(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガスコンロは、調理されている内容物の温度を直接検出することができないため、温度制御を行う場合、調理容器の温度から内容物の温度を推測する方法を採用せざるを得ない。例えば、内容物が所定温度に達したタイミングで火力を弱めたい場合、調理容器が所定の上限温度(内容物が所定温度まで上昇したと推測される温度)になった場合に火力を弱める方法を用いれば、内容物の過剰な温度上昇を抑制することができる。或いは、内容物が所定温度に達したタイミングで火力を強めたい場合、調理容器が所定の下限温度(内容物が所定温度まで下降したと推測される温度)になった場合に火力を弱める方法を用いれば、内容物の温度が低下しすぎることを抑えることができる。
【0005】
しかしながら、調理容器の温度から内容物の温度を推測する場合、調理容器の温度と内容物の温度との関係が調理容器の材質によって変わり得るという問題がある。例えば、調理容器の材質が熱伝導率の大きい材質である場合、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が良く、調理容器の温度と内容物の温度との差は小さくなる。逆に、調理容器の材質が熱伝導率の小さい材質である場合、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が悪く、調理容器の温度と内容物の温度との差は大きくなる。このように、調理容器の温度と内容物の温度との関係は調理容器の材質によって変わるため、調理容器の温度から内容物の正確な温度を推測することは難しい。このため、単に調理容器の温度から内容物の温度を推測して火力を切り替えるだけでは、本来切り替えるべきタイミングからずれが生じやすい。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、火力を切り替える温度を調理容器の材質に合わせて設定することが可能なガスコンロを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガスコンロは、
燃焼ガスを燃焼させて調理容器を加熱するガスバーナと、
前記調理容器の温度を検出する容器温度検出部と、
前記ガスバーナの制御モードを、少なくとも所定の調理モードに設定するモード設定部と、
前記モード設定部によって前記所定の調理モードに設定されている場合、前記ガスバーナが所定の第1火力状態のときに前記容器温度検出部による検出温度が予め決められた第1温度に達した場合には、前記ガスバーナを前記第1火力状態よりも火力を抑えた第2火力状態に切り替え、前記第2火力状態に切り替えられた後、前記容器温度検出部による検出温度が予め決められた第2温度に達した場合には、前記ガスバーナを前記第1火力状態に切り替えるように、前記第1火力状態と前記第2火力状態との切替制御を行う制御部と、
前記ガスバーナによって前記調理容器を加熱している状態での前記容器温度検出部による温度検出結果に基づき、前記調理容器において
前記調理容器内の内容物が沸騰している平衡状態が生じているときの平衡温度を検出する平衡温度検出部と、
前記平衡温度検出部によって検出された前記平衡温度が第1閾値及び第2閾値以上である場合には、前記平衡温度が大きくなるほど前記所定の調理モードで用いる前記第1温度及び前記第2温度を大きくするとともに前記第1温度の増加度合いよりも前記第2温度の増加度合いを小さくすることで前記第1温度と前記第2温度との差を大きくし、前記平衡温度が前記第1閾値未満である場合には前記第1温度を前記第1閾値よりも小さい第1固定値とし、前記平衡温度が前記第2閾値未満である場合には前記第2温度を前記第1固定値よりも小さい第2固定値とする決定方法で、前記第1温度及び前記第2温度を決定する切替温度決定部と、
を有する。
【0010】
調理容器において
平衡状態が生じているときの平衡温度が相対的に大きくなる場合とは、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が相対的に悪く、調理容器の温度と内容物の温度との差が大きくなる場合である。このような場合、内容物の温度が平衡状態になってから調理容器の温度が平衡状態になるまでに時間がかかるため、第1温度を低く設定してしまうと、内容物の温度が十分に高まっていない状態で火力が弱められてしまう事態が生じやすくなる。逆に、平衡温度が相対的に小さくなる場合とは、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が相対的に良く、調理容器の温度と内容物の温度との差が小さくなる場合である。このような場合、内容物の温度が平衡状態になってから調理容器の温度が平衡状態になるまでに時間が短いため、第1温度を高く設定してしまうと、内容物の温度が十分に高まっているのに火力が切り替えられずに長い時間強い火力で維持される事態が生じやすくなる。これに対し、
本発明では、平衡温度が大きくなる場合ほど第1温度が大きく設定されるため、内容物の温度がより高められてから第2火力状態に切り替えられることになる。よって、内容物の温度が十分に高まっていない状態で火力が弱められる事態が生じにくくなる。逆に、平衡温度が小さくなる場合ほど第1温度が小さく設定されるため、内容物の温度が十分に高まっているのに火力が切り替えられずに長い時間強い火力で維持される事態が生じにくくなる。
【0013】
調理容器において所定の平衡状態が生じているときの平衡温度が相対的に大きくなる場合とは、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が相対的に悪く、調理容器の温度と内容物の温度との差が大きくなる場合である。このような場合、第2温度が低すぎると、検出温度が第2温度に達した時点で内容物の温度が低くなりすぎる事態が生じやすくなり、加熱が不足した状態で温度維持がなされるやすくなる。逆に、平衡温度が相対的に小さくなる場合とは、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が相対的に良く、調理容器の温度と内容物の温度との差が小さくなる場合である。このような場合、第2温度を高く設定してしまうと、内容物の温度が十分に低下していない状態で強い火力に切り替えられる事態が生じやすく、加熱が過剰な状態で温度維持がなされやすくなる。これに対し、
本発明では、平衡温度が大きくなる場合ほど第2温度が大きく設定されるため、内容物の温度が低くなりすぎる前に第1火力状態に切り替えやすくなる。よって、加熱が不足した状態で温度維持がなされる事態を回避しやすくなる。逆に、平衡温度が小さくなる場合ほど第2温度が小さく設定されるため、内容物の温度を適度に低下させてから第1火力状態に切り替えやすくなる。よって、加熱が過剰な状態で温度維持がなされる事態を回避しやすくなる。
【0014】
本発明において、切替温度決定部は、平衡温度検出部によって検出された平衡温度が大きくなるほど第1温度と第2温度との差が大きくなるように第1温度と第2温度との関係を定める構成であってもよい。
【0015】
平衡温度が相対的に小さくなる場合、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が相対的に良いため、このような場合に第1温度と第2温度との差を小さくすれば、内容物の温度を狭い温度幅に収めるような精度の高い温度制御が可能となる。
【0016】
逆に、平衡温度が相対的に大きく、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が相対的に悪い場合、内容物の温度はばらつきやすいため、第1温度と第2温度との差を小さくして狭い温度幅で制御してしまうと、内容物の温度が目標とする温度範囲からずれやすくなる。例えば、調理容器の温度が第2温度に達していても内容物の温度がそれほど低下していない事態も生じやすく、内容物の温度が高い状態のまま強い火力に切り替えられてしまう場合もあり得る。これに対し、平衡温度が相対的に大きくなる場合に第1温度と第2温度との差を大きくすれば、追従性が悪い場合の特性(内容物の温度のばらつき)に対応しやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施例1>
以下、本発明の一例を具現化したガスコンロ1について、図面に基づいて説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。以下に記載されている装置の構造などは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0019】
図1に示すように、ガスコンロ1の天面にはトッププレート2が設けられている。トッププレート2の左右両側には開口部が形成され、右側の開口部の内側にはガスバーナ5が設けられ、左側の開口部の内側にはガスバーナ6が設けられている。それぞれの開口部の各上部には五徳11,12が各々設けられている。五徳11,12の各上部には調理鍋(図示略)等が各々載置される。ガスバーナ5の中心にはセンサ部15が設けられ、ガスバーナ6の中心にはセンサ部16が設けられている。
【0020】
センサ部15,16は上下方向に出退可能であり且つバネ(図示略)により上方に付勢されている。センサ部15,16は五徳11,12に調理鍋が載置された際に下方向へ押し下げられる。センサ部15は、
図2で示すサーミスタ7及び鍋載置センサ53等を備える。センサ部16は、
図2で示すサーミスタ8及び鍋載置センサ54等を備える。サーミスタ7,8は、五徳11,12上に載置された調理鍋の鍋底に当接することにより鍋底温度を検出する。なお、調理鍋内の被調理物の温度は直接検出できない。それ故、ガスコンロ1は鍋底温度を検出することにより調理鍋内の被調理物の温度を推定する。鍋載置センサ53,54は、マイクロスイッチ(図示略)等を備える。マイクロスイッチは鍋底によって押し下げられることによりオンする。このような性質を利用することにより、ガスコンロ1は、五徳11,12上に調理鍋が載置されているか否かを識別可能である。
【0021】
図2に示すように、ガスコンロ1の前面には、グリル扉17、点火スイッチ21〜23、火力調節レバー25〜27等が各々設けられている。トッププレート2の後方には、グリル排気口(図示略)が設けられている。グリル排気口はグリル庫内の排気を行う為の開口であり、グリル排気口には複数の排気孔13Aを備えた排気孔カバー13が設けられている。
【0022】
点火スイッチ21はグリル扉17の左隣りに設けられている。点火スイッチ21はガスバーナ6の点火操作を行う。点火スイッチ22はグリル扉17の右隣りに設けられている。点火スイッチ22はガスバーナ5の点火操作を行う。点火スイッチ23はガスコンロ1前面の右端側に設けられている。点火スイッチ23はグリルバーナの点火操作を行う。火力調節レバー25は点火スイッチ21の上側に設けられている。火力調節レバー25はガスバーナ6の火力調整を行う。火力調節レバー26は点火スイッチ22の上側に設けられている。火力調節レバー26はガスバーナ5の火力調整を行う。火力調節レバー27は点火スイッチ23の上側に設けられている。火力調節レバー27はグリルバーナの火力調整を行う。
【0023】
図2のように、ガスバーナ5、ガスバーナ6及びグリルバーナには、イグナイタ35〜37が各々設けられている。イグナイタ35〜37は点火スイッチ21〜23の点火操作に夫々連動して火花を放電させて各種バーナに点火する機器である。ガスコンロ1は、第1ガス供給管10(
図3参照)、第2ガス供給管(図示略)及び第3ガス供給管(図示略)を備える。第1ガス供給管10はガスバーナ6にガスを供給する為の管である。第2ガス供給管はガスバーナ5にガスを供給する為の管である。第3ガス供給管はグリルバーナにガスを供給する為の管である。
【0024】
図2を参照して、ガスコンロ1の電気的構成について説明する。ガスコンロ1は制御回路70を備える。制御回路70は、CPU71、ROM72、RAM73、フラッシュメモリ74に加え、図示しないタイマ、グリルタイマ、I/Oインタフェイス等を備える。タイマ、グリルタイマはプログラムで作動するものである。CPU71はガスコンロ1の各種動作を統括制御する。ROM72はガスコンロ1の各種制御プログラムに加え、「煮もの調理プログラム」を記憶する。煮もの調理プログラムは、後述する煮もの調理処理(
図4参照)を実行する為のものである。
【0025】
制御回路70には、電源回路41、スイッチ入力回路42、サーミスタ入力回路43、操作パネル入力回路44、イグナイタ回路45、安全弁回路46、電磁弁回路47、センサ入力回路48、ブザー回路49、音声合成回路50等が各々接続されている。電源回路41は電池ボックスに搭載される2つの乾電池からの電力供給を受け、各種回路に印加する直流電源を生成する機能を有する。スイッチ入力回路42は、点火スイッチ21〜23、及びモード選択スイッチ81の押下を各々検出する。操作パネル入力回路44は操作パネル30における各種操作の入力を行う。イグナイタ回路45は各種バーナのイグナイタ35〜37を各々駆動する。安全弁回路46は各安全弁38〜40の開閉を行う。電磁弁回路47は各電磁弁61,64の開閉を行う。センサ入力回路48には、鍋載置センサ53,54が各々接続されている。センサ入力回路48は鍋載置センサ53,54の各検出信号の入力を行う。ブザー回路49には圧電ブザー55が接続されている。ブザー回路49は圧電ブザー55を駆動する。音声合成回路50はスピーカ56から出力させる音声ガイドの音声を合成する。
【0026】
図3を参照して、ガスバーナ6の火力調節について説明する。第1ガス供給管10はバイパス管85を備える。バイパス管85のガスが流れる上流側の一端部は、第1ガス供給管10の分岐部33に接続され、他端部は、第1ガス供給管10の合流部34に接続されている。安全弁38は、第1ガス供給管10の分岐部33の手前に設けられている。
【0027】
電磁弁61は第1ガス供給管10の分岐部33と合流部34の間に設けられている。電磁弁61はガス流量調整用キープソレノイドバルブである。このようなガスバーナ6では、電磁弁61を開閉することによって、ガスバーナ6に流れるガス流量を、第1流量、第2流量の二段階で調節できる。第1流量は弱火力に相当し、第2流量は強火力に相当する。これにより、ガスバーナ6について、火力調節レバー25(
図1参照)を最大に調節したときの火力を、弱火力と強火力の二段階で制御できる。
【0028】
また、ガスバーナ5用の第2ガス供給管においても、第1ガス供給管10と同様に、バイパス管(図示略)、安全弁39(
図2参照)、電磁弁64(
図2参照)が各々設けられている。それ故、ガスバーナ5でも、ガス流量の調整に関わる電磁弁64を開閉することによって、ガスバーナ5に流れるガス流量を二段階で調節できる。グリルバーナ用の第3ガス供給管には安全弁40等が設けられている。
【0029】
次に、ガスコンロ1の加熱調理モードについて説明する。ガスコンロ1では、ガスバーナ6において複数種類の加熱調理モードが設定可能である。複数種類の加熱調理モードの中には、少なくとも「通常モード」と「煮もの調理モード」とが含まれる。「煮もの調理モード」は、
図4等で示す後述の温度制御がなされるモードであり、「通常モード」はこのような温度制御がなされないモードである。
【0030】
「煮もの調理モード」は、例えば、モード選択スイッチ81に対して所定の操作がなされたときに実行されるモードであり、煮もののように、調理容器内の温度を、水の沸騰温度付近の所定範囲で維持することが望まれる調理に適したモードである。
【0031】
ここで、
図4等を参照し、煮もの調理モードでの調理処理について説明する。なお、ここでは便宜的に煮もの調理モードと称しているが、同趣旨のモードであれば、煮ものに限られず、モードの名称は別の名称でもよい。また、以下では、ガスバーナ6において煮もの調理モードでの調理処理が行われる例を示すが、ガスバーナ5で同様の処理が行われてもよい。
【0032】
図4で示すように、ガスコンロ1は、いずれのバーナも点火していない状態では、S0のブロックで示す「正常停止状態」となる。
【0033】
S0のブロックで示す「正常停止状態」のときに点火スイッチ21が操作されると、状態は、S1のブロックで示す「湯量判定状態」となる。このとき、所定の湯量判定処理がなされ、ガスバーナ6の火力は、例えば、強火力(第1火力状態)となる。なお、この「湯量判定状態」のときの火力は各種制御によって異なり、特に強火力に限定されるわけではない。また、「湯量判定状態」のときには、
図1で示す煮ものLED90を消灯状態とする。煮ものLED90は、煮もの調理モードに設定されているか否かを示す表示部である。
【0034】
S1のブロックで示す「湯量判定状態」において、モード選択スイッチ81に対して所定の操作がなされることで調理モードは「煮もの調理モード」となる。このような「煮もの調理モード」となった場合、煮ものLED90を点灯状態とする。そして、S1の「湯量判定状態」のときに「煮もの調理モード」に設定され且つサーミスタ8が示す検出温度Thが、1気圧での水の沸騰温度よりも大きい第1閾値温度未満であり、1気圧での水の沸騰温度よりも小さく且つ後述する第2固定値よりも大きい第2閾値温度以上である場合、計測時間T1のカウントをスタートし、S2のブロックで示す「沸騰待機状態」に移行する。なお、第1閾値温度は、例えば130℃とすることができ、第2閾値温度は、例えば98℃とすることができる。この場合、130℃>Th≧98℃となっている場合には、計測時間T1のカウントをスタートし、S2のブロックで示す「沸騰待機状態」に遷移することになる。この「沸騰待機状態」では、
図1で示す煮ものLED90を点灯状態とする。「沸騰待機状態」のときのガスバーナ6の火力は、強火力(第1火力状態)であり、このときには、
図3で示す電磁弁61は開放状態となる。計測時間T1は、風等の外乱により沸騰検知ができない場合に備えたタイマである。
【0035】
「煮もの調理モード」は、「所定の調理モード」の一例に相当し、制御回路70は、ガスバーナ6の制御モードを、少なくとも所定の調理モードに設定するモード設定部の一例に相当する。また、サーミスタ8は、調理容器の温度を検出する容器温度検出部の一例に相当する。
【0036】
S2のブロックで示す「沸騰待機状態」のときに、「沸騰検知がなされたこと」「計測時間T1が第1閾値時間(例えば300秒)に達したこと」「サーミスタ8での検出温度Thが制限温度(例えば140℃)に達したこと」のいずれかの条件が満たされた場合、圧電ブザー55から所定音を発するとともに計測時間T2をスタートし、S3のブロックで示す「煮込み(弱火)状態」に移行する。S3の「煮込み(弱火)状態」では、ガスバーナ6の火力が弱火力(第2火力状態)であり、このときには、
図3で示す電磁弁61は閉鎖状態となる。計測時間T2は、火力が頻繁に切り替わることを防ぐためのタイマである。
【0037】
本構成では、制御回路70が制御部の一例に相当し、モード設定部によって所定の調理モード(煮もの調理モード)に設定されている場合、ガスバーナ6が所定の第1火力状態のときにサーミスタ8(容器温度検出部)による検出温度が予め決められた上限温度Thaに達した場合には、ガスバーナ6を第1火力状態よりも火力を抑えた第2火力状態に切り替え、第2火力状態に切り替えられた後、サーミスタ8(容器温度検出部)による検出温度が予め決められた下限温度Thbに達した場合には、ガスバーナ6を第1火力状態に切り替えるように、第1火力状態と第2火力状態との切替制御を行う。上限温度Thaは、第1温度の一例に相当する。上限温度Thbは、第2温度の一例に相当する。
【0038】
また、制御回路は、平衡温度検出部の一例に相当し、ガスバーナ6によって調理容器を加熱している状態でのサーミスタ8(容器温度検出部)による温度検出結果に基づき、調理容器において所定の平衡状態が生じているときの平衡温度を検出する。この「所定の平衡状態」は、例えば調理容器内の内容物が沸騰している状態であり、本構成では、サーミスタ8で検出される温度が、所定の「沸騰検知判定時間」以上にわたって一定温度差(例えば5℃)以内に収まっている状態を「所定の平衡状態」としている。なお、「沸騰検知判定時間」は、固定時間であってもよく、条件に応じて変化させてもよい。また、「所定の平衡状態」のときの温度は、例えばRAM73やフラッシュメモリ74に記憶しておく。具体的には、「サーミスタ8で検出される温度が、所定時間(沸騰検知判定時間)以上にわたって一定温度差(例えば5℃)以内に収まっている」という条件が成立した時点のサーミスタ8の検出温度)ThcをRAM73などに記憶しておく。
【0039】
S3のブロックで示す「煮込み(弱火)状態」のときに、サーミスタ8での検出温度Thが下限温度(第2温度)Thb以下になり、且つ計測時間T2が第2閾値時間(例えば15秒)に達した場合には、S4のブロックで示す「煮込み(強火)状態」に移行する。この「煮込み(強火)状態」では、ガスバーナ6の火力が強火力(第1火力状態)であり、このときには、
図3で示す電磁弁61は開放状態となる。また、S3からS4のブロックで示す「煮込み(強火)状態」に移行するタイミングで、計測時間T2のカウントを再スタートする。
【0040】
S4のブロックで示す「煮込み(強火)状態」のときに、サーミスタ8での検出温度Thが上限温度(第1温度)Tha以上になり、且つ計測時間T2が第2閾値時間(例えば15秒)に達した場合には、S3のブロックで示す「煮込み(弱火)状態」に移行する。また、S4からS3のブロックで示す「煮込み(弱火)状態」に移行するタイミングで、計測時間T2のカウントを再スタートする。
【0041】
このような制御が、煮もの調理モードでの基本的な制御である。
更に、本構成では、上述した上限温度(第1温度)Thaと、下限温度(第2温度)Thbとを変更可能としている。具体的には、制御回路70が、切替温度決定部の一例に相当し、上述した方式で検出された平衡温度(平衡温度検出部によって検出された平衡温度)が大きくなるほど煮もの調理モード(所定の調理モード)で用いる上限温度(第1温度)Thaを大きくする決定方法で上限温度Thaを決定している。
【0042】
具体的には、上述した沸騰検知時の温度Thc(「サーミスタ8で検出される温度が、所定時間(沸騰検知判定時間)以上にわたって一定温度差(例えば5℃)以内に収まっている」という条件が成立した時点のサーミスタ8の検出温度)が、Thc≧α(℃)の場合、上限温度(第1温度)Thaは、Tha=m×Thc+n(℃)とする。なお、m≧1であり、n<0である。αは、1気圧での水の沸騰温度よりも若干大きい温度であり、例えば、α=100−nとなる値である。なお、Thc<α(℃)の場合、上限温度Thaは、所定の第1固定値とする。この第1固定値は、αよりも小さい値である。
【0043】
以下では、代表例として、m=1、n=−3、α=103とする。この例では、Thc≧103(℃)の場合、上限温度(第1温度)Thaは、Tha=Thc−3(℃)となる。このように上限温度Thaが設定されていると、温度Thcが大きくなるほど上限温度Thaが大きくなり、且つ沸騰検知時の温度Thcの増加の度合いと上限温度Thaの増加の度合いとが同程度となる。例えば、沸騰検知時の温度Thcが1℃上がると上限温度Thaも同様に上昇し、1℃上げられることになる。なお、Thc<103(℃)の場合、上限温度Thaは、第1固定値(例えば100℃)となる。
【0044】
更に、切替温度決定部に相当する制御回路70は、平衡温度が大きくなるほど煮もの調理モード(所定の調理モード)で用いる下限温度Thbを大きくする決定方法で、下限温度を決定し、更には、平衡温度が大きくなるほど上限温度Thaと下限温度Thbとの差が大きくなるように上限温度Thaと下限温度Thbとの関係を定めている。
【0045】
具体的には、Thc≧β(℃)の場合、下限温度Thbは、(Thc−r)×q+s(℃)とする。なお、この式において、0<q<1、q<mである。また、r>sである。β及びrは、1気圧での水の沸騰温度よりも若干大きい温度である。sは、1気圧での水の沸騰温度よりも若干小さい温度である。なお、Thc<β(℃)の場合、下限温度Thbは、上述した第1固定値よりも小さい第2固定値とする。この第2固定値は、例えばr(℃)である。
【0046】
以下では、代表例として、q=3/4、β=r=103、s=97とする。この例では、Thc≧103℃の場合、Thb=(Thc−103)×3/4+97(℃)となる。このように下限温度Thbが設定されていると、上述した沸騰検知時の温度Thcが大きくなるほど下限温度Thbが大きくなるものの、沸騰検知時の温度Thcの増加の度合いよりも下限温度Thbの増加の度合いのほうが小さくなり、上限温度Thaの増加の度合いよりも下限温度Thbの増加の度合いのほうが小さくなる。例えば、沸騰検知時の温度Thcが1℃上がると下限温度Thaは、1℃未満の範囲で増加することになる。なお、Thc<103℃の場合、下限温度Thbは第2固定値(例えば97℃)となる。
【0047】
なお、
図4の状態遷移図では、S0のブロックからS1のブロックに移行する際に、上述したT1,T2,Tha,Thbなどのパラメータはすべてリセットされる。また、煮もの調理モード以外のモードでガスバーナ6が点火している状態のときに煮もの調理モードに設定された場合にも、S1のブロックに移行して
図4のような制御がなされる。この場合にも、S1のブロックに移行する際に、T1,T2,Tha,Thbなどのパラメータはすべてリセットされる。また、
図4の制御では、S2の沸騰待機状態、又はS4の煮込み(強火)状態のときにサーミスタS8での検出温度が所定の第3閾値(例えば70℃)を下回った場合、S1の湯量判定状態に移行するようになっている。このように第3閾値を下回ることでS1に戻る場合も、T1,T2,Tha,Thbなどのパラメータはすべてリセットされる。
【0048】
以上のように、本構成では、平衡温度が大きくなる場合ほど上限温度(第1温度)Thaが大きく設定されるため、平衡温度が大きい場合、S4のブロックでは、内容物の温度がより高められてからS3のブロックに移行し、第2火力状態に切り替えられることになる。よって、内容物の温度が十分に高まっていない状態で火力が弱められる事態が生じにくくなる。逆に、平衡温度が小さくなる場合ほど上限温度Thaが小さく設定されるため、内容物の温度が十分に高まっているのに火力が切り替えられずにS4の状態が維持されてしまい、長い時間強い火力で維持されるといった事態が生じにくくなる。
【0049】
また、本構成では、平衡温度が大きくなる場合ほど下限温度(第2温度)Thbが大きく設定されるため、平衡温度が大きい場合、S3のブロックで内容物の温度が低くなりすぎる前にS4のブロックに移行し、第1火力状態に切り替えやすくなる。よって、加熱が不足した状態で温度維持がなされる事態を回避しやすくなる。逆に、平衡温度が小さくなる場合ほど下限温度Thbが小さく設定されるため、平衡温度が小さい場合、S3のブロックで内容物の温度を適度に低下させてからS4のブロックに移行し、第1火力状態に切り替えやすくなる。よって、加熱が過剰な状態で温度維持がなされる事態を回避しやすくなる。
【0050】
また、平衡温度が相対的に小さくなる場合(即ち、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が相対的に良い場合)に、上限温度Thaと下限温度Thbとの差を小さくすることができ、内容物の温度を狭い温度幅に収めるような精度の高い温度制御が可能となる。
【0051】
逆に、平衡温度が相対的に大きく、内容物の温度に対する調理容器の温度の追従性が相対的に悪い場合、内容物の温度はばらつきやすいため、上限温度Thaと下限温度Thbとの差を小さくして狭い温度幅で制御してしまうと、内容物の温度が目標とする温度範囲からずれやすくなる。例えば、調理容器の温度が下限温度に達していても内容物の温度がそれほど低下していない事態も生じやすく、内容物の温度が高い状態のまま強い火力に切り替えられてしまう場合もあり得る。これに対し、本構成のように、平衡温度が相対的に大きくなる場合に上限温度Thaと下限温度Thbとの差を大きくすれば、追従性が悪い場合の特性(内容物の温度のばらつき)に対応しやすくなる。
【0052】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)
図1に示すガスコンロ1はテーブルコンロであるが、ビルトインコンロ等であってもよい。
(2)実施例1では、上限温度Thaも下限温度Thbも平衡温度に応じた温度に設定する例を示したが、いずれか一方の温度のみを平衡温度に合わせて設定し、他方の温度を固定温度にしてもよい。
(3)
図4の処理では、S1〜S4のブロックにおいて、保護動作を行うための制限温度を設けることができる。例えば、S1のブロックでは、サーミスタ8の検出温度が270℃に到達した場合に、ガスバーナ6を消火するように保護動作を行ってもよい。また、S2〜S4のブロックでは、サーミスタ8の検出温度が170℃に到達した場合に、ガスバーナ6を消火するように保護動作を行ってもよい。
(4)実施例1では、第1温度を上限温度Thaとし、第2温度を下限温度Thbとしたが、第1温度は、火力を抑える切替タイミングとなる温度であればよく、第2温度は、火力を増大させる切替タイミングとなる温度であればよい。例えば、第1温度は、オーバーシュートを想定した温度であってもよく、この場合、検出温度が第1温度に達したタイミングで強火力から弱火力に切り替えられれば、オーバーシュートによって検出温度が第1温度を超えてもよい。同様に、第2温度は、ダウンシュートを想定した温度であってもよく、この場合、検出温度が第2温度に達したタイミングで弱火力から強火力に切り替えられれば、ダウンシュートによって検出温度が第2温度未満になってもよい。