(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の変圧器の解列及び接続の組み合わせ毎に生じ、負荷容量と損失との関係を示す特性カーブにおいて、当該特性カーブ同士が交差する各クロス点に基づいて所定の閾値を各々記憶する記憶部と、
前記各閾値に対する前記計測器の計測結果の大小関係に応じて、損失が最小となる組み合わせの前記変圧器を決定する判定部と、
前記判定部の決定に合わせて、前記各変圧器の前記負荷への接続又は解列を切り替えるコントローラと、
を更に備えること、
を特徴とする請求項1記載の変圧器システム。
前記複数の変圧器の解列及び接続の組み合わせ毎に生じ、負荷容量と損失の関係を示す特性カーブにおいて、当該特性カーブ同士が交差する各クロス点から上下に所定値離れた判定値を記憶する記憶部と、
前記計測器の計測結果が前記判定値を跨いだかを判定する判定部と、
データ送受信可能であり、前記判定部が跨いだと判定すると、警報メッセージを送信する通信部と、
前記通信部とネットワークを介して接続され、前記警報メッセージを受信する外部機器と、
前記外部機器が有し、前記警報メッセージを表示する表示画面と、
を更に備えること、
を特徴とする請求項1記載の変圧器システム。
前記複数の変圧器の損失を演算し、前記複数の変圧器の合計定格容量を有する仮想の単一変圧器の損失を演算し、更に前記両演算の結果から差分を演算することで、回避された損失を得る演算部を更に備えること、
を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の変圧器システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
(構成)
第1の実施形態に係る変圧器システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示す変圧器システム1は、受変電設備であり、電力系統200と負荷100との間に電気的に接続される。変圧器システム1は、電力系統200が供給する高圧又は特別高圧を所定電圧に変圧して負荷100に供給する。尚、電力系統200は、電力を需要家の受電設備に供給するシステムであり、送配電ネットワークを含む。負荷100は、大規模工場、プラント、高層ビル、共用施設又は商業施設などの電源設備である。
【0012】
変圧器システム1は、2台の変圧器11a、11bと、計測器12と、開閉器13a、13bと、制御部14とを備える。変圧器11a、11bは互いに並列接続されている。計測器12は、電力系統200と変圧器11a、11bとの間に設置される。開閉器13aは、一方の変圧器11aを挟んで変圧器1次側及び2次側に各々設けられる。開閉器13bは、他方の変圧器11bを挟んで変圧器1次側及び2次側に各々設けられる。
【0013】
変圧器11a、11bは異なる定格容量を有する。相対的に小定格容量の変圧器11aは、負荷100が軽負荷である時に単独運転する軽負荷時用である。この軽負荷時用の変圧器11aは、最低条件として、軽負荷時の負荷100の負荷容量を上回る定格容量を有する。但し、この変圧器11aは、軽負荷時の負荷容量に合致する出力で最大効率となる定格容量であることが望ましい。また、この変圧器11aは、鉄心にアモルファス合金を採用したアモルファス変圧器が望ましい。
【0014】
相対的に大定格容量の変圧器11bは、負荷100が通常運転している時に単独運転する通常時用である。この通常時用の変圧器11bは、最低条件として、変圧器システム1が有する総定格容量が高負荷時の負荷100の負荷容量を上回る定格容量を有する。総定格容量は、変圧器11aと変圧器11bの定格容量の合算値である。この最低条件を満たした上で、この変圧器11aは、通常時の負荷容量に合致する出力付近に最大効率を有する定格容量となることが望ましい。
【0015】
尚、軽負荷時とは、夜間や休日等によって負荷100の運転が停止又はアイドリングしている状態である。通常時は、日中や操業中等によって負荷100が運転状態にある場合である。高負荷時は、夏場や繁忙期の日中や操業中等において負荷100がフル操業状態にある場合である。例えば、負荷100の軽負荷時における負荷容量が60kWhの場合、相対的に小定格容量の変圧器11aの定格容量は、100kWhである。負荷100の通常時における負荷容量が100kWhで、高負荷時における負荷容量が150kWhの場合、相対的に大定格容量の変圧器11bは、最大効率が100kWh付近であり、定格容量が300kWhである。
【0016】
計測器12は、電流計と電圧計とを備え、電力系統200側で負荷100の負荷容量を計測する。計測器12は、電流値と電圧値を計測し、両結果を乗算することで、負荷容量を計算する。計測器12と制御部14は信号線で接続されており、計測器12は、計算した負荷容量を制御部14に入力する。電流値及び電圧値が制御部14に入力され、制御部14側で負荷容量が計算されてもよい。
【0017】
制御部14は、負荷容量を入力とした比較処理と、比較結果に応じた選択処理により、複数の変圧器11a、11bの解列及び接続を決定し、変圧器11a、11bの運転と停止、開閉器13a、13bの開閉を制御する。この制御部14は、信号線で変圧器11a、11b、及び開閉器13a、13bと制御信号を送信可能に接続されている。制御部14は、所謂コンピュータによって構成可能である。制御部14は、ASIC、FPGA、又はCPUを搭載し、ROMに記憶されたプログラムの実行によってソフトウェア処理する。この制御部14は、
図2に示すように、記憶部141と切替判定部142とコントローラ143を備える。
【0018】
記憶部141は、メモリを含み構成され、運転データ141aを記憶する。切替判定部142は、メモリとCPU等の演算制御装置を含み構成され、計測器12の計測信号が入力され、計測信号が示す負荷容量と運転データ141aから変圧器11a、11bの解列及び接続を決定する。コントローラ143は、ドライバ回路を含み構成され、変圧器11a、11b、及び開閉器13a、13bと信号線で接続され、切替判定部142の決定に合致する制御信号を送信する。
【0019】
図3は、運転データ141aを示す模式図である。運転データ141aには、閾値31と閾値32が含まれる。閾値31は閾値32よりも小さい。また、運転データ141aには、閾値31以下の負荷容量に対する制御内容情報34(第1の制御内容情報34)、閾値31超で閾値32以下の間の負荷容量に対する制御内容情報35(第2の制御内容情報35)、及び閾値32超の負荷容量に対する制御内容情報36(第3の制御内容情報36)が含まれる。制御内容情報34、35、36は、複数の変圧器11a、11bの各々について解列又は接続を示す。切替判定部142は、計測器12の測定結果と閾値31及び32を比較し、比較結果に合った制御内容情報34、35又は36を選択する。
【0020】
閾値31、32及び制御内容情報34、35、36について説明する。負荷100の負荷容量と変圧器システム1の総損失との関係を
図4に示す。当該関係は、変圧器11a、11bが各々単独運転した場合、及び並列運転した場合に区別して示す。損失は、鉄損等により成る無負荷損と、銅損等により成る負荷損との合計である。
図4に示すように、異容量の変圧器11a、11bが2台並列接続された場合、解列及び接続の組み合わせによって3種類の特性カーブ21、22、23が生じる。
【0021】
特性カーブ21は、相対的に小定格容量の変圧器11aが単独運転した場合の負荷容量と損失の関係を示す。特性カーブ22は、相対的に大定格容量の変圧器11bが単独運転した場合の負荷容量と損失の関係を示す。特性カーブ23は、変圧器11a、11bが並列運転した場合の負荷容量と損失の関係を示す。特性カーブ21、22、23は、それぞれ所定の負荷容量で交差し、特性カーブ21と特性カーブ22のクロス点21a、特性カーブ22と特性カーブ23のクロス点22a、特性カーブ21と特性カーブ23のクロス点23aが発生する。
【0022】
閾値31は、特性カーブ21と特性カーブ22とのクロス点21aが示す負荷容量である。閾値32は、特性カーブ22と特性カーブ23のクロス点22aが示す負荷容量である。切替判定部142は、閾値31、32を基準にして、変圧器11a、11bの単独運転及び並列運転を切り替えることで、負荷容量に応じて最小損失の特性カーブ21、22又は23を適用させる。尚、本実施形態では、クロス点21aからクロス点23aまでの負荷容量帯では特性カーブ22が最小総損失を示すため、クロス点23aに対する閾値は不要である。
【0023】
図5は、このような制御部14の制御動作を示すフローチャートである。制御部14は、計測器12から負荷容量を定期的に受信する(ステップS01)。負荷容量を受信すると、切替判定部142は、記憶部141から閾値31と閾値32を読み出し(ステップS02)、各閾値31、32と負荷容量とを比較し(ステップS03〜S05)、比較結果に応じて制御内容情報34、35又は36を選択する(ステップS06〜S08)。
【0024】
軽負荷時用の変圧器11aが単独運転した場合の特性カーブ21と変圧器11bが単独運転した場合の特性カーブ22のクロス点21aに相当する閾値31に対し、負荷容量が下回っている場合(ステップS03,Yes)、切替判定部142は、この条件に合致する制御内容情報34を選択する(ステップS06)。すなわち、軽負荷時に単独運転させる変圧器11aの接続、及び変圧器11bの解列に制御方法を決定する。
【0025】
切替判定部142は、選択した制御内容情報34を示す信号をコントローラ143に送信する。コントローラ143は、受信した信号に従い、変圧器11aを挟む両側の開閉器13aを閉にする閉信号を送信し(ステップS09)、変圧器11bを挟む両側の開閉器13bを開にする開信号を送信し(ステップS10)、変圧器11aに駆動信号を送信し(ステップS11)、変圧器11bに停止信号を送信する(ステップS12)。
【0026】
一方、この閾値31を上回り、且つ変圧器11bが単独運転した場合の特性カーブ22と変圧器11a、11bが並行運転した場合の特性カーブ23のクロス点22aに相当する閾値32に対し、負荷容量が下回っている場合(ステップS04,Yes)、この条件に合致する制御内容情報35を選択する(ステップS07)。すなわち、変圧器11bの接続、及び軽負荷時用の変圧器11aの解列に制御方法を決定する。
【0027】
切替判定部142は、選択した制御内容情報35を示す信号をコントローラ143に送信する。コントローラ143は、受信した信号に従い、変圧器11bを挟む両側の開閉器13aを閉にする閉信号を送信し(ステップS13)、変圧器11aを挟む両側の開閉器13bを開にする開信号を送信し(ステップS14)、変圧器11bに駆動信号を送信し(ステップS15)、変圧器11aに停止信号を送信する(ステップS16)。
【0028】
または、この閾値32を負荷容量が上回っている場合(ステップS05)、この条件に合致する制御内容情報36を選択する(ステップS08)。すなわち、変圧器11a、11bの接続に制御方法を決定する。
【0029】
切替判定部142は、選択した制御内容情報36を示す信号をコントローラ143に送信する。コントローラ143は、受信した信号に従い、変圧器11aを挟む両側の開閉器13aを閉にする閉信号を送信し(ステップS17)、変圧器11bを挟む両側の開閉器13bを閉にする閉信号を送信し(ステップS18)、変圧器11aに駆動信号を送信し(ステップS19)、変圧器11bに駆動信号を送信する(ステップS20)。
【0030】
(作用効果)
以上の変圧器システム1によれば、2台の変圧器11a、11bが異なる定格容量を有しているので、運転させる変圧器11a、11bの組み合わせに応じて、負荷容量と総損失の関係を示す特性カーブが3種類生じる。そのため、この変圧器システム1では、負荷容量が採り得る全負荷容量帯に亘って、損失の少ない変圧器11a、11bの組み合わせをきめ細やかに選択できる。
【0031】
例えば、2台の同定格容量の変圧器を並列接続した変圧器システム1では、一方の変圧器を単独運転させるか、両方の変圧器を平行運転させるかの2種類しか採り得ない。しかし、2台の異なる定格容量の変圧器11a、11bを並列接続した変圧器システム1では、相対的に小定格容量の変圧器11aを単独運転させるか、相対的に大定格容量の変圧器11bを単独運転させるか、両方の変圧器11a、11bを平行運転させるかの3種類の組み合わせを採り得る。
【0032】
従って、
図6に示すように、負荷100が軽負荷時の負荷容量の場合には、この負荷容量付近で最大効率を有する相対的に小定格容量の変圧器11aを単独運転させ、
図7に示すように、負荷100が通常時の負荷容量の場合には、この負荷容量付近で最大効率を有する相対的に大定格容量の変圧器11bを単独運転させ、負荷100が高負荷時の負荷容量の場合には、変圧器11a、11bを並行運転させることができる。そのため、負荷容量が採り得る全帯域に亘って損失を少なくする選択肢が増え、不要な電力消費が抑制され、省エネルギー効果が実現される。
【0033】
もちろん、少なくとも1台の変圧器が他の変圧器と異なっていれば、全負荷容量帯に亘って損失の少ない変圧器の組み合わせを選択でき、変圧器は3台、4台・・・と2台以上を並列に備えていてもよい。台数が多くなれば、負荷容量と総損失との関係を示す特性カーブが解列及び接続の組み合わせに応じて増加し、損失を少なくする解列及び接続の選択肢が更に増加する。また、唯1台の軽負荷時用の変圧器11aが他の変圧器と定格容量が異なっているのみならず、複数の変圧器群と他の複数の変圧器群が異なる定格容量を有していてもよい。
【0034】
尚、負荷100が採り得る負荷容量が2種類に限られる場合、2種類の負荷容量に対して最小損失の変圧器11a、11bの組み合わせが選択できればよく、負荷容量‐損失特性カーブの全てのクロス点を全て閾値化し、各閾値で挟まれる領域に対する制御内容情報を運転データ141aに含める必要はない。
【0035】
また、相対的に小定格容量の変圧器11aは、負荷100の軽負荷時用に、最大効率が軽負荷時の負荷容量近傍となるようにした。これにより、負荷100が軽負荷時の場合に特に問題であった不要な電力消費を効率よく抑制できる。また、この変圧器11aをアモルファス変圧器とすることで、不要な電力消費を更に抑制できる。
【0036】
(変形例)
図9は、変圧器11a、11bの各組み合わせによる負荷容量-効率の特性カーブ24、25、26を示すグラフである。効率は、変圧器11a、11bの出力と損失の和に対する出力の割合である。閾値31は、この特性カーブ24と特性カーブ25のクロス点24aの値、閾値32は、特性カーブ25と特性カーブ26のクロス点26aの値としてもよい。負荷容量‐損失特性カーブ21〜23の各クロス点21a〜23aの値と、負荷容量‐効率特性カーブ24〜26の各クロス点24a〜26aの値とは、一致するために、第1の実施形態に係る変圧器システム1と同一作用及び同一効果を得ることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
(構成)
次に、第2の実施形態に係る変圧器システム1を図面を参照しつつ詳細に説明する。第1の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
図10は、異なる定格容量を有する変圧器11a、11bの接続及び解列の組み合わせに応じた特性カーブ21、22、23を示すグラフである。
図10に示すように、この変圧器システム1は、クロス点21aを中心にした不感帯41とクロス点23aを中心にした不感帯42を有する。不感帯41と不感帯42は、変圧器11a、11bの解列及び接続の切り替えが行われない範囲である。
【0039】
図11に示すように、運転データ141aには、不感帯41の上限値を示す閾値51aと不感帯41の下限値を示す閾値51bと、不感帯42の上限値を示す閾値52aと、不感帯42の下限値を示す閾値52bが記憶されている。
【0040】
切替判定部142は、この閾値51a、51b、52a、52bと計測器12が測定した負荷容量との比較により、解列又は接続する変圧器11a、11bの組み合わせを決定する。
図12は、切替判定部142による決定を含む制御部14の制御動作を示すフローチャートである。
図12に示すように、制御部14は、計測器12から負荷容量を定期的に受信する(ステップS31)。負荷容量を受信すると、切替判定部142は、記憶部141から閾値51a、51b、52a、52bを読み出し(ステップS32)、各閾値51a、51b、52a、52bと負荷容量とを比較し(ステップS33〜S35)、比較結果に応じて制御内容情報34、35又は36を決定する(ステップS36〜S38)。
【0041】
まず、閾値51aは、特性カーブ21と特性カーブ22のクロス点21aを中心にした不感帯41の下限値であり、特性カーブ21は軽負荷時用の変圧器11aが単独運転した場合、特性カーブ22は変圧器11bが単独運転した場合である。この閾値51aに対し、負荷容量が下回った場合(ステップS33,Yes)、切替判定部142は、制御内容情報34を選択する(ステップS38)。すなわち、軽負荷時に単独運転させる変圧器11aの接続、及び変圧器11bの解列に制御方法を決定する。
【0042】
切替判定部142は、選択した制御内容情報34を示す信号をコントローラ133に送信する。コントローラ143は、受信した信号に従い、変圧器11aを挟む両側の開閉器13aを閉にする閉信号を送信し(ステップS39)、変圧器11bを挟む両側の開閉器13bを開にする開信号を送信し(ステップS40)、変圧器11aに駆動信号を送信し(ステップS41)、変圧器11bに停止信号を送信する(ステップS42)。
【0043】
また、閾値51bは、特性カーブ21と特性カーブ22のクロス点21aを中心にした不感帯41の上限値である。また、閾値52aは、特性カーブ22と特性カーブ23のクロス点22aを中心にした不感帯42の下限値であり、特性カーブ23は変圧器11a、11bが並行運転した場合である。この閾値51bと閾値52aの間に負荷容量がある場合(ステップS34,Yes)、切替判定部142は、この条件に合致する制御内容情報35を選択する(ステップS39)。すなわち、変圧器11bの接続、及び軽負荷時に単独運転させる変圧器11aの解列に制御方法を決定する。
【0044】
切替判定部142は、選択した制御内容情報35を示す信号をコントローラ143に送信する。コントローラ143は、受信した信号に従い、変圧器11bを挟む両側の開閉器13bを閉にする閉信号を送信し(ステップS43)、変圧器11aを挟む両側の開閉器13aを開にする開信号を送信し(ステップS44)、変圧器11bに駆動信号を送信し(ステップS45)、変圧器11aに停止信号を送信する(ステップS46)。
【0045】
閾値52bは、特性カーブ22と特性カーブ23のクロス点22aを中心にした不感帯42の上限値であり、特性カーブ22は変圧器11bが単独運転した場合、特性カーブ23は変圧器11a、11bが並行運転した場合である。この閾値52bに対し、負荷容量が上回った場合(ステップS35,Yes)、切替判定部142は、この条件に合致する制御内容情報35を選択する(ステップS40)。すなわち、変圧器11a、11bの並行運転に制御方法を決定する。
【0046】
切替判定部142は、選択した制御内容情報35を示す信号をコントローラ133に送信する。コントローラ143は、受信した信号に従い、変圧器11aを挟む両側の開閉器13aを閉にする閉信号を送信し(ステップS47)、変圧器11bを挟む両側の開閉器13bを閉にする閉信号を送信し(ステップS48)、変圧器11aに駆動信号を送信し(ステップS49)、変圧器11bに駆動信号を送信する(ステップS50)。
【0047】
負荷容量が不感帯41又は不感帯42内にある場合(ステップS33,No、ステップS34,No、ステップS35,No)、切替判定部142の処理は終了する(END)。換言すると、制御内容情報34〜36の選択を行わず、コントローラ143に制御内容情報34〜36を送信しない。コントローラ143は、変圧器11a、11b、開閉器13a、13bに対して開信号、閉信号、駆動信号又は停止信号を送信しない。
【0048】
(作用効果)
以上の変圧器システム1によれば、負荷容量がクロス点21a、22aを横切っても不感帯41、42を負荷容量が離脱するまでは応答せず、変圧器11a、11bの接続及び解列を切り替えない。
【0049】
例えば、
図13の(a)に示すように、軽負荷時用の変圧器11aが単独運転した場合の特性カーブ21と変圧器11bが単独運転した場合の特性カーブ22のクロス点21aを中心に負荷容量が継続的に遥動変化した場合、
図13の(b)に示すように、クロス点21aを横切るたびに、変圧器11aの単独運転と変圧器11bの単独運転が切り替えられる。変圧器11a、11bの運転と停止の切り替えは、開閉器13a、13bの開閉寿命を縮め、また励磁突入電流による電圧変動の要因ともなる。
【0050】
しかし、
図13の(c)に示すように、本実施形態によると、例えば、不感帯41の下限値を上回り、クロス点21a付近で負荷容量が遥動変化しても、軽負荷時用の変圧器11aの単独運転を維持し、不感帯41の上限値である閾値51bを上回って、初めて変圧器11bの単独運転に切り替えられる。そのため、クロス点21aを横切るたびに変圧器11aの単独運転と変圧器11bの単独運転が切り替えられることはなく、遮断器15a、15bの開閉寿命が縮まることを抑制し、また励磁突入電流による電圧変動を抑制できる。
【0051】
(第3の実施形態)
(構成)
次に、第3の実施形態に係る変圧器システム1を図面を参照しつつ詳細に説明する。第1又は第2の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
第2の実施形態では、クロス点21a、23aを中心にした不感帯41、42を設定した。これにより、変圧器11a、11bの接続又は解列の切り替えが頻繁に生じることを抑制した。この他、負荷容量がクロス点21a、23aを横切って維持時間が経過すると切り替えを行うようにして、頻繁な切り替えを抑制するようにしてもよい。
【0053】
図14は、制御部14の構成を示すブロック図である。
図14に示すように、制御部14は、タイマー144と検知部145とを更に備える。タイマー144は、水晶振動子等の基本クロック生成回路とCPU等を含み構成され、予め定められた所定時間を計時する。検知部145は、CPU等とメモリを含み構成され、タイマー144による所定時間がタイムアップするまでに、切替判定部142の決定に変化がないか判定する。切替判定部142は、決定に変化がなく、所定時間がタイムアップすると、コントローラ143に制御内容情報34、35又は36を送信する。
【0054】
図15は、この制御部14の制御動作を示すフローチャートである。制御部14は、計測器12から負荷容量を受信する(ステップS61)。負荷容量を受信すると、判定部132は、制御内容情報34、35又は36を仮決定する(ステップS62)。仮決定は、切替判定部142による比較処理によって制御内容情報34、35又は36が選択されたものの、コントローラ143へ選択内容を通知していない状態である。このステップS62では、第1の実施形態のステップS02〜S08又は第2の実施形態のステップS32〜S38が実行される。
【0055】
制御内容情報34、35又は36が仮決定すると、検知部145は、仮決定された制御内容情報34、35又は36が前回と不変であるか判定する(ステップS63)。尚、仮決定された制御内容情報34、35又は36は少なくとも前回分がメモリに記憶される。
【0056】
検知部145により前回との変化が検知された場合(ステップS63,No)、タイマー144は所定時間の計時を開始する(ステップS64)。一方、検知部145により前回と不変であることが検知され(ステップS63,Yes)、タイマー144により所定時間がタイムアップすれば(ステップS65,Yes)、切替判定部142は、仮決定された制御内容情報34、35又は36をコントローラ143に送信する(ステップS66)。コントローラ143は、制御内容情報34a、34b又は34cに従って、変圧器11a、11b、開閉器15a、15bを制御する(ステップS67)。
【0057】
一方、タイムアップしていない間は(ステップS65,No)、ステップS61に戻り、負荷容量の受信から制御内容情報34、35又は36の仮決定を経て、前回との変化の判定を繰り返す。所定時間の計時中、すなわちタイムアップしていない間に(ステップS65,No)、仮決定された制御内容情報34、35又は36が変化した場合には(ステップS63,No)、タイマー144によるカウントがゼロに初期化され、カウントをやり直すことになる。
【0058】
(作用効果)
以上の変圧器システム1によれば、負荷容量がクロス点21a、23aを横切っても、横切ったままの状態を所定時間維持するまでは変圧器11a、11bの離脱及び解列による応答はしない。
【0059】
例えば、
図16の(a)に示すように、本実施形態によると、クロス点21aを負荷容量が大になる方向に横切っても、
図16の(b)に示すように、クロス点21a付近で負荷容量が遥動変化する限り、タイマー144による所定時間の計時はタイムアップしないので、軽負荷時用の変圧器11aの単独運転を維持する。そのため、クロス点21aを横切るたびに変圧器11aの単独運転と変圧器11bの単独運転が切り替えられることはなく、開閉器13a、13bの開閉寿命が縮まることを抑制し、また励磁突入電流による電圧変動を抑制できる。
【0060】
(第4の実施形態)
(構成)
次に、第4の実施形態に係る変圧器システム1を図面を参照しつつ詳細に説明する。第1乃至3の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
この変圧器システム1は、
図17に示すように、演算部15と通信部16と外部機器300を備えている。演算部15は、CPU等の演算制御装置を含み構成されており、制御部14と共通のコンピュータにより成る。通信部16は、LAN、WAN、専用回線等の通信ネットワークに接続されるネットワークアダプタであり、外部機器300に対してデータを送信する。この外部機器300は、変圧器システム1を管理するユーザの所在施設側に備えられる所謂コンピュータであり、又はユーザの携帯するコンピュータ搭載の端末であり、データを文字や図形等のキャラクタに可視化する表示画面301を有する。
【0062】
この演算部15は、損失抑制量と抑制電気料金を演算する。損失抑制量は、1台の変圧器のみで構成される変圧器システムで生じる損失と変圧器システム1で生じる損失の差分である。演算部15は、1台の変圧器のみで構成される変圧器システムの負荷容量‐損失特性カーブを予め記憶する。そして、演算部15は、この特性カーブと計測器12の計測結果とから、この変圧器システムの損失を計算する。また、演算部15は、各特性カーブ21、22、23を記憶し、制御部14の決定から変圧器11a、11bの接続及び解列の状況にあった特性カーブ21、22又は23を選択する。そして、演算部15は、選択した特性カーブ21、22又は23と計測器12の計測結果から、変圧器システム1の損失を計算する。最後に、演算部15は、両計算結果を差分することで損失抑制量を計算する。
【0063】
抑制電気料金は、1台の変圧器で構成される変圧器システムに比べて変圧器システム1が節約できた電気料金を示す。演算部15は、予め電気料金単価を記憶し、損失抑制量に電気料金単価で乗じることで抑制電気料金を計算する。
【0064】
通信部16は、演算部15で計算された損失抑制量と抑制電気料金をユーザの外部機器300へ送信する。外部機器300では、損失抑制量と抑制電気料金を表示画面301に表示し、ユーザが閲覧可能にする。尚、損失抑制量と抑制電気料金は、何れか一方又は両方が演算され、外部機器300へ送信される。
【0065】
このように、この変圧器システム1は、損失抑制量と抑制電気料金の何れか一方又は両方を演算するようにした。これにより、変圧器システム1を管理するユーザは、変圧器システム1による省エネルギー効果を把握できる。
【0066】
(第5の実施形態)
(構成)
次に、第5の実施形態に係る変圧器システム1を図面を参照しつつ詳細に説明する。第1乃至4の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0067】
第5の実施形態に係る変圧器システム1は、変圧器11a、11bの接続及び解列を遠隔で手動操作可能となっている。この変圧器システム1は、
図18に示すように、通信部16と警報判定部17とを更に備えている。警報判定部17は、CPU等を含み構成されており、制御部14と共通のコンピュータにより成る。記憶部141には警報タイミング値が更に記憶されている。
【0068】
図19に示すように、警報判定部17は、判定値61〜64を演算する。判定値61〜64は、クロス点21a及び22aの値を基準に、警報タイミング値だけ上下に離れた値である。そして、警報判定部17は、この判定値61、62、63又は64に計測器12が計測した負荷容量が達したか判定する。すなわち、この警報判定部17は、負荷容量がクロス点21a又は22a付近か判定する。警告判定部17は、負荷容量が判定値61、62、63又は64に達した場合、警報メッセージ17aを通信部17を介してユーザの外部機器300に送信する。警報メッセージ17aは、負荷容量のデータを含み、変圧器11a、11bの切り替え間近であることを示す。
【0069】
また通信部16は、外部機器300から制御内容情報34、35又は36を受信する。通信部16は、受信した制御内容情報34、35又は36をコントローラ143に送信する。コントローラ143は、制御内容情報34、35又は36に従って、変圧器11a、11b、開閉器13a、13bに駆動信号又は停止信号、及び開信号又は閉信号を送信し、変圧器11a、11bの接続及び解列を切り替える。
【0070】
一方、
図20に示すように、外部機器300には、表示画面301の他、入力マンマシンインターフェース302と、制御内容情報34、35又は36を生成する生成部303と、警報メッセージ17aの受信及び生成部303の生成した制御内容情報34、35又は36の変圧器システム1への送信を行う通信部304を備える。
【0071】
外部機器300は所謂コンピュータであり、表示画面301はディスプレイであり、入力マンマシンインターフェース302はキーボード、マウス又はタッチパネル等のユーザの入力を受け付ける周辺機器であり、生成部303は主にCPU等により構成され、通信部304はネットワークアダプタ等の通信ネットワークに対するインターフェースである。
【0072】
この表示画面301は、変圧器システム1から送信されてきた警報メッセージ17aを表示する。生成部303は、GUIインターフェースを構成し、入力マンマシンインターフェース302からの操作信号に応じて制御内容情報34、35又は36を選択する。このとき、生成部303は、表示画面301に変圧器11a、11bの各々に対して接続及び解列を選択するボタンを表示させる。
【0073】
尚、生成部303は、運転データ141aを記憶する記憶部141と、閾値31、32と負荷容量との比較によって制御内容情報34、35又は36を決定する切替判定部142を備えるようにしてもよい。生成部303は、判定部132の決定内容をボタンとともに表示画面301に表示し、当該ボタンの押下に従って、制御内容情報34、35又は36を選択する。
【0074】
通信部304は、生成部303が選択した制御内容情報34、35又は36を変圧器システム1に送信する。この通信部304が送信した制御内容情報34、35又は36が変圧器システム1の制御部14に送られ、変圧器11a、11bの接続及び解列を切り替える情報となる。
【0075】
図21は、このような変圧器システム1と外部機器300の動作を示すフローチャートである。制御部14は、計測器12から負荷容量を受信する(ステップS71)。負荷容量を受信すると、警報判定部17は、判定値61〜64と負荷容量との大小関係を検出する(ステップS72)。
【0076】
更に警報判定部17は、検出した大小関係が前回と比べて不変か判断する(ステップS73)。尚、警報判定部17は、前回の大小関係をメモリに記憶させている。大小関係が不変であると(ステップS73,Yes)、警報判定部17は処理を終了する(END)。
一方、大小関係が変化していると(ステップS73,No)、警報判定部17は、計測器12が計測した負荷容量を含めた警告メッセージ17aを生成し(ステップS74)、通信部16を介して外部機器300に警告メッセージ17aを送信する(ステップS75)。
【0077】
外部機器300では、通信部304が警告メッセージ17aを受信すると(ステップS76)、生成部303が表示画面301上に警告メッセージ17aを掲載したGUI操作画面を表示させる(ステップS77)。入力マンマシンインターフェース302を用いて変圧器11a、11bの切り替え操作がなされると(ステップS78)、生成部303は操作に従った制御内容情報34、35又は36を生成し(ステップS79)、通信部304を介して変圧器システム1に送信する(ステップS80)。
【0078】
変圧器システム1では、通信部16が制御内容情報34、35又は36を受信し(ステップS81)、コントローラ143により制御内容情報34、35又は36に従った変圧器11a、11bの接続及び解列の切り替えを行う(ステップS82)。
【0079】
(作用効果)
このように、変圧器システム1は、負荷容量に基づく制御内容情報34、35又は36の自動決定に加えて、ユーザが外部機器300を用いて手動で変圧器11a、11bの接続及び解列を切り替えることができるようにした。ユーザは、負荷100の今後の変化を予想できる場合があり、変圧器システム1の自動的な切り替えを待たずに先取りして、変圧器11a、11bの接続及び解列を切り替えることができる。
【0080】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る変圧器システム1を図面を参照しつつ詳細に説明する。第5の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図22に示すように、この変圧器システム1において、外部機器300は、メモリを含み構成される記憶部305と、CPU等の演算制御装置を含み構成されるリスト表示制御部306を備えている。
【0081】
記憶部305には、制限順位リスト305aが記憶されている。制限順位リスト305aは、負荷100の運転を制限する内容をリスト化したデータであり、制限が容易な内容から昇順に記載している。例えば、病院において手術室の各種負荷設備よりも待合室の照明のほうが安全の観点から制限が容易である。制限順位リスト305aには、待合室の消灯が手術室の負荷設備停止よりも高順位に記載されている。リスト表示制御部306は、外部機器300が変圧器システム1から警告メッセージを受信すると、生成部303が生成した操作画面に制限順位リスト305aをレイアウト表示する。
【0082】
この変圧器システム1によれば、変圧器11a、11bの切り替えによる損失抑制に加え、負荷100を制限することにより損失抑制を図ることもでき、併用によって損失抑制の効率が高まる。また、負荷100の制限の仕方の示唆をユーザに与えることができ、ユーザの利便性が高まる。
【0083】
(その他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、実施形態を全て又はいずれかを組み合わせたものも包含される。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。