(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸の周囲に複数のリーフを回転軸の周方向に隣接して配置し、前記回転軸の周囲の空間を前記回転軸の軸方向に関して高圧側の空間と低圧側の空間とに分けるリーフ積層体と、
前記リーフ積層体を前記高圧側の空間側で保持する高圧側の保持部材と、
前記リーフ積層体を前記低圧側の空間側で保持する低圧側の保持部材と、
前記保持部材とは熱膨張率が異なる材料で形成され、前記高圧側の空間の固定部に形成された円弧状の溝及び低圧側の空間の固定部に形成された円弧状の溝に挿入されるとともに、前記高圧側の空間に配置された固定部及び低圧側の空間に配置された固定部と1か所で固定され、前記溝に沿って前記回転軸の周方向に伸縮可能な円弧状のガイド部と、
前記ガイド部は、前記リーフと前記リーフの間に挿入され、前記回転軸の回転時に前記リーフを前記回転軸から離れる方向に支持する支持部を有することを特徴とする軸シール機構。
前記ガイド部は、一方の前記溝に挿入され、前記軸方向において前記リーフ積層体よりも一方の前記溝側に配置された前記周方向に延在する第1円弧部材と、他方の前記溝に挿入され、前記軸方向において前記リーフ積層体よりも他方の前記溝側に配置された前記周方向に延在する第2円弧部材と、を有し、
前記支持部は、一方の端部が前記第1円弧部材に固定され、他方の端部が前記第2円弧部材に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の軸シール機構。
前記ガイド部は、前記支持部を複数有し、前記支持部と周方向に隣接する支持部との間に複数枚の前記リーフが配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の軸シール機構。
前記ガイド部は、前記保持部材よりも熱膨張率が高く、かつ、前記リーフ積層体と前記回転軸とのなす角が鋭角となる側の端部が固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の軸シール機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、軸シール機構は、複数の薄板のリーフの先端部が回転軸から離れるように変位するが、リーフによって変位(変形)に差が生じる場合がある。変位が大きくなるリーフは、他のリーフよりも疲労が蓄積し、損傷する場合がある。リーフは、回転軸側の部分である先端が損傷しやすい。リーフが損傷するとシール性能が低下する。
【0006】
本発明は、リーフの損傷を抑制することができ、性能の低下を抑制できる軸シール機構及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る軸シール機構は、回転軸の周囲に複数のリーフを回転軸の周方向に隣接して配置し、前記回転軸の周囲の空間を前記回転軸の軸方向に関して2つの空間に分けるリーフ積層体と、前記リーフ積層体を保持する保持部材と、前記軸方向に関して前記リーフ積層体の両端のそれぞれに配置され、前記リーフ積層体の側端部と対向する対向面を有し、前記対向面に溝が形成された2つのサイドシール板と、前記保持部材と熱膨張率が異なる材料で形成され、2つの前記サイドシール板の溝の両方に挿入され、周方向の一端が固定され、かつ、他端が開放され、前記他端が前記溝に沿って周方向に伸縮移動可能な円弧状のガイド部と、を備え、前記ガイド部は、前記リーフと前記リーフの間に挿入され、前記回転軸の回転時に前記リーフを前記回転軸から離れる方向に支持する支持部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る軸シール機構は、回転軸の周囲に複数のリーフを回転軸の周方向に隣接して配置し、前記回転軸の周囲の空間を前記回転軸の軸方向に関して高圧側の空間と低圧側の空間とに分けるリーフ積層体と、前記リーフ積層体を前記高圧側の空間側で保持する高圧側の保持部材と、前記リーフ積層体を前記低圧側の空間側で保持する低圧側の保持部材と、前記保持部材とは熱膨張率が異なる材料で形成され、前記高圧側の空間の固定部に形成された円弧状の溝及び低圧側の空間の固定部に形成された円弧状の溝に挿入されるとともに、前記高圧側の空間に配置された固定部及び低圧側の空間に配置された固定部と1か所で固定され、前記溝に沿って前記回転軸の周方向に伸縮可能な円弧状のガイド部と、前記ガイド部は、前記リーフと前記リーフの間に挿入され、前記回転軸の回転時に前記リーフを前記回転軸から離れる方向に支持する支持部を有することを特徴とする。
【0009】
軸シール機構は、ガイド部を設けることで、回転時にリーフが回転軸に必要以上に近づくことを抑制することができる。これにより、リーフの振動を抑制し、リーフに疲労が蓄積することを抑制できる。これにより、リーフの損傷を抑制することができ、性能の低下を抑制できる。
【0010】
また、前記ガイド部は、一方の前記溝に挿入され、前記軸方向において前記リーフ積層体よりも一方の前記溝側に配置された前記周方向に延在する第1円弧部材と、他方の前記溝に挿入され、前記軸方向において前記リーフ積層体よりも他方の前記溝側に配置された前記周方向に延在する第2円弧部材と、を有し、前記支持部は、一方の端部が前記第1円弧部材に固定され、他方の端部が前記第2円弧部材に固定されていることが好ましい。これにより、ガイド部の支持部をリーフに対して好適に移動させることができる。
【0011】
また、前記ガイド部は、前記支持部を複数有し、前記支持部と周方向に隣接する支持部との間に複数枚の前記リーフが配置されていることが好ましい。これにより、構造を簡単にすることができる。
【0012】
また、前記ガイド部は、前記保持部材よりも熱膨張率が高く、かつ、前記リーフ積層体と前記回転軸とのなす角が鋭角となる側の端部が固定されていることが好ましい。これにより、支持部でリーフをより確実に支持することができる。
【0013】
また、前記ガイド部を複数有し、複数の前記ガイド部は、前記回転軸の周方向を分割した各領域に配置されていることが好ましい。これにより、支持部とリーフとの関係を周方向に平均化することができる。
【0014】
また、前記保持部材は、600℃における熱膨張率が11.0×10
-6/℃以上13.0×10
-6/℃以下のマルテンサイト系高クロム鋼で形成されることが好ましい。これにより、高温条件でも安定して使用することができ、回転軸の回転時に支持部でリーフをより確実に支持することができる。前記ガイド部は、600℃における熱膨張率が、14.0×10
-6/℃以上19.0×10
-6/℃以下のオーステナイト系ステンレス鋼またはNi基合金で形成されてことが好ましい。これにより、高温条件でも安定して使用することができ、回転軸の回転時に支持部でリーフをより確実に支持することができる。
【0015】
また、前記ガイド部は、一端から他端に向かうにしたがって、前記支持部の配置間隔が狭くなることが好ましい。これにより、支持部とリーフとの関係を周方向に平均化することができる。
【0016】
本発明に係る回転機械は、回転軸と、前記回転軸の周囲に配置される上記のいずれかに記載の軸シール機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リーフの損傷を抑制することができ、シール性能の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、以下で説明する実施形態における構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0020】
図1は、本実施形態に係る回転機械を有するガスタービンシステム1の一例を示す図である。
図1に示すように、ガスタービンシステム1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン4と、回転軸50を含むロータ5とを備えている。本実施形態において、回転機械は、圧縮機2及びタービン4の少なくとも一方を含む。
【0021】
圧縮機2は、導入された空気を圧縮する。圧縮機2は、ケーシング2Kを有する。ケーシング2Kの内部空間に空気が導入される。
【0022】
燃焼器3は、圧縮機2で圧縮された圧縮空気に燃料を混合して燃焼させる。
【0023】
タービン4は、燃焼器3で発生した燃焼ガスを導入して膨張させ、その燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換する。タービン4は、ケーシング4Kを有する。ケーシング4Kの内部空間に燃焼ガスが導入される。
【0024】
ロータ5は、回転軸50と、回転軸50に設けられた動翼51A及び動翼52Aとを有する。動翼51Aは、ケーシング2Kの内部空間に配置された回転軸50の部分51に設けられる。動翼52Aは、ケーシング4Kの内部空間に配置された回転軸50の部分52に設けられる。
【0025】
圧縮機2は、ケーシング2Kに配置された静翼2Aを有する。圧縮機2において、動翼51Aと静翼2Aとは、回転軸50の軸AXと平行な方向(軸方向)に交互に複数配置される。
【0026】
タービン4は、ケーシング4Kに配置された静翼4Aを有する。タービン4において、動翼52Aと静翼4Aとは、回転軸50の軸方向に交互に複数配置される。
【0027】
タービン4において、燃焼器3から導入された燃焼ガスが動翼52Aに供給される。これにより、燃焼ガスの熱エネルギーが機械的な回転エネルギーに変換されて動力が発生する。タービン4で発生した動力の一部は、回転軸50を介して圧縮機2に伝達される。タービン4で発生した動力の一部は、圧縮機2の動力として利用される。
【0028】
また、ガスタービンシステム1は、圧縮機2に配置され、回転軸50を回転可能に支持する軸受を有する支持部2Sと、タービン4に配置され、回転軸50を回転可能に支持する軸受を有する支持部4Sとを有する。
【0029】
ガスタービンシステム1は、回転軸50の周囲をシールする軸シール機構10を備えている。軸シール機構10は、圧縮機2及びタービン4のそれぞれに配置される。
【0030】
圧縮機2に配置される軸シール機構10は、作動気体Gである圧縮空気が高圧側から低圧側に漏出することを抑制する。圧縮機2の軸シール機構10は、静翼2Aの内周部に配置される。また、圧縮機2の軸シール機構10は、支持部2Sに配置される。
【0031】
タービン4に配置される軸シール機構10は、作動気体Gである燃焼ガスが高圧側から低圧側に漏出することを抑制する。タービン4の軸シール機構10は、静翼4Aの内周部に配置される。また、タービン4の軸シール機構10は、支持部4Sに配置される。
【0032】
次に、軸シール機構10について説明する。
図2は、本実施形態に係る軸シール機構10の概略を示す断面図である。
図2は、
図1のA―A線断面図に相当する。
図3は、本実施形態に係る軸シール機構10の一部を模式的に示す斜視図である。
図3は、軸シール機構10の一部を破断して示す。
図4は、回転軸50の軸AXを含む軸シール機構10の概略を示す断面図である。
図5は、軸シール機構10の分解図である。
図6は、ガイド部とリーフ積層体との関係を示す側面図である。
図7は、ガイド部とリーフ積層体との関係を示す正面図である。
図8は、ガイド部とリーフ積層体との関係を示す側面図である。
【0033】
以下の説明においては、圧縮機2及びタービン4のそれぞれに設けられた軸シール機構10のうち、タービン4に設けられた軸シール機構10について説明する。圧縮機2に設けられた軸シール機構10の構造と、タービン4に設けられた軸シール機構10の構造とは同等である。
【0034】
図2に示すように、軸シール機構10は、回転軸50の周囲に配置される複数のシールセグメント11を有する。軸AXと直交する平面内において、シールセグメント11のそれぞれは、円弧状である。本実施形態においては、回転軸50の周囲にシールセグメント11が8つ配置される。
【0035】
図3、
図4、及び
図5に示すように、シールセグメント11は、回転軸50の周囲に配置される複数のリーフ(薄板)20と、回転軸50の軸方向に関してリーフ20の一側に配置された高圧側サイドシール板16と、回転軸50の軸方向に関してリーフ20の他側に配置された低圧側サイドシール板17と、リーフ20を保持する保持リング13及び保持リング14を含む保持部材134と、リーフ20と保持部材134との間に配置される背面スペーサ15と、ガイド部18と、を備えている。
【0036】
図4に示すように、シールセグメント11は、ハウジング9に挿入される。ハウジング9は、静翼2A、支持部2S、静翼4A、及び支持部4Sの少なくとも一つに相当する。ハウジング9は、凹部9aを有する。凹部9aは、回転軸50の外周面に面する開口9kを有する。シールセグメント11の少なくとも一部は、ハウジング9の凹部9aに配置される。凹部9aは、回転軸50の周方向に延在する。凹部9aの外側に、リーフ20の一部が突出する。
【0037】
リーフ20は、可撓性を有する板状部材である。リーフ20は、弾性変形可能である。本実施形態において、リーフ20は、薄い鋼板である。リーフ20の表面の法線は、回転軸50の周方向(回転方向)とほぼ平行である。リーフ20の幅方向は、回転軸50の軸方向とほぼ一致する。リーフ20の厚さ方向は、回転軸50の周方向とほぼ一致する。リーフ20は、回転軸50の周方向に可撓性を有する。リーフ20は、回転軸50の軸方向に高い剛性を有する。
【0038】
リーフ20は、回転軸50の周方向に間隔をあけて複数配置される。リーフ20とリーフ20との間には、隙間調整板25が配置されている。リーフ20は、隣接するリーフ20との間に隙間調整板25が配置されることで、回転軸50の周方向に間隔が設けられる。リーフ20と、そのリーフ20に隣り合うリーフ20との間に隙間Sが形成される。複数のリーフ20によってリーフ積層体12が形成される。リーフ積層体12は、複数のリーフ20の集合体(積層体)である。本実施形態のリーフ20は、2種類のリーフ20が積層されている。この点については後述する。
【0039】
複数のリーフ20(リーフ積層体12)は、回転軸50の周囲をシールすることによって、回転軸50の周囲の空間を回転軸50の軸方向に関して2つの空間に分ける。本実施形態において、複数のリーフ20は、回転軸50の周囲の空間を高圧空間と低圧空間とに分ける。高圧空間の圧力は、低圧空間の圧力よりも高い。
【0040】
複数のリーフ20のそれぞれは、回転軸50の軸AXに対する放射方向(径方向)に関して外側の基端部(外側端部)20aと、内側の先端部(内側端部)20bと、回転軸50の軸方向に関して高圧空間側の側端部20cと、低圧空間側の側端部20dとを有する。
【0041】
以下の説明において、複数のリーフ20の基端部20aを合わせて適宜、リーフ積層体12の基端部12a、と称し、複数のリーフ20の先端部20bを合わせて適宜、リーフ積層体12の先端部12b、と称し、複数のリーフ20の側端部20cを合わせて適宜、リーフ積層体12の側端部12c、と称し、複数のリーフ20の側端部20dを合わせて適宜、リーフ積層体12の側端部12d、と称する。基端部12aは、複数の基端部20aの集合体である。先端部12bは、複数の先端部20bの集合体である。側端部12cは、複数の側端部20cの集合体である。側端部12dは、複数の側端部20dの集合体である。
【0042】
基端部12aは、径方向に関して外側を向く。先端部12bは、回転軸50の外周面と対向するように、径方向に関して内側を向く。側端部12cは、回転軸50の軸方向に関して一側(高圧空間側)を向く。側端部12dは、回転軸50の軸方向に関して他側(低圧空間側)を向く。先端部12b(先端部20b)は、開口9kを介して凹部9aの外側に配置される。
【0043】
本実施形態において、複数のリーフ20の基端部20aのそれぞれは、背面スペーサ15に固定される。一方、複数のリーフ20の先端部20bのそれぞれは、固定されない。すなわち、本実施形態において、基端部20aは固定端であり、先端部20bは自由端である。複数のリーフ20(リーフ積層体12)は、基端部20aが固定された状態で、保持部材134に保持される。
【0044】
リーフ20は、頭部21と胴部22とを有する。基端部20aは、頭部21に配置される。先端部20b、側端部20c、及び側端部20dは、胴部22に配置される。幅方向(回転軸50の軸方向)に関する胴部22の寸法は、頭部21の寸法よりも小さい。厚さ方向(回転軸50の周方向)に関する胴部22の寸法は、頭部21の寸法よりも小さい。胴部22は、胴部22の頭部21との境界部に切欠部20x及び切欠部20yを有する。
【0045】
本実施形態においては、複数のリーフ20は、頭部21の側方突出部21c及び側方突出部21dのそれぞれにおいて溶接により接続される。胴部22は、弾性変形可能である。
【0046】
保持部材134は、リーフ積層体12を保持する。保持部材134は、ハウジング9に支持される。ハウジング9は、凹部9aの内側に支持面9sを有する。保持部材134は、支持面9sに支持される。
【0047】
保持部材134は、保持リング13及び保持リング14を含む。保持リング13及び保持リング14のそれぞれは、回転軸50の周方向に延在する円弧状の部材である。保持リング13は、リーフ20の側方突出部21cを含む頭部21の一部が配置される凹部13aを有する。保持リング14は、リーフ20の側方突出部21dを含む頭部21の一部が配置される凹部14aを有する。背面スペーサ15は、リーフ20の頭部21と保持リング13及び保持リング14との間に配置される。
【0048】
リーフ20の頭部21が背面スペーサ15を介して凹部13a及び凹部14aにはめ込まれる。これにより、リーフ積層体12が保持部材134に保持される。
【0049】
高圧側サイドシール板16は、リーフ20(リーフ積層体12)に隣接するように高圧空間に配置される。低圧側サイドシール板17は、リーフ20(リーフ積層体12)に隣接するように低圧空間に配置される。高圧側サイドシール板16は、高圧空間においてリーフ積層体12の側端部12cの一部と対向するように配置される。低圧側サイドシール板17は、低圧空間においてリーフ積層体12の側端部12dの一部と対向するように配置される。
【0050】
高圧側サイドシール板16は、リーフ20の側端部20c(リーフ積層体12の側端部12c)の少なくとも一部と対向する対向面161を有する。高圧側サイドシール板16は、対向面161に周方向に延在する溝164が形成されている。溝164は、回転軸50と同心円の円弧となる。低圧側サイドシール板17は、リーフ20の側端部20d(リーフ積層体12の側端部12d)の少なくとも一部と対向する対向面171を有する。低圧側サイドシール板17は、対向面171に周方向に延在する溝174が形成されている。溝174は、回転軸50と同心円の円弧となる。溝174は、径方向の位置が溝164と一致している。つまり、溝164と溝174は同心円の円弧となる。
【0051】
高圧側サイドシール板16は、リーフ20の切欠部20xに配置される凸部16aを有する。切欠部20xに配置された凸部16aは、リーフ20(リーフ積層体12)及び保持リング13により固定される。
【0052】
低圧側サイドシール板17は、リーフ20の切欠部20yに配置される凸部17aを有する。切欠部20yに配置された凸部17aは、リーフ20(リーフ積層体12)及び保持リング14により固定される。
【0053】
本実施形態において、高圧側サイドシール板16の先端部163は、リーフ20の先端部20bよりも回転軸50から離れている。高圧側サイドシール板16は、径方向に関して基端部20a側の側端部20c(側端部12c)の一部と対向し、先端部20b側の側端部20c(側端部12c)の一部と対向しない。
【0054】
本実施形態において、低圧側サイドシール板17の先端部173は、リーフ20の先端部20bよりも回転軸50から離れている。低圧側サイドシール板17は、径方向に関して基端部20a側の側端部20d(側端部12d)の一部と対向し、先端部20b側の側端部20d(側端部12d)の一部と対向しない。
【0055】
また、本実施形態において、低圧側サイドシール板17の先端部173は、高圧側サイドシール板16の先端部163よりも回転軸50から離れている。本実施形態において、回転軸50の径方向に関して、高圧側サイドシール板16の寸法は、低圧側サイドシール板17の寸法よりも大きい。
【0056】
ガイド部18は、高圧側サイドシール板16に形成された溝164と低圧側サイドシール板17に形成された溝174に挿入され、溝164、174に沿って周方向に延在している。ガイド部18は、周方向において、シールセグメント11と同じ角度範囲に配置されている。1つのガイド部18は、周方向に伸縮可能な円弧形状である。軸シール機構10は、複数のガイド部18が周方向の異なる位置に設けられ、周方向のほぼ全周に配置されている。ガイド部18は、周方向の一方の端部(一端)110が高圧側サイドシール板16及び低圧側サイドシール板17に固定され、他方の端部(他端)112が開放、つまり移動可能となっている。ここで、端部110は、リーフ積層体12と回転軸50とのなす角が鋭角となる側の端部となる。リーフ20は、回転軸50の回転時に、先端が端部112側に移動する。また、ガイド部18は、溝164、174に挿入されており、一端110を支点として、溝164、174に沿って周方向に移動可能(伸縮可能)となっている。つまり、他端112は、溝164、174に沿って周方向に移動可能(伸縮可能)である。
【0057】
ガイド部18は、保持部材134と熱膨張率が異なる材料で形成されている。本実施形態のガイド部18は、保持部材134よりも熱膨張率が高い材料で形成されている。例えば、リーフ20を支持している保持部材134にマルテンサイト系高クロム鋼を用い、ガイド部18にオーステナイト系ステンレス鋼またはNi基合金を用いる。
【0058】
ガイド部18は、第1円弧部材(円弧部材)102aと第2円弧部材(円弧部材)102bと複数の支持部104とを有する。ガイド部18は、第1円弧部材(円弧部材)102aと第2円弧部材(円弧部材)102bが平行に配置され、第1円弧部材(円弧部材)102aと第2円弧部材(円弧部材)102bとの間に、複数の支持部104が列状に配置された梯子形状である。
【0059】
第1円弧部材102aは、高圧側サイドシール板16の溝164に挿入され、軸方向においてリーフ積層体12よりも溝164側(高圧側サイドシール板16側)に配置されている。第2円弧部材102bは、低圧側サイドシール板17の溝174に挿入され、軸方向においてリーフ積層体12よりも溝174側(低圧側サイドシール板17側)に配置されている。第1円弧部材102aと第2円弧部材102bとは、円弧形状の溝164、174に挿入されているため、円弧形状となるが、溝164、174から外した場合、円弧とならなくてもよい。つまり、第1円弧部材102aと第2円弧部材102bとは、溝164、174に挿入されることで、溝164、174に沿って変形する弾性を有していればよい。
【0060】
支持部104は、棒状(または線状)の部材であり、第1円弧部材102aと第2円弧部材102bとの延在方向に直交する方向が棒の軸方向となる。支持部104は、一方の端部が第1円弧部材102aに固定され、他方の端部が第2円弧部材102bに固定されている。支持部104は、周方向において、リーフ20とリーフ20との間に配置されている。ガイド部18は、支持部104が周方向に所定の間隔で配置されている。具体的には、周方向において、支持部104は、複数枚のリーフ20毎、に配置されている。
【0061】
また、ガイド部18は、一端110から他端112に向かうにしたがって、支持部104の配置間隔が狭くなる。つまり、幅Da、Db、Dcの関係が、Da≧Db≧Dcとなり、最も一端110側の支持部104間の幅が、最も他端112側の支持部104間の幅よりも広くなる。
【0062】
ガイド部18は、以上のような構成であり、回転軸50が回転していない状態では、
図6及び
図7に示すようにリーフ20に対して支持部104が力を作用させていない状態となる。次に、ガイド部18は、回転軸50が回転している状態となり、作動流体Gが流れると、
図8に示すように、リーフ20が変形し、具体的には、回転軸50の下流側に曲がり、リーフ20と回転軸50との間に隙間が生じ、上述したようにリーフ20と回転軸50とが非接触な状態となる。また、軸シール機構10は、回転軸50が回転している状態となり運転が継続されると軸シール機構10の全体が加熱された状態となり、各部が熱の影響で伸びる。ガイド部18も一端110を支点として、溝164、174に沿って各部が他端112側に延びる。ガイド部18は、保持部材134よりも熱膨張率が高いため、リーフ20よりも他端側に移動する。これにより、ガイド部18は、
図8に示すようにリーフ20が停止時に有った位置よりも回転方向下流側に支持部104が移動し、リーフ20が回転軸50側に移動することを規制する。つまり、支持部104は、リーフ20を回転軸50から離れる方向に支持する。
【0063】
このように、軸シール機構10は、ガイド部18を設けることで、回転軸50の回転時にリーフ20が一定位置よりも回転軸50に近づくことを規制でき、リーフ20の移動範囲を規制できる。これにより、リーフ20のばたつきを抑制して疲労損傷の恐れを低減することができる。また、ガイド部18を設けることで、リーフ20が回転軸50と接触することを抑制でき、リーフ20の先端の摩耗を低減することができる。これにより、例えば、リーフ20が回転時に設計通り浮上しなかった場合でもリーフ20が回転軸に接触することを抑制でき、リーフ20の摩耗を抑制することができる。
【0064】
また、ガイド部18は、支持部104を複数有し、支持部104と周方向に隣接する支持部104との間に複数枚のリーフ20が配置されている構造とすることで、ガイド部18の構造を簡単にすることができる。ここで、ガイド部18は、支持部104と支持部104との間のリーフ20を2枚以上100枚以下とすることが好ましい。なお、ガイド部18は、リーフ20とリーフ20との間の全てに、つまり、1枚のリーフ20毎に支持部104を配置してもよい。
【0065】
また、ガイド部18は、一端110から他端112に向かうにしたがって、支持部104の配置間隔を狭くすることで、回転時に、周方向の位置によって、支持部104と支持部104が支持するリーフ20との位置関係を平均化することができる。
【0066】
また、本実施形態のように、ガイド部18は、保持部材134よりも熱膨張率が高く、かつ、リーフ積層体12と回転軸50とのなす角が鋭角となる側の端部110を固定することで、支持部104でより確実にリーフ20を支持することができる。なお、ガイド部18は、保持部材134よりも熱膨張率を低くし、かつ、リーフ積層体12と回転軸50とのなす角が鈍角となる側の端部112を固定してもよい。
【0067】
また、軸シール機構10は、本実施形態のように、複数のガイド部18を回転軸50の周方向を分割した各領域に配置することで、リーフ20と支持部104との相対位置の、周方向の位置に応じた変化を小さくすることができる。これにより、支持部104でリーフ20をより確実に支持することができる。
【0068】
ここで、軸シール機構10は、保持部材134がマルテンサイト系高クロム鋼で形成されることが好ましい。さらに、保持部材134は、600℃における熱膨張率が11.0×10
-6/℃以上13.0×10
-6/℃以下のマルテンサイト系高クロム鋼で形成されることがより好ましい。つまり、軸シール機構10は、上述した材料を用いて製造した、マルテンサイト系高クロム鋼の保持部材134を用いることが好ましい。これにより、保持部材134が、600℃級の蒸気温度に対しても安定して使用可能な耐熱性を有することができ、軸シール機構10を安定して使用することができる。
【0069】
軸シール機構10は、ガイド部18がオーステナイト系ステンレス鋼またはNi基合金で形成されることが好ましい。さらにガイド部18は、600℃における熱膨張率が、14.0×10
-6/℃以上19.0×10
-6/℃以下のオーステナイト系ステンレス鋼またはNi基合金で形成されることがより好ましい。つまり、軸シール機構10は、上述した材料を用いて製造した、オーステナイト系ステンレス鋼またはNi基合金のガイド部18を用いることが好ましい。これにより、ガイド部18の保持部材との線膨張係数の差を大きくすることができる。
【0070】
軸シール機構10は、保持部材134とガイド部18に上述した好適な材料を用いることで、熱膨張率の差をおおきくすることができ、停止時に支持部がリーフを押すことを抑制しつつ、回転時にリーフの位置を支持部で規制することができる。
【0071】
上記実施形態では、1つのシールセグメント11に1つのガイド部18を設けたが、これに限定されない。軸シール機構10は、1つのシールセグメント11に複数のガイド部18を設けてもよい。つまり、1つのシールセグメント11が配置された角度範囲を複数に分割し、それぞれの領域にガイド部18を設けてもよい。また、軸シール機構10は、複数のシールセグメント11に対して1つのガイド部18を配置してもよい。また、リーフ積層体12を支持する保持部材134は、周方向の両端を、保持部材134を支持する部材に固定してもよいが、ガイド部18が固定されている端部とは反対側の端部、つまり解放されている側の端部のみを固定するようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、組み立てが簡単になり、隙間の管理もより高い精度で行うことができるため、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17をハウジング9と別体としたが、ハウジング(固定部)9をサイドシール板として設けてもよい。軸シール機構は、リーフ積層体12の軸方向の端面が対面する部分がサイドシール板となる。ガイド部は、リーフ積層体12の軸方向の端面が対面する部分(例えばサイドシール板となるハウジング)に形成された溝に挿入されることで、周方向に移動可能な状態となる。またガイド部は、溝が形成された部材に周方向の一方の端部(一端)が固定される。
【0073】
図9は、他の例の軸シール機構の概略を示す断面図である。
図9に示す軸シール機構310のシールセグメント311は、保持部材134にリーフ積層体313が固定されている。リーフ積層体313は、複数のリーフ320が周方向に積層されている。リーフ320は、軸方向の中心に、径方向の外側の端部から径方向内側に延びた凹部324が形成されている。リーフ320の凹部324には、ハウジング9の突起部330が挿入されている。突起部330は、周方向に延在するリング状の部材である。突起部330は、軸方向上流側の面に、緩衝部332が設けられている。緩衝部332は、リーフ320を移動可能な状態で支持しつつ、突出部330とリーフ320との間の隙間を低減している。
【0074】
図9に示す軸シール機構310のシールセグメント311は、ハウジング(固定部)9のリーフ積層体313と対面する面に溝364、374が形成されている。軸シール機構310は、溝364、374にガイド部18が挿入されている。ガイド部18の構造は、軸シール機構10のガイド部18と同様である。
【0075】
このように、ハウジング9等の固定部側のリング状の部材がリーフ320の一部に突出した構造とした場合も、リーフ積層体313と対面する面に溝364、374を形成し、溝364、374に挿入するガイド部18を設けることで、上記と同様の効果を得ることができる。また、
図9に示す軸シール機構310は、サイドシール板を設けず、ハウジング9にガイド部18を挿入する溝364、374を形成している。このように、ガイド部18は、シール機構310と隣接して回転軸を軸とした同心円で設けられ、かつ固定部側の部材であれば、各種部材に設けることができる。