(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いられる(A)動物由来タンパク質としては、例えば、乳タンパク質、卵タンパク質、動物性肉類タンパク質、コラーゲン、ゼラチン等の動物性タンパク質が挙げられる。
乳タンパク質としては、カゼイン、ホエータンパク質等が挙げられる。
卵タンパク質としては、卵黄タンパク質、卵白タンパク質等が挙げられる。
動物性肉類タンパク質としては、例えば、牛、豚、馬、羊、ウサギ等の畜肉や獣肉、鶏、七面鳥等の家禽肉、鮪等の魚肉等に由来するタンパク質が挙げられる。
また、動物由来ペプチドとしては、前記動物由来タンパク質の加水分解物や酵素分解物、発酵による生成物、それらから精製或いは単離されたペプチドが挙げられる。
なかでも、胃の中での泡の持続性が良好である点、乳タンパク質、卵タンパク質が好ましく、乳タンパク質が好ましい。
タンパク質及びペプチドの分子量は特に限定されない。
【0011】
タンパク質は、公知の方法を採用して、例えば卵や乳等から抽出することにより得ることが可能であり、抽出条件も適宜設定することできる。市販品を用いることもできる。
【0012】
(A)動物由来タンパク質及び/又はぺプチドは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の固形状組成物中、(A)動物由来タンパク質及び/又はぺプチドの含有量は、胃の中での泡の持続性が良好である点から、4〜60%であるのが好ましく、更に10〜50質量%であるのが好ましい。
本明細書において、タンパク質及び/又はぺプチドの含有量は、タンパク質とぺプチドのうち一方のみを含む場合はその一方の量であり、両方を含む場合はその合計量である。また、タンパク質及び/又はぺプチドの含有量は、後掲の実施例に記載の方法にしたがって測定できるN換算タンパク質量とする。
【0013】
本発明の固形状組成物は、発泡成分として(B)炭酸塩と(C)有機酸を含有する。
本発明で用いられる(B)炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。
なかでも、胃の中での泡の持続性が良好である点、食感が良好である点から、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましく、炭酸水素ナトリウムが更に好ましい。
【0014】
(B)炭酸塩は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の固形状組成物中、(B)炭酸塩の含有量は、胃の中で生じる泡の量が多い点、苦味を少なくするという点から、5〜30%である。固形状組成物中の(B)炭酸塩の含有量は、同様の点から、更に10〜25%、更に10〜20%であるのが好ましい。
【0015】
本発明で用いられる(C)有機酸としては、可食性の酸を使用することができる。例えば、クエン酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸等の有機酸が挙げられる。
なかでも、口腔中で雑味を感じず適度な酸味がたつ点から、クエン酸又はリンゴ酸が好ましく、更にクエン酸が好ましい。
【0016】
(C)有機酸は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の固形状組成物中、(C)有機酸の含有量は、胃の中で生じる泡の量が多い点、適度な酸味が感じられる点から、5〜30%である。固形状組成物中の(C)有機酸の含有量は、同様の点から、更に10〜27%、更に10〜20%であるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の固形状組成物中、(B)炭酸塩と(C)有機酸の合計含有量は、胃の中で生じる泡の量が多い点、苦味を少なくするという点から、10〜60%、更に15〜50%、更に20〜40%が好ましい。
【0018】
本発明の固形状組成物において、成分(C)と成分(B)の当量比[(C)の当量/(B)の当量]は、風味のバランスの点から、0.4〜4である。
本明細書において、当該「当量比」とは、固形状組成物に含まれる(C)有機酸の当量を(B)炭酸塩の当量で除した値である。
成分(C)と成分(B)の当量比[(C)の当量/(B)の当量]は、風味のバランスの点から、0.4〜4、更に0.9〜2が好ましい。
【0019】
本発明において、固形状組成物中の(B)炭酸塩の含有量に対する、固形状組成物中の(A)動物由来タンパク質及び/又はぺプチドの含有量の比(含有質量比)[(A)/(B)]は、胃の中での泡の持続性が良好である点から、0.4〜7であるが、更に0.9〜5、更に1〜4、更に2〜4であるのが好ましい。
【0020】
本発明の固形状組成物は、脂質の含有量が3.5%以下である。組成物における脂質の割合を少なくすることで、胃の中で発泡させ、且つ生じた泡を安定に保つことができる。
固形状組成物中の脂質の含有量は、胃の中での泡の持続性が良好である点から、2%以下、更に0.01〜0.5%であるのが好ましい。
【0021】
本発明の固形状組成物には、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、ミネラル(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、クロム、セレン、マンガン、モリブデン、銅、ヨウ素、リン、カリウム、ナトリウム)、ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、葉酸及びそれらの塩、又はそれらのエステル)、甘味料(例えば、フルクトース、グルコース、ガラクトース、キシロース等の単糖;ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルツロース、カップリングシュガー等の少糖;糖アルコール、サッカリン、スクラロース、アセスルファムカリウム等の合成甘味料)、界面活性剤、成分(A)以外のタンパク及び/又はペプチド、成分(C)以外の酸味料、香料、着色料、保存料等が適宜配合されていてもよい。
【0022】
本発明の固形状組成物の形態としては、室温(15〜25℃)で固形状のものであれば特に限定されない。尚、固形状とは、粉末、固形、顆粒等の固体状態のものを意味する。例えば、カプセル剤、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、トローチ剤等が挙げられる。なかでも、摂取が簡便な点、食品として摂取する点から、発泡錠である錠剤、発泡顆粒である顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤が好ましく、口腔内での滞留時間の短さから、錠剤、顆粒、散剤が更に好ましい。
このような剤型の組成物を調製するには、必要に応じて許容される担体を配合することができる。例えば、賦形剤(例えば、デンプン類、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、リン酸水素カルシウム等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、メチルセルロース、硬化油等)、崩壊剤(例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化ケイ素等)、増量剤、分散剤、緩衝剤、希釈剤等の担体が挙げられる。
【0023】
本発明の固形状組成物は、特に制限はなく常法に従い製造される。例えば、散剤を製造する場合、(A)動物由来タンパク質及び/又はぺプチド、(B)炭酸塩、(C)有機酸及び必要に応じて添加される添加剤を混合し、そのまま用いてもよいし、混合物を粉砕して用いてもよい。散剤は、18号(850μm)ふるいを全量通過することが好ましく、300号(500μm)ふるいに残留するものが全量の5%以下であることがより好ましい。
顆粒剤は、(A)動物由来タンパク質及び/又はぺプチド、(B)炭酸塩、(C)有機酸及び必要に応じて添加される添加剤を混合し、その混合物を乾式造粒法、湿式造粒法等を用いて造粒することにより得ることができる。造粒法としては、例えば、押し出し造粒法、破砕造粒法、転動造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法等が挙げられる。造粒物の平均粒子径は、45μm〜850μmとするのが好ましく、100μm〜500μmとするのが更に好ましい。
錠剤を製造する場合は、原料粉末を直接圧縮して成形しても、前記乾式造粒法、湿式造粒法等を用いて造粒してから、造粒物を打錠成形機で圧縮して成形しても良い。圧縮成形方法は、特に限定されず、ロータリー打錠機、油圧プレス機、単発打錠機等を用いることができる。
【0024】
本発明の固形状組成物は、口内の唾液又は水の存在下で炭酸ガスを発生するものである。とりわけ、経口摂取後、胃内の水分と反応して発泡し、且つ生じた泡が長時間胃の中で安定に持続するよう設計するものである。そのため、本発明の固形状組成物は、腹部(胃部)膨満感、満腹感を与え、食物の摂取量をコントロールする製品等として好適である。
尚、胃液のpHは、状況によりその酸性度は変化するものの、一般的にpH1.0〜2.0である。
【0025】
本発明の固形状組成物は、後述する実施例に記載の胃液モデルを用いた泡安定性の評価による30分後の泡量の実測量(mL)が5mL以上、更に6mL以上であることが好ましい。
また、本発明の固形状組成物は、後述する実施例に記載の胃液モデルを用いた泡安定性の評価による30分後の相対泡量(%)が20%以上であることが好ましく、更に30%以上、更に35%以上であることが好ましい。この値が大きいほうが、胃の中での泡の持続性に優れると判断できる。
【実施例】
【0026】
[タンパク質の分析]
タンパク質の質量は燃焼法より定量した窒素量に窒素−たんぱく質換算係数を乗じて算出した。窒素−たんぱく質換算係数は、乳:6.38、卵白:6.25、大豆:5.71である。窒素量の算出に用いた窒素-たんぱく質換算係数は、文部科学省五訂増補日本食品標準成分表、第1章2)収載成分項目等の表7に基づくものであり、記載のないものは上記以外の食品の換算係数を用いた。
【0027】
[脂質の分析]
脂質の質量は、基準油脂分析試験法−2003年版(日本油化学会制定) II基準試験法 1油脂原料及び脱脂物 1.5 油分に基づき、ソックスレー法で求めた。
【0028】
[炭酸塩の分析]
固形状組成物中の炭酸塩の含有量の分析方法は以下の通りである。
固形状組成物を0.1〜0.2g採取し、水10mLと50%りん酸2mLを加え密栓した。10分間超音波処理を行った後、1時間放置しヘッドスペースガスをガスクロマトグラフに供してCO
2量を求め、発生したCO
2量から算出した。
<ガスクロマトグラフ操作条件>
機種:GC−14B[島津製作所]
検出器:TCD
カラム:Chromosorb101,80〜100mesh
ガラス管,φ3.2mm×2m
温度:カラム50℃,注入口及び検出器100℃
セル電流75mA
ガス圧力:ヘリウム(キャリヤーガス)100kPa
注入量:ヘッドスペースガス0.2mL
【0029】
[有機酸の分析]
固形状組成物中の有機酸の含有量の分析方法は以下の通りである。
固形状組成物を1g採取し5%過塩素酸20mLを加え、10分間振とうすることで抽出した。これを水で200mLに定容し10分間超音波処理を行った。ろ過後高速液体クロマトグラフに供した。
<高速液体クロマトグラフ操作条件>
機種:LC−20AD[株式会社島津製作所]
検出器:紫外可視吸光光度計SPD−20AV[島津製作所]
カラム:Shim−pack SCR−102H 300×80(長さ×内径(mm))[島津製作所]
カラム温度:40℃
移動相:3mmоl/L過塩素酸
反応液:0.2mmоl/Lブロムチモールブルー含有
15mmоl/Lりん酸水素二ナトリウム溶液
流量:移動相1.0mL/min、反応液1.4mL/min
測定波長:445nm
【0030】
[原料]
タンパク質又はペプチドとして、表1に示す由来・組成の原料を用いた。
a−1:ラクトクリスタル 日本新薬(株)
a−2:スーパーラクトNo.1 太陽化学(株)
a−3:LE80GF-US 日本新薬(株)
a−4:サンラクトN-12 太陽化学(株)
a−5:エンラクトYYY 日本新薬(株)
a−6:サンキララ21 太陽化学(株)
a−7:サンキララRS 太陽化学(株)
a−8:MPC80 日本新薬(株)
a−9:SUPRO 1500IP The Solae Company
a−10:乳タンパク(炭水化物:11.3%、脂質:25.1%、タンパク質:54.1%、水分:4.9%、灰分:4.6%)
【0031】
【表1】
【0032】
また、次の原料を用いた。
炭酸水素ナトリウム:重曹(食添C)、東ソー
クエン酸:無水クエン酸MS、扶桑化学工業(株)
リンゴ酸:フソウS、扶桑化学工業(株)
ステアリン酸カルシウム:オーラブライトCA−65、日油(株)
マルチトール:アマルティMR−50、三菱商事フードテック(株)
【0033】
試験例1〜
7、9及び10(
なお、試験例6及び7は参考例である。)
〔固
形状組成物の調製〕
表2に記載の配合組成で各原料成分を混合し、粉末状の組成物を得た。成分(A)のカッコ内はタンパク質の由来を示す。各組成物におけるタンパク質量、脂質量、成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の比(含有質量比)、成分(B)と成分(C)の合計量、及び成分(C)と成分(B)の当量比は表2のとおりであった。
【0034】
〔泡安定性の評価〕
上記で得た本発明品と比較品について胃液モデルでの泡安定性を次のとおり評価した。
(1)1g当たりの理論泡量の定義と算出
固形状組成物中の炭酸塩と有機酸の反応により生成する二酸化炭素のモル数は、炭酸塩の質量を炭酸塩の1グラム当量で除した値と、有機酸の質量を有機酸の1グラム当量で除した値のうち最も小さな値(Mi)となる。一方、1モルの理想気体の体積は、標準状態(0℃、1bar)下で22.7リットルである。そこで、本明細書においては、前記Miに22.7リットルを乗じた値を、固形状組成物1g当たりの理論泡量(mL)とした。
【0035】
(2)胃液モデル液
胃液モデル液として、第16版改正日本薬局方に準拠した崩壊試験第1液(pH1.2)を用いた(関東化学(株))。
【0036】
(3)相対泡量の定義と算出
上記胃液モデル液に投じた固形状組成物1gから生じる実際の泡量(実測量)(mL)を固形状組成物1g当たりの理論泡量(mL)で除し、百分率で示した値を相対泡量(%)とした。
相対泡量(%)=〔実測量(mL)〕/〔1g当たりの理論泡量(mL)〕×100
実測量(mL)は、50mLメスシリンダーにサンプル1gを入れ、上記胃液モデル液を2mL添加し、添加直後を0分とし、30分後の泡上部の目盛りを読み取った。
本発明品と比較品それぞれの30分後の泡の実測量(mL)及び相対泡量(%)を表2に示す。
【0037】
〔官能評価〕
上記で得た本発明品と比較品について3名の専門パネルによる官能評価を行なった。評価は、サンプルを食べた時に感じる酸味と苦味のバランスについて、下記に示す判断基準に従って行い、協議により評点を決定した。結果を表2に示す。
(酸味と苦味のバランス)
5:苦味が強い
4:苦味がやや強い
3:酸味と苦味のバランスが良い
2:酸味がやや強い
1:酸味が強い
【0038】
【表2】
【0039】
試験例11〜23
〔固体状組成物の調製〕
表3に記載の配合組成で各原料成分を混合し、粉末状の組成物を得た。成分(A)のカッコ内はタンパク質の由来を示す。各組成物におけるタンパク質量、脂質量、成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の比(含有質量比)、成分(B)と成分(C)の合計量、及び成分(C)と成分(B)の当量比は表3のとおりであった。試験例23は表4に示す。
【0040】
試験例24
〔固体状組成物の調製〕
表4に記載の配合組成で原料成分を混合した。次に単発式打錠機(RIKEN社製)を用いて、素錠を得た。
【0041】
〔泡安定性の評価〕
上記で得た本発明品と比較品について泡安定性を同様に評価した。それぞれの30分後の実測量(mL)及び相対泡量(%)を表3及び表4に示す。
【0042】
〔官能評価〕
上記で得た本発明品と比較品について、サンプルを食べた時に感じる酸味と苦味のバランスを同様に評価した。結果を表3及び表4に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
表2〜表4より明らかなように、動物由来のタンパク質を配合した本発明品は、植物由来のタンパク質を配合した比較品や脂質の割合が多い比較品と比べて、30分後の実測量(mL)及び相対泡量(%)が高く、胃の中で発泡し、且つ生じた泡が消えることなく長時間安定に持続することが確認された。
また、本発明品は、適度な酸味を有しつつも、苦味の少ない良好な風味であった。