略することができる。縦壁35が設けられていないと、取手部25から蓋部24の上壁24bに伝達される上向きの力がなくなるために、シール性の確保が容易になる。
【0047】
この実施の形態による取付機構34は、カバー本体21に回動自在に支持されたクリップ23と、バケット本体11に設けられ、クリップ23と係合する係合凸部14とを備えている。このため、カバー本体21がバケット本体11に固定されるロック状態と、固定が解除されるロック解除状態とをクリップ23によって簡単に切り替えることができるから、取扱いがより一層容易な遠心分離機のスイング型ロータ用バケットを提供することができる。
【0048】
また、この実施の形態で示したように、カバー本体21をバケット本体11に固定するにあたってクリップ23を使用すると、ロック状態とロック解除状態とでクリップ23の位置が明らかに異なるから、作業者の操作ミスを防止することができる。なお、取付機構34は、この実施の形態で示したクリップ23を使用するものに限定されることはなく、カバー本体21をバケット本体11に着脱可能に固定できるものであれば、どのような構造のものでもよい。