特許第6572066号(P6572066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6572066アルコキシシリルアルキル基を有するオニウム塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572066
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】アルコキシシリルアルキル基を有するオニウム塩
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20190826BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   C07F7/18 WCSP
   C09K3/16 109
   C09K3/16 107E
   C09K3/16 104F
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-173305(P2015-173305)
(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公開番号】特開2017-48149(P2017-48149A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋輔
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/011822(WO,A1)
【文献】 特開2013−047292(JP,A)
【文献】 特開2014−108993(JP,A)
【文献】 特開2013−199509(JP,A)
【文献】 特開2013−028586(JP,A)
【文献】 特開2014−227361(JP,A)
【文献】 特開2010−095473(JP,A)
【文献】 特開平06−049204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
C09K 3/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるオニウム塩。
式(1):
【化1】
(式中、Qは窒素カチオン又はリンカチオンを示す。a及びcは1〜4の整数、b及びdは1以上の整数である。R及びRはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基又は式(2):
【化2】
(式中、eは1〜4の整数、fは1以上の整数である。)で示されるオキシアルキレン基を示す。R及びRがヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である場合、末端で互いに結合して環を形成してもよい。D〜Dは式(3):
【化3】
(式中、EはCH、CH(CH)又はCH(CH)CHを示す。GはNH又は硫黄原子を示す。R及びRは炭素数1〜4のアルキル基を示す。gは0〜3の整数、hは1〜4の整数、iは1〜3の整数である。)で示されるアルコキシシリルアルキル基である。Aはアニオンを示す。)
【請求項2】
が窒素カチオンである請求項1に記載のオニウム塩。
【請求項3】
が含フッ素アニオンである請求項1又は2のいずれかに記載のオニウム塩。
【請求項4】
が(CFSO、又は(FSOである請求項1〜3のいずれかに記載のオニウム塩。
【請求項5】
がメチル基である請求項1〜4のいずれかに記載のオニウム塩。
【請求項6】
が炭素数8〜18のアルキル基である請求項1〜5のいずれかに記載のオニウム塩。
【請求項7】
a及びcが2である請求項1〜6のいずれかに記載のオニウム塩。
【請求項8】
b+d=15である請求項1〜7のいずれかに記載のオニウム塩。
【請求項9】
b及びdが1である請求項1〜7のいずれかに記載のオニウム塩。
【請求項10】
式(4)で表されるオニウム塩と式(7)で表されるアルコキシシリルアルキル化合物を反応させる請求項1〜9のいずれかに記載のオニウム塩の製造方法。
式(4):
【化4】
(式中、Q及びA並びにa〜dは前記に同じ。R及びRはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基又は式(5):
【化5】
(式中、e及びfは前記に同じ。)で示されるオキシアルキレン基である。R及びRがヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である場合、末端で互いに結合して環を形成してもよい。X〜Xは、水素原子、式(6a):
【化6】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
で示される(メタ)アクリロイル基、又は式(6b):
【化7】
(式中、Rはハロゲン原子、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
で示されるハロメチルケトン基である。)
式(7):
【化8】
(式中、R、R、h及びiは前記に同じである。YはNCO、NH又はSHを示す。)
【請求項11】
式(4)で表されるオニウム塩が、式(8)で表されるハライド塩と式(9)で表される酸又はそのアルカリ金属塩とのアニオン交換反応によって製造したものである請求項10に記載のオニウム塩の製造方法。
式(8):
【化9】
(式中、、a〜d、X、X及びRは前記に同じである。Zはハロゲンイオンを示す。)
式(9):
(9)
(式中、Mは水素イオン又はアルカリ金属イオンを示す。Aは前記に同じ。)
【請求項12】
式(8)で表されるハライド塩がエソカード(登録商標)C/25又はエソカード(登録商標)C/12である請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載のオニウム塩を少なくとも1種含有する帯電防止剤。
【請求項14】
請求項13に記載の帯電防止剤を少なくとも1種含有する樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシシリルアルキル基を有する新規なオニウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシシリルアルキル基を有するオニウム塩としては、N−{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N,N,N−トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等の、アルコキシシリルアルキルカルバモイルオキシアルキル基を1つ有するオニウム塩が知られている。そして、該オニウム塩は、アクリル樹脂に対して帯電防止性を付与できることが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、樹脂の種類や用途によっては、樹脂に対して、より優れた帯電防止性を付与できるオニウム塩が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−28586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、樹脂に対して、優れた帯電防止性を付与できる新規なオニウム塩及びそれを含む帯電防止剤、並びに当該帯電防止剤を含む樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、式(1)で表されるオニウム塩を見出し、当該オニウム塩を帯電防止剤としてアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂に使用したところ、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂に対して優れた帯電防止性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、以下の[1]〜[15]を提供するものである。
【0007】
[1]式(1)で表されるオニウム塩。
【0008】
式(1):
【0009】
【化1】
(式中、Qは窒素カチオン又はリンカチオンを示す。a及びcは1〜4の整数、b及びdは1以上の整数である。R及びRはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基又は式(2):
【0010】
【化2】
(式中、eは1〜4の整数、fは1以上の整数である。)で示されるオキシアルキレン基を示す。R及びRがヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である場合、末端で互いに結合して環を形成してもよい。D〜Dは式(3):
【0011】
【化3】
(式中、EはCH、CH(CH)又はCH(CH)CHを示す。GはNH又は硫黄原子を示す。R及びRは炭素数1〜4のアルキル基を示す。gは0〜3の整数、hは1〜4の整数、iは1〜3の整数である。)で示されるアルコキシシリルアルキル基である。Aはアニオンを示す。)
【0012】
[2]Qが窒素カチオンである[1]に記載のオニウム塩。
【0013】
[3]Aが含フッ素アニオンである[1]又は[2]のいずれかに記載のオニウム塩。
【0014】
[4]Aが(CFSO、又は(FSOである[1]〜[3]のいずれかに記載のオニウム塩。
【0015】
[5]Rがメチル基である[1]〜[4]のいずれかに記載のオニウム塩。
【0016】
[6]Rが炭素数8〜18のアルキル基である[1]〜[5]のいずれかに記載のオニウム塩。
【0017】
[7]a及びcが2である[1]〜[6]のいずれかに記載のオニウム塩。
【0018】
[8]b+d=15である[1]〜[7]のいずれかに記載のオニウム塩。
【0019】
[9]b及びdが1である[1]〜[7]のいずれかに記載のオニウム塩。
【0020】
[10]式(4)で表されるオニウム塩と式(7)で表されるアルコキシシリルアルキル化合物を反応させる[1]〜[9]のいずれかに記載のオニウム塩の製造方法。
【0021】
式(4):
【0022】
【化4】
(式中、Q及びA並びにa〜dは前記に同じ。R及びRはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基又は式(5):
【0023】
【化5】
(式中、e及びfは前記に同じ。)で示されるオキシアルキレン基である。R及びRがヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である場合、末端で互いに結合して、環を形成してもよい。X〜Xは、水素原子、式(6a):
【0024】
【化6】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
で示される(メタ)アクリロイル基、又は式(6b):
【0025】
【化7】
(式中、Rはハロゲン原子、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
で示されるハロメチルケトン基である。)
【0026】
式(7):
【0027】
【化8】
(式中、R、R、h及びiは前記に同じである。YはNCO、NH又はSHを示す。)
【0028】
[11]式(4)で表されるオニウム塩が、式(8)で表されるハライド塩と式(9)で表される酸又はそのアルカリ金属塩とのアニオン交換反応によって製造したものである[10]に記載のオニウム塩の製造方法。
【0029】
式(8):
【0030】
【化9】
(式中、R及びRは前記に同じである。Zはハロゲンイオンを示す。)
【0031】
式(9):
【0032】
(9)
(式中、Mは水素イオン又はアルカリ金属イオンを示す。Aは前記に同じ。)
【0033】
[12]式(8)で表されるハライド塩がエソカード(登録商標)C/25又はエソカード(登録商標)C/12である[11]に記載の製造方法。
【0034】
[13][10]〜[12]のいずれかに記載の製造方法により得られるオニウム塩。
【0035】
[14][1]〜[9]、又は[13]のいずれかに記載のオニウム塩を少なくとも1種含有する帯電防止剤。
【0036】
[15][14]に記載の帯電防止剤を少なくとも1種含有する樹脂組成物。
【発明の効果】
【0037】
本発明のオニウム塩(1)は、アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂に対して優れた帯電防止性を付与できるため、有用な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0039】
式(1)中、Qは窒素カチオン又はリンカチオンであり、好ましくは窒素カチオンである。a及びcは1〜4の整数であり、好ましくは2である。b及びdは1以上の整数であり、好ましくは1〜15の整数、特に好ましくは1である。また、別の形態として特に好ましくはb+d=15である。Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基又は式(2)で示されるオキシアルキレン基である。ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基又は式(2)で示されるオキシアルキレン基である。ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数6〜18のアルキル基がより好ましく、炭素数8〜18のアルキル基が特に好ましい。R及びRがヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である場合、末端で互いに結合して環を形成してもよく、環としては、例えば、モルホリン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ホスホラン環又はホスホリナン環等が挙げられる。D〜Dは式(3)で示されるアルコキシシリルアルキル基である。
【0040】
式(2)中、eは1〜4の整数であり、好ましくは2である。fは1以上の整数であり、好ましくは1である。
【0041】
式(3)中、EはCH、CH(CH)又はCH(CH)CHを示す。GはNH又は硫黄原子であり、好ましくはNHである。R及びRは炭素数1〜4のアルキル基を示し、メチル基又はエチル基がより好ましい。gは0〜3の整数であり、好ましくは0である。hは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは3である。iは1〜3の整数であり、好ましくは3である。
【0042】
はアニオンを示し、好ましくは含フッ素アニオン、より好ましくは含フッ素イミドアニオンである。アニオンとしては、例えば、(CFSO、(FSO、BF、PF、CH(CH10CHSO、CHSO等が挙げられ、(CFSO、(FSO、が好ましく、特に好ましくは(CFSOである。
【0043】
式(1)で表されるオニウム塩(以下、オニウム塩(1)という。)の具体例としては、N,N−ビス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N,N−ジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N,N−ジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N,N−ジエチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N,N−ジエチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N−エチル−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N−エチル−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
【0044】
N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N,N−ジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N,N−ジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N,N−ジエチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N,N−ジエチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−エチル−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−エチル−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチルポリオキシエチレン]−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチルポリオキシエチレン]−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
【0045】
N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N,N−ジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N,N−ジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N,N−ジエチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N,N−ジエチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−エチル−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−エチル−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチルポリオキシエチレン]−N−アルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチルポリオキシエチレン]−N−アルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
【0046】
N,N−ビス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}ピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}ピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]ピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]ピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]ピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]ピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}ピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}ピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]ピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]ピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]ピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]ピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
【0047】
N,N,N−トリス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N−エチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}−N−エチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−エチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−エチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−エチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]−N−エチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
【0048】
N,N,N,N−テトラキス{(3−トリメトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラキス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラキス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラキス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1−オキソプロポキシ}エチル]アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラキス[2−{3−(3−トリメトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラキス[2−{3−(3−トリエトキシシリルプロピルチオ)−1−オキソプロポキシ}エチル]アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられ、好ましくは、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルエチル}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
本発明のオニウム塩(1)の製造方法について説明する。オニウム塩(1)は、例えば、式(4)で表されるオニウム塩(以下、オニウム塩(4)という。)と式(7)で表されるアルコキシシリルアルキル化合物(以下、アルコキシシリルアルキル化合物(7)という)を反応させることにより製造できる。
【0050】
式(4)中、Q及びA並びにa〜dは前記に同じである。Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基又は式(5)で示されるオキシアルキレン基である。ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基又は式(5)で示されるオキシアルキレン基である。ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数6〜18のアルキル基がより好ましく、炭素数8〜18のアルキル基が特に好ましい。R及びRがヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基である場合、末端で互いに結合して環を形成してもよく、環としては、例えば、モルホリン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ホスホラン環又はホスホリナン環等が挙げられる。式(5)中、e及びfは前記に同じである。X〜Xは水素原子、式(6a)で表される(メタ)アクリロイル基、又は式(6b)で表されるハロメチルケトン基であり、好ましくは水素原子である。式(6a)中、Rは水素原子又はメチル基である。式(6b)中、Rはハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子である。Rは水素原子又はメチル基である。
【0051】
オニウム塩(4)としては、N,N−ジメチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−エチルメチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(ポリオキシエチレン)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス(2−メタクロイルオキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[2−(2−クロロアセチル)オキシエチル]−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ビス[(2−クロロアセチル)ポリオキシエチレン]−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられ、好ましくは、N−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(ポリオキシエチレン)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。
【0052】
式(7)中、R、R、h及びiは前記に同じである。YはNCO、NH又はSHであり、好ましくはNCOである。
【0053】
アルコキシシリルアルキル化合物(7)としては、アルコキシシリルアルキルイソシアネート類、トリアルコキシシリルアルキルアミン類及びトリアルコキシシリルアルキルチオール類が挙げられ、好ましくはアルコキシシリルアルキルイソシアネート類である。
【0054】
アルコキシシリルアルキルイソシアネート類としては、トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリメトキシシリルエチルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルブチルイソシアネート、トリエトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシシリルエチルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルブチルイソシアネート、トリプロポキシシリルメチルイソシアネート、トリプロポキシシリルエチルイソシアネート、トリプロポキシシリルプロピルイソシアネート、トリプロポキシシリルブチルイソシアネート、トリブトキシシリルメチルイソシアネート、トリブトキシシリルエチルイソシアネート、トリブトキシシリルプロピルイソシアネート、トリブトキシシリルブチルイソシアネート等が挙げられ、好ましくは、トリメトキシシリルプロピルイソシアネートである。
【0055】
アルコキシシリルアルキルアミン類としては、例えば、トリメトキシシリルメチルアミン、トリメトキシシリルエチルアミン、トリメトキシシリルプロピルアミン、トリメトキシシリルブチルアミン、トリエトキシシリルメチルアミン、トリエトキシシリルエチルアミン、トリエトキシシリルプロピルアミン、トリエトキシシリルブチルアミン、トリプロポキシシリルメチルアミン、トリプロポキシシリルエチルアミン、トリプロポキシシリルプロピルアミン、トリプロポキシシリルブチルアミン、トリブトキシシリルメチルアミン、トリブトキシシリルエチルアミン、トリブトキシシリルプロピルアミン、トリブトキシシリルブチルアミン等が挙げられる。
【0056】
アルコキシシリルアルキルチオール類としては、例えば、トリメトキシシリルメチルチオール、トリメトキシシリルエチルチオール、トリメトキシシリルプロピルチオール、トリメトキシシリルブチルチオール、トリエトキシシリルメチルチオール、トリエトキシシリルエチルチオール、トリエトキシシリルプロピルチオール、トリエトキシシリルブチルチオール、トリプロポキシシリルメチルチオール、トリプロポキシシリルエチルチオール、トリプロポキシシリルプロピルチオール、トリプロポキシシリルブチルチオール、トリブトキシシリルメチルチオール、トリブトキシシリルエチルチオール、トリブトキシシリルプロピルチオール、トリブトキシシリルブチルチオール等が挙げられる。
【0057】
アルコキシシリルアルキル化合物(7)の使用量は、通常、オニウム塩(4)1モルに対して2モル以上であればよく、好ましくは2.0〜4.5モルである。
【0058】
オニウム塩(4)とアルコキシシリルアルキル化合物(7)との反応は溶媒を使用してもよい。溶媒を使用する場合、溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等が挙げられる。溶媒の使用量としては、通常、オニウム塩(4)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは1〜10重量部であり、特に好ましくは2〜6重量部である。
【0059】
オニウム塩(4)とアルコキシシリルアルキル化合物(7)との反応において、必要に応じて、有機スズ化合物触媒や第三級アミン化合物触媒等のウレタン化反応触媒を使用してもよい。有機スズ化合物触媒としては、ジラウリン酸ジブチルスズ等が挙げられる。第三級アミン化合物としては、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチレンジアミン等が挙げられる。ウレタン化反応触媒の使用量としては、通常、オニウム塩(4)1モルに対して、0.01モル%以上、好ましくは0.05〜5モル%である。
【0060】
オニウム塩(4)と、アルコキシシリルアルキル化合物(7)及び溶媒の混合順序は特に限定されず、オニウム塩(4)と溶媒を混合した後にアルコキシシリルアルキル化合物(7)を添加してもよいし、アルコキシシリルアルキル化合物(7)と溶媒を混合した後にオニウム塩(4)を添加してもよい。
【0061】
オニウム塩(4)とアルコキシシリルアルキル化合物(7)との反応での反応温度は、通常10℃以上であり、好ましくは30〜80℃である。
【0062】
反応終了後の反応液からオニウム塩(1)を分離するには、濃縮、濾過、抽出、洗浄等の単位操作を適宜組み合わせて、オニウム塩(1)を単離することができる。
【0063】
前述のオニウム塩(4)は、市販のものを使用しても良いが、例えば、式(8)で示されるハライド塩(以下、ハライド塩(8)という。)から製造したものを使用してもよい。
【0064】
オニウム塩(4)の製造方法について説明する。オニウム塩(4)は、種々の方法で製造することができる。例えば、ハライド塩(8)と式(9)で表される酸又はそのアルカリ金属塩(以下、アルカリ金属塩類(9)という。)とのアニオン交換反応によって製造できる。
【0065】
式(8)中、R及びRは前記に同じである。Zはハロゲンイオンである。ハロゲンイオンとしては、Cl、Br、I等が挙げられ、好ましくはClである。
【0066】
ハライド塩(8)としては、N,N−ジメチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム クロリド、N−エチル−N−メチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム クロリド、N−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウム クロリド(ライオン株式会社製、エソカード(登録商標)C/12)、N−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(ポリオキシエチレン)−N−メチルアンモニウム クロリド(ライオン株式会社製、エソカード(登録商標)C/25)等が挙げられ、好ましくはN−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウム クロリド、N−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(ポリオキシエチレン)−N−メチルアンモニウム クロリドである。
【0067】
アルカリ金属塩類(9)としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドカリウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、リチウムヘキサフルオロホスフェート、ナトリウムヘキサフルオロホスフェート、カリウムヘキサフルオロホスフェート、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0068】
イオン交換反応におけるアルカリ金属塩類(9)の使用量は、ハライド塩(8)1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル〜1.2モルであり、より好ましくは1〜1.05モルである。
【0069】
イオン交換反応は通常、溶媒中で行う。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、水等が挙げられる。使用量は特に制限はないが、ハライド塩(8)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは1〜10重量部であり、特に好ましくは2〜6重量部である。
【0070】
ハライド塩(8)、アルカリ金属塩類(9)及び溶媒の混合順序は特に限定されず、ハライド塩(8)と溶媒を混合した後にアルカリ金属塩類(9)を添加してもよいし、アルカリ金属塩類(9)と溶媒を混合した後にハライド塩(8)を添加してもよい。
【0071】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは10〜30℃である。
【0072】
反応終了後の反応液からオニウム塩(4)を分離するには、溶媒及び生成する無機塩又は酸塩を反応液から除去すればよい。例えば、得られた反応液を濾過するか又は水洗して無機塩又は酸塩を除き、次いで濃縮、濾過、抽出等の単位操作を適宜組み合わせて、オニウム塩(4)を単離することができる。
【0073】
本発明は、オニウム塩(1)を少なくとも1種含有する帯電防止剤を提供する。本発明において、オニウム塩(1)を単独で帯電防止剤として使用することもできるが、任意選択で、本発明が属する分野において使用される安定化剤等の添加剤、溶媒等を混合して使用することもできる。本発明の帯電防止剤を使用できる絶縁物としては樹脂組成物等が挙げられる。添加剤、溶媒等を配合する場合、帯電防止剤中のオニウム塩(1)の含有量は特に限定されず、例えば、90重量%以上、70重量%以上、50重量%以上、30重量%以上、10重量%以上、5重量%以上、1重量%以上等の条件から適宜設定できる。帯電防止性を付与するには、本発明の帯電防止剤を樹脂組成物等の製造時にそれらの材料に添加、混合する等の方法又は樹脂組成物等に塗布する方法等が挙げられる。
【0074】
本発明は、上記帯電防止剤を含有する樹脂組成物を提供する。樹脂組成物への本発明の帯電防止剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、本発明の帯電防止剤が樹脂に対して0.05〜20重量%であり、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%である。樹脂組成物には、樹脂及び帯電防止剤以外に樹脂組成物の性質を損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤を加えることができる。添加剤としては、染料、顔料、補強剤、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。本発明の帯電防止剤により帯電防止性を付与する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂である。
【実施例】
【0075】
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。以下の実施例中、H−NMRはブルカー社製のDPX 400を使用し、溶媒にDMSO−dを用いて400MHzで測定した。また、表面抵抗率は三菱化学株式会社製ハイレスタ−UP(MCP−HT450)を使用し、印加電圧500V、温度25℃、湿度50%RHの条件にて測定した。
【0076】
合成例1 N−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(ポリオキシエチレン)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成
反応容器にN−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(ポリオキシエチレン)−N−メチルアンモニウム クロリド(ライオン株式会社製、エソカード(登録商標)C/25)854.9g(0.97mol)、及びイオン交換水2015.2gを入れ、撹拌した。そこへ75.0%ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム水溶液390.7g(1.02mol)を入れ、25℃で3時間撹拌した。得られた反応液にメチルイソブチルケトン2137.8gを加えて抽出、分液し、有機層をイオン交換水2137.5gで3回洗浄した。得られた有機層を濃縮・乾燥してN−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(ポリオキシエチレン)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド707.0g(収率64.7%)を得た。
【0077】
合成例2 N−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成
反応容器にN−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウム クロリド(ライオン株式会社製、エソカード(登録商標)C/12)908.0g(1.97mol)、及びイオン交換水1114.1gを入れ、撹拌した。そこへ70.5%ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム水溶液844.1g(2.07mol)を入れ、25℃で2時間撹拌した。得られた反応液にメチルエチルケトン1271.0gを加えて抽出、分液し、有機層をイオン交換水1373.0gで2回洗浄した。得られた有機層を濃縮・乾燥してN−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1145.6g(収率98.6%)を得た。
【0078】
実施例1 N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成
反応容器にN−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(ポリオキシエチレン)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド20.1g(16.7mmol)、ジラウリン酸ジブチルスズ0.02g(0.03mmol、東京化成工業株式会社製)及びアセトニトリル28.8gを加えて、撹拌しながら50℃まで昇温し均一溶液とした。この溶液に3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート8.8g(35.0mmol、信越化学工業株式会社製)を2時間かけて滴下し、50℃で4時間反応させた。反応後、仕込み重量の約半分になるまで濃縮した。得られた濃縮反応液に、ヘキサン17.6gを加えて分液し、ヘキサン層を除く操作を2回行った。洗浄後の濃縮反応液をさらに70℃で16時間濃縮して、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド27.9gを得た(収率97.7%)。得られたN,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH NMRを次に示す。
【0079】
H NMR δ(ppm):7.21(brm,2H),4.04(brm,4H),3.82(brm,3H),3.76−3.71(m,12H),3.56−3.51(brm,48H),3.32(brm,2H),3.06(s,3H),2.94(q,4H),1.66(brm,2H),1.44(brm,4H),1.25(brm,20H),1.14(t,18H),0.86(t,3H),0.51(t,4H)
【0080】
実施例2 N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルエチル}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成
反応容器にN−アルキル(C8〜C18)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド299.6g(507.3mmol)、ジラウリン酸ジブチルスズ0.34g(0.53mmol東京化成工業株式会社製)及びアセトニトリル299.5gを加えて、撹拌しながら50℃まで昇温し均一溶液とした。この溶液に3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート260.9g(1039.9mmol、信越化学工業株式会社製)を0.5時間かけて滴下し、50℃で5時間反応させた。反応後、仕込み重量の約半分になるまで濃縮した。得られた濃縮反応液に、ヘキサン599.8gを加えて分液し、ヘキサン層を除く操作を2回行った。洗浄後の濃縮反応液をさらに50℃で6時間濃縮して、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルエチル}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド550.0gを得た(収率99.7%)。得られたN,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルエチル}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRを次に示す。
【0081】
H NMR δ(ppm):7.35(brm,2H),4.39(brm,4H),3.78−3,73(m,12H),3.65(brm,4H),3.35(brm,2H),3.09(s,3H),2.99(q,4H),1.65(brm,2H),1.48(brm,4H),1.27(brm,19H),1.16(t,18H),0.88(t,3H),0.54(t,3H)
【0082】
応用例1
ペンタエリスリトールトリアクリレート(A−TMM−3LM−N、新中村化学工業株式会社製)100重量部に対して、帯電防止剤として実施例1で得たN,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド1重量部、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン6重量部(和光純薬株式会社製)、及び希釈剤としてメチルエチルケトン107重量部を加えて溶解し、コート剤を調製した。このコート剤をトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上にバーコーターを使用して乾燥時の厚みが約5μmになるようにコートし、60℃で20分間加熱・乾燥させた。乾燥後のフィルムをアイグラフィックス株式会社製のUVコンベア装置RCS−1511Uを使用して、高圧水銀UVランプ(120W/cm)の紫外線を積算光量400±10mJ/cm、ピーク照度400±10mW/cmの条件で照射して硬化を行い、試験片を作成した。得られた試験片を25±1℃、50±5%RHの雰囲気中に30分間保持させた後、かかる試験片のハードコート膜の表面抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
応用例2
応用例1のN,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに代えて、実施例2で得たN,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルエチル}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は応用例1と同様にして試験片を作成し、かかる試験片のハードコート膜の表面抵抗率を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0084】
比較応用例1
応用例1のN,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに代えて、N−{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル}−N,N,N−トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は応用例1と同様にして試験片を作成し、かかる試験片のハードコート膜の表面抵抗率を測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1の結果から本発明のオニウム塩を配合したアクリル樹脂コーティング剤は、優れた帯電防止性を有することが分かった。
【0087】
応用例3
50mLのサンプル瓶にポリカーボネート樹脂(住友ダウ株式会社製 カリバー(登録商標)200−13 NAT)3.2g、ジクロロメタン20mLを入れて、ポリカーボネートを溶解し、帯電防止剤として実施例1で得たN,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.032gを添加して完溶させた。この調整液を金型(縦13cm×横19.5cm×深さ2cm)へ流し込み、1時間乾燥させ、ポリカーボネート樹脂組成物の試験片を作成した。得られた試験片を25±1℃、50±5%RHの雰囲気中に30分間保持させた後、試験片表面の表面抵抗率を測定した。結果を表2に示す。
【0088】
応用例4
応用例3のN,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに代えて、N,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルエチル}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は応用例3と同様にして試験片を作成し、かかる試験片の表面抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。
【0089】
比較応用例2
応用例1のN,N−ビス{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルポリオキシエチレン}−N−アルキル(C8〜C18)−N−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに代えて、N−{(3−トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル}−N,N,N−トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は応用例3と同様にして試験片を作成し、かかる試験片の表面抵抗率を測定した。その結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2の結果から本発明のオニウム塩を配合したポリカーボネート樹脂は優れた帯電防止性を有することが分かった。