(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1では、前突する前、即ち、通常時に回動レバーが不意に回動しないように固定しておくための部材を使用しているので部品点数が多くなり、組立が煩雑である。また、特許文献1では、回動レバーを回動可能に支持するための支軸が必要になることによっても部品点数の増加を招く。
【0008】
さらに、回動レバーの支軸をブラケットに固定するにあたり、例えば支軸の端部をかしめて固定するカシメ固定構造を採用することが考えられるが、このようにするとカシメ固定専用の設備が必要になる。
【0009】
そこで、支軸をボルト及びナットで構成することが考えられるが、このようにした場合には部品点数の増加を招くと共に、ナット締め付け専用設備が必要になる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品点数を削減するとともに特別な設備を使用することなく、車両の前突時に操作ペダルを確実に離脱させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、前突時に操作ペダルを離脱方向に押すためのレバー部材の一部をブラケットに対して溶接して固定するようにし、この溶接部以外の部分に、前突時に車体側部材を当接させてレバー部材を変位させ、これにより操作ペダルに対して離脱方向の押圧力を作用させるようにした。
【0012】
第1の発明は、
車両に配設されているダッシュパネルの車両後方に設けられる操作ペダルの支持構造において、
上記ダッシュパネルに取り付けられ、上記操作ペダルを車両前後方向に揺動自在に、かつ、所定方向への所定以上の押圧力が作用した該操作ペダルを離脱可能に支持するペダルブラケットと、
上記ダッシュパネルの車両後方に、上記ペダルブラケットから離れて設けられた車体側部材と、
上記ペダルブラケットに溶接される溶接部と、該溶接部から上記ペダルブラケットの上側へ向けて突出し、車両の前突時に上記車体側部材に当接する当接部と、上記溶接部及び上記当接部の間の部位において該当接部よりも低剛性に構成され、車両の前突時に上記当接部に対して上記車体側部材から作用する力によって変形して該当接部を変位させる低剛性部とを有するレバー部材とを備え、
上記レバー部材は、車両の前突時に上記車体側部材から作用する力によって上記低剛性部を変形させて上記当接部が上記操作ペダルを上記ペダルブラケットから離脱する方向に上記所定以上の押圧力で押すように構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、レバー部材の溶接部がペダルブラケットに対して溶接されるので、従来例のようなピン部材や各種締結部材等を設けることなく、通常時にレバー部材が動かないように所定位置に確実に固定しておくことが可能になる。よって、部品点数が削減される。また、溶接は、本発明のような操作ペダルの支持構造を製造する現場において一般に多く用いられているので、レバー部材の溶接部をペダルブラケットに溶接するにあたって特別な設備を用意する必要はない。
【0014】
そして、車両の前突時には、車体側部材がレバー部材の当接部に当接し、当接部に対して車体側部材から力が作用する。すると、低剛性部が変形して当接部が変位していき、この当接部が操作ペダルをブラケットから離脱させる方向に押す。前突時にレバー部材の当接部に作用する力は十分に大きく、これにより操作ペダルがペダルブラケットから離脱するので、運転者の下肢に作用する衝撃力が緩和される。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
上記レバー部材は、車幅方向両側にそれぞれ上記溶接部を有していることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、レバー部材の車幅方向両側がそれぞれペダルブラケットに溶接されることになるので、レバー部材がペダルブラケットに対してしっかりと固定される。そして、車体側部材が当接部に当接するときは車両が衝突したときであるため、当接部に対して作用する力の方向が一定方向に定まらないことが考えられるが、この構成のようにレバー部材の車幅方向両側をそれぞれペダルブラケットに固定しておくことで、レバー部材のペダルブラケットへの取付部分が安定し、当接部を狙い通りに変位させて操作ペダルをブラケットから離脱する方向に確実に押すことが可能になる。
【0017】
第3の発明は、第1または2の発明において、
上記レバー部材は板材を成形してなり、
上記レバー部材における上記溶接部と上記当接部との間を切り欠くことによって上記低剛性部が構成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、レバー部材を構成する板材を切り欠くことで、低コスト、かつ、容易に低剛性部が得られる。
【0019】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、
上記ペダルブラケットは、車両前後方向に延びる側板部を有し、
上記レバー部材の上記溶接部は、上記ペダルブラケットの上記側板部に沿って延びるとともに、該側板部の板厚方向に重なるように配置されて上記ペダルブラケットにスポット溶接されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、ペダルブラケットとレバー部材の溶接部とが短時間で、しかも確実に溶接される。
【0021】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、
上記操作ペダルは、上記ペダルブラケットに締結される支軸を有するとともに、該支軸周りに揺動し、
上記ペダルブラケットには、上記支軸が挿通する挿通孔が下方に開放するように形成され、
上記当接部は、上記支軸の外面に上方から対向する対向縁部を有し、車両の前突時には上記当接部が下方へ変位して該対向縁部が上記支軸を下方へ押すことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、車両の前突時にレバー部材の当接部が下方へ変位することによって該当接部の対向縁部が操作ペダルの支軸を下方へ押すことになる。このとき、ペダルブラケットに形成されている挿通孔が下方に開放されているので、支軸が挿通孔の下方から確実に離脱する。
【0023】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、
上記レバー部材には、上記操作ペダルの操作状態を検出するための検出部が取り付けられる取付部が一体成形されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、レバー部材を利用して部品点数を削減しながら検出部を取り付けることが可能になる。
【0025】
第7の発明は、第5の発明において、
上記レバー部材の上記溶接部は、上記支軸よりも車両後側に位置付けられ、
上記車体側部材は、上記支軸の上方に位置付けられていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、車両の前突時に、車体側部材がレバー部材の当接部に当接すると、溶接部が支軸よりも車両後側に位置し、かつ、車体側部材が支軸の上方に位置しているので、当接部は車両前方へ回動するように変位する。これにより、当接部の対向縁部が操作ペダルの支軸を確実に下方へ押すことになる。
【発明の効果】
【0027】
第1の発明によれば、レバー部材の溶接部をペダルブラケットに溶接し、前突時に、溶接部から突出する当接部に車体側部材を当接させて溶接部及び当接部の間の低剛性部を変形させることにより当接部を変位させ、この当接部が操作ペダルをペダルブラケットから離脱する方向に押すようにしている。これにより、従来例のようにレバー部材を固定しておくためのピン部材等が不要になって部品点数を削減できるとともに、特別な設備を不要にすることができ、しかも、車両の前突時には操作ペダルをペダルブラケットから確実に離脱させることができる。
【0028】
第2の発明によれば、レバー部材の車幅方向両側がそれぞれペダルブラケットに固定されることになるので、レバー部材のペダルブラケットへの取付部分を安定させることができ、当接部を狙い通りに変位させて操作ペダルをペダルブラケットから離脱する方向に確実に押すことができる。
【0029】
第3の発明によれば、板材から成形されたレバー部材の溶接部と当接部との間を切り欠くことによって低コスト、かつ、容易に低剛性部を得ることができる。
【0030】
第4の発明によれば、ペダルブラケットの側板部にレバー部材の溶接部を重なるように配置してスポット溶接するようにしたので、短時間での確実な溶接が可能になって高い製造効率を得ることができる。
【0031】
第5の発明によれば、操作ペダルの支軸が挿通する挿通孔が下方に開放しており、車両の前突時にレバー部材の当接部が下方へ変位して該当接部の対向縁部が操作ペダルを下方へ押すようにしたので、支軸を挿通孔の下方から確実に離脱させることができる。
【0032】
第6の発明によれば、操作ペダルの操作状態を検出するための検出部が取り付けられる取付部をレバー部材に一体成形したので、部品点数を削減することができる。
【0033】
第7の発明によれば、レバー部材の溶接部を操作ペダルの支軸よりも車両後側に位置付け、車体側部材を支軸の上方に位置付けたので、車両の前突時に、当接部が車両前方へ回動するように変位し、これにより、当接部の対向縁部が操作ペダルの支軸を確実に下方へ押して操作ペダルをペダルブラケットから確実に離脱させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る操作ペダルの支持構造1を示すものである。操作ペダルの支持構造1は、例えば乗用自動車や貨物搬送車等における乗員用車室A(
図2に示す)内の運転席側に設けられており、車両に配設されているブレーキ装置(図示せず)を操作するとともに、車両が前側から障害物に衝突したとき、及び車両に前側から他の車両が衝突したとき(これらの場合をまとめて前突時という。)に、運転者の下肢に加わる衝撃力を緩和するためのものである。
【0037】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車幅方向左側を単に「左」といい、車幅方向右側を単に「右」というものとする。
【0038】
はじめに、車両の構造について説明する。
図2に示すように、車両には、乗員用車室Aと、乗員用車室Aよりも前方に設けられたエンジンルームBとを区画するダッシュパネルPが配設されている。エンジンルームBには、図示しないがエンジンやトランスミッション等が配設されている。ダッシュパネルPは、略上下方向に延びる鋼板等からなるものである。このダッシュパネルPには、ブレーキ装置のマスターシリンダーのロッド100(
図2に仮想線で示す)がエンジンルームBから乗員用車室Aへ向けて挿通する貫通孔(図示せず)が形成されている。また、ダッシュパネルPの下縁部は、乗員用車室Aのフロアを構成するフロアパネル(図示せず)の前縁部と繋がっている。
【0039】
(操作ペダルの支持構造の全体構成)
次に、操作ペダルの支持構造1の全体構成について説明する。
図2に示すように、操作ペダルの支持構造1は、ダッシュパネルPの車両後方に設けられるものであり、
図1、
図3にも示すように、通常時に運転者が踏み込み操作する操作ペダルとしてのブレーキペダル2と、ブレーキペダル2を前後方向に揺動自在に、かつ、下方への所定以上の押圧力が作用した該ブレーキペダル2を離脱可能に支持するペダルブラケット3と、車体側部材としてのインストルメントパネル補強メンバ4と、ペダルブラケット3に取り付けられるレバー部材5とを備えている。尚、本明細書で「通常時」とは、通常走行時や停車時等のことであり、車両が前突した時以外のことである。
【0040】
(ペダルブラケットの構成)
ペダルブラケット3は、複数のプレス成形された鋼板を組み合わせて互いにスポット溶接して一体化したものであり、左側板部30と、右側板部31と、前板部32と、ブレーキスイッチ取付板部(取付部)33とを少なくとも有している。左側板部30は、上下方向に延びるとともに、ダッシュパネルPの車室内面から後方へ突出するように形成されている。右側板部31は、左側板部30から右側に離間して配置され、該左側板部30と略平行に延び、同様にダッシュパネルPの車室内面から後方へ突出するように形成されている。左側板部30及び右側板部31の前縁部同士が前板部32によって連結されている。前板部32は、ダッシュパネルPの車室内面に沿って上下方向に延びており、
図2に示すように、上下方向の中間部に段差部32bが設けられている。前板部32の段差部32bよりも上側の部分は、下側の部分に比べて後に位置している。
【0041】
前板部32は、ダッシュパネルPに対して図示しないボルト及びナット等の締結部材によって締結固定されている。
図1及び
図3に示すように、前板部32の下側には、ブレーキ装置のマスターシリンダーのロッド100(
図2に仮想線で示す)が挿通するロッド挿通孔32aが形成されている。このロッド挿通孔32aは、ダッシュパネルPの上記貫通孔と一致している。
【0042】
左板部30の上部には、後側へ延びる左側支持板部30aが形成されている。左板部30の左側支持板部30aよりも下側の部分は、下方へ行くほど前に位置するように形成されている。
図3に示すように、左側支持板部30aには、ブレーキペダル2が有する支軸21を構成しているボルト21bが挿通する左側挿通孔30bが左側支持板部30aを左右方向に貫通するように形成されている。左側挿通孔30bの一部は下方に開放されている。
【0043】
また、右板部31の上部には、後側へ延びる右側支持板部31aが形成されており、この右側支持板部31aは、側面視で上記左側支持板部30aと重複するようになっている。右板部31の右側支持板部30aよりも下側の部分は、下方へ行くほど前に位置するように形成されている。右側支持板部31aには、ブレーキペダル2の支軸21を構成しているボルト21bが挿通する右側挿通孔31bが右側支持板部31aを左右方向に貫通するように形成されている。右側挿通孔31bも側面視で左側挿通孔30bと重複するようになっている。右側挿通孔31bの一部は下方に開放されている。
【0044】
左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bは上述のように下方に開放されており、その開放部の幅は、左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bの最大内径よりも狭く設定されている。これにより、後述するブレーキペダル2の支軸21が組付時等に不意に脱落するのを防止することができる。尚、開放部の代わりに、左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bの周方向の一部を切り欠く等して弱く形成しておいてもよい。
【0045】
ブレーキスイッチ取付板部33は、左板部30の左側支持板部30aの後側と、右板部31の右側支持板部31aの後側とを連結するように、ペダルブラケット3の後側に設けられている。ブレーキスイッチ取付板部33は、
図2に示すように略上下方向に延びており、下側へ行くほど後に位置するように傾斜配置されている。
図4に示すように、ブレーキスイッチ取付板部33の上部が左側支持板部30a及び右側支持板部31aに対して厚み方向に重なるように配置されてスポット溶接により固定されている。ブレーキスイッチ取付板部33の下部には、ブレーキペダル2の操作状態、即ちブレーキペダル2が踏み込まれているか否かを検出するための検出部としてのブレーキスイッチ101(
図2に仮想線で示す)が取り付けられている。
【0046】
(ブレーキペダルの構成)
図1に示すように、ブレーキペダル2は、上下方向に延びるペダル本体20と、支軸21とを備えている。ペダル本体20の下端部には、運転者が踏む踏み面20aが設けられている。支軸21は、ペダル本体20の上部に設けられている。すなわち、
図3に示すように、ペダル本体20の上部には、支軸21の一部を構成する金属製スリーブ20bが左右方向に延びるように設けられている。このスリーブ20bは、ペダル本体20に対して動かないように固定されており、ペダル本体20はスリーブ20bの左右方向中央部に位置している。
【0047】
図2に示すように、スリーブ20bと、ペダルブラケット3の前板部32とは、前後方向に離間している。後述する前突時に前側へ回動変位した当接部53の下部が、スリーブ20bと、ペダルブラケット3の前板部32との間に入ることができるようになっている。
【0048】
スリーブ20bの左右方向の寸法は、ペダルブラケット3の左側支持板部30aと右側支持板部31aとの左右方向の離間寸法よりも若干短めに設定されており、スリーブ20bは左側支持板部30aと右側支持板部31aとの間に配置される。また、スリーブ20bの両端開口と、ペダルブラケット3の左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bとは一致するように配置される。また、ブレーキペダル2の支軸21は、円筒状のブッシュ20c、20cを備えている。ブッシュ20c、20cは、スリーブ20bに左右両側からそれぞれ挿入されている。
【0049】
支軸21は、金属製の円筒部材21aと、円筒部材21aに対して左側から挿入されるボルト21bと、このボルト21bの軸部に右側から螺合するナット21cとをさらに備えている。円筒部材21aは、ブッシュ20c、20cの内部に挿入され、円筒部材21aとブッシュ20c、20cとは相対的に回動することができるようになっている。円筒部材21aの左右方向の長さは、左側のブッシュ20cの左端面と右側のブッシュ20cの右端面との離間寸法と略同程度に設定されており、この円筒部材21aは左側支持板部30aと右側支持板部31aとの間に配置される。
【0050】
ボルト21bは、その軸部が左側支持板部30aの左側挿通孔30bに左側から挿通されて円筒部材21a及び右側支持板部31aの右側挿通孔31bに挿通された後、右側挿通孔31bから右側へ突出するようになっている。ボルト21bの軸部の外径は、左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bの下方の開放部の幅よりも大きく設定されている。これにより、ボルト21bの軸部を左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bに挿通した状態で、ボルト21bの軸部が開放部から下方へ簡単に離脱してしまうのが防止されるので、組付時の作業性を良好にすることができる。そして、ボルト21bの右端部にナット21cを螺合させて締め付けることでブレーキペダル2がペダルブラケット3に対して前後方向に揺動自在に支持される。
【0051】
ブレーキペダル2がペダルブラケット3に支持された状態で、左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bの下方が開放されているので、例えば円筒部材21aに対して下方(ブレーキペダル2の離脱方向)へ所定以上の押圧力が作用すると、ボルト21bの軸部が左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bの開放部の縁部を変形させながら該開放部を通って下方へ抜けることができるようになっている。つまり、ペダルブラケット3は、所定以上の押圧力が下方へ作用したブレーキペダル2を離脱可能に支持している。
【0052】
図2に示すように、ペダル本体20の上下方向中間部には、上記マスターシリンダーのロッド100の後端部が連結されており、ペダル本体20を踏み込み操作することによってロッド100を前方へ押動することができるようになっている。
【0053】
(インストルメントパネル補強メンバの構成)
インストルメントパネル補強メンバ4は、車体に設けられている左右のフロントピラー(図示せず)を連結するように左右方向に延びる高強度な管材で構成されている。インストルメントパネル補強メンバ4の左端部は、左側のフロントピラーに固定され、右端部は、右側のフロントピラーに固定されている。インストルメントパネル補強メンバ4の運転席側には、後述するレバー部材5の当接部53に当接するメンバ側部材40が固定されている。メンバ側部材40は、ブレーキペダル2の支軸21よりも上方に位置している。
【0054】
尚、この実施形態では、車体側部材をインストルメントパネル補強メンバ4で構成しているが、これに限らず、ダッシュパネルPよりも後側に配設される高強度な部材を車体側部材とすることもできる。
【0055】
(レバー部材の構成)
図3に示すように、レバー部材5は、鋼板をプレス成形してなるものであり、ペダルブラケット3に溶接される左側溶接部51及び右側溶接部52と、車両の前突時にインストルメントパネル補強メンバ4のメンバ側部材40に当接する当接部53とを有する一体成形品である。当接部53は、左側溶接部51及び右側溶接部52からペダルブラケット3の上側へ向けて突出しており、当接部53の上端部がメンバ側部材40に当接する。
【0056】
当接部53は、左板部53aと、右板部53bと、これら左板部53a及び右板部53bを連結する連結板部53cとを備えており、後方に開放する略コ字状断面を有している。左板部53aと右板部53bとの間にペダル本体20の上端部が位置している。
【0057】
左板部53aは、ペダルブラケット3の左側板部30の右側の面に沿って上下方向に延びるように配置されている。左板部53aの下部は、ペダルブラケット3の左側板部30に対して板厚方向に重なるように配置される一方、左板部53aの上部は、ペダルブラケット3の左側板部30の上縁部から上方へ突出している。左板部53aは、上下方向中間部の幅が最も広く設定されており、そこから上側及び下側へ向かって幅が狭くなっている。
図5に示すように、左板部53aの下縁部は、支軸21の一部を構成するスリーブ20bの外面に対して上方に所定距離離間した状態で上方から対向する左側対向縁部53dである。
【0058】
右板部53bは、ペダルブラケット3の右側板部31の左側の面に沿って上下方向に延びるように配置されている。右板部53bの下部は、ペダルブラケット3の右側板部31に対して板厚方向に重なるように配置される一方、右板部53bの上部は、ペダルブラケット3の右側板部31の上縁部から上方へ突出している。右板部53bも、左板部53aと同様に、上下方向中間部の幅が最も広く設定されており、そこから上側及び下側へ向かって幅が狭くなっている。左板部53aの左側対向縁部53dと同様に、右板部53bの下縁部は、スリーブ20bの外面に対して上方に所定距離離間した状態で上方から対向する右側対向縁部53eである。
【0059】
左側対向縁部53d及び右側対向縁部53eは、スリーブ20bの外形状に沿うように上方へ湾曲形成されている。これにより、後述する前突時に当接部5が回動した際、スリーブ20bが左側対向縁部53d及び右側対向縁部53eから離脱し難くなる。また、左側対向縁部53d及び右側対向縁部53eの前端部は、スリーブ20bよりも前方へ延びている。
【0060】
当接部53は、前後方向から見たとき、インストルメントパネル補強メンバ4のメンバ側部材40(
図2に示す)と重複するように、かつ、メンバ側部材40から前方に離間して配置されている。後述するが、車両の前突時には、ダッシュパネルPの後退によって当接部53がメンバ側部材40に当接して押圧力を受けるようになっている。また、当接部53とダッシュパネルPとの間隔は十分に広く設定されており、前突時にダッシュパネルPが当接部53の変位を阻害しないようにしている。
【0061】
図4に示すように、左側溶接部51は、ペダルブラケット3の左側板部30に沿って延びるとともに、該左側板部30及びブレーキスイッチ取付板部33に対して板厚方向に重ね合わされてスポット溶接される部分である。左側板部30及びブレーキスイッチ取付板部33が重なった部分に左側溶接部51が溶接されているので、左側溶接部51を高強度な部分に溶接することができる。スポット溶接部位を
図5において「×」印で示す。左側溶接部51の周縁部は円弧状に延びている。左側溶接部51は、後述する前突時には剥離しないように十分な溶接強度が確保されている。
【0062】
また、右側溶接部52は、ペダルブラケット3の右側板部31に沿って延びるとともに、該右側板部31及びブレーキスイッチ取付板部33に対して板厚方向に重ね合わされてスポット溶接される部分である。スポット溶接部位は左側溶接部51と同様な位置である。右側溶接部52の周縁部は円弧状に延びている。尚、左側溶接部51及び右側溶接部52は、スポット溶接以外の溶接方法で溶接するようにしてもよい。
【0063】
溶接は、この種の操作ペダルの支持構造1を製造する現場において一般に多く用いられているので、レバー部材5の左側溶接部51及び右側溶接部52をペダルブラケット3に溶接するにあたって特別な設備を用意する必要はない。また、左側溶接部51及び右側溶接部52を溶接することで、従来例のようなピン部材や各種締結部材等を設けることなく、通常時にレバー部材5が動かないように所定位置に確実に固定しておくことが可能になるので部品点数が削減されるとともに、組立工数も削減される。
【0064】
左側溶接部51及び当接部53の間の部位には、該左側溶接部51及び当接部53よりも低剛性に構成された左側低剛性部54が設けられている。左側低剛性部54は、レバー部材5を構成する板材のうち、左側溶接部51と当接部53の左板部53aとの間の部位を上方から切り欠くことによって形成されており、これによって形成された切欠部56は上方、かつ、斜め後ろに開放している。切欠部56の深さや幅、形状等によって左側低剛性部54の剛性を任意にコントロールすることができる。
【0065】
また、右側溶接部52及び当接部53の間の部位には、該右側溶接部52及び当接部53よりも低剛性に構成された右側低剛性部55が設けられている。右側低剛性部55は、レバー部材5を構成する板材のうち、右側溶接部52と当接部53の右板部53bとの間の部位を上方から切り欠くことによって形成されており、これによって形成された切欠部57は上方、かつ、斜め後ろに開放している。また、上記切欠部56、57の幅は上側へ行くほど広くなっている。切欠部56、57は、レバー部材5をプレス成形する際に同時に形成することができるので、切欠部56、57を形成するのに要する工数は不要である。
【0066】
左側低剛性部54及び右側低剛性部55は、車両の前突時に当接部53に対してインストルメントパネル補強メンバ4のメンバ側部材40から作用する力によって変形して該当接部53を変位させるためのものである。すなわち、車両の前突時に、メンバ側部材40が当接部53に前方へ向かう力を作用させると、左側溶接部51及び右側溶接部52がペダルブラケット3に溶接されているので、切欠部56、57のそれぞれの幅が開くように左側低剛性部54及び右側低剛性部55が変形し、当接部53は前方へ回動変位する。尚、左側低剛性部54及び右側低剛性部55は、通常時の車体振動等によっては殆ど変形しない程度の剛性を持っている。
【0067】
(実施形態の作用効果)
次に、実施形態の作用効果について説明する。通常時に運転者がブレーキペダル2を踏み込み操作すると、ブレーキペダル2が支軸21の中心線周りに揺動してブレーキ操作を行うことができる。ブレーキスイッチ101はブレーキペダル2が踏み込まれているか否かを検出する。また、レバー部材5にはインストルメントパネル補強メンバ4からの力が作用しないので、レバー部材5が回動することはない。
【0068】
次に、前突時について説明する。前突時には、例えばエンジン等が後退することや、車体が変形すること等によってダッシュパネルPが変形して後退し、これに伴ってペダルブラケット3が後退する。一方、インストルメントパネル補強メンバ4は、ダッシュパネルPとは別部材のピラーに固定されているので、殆ど後退しない。よって、レバー部材5の当接部53と、インストルメントパネル補強メンバ4のメンバ側部材40との距離が短くなっていく。
【0069】
ペダルブラケット3が後退すると、ブレーキペダル2及びレバー部材5も後退していく。レバー部材5が後退すると、
図6に示すように、レバー部材5の当接部53の上端部がインストルメントパネル補強メンバ4のメンバ側部材40に当接し、これによってメンバ側部材40から当接部53に対して前向きの力が作用する。このときの力は衝突によるものなので十分に大きな力であり、この力によって切欠部56、57のそれぞれの幅が開くように左側低剛性部54及び右側低剛性部55が変形していき、矢印Cで示すように当接部53が前方へ回動変位する。当接部53の軌跡は、溶接部位を中心とした略円弧に近いものとなる。
【0070】
レバー部材5は、ペダルブラケット3の左側板部30と右側板部31との間で回動するので、レバー部材5が左側板部30及び右側板部31によって左右両側から支持される。これにより、レバー部材5が回動変位中に左右に傾くのが抑制されてスムーズに変位するとともに、他の部材等に干渉するのが回避される。
【0071】
レバー部材5にメンバ側部材40から力が作用したとき、該レバー部材5に左側溶接部51及び右側溶接部52を設けているので、レバー部材5の車幅方向両側がそれぞれペダルブラケット3に固定された状態となっている。これにより、レバー部材5のペダルブラケット3への取付部分を安定させることができ、当接部53を狙い通りに前方へ回動変位させることができる。レバー部材5の当接部53の変位量が大きくなると、同図に示すように、レバー部材5の左側対向縁部53d及び右側対向縁部53eがスリーブ20bの外面に接触する。
【0072】
そして、
図7に示すように、ダッシュパネルPがさらに後退してレバー部材5の当接部53の変位量がさらに大きくなると、左側低剛性部54及び右側低剛性部55が大きく変形して矢印Cで示すように当接部53がさらに前方へ回動変位する。このとき、レバー部材5の車幅方向両側に左側対向縁部53d及び右側対向縁部53eを設けてスリーブ20bの左右両側の外面を左側対向縁部53d及び右側対向縁部53eによって下方へ押圧するようにしているので、スリーブ20bに対して安定して下方への力を作用させることができる。
【0073】
左側対向縁部53d及び右側対向縁部53eがスリーブ20bを下方へ押圧することにより、ボルト21bの軸部が締結力に抗して下方へ移動してペダルブラケット3の左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bの下方の開放部の周縁部を変形させる。これにより、ボルト21bの軸部が左側挿通孔30b及び右側挿通孔31bの下方から抜け出てブレーキペダル2がペダルブラケット3から下方へ離脱する。ブレーキペダル2の離脱によってブレーキペダル2が前方へ大きく移動可能となり、これにより、運転者の下肢に加わる衝撃力が緩和される。上述のように、ブレーキペダル2がペダルブラケット3から離脱するまでは、左側低剛性部54及び右側低剛性部55が破断しないように肉厚や寸法が設定されている。
【0074】
したがって、この実施形態1に係る操作ペダルの支持構造1によれば、レバー部材5の左側溶接部51及び右側溶接部52をペダルブラケット3に溶接し、前突時に、レバー部材5の当接部53にインストルメントパネル補強メンバ4のメンバ側部材40を当接させて左側低剛性部54及び右側低剛性部55を変形させることにより当接部53を変位させ、この当接部53がブレーキペダル2の一部であるスリーブ20bをペダルブラケット3から離脱する方向に押すようにしている。これにより、従来例のようにレバー部材5を固定しておくためのピン部材等が不要になって部品点数を削減できるとともに、カシメ固定専用の設備やナット締め付け専用設備のような特別な設備を不要にしてブレーキペダル2を組み立てることができる。しかも、車両の前突時にはブレーキペダル2をペダルブラケット3から確実に離脱させることができる。
【0075】
また、レバー部材5の車幅方向両側をそれぞれペダルブラケット3に溶接して固定することができるので、レバー部材5のペダルブラケット3への取付部分を安定させることができ、当接部53を狙い通りに変位させてブレーキペダル2をペダルブラケット3から離脱する方向に確実に押すことできる。
【0076】
また、板材から成形されたレバー部材5の一部を切り欠くことによって左側低剛性部54及び右側低剛性部55を得るようにしているので、左側低剛性部54及び右側低剛性部55を低コスト、かつ、容易に得ることができる。
【0077】
また、ペダルブラケット3の左側板部30及び右側板部31にレバー部材5の左側溶接部51及び右側溶接部52を重ね合わせてスポット溶接するようにしたので、短時間での確実な溶接が可能になって高い製造効率を得ることができる。
【0078】
また、レバー部材5の左側溶接部51及び右側溶接部52をブレーキペダル2の支軸21よりも後側に位置付け、インストルメントパネル補強メンバ4のメンバ側部材40を支軸21の上方に位置付けたので、車両の前突時に、レバー部材5の当接部53が前方へ回動するように変位する。これにより、当接部53の左側対向縁部53d及び右側対向縁部53eがブレーキペダル2の支軸21を確実に下方へ押してブレーキペダル2をペダルブラケット3から確実に離脱させることができる。
【0079】
(実施形態2)
図8〜
図11は、本発明の実施形態2に係る操作ペダルの支持構造1を示すものである。この実施形態2は、ブレーキスイッチ取付板部(取付部)59をレバー部材5に一体成形している点と、レバー部材の形状が前方に開放する形状である点とで実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0080】
図11に示すように、レバー部材5の左側溶接部51及び右側溶接部52は、ペダルブラケット3の左側板部30の左側支持板部30a及び右側板部31の右側支持板部31aに直接スポット溶接されている。当接部53は上方へ突出している。連結板部53cは、左板部53a及び右板部53bの後縁部同士を連結しており、従って当接部53は前側に開放する略コ字状断面を有している。
【0081】
低剛性部58は、左側溶接部51及び右側溶接部52と、当接部53との間に設けられている。また、レバー部材5の左側及び右側にそれぞれ切欠部56、57が形成されており、これら切欠部56、57の間に低剛性部58が位置している。また、レバー部材5における低剛性部58の下方には、ブレーキスイッチ取付板部59が一体成形されている。ブレーキスイッチ取付板部59は左側溶接部51及び右側溶接部52の間から斜め下方へ延びている。
【0082】
この実施形態2の場合も実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。すなわち、前突時にペダルブラケット3が後退すると、レバー部材5の当接部53の上端部がインストルメントパネル補強メンバ4のメンバ側部材40に当接し、これによってメンバ側部材40から当接部53に対して前向きの力が作用する。すると、切欠部56、57のそれぞれの幅が狭くなるように低剛性部58が変形して当接部53が前方へ回動変位し、これにより、ブレーキペダル2がペダルブラケット3から下方へ離脱する。従って、運転者の下肢に加わる衝撃力が緩和される。
【0083】
また、ブレーキスイッチ取付板部59をレバー部材5に一体成形しているので部品点数を削減することができ、低コスト化を図ることができる。
【0084】
尚、上記実施形態1、2では、本発明をブレーキペダル2の支持構造に適用した場合について説明したが、これに限らず、本発明は車両の他の操作ペダルの支持構造にも適用することができる。
【0085】
また、上記実施形態1、2では、前突時に、レバー部材5がブレーキペダル2のスリーブ20bを押すようにしているが、これに限らず、支軸21の一部を構成するブッシュ20c、20cやボルト21b等をレバー部材5が押すようにしてもよい。また、前突時に、レバー部材5がブレーキペダル2のペダル本体20を押すようにしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態1、2では、レバー部材5に切欠部56、57を形成することによって低剛性部54、55、58を得るようにしているが、これに限らず、例えばレバー部材5に薄肉部や溝、孔部等を形成することによって低剛性部54、55、58を得るようにしてもよい。
【0087】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。