【実施例】
【0033】
以下、本発明による不織布を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何等限定を受けるものではない。また、実施例及び比較例中における各値は下記の方法で求めた。
【0034】
(1)平均繊維径
製造された不織布の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日本電子製JCM−5000)により撮影(倍率4000倍)した。得られた写真を無作為に20枚選び、写真内の繊維の本数を数えると共に、全ての繊維の径を測定した。写真20枚のデータを一つのデータとして扱い、写真20枚の中に含まれる繊維の総数及びすべての繊維の繊維径に基づき繊維径の平均値を求め、それを不織布の構成繊維の平均繊維径とした。
【0035】
(2)繊維径分布
(1)で平均繊維径を求めた後、写真20枚の中に平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の本数を数え、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の本数が全体(写真20枚の中に含まれる繊維の総数)の何%を占めるか計算した。
【0036】
(3)空隙率
不織布の空隙率は、下式によって算出した。
空隙率(%)=100−{坪量g/m
2×100 / 樹脂密度g/cm
3 / 厚みμm }
【0037】
(4)エアフィルター試験
製造された不織布をフィルター性能試験機(東京ダイレック株式会社製DFT−4)により評価した。試験粒子はJIS11種(関東ローム焼成品)を使用した。捕集効率は光散乱法式のパーティクルカウンタを用いて算出した。
製造された不織布をフィルター性能試験機(東京ダイレック株式会社製DFT−4)により評価した。試験粒子にはJIS11種(関東ローム焼成品)を使用し、試験風速は5.3cm/sとした。捕集効率は光散乱法式のパーティクルカウンタを用いて算出した。2.5μm以下の粒子について各粒子径レンジ毎に捕集効率を算出し、その平均値をとったものを不織布の捕集効率とした。寿命試験では、粒子濃度を2500μg/m
3として試験を実施した。
【0038】
[実施例1−1]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.6mmであり、整流部の長さが2.4mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を20%とし、延伸室の真空度が30kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.8mmの位置になるように500Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角27度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は310nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の2%を占めていた。また、不織布の空隙率は85%であった。
【0039】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いて前記エアフィルター試験を行った。初期捕集効率は99.6%であり、初期圧力損失は140Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は106分であった。
【0040】
[実施例1−2]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.6mmであり、整流部の長さが1.2mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を20%とし、延伸室の真空度が20kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように500Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角32度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は330nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の7%を占めていた。また、不織布の空隙率は85%であった。
【0041】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は99.1%であり、初期圧力損失は131Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は135分であった。
【0042】
[実施例1−3]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、25フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.8mmであり、整流部の長さが1.6mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を24%とし、延伸室の真空度が15kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角35度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は345nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の13%を占めていた。また、不織布の空隙率は85%であった。
【0043】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は98.5%であり、初期圧力損失は119Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は170分であった。
【0044】
[実施例1−4]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、25フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが0.9mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が10kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.3mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角40度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は340nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の20%を占めていた。また、不織布の空隙率は85%であった。
【0045】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は94%であり、初期圧力損失は101Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は230分であった。
【0046】
[比較例1−1]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、25フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が1.0mmであり、整流部の長さが1.0mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を15%とし、延伸室の真空度が10kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.3mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角45度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は370nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の26%を占めていた。また、不織布の空隙率は85%であった。
【0047】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いて前記エアフィルター試験を行った。初期捕集効率は77%であり、初期圧力損失は61Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は352分であった。
【0048】
[比較例1−2]
エレクトロスピニング法により、実施例1−1〜1−4及び比較例1−1で使用したものと同じ基材不織布の上にPVDF極細繊維を形成した。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は100nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維は含まれていなかった(繊維総数の0%を占めていた)。なお、空隙率については、低坪量のため測定できなかった。
【0049】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:0.5g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は99.99%であり、初期圧力損失は170Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は40分であった。
【0050】
実施例1−1〜1−4及び比較例1−1を用いた前記エアフィルター試験の結果から、初期捕集効率、初期圧力損失及び圧力損失の増加に要する時間のいずれも、繊維総数に対して平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数が占める割合(以下単に「太い繊維の割合」という)が20%を超えると、その変化率が大きくなることが確認された。特に、初期捕集効率については、実施例1−1〜1−4では初期捕集効率が90%を超えているのに対して、比較例1−1では初期捕集効率が70%台まで低下しており、その差が大きい。
【0051】
以上のことから、構成繊維の平均繊維径が300〜400nmであり、かつ、空隙率が85%(多少のバラツキは許容され得る)である不織布については、エアフィルターに用いる場合、太い繊維の割合を2〜20%とすることにより、初期捕集効率が安定すると共に、初期圧力損失及び圧力損失の増加に要する時間も安定して好ましいと言える。
【0052】
また、実施例1−1〜1−4は、比較例1−2に対して遜色のない初期捕集効率(>90%)を有しており、しかも、比較例1−2に比べて、初期圧力損失が低く、前記圧力損失の増加に要した時間も十分に長くなっている。つまり、構成繊維の平均繊維径が300〜400nmである不織布において、太い繊維の割合を2〜20%とし、かつ、空隙率を85%(多少のバラツキは許容され得る)とすれば、当該不織布がエアフィルターに用いられた場合に、エレクトロスピニング法によって製造されたナノファイバー不織布と同等又はそれに近い捕集効率を発揮し、かつ、エレクトロスピニング法によって製造されたナノファイバー不織布を用いた場合の問題、すなわち、(a)圧力損失が大きい、(b)フィルター寿命が短い、という問題を改善できると言える。
【0053】
ところで、構成繊維の平均繊維径が1μm未満の不織布は、一般に、実用上十分に高い捕集効率を有していると言える。また、エアフィルターに用いられる不織布は、当該エアフィルターの主たる捕集対象である微小粒子状物質の大きさ、及び/又は、一緒に用いられる他の不織布などに応じて適宜選択されるものである。したがって、例えば、エアフィルターの主たる捕集対象である微小粒子状物質が前記エアフィルター試験で使用された試験粒子よりも大きい場合や他の不織布と共にエアフィルターを構成する場合には、前記エアフィルター試験において必ずしも高い初期捕集効率(例えば90%以上)を得る必要はない。むしろ、エアフィルター用の不織布としては、初期捕集効率等が安定していることの方が重要である。このような観点に基づく実施例が以下に示される。
【0054】
[実施例2−1]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.6mmであり、整流部の長さが2.4mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を20%とし、延伸室の真空度が30kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.8mmの位置になるように500Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角27度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は310nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の2%を占めていた。また、不織布の空隙率は93%であった。
【0055】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は75.3%であり、初期圧力損失は85Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は269分であった。
【0056】
[実施例2−2]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(570dtex、60フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.6mmであり、整流部の長さが1.2mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を20%とし、延伸室の真空度が20kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように500Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角32度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は330nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の7%を占めていた。また、不織布の空隙率は93%であった。
【0057】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は74.2%であり、初期圧力損失は84Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は281分であった。
【0058】
[実施例2−3]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、25フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.8mmであり、整流部の長さが1.6mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を24%とし、延伸室の真空度が15kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.5mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角35度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は345nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の13%を占めていた。また、不織布の空隙率は93%であった。
【0059】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は73%であり、初期圧力損失は80Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は299分であった。
【0060】
[実施例2−4]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、25フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが0.9mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が10kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.3mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角40度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は340nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の20%を占めていた。また、不織布の空隙率は93%であった。
【0061】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は69%であり、初期圧力損失は67Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は351分であった。
【0062】
[比較例2]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、25フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が1.0mmであり、整流部の長さが1.0mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を15%とし、延伸室の真空度が10kPaの状態でマルチフィラメントを0.3m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.3mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角45度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は370nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の26%を占めていた。また、不織布の空隙率は93%であった。
【0063】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は54%であり、初期圧力損失は37Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は453分であった。
【0064】
実施例2−1〜2−4及び比較例2を用いた前記エアフィルター試験の結果から、初期捕集効率、初期圧力損失及び圧力損失の増加に要する時間のいずれも、前記太い繊維の割合が20%を超えると、その変化率が大きくなることが確認された。特に、初期捕集効率については、実施例2−1〜2−4では初期捕集効率が概ね70%であるのに対して、比較例2では初期捕集効率が50%台まで低下しており、その差が大きい。
【0065】
以上のことから、構成繊維の平均繊維径が300〜400nmであり、かつ、空隙率が93%(多少のバラツキは許容され得る)である不織布についても、エアフィルターに用いる場合、太い繊維の割合を2〜20%とするのが好ましいと言える。
【0066】
[実施例3−1]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、15フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが3.6mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が30kPaの状態でマルチフィラメントを0.6m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.8mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角24度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は810nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の2%を占めていた。また、不織布の空隙率は85%であった。
【0067】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は65%であり、初期圧力損失は61Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は368分であった。
【0068】
[実施例3−2]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、15フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが2.7mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が20kPaの状態でマルチフィラメントを0.6m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.6mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角28度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は790nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の12%を占めていた。また、不織布の空隙率は85%であった。
【0069】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は60%であり、初期圧力損失は55Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は401分であった。
【0070】
[実施例3−3]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、15フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが1.8mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が10kPaの状態でマルチフィラメントを0.6m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.4mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角28度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は820nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の20%を占めていた。また、不織布の空隙率は85%であった。
【0071】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は53%であり、初期圧力損失は47Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は463分であった。
【0072】
[比較例3]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、15フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが0.9mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が10kPaの状態でマルチフィラメントを0.8m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.2mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角28度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は830nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の28%を占めていた。また、不織布の空隙率は85%であった。
【0073】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は38%であり、初期圧力損失は30Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は674分であった。
【0074】
実施例3−1〜3−3及び比較例3を用いた前記エアフィルター試験の結果から、初期捕集効率、初期圧力損失及び圧力損失の増加に要する時間のいずれも、前記太い繊維の割合が20%を超えると、その変化率が大きくなることが確認された。特に、初期捕集効率については、実施例3−1〜3−3では初期捕集効率が50%を超えているのに対して、比較例3では初期捕集効率が30%台まで低下しており、その差が大きい。
【0075】
以上のことから、構成繊維の平均繊維径が約800nmであり、かつ、空隙率が85%(多少のバラツキは許容され得る)である不織布についても、エアフィルターに用いる場合、太い繊維の割合を2〜20%とするのが好ましいと言える。
【0076】
[実施例4−1]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、15フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが3.6mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が30kPaの状態でマルチフィラメントを0.6m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.8mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角24度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は810nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の2%を占めていた。また、不織布の空隙率は93%であった。
【0077】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は45%であり、初期圧力損失は42Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は542分であった。
【0078】
[実施例4−2]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、15フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが2.7mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が20kPaの状態でマルチフィラメントを0.6m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.6mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角28度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は790nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の12%を占めていた。また、不織布の空隙率は93%であった。
【0079】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は39%であり、初期圧力損失は55Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は591分であった。
【0080】
[実施例4−3]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、15フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが1.8mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が10kPaの状態でマルチフィラメントを0.6m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.4mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角28度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は820nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の20%を占めていた。また、不織布の空隙率は93%であった。
【0081】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は36%であり、初期圧力損失は36Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は689分であった。
【0082】
[比較例4]
原フィラメントであるマルチフィラメントとして、ポリプロピレン製のマルチフィラメント(830dtex、15フィラメント)を用意した。オリフィスには、整流部の内径が0.9mmであり、整流部の長さが0.9mmのオリフィスを用い、これを10mm間隔で30個並べて配置した。オリフィス占有率を19%とし、延伸室の真空度が10kPaの状態でマルチフィラメントを0.8m/minで供給し、マルチフィラメントの溶融部の中心位置がオリフィス下3.2mmの位置になるように800Wの3mm×30mmの矩形レーザーを照射した。このときオリフィス出口でマルチフィラメントが振動角28度で振動し、生成された極細繊維を基材不織布で受けることにより複合不織布を得た。得られた複合不織布は、ニップ処理を加えた上で巻き取った。得られた複合不織布、より具体的には、基材不織布上に形成された極細繊維からなる不織布において、その極細繊維の平均繊維径は830nmであり、平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維の数は、繊維総数の28%を占めていた。また、不織布の空隙率は93%であった。
【0083】
得られた複合不織布(極細繊維の目付量:6g/m
2)を用いてエアフィルター試験を行った。初期捕集効率は26%であり、初期圧力損失は23Paであった。寿命試験では、初期圧力損失から150Pa増加するまでの時間は891分であった。
【0084】
実施例4−1〜4−3及び比較例4を用いた前記エアフィルター試験の結果から、初期捕集効率、初期圧力損失及び圧力損失の増加に要する時間のいずれも、前記太い繊維の割合が20%を超えると、その変化率が大きくなることが確認された。特に、初期捕集効率については、実施例4−1〜4−3では初期捕集効率が概ね40%であるのに対して、比較例4では初期捕集効率が20%台まで低下しており、その差が大きい。
【0085】
以上のことから、構成繊維の平均繊維径が約800nmであり、かつ、空隙率が93%(多少のバラツキは許容され得る)である不織布についても、エアフィルターに用いる場合、太い繊維の割合を2〜20%とするのが好ましいと言える。
【0086】
ここで、実施例1−1〜1−4、比較例1−2、実施例2−1〜2−4、比較例2は、構成繊維の平均繊維径が300〜400nmの不織布であるが、構成繊維の平均繊維径が0.5μm未満の不織布については、実施例1−1〜1−4、比較例1−2、実施例2−1〜2−4、比較例2と同様の結果が得られると考えられる。また、実施例3−1〜3−3、比較例3、実施例4−1〜4−3、比較例4は、構成繊維の平均繊維径が約800nmの不織布であるが、構成繊維の平均繊維径が0.5μm〜1μmの不織布については、実施例3−1〜3−3、比較例3、実施例4−1〜4−3、比較例4と同様の結果が得られると考えられる。
【0087】
したがって、構成繊維の平均繊維径が1μm未満であり、かつ、前記平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維が繊維総数の2〜20%を占める不織布は、エアフィルター用の不織布として好適であり、捕集対象に応じて適宜選択されることにより、高い捕集効率を発揮しつつ、エアフィルターの長寿命化を図ることができる。特に、構成繊維の平均繊維径が0.5μm未満であり、前記平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維が繊維総数の2〜20%を占めており、かつ、空隙率が85%(多少のバラツキは許容され得る)である不織布は、エレクトロスピニング法によって製造されたナノファイバー不織布に対して遜色のない捕集効率を発揮できると共に、圧力損失及び寿命の問題を大幅に改善することができる。
【0088】
また、例えば、構成繊維の平均繊維径が0.5μm未満であり、かつ、前記平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維が繊維総数の2〜20%を占める第1不織布と、構成繊維の平均繊維径が0.5〜1μmであり、かつ、前記平均繊維径の2倍以上10倍以下の繊維径を有する繊維が繊維総数の2〜20%を占める第2不織布と、を積層したものをエアフィルターに用いてもよい。このようにすると、捕集対象の粒径分布が広い場合などにおいて、高い捕集効率を発揮しつつ、エアフィルターの長寿命化を図ることができる
【0089】
以上では、本発明による不織布がエアフィルターに用いられる場合について説明した。しかし、本発明による不織布は、エアフィルターのみならず、それ以外の様々な用途に使用可能である。例えば、エアフィルター以外のフィルター(液体フィルター、分子フィルター)、ワイパー(ウェットワーパー、ドライワイパー)、おむつ、ティーバッグ、各種電池のセパレータ、ルーフィング、ガーゼ(フェースマスク)、タオル、コーティング基布、生理用品、合成皮革、防水基材、絶縁材、吸水シート、マスク、油吸着シート、滅菌包装資材、防護服(細菌、放射性物質)(空気抵抗最少、アエロゾル捕獲、抗生物、抗化学物質)、衣料用芯地、保温資材(ナノテキスタイル)、キャパシタ、吸着剤、吸音材、防音材、触媒担持体(水素貯蔵)、電磁波シールド、メディカル用基布(再生医療用支持体、皮膚用膜、血管用チューブ)、エンジンフィルター、防虫容器、透湿防水シート、センサー基布(温度センサー、圧力センサー、生化学センサー)に、本発明による不織布を用いることが可能である。