特許第6572057号(P6572057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572057
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20190826BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20190826BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
   H02J3/38 130
   H02J7/35 K
   H02J9/06 120
   H02J3/38 110
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-158910(P2015-158910)
(22)【出願日】2015年8月11日
(65)【公開番号】特開2017-38483(P2017-38483A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
【審査官】 永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−061429(JP,A)
【文献】 特開2005−295707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−7/12
7/34−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源からの電力を、前記商用電源と所定の回路により接続された負荷へ供給可能な分電盤と、
前記商用電源からの電力を充放電可能な第一の蓄電装置、及び前記第一の蓄電装置からの電力を変換する第一のパワーコンディショナーを含み、前記商用電源と連系して前記分電盤へ電力を供給する連系運転と、前記商用電源から独立して前記分電盤へ電力を供給する自立運転とを行う第一のユニットと、
前記第一のユニットの出力側に配置され、前記第一のユニットが前記自立運転時に出力した電力の電圧を昇圧する第一のトランスと、
前記第一のトランスの出力側に配置され、前記商用電源又は前記第一のユニットのいずれか一方を前記回路を介して前記分電盤に接続することによって、前記分電盤への電力の供給元を前記商用電源又は前記第一のユニットに切り替え可能な切替盤と、
前記回路において前記切替盤よりも下流側に接続され、発電能力を有する発電装置、前記発電装置からの電力を充放電可能な第二の蓄電装置、並びに前記発電装置及び前記第二の蓄電装置からの電力を変換する第二のパワーコンディショナーを含み、前記切替盤よりも前記負荷側に配置されて前記分電盤へ電力を供給する第二のユニットと、
を具備し、
前記第一のユニットは、
停電が発生すると前記自立運転を行い、
前記切替盤は、
前記第一のユニットが前記自立運転を行っている間、前記第一のユニットを前記回路を介して前記分電盤に接続することによって、前記電力の供給元を前記第一のユニットに切り替え、前記第一のユニットからの電力を前記第一のトランスを介して前記回路に供給可能とし、
前記第二のユニットは、
前記第一のユニットが前記自立運転を行っている間、前記発電装置からの電力を前記回路において上流側へ流通させることを禁止することにより、前記発電装置からの電力が前記第一のトランスを流通しない、
電力供給システム。
【請求項2】
前記第二のユニットは、
前記切替盤が前記電力の供給元を前記第一のユニットに切り替える前に、前記発電装置で発電した電力を上流側へ流通させることを禁止する、
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記第一のユニットは、
復電すると前記連系運転を行い、
前記切替盤は、
前記第一のユニットが前記連系運転を行っている間、前記電力の供給元を前記商用電源に切り替え、
前記第二のユニットは、
前記切替盤が前記電力の供給元を前記商用電源に切り替えた後で、前記発電装置からの電力を上流側へ流通させることを許可する、
請求項1又は請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記第二のパワーコンディショナーは、
前記第一のパワーコンディショナーと接続され、前記第一のパワーコンディショナーから送信される信号に基づいて、前記発電装置からの電力を上流側へ流通させることを禁止する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記第二のユニットは、
前記商用電源と前記負荷とを結ぶ電路に複数配置される、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記第二のユニットは、
前記商用電源側から電力が供給されていない場合に、前記商用電源から独立して前記分電盤へ電力を供給する自立運転を行い、
前記電力供給システムは、
前記第二のユニットの出力側に配置され、前記第二のユニットが前記自立運転時に出力した電力の電圧を昇圧する第二のトランスをさらに具備する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置や蓄電装置を含む複数のユニットと発電装置や蓄電装置からの電力の電圧を昇圧可能なトランスとを具備する電力供給システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電装置や蓄電装置を含む複数のユニットと発電装置や蓄電装置からの電力の電圧を昇圧可能なトランスとを具備する電力供給システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の電力供給システム(太陽光発電システム)は、発電装置(太陽光発電設備)と蓄電装置とトランス(配電変圧器)とを有する複数のユニットを具備する。発電装置及び蓄電装置は、トランスを介して配電線と接続される。このような電力供給システムにおいては、停電時に発電装置及び蓄電装置からの電力をトランスを介して配電線へ供給することで、停電時に全ての負荷へ電力を供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−10536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、停電時に発電装置及び蓄電装置からの電力をトランスを介して配電線へ供給する場合、下流側(負荷側)のユニットが電力を逆潮流させたときに、当該電力が上流側(商用電源側)に配置されるトランスへ供給されてしまう。これにより、トランスに不具合が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題はトランスに不具合が生じることを防止できる電力供給システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、商用電源からの電力を、前記商用電源と所定の回路により接続された負荷へ供給可能な分電盤と、前記商用電源からの電力を充放電可能な第一の蓄電装置、及び前記第一の蓄電装置からの電力を変換する第一のパワーコンディショナーを含み、前記商用電源と連系して前記分電盤へ電力を供給する連系運転と、前記商用電源から独立して前記分電盤へ電力を供給する自立運転とを行う第一のユニットと、前記第一のユニットの出力側に配置され、前記第一のユニットが前記自立運転時に出力した電力の電圧を昇圧する第一のトランスと、前記第一のトランスの出力側に配置され、前記商用電源又は前記第一のユニットのいずれか一方を前記回路を介して前記分電盤に接続することによって、前記分電盤への電力の供給元を前記商用電源又は前記第一のユニットに切り替え可能な切替盤と、前記回路において前記切替盤よりも下流側に接続され、発電能力を有する発電装置、前記発電装置からの電力を充放電可能な第二の蓄電装置、並びに前記発電装置及び前記第二の蓄電装置からの電力を変換する第二のパワーコンディショナーを含み、前記切替盤よりも前記負荷側に配置されて前記分電盤へ電力を供給する第二のユニットと、を具備し、前記第一のユニットは、停電が発生すると前記自立運転を行い、前記切替盤は、前記第一のユニットが前記自立運転を行っている間、前記第一のユニットを前記回路を介して前記分電盤に接続することによって、前記電力の供給元を前記第一のユニットに切り替え、前記第一のユニットからの電力を前記第一のトランスを介して前記回路に供給可能とし、前記第二のユニットは、前記第一のユニットが前記自立運転を行っている間、前記発電装置からの電力を前記回路において上流側へ流通させることを禁止することにより、前記発電装置からの電力が前記第一のトランスを流通しないものである。
【0009】
前記第二のユニットは、前記切替盤が前記電力の供給元を前記第一のユニットに切り替える前に、前記発電装置で発電した電力を上流側へ流通させることを禁止することとしてもよい。
このような構成により、第一のトランスに不具合が生じることを防止できる。
【0010】
前記第一のユニットは、復電すると前記連系運転を行い、前記切替盤は、前記第一のユニットが前記連系運転を行っている間、前記電力の供給元を前記商用電源に切り替え、前記第二のユニットは、前記切替盤が前記電力の供給元を前記商用電源に切り替えた後で、前記発電装置からの電力を上流側へ流通させることを許可することとしてもよい。
このような構成により、復電時に第一のトランスに不具合が生じることを防止できる。
【0011】
前記第二のユニットのパワーコンディショナーは、前記第一のユニットのパワーコンディショナーと接続され、前記第一のユニットのパワーコンディショナーから送信される信号に基づいて、前記発電装置からの電力を上流側へ流通させることを禁止することとしてもよい。
このような構成により、第一のトランスに不具合が生じることを防止できる。
【0012】
前記第二のユニットは、前記商用電源と前記負荷とを結ぶ電路に複数配置されることとしてもよい。
このような構成により、停電時に安定して電力を供給することができる。
【0013】
前記第二のユニットは、前記商用電源側から電力が供給されていない場合に、前記商用電源から独立して前記分電盤へ電力を供給する自立運転を行い、前記電力供給システムは、前記第二のユニットの出力側に配置され、前記第二のユニットが前記自立運転時に出力した電力の電圧を昇圧する第二のトランスをさらに具備することとしてもよい。
このような構成により、停電時に長期間電力を供給することができる。
【発明の効果】
【0014】
トランスに不具合が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電力供給システムの構成を示したブロック図。
図2】停電が発生した状態を示したブロック図。
図3】停電中の一般回路への電力供給の状態を示したブロック図。
図4】復電した状態を示したブロック図。
図5】第二のトランスを示したブロック図。
図6】第一のユニットの蓄電装置の残量がなくなった状態を示したブロック図。
図7】第一のユニット及び上流側の第二のユニットの蓄電装置の残量がなくなった状態を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
【0017】
図1に示す電力供給システム1は、工場に設けられ、工場の負荷へ電力を供給するものである。電力供給システム1は、分電盤10、第一のユニット20、トランス30、切替盤40、第二のユニット50・60、第一のセンサ71、第二のセンサ72及び第三のセンサ73等を具備する。
【0018】
分電盤10は、負荷で使用される電力量に応じて電力の供給元から供給された電力を、当該負荷に分配するものである。分電盤10は、図示せぬ漏電遮断器や、配線遮断器、制御ユニット等により構成される。分電盤10内には、負荷へ電力を供給するための一般回路90が設けられる。分電盤10は、配電線L1を介して商用電源80と接続される。配電線L1の一端部は、商用電源80と接続される。配電線L1の他端部は、分岐して一般回路90と接続される。分電盤10には、商用電源80からの電力が適宜供給される。分電盤10は、非停電時に一般回路90を介して商用電源80からの電力を負荷へ供給する。
【0019】
第一のユニット20は、一般回路90(負荷)へ電力を供給するものである。第一のユニット20は、太陽光発電装置21、蓄電装置22及びパワコン23を具備する。
【0020】
太陽光発電装置21は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電装置21は、枠体に複数の太陽電池を取り付けること等によって構成される太陽電池パネル等を具備する。太陽光発電装置21は、前記太陽電池パネルの太陽電池に太陽光が当たることで発電する。このような太陽光発電装置21の設置場所としては、例えば、工場の屋根等の日当たりの良い場所がある。
【0021】
蓄電装置22は、太陽光発電装置21及び商用電源80からの電力を充放電可能に構成される装置である。蓄電装置22は、電力を充放電可能なリチウムイオン電池やニッケル水素電池等からなる蓄電池や、供給されてくる交流電力を整流して前記蓄電池に充電させる充電器等を具備する。このような蓄電装置22の設置場所としては、例えば、分電盤10の近傍等がある。
【0022】
パワコン23は、太陽光発電装置21及び蓄電装置22と接続されるハイブリッドパワーコンディショナーである。パワコン23は、太陽光発電装置21及び蓄電装置22よりも商用電源80側に配置され、異なる二つの配電線を介して太陽光発電装置21及び蓄電装置22とそれぞれ接続される。パワコン23は、太陽光発電装置21で発電された直流電力を所定の電圧に適宜変換するコンバーターや直流電力を交流電力に変換するインバーターや動作を制御するための制御部等を具備する。パワコン23は、太陽光発電装置21で発電された電力及び蓄電装置22から放電された電力を適宜変換して分電盤10へ供給可能であると共に、商用電源80からの電力を蓄電装置22へ供給(蓄電)可能に構成される。また、パワコン23は、太陽光発電装置21で発電した電力を売電可能(商用電源80に逆潮流可能)に構成される。
【0023】
このように構成されるパワコン23は、配電線L2を介して分電盤10と接続される。配電線L2の一端部は、パワコン23と接続される。配電線L2の他端部は、配電線L1の中途部(分電盤10内)と接続される。また、パワコン23は、配電線L3を介して、後述する切替盤40と接続される。配電線L3の一端部は、パワコン23と接続される。配電線L3の他端部は、切替盤40と接続される。
【0024】
このようなパワコン23は、連系運転及び自立運転を行うことができる。連系運転は、商用電源80と連系して太陽光発電装置21及び蓄電装置22を運転させるものである。自立運転は、商用電源80から独立して太陽光発電装置21及び蓄電装置22を運転させるものである。連系運転及び自立運転を行う場合の電力の供給態様については後で詳述する。
【0025】
トランス30は、第一のユニット20からの電力(自立運転時に出力される電力)の電圧を昇圧し、一般回路90(負荷)で使用可能にするためのものである。トランス30は、配電線L3の中途部に設けられる。
【0026】
切替盤40は、分電盤10への電力の供給元を第一のユニット20又は商用電源80に切り替えるものである。切替盤40は、配電線L1の中途部(分電盤10内における配電線L1・L2の接続部と一般回路90との間)に設けられる。切替盤40は、配電線L1・L2を介して、又は配電線L3を介して第一のユニット20と接続される。また、切替盤40は、配電線L1を介して商用電源80と接続される。
【0027】
切替盤40は、内部に設けられる複数のリレーを制御することで、配電線L1の切替盤40よりも下流側を、配電線L1の切替盤40よりも上流側又は配電線L3の何れかと接続するように(電力の供給元を)切り替えることができる。切替盤40は、配電線L1の切替盤40よりも上流側と下流側とを接続することで、電力の供給元を商用電源80(より詳細には、商用電源80及び連系運転を行っている第一のユニット20)に切り替える。また、切替盤40は、配電線L3と配電線L1の切替盤40よりも下流側とを接続することで、電力の供給元を第一のユニット20(より詳細には、自立運転を行っている第一のユニット20)に切り替える。
【0028】
このような切替盤40は、パワコン23と接続される。切替盤40には、パワコン23から運転状態に関する信号が送信される。切替盤40は、当該送信される信号に基づいて、電力の供給元を第一のユニット20又は商用電源80に切り替える。
【0029】
第二のユニット50・60は、一般回路90へ電力を供給するものである。第二のユニット50・60は、切替盤40と一般回路90との間に配置される。第二のユニット50は、第二のユニット60よりも切替盤40側に配置される。第二のユニット50・60は、太陽光発電装置51・61、蓄電装置52・62及びパワコン53・63を具備する。第二のユニット50・60の太陽光発電装置51・61、蓄電装置52・62及びパワコン53・63は、第一のユニット20の太陽光発電装置21、蓄電装置22及びパワコン23と同じように構成される。
【0030】
第二のユニット50のパワコン53は、配電線L4を介して分電盤10と接続される。配電線L4の一端部は、パワコン53と接続される。配電線L4の他端部は、配電線L1の中途部(分電盤10内における切替盤40と一般回路90との間)と接続される。
【0031】
第二のユニット60のパワコン63は、配電線L5を介して分電盤10と接続される。配電線L5の一端部は、パワコン63と接続される。配電線L5の他端部は、配電線L1の中途部(分電盤10内における配電線L1・L4の接続部と一般回路90との間)と接続される。
【0032】
このような第二のユニット50・60のパワコン53・63は、連系運転及び自立運転を行うことができる。連系運転及び自立運転を行う際の電力の供給態様については後で詳述する。
【0033】
また、第二のユニット50・60のパワコン53・63は、第一のユニット20のパワコン23と接続される。パワコン53・63には、パワコン23から逆潮流の許否に関する信号が送信される。パワコン53・63は、当該送信される信号に基づいて、太陽光発電装置51・61で発電した電力の逆潮流を許可したり、逆潮流を禁止したりすることができる。
【0034】
第一のセンサ71は、商用電源80からの電力(買電される電力)及び商用電源80へ逆潮流される電力(売電される電力)を検出するものである。第一のセンサ71は、配電線L1の中途部(分電盤10内)に設けられる。第一のセンサ71は、配電線L1・L2の接続部と商用電源80との間に配置される。第一のセンサ71の検出結果は、商用電源80からの電力を検出したときに0Wよりも大きな値(正の値)となる。また、第一のセンサ71の検出結果は、商用電源80へ逆潮流される電力を検出したときに0Wよりも小さな値(負の値)となる。第一のセンサ71は、第一のユニット20のパワコン23と接続される。第一のセンサ71は、その検出結果に関する信号をパワコン23に送信することができる。
【0035】
第二のセンサ72は、第一のユニット20及び商用電源80からの電力を検出するものである。第二のセンサ72は、配電線L1の中途部(分電盤10内)に設けられる。第二のセンサ72は、切替盤40と配電線L1・L4の接続部との間に配置される。第二のセンサ72は、第二のユニット50のパワコン53と接続される。第二のセンサ72は、その検出結果に関する信号をパワコン53に送信することができる。
【0036】
第三のセンサ73は、第一のユニット20、第二のユニット50及び商用電源80からの電力を検出するものである。第三のセンサ73は、配電線L1の中途部(分電盤10内)に設けられる。第三のセンサ73は、配電線L1・L4の接続部と配電線L1・L5の接続部との間に配置される。第三のセンサ73は、第二のユニット60のパワコン63と接続される。第三のセンサ73は、その検出結果に関する信号をパワコン63に送信することができる。
【0037】
次に、このように構成される電力供給システム1において、一般回路90(負荷)へ電力を供給する流れについて説明する。
【0038】
まず、図1を用いて、非停電時において一般回路90へ電力を供給する流れについて説明する。なお、図1に示す状態において、切替盤40は、電力の供給元を商用電源80に切り替えているものとする。
【0039】
非停電時において、分電盤10には、商用電源80からの電力が配電線L1を介して供給される。分電盤10へ供給される電力は、切替盤40を流通して一般回路90へ供給される。これにより、分電盤10は、商用電源80からの電力を負荷へ供給する。第一のセンサ71、第二のセンサ72及び第三のセンサ73は、このような商用電源80からの電力を検出し、当該検出結果に関する信号をパワコン23・53・63に送信する。
【0040】
パワコン23・53・63は、第一のセンサ71、第二のセンサ72及び第三のセンサ73から送信される信号に基づいて(検出結果0Wでない場合に)、停電が発生していないと判断する。パワコン23・53・63は、停電が発生していないと判断すると、連系運転を行う。
【0041】
第一のユニット20のパワコン23は、連系運転を行う場合に、太陽光発電装置21及び蓄電装置22からの電力を、配電線L2へ流通させる。これにより、パワコン23は、配電線L1・L2を介して一般回路90へ電力を供給する。
【0042】
また、第二のユニット50のパワコン53は、連系運転を行う場合に、太陽光発電装置51及び蓄電装置52からの電力を、配電線L4へ流通させる。また、第二のユニット60のパワコン63は、連系運転を行う場合に、太陽光発電装置61及び蓄電装置62からの電力を、配電線L5へ電力を流通させる。これにより、パワコン53・63は、配電線L1・L4及び配電線L1・L5を介して一般回路90へ電力を供給する。
【0043】
パワコン23・53・63は、連系運転を行う場合に、第一のセンサ71、第二のセンサ72及び第三のセンサ73の検出結果(商用電源80等から供給される電力の電力量)に基づいて、一般回路90へ供給する電力の電力量を調整する負荷追従運転を行う。この際、パワコン23・53・63は、第一のセンサ71、第二のセンサ72及び第三のセンサ73の検出結果が所定の値となるように、供給する電力量を調整する。
【0044】
また、パワコン23・53・63は、非停電時において、太陽光発電装置21・51・61で発電した電力を蓄電装置22・52・62に充電する。また、パワコン23・53・63は、太陽光発電装置21・51・61で発電した電力が余った場合に、当該余った電力を商用電源80へ逆潮流させる。また、パワコン23・53・63は、必要に応じて(太陽光発電装置21・51・61の発電量が少ない場合等に)、商用電源80からの電力を蓄電装置22・52・62に充電する。
【0045】
次に、図2及び図3を用いて、停電時において一般回路90へ電力を供給する流れについて説明する。なお、以下においては、図1に示す状態から停電が発生したものとする。
【0046】
停電が発生すると、図2に示す第一のセンサ71、第二のセンサ72及び第三のセンサ73の検出結果が0Wとなる。第一のセンサ71、第二のセンサ72及び第三のセンサ73は、当該検出結果に関する信号をパワコン23・53・63に送信する。
【0047】
パワコン23・53・63は、第一のセンサ71、第二のセンサ72及び第三のセンサ73から送信される信号に基づいて、停電が発生していると判断する。パワコン23・53・63は、停電が発生していると判断すると、連系運転から自立運転に切り替える(自立運転を行う)。
【0048】
第一のユニット20のパワコン23は、自立運転を行う場合に、配電線L3へ電力を流通させる。一方、第二のユニット50・60のパワコン53・63は、自立運転を行う場合に、自立運転コンセントから適宜電力を出力することができる。
【0049】
このような自立運転の切替には、数秒程度の時間を要する。第一のユニット20のパワコン23は、自立運転の切替が完了するまでの間に、第二のユニット50・60のパワコン53・63に逆潮流を禁止する信号を送信する。第二のユニット50・60のパワコン53・63は、パワコン23から送信される信号に基づいて、太陽光発電装置51・61で発電した電力を逆潮流させることを禁止する(逆潮流不能となるように出力される電力量を制御する)。
【0050】
また、第一のユニット20のパワコン23は、自立運転の切替が完了したとき(配電線L3から電力を流通可能となったとき)に、運転状態に関する信号を切替盤40に送信する。切替盤40は、パワコン23から送信される信号に基づいて、パワコン23が自立運転の切替が完了したことを検知する。そして、切替盤40は、電力の供給元を第一のユニット20に切り替える。
【0051】
これにより、第一のユニット20からの電力(自立運転時に出力される電力)は、配電線L3を流通するときにトランス30で昇圧されて切替盤40へ供給される。そして、切替盤40へ供給された電力は、配電線L1から一般回路90へ供給される。
【0052】
これによれば、電力供給システム1は、停電が発生した場合でも、停電時に全ての負荷へ電力を供給することができる。これにより、電力供給システム1は、運用性を向上することができる。
【0053】
第一のユニット20からの電力が配電線L3から配電線L1へ流通するようになると、第二のセンサ72及び第三のセンサ73の検出結果が0Wよりも大きな値となる。第二のセンサ72及び第三のセンサ73は、当該検出結果に関する信号を第二のユニット50・60のパワコン53・63に送信する。
【0054】
第二のユニット50・60のパワコン53・63は、第二のセンサ72及び第三のセンサ73から送信される信号に基づいて、復電したと判断する。パワコン53・63は、復電したと判断すると連系運転を再開する。これにより、図3に示すように、パワコン53・63は、配電線L1・L4及び配電線L1・L5を介して一般回路90へ電力を供給する。
【0055】
このように第二のユニット50・60のパワコン53・63が停電時に連系運転を行うことにより、電力供給システム1は、第一のユニット20及び第二のユニット50・60からの電力を、非停電時と同様に配電線L1を介して一般回路90へまとめて供給することができる。これによれば、停電時に使用される電力を第一のユニット20及び第二のユニット50・60で賄うことができるため、停電時に一般回路90へ長期間電力を供給することができる。
【0056】
また、電力供給システム1は、二つ(複数)の第二のユニット50・60を具備することによって、停電時に多くの電力を供給することができる。このため、電力供給システム1は、工場のような多くの電力を使用する建物に設けられた場合でも、停電時に安定して電力を供給することができる。
【0057】
また、パワコン23・53・63は、停電時に太陽光発電装置21・51・61で発電した電力だけで、一般回路90の電力を賄える場合に、蓄電装置22・52・62の放電を停止する。これによって、パワコン23・53・63は、停電時に蓄電装置22・52・62の残量を減り難くすることができる。
【0058】
また、パワコン23・53・63は、停電時に太陽光発電装置21・51・61で発電した電力が余った場合に、当該余った電力を蓄電装置22にも供給する。これによって、パワコン23・53・63は、停電時であっても蓄電装置22・52・62を充電することができる。
【0059】
前述の如く、第二のユニット50・60のパワコン53・63は、停電時(第一のユニット20のパワコン23の自立運転時)に太陽光発電装置51・61で発電した電力を逆潮流させることを禁止している(図2参照)。これによれば、パワコン53・63は、停電時に第二のユニット50・60の太陽光発電装置51・61で発電した電力が余った場合でも、当該余った電力が逆潮流してトランス30へ供給されることを防止できる。従って、パワコン53・63は、停電時にトランス30が故障する等の不具合が生じることを防止できる。
【0060】
また、第二のユニット50・60のパワコン53・63は、第一のユニット20のパワコン23の自立運転の切替が完了するまで(切替盤40が動作するまで)に、逆潮流を禁止している。これによれば、パワコン53・63は、配電線L3を電力が流通可能となる前に逆潮流を禁止することができる。このため、パワコン53・63は、太陽光発電装置51・61で発電した電力がトランス30へ供給されることを防止できる。
【0061】
次に、図4を用いて、復電時における電力供給システム1の動作について説明する。
【0062】
復電すると、分電盤10には、商用電源80からの電力が配電線L1を介して供給される。このため、第一のセンサ71の検出結果は、0Wよりも大きい値となる。第一のセンサ71は、当該検出結果に関する信号を第一のユニット20のパワコン23に送信する。
【0063】
第一のユニット20のパワコン23は、第一のセンサ71から送信される信号に基づいて、復電したと判断する。パワコン23は、復電したと判断すると、連系運転を再開する(自立運転から連系運転に切り替える)。一方、第二のユニット50・60のパワコン53・63は、既に(停電時に)復電したと判断しているため、復電しても運転の切替を行わない。すなわち、パワコン53・63は、連系運転を継続して行う。
【0064】
また、第一のユニット20のパワコン23は、連系運転を再開するときに(復電したと判断した直後や切替が完了した後で)、運転状態に関する信号を切替盤40に送信する。切替盤40は、パワコン23から送信される信号に基づいて、連系運転を再開したことを検知する。そして、切替盤40は、電力の供給元を商用電源80に切り替える。
【0065】
第一のユニット20のパワコン23は、切替盤40が電力の供給元を切り替えた後で、第二のユニット50・60のパワコン53・63に逆潮流を許可する信号を送信する。パワコン53・63は、パワコン23から送信される信号に基づいて、太陽光発電装置51・61で発電した電力を逆潮流させることを許可する(逆潮流可能となるように出力される電力量を制御する)。
【0066】
これによれば、パワコン53・63は、配電線L3を電力が流通不能となった後で逆潮流を許可することができる。このため、パワコン53・63は、復電時に太陽光発電装置51・61で発電した電力がトランス30へ供給されることを確実に防止できる。
【0067】
以上によって、復電時の動作が完了し、非停電時の運転に戻る。
【0068】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、商用電源80からの電力を負荷へ供給可能な分電盤10と、前記商用電源80からの電力を充放電可能な蓄電装置22(第一の蓄電装置)、及び前記蓄電装置22からの電力を変換するパワコン23(第一のパワーコンディショナー)を含み、前記商用電源80と連系して前記分電盤10へ電力を供給する連系運転と、前記商用電源80から独立して前記分電盤10へ電力を供給する自立運転とを行う第一のユニット20と、前記第一のユニット20の出力側に配置され、前記第一のユニット20が前記自立運転時に出力した電力の電圧を昇圧するトランス30(第一のトランス)と、前記トランス30の出力側に配置され、前記分電盤10への電力の供給元を前記商用電源80又は前記第一のユニット20に切り替える切替盤40と、発電能力を有する太陽光発電装置51・61(発電装置)、前記太陽光発電装置51・61からの電力を充放電可能な蓄電装置52・62(第二の蓄電装置)、並びに前記太陽光発電装置51・61及び前記蓄電装置52・62からの電力を変換するパワコン53・63(第二のパワーコンディショナー)を含み、前記切替盤40よりも前記負荷側に配置されて前記分電盤10へ電力を供給する第二のユニット50・60と、を具備し、前記第一のユニット20は、停電が発生すると前記自立運転を行い、前記切替盤40は、前記第一のユニット20が前記自立運転を行っている間、前記電力の供給元を前記第一のユニット20に切り替え、前記第二のユニット50・60は、前記第一のユニット20が前記自立運転を行っている間、前記太陽光発電装置51・61からの電力を逆潮流させることを禁止するものである。
【0069】
このように構成することにより、トランス30に不具合が生じることを防止できる。
【0070】
また、前記第二のユニット50・60は、前記切替盤40が前記電力の供給元を前記第一のユニット20に切り替える前に、前記太陽光発電装置51・61で発電した電力を逆潮流させることを禁止するものである。
【0071】
このように構成することにより、トランス30に不具合が生じることを防止できる。
【0072】
また、前記第一のユニット20は、復電すると前記連系運転を行い、前記切替盤40は、前記第一のユニット20が前記連系運転を行っている間、前記電力の供給元を前記商用電源80に切り替え、前記第二のユニット50・60は、前記切替盤40が前記電力の供給元を前記商用電源80に切り替えた後で、前記太陽光発電装置51・61からの電力を逆潮流させることを許可するものである。
【0073】
このように構成することにより、復電時にトランス30に不具合が生じることを防止できる。
【0074】
また、前記パワコン53・63は、前記パワコン23と接続され、前記パワコン23から送信される信号に基づいて、前記太陽光発電装置51・61からの電力を逆潮流させることを禁止するものである。
【0075】
このように構成することにより、トランス30に不具合が生じることを防止できる。
【0076】
また、前記第二のユニット50・60は、配電線L1(前記商用電源80と前記負荷とを結ぶ電路)に複数配置されるものである。
【0077】
このように構成することにより、停電時に安定して電力を供給することができる。
【0078】
なお、本実施形態に係る蓄電装置22は、第一の蓄電装置の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るパワコン23は、第一のパワーコンディショナーの実施の一形態である。
また、本実施形態に係るトランス30は、第一のトランスの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る太陽光発電装置51・61は、発電装置の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る蓄電装置52・62は、第二の蓄電装置の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るパワコン53・63は、第二のパワーコンディショナーの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る配電線L1は、商用電源と負荷とを結ぶ電路の実施の一形態である。
【0079】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0080】
例えば、電力供給システム1の適用対象は、工場に限定されるものでなく、事業所や集合住宅等であっても良い。
【0081】
また、第一のユニット20は、太陽光発電装置21を具備する(発電能力を有する)必要はない。
【0082】
また、第一のユニット20及び第二のユニット50・60は、太陽光発電装置21・51・61に替えて風力発電装置を具備していても良い。
【0083】
また、電力供給システム1が具備する第二のユニット50・60の個数は本実施形態に限定されるものでない。例えば、電力供給システム1は、一つの第二のユニットを具備していても、三つ以上の第二のユニットを具備していても良い。
【0084】
また、第二のユニット50・60のパワコン53・63は、停電時に自立運転を行わなくても良い。すなわち、パワコン53・63は、自立運転機能を有しないものであっても良い。
【0085】
また、第一のユニット20のパワコン23は、第一のセンサ71から送信される信号に基づいて、停電を検知するものとしたが、停電を検知するための手段はこれに限定されるものでない。例えば、パワコン23が、停電を検知可能な所定の制御装置から入力される信号に基づいて停電を検知しても良い。
【0086】
また、切替盤40は、停電の発生有無に応じて電力の供給元を切り替えても良い。この場合、切替盤40は、停電が発生したことを検知すると電力の供給元を第一のユニット20に切り替えると共に、復電を検知すると電力の供給元を商用電源80に切り替えることとしても良い。
【0087】
また、第二のユニット50・60のパワコン53・63は、第一のユニット20のパワコン23からの信号に基づいて逆潮流の許否を切り替えるもとしたが、逆潮流の許否を切り替えるための手段はこれに限定されるものでない。例えば、パワコン53・63は、第一のセンサ71の検出結果を監視することで停電及び復電を検知し、当該検知結果に基づいて逆潮流の許否を切り替えても良い。
【0088】
また、第二のユニット50・60のパワコン53・63は、自立運転時に分電盤10へ電力を供給するものであっても良い。この場合、図5に示すように、パワコン53・63は、配電線L6・L7を介しても、分電盤10と接続される。このような構成において、電力供給システム1は、配電線L6・L7の中途部に設けられ、パワコン53・63の自立運転時に出力した電力の電圧を昇圧可能な第二のトランス131・132を具備していても良い。
【0089】
これによれば、図6に示すように、第二のユニット50のパワコン53は、停電時に第一のユニット20の蓄電装置22の残量がなくなったとき(電力を供給することができなくなったとき)に自立運転を開始して、第二のトランス131で昇圧した電力を分電盤10へ供給することができる。これにより、パワコン53は、停電時に蓄電装置22の残量がなくなった場合でも、引き続き分電盤10へ電力を供給することができる。また、第二のユニット60のパワコン63は、第二のトランス131で昇圧された電力を第三のセンサ73が検知することで復電したと判断し、連系運転を再開することができる。
【0090】
また、図7に示すように、第二のユニット60のパワコン63は、停電時に第一のユニット20及び第二のユニット50の蓄電装置22・52の残量がなくなったとき(電力を供給することができなくなったとき)に自立運転を開始して、第二のトランス132で昇圧した電力を分電盤10へ供給することができる。これにより、パワコン63は、停電時に蓄電装置22・52の残量がなくなった場合でも、引き続き分電盤10へ電力を供給することができる。
【0091】
以上の如く、前記第二のユニット50・60は、前記商用電源80側から電力が供給されていない場合に、前記商用電源80から独立して前記分電盤10へ電力を供給する自立運転を行い、前記電力供給システム1は、前記第二のユニット50・60の出力側に配置され、前記第二のユニット50・60が前記自立運転時に出力した電力の電圧を昇圧する第二のトランス131・132をさらに具備するものである。
【0092】
このように構成することにより、停電時に長期間電力を供給することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 電力供給システム
10 分電盤
20 第一のユニット
22 蓄電装置(第一の蓄電装置)
23 パワコン(第一のパワーコンディショナー)
30 トランス
40 切替盤
50・60 第二のユニット
51・61 太陽光発電装置
52・62 蓄電装置(第二の蓄電装置)
53・63 パワコン(第二のパワーコンディショナー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7