(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0020】
図1は、本発明の体外循環装置1の主な構成を示す概略図である。
図1に示す、体外循環装置1は、
図1に示す患者Pの血液の体外循環を行う装置である。体外循環装置1を使用するときの患者Pは、心臓が正常に動作しない場合又は心臓は正常に動作するものの肺が正常に動作しない場合等が考えられる。
【0021】
ところで、本実施の形態に係る
図1に示す体外循環装置1は、例えば患者Pの心臓外科手術を行う場合やその後のICUにおける治療等で用いられる。
【0022】
具体的には、体外循環装置1の「遠心ポンプ3」を作動させ、患者Pの静脈(大静脈)から脱血して、人工肺部である例えば、人工肺2により血液中のガス交換を行って血液の酸素化を行った後に、この血液を再び患者Pの動脈(大動脈)に戻す「人工肺体外血液循環」を行う。すなわち、体外循環装置1は、心臓と肺の代行を行う装置となる。
【0023】
また、体外循環装置1は、以下のような構成となっている。すなわち、
図1に示すように、体外循環装置1は、血液を循環させる「循環回路1R」を有し、循環回路1Rは、「人工肺2」、「遠心ポンプ3」、「ドライブモータ4」、「静脈側カニューレ(脱血側カニューレ)5」と、「動脈側カニューレ(送血側カニューレ)6」と、体外循環管理装置である例えば、コントローラ10を有している。なお、遠心ポンプ3は、血液ポンプとも称し、遠心式以外のポンプも利用できる。
【0024】
そして、
図1の静脈側カニューレ(脱血側カニューレ)5は、大腿静脈より挿入され、静脈側カニューレ5の先端が右心房に留置される。動脈側カニューレ(送血側カニューレ)6は、
図1のコネクター9を介して、大腿動脈より挿入される。静脈側カニューレ5は、コネクター8を介して、脱血チューブ11を用いて遠心ポンプ3に接続されている。脱血チューブ(「脱血ライン」とも称す。)11は、血液を送る管路の一例である。
ドライブモータ4がコントローラ10の指令SGにより遠心ポンプ3を操作させると、遠心ポンプ3は、脱血チューブ11から脱血して人工肺2に通した血液を、送血チューブ12(「送液ライン」とも称する。)を介して患者Pに戻す構成となっている。
なお、これら脱血チューブ11及び送血チューブ12は、搬送路の一例である。
【0025】
人工肺2は、遠心ポンプ3と送血チューブ12の間に配置されている。人工肺2は、この血液に対するガス交換動作(酸素付加及び/又は二酸化炭素除去)を行う。人工肺2は、例えば、膜型人工肺であるが、特に好ましくは中空糸膜型人工肺を用いる。送血チューブ12は、人工肺2と動脈側カニューレ6を接続している管路である。
脱血チューブ11と送血チューブ12は、例えば、塩化ビニル樹脂やシリコーンゴム等の透明性が高く、可撓性を有する合成樹脂製の管路が使用できる。
脱血チューブ11内では、血液はV方向に流れ、送血チューブ12内では、血液はW方向に流れる。
【0026】
また、体外循環装置1は、その脱血チューブ11に、「血液流量センサ14」を有している。この血液流量センサ14は、患者Pから脱血チューブ11を介して流れてくる血液の流量の値を検知する構成となっている。
また、送血チューブ12の患者P側には、「圧力センサ15」が配置されている。
この「圧力センサ15」は、送血チューブ12内の血液の圧力値を検知する構成となっている。すなわち、圧力センサ15は、管路を通る血液の圧力を測定するセンサであり、血液の異常な圧力を検知するためのセンサである。
【0027】
尚、本実施の形態と異なり、送血チューブ12の人工肺2の近傍に別の圧力センサを配置し、この別の圧力センサと圧力センサ15との差圧を測定し、人工肺2の詰まりを検知する構成としても構わない。例えば、人工肺2よりも上流側に別の圧力センサを配置する構成としても良い。
【0028】
また、血液流量センサ14は、管路を通る血液の流量値を測定するセンサであり、流量値の異常を検知するためのセンサである。
なお、血液流量センサ14としては,例えば、超音波流量センサ等が用いられる。
【0029】
なお、コントローラ10には、
図1に示すように、各種情報を入力すると共に表示する表示部である例えば、「タッチパネル13」が形成されている。
タッチパネル13は「位置入力装置付き表示装置」であって、液晶パネル等の表示装置とタッチパッド等の位置入力装置を組み合わせた電子部品である。したがって、画面上の表示を押すことで各種情報を入力することができると共に、各種情報を表示することができる構成となっている。
【0030】
図1に示す体外循環装置1のコントローラ10等は、コンピュータを有し、コンピュータは、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有し、これらは、バスを介して接続されている。
【0031】
図2は、
図1に示すコントローラ10の主な構成を示す概略ブロック図である。
図2に示すように、コントローラ10は、「制御部16」を有し、制御部16は、コントローラ10がドライブモータ4、圧力センサ15及び血液流量センサ14等と通信するための「通信装置17」、タッチパネル13、各種情報を入力する「入力装置18」及び「計時装置19」等を制御する。
また、制御部16は、
図2に示す「第1の各種情報記憶部20」、「第2の各種情報記憶部30」、「第3の各種情報記憶部40」、「第4の各種情報記憶部50」、「第5の各種情報記憶部60」、「第6の各種情報記憶部70」及び「第7の各種情報記憶部80」も制御する。
【0032】
図3及び
図9は、それぞれ「第1の各種情報記憶部20」、「第2の各種情報記憶部30」、「第3の各種情報記憶部40」、「第4の各種情報記憶部50」、「第5の各種情報記憶部60」、「第6の各種情報記憶部70」及び「第7の各種情報記憶部80」の主な構成を示す概略ブロック図である。これらの具体的な内容は後述する。
【0033】
図10乃至
図19は、本実施の形態に係る体外循環装置1の主な動作例等を示す概略フローチャートであり、そのうち、
図10乃至
図14は、体外循環装置1が手術中等に使用される場合の概略フローチャートである。また、
図15乃至
図19は、手術後、容体が安定してICUでの治療中に体外循環装置1を使用する場合の概略フローチャートである。
【0034】
本実施の形態における体外循環装置1のコントローラ10のタッチパネル13には、動作中の体外循環装置1の各部である例えば、ドライブモータ4,圧力センサ15及び血液流量センサ14の各データがタッチパネル13表示される構成となっている。
先ず、
図10乃至
図14を用いて、体外循環装置1が手術中等に使用される場合について説明する。
【0035】
図10のステップ(以下「ST」という。)1では、コントローラ10のタッチパネル13に「短期使用モード(手術中等)」と「長期使用モード(ICU治療等)」の選択画面が表示される。
短期使用モードは、ドライブモータ4,圧力センサ15及び血液流量センサ14の各データの経時的な推移であるトレンドデータ(流量時系列推移データ等であり、経時的連続状態情報の一例)を比較的短時間、例えば、30秒間単位(単位時間情報の一例)でタッチパネル13に示す場合である。
【0036】
なお、本実施の形態では、各種情報がタッチパネル13に表示される例を示したが、本発明は、これに限らず、タッチパネル13に表示される情報が、コントローラ10以外の外部モニタ、タブレットPC等に表示される場合も含まれる。
【0037】
一方、長期使用モードは、ドライブモータ4,圧力センサ15及び血液流量センサ14のトレンドデータ等(流量時系列推移データ等)を比較的長時間、例えば、7日間単位でタッチパネル13に表示するモードである。例えば、ICU治療中等である。
したがって、手術中やICU治療等は、体外循環装置1の使用条件の一例となっている。
【0038】
図10の例では、手術中のドライブモータ4,圧力センサ15及び血液流量センサ14のトレンドデータを取得する。この場合、短時間におけるデータが必要となるので、「短期使用モード」を選択することとなる。
したがって、
図10のST2では、操作者によって、選択されたモード、例えば、「短期使用モード」が
図3の「選択モード記憶部21」に記憶される。
【0039】
次いで、ST3へ進む。ST3では、
図3の「トレンドデータ生成処理部(プログラム)22」が動作し、「血液流量センサ14」及び「圧力センサ15」の検出データの推移データ、「ドライブモータ4」の回転データの推移データ、及びこれらに対応する「計時装置19」の時刻データ、並びに
図3の「目標値データ記憶部23」の目標情報である例えば、「流量目標値データ(上限値と下限値)」「圧力目標値データ(上限値と下限値)」に基づいて、流量、圧力、回転数の時系列推移データを作成し、
図3の「時系列推移データ記憶部24」に記憶する。なお、「血液流量」を以下、「流量」とも呼ぶ。
【0040】
次いで、ST4へ進む。ST4では、
図3の「表示モード調整処理部(プログラム)25」が動作し、「選択モード記憶部21」及び「時系列推移データ記憶部24」を参照する。
本例では、「短期使用モード」を選択しているため、
図3の「時系列推移データ記憶部24」に記憶されている「回転数時系列推移データ」「流量時系列推移データ」「圧力時系列推移データ」「流量目標値(上限と下限)データ」「圧力目標値(上限と下限)データ」を、「短期使用モード」である「1画面に30秒間のデータ」として調整し、
図3「表示画面データ記憶部26」に記憶する。
【0041】
次いで、ST5へ進む。ST5では、
図3の「表示画面データ記憶部26」に記憶されているデータをタッチパネル13に表示する。
図20は、ST5で、タッチパネル13に表示された画面例を示す概略説明図である。
図20に示すように、画面には、全体が30秒間の推移データ(トレンドデータ)として表示されており、具体的には、ドライブモータ4の回転数である「回転数時系列推移データ(トレンドデータ)」、血液流量センサ14の流量値である「流量時系列推移データ(トレンドデータ)」、圧力センサ15の圧力値である「圧力時系列推移データ(トレンドデータ)」が表示されている。
【0042】
また、流量値については、「流量目標値(上限と下限)データ」、圧力値については「圧力目標値(上限と下限)データ」も「短期使用モード」である「1画面に30秒間のデータとして調整して表示されている。
したがって、
図20の画面を見た臨床工学技士等の担当者等は、短時間(30秒等)における流量値や圧力値の推移や変化を把握し易くなっている。また、流量値や圧力値については、目標値に合わせて表示されているので、これらが目標値内に収まっているか否かを容易に把握することができる。
【0043】
次いで、ST6に進む。ST6以下では、コントローラ10が、表示画面に表示されている「流量時系列推移データ」(流量値)等の傾き等の傾向情報を自動的に分析する。
ST6では、
図4の「流量目標値外判断処理部(プログラム)31」が動作し、
図3の「表示画面データ記憶部26」の「表示画面データ」を参照し、所定時間内における「流量時系列推移データ」と同時間内の「流量目標値(上限と下限)データ」とを比較する。
例えば、
図20の矢印A(始点)と矢印B(終点)の間の時間内等である。
そして、当該時間内の「流量時系列推移データ」(流量値)のいずれかの部分が「流量目標値(上限と下限)データ」の上限又は下限を超えているか否かを判断し、超えているときは、「流量目標値外フラグ」を
図4の「流量目標値外フラグ記憶部32」に記憶する。
【0044】
すなわち、「流量時系列推移データ」(流量値)が当該時間内において「流量目標値(上限と下限)データ」の上限又は下限を超えているか否かを自動的に把握することができる。
【0045】
次いで、ST7へ進む。ST7では、
図4の「流量短期上昇判断処理部(プログラム)33」が動作し、「流量目標値外判断処理部(プログラム)31」で判断した「所定時間内」、例えば、
図20の矢印Aと矢印Bにおける時間が早い始点A(t1、y1)と時間が遅い終点B(t2、y2)の座標点を求める。(このとき座標のyは流量、tは時間である。)そして、この始点(t1、y1)と終点(t2、y2)の座標の傾きαを求める。例えば、α=y2−y1/t2−t1の式で求め、その値が、例えば、「10」より大であるか否かを判断する。
【0046】
ST8で、「α」が「10」より大の場合は、ST9へ進む。ST9では、「流量短期上昇判断処理部(プログラム)33」が動作し、当該傾きαが「短期上昇」していると判断する。
【0047】
次いで、ST10へ進む。ST10では、当該データについて「流量目標値外フラグ」が記憶されているか否か判断する。
そして、ST10で、「流量目標値外フラグ」が記憶されていない場合は、ST11に進む。ST11では、「流量短期上昇判断処理部(プログラム)33」が動作し、当該所定時間内の流量推移データの傾きαは「流量目標内短期上昇データ」として
図4の「流量目標内短期上昇データ記憶部34」記憶される。
【0048】
一方、ST10で「流量目標値外フラグ」が記憶されている場合は、ST12へ進む。ST12では、当該所定時間内の流量推移データの傾きαは「流量目標外短期上昇データ」として
図4の「流量目標外短期上昇データ記憶部35」に記憶される。
【0049】
このように、流量値の「流量時系列推移データ」の傾きが短期で急上昇したときは、何かの異変が発生している可能性が高いので、その異変が「流量目標値」の範囲内のものと範囲外のものとを分けて記憶する。
【0050】
ST8で、「α」が「10」以上でないときは、短期で急上昇していないので、ST13以下で、急低下していないか否かを判断する。
ST13では、
図5の「流量短期低下判断処理部(プログラム)41」が動作し「流量目標値外判断処理部(プログラム)31」で判断した「所定時間内(例えば、
図20の矢印Aと矢印Bの間の時間)」における時間が早い始点A(t1、y1)と時間が遅い終点B(t2、y2)の座標点を求める。
そして、この始点A(t1、y1)と終点B(t2、y2)の座標の傾きαを求める。例えば、α=y2−y1/t2−t1の式で求め、その値が、例えば、「−10」より小であるか否か(急低下したか否か)を判断する。
【0051】
ST14で、「α」が「−10」より小さいと判断されたときは、ST15へ進む。ST15では、
図5の「流量短期低下判断処理部(プログラム)41」が動作し、当該傾き「α」が「短期低下(急低下)」していると判断する
【0052】
次いで、ST16へ進む。ST16では、
図5の「流量短期低下判断処理部(プログラム)41」が動作し、対象とするデータについて、ST6で「流量目標外フラグ」が記憶されているか否かを判断し、記憶されていないときは、ST17へ進む。
ST17では、当該所定時間内(
図20の矢印Aと矢印Bとの間)の流量推移データの傾きαは「流量目標内短期低下データ」として
図5の「流量目標内短期低下データ記憶部42」に記憶される。すなわち、流量値は流量目標内で急低下したデータとして記憶される。
【0053】
一方、ST16で「流量目標値外フラグ」が記憶されている場合は、ST18へ進む。ST18では、「流量短期低下判断処理部(プログラム)41」が動作し、当該所定時間内の流量推移データの傾きαは「流量目標外短期低下データ」として
図5の「流量目標外短期低下データ記憶部43」に記憶される。すなわち、流量値は流量目標外で急低下したデータとして記憶される。
【0054】
一方、ST14で、「α」が「−10」以下でない場合は、「α」が「10」以上でもないため、次いで、ST19へ進み、当該データに「流量目標値外フラグ」が記憶されていないか判断する。
ST19で、「流量目標値外フラグ」が記憶されていないときは、問題がないデータとするが、同フラグが記憶されているときは、流量値が範囲外になっていることから、何らかの問題が存在する可能性もあるので、短期上昇や短期低下ではなく、長期上昇や長期低下の有無について判断する。
【0055】
ST20では、
図5の「流量長期上昇判断処理部(プログラム)44」が動作し、「流量目標値外判断処理部(プログラム)31」で判断した「所定時間内」における時間が早い始点A(t1、y1)と時間が遅い終点B(t2、y2)の座標点を求める。そして、この始点A(t1、y1)と終点B(t2、y2)の座標の傾きαを求める。例えば、α=y2−y1/t2−t1の式で求め、その値が、例えば、「0.5」より大であるか否かを判断する。
【0056】
ST21で「α」が「0.5」より大のときは、「流量長期上昇判断処理部(プログラム)44」が動作し、当該傾きαが「長期上昇」していると判断し、当該所定時間内の流量推移データの傾きαは「流量目標外長期上昇データ」として、
図5の「流量目標外長期上昇データ記憶部45」に記憶される。
すなわち、急ではないが緩やかな上昇が、流量目標外で発生していることが記憶される。
【0057】
一方、ST21で、「α」が「0.5」より大のときは、ST23へ進む。ST23では、
図6の「流量長期低下判断処理部(プログラム)51」が動作し、「流量目標値外判断処理部(プログラム)31」で判断した「所定時間内(
図20の矢印Aと矢印Bの間)」における時間が早い始点A(t1、y1)と時間が遅い終点B(t2、y2)の座標点を求める。そして、この始点A(t1、y1)と終点B(t2、y2)の座標の傾きαを求める。例えば、α=y2−y1/t2−t1の式で求め、その値が、例えば、「−0.5」より小であるか否かを判断する。
【0058】
次いで、ST24で、「α」が「−0.5」より小さい場合は、「流量長期低下判断処理部(プログラム)51」が動作し、当該傾きαが「長期低下」していると判断し、当該所定時間内の流量推移データの傾きαは「流量目標外長期低下データ」として「流量目標外長期低下データ記憶部52」に記憶される。
【0059】
以上で、流量値(流量時系列推移データ)に関する分析が終了する。
これらの構成によって、短期使用モードにおける流量値(流量時系列推移データ)の推移(傾きの変化)について、長期と短期の両時間軸から分析することが可能となるため、当該トレンドデータの分析を正確に行える。
例えば、短期の時間軸において流量値(流量時系列推移データ)の推移(傾き)を分析した際、その傾きは正常値にある一方で流量値は流量目標値を超えているケースの分析に本構成は有効である。
【0060】
当該ケースにおいては、トレンドデータの推移(傾き)に対して、短期の時間軸による分析結果に加えて、長期の時間軸分析から得られる長期上昇又は長期低下等の分析結果をも合わせて分析する。そのため、短期の時間軸分析だけでは見落とす可能性のある流量値の緩やかかつ着実な変化の情報も得ることができる。
したがって、担当者は流量値(流量時系列推移データ)の分析や警告内容との比較、検証作業を容易にすることが出来る。
【0061】
また、ST26で、圧力値(圧力時系列推移データ)に関する分析を行う。
分析方法は、上述の流量値と同様に行い、その結果を「圧力目標内短期上昇データ記憶部53」「圧力目標外短期上昇データ記憶部54」「圧力目標内短期低下データ記憶部55」「圧力目標外短期低下データ記憶部56」「圧力目標外長期上昇データ記憶部57」「圧力目標外長期低下データ記憶部58」に記憶する。
【0062】
次いで、ST27へ進む。ST27では、
図6の「モータ回転数推移変化判断処理部(プログラム)59」が動作し、流量と同様の所定時間内におけるドライブモータ4の回転数の異常の有無を判断し、その結果(例えば、異常なし)を
図6の「回転数データ記憶部59a」に記憶する。
【0063】
以上で、流量値、圧力値、ドライブモータ4の回転数に関する解析が終了し、それぞれ、結果毎に各記憶部等に記憶したので、以下で、これらの結果を用いた総合的な解析を行う。
ST28では、
図7の「警告判断処理部(プログラム)61」が動作し、「流量目標内短期上昇データ記憶部34」「流量目標外短期上昇データ記憶部35」「流量目標内短期低下データ記憶部42」「流量目標外短期低下データ記憶部43」「流量目標外長期上昇データ記憶部45」及び「流量目標外長期低下データ記憶部52」「圧力目標内短期上昇データ記憶部53」「圧力目標外短期上昇データ記憶部54」「圧力目標内短期低下データ記憶部55」「圧力目標外短期低下データ記憶部56」「圧力目標外長期上昇データ記憶部57」及び「圧力目標外長期低下データ記憶部57」に記憶されたデータの組み合わせと「警告情報記憶部62」における「流量」と「圧力」との組み合わせが合致するか否かを判断する。
【0064】
「警告情報記憶部62」には、流量と圧力の上記結果の組み合わせで想定し得る警告情報である例えば、「警告内容」データが記憶されていると共に、警告の程度、すなわち「優先度」情報が「高」や「低」等として示されている。
【0065】
そして、ST29で、「警告情報記憶部62」の流量と圧力の組み合わせに合致するものがあるか否かを判断する。
本実施の形態では、
図20の例から例えば、以下のような結果が考えられる。
例えば、流量値が「目標値外の短期低下」に該当し、圧力値が「目標値内の短期上昇」に該当する。この場合は、「警告情報記憶部62」によれば、流量「短期低下」、圧力「短期上昇」の組み合わせとなるので、「警告内容」は「回路のキンク」となる。
【0066】
ST30では、タッチパネル13に、対応する「警告内容」が表示される。
上記の例では、タッチパネル13に、
図21に示すように表示される、
図21は、タッチパネル13に警告内容等を表示する例を示す概略説明図である。
すなわち、
図21に示すように、「流量:降下(目標値外)、圧力:やや上昇(目標値内)」と表示されると共に、「回転数推移データ記憶部59a」を参照し、「回転数;変化なし」と表示される。
また、対応する「警告内容」である「回路のキンクなどが想定されます。原因を確認してください」という情報も併せて表示される。
【0067】
したがって、体外循環装置1に異常等が発生したときは、自動的にその異常等とその原因等の情報を担当者である臨床工学技士等に提供することができるので、担当者等の負担を軽減することができる。
【0068】
図15乃至
図19を用いて、手術後、容体が安定してICUで治療中に体外循環装置1を使用する場合の概略フローチャートである。
図15のST41では、
図10の手術中の使用(短期使用)と同様に、タッチパネル13に「短期使用モード(手術中等)」と「長期使用モード(ICU治療等)」の選択画面が表示される。
【0069】
今回は、手術が終わり患者も容体も安定しているので、タッチパネル13に表示するデータは「30秒」等である必要はなく、例えば、「1週間分」が好ましいので、ST42では「長期使用モード」を選択する。
すると、
図3の「表示モード調整処理部(プログラム)25」が動作し、「選択モード記憶部21」及び「時系列推移データ記憶部24」を参照し、「長期使用モード」のときは、「流量時系列推移データ」と「流量目標値(上限と下限)データ」を画面に7日間のデータとして調整し、
図3の「表示画面データ記憶部26」に記憶する。
【0070】
次いで、ST44で、「表示画面データ記憶部26」のデータをタッチパネル13に表示する。
図22は、ST44の長期使用モードのデータが表示された状態を示す概略説明図である。
図22に示すように、長期使用モードでは、例えば、流量値に関するデータのみが表示されている。
【0071】
次いで、ST45で「表示画面データ記憶部26」の「表示画面データ」を参照し、所定時間内における「流量時系列推移データ」と同時間内の「流量目標値(上限と下限)データ」とを比較し、当該時間内の「流量時系列推移データ」のいずれかの部分が「流量目標値(上限と下限)データ」の上限又は下限を超えているか否かを判断し、超えているときは、「流量目標値外フラグ」を「流量目標値外フラグ記憶部32」に記憶する。
これは上述のSTと同様である。
【0072】
次いで、ST46へ進む。ST46では、
図7の「第2の流量長期上昇判断処理部(プログラム)63」が動作し、「流量目標値外判断処理部(プログラム)31」で判断した「所定時間内」における時間が早い始点(t1、y1)と時間が遅い終点(t2、y2)の座標点を求める。そして、この始点(t1、y1)と終点(t2、y2)の座標の傾きβを求める。例えば、β=y2−y1/t2−t1の式で求め、その値が、例えば、「0.5」より大であるか否かを判断する。
【0073】
すなわち、タッチパネル13に表示したデータが「長期使用モード」のデータであるため、上述の「短期使用モード」と異なり「傾きβ」が「長期上昇」しているか否かを判断する。
ST47で「β」が「0.5」より大きいときは、ST48で、「長期上昇」していると判断し、ST49で「流量目標値外フラグ」が記憶されていないときは、ST50で、
図8の「流量目標内長期上昇データ記憶部71」に記憶される。
一方、「流量目標値外フラグ」が記憶されているときは、「第2の流量目標外長期上昇データ記憶部72」に記憶される。
【0074】
また、ST47で「β」が「0.5」以上でないときは、ST52で
図8の「第2の流量長期低下判断処理部(プログラム)73」が動作し、「流量目標値外判断処理部(プログラム)31」で判断した「所定時間内」における時間が早い始点(t1、y1)と時間が遅い終点(t2、y2)の座標点を求める。そして、この始点(t1、y1)と終点(t2、y2)の座標の傾きβを求める。例えば、β=y2−y1/t2−t1の式で求め、その値が、例えば、「−0.5」より小であるか否かを判断する。
【0075】
すなわち、「長期低下」傾向があるか否かを判断する。
ST53で、「β」が「−0.5」より小さいときは、ST54で当該傾きβが「長期低下」していると判断し、ST55で、「流量目標値外フラグ」が記憶されていないと判断されたときは、
図8の「流量目標内低下データ記憶部74」に記憶する。
【0076】
ST55で、「流量目標値外フラグ」が記憶されていると判断されると、ST57で、
図8の「第2の流量目標外長期低下データ記憶部75」に記憶される。
【0077】
ST53で「β」が「−0.5」より小さくない場合は、ST58で、当該傾きβについて「流量目標値外フラグ」が記憶されているときは、以後、短期上昇と短期低下の有無を判断する。
具体的には、ST59では、
図8の「第2の流量短期低下判断処理部(プログラム)76」が動作し、「流量目標値外判断処理部(プログラム)31」で判断した「所定時間内」における時間が早い始点(t1、y1)と時間が遅い終点(t2、y2)の座標点を求める。
そして、この始点(t1、y1)と終点(t2、y2)の座標の傾きβを求める。例えば、β=y2−y1/t2−t1の式で求め、その値が、例えば、「10」より大であるか否かを判断する。
【0078】
ST60で、「β」が「10」より大きいときは、ST61で「第2の流量目標外短期上昇データ記憶部77」に記憶する。
ST60で、「β」が「10」より大きくないときは、ST62へ進む。ST62では、
図9の「第2の流量短期低下判断処理部(プログラム)81」が動作し、「流量目標値外判断処理部(プログラム)31」で判断した「所定時間内」における時間が早い始点(t1、y1)と時間が遅い終点(t2、y2)の座標点を求める。そして、この始点(t1、y1)と終点(t2、y2)の座標の傾きβを求める。例えば、β=y2−y1/t2−t1の式で求め、その値が、例えば、「−10」より小であるか否かを判断する。
【0079】
ST63で、「β」が「−10」より小さい場合は、ST64で、
図8の「第2の流量目標外短期低下データ記憶部82」に記憶する。
これらの構成によって、短期使用モードと同様に、長期使用モードにおける流量値(流量時系列推移データ)の推移(傾きの変化)について、長期と短期の両時間軸から分析することが可能となるため、流量値(流量時系列推移データ)の分析を正確に行える。
例えば、長期の時間軸において流量値(流量時系列推移データ)の推移(傾き)を分析した際、その傾きは正常値にある一方で流量値(流量時系列推移データ)は目標値を超えているケースの分析に本構成は有効である。
【0080】
当該ケースにおいては、流量値(流量時系列推移データ)の推移(傾き)に対して、長期の時間軸による分析結果に加えて、短期の時間軸分析から得られる短期上昇又は下降等の分析結果をも合わせて分析する。そのため、長期の時間軸分析だけでは見落とす可能性のある流量値(流量時系列推移データ)の急激な変化の情報も得ることができる。
したがって、担当者は、流量値(流量時系列推移データ)の分析や警告内容との比較、検証作業を容易にすることが出来る。
【0081】
次いで、ST65では、圧力値についても、同様に処理し、その結果を「圧力目標内長期上昇データ記憶部」等に記憶する。
【0082】
次いで、ST66で、ドライブモータ4のデータを回転数データ記憶部59aに記憶し、ST67では、「警告判断処理部(プログラム)61」が動作し「流量目標内長期上昇データ記憶部」等や「圧力目標内長期上昇データ記憶部」等に記憶されたデータの組み合わせと「警告情報記憶部62」における「流量」と「圧力」との組み合わせが合致するか否かを判断する。
【0083】
ST68で「警告情報記憶部62」の流量と圧力の組み合わせに合致するものがあるか否かを判断する。
合致した組み合わせがあった場合、
図9の「組み合わせ優先度別画面表示処理部(プログラム)83」が動作し、「流量目標内長期上昇データ記憶部」等のデータの組み合わせと合致した「警告情報記憶部62」の組み合わせの「優先度」が「高」であるか否かを判断する。
【0084】
ST70で、合致した流量と圧力の組み合わせの優先度が「高」の場合、ST71で、タッチパネル13に,当該長期使用に対応する「短期使用」画面を表示し、対応する「警告内容」である「回路キンクなどが想定されます。原因を確認してください」と表示される。
図23は、長期使用と併せて表示される「短期使用」の画面例を示す概略説明図である。
緊急性の高い場合は、例えば、30秒単位等の流量、圧力、回転数の表示を併せて示すことで、担当者等にとって、事態をより把握し易くなる。
【0085】
例えば、緊急性の高い場合において
は、長期使用モードにおける流量等のトレンドデータと短期使用モードにおけるそれらとを併せて比較することが可能となるため、各モードのトレンドデータから警告の原因について追跡、検証することが出来る。
【0086】
ST70で、「優先度」が「高」でないときは、ST72へ進み、タッチパネル13の「長期使用」画面に該当する「警告内容」を表示する。
図24は、ST72で表示される画面例を示す概略説明図である。
図24に示すように、長期使用の画面で、警告が示される。
【0087】
なお、本発明では、上述の「短期使用モード」と「長期使用モード」は、操作者によって、動作中でも自由に変更することができる。
例えば、手術中に「短期使用モード」を選択しているとき、途中から「長期使用モード」に変更することができる。
また、本実施の形態では、「警告内容」を「流量」と「圧力」の傾きデータ等で決定しているが、本発明はこれに限らず、流量を優先として決定しても構わない。