【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の観察窓付き混練装置は、シリンダ中にスクリューが挿通されスクリューによってシリンダ内部の被混練材を混練する、シリンダの一部が切り欠かれその切り欠き部に透明な窓材が嵌められてシリンダ内部が透視できる観察窓を有する観察窓付き混練装置において、挿通されているスクリューの表面が黒色であり、窓材のスクリュー側の面が、切り欠いたシリンダ内面に相当する面よりも0.5〜2.0mm外側に位置することを特徴とする観察窓付き混練装置である。
【0009】
請求項2に記載の観察窓付き混練装置は、窓を通してシリンダ内部が見える位置にカメラが備えられ、シリンダ内部を照射する照明装置が付帯したことを特徴とする請求項1記載の観察窓付き混練装置である。
【0010】
請求項3に記載の観察窓付き混練装置は、挿通されるスクリュー表面が硬質ブラッククロムメッキされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の観察窓付き混練装置である。
【0011】
請求項4に記載の混練観察方法は、請求項1乃至3記載の観察窓付き混練装置により被混練材料を混練し、観察窓からシリンダ内の被混練材料が混練される状態を観察する混練観察方法である。
【0012】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明における混練装置とは、単に混練する装置に留まらず、樹脂の溶融混練や反応を伴うシンリンダ内の変化を解析し操作条件を最適化するためにも用いられるので、少なくとも混練の機能を有しているが混練だけの機能に限定されず、混練以外にも加熱手段等を有し樹脂の混練溶融や反応、成形等が観察できる混練装置であることが好ましい。
本発明における混練装置は、筒状体のシリンダ(バレルと称する事もある)の内部に、軸に螺旋状のフライトが付設されたスクリューが挿通されており、シリンダ内に、シリンダに設けたホッパー等から被混練材料を投入し、シリンダ内でスクリューを回転させて被混練材料を混練する装置をいう。溶融や反応、成形等を詳細に観察分析するにはシリンダ内の温度をより詳細に制御するとともに樹脂等の温度の精密な測定ができることが好ましい。
【0013】
シリンダの材料は強度、耐熱性、耐腐食性から金属製であることが好ましく、特に鋼製であることが好ましい。
シリンダは単筒(単軸)であっても筒が合わされたもの(二軸等)であってもよい。
シリンダは内部の被混練材料を加熱するため、その外側にヒーター等が付帯されていてもよい。また誘導加熱装置や熱媒加熱装置等が付帯されていてもよい。
【0014】
被混練材料とは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂、金属粉、食品等やその添加剤、等を言う。投入時には固体であっても液体であってもかまわない。
【0015】
シリンダに窓を設けるためには、本来のシリンダの筒状部を切り欠いてもよいし、窓部以外の筒状体の残余を合わせて接合して窓部を形成してもよい。
窓部は、混練工程の重要な位置にあるシリンダに一又は複数個外部から観察しやすい位置に設けられる。混練は時間経過を伴ってシリンダ中の位置を変えて内部被混練材の様相が変化するので窓部はシリンダに複数個設け観察することが好ましい。窓部の大きさは大きい方が混練状態が全体的に把握しやすいため好ましく、内視鏡を取り付けて得られる視野よりも広い視覚情報が得られる大きさであることがが好ましい。
【0016】
ここで観察とは、人間が肉眼で行ってもよいが、カメラで撮影し画像処理することにより、より上質の情報が得られるので好ましい。特に現象を精密に解析するために高速カメラで撮影することが好ましい。一つの窓につきカメラを複数個視野角をずらして配置し画像情報処理してもよい。更に、サーモグラフィラフィにより窓を通じて内部の温度を観察すると温度分布がより精密に行うことができ好適である。
【0017】
シリンダ内部を可視光で観察するためには外部照明により光が均一に照射されていることが好ましく、窓部毎に照明装置が付帯されていることが好ましい。照明器具の光源は限定されず、白熱灯、蛍光灯、LED灯、EL灯、LD等が上げられるが、コスト、コンパクト性、長寿命性からLED灯が好ましい。
形状は限定されないが棒状、円状、円環状が好ましく、特に、円環状に発光するものが窓内を均一に照射し、カメラへの反射光が邪魔されず直接観察できるため好ましい。
照明器具の位置は限定されないが、窓を通してシリンダ内部が見える位置にカメラが備えられるので、カメラのレンズの鏡胴の周縁に付帯されていることが、光学上も混練作業上も邪魔にならず好ましい。円環状の発光体の場合は、カメラのレンズの光軸に、円環状の発光体の回転対称中心軸が重なる様に配置されることが好ましい。
【0018】
窓材の材質は赤外線、可視光、紫外線を通すものであればよいが、特に可視光の透過率が高く、しかも内部屈折や光散乱のないものが好ましく、耐熱性が高く、屈折率が均一で、機械強度が強いものが好ましい。石英や、パイレックス(登録商標)等の強化ガラス、サファイア中でも可視領域で吸収のないカラーレスサファイアが例示される。石英は比較的安価で1000℃までの高温に耐えるが、外部からの機械的刺激により内部が濁ることがある。パイレックス(登録商標)は強度が高いが、使用温度は常用温度としては260℃以下、最高温度で290℃以下が好ましい。サーモビュアーで窓から内部の温度状態を観察する場合は、石英やサファイアが好ましい。数百℃までの赤外線に対応する波長域に吸収がないため窓を介した内部の温度観察が可能だからである。しかしパイレックス(登録商標)等の強化ガラスは赤外線の透過画像が判然としないためサーモビュアー観察には適さない。サファイアは価格が高い。このため窓材は使用目的に応じて適宜選択される。
【0019】
窓部の側面の外観形状は特に限られないが、観察に好適で強度も高い円形、子判状やシリンダの中心軸に平行な辺をもつ四角形等が好ましい。
【0020】
窓材のシリンダ側の面は、シリンダの中心軸を中心とする円筒の側面形状をしており、当該窓部が設けられるシリンダの当該部分の半径よりも僅かに大きい曲率半径の円筒状面が好ましい。光学的に歪みが少なく、スクリューのフライトの先端が当たったり、樹脂等が間隙にたまりにくく、窓材に圧力がかかり破損したりするのを防ぐためである。
【0021】
窓材のスクリュー側の面が、切り欠いたシリンダ内面に相当する面よりも0.5〜2.0mm外側に位置することが必要である。スクリューはシリンダの中心軸を中心に回転するため、シリンダ内側面は円柱又は僅かに傾斜した円錐の側面の形状を為す。したがって想定されるシリンダの想定面とは、窓材が設けられるシリンダの半径の円柱側面または稀には円錐台の側面に相当する。すなわち窓材のスクリュー側の面は想定される元のシリンダ面から間隙(d)を保って、観察側(外側)にある。換言すれば当該窓部の設けられている箇所のシリンダ内壁から間隙(d)だけ外側に窓材の内面が離れて位置することが必要である。
【0022】
間隙(d)は0.5mm以上2.0mm以下であることが必要である。間隙(d)が0.5mmよりも小さいと被混練材からの圧力変動で窓材が破損しやすくなる。窓材が破損すると観察に不具合が生じる。更に、砕けた窓材の破片がスクリューやシリンダ内壁を傷つけるおそれがある。また、小さい傷でも放置していれば、窓の大きな破損につながるおそれがある。小さな傷がつく毎に高価な窓材を交換するのは不経済である。
間隙(d)が2.0mmよりも大きいと混練機を樹脂の流動観察に用いる場合に樹脂のペレットが窓材との間隙内に入り込み動かなくなり、内部の観察に邪魔になる。因みにペレットとは、樹脂を、加工しやすいように3〜5mm程度の粒状にした加工用原料をいう。
【0023】
被混練材料によっても異なるが、その窓が取り付けられている位置も関係する。窓位置がホッパーに近く混練初期過程におけるものと、窓位置が先端に近く、混練が十分進展したものの場合では特に(d)の上限値について定める要因が異なる。
運転条件により、樹脂が溶融した状態で窓が位置する場合は間隙(d)が1.0mmよりも大きいと樹脂等の流動が、本来の樹脂の流れ方とは違う流れをするようになり、つまり間隙に樹脂が入り込んで流れるような特異な樹脂流動を示す場合がある。
【0024】
窓材のスクリュー側の面と、切り欠いたシリンダ内面に相当する面との間隙に樹脂が流入することでリークを起こし部分的に圧力が下がったり混練が変わり、押出量が変化することがあり、更に樹脂等が間隙に滞留したり、運転条件によれば、焦げやすい樹脂等の材質の場合には焦げ付くこともあって、内部観察に邪魔になる場合がある。
一方運転条件により、樹脂が未溶融の状態で窓が位置する場合は間隙(d)が2.0mmよりも大きくなると未溶融ペレットが窓材のスクリュー側の面と、切り欠いたシリンダ内面に相当する面との間隙、すなわち、スクリューの外端と窓の間の間隙を通じて入りこむこと等が起こり、本来の流動状態の観察が妨げられる。
したがって、主に樹脂を原料とする溶融混練状態を観察するためには、樹脂の熱、機械特性および運転条件を設定しその観察したい状態により、窓の所定の間隙(d)を0.5〜2.0mmの間に適宜設定することにより、混練過程を好的に観察することができる。
【0025】
挿通されて用いられるスクリューの材質は限定されない。鋼やステンレスが多く用いられる。しかし表面は硬質クロムメッキ等の表面処理が施される場合が多く表面が研磨されているので、光を反射するため、スクリューからの反射光が混練状態の観察の邪魔になる。
したがって、本発明では、スクリューの表面は黒色に被覆したものを用いる。黒色層の厚みは限定されない。黒色層には黒光沢、黒半光沢、黒無光沢があるが、黒無光沢が反射しないため最も好ましい。
【0026】
黒色化の手段は限定されず、塗装、メッキ、電解発色法等が挙げられるが、硬質ブラッククロムメッキが、耐熱性、強度、耐摩耗性を有する上に十分な黒度を有するため好ましい。
硬質ブラッククロムメッキは電気めっきの一種で、主な薬品である無水クロム酸を化学反応(酸化反応)させて黒色にするメッキである。通常のシルバークロムメッキと同様に、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、外観に優れているが、ムラや傷が目立ちやすく高度な技術が必要である。膜厚を0.1〜10μmと薄く処理をする方法が一般的である。本発明においてはメッキ層の厚みは数μm〜10μmが好ましい。