(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572030
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】軟弱地盤の免震構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/34 20060101AFI20190826BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20190826BHJP
E02D 5/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
E02D27/34 B
E02D3/12 101
E02D3/12 102
E02D5/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-137468(P2015-137468)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-20219(P2017-20219A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 修二
(72)【発明者】
【氏名】深田 久
(72)【発明者】
【氏名】原田 健二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英次
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−247165(JP,A)
【文献】
特開2010−101013(JP,A)
【文献】
特表2010−516838(JP,A)
【文献】
特開昭60−203729(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01956147(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/34
E02D 3/12
E02D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持地盤の上層にある軟弱地盤の免震構造において、
前記軟弱地盤の地表から所定の深さの間に地盤改良した改良地盤層を形成し、この改良地盤層と前記支持地盤との間の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせたシェイクゲル地盤層を形成したことを特徴とする軟弱地盤の免震構造。
【請求項2】
請求項1記載の軟弱地盤の免震構造であって、
前記支持地盤上に前記シェイクゲル地盤層と前記改良地盤層とを隙間なく積層形成したことを特徴とする軟弱地盤の免震構造。
【請求項3】
請求項1記載の軟弱地盤の免震構造であって、
前記地盤改良の領域の周囲に前記支持地盤まで達する環状の遮水壁を形成し、この環状の遮水壁内の前記軟弱地盤の地表から所定の深さの間に地盤改良した改良地盤層を形成し、この改良地盤層と前記支持地盤との間の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせた底側のシェイクゲル地盤層を隙間なく形成すると共に、前記環状の遮水壁と前記改良地盤層及び前記底側のシェイクゲル地盤層との間の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせた両側のシェイクゲル地盤層を隙間なく形成したことを特徴とする軟弱地盤の免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液状化が起き易い砂質飽和地盤における軟弱地盤の免震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震により液状化するような軟弱地盤は、地表の構造物等に沈下や傾斜等の様々な被害をもたらすため、地盤改良により液状化対策がなされている。
【0003】
しかし一方で、液状化が生じると軟弱地盤が液体状態になり、せん断波が伝わりにくくなるため、地表の構造物等に対しては軟弱地盤が免震装置として機能し、各種被害を軽減することが知られている。この一例が、特許文献1に記載の軟弱地盤における免震構造に開示されている。
【0004】
即ち、
図7及び
図8に示すように、軟弱地盤における免震構造1は、支持地盤2の上方に拡がる軟弱層である液状化層3のうち、地表から深さHまでを平面領域4の範囲内で地盤改良して改良地盤層5とし、この改良地盤層5と支持地盤2との間は非改良層6として液状化層3のまま残置し、この非改良層6を構造物7に対して免震層として機能させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−181755号公報
【特許文献2】特開2003−20659号公報
【特許文献3】特開2010−101013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の軟弱地盤の免震構造1では、改良地盤層5の下方に液状化層3のまま残置した非改良層6の層厚が大きいほど免震効果はあるが、液状化終了後の周辺地盤の沈下量が大きくなり、構造物7の被害を最小限にとどめるために更に改良する余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、液状化対策の地盤改良工事を行っても、地震時にシェイクゲル地盤層が免震機能を発揮して支持地盤からの地震力がそのまま地表の構造物等に伝達されないようにすることができ、また、地震の後は、シェイクゲル地盤層がシェイクゲル機能によりゲル化されて変形を抑える強度を持った地盤層となるため、地表の構造物の沈下や傾斜等の被害を確実に防止することができる軟弱地盤の免震構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、支持地盤の上層にある軟弱地盤の免震構造において、前記軟弱地盤の地表から所定の深さの間に地盤改良した改良地盤層を形成し、この改良地盤層と前記支持地盤との間
の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせたシェイクゲル地盤層を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の軟弱地盤の免震構造であって、前記支持地盤上に前記シェイクゲル地盤層と前記改良地盤層とを隙間なく積層形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1記載の軟弱地盤の免震構造であって、前記地盤改良の領域の周囲に前記支持地盤まで達する環状の遮水壁を形成し、この環状の遮水壁内の前記軟弱地盤の地表から所定の深さの間に地盤改良した改良地盤層を形成し、この改良地盤層と前記支持地盤との間
の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせた底側のシェイクゲル地盤層を隙間なく形成すると共に、前記環状の遮水壁と前記改良地盤層及び前記底側のシェイクゲル地盤層との間
の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせた両側のシェイクゲル地盤層を隙間なく形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、軟弱地盤の地表から所定の深さの間に地盤改良した改良地盤層を形成し、この改良地盤層と支持地盤との間
の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせたシェイクゲル地盤層を形成したことにより、液状化対策の地盤改良工事を行っても、地震時にシェイクゲル地盤層が免震機能を発揮して支持地盤からの地震力がそのまま地表の構造物等に伝達されないようにすることができ、また、地震の後は、シェイクゲル地盤層がシェイクゲル機能によりゲル化されて変形を抑える強度を持った地盤層となるため、地表の構造物の沈下や傾斜等の被害を簡単かつ確実に防止することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、支持地盤上にシェイクゲル地盤層と改良地盤層とを隙間なく積層形成したことにより、改良地盤層と支持地盤との間に地震により液状化する軟弱地盤の非改良層がないため、地震後の地表の構造物の沈下や傾斜等の被害を簡単かつより確実に防止することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、地盤改良の領域の周囲に支持地盤まで達する環状の遮水壁を形成し、この環状の遮水壁内の軟弱地盤の地表から所定の深さの間に地盤改良した改良地盤層を形成し、この改良地盤層と支持地盤との間
の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせた底側のシェイクゲル地盤層を隙間なく形成すると共に、環状の遮水壁と改良地盤層及び底側のシェイクゲル地盤層との間
の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせた両側のシェイクゲル地盤層を隙間なく形成したことにより、環状の遮水壁内に液状化対策の地盤改良工事を行っても、地震時に底側及び両側の各シェイクゲル地盤層が免震機能を発揮して支持地盤からの地震力がそのまま地表の構造物等に伝達されないようにすることができ、また、地震の後は、底側及び両側の各シェイクゲル地盤層がシェイクゲル機能によりゲル化されて変形を抑える強度を持った地盤層となるため、地表の構造物の沈下や傾斜等の被害を簡単かつより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の軟弱地盤の免震構造を示す断面図である。
【
図3】地盤改良の領域の周囲に遮水壁を造成した状態を示す断面図である。
【
図4】(a)は上記地盤改良と違う施工法で底側のシェイクゲル地盤層を造成した状態を示す断面図、(b)は上記地盤改良と同じ施工法で底側のシェイクゲル地盤層と改良地盤層を同時に造成した状態を示す断面図である。
【
図5】上記底側のシェイクゲル地盤層の上に改良地盤層を造成した状態を示す断面図である。
【
図6】上記遮水壁と上記改良地盤層の間に両側のシェイクゲル地盤層を造成した状態を示す断面図である。
【
図7】従来の軟弱地盤における免震構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態の軟弱地盤の免震構造を示す断面図、
図2は
図1中A−A線に沿う断面図、
図3は地盤改良の領域の周囲に環状の遮水壁を造成した状態を示す断面図、
図4(a)は地盤改良と違う施工法で底側のシェイクゲル地盤層を造成した状態を示す断面図、
図5は底側のシェイクゲル地盤層の上に改良地盤層を造成した状態を示す断面図、
図6は遮水壁と改良地盤層の間に両側のシェイクゲル地盤層を造成した状態を示す断面図である。
【0017】
図1、
図2に示すように、硬質地盤(支持地盤)11の上層にある軟弱地盤12の免震構造10は、地盤改良の領域の周囲に硬質地盤11まで達する四角環状の遮水壁13を形成してある。この四角環状の遮水壁13内の軟弱地盤12の地表12aから所定の深さHの間で且つ遮水壁13から所定間隔離れた位置に地盤改良した改良地盤層14を形成してある。この改良地盤層14と硬質地盤11との間
の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせた底側のシェイクゲル地盤層15を隙間なく形成してある。即ち、硬質地盤11上に底側のシェイクゲル地盤層15と改良地盤層14とを隙間なく積層形成してある。また、四角環状の遮水壁13と改良地盤層14及び底側のシェイクゲル地盤層15との間
の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせた両側のシェイクゲル地盤層16を隙間なく四角環状に形成してある。
【0018】
尚、
底側のシェイクゲル地盤層15及び両側のシェイクゲル地盤層16は、
地震の震動により液状化する四角環状の遮水壁13内の軟弱地盤12中に液状のシェイクゲル剤を注入し、または、注入しながら攪拌・混合することにより形成される。
【0019】
次に、
図3〜
図6によって軟弱地盤12の免震構造10の造成手順を説明する。
【0020】
まず、
図3に示すように、地盤改良の領域の周囲(必要エリアの外周)に硬質地盤11まで達する四角環状の遮水壁13を造成する。
【0021】
次に、
図4(a)に示すように、硬質地盤11上から軟弱地盤12の地表12aより所定の深さHまでの位置に、地盤改良と違う施工法で免震地盤としての底側のシェイクゲル地盤層15を造成する。
【0022】
次に、
図5に示すように、底側のシェイクゲル地盤層15上で且つ四角環状の遮水壁13から所定間隔離れた位置内に改良地盤層14を隙間なく造成する。
【0023】
次に、
図6に示すように、四角環状の遮水壁13と改良地盤層14及び底側のシェイクゲル地盤層15との間にシェイクゲル機能を持たせた免震地盤としての両側のシェイクゲル地盤層16を隙間なく造成する。これにより、軟弱地盤12の免震構造10が完成し、
図1に示すように、改良地盤層14上に構造物17を構築する。
【0024】
このように、地盤改良の領域の周囲に硬質地盤11まで達する四角環状の遮水壁13を造成し、この四角環状の遮水壁13内の軟弱地盤12の地表12aから所定の深さHの間に地盤改良した改良地盤層14を造成し、この改良地盤層14と硬質地盤11との間にシェイクゲル機能を持たせた底側のシェイクゲル地盤層15を隙間なく造成すると共に、四角環状の遮水壁13と改良地盤層14及び底側のシェイクゲル地盤層15との間にシェイクゲル機能を持たせた両側のシェイクゲル地盤層16を隙間なく造成したことにより、四角環状の遮水壁13内に液状化対策の地盤改良工事を行っても、地震時に底側及び両側の各シェイクゲル地盤層15,16が免震機能を発揮して硬質地盤11からの地震力がそのまま地表12aの構造物17等に伝達されないようにすることができる。即ち、地震発生時の振動により底側及び両側の各シェイクゲル地盤層15,16がゲル化を開始し、それが終了するまでの間は元々軟弱地盤であった各シェイクゲル地盤層15,16が
液状化
に近い状態になることで、硬質地盤11からの地震力を減衰させる免震層となるため、地震力がそのまま地表12aの構造物17等に伝達されない。
【0025】
また、
地震振動の経過と共に液状化に近い状態となった底側及び両側の各シェイクゲル地盤層15,16は、シェイクゲル機能によりゲル化されて変形を抑える強度を持った地盤層となるため、地表の構造物17等の沈下や傾斜等の被害を簡単かつより確実に防止することができる。
【0026】
さらに、時間経過により、底側及び両側の各シェイクゲル地盤層15,16は元の性状(免震効果のある軟弱地盤のような免震層)に戻るため、再度、地震がきてもその機能を発揮することができる。
【0027】
また、従来、軟弱地盤12の液状化対策工事と構造物17の免震化工事が必要であったが、軟弱地盤12の液状化対策の深度を浅することができるため、その分コストダウンと構造物17の免震化工事が不要になる。
【0028】
さらに、シェイクゲル機能を持った底側及び両側の各シェイクゲル地盤層15,16は、その機能によりメンテナンスとか調整の必要が無いため、維持管理が容易である。
【0029】
尚、前記実施形態によれば、
図4(a)と
図5に示すように、地盤改良と違う施工法で底側のシェイクゲル地盤層15を造成した後で、この底側のシェイクゲル地盤層15上に改良地盤層14を造成したが、
図4(b)に示すように、地盤改良と同じ施工法で底側のシェイクゲル地盤層15と改良地盤層14を同時に造成しても良い。この場合、地盤改良工事とシェイクゲル地盤層を造成する免震地盤工事を同時(一緒)に行うことで、工期、コストの大幅な削減が可能となる。
【0030】
また、前記実施形態によれば、四角環状の遮水壁13内の軟弱地盤12の地表12aから所定の深さHの間で且つ四角環状の遮水壁13から所定間隔離れた位置に地盤改良した改良地盤層14を形成したが、例えば、せん断波が伝わりにくいベントナイト泥水壁、或いは、流動体を詰めた袋体等により四角環状の遮水壁13との間に非改良層を残すことなく軟弱地盤12の地表12aから所定の深さHの間を地盤改良して改良地盤層14を形成しても良い。この場合、両側のシェイクゲル地盤層16を形成する必要はなく、改良地盤層14と硬質地盤11との間
の軟弱地盤にシェイクゲル機能を持たせた底側のシェイクゲル地盤層15のみを隙間なく積層形成する。
【0031】
さらに、前記実施形態によれば、遮水壁13を四角環状に形成したが、円環状等の各種形状でも良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
10 免震構造
11 硬質地盤(支持地盤)
12 軟弱地盤
12a 地表
13 四角環状の遮水壁(環状の遮水壁)
14 改良地盤層
15 底側のシェイクゲル地盤層(シェイクゲル地盤層)
16 両側のシェイクゲル地盤層
17 構造物
H 所定の深さ