特許第6572041号(P6572041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6572041-回転慣性質量ダンパ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572041
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】回転慣性質量ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20190826BHJP
   F16F 7/10 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   F16F15/02 C
   F16F7/10
   F16F15/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-146564(P2015-146564)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-26074(P2017-26074A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】304039065
【氏名又は名称】カヤバ システム マシナリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真成
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲平
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 睦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 大介
(72)【発明者】
【氏名】山本 和史
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−132135(JP,A)
【文献】 特開2013−245723(JP,A)
【文献】 特開2014−031822(JP,A)
【文献】 特開2000−320607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子軸を有するロッドと、
前記螺子軸に螺合されるボールナットと、
前記ロッドの外周に配置されるとともに前記ボールナットの回転運動が伝達される回転錘と、
前記ボールナットを回転自在に保持するとともに前記回転錘に対して反ロッド側に配置される保持筒と、
前記ボールナットと前記回転錘との間に設けた摩擦板と、
前記回転錘の前記ロッド側に配置されて前記回転錘を前記摩擦板側へ押圧する押圧部材と、
前記押圧部材より前記ロッド側に配置されて前記押圧部材の押圧力を調整する調整部とを備え、
前記押圧部材は、ばね部材と、前記ばね部材を保持する押圧部とを有し、
前記調整部は、前記保持筒に連結されて前記回転錘を覆うカバーの反保持筒側端部に設けたキャップに螺着される調整ボルトである
ことを特徴とする回転慣性質量ダンパ。
【請求項2】
前記ロッドの端部にボールジョイントを備え、
前記ボールジョイントは、
前記ロッド端に設けた球と、
前記球に回転自在に保持するブラケットと、
前記ブラケットに対する前記ロッド周りの回転を阻止する回り止めを有する
ことを特徴とする請求項に記載の回転慣性質量ダンパ。
【請求項3】
前記保持筒の内周に回転自在に収容されるとともに前記ボールナットに連結されるナットホルダを有し、
前記ボールナットは、前記ナットホルダに連結される取付フランジを反ロッド側端に有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の回転慣性質量ダンパ。
【請求項4】
前記ボールナットは、前記回転錘内に配置される
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の回転慣性質量ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転慣性質量ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転慣性質量ダンパとしては、たとえば、螺子軸を有するロッドと、螺子軸に螺合されるボールナットと、ボールナットをホルダおよびボールベアリングを介して回転自在に保持する外筒と、外筒とボールナットとの間に収容される回転錘と、ボールナットのフランジと回転錘との間に介装される摩擦板と、回転錘を摩擦板へ向けて押圧するばねとを備えて構成されている。
【0003】
このように構成された回転慣性質量ダンパにあっては、ロッドに軸方向の振動が入力されて螺子軸が軸方向へ移動すると、ボールナットが回転するので、回転錘に回転方向の加速度が作用し、回転錘の慣性反力によってロッドの移動を抑制する反力を発揮する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−167549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の回転慣性質量ダンパは、建築物、機械や車両等といった制振対象の振動を抑制すべく、制振対象の相対運動を呈する部材間にロッドと外筒とを取り付けて使用される。よって、外筒は、制振対象における部材に対して回転慣性質量ダンパが発揮する反力を伝達する役割を担っており、外筒には反力に等しい力が軸方向に作用する。
【0006】
それゆえ、前記反力の作用にも耐えうるよう外筒の肉厚を厚くし、外筒の強度を確保している。他方、外筒は、回転錘、ボールナット、ボールベアリングおよびホルダを収容して外部からこれら部品を保護するカバーとしても機能しているので、全長が長く、重量も非常に重いものとなっている。
【0007】
また、大きな反力を得るためには、回転錘の重量も大きくする必要があって、回転慣性質量ダンパの重心が反ロッド側端に近いところに位置するため、回転慣性質量ダンパにおける重量バランスが悪いという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、軽量でかつ良好な重量バランスを持つ回転慣性質量ダンパの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するため、本発明の回転慣性質量ダンパでは、両端がロッド端部と保持筒端部とされ、ボールナットを回転自在に保持する保持筒が回転錘に対して反ロッド側に配置されており、保持筒は回転錘を覆う必要がなく、回転錘を覆うカバーを反力を伝達する強度部材とする必要がない。よって、保持筒は回転錘の外周を覆う必要がないので全長が短くて済み、保持筒と回転錘が径方向で重ならず、回転慣性質量ダンパの一端側に重量が偏らない。
【0010】
また、回転慣性質量ダンパでは、ボールナットと回転錘との間に設けた摩擦板側へ回転錘を押圧する押圧部材を回転錘のロッド側に配置し、さらに、押圧部材よりロッド側に押圧部材の押圧力を調整する調整部を設けている。このように、押圧部材と調整部をロッド側に設けると、調整部にロッド側からアクセスでき、調整部を操作する工具を操作するスペースが確保される。したがって、回転慣性質量ダンパを被制振対象から取り外さずに押圧部材の押圧力を調整できる。
【0011】
さらに、回転慣性質量ダンパでは、押圧部材がばね部材とばね部材を保持する押圧部とを有し、調整部が保持筒に連結されて回転錘を覆うカバーの反保持筒側端部に設けたキャップに螺着される調整ボルトとされているので、回転慣性質量ダンパを被制振対象から取り外さずに押圧部材の押圧力を調整できる。
【0012】
請求項の回転慣性質量ダンパでは、ボールジョイントにロッドの回り止めを設けている。ここで、ロッドの回り止めを別途設けると、回転錘およびボールナットを避ける位置で、ロッドがストロークしてもこれらに干渉しないように配慮する必要があり、全長が長くなってしまう。これに対して、請求項の回転慣性質量ダンパではボールジョイントにロッドの回り止めを設けているので、全長を短縮化できる。
【0013】
また、請求項の回転慣性質量ダンパでは、保持筒の内周に回転自在に収容されるとともにボールナットに連結されるナットホルダを有し、ボールナットがナットホルダに連結される取付フランジを反ロッド側端に有している。よって、螺子軸からボールナットに作用する応力分布が全長に亘って均一化され、耐荷重の点で有利となり、より軽量なボールナットの利用が可能となる。
【0014】
さらに、請求項の回転慣性質量ダンパでは、ボールナットが回転錘内に配置されているので、ボールナットと回転錘が径方向に重なる位置に配置され、回転慣性質量ダンパの全長をより一層短くできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転慣性質量ダンパを軽量にでき、かつ、回転慣性質量ダンパの重量バランスを良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施の形態における回転慣性質量ダンパの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における回転慣性質量ダンパDは、図1に示すように、螺子軸1aを有するロッド1と、螺子軸1aに螺合されるボールナット2と、ロッド1の外周に配置されるとともにボールナット2の回転運動が伝達される筒状の回転錘3と、ボールナット2を回転自在に保持するとともに回転錘3に対して反ロッド側に配置される保持筒4とを備えて構成されている。
【0018】
以下、回転慣性質量ダンパDの各部について説明する。保持筒4は、図1中左端が蓋5によって閉塞されており、図1中右端には、環状のスペーサ6が装着されている。また、スペーサ6の図1中右端には、筒状のカバー7が連結されており、カバー7の図1中右端は、環状のキャップ8が取り付けられている。そして、保持筒4、蓋5、スペーサ6、カバー7およびキャップ8によってアウターシェルOを形成しており、このアウターシェルOに回転慣性質量ダンパDにおける螺子軸1a、ボールナット2および回転錘3が収容されて保護されている。
【0019】
また、保持筒4には、回転慣性質量ダンパDの反力によって軸力が作用するが、カバー7にはこの軸力が作用しないため、保持筒4はカバー7よりも高い強度を備えるべく、肉厚がカバー7の肉厚よりも厚くなっている。
【0020】
保持筒4の内周にボールベアリング16が取り付けられており、このボールベアリング16の内周には、内側へのロッド1の挿通を許容する筒状のナットホルダ17が嵌合されている。ナットホルダ17は、ボールベアリング16を介して保持筒4に保持されているので、保持筒4内で軸周りに回転可能となっている。また、ナットホルダ17のロッド1側端である図1中右端には、フランジ17aが設けられている。
【0021】
ロッド1は、途中から先端へかけて外周に螺旋状の螺子溝を備えた螺子軸1aを備えており、螺子軸1a側をアウターシェルOの内方へ向けてアウターシェルO内に挿入されている。また、キャップ8の内周には、環状のロッドガイド9が設けられている。ロッドガイド9は、内周に挿入されるロッド1の螺子軸1aよりも図1中右端側となる基端の外周に摺接して、ロッド1の軸方向の移動を案内するようになっている。また、ロッド1の外周であって螺子軸1aよりも基端側には、ボールナット2に螺着する螺子軸1aがストローク以上に基端側へ移動しないよう規制するフランジ状のストッパ1bが設けられている。
【0022】
なお、ロッド1の基端には、ボールジョイント10が設けられている。ボールジョイント10は、ロッド1の基端に設けた球11と、球11を回転自在に保持するブラケット12とを備えている。ブラケット12は、ロッド1の挿通を許容する孔13aを備えて球11を内方に収容する筒部13と、筒部13の図1中右端を閉塞して球11の先端を抑えて筒部13とともに球11を保持するエンドキャップ14とを備えている。また、球11には、ロッド1の軸線に直交して球11の中心を通る垂線を中心にし、ロッド1の軸線方向に伸びる長孔11a,11aが設けられている。さらに、筒部13には、先端が前記長孔11a,11aにそれぞれ挿入されるボルト15,15が側部から貫通して螺着されている。球11に設けた長孔11a,11aとボルト15,15によって回り止めが構成されており、ロッド1の周方向への回転が阻止されている。よって、ボールジョイント10は、ロッド1の歳差運動を許容するがロッド1の周方向周りの回転を防止するようになっている。なお、ボールジョイント10に設ける回り止めであるが、前記構成に限られず、たとえば、筒部13に長孔11a,11a内に挿入されるピンを設けてもよいし、球11側にピンを設けて筒部13の内周にピンが挿入される長孔を設けてもよい。
【0023】
そして、被制振対象へボールジョイント10および蓋5を取り付ければ、回転慣性質量ダンパDを被制振対象へ設置できる。なお、蓋5にもボールジョイントやクレビス等の継手を設けて、被制振対象に連結するようにしてもよい。
【0024】
ボールナット2は、ロッド1の螺子軸1aに螺合されている。ボールナット2は、筒状であって、内周に螺子軸1aの螺子溝を走行する複数のボールを備えており、ロッド1の軸方向の移動により軸周りに回転運動を呈するようになっている。また、ボールナット2の図1中左端には、取付フランジ2aが設けられており、取付フランジ2aをナットホルダ17のフランジ17aにボルト18により締結して、ボールナット2がナットホルダ17に連結される。
【0025】
よって、ボールナット2は、ナットホルダ17を介して保持筒4に取り付けられており、ナットホルダ17とともに保持筒4に対して軸周りに回転可能となっている。つまり、ボールナット2は、保持筒4に回転自在に保持されている。
【0026】
このように、ボールナット2の取付フランジ2aは図1中左端側となる反ロッド側に向けて設置されている。ロッド1の軸方向の移動によりボールナット2は軸周りに回転し、ロッド1の軸方向の往復運動がボールナット2の回転運動に変換されるが、その際にロッド1およびボールナット2は、ともに軸方向の荷重を受ける。この荷重によって、ロッド1の螺子軸1aおよびボールナット2は軸方向に伸縮する。ロッド1が図1中左方へ移動すると、ボールナット2は、ロッド1から圧縮方向の荷重を受けるが、螺子軸1aも圧縮荷重によって縮むために、ボールナット2の図1中右端側へ向かうほど大きな応力が生じる。また、ボールナット2は、ロッド1の図1中左方への移動による圧縮荷重を取付フランジ2aで受け止めて縮むが、このボールナット2の収縮に起因してボールナット2に作用する応力は、取付フランジ2a側へ向かうほど大きくなる。このように、ロッド1の収縮によってボールナット2に作用する応力は、図1中右端側のほうが大きく、保持筒4からの反力によってボールナット2に作用する応力は、図1中左端側のほうが大きくなる。これに対して、ボールナット2の取付フランジ2aを図1中右端側となるロッド側に向けて設置すると、ロッド1が図1中左方へ移動する際に、螺子軸1aおよびボールナット2の収縮によりボールナット2に作用する応力は図1中右端側のほうが大きくなる。よって、取付フランジ2aをロッド側に向けてボールナット2を設置する場合より、取付フランジ2aを反ロッド側に向けてボールナット2を設置する場合のほうが、ボールナット2に作用する最大応力が小さくなるとともに応力分布が均一化される。本例の回転慣性質量ダンパDでは、取付フランジ2aを反ロッド側に向けてボールナット2を設置しているので、ボールナット2に作用する応力分布が全長に亘って均一化され、耐荷重の点で有利となり、より軽量なボールナット2の利用が可能となる。
【0027】
回転錘3は、肉厚の円筒状とされており、カバー7とボールナット2との間に収容されている。回転錘3の図1中左右端の内周には、ボールベアリング19,20が装着されている。ボールベアリング19の内周には、ボールナット2の取付フランジ2aに螺子締結された環状のカラー21が嵌合され、ボールベアリング20の内周には、キャップ8に連結された支持筒22が嵌合されている。よって、回転錘3は、アウターシェルOによって、回転自在に保持されており、カバー7内で軸周りに回転可能となっている。
【0028】
カラー21は、ボールベアリング19に嵌合される筒部21aと、筒部21aの反ロッド側の外周に設けられて取付フランジ2aに螺子締結されるフランジ21bを備えている。そして、筒部21aの外周であってフランジ21bと回転錘3の図1中左端との間には、嵌板状の摩擦板23が介装されている。
【0029】
また、支持筒22の外周には、回転錘3を摩擦板23へ向けて、つまり、図1中左方へ回転錘3を押圧する押圧部材24が装着されている。押圧部材24は、ばね部材25と、支持筒22の外周に摺接するとともにばね部材25を保持する押圧部26とを備えている。ばね部材25は、複数枚の皿ばねを積層して構成されているが、コイルばね等の他、弾性体を利用できる。押圧部26は、支持筒22の外周に摺動自在に装着された内筒26aと、内筒26aの外周に設けた外筒26bと、内筒26aと外筒26bの回転錘3側端を閉塞するともにボールベアリング20に当接する環状の底部26cとを備えている。そして、ばね部材25は、図1中左端が底部26cに接して、内筒26aと外筒26bとの間に収容されて押圧部26に保持されている。また、ばね部材25の図1中右端は、支持筒22の外周に摺動自在に装着される環状プレート27に接しており、押圧部26の底部26cと環状プレート27とで圧縮されながら挟持されて、押圧部26をボールベアリング20へ向けて押圧している。ばね部材25の押圧力は、ボールベアリング20を介して回転錘3に伝達され、ばね部材25は、回転錘3を摩擦板23へ向けて押圧している。押圧部材24の構成は、前述した構成に限定されるものではない。このように、回転錘3が摩擦板23に押しつけられ、さらに、摩擦板23は、ボールナット2に連結されるカラー21に押しつけられている。そして、ボールナット2がロッド1の軸方向の移動により回転運動を呈すると、摩擦板23と回転錘3およびカラー21の間ですべりが生じない場合には、ボールナット2とともに回転錘3も周方向へ回転する。他方、ボールナット2がロッド1の軸方向の移動により回転運動を呈しても、摩擦板23と回転錘3およびカラー21の間ですべりが生じる場合、回転錘3は回転しないかあるいはボールナット2よりも遅い回転速度で回転するようになる。
【0030】
また、環状プレート27は、キャップ8に螺着される調整ボルト28の先端に当接されている。調整ボルト28のキャップ8に対する回転操作によって調整ボルト28が送り螺子の要領でキャップ8に対して図1中左右方向となる軸方向へ移動できる。そして、調整ボルト28をキャップ8に対して進退させると、環状プレート27の軸方向位置を調整でき、これにより、ばね部材25の圧縮量を調整できる。よって、本例では、調整ボルト28が押圧部材24の押圧力を調整する調整部を構成している。なお、調整部の構成は、これに限られないが、キャップ8に設けると、押圧部材24の押圧力の調整が回転慣性質量ダンパDの外部から容易に行える。また、調整部をアウターシェルOのロッド側端であるキャップ8に設けると、ロッド1側から調整部にアクセスでき、しかも、キャップ8とボールジョイント10との間に調整部を操作する工具を操作するスペースが確保される。したがって、調整部をアウターシェルOのロッド側端であるキャップ8に設けると、回転慣性質量ダンパDを被制振対象から取り外さずに押圧部材24の押圧力を調整できる。よって、調整ボルト28で押圧部材24の押圧力を調整すると、回転錘3が滑りだしてボールナット2の回転に追従しなくなる際に、ロッド1に作用している荷重(スリップ荷重)を調整できる。このスリップ荷重は、押圧部材24の押圧力が大きくなればなるほど、大きくなる。
【0031】
このように構成された回転慣性質量ダンパDは、ロッド1が図1中軸方向へ移動すると、ロッド1がボールジョイント10によって回り止めされているので、螺子軸1aに螺合されているボールナット2が回転運動を呈する。このボールナット2の回転運動が摩擦板23を介して回転錘3に伝達されて、回転錘3もボールナット2とともに軸周りに回転運動を呈する。ロッド1の軸方向の移動によって回転錘3の回転速度を変化させる加速度が入力されると、回転慣性質量ダンパDは、回転錘3の慣性力により、ロッド1の移動を妨げる反力を発生する。ロッド1に外力によって過剰な加速度が作用すると、ボールナット2に対して回転錘3が摩擦板23によって滑りだして、ロッド1に過剰な荷重が作用するのを回避できる。
【0032】
そして、回転慣性質量ダンパDにて生じる反力は、ロッド1に連結される被制振対象についてはロッド1を介して伝達されるとともに、保持筒4に連結される被制振対象についてはボールナット2を保持する保持筒4を介して被制振対象に伝達される。
【0033】
本発明の回転慣性質量ダンパDでは、ボールナット2を回転自在に保持する保持筒4が回転錘3に対して反ロッド側に配置されているので、回転錘3を覆う必要もなく、回転錘3を覆うカバー7については、反力を伝達する強度部材とする必要がない。よって、保持筒4は、回転錘3の外周を覆う必要がなく全長が短くて済むので、回転慣性質量ダンパDを軽量化できる。さらに、重量物である保持筒4は、同じく重量物である回転錘3よりも反ロッド側に配置されるので、保持筒4と回転錘3が径方向に重ならず、回転慣性質量ダンパDの一端側に重量が偏らず、良好な重量バランスを実現できる。よって、回転慣性質量ダンパDの被制振対象への設置作業も容易となる。
【0034】
また、本例では、ボールナット2と回転錘3との間に設けた摩擦板23側へ回転錘3を押圧する押圧部材24を回転錘3のロッド1側に配置し、さらに、押圧部材24よりロッド1側に押圧部材24の押圧力を調整する調整ボルト28(調整部)を設けている。このように、押圧部材24と調整部をロッド1側に設けると、調整部にロッド1側からアクセスでき、調整部を操作する工具を操作するスペースが確保される。したがって、回転慣性質量ダンパDを被制振対象から取り外さずに押圧部材24の押圧力を調整できる。
【0035】
なお、本例では、ボールジョイント10にロッド1の回り止めを設けている。ここで、ロッド1の回り止めを別途設けると、回転錘3およびボールナット2を避ける位置で、ロッド1がストロークしてもこれらに干渉しないように配慮する必要があり、ロッド1の全長およびアウターシェルOの全長が長くなる。よって、ボールジョイント10にロッド1の回り止めを設けている本例の回転慣性質量ダンパDでは全長を短縮化できる。
【0036】
また、本例の回転慣性質量ダンパDでは、保持筒4の内周に回転自在に収容されるとともにボールナット2に連結されるナットホルダ17を有し、ボールナット2が反ロッド側端にナットホルダ17に連結される取付フランジ2aを有している。よって、螺子軸1aからボールナット2に作用する応力分布が全長に亘って均一化され、耐荷重の点で有利となり、より軽量なボールナット2の利用が可能となる。
【0037】
さらに、本例の回転慣性質量ダンパDでは、ボールナット2が回転錘3内に配置されているので、ボールナット2と回転錘3が径方向に重なる位置に配置されて、回転慣性質量ダンパDの全長をより一層短くできる。
【0038】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
【符号の説明】
【0039】
1・・・ロッド、1a・・・螺子軸、2・・・ボールナット、2a・・・取付フランジ、3・・・回転錘、4・・・保持筒、10・・・ボールジョイント、11・・・球、12・・・ブラケット、17・・・ナットホルダ、23・・・摩擦板、24・・・押圧部材、25・・・ばね部材、26・・・押圧部、28・・・調整ボルト(調整部)、D・・・回転慣性質量ダン
図1