(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加速度センサの出力値から、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度、及び路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度を含む、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度を導出可能であり、
前記制御部は、
路面角度基準値及び車両姿勢角度基準値を保持し、
前記加速度センサの出力値を用いて前記合計角度を導出し、車両停止中の前記合計角度の変化に対して前記光軸角度の調節を指示する調節信号を出力するとともに、当該合計角度の変化量を前記車両姿勢角度基準値に含めて得られる車両姿勢角度を新たな基準値として保持し、車両走行中の前記合計角度の変化に対して前記調節信号の生成又は出力を回避するか前記光軸角度の維持を指示する維持信号を出力するとともに、当該合計角度の変化量を前記路面角度基準値に含めて得られる路面角度を新たな基準値として保持する第1の制御と、前記直線の傾きから前記車両姿勢角度又はその変化量を導出し、得られる車両姿勢角度又はその変化量を用いて前記調節信号を出力する第2の制御と、を実行する請求項2に記載の車両用灯具の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
本明細書において、「車両走行中」とは、例えば後述する車速センサ312の出力値が0を越えたときから、車速センサ312の出力値が0となるまでの間である。「車両停止時」とは、例えば車速センサ312の出力値が0となった後、後述する加速度センサ110の出力値が安定したときである。「発進直後」とは、例えば車速センサ312の出力値が0を超えたときからの所定時間である。「発進直前」とは、例えば車速センサ312の出力値が0を超えたときから所定時間前の時間である。「車両停止中」とは、例えば加速度センサ110の出力値が安定したときから車速センサ312の出力値が0を越えたときまでである。「安定したとき」は、加速度センサ110の出力値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときとしてもよいし、車速センサ312の出力値が0になってから所定時間経過後(例えば1〜2秒後)としてもよい。「車両300が停車している」とは、車両300が「車両停止時」あるいは「車両停止中」の状態にあることを意味する。前記「車両走行中」、「車両停止時」、「発進直後」、「発進直前」、「車両停止中」、「安定したとき」及び「所定量」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0013】
図1は、実施の形態に係る制御装置の制御対象である車両用灯具を含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。前照灯ユニット210は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された構造である。右側の前照灯ユニット210R及び左側の前照灯ユニット210Lは実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明する。前照灯ユニット210Rは、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、車両後方側に着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成される。灯室216には車両用灯具としての灯具ユニット10が収納される。
【0014】
灯具ユニット10には、灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成される。ランプブラケット218は、ランプボディ212に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合する。灯具ユニット10の下面には、スイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定される。スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定される。ユニットブラケット224には、レベリングアクチュエータ226が接続される。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成される。レベリングアクチュエータ226を構成するモータとしては、例えばDCモータが用いられる。灯具ユニット10は、ロッド226aが矢印M,N方向に伸縮することで後傾姿勢、前傾姿勢となり、これにより光軸Oのピッチ角度を下方、上方に向けるレベリング調整ができる。すなわち、レベリングアクチュエータ226は、灯具ユニット10の姿勢を変化させるアクチュエータに相当する。
【0015】
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、及び投影レンズ20を備える。光源14は、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。リフレクタ16は、少なくとも一部が楕円球面状であり、光源14から放射された光を反射する。光源14からの光及びリフレクタ16で反射した光は、一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒部材であり、切欠部と複数のシェードプレート(図示せず)とを備える。切欠部又はシェードプレートのいずれかが光軸O上に移動されて、所定の配光パターンが形成される。投影レンズ20は、平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。なお、灯具ユニット10の構造は上述したものに限定されず、例えばシャッター式のシェードを備えていたり、投影レンズ20を持たない反射型の灯具ユニット等であってもよい。
【0016】
図2は、前照灯ユニット、車両制御ECU及びレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、
図2では前照灯ユニット210R及び前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。また、レベリングECU100及び車両制御ECU302は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、
図2ではそれらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0017】
車両用灯具の制御装置としてのレベリングECU100は、受信部102、制御部104、送信部106、メモリ108及び加速度センサ110を備える。レベリングECU100は、例えば車両300のダッシュボード付近に設置される。なお、レベリングECU100の設置位置は特に限定されず、例えば前照灯ユニット210内に設けられてもよい。また、加速度センサ110は、レベリングECU100の外に設けられてもよい。レベリングECU100には、車両制御ECU302及びライトスイッチ304等が接続される。車両制御ECU302及びライトスイッチ304等から出力される信号は、受信部102によって受信される。また、受信部102は、加速度センサ110の出力値を示す信号を受信する。
【0018】
車両制御ECU302には、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314等が接続される。これらのセンサから出力された信号は、車両制御ECU302を介してレベリングECU100の受信部102によって受信される。車速センサ312は、例えば車輪の回転速度に基づいて車両300の速度を算出するセンサである。ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号やオートレベリング制御の実行を指示する信号等を、電源306、車両制御ECU302、レベリングECU100等に送信する。
【0019】
受信部102が受信した信号は、制御部104に送信される。制御部104は、加速度センサ110の出力値を用いて車両300の傾斜角度又はその変化量を導出し、灯具ユニット10の光軸Oのピッチ角度(以下では適宜、この角度を光軸角度θoという)の調節信号を出力するオートレベリング制御を実行する。制御部104は、角度演算部104a、調節指示部104b、及びタイミング決定部104cを有する。
【0020】
角度演算部104aは、加速度センサ110の出力値と、必要に応じてレベリングECU100が有するRAM(図示せず)に保存している情報とを用いて、車両300のピッチ角度情報を生成する。調節指示部104bは、角度演算部104aで生成されたピッチ角度情報を用いて灯具ユニット10の光軸角度θoの調節を指示する調節信号を生成する。調節指示部104bは、生成した調節信号を送信部106を介してレベリングアクチュエータ226に出力する。レベリングアクチュエータ226は、受信した調節信号をもとに駆動し、灯具ユニット10の光軸Oがピッチ角度方向について調整される。タイミング決定部104cは、レベリングアクチュエータ226の駆動タイミングを決定する。制御部104が有する各部の動作については、後に詳細に説明する。
【0021】
車両300には、レベリングECU100、車両制御ECU302及び前照灯ユニット210に電力を供給する電源306が搭載されている。ライトスイッチ304の操作により前照灯ユニット210の点灯が指示されると、電源306から電源回路230を介して光源14に電力が供給される。電源306からレベリングECU100への電力供給は、イグニッションスイッチがオンのときに実施され、イグニッションスイッチがオフのときに停止される。
【0022】
(オートレベリング制御)
続いて、上述の構成を備えるレベリングECU100によるオートレベリング制御について詳細に説明する。
図3は、車両に生じる加速度ベクトルと、加速度センサで検出可能な車両の傾斜角度を説明するための模式図である。
【0023】
例えば、車両後部の荷室に荷物が載せられたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷室から荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。車両300が後傾姿勢あるいは前傾姿勢になると、灯具ユニット10の照射方向も上下に変動し、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、レベリングECU100は、加速度センサ110の出力値から車両300のピッチ方向の傾斜角度又はその変化量を導出し、光軸角度θoを車両姿勢に応じた角度とする。車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで、車両姿勢が変化しても前方照射光の到達距離を最適に調節することができる。
【0024】
本実施の形態において、加速度センサ110は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。加速度センサ110は、任意の姿勢で車両300に取り付けられ、車両300に生じる加速度ベクトルを検出する。走行中の車両300には、重力加速度と車両300の移動により生じる運動加速度とが生じる。このため、加速度センサ110は、
図3に示すように、重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出することができる。また、車両300の停止中、加速度センサ110は、重力加速度ベクトルGを検出することができる。加速度センサ110は、検出した加速度ベクトルの各軸成分の数値を出力する。
【0025】
加速度センサ110は車両300に対して任意の姿勢で取り付けられるため、加速度センサ110が車両300に搭載された状態における加速度センサ110のX軸、Y軸、Z軸(センサ側の軸)は、車両300の姿勢を決める車両300の前後軸、左右軸及び上下軸(車両側の軸)と必ずしも一致しない。このため、制御部104は、加速度センサ110から出力される3軸の成分、すなわちセンサ座標系の成分を、車両300の3軸の成分、すなわち車両座標系の成分に変換する必要がある。加速度センサ110の軸成分を車両300の軸成分に変換して車両300の傾斜角度を算出するためには、車両300に取り付けられた状態の加速度センサ110の軸と車両300の軸と路面角度との位置関係を示す基準軸情報が必要である。そこで、制御部104は、例えば以下のようにして基準軸情報を生成する。
【0026】
まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に対して平行になるよう設計された路面(以下では適宜、この路面を基準路面という)に置かれ、第1基準状態とされる。第1基準状態では、車両300は運転席に1名乗車した状態とされる。そして、工場の初期化処理装置のスイッチ操作やCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、初期化信号が送信される。制御部104は、初期化信号を受けると所定の初期化処理を実行する。初期化処理では、初期エイミング調整が実施され、灯具ユニット10の光軸Oが初期角度に合わせられる。また、制御部104は、加速度センサ110の座標系と車両300の座標系と車両300が位置する基準路面(言い換えれば水平面)との位置関係を対応付ける。
【0027】
すなわち、制御部104は、第1基準状態における加速度センサ110の出力値を、第1基準ベクトルS1=(X1,Y1,Z1)として、制御部104内のRAMあるいはメモリ108に記録する。メモリ108は、不揮発性メモリである。次に、車両300は、ピッチ角度のみが第1状態と異なる第2状態とされる。例えば、第1状態にある車両300の前部又は後部に荷重が掛けることで、車両300を第2状態とすることができる。制御部104は、車両300が第2状態にあるときの加速度センサ110の出力値を第2基準ベクトルS2=(X2,Y2,Z2)としてRAMあるいはメモリ108に記録する。
【0028】
第1基準ベクトルS1を取得することで、加速度センサ側の軸と基準路面との位置関係が対応付けられ、加速度センサ110のZ軸と車両300の上下軸とのずれを把握することができる。また、第1基準ベクトルS1に対する第2基準ベクトルS2の成分の変化から、車両300の前後、左右軸と加速度センサ110のX、Y軸のずれを把握することができる。これにより、加速度センサ側の軸と車両側の軸の位置関係が対応付けられ、その結果、加速度センサ側の軸と車両側の軸と基準路面の位置関係が対応付けられる。制御部104は、基準軸情報として、加速度センサ110の出力値における各軸成分の数値(基準路面における数値を含む)を車両300の各軸成分の数値と対応付けた変換テーブルを、メモリ108に記録する。
【0029】
加速度センサ110から出力されるX軸、Y軸、Z軸の各成分の数値は、制御部104の角度演算部104aが変換テーブルを用いて車両300の前後軸、左右軸、上下軸の成分に変換する。したがって、加速度センサ110の出力値から、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向の加速度を導出可能である。
【0030】
また、車両停止中の加速度センサ110の出力値からは、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを導出することができる。すなわち、加速度センサ110の出力値から、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度θr、及び路面に対する車両300の傾斜角度である車両姿勢角度θvを含む、水平面に対する車両300の傾斜角度である合計角度θを導出可能である。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv及び合計角度θは、車両300のピッチ方向の角度である。
【0031】
オートレベリング制御は、車両300のピッチ方向の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両300の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。すなわち、オートレベリング制御では、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸角度θoが調節され、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸角度θoが維持されることが望まれる。これを実現するためには、合計角度θから車両姿勢角度θvについての情報を抽出する必要がある。
【0032】
(基本制御)
これに対し、制御部104は、オートレベリングの基本制御として以下に説明する第1の制御を実行する。第1の制御では、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定し、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定して、合計角度θから車両姿勢角度θvが導出される。車両走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。また、車両停止中は、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。
【0033】
例えば、上述した初期化処理において制御部104の角度演算部104aは、生成された基準軸情報を用いて第1基準状態における加速度センサ110の出力値を車両300の3軸成分に変換する。制御部104は、これらの値を路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてRAMに記憶して保持する。また、必要に応じてこれらの基準値をメモリ108に書き込む。
【0034】
そして、制御部104は、加速度センサ110の出力値を用いて合計角度θを導出し、車両停止中の合計角度θの変化に対して、光軸角度θoを調節するようレベリングアクチュエータ226を駆動させる。また、これとともに当該合計角度θの変化量を、保持している車両姿勢角度θvの基準値に含める。そして、得られる車両姿勢角度θvを新たな基準値として保持する。また、制御部104は、車両走行中の合計角度θの変化に対して、レベリングアクチュエータ226の駆動を回避する。また、これとともに当該合計角度θの変化量を、保持している路面角度θrの基準値に含める。そして、得られる路面角度θrを新たな基準値として保持する。
【0035】
例えば、車両300が実際に使用される状況において、制御部104は、車両走行中の合計角度θの変化に対して、光軸角度θoの調節を指示する調節信号の生成又は出力を回避するか光軸角度θoの維持を指示する維持信号を出力する。これにより、レベリングアクチュエータ226の駆動を回避することができる。そして、制御部104の角度演算部104aは、車両停止時に加速度センサ110の出力値から、現在(車両停止時)の合計角度θを算出する。次いで、角度演算部104aは、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して、路面角度θrを得る(θr=θ−θv基準値)。そして、得られた路面角度θrを、新たな路面角度θrの基準値として、RAMに保持している路面角度θrの基準値を更新する。更新前の路面角度θrの基準値と、更新後の路面角度θrの基準値との差は、車両300の走行前後における合計角度θの変化量に相当する。これにより、路面角度θrの変化量と推定される車両走行中の合計角度θの変化量が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。
【0036】
あるいは、角度演算部104aは、車両停止時に走行前後での合計角度θの差分Δθ1(合計角度θの変化量)を算出する。そして、路面角度θrの基準値に差分Δθ1を算入して新たな路面角度θrの基準値を算出し(新θr基準値=θr基準値+Δθ1)、路面角度θrの基準値を更新する。これにより、路面角度θrの変化と推定される車両走行中の合計角度θの変化が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。角度演算部104aは、次のようにして差分Δθ1を算出することができる。すなわち、角度演算部104aは、車両300の発進直後に、発進直前の合計角度θを合計角度θの基準値として保持する。そして、角度演算部104aは、車両停止時に、現在(車両停止時)の合計角度θから合計角度θの基準値を減算して差分Δθ1を算出する。
【0037】
また、制御部104は、車両停止中の合計角度θの変化に対して、光軸角度θoの調節信号を生成し出力することで、レベリングアクチュエータ226を駆動させる。具体的には、車両停止中、角度演算部104aは加速度センサ110の出力値から現在の合計角度θを所定のタイミングで繰り返し算出する。算出された合計角度θはRAMに保持される。そして、角度演算部104aは、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを得る(θv=θ−θr基準値)。また、得られた車両姿勢角度θvを新たな車両姿勢角度θvの基準値として、RAMに保持している車両姿勢角度θvの基準値を更新する。これにより、車両姿勢角度θvの変化量と推定される車両停止中の合計角度θの変化量が、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。
【0038】
あるいは、角度演算部104aは、車両停止中に現在の合計角度θと保持している合計角度θの基準値との差分Δθ2(合計角度θの変化量)を算出する。このとき用いられる合計角度θの基準値は、例えば、車両300の停止後最初の差分Δθ2の算出では差分Δθ1の算出時に得られた合計角度θ、すなわち車両停止時の合計角度θであり、2回目以降の場合は前回の差分Δθ2の算出時に得られた合計角度θである。そして、角度演算部104aは、車両姿勢角度θvの基準値に差分Δθ2を算入して新たな車両姿勢角度θvの基準値を算出し(新θv基準値=θv基準値+Δθ2)、車両姿勢角度θvの基準値を更新する。これにより、車両姿勢角度θvの変化と推定される車両停止中の合計角度θの変化が、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。
【0039】
そして、調節指示部104bは、算出された車両姿勢角度θvあるいは更新された新たな車両姿勢角度θvの基準値を用いて、光軸角度θoの調節信号を生成する。例えば、調節指示部104bは、予めメモリ108に記録されている車両姿勢角度θvの値と光軸角度θoの値とを対応付けた変換テーブルを用いて光軸角度θoを決定し、調節信号を生成する。調節信号は、送信部106からレベリングアクチュエータ226へ出力される。
【0040】
(補正処理)
上述したように、オートレベリングの基本制御として実行される第1の制御では、合計角度θから車両姿勢角度θvあるいは路面角度θrの基準値が減算されて、基準値が繰り返し更新される。あるいは合計角度θの変化の差分Δθ1が路面角度θrの基準値に、差分Δθ2が車両姿勢角度θvの基準値にそれぞれ算入されて、基準値が繰り返し更新される。これにより、路面角度θr及び車両姿勢角度θvの変化がそれぞれの基準値に取り込まれる。このように路面角度θrの基準値及び車両姿勢角度θvの基準値を繰り返し書き換える場合、加速度センサ110の検出誤差等が基準値に積み重なって、オートレベリング制御の精度が低下してしまうおそれがある。そこで、レベリングECU100は、基準値及び光軸角度θoの補正処理として以下に説明する第2の制御を実行する。
【0041】
図4(A)及び
図4(B)は、車両の運動加速度ベクトルの方向と車両姿勢角度との関係を説明するための模式図である。
図4(A)は、車両姿勢角度θvが0°の状態を示し、
図4(B)は、車両姿勢角度θvが0°から変化した状態を示している。また、
図4(A)及び
図4(B)において、車両300が前進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを実線矢印で示し、車両300が減速若しくは後進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを破線矢印で示している。
図5は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示すグラフである。
【0042】
車両300は路面に対して平行に移動する。よって、運動加速度ベクトルαは、車両姿勢角度θvによらず路面に対して平行なベクトルとなる。また、
図4(A)に示すように、車両300の車両姿勢角度θvが0°であった場合、理論上は車両300の前後軸V
X(あるいは加速度センサ110のX軸)は路面に対して平行となる。このため、運動加速度ベクトルαは、車両300の前後軸V
Xに平行なベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際に、加速度センサ110によって検出される合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、車両300の前後軸V
Xに対して平行な直線となる。
【0043】
一方、
図4(B)に示すように、車両姿勢角度θvが0°でない場合、車両300の前後軸V
Xは路面に対して斜めにずれる。このため、運動加速度ベクトルαは、車両300の前後軸V
Xに対して斜めに延びるベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際の合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、車両300の前後軸V
Xに対して傾いた直線となる。
【0044】
車両前後方向の加速度を第1軸(X軸)に設定し、車両上下方向の加速度を第2軸(Z軸)に設定した座標に、車両走行中に得られる加速度センサ110の出力値をプロットすると、
図5に示す結果を得ることができる。
図5において、点t
A1〜t
Anは
図4(A)に示す状態での時間t
1〜t
nにおける出力値である。点t
B1〜t
Bnは
図4(B)に示す状態での時間t
1〜t
nにおける出力値である。この出力値のプロットには、加速度センサ110の出力値から得られる車両座標系の加速度値をプロットする場合も含まれる。
【0045】
このようにプロットした少なくとも2点から直線又はベクトルを導出し、その傾きを得ることで車両姿勢角度θvを推定することができる。例えば、プロットされた複数点t
A1〜t
An,t
B1〜t
Bnに対して最小二乗法や移動平均法等を用いて直線近似式A,Bを求め、当該直線近似式A,Bの傾きを算出する。車両姿勢角度θvが0°の場合、加速度センサ110の出力値からX軸に平行な直線近似式Aが得られる。すなわち、直線近似式Aの傾きは0となる。これに対し、車両姿勢角度θvが0°でない場合、加速度センサ110の出力値から車両姿勢角度θvに応じた傾きを有する直線近似式Bが得られる。したがって、直線近似式Aと直線近似式Bとがなす角度(
図5におけるθ
AB)、あるいは直線近似式Bの傾きそのものが、車両姿勢角度θvとなる。よって、車両走行中の加速度センサ110の出力値をプロットして得られる直線又はベクトルの傾きから、車両姿勢角度θvを推定することができる。
【0046】
そこで角度演算部104aは、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両走行中に得られる加速度センサ110の出力値をプロットする。そして、プロットした複数点から得られる直線あるいはベクトルの傾きを用いて車両300の傾斜角度、すなわち車両姿勢角度θv、又はその変化量を導出する。角度演算部104aは、導出した車両姿勢角度θv又はその変化量に基づいて車両姿勢角度θvの基準値を調整する。あるいは、導出した車両姿勢角度θvを新たな基準値として保持する。これにより、車両姿勢角度θvの基準値が補正される。
【0047】
例えば、角度演算部104aは、車速センサ312の出力値に基づいて車両300が走行中であることを検知すると補正処理を開始する。補正処理において、加速度センサ110の出力値は、所定の時間間隔で繰り返し制御部104に送信される。制御部104に送信された加速度センサ110の出力値は、RAMあるいはメモリ108に保持される。
【0048】
そして、出力値の数が直線又はベクトルの一回の導出に必要とされる予め定められた数に達したとき、角度演算部104aは、上述した座標に加速度センサ110の出力値をプロットして直線又はベクトルを導出する。なお、角度演算部104aは、加速度センサ110の出力値を受信する毎に角度演算部104aが座標に出力値をプロットし、プロットした出力値の数が所定数に達したときに直線又はベクトルを導出してもよい。
【0049】
直線又はベクトルの導出精度を高めるために、角度演算部104aは、RAMあるいはメモリ108に保持された同一あるいは同一とみなされる所定範囲に含まれる複数の出力値を、1つの出力値としてカウントする。「所定範囲」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0050】
調節指示部104bは、導出した車両姿勢角度θv又はその変化量、あるいは更新された新たな車両姿勢角度θvの基準値を用いて、光軸角度θoの調節信号を生成する。調節信号は、送信部106からレベリングアクチュエータ226へ出力される。これにより、光軸角度θoが補正される。以降は、補正あるいは更新した車両姿勢角度θvを車両姿勢角度θvの基準値とし、また現在の合計角度θとこの車両姿勢角度θvの基準値とから得られる路面角度θrを路面角度θrの基準値として(これにより路面角度θrの基準値が補正される)、上述した基本制御が再開される。
【0051】
(アクチュエータの駆動タイミングの制御)
補正処理において、角度演算部104aが車両姿勢角度θrを導出する毎にレベリングアクチュエータ226を駆動させると、レベリングアクチュエータ226の駆動回数が著しく増加するおそれがある。そこで、制御部104は、レベリングアクチュエータ226の寿命を延ばすために、レベリングアクチュエータ226の駆動タイミングを以下のように制御する。
【0052】
図6(A)及び
図6(B)は、補正処理における光軸角度のずれ量、制御部が算出する車両姿勢角度のずれ量、アクチュエータの駆動、及び制御部が取得する加速度センサの出力値数のそれぞれが変化する様子を模式的に示す図である。
図6(A)は、車速が所定値未満であるときの変化の様子を示し、
図6(B)は、車速が所定位置以上であるときの変化の様子を示す。
【0053】
タイミング決定部104cは、加速度センサ110の出力値(以下では適宜、この出力値をセンサ出力値と称する)の取得数をカウントする。タイミング決定部104cは、角度演算部104aによるセンサ出力値の取得数のカウントに準じて、RAMあるいはメモリ108に保持された同一あるいは同一とみなされる所定範囲に含まれる複数のセンサ出力値を、1つのセンサ出力値としてカウントする。そして、この取得数に基づいてレベリングアクチュエータ226の駆動タイミングを決定する。レベリングアクチュエータ226の駆動に必要なセンサ出力値の取得数は、補正処理において直線又はベクトルの一回の導出に必要な取得数よりも大きい所定値に設定される。
【0054】
タイミング決定部104cは、センサ出力値の取得数が所定値に達すると、調節指示部104bに対して調節信号の出力を指示する信号を出力する。調節指示部104bは、タイミング決定部104cからこの信号を受信すると、送信部106を介してレベリングアクチュエータ226へ調節信号を出力する。なお、タイミング決定部104cは調節指示部104bに対して調節信号の生成を指示する信号を出力してもよい。調節指示部104bは、タイミング決定部104cからこの信号を受信すると、調節信号を生成してレベリングアクチュエータ226へ出力する。
【0055】
このように、タイミング決定部104cがセンサ出力値の取得数に基づいて調節信号の出力を制御することで、補正処理におけるレベリングアクチュエータ226の駆動回数の増加を抑制することができる。しかしながら、例えば車両300が高速道路を走行している場合など速度が長時間安定する状況では、センサ出力値の取得数が増加しにくい傾向にある。この場合、灯具ユニット10の光軸角度θoが補正されるまでに著しく時間がかかってしまう。
【0056】
そこで
図6(A)に示すように、タイミング決定部104cは、車速が所定値未満である間はセンサ出力値の取得数が第1の数N
1に達した時(時間T1,T2)にレベリングアクチュエータ226を駆動させる。タイミング決定部104cは、車速センサ312の出力値から車速を知ることができる。タイミング決定部104cは、例えば車速が80km/h未満であるとき、レベリングアクチュエータ226の駆動に必要なセンサ出力値の取得数を第1の数N
1とする。
【0057】
一方、
図6(B)に示すように、タイミング決定部104cは、車速が所定値以上である間はセンサ出力値の取得数が第1の数N
1よりも少ない第2の数N
2に達した時(時間T3,T4,T5)にレベリングアクチュエータ226を駆動させる。
【0058】
図6(B)では、トリガとなるセンサ出力値の取得数を第1の数N
1とした場合における、光軸角度θoのずれ量の変化及びセンサ出力値の取得数の変化を破線で示している。車速が所定値以上である場合にセンサ出力値の取得数が第1の数N
1に到達する時間T5は、車速が所定値未満である場合に取得数が第1の数N
1に到達する時間T1に比べて遅い。このため、レベリングアクチュエータ226の駆動トリガとなるセンサ出力値の取得数を第1の数N
1に固定すると、車速が所定値以上の場合は光軸角度θoの補正処理が実行されるまでに長時間を要してしまう。
【0059】
これに対し、本実施の形態では車速が所定値以上である場合に、トリガとなるセンサ出力値の取得数を第1の数N
1よりも少ない第2の数N
2に切り替えている。これにより、光軸角度θoの補正をより早期に実行させることができる。
図6(B)に示すように、トリガとなるセンサ出力値の取得数が第1の数N
1の場合には、時間T8で光軸角度θoのずれ量が補正される。一方、トリガとなるセンサ出力値の取得数が第2の数N
2の場合には、時間T8よりも早い時間T6で光軸角度θoのずれ量が補正され始める。また、時間T8よりも早い時間T7には、トリガとなるセンサ出力値の取得数を第1の数N
1とした場合と同程度に光軸角度θoが補正される。「第1の数N
1」、「第2の数N
2」及び車速についての「所定値」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0060】
なお、タイミング決定部104cは、基本制御では角度演算部104aが車両姿勢角度θrを導出する毎にレベリングアクチュエータ226を駆動させる。車両停止中は、車両姿勢角度θrの変化が頻繁に起こる可能性が低いためである。
【0061】
図7は、実施の形態に係る車両用灯具の制御装置により実行されるオートレベリング制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御の実行指示がなされ、且つイグニッションがオンのときに制御部104により所定のタイミングで繰り返し実行され、オートレベリング制御の実行指示が解除される(あるいは停止指示がなされる)か、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
【0062】
制御部104は、車両300が停車しているか判断する(S101)。車両300が停車している場合(S101のY)、制御部104は、前回のルーチンのステップS101における停車判定において車両300が走行中(S101のN)であったか判断する(S102)。前回の判定が走行中であった場合(S102のY)、この場合は「車両停止時」であることを意味し、制御部104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを算出する(S103)。そして、得られた路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値として更新し(S104)、本ルーチンを終了する。
【0063】
前回の判定が走行中でなかった場合(S102のN)、この場合は「車両停止中」であることを意味し、制御部104は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを算出する(S105)。そして、得られた車両姿勢角度θvを用いて光軸角度θoを調節し、また得られた車両姿勢角度θvを新たな基準値として更新して(S106)、本ルーチンを終了する。
【0064】
車両300が停車していない場合、すなわち走行中である場合(S101のN)、制御部104は、車両走行中の加速度センサ110の出力値を用いた補正処理を実行する(S107)。制御部104は補正処理において、加速度センサ110の出力値をプロットして直線近似式を導出し、直線近似式の傾きから車両姿勢角度θvを推定する。そして、この推定された車両姿勢角度θvを用いて車両姿勢角度θvの基準値を補正する。
【0065】
続いて制御部104は、車速が所定値未満であるか判断する(S108)。車速が所定値未満である場合(S108のY)、制御部104は、加速度センサ110の出力値の取得数が第1の数N
1に達しているか判断する(S109)。取得数が第1の数N
1に達している場合(S109のY)、制御部104は、調節信号をレベリングアクチュエータ226に出力して(S110)、本ルーチンを終了する。取得数が第1の数N
1に達していない場合(S109のN)、制御部104は、調節信号を出力することなく本ルーチンを終了する。
【0066】
車速が所定値以上である場合(S108のN)、制御部104は、加速度センサ110の出力値の取得数が第2の数N
2に達しているか判断する(S111)。取得数が第2の数N
2に達している場合(S111のY)、制御部104は、調節信号をレベリングアクチュエータ226に出力して(S112)、本ルーチンを終了する。取得数が第2の数N
2に達していない場合(S111のN)、制御部104は、調節信号を出力することなく本ルーチンを終了する。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態に係るレベリングECU100は、灯具ユニット10の姿勢を変化させるレベリングアクチュエータ226の駆動タイミングを決定するタイミング決定部104cを有する。タイミング決定部104cは、車速が所定値未満である間は加速度センサ110の出力値の取得数が第1の数N
1に達した時にレベリングアクチュエータ226を駆動させる。また、車速が所定値以上である間はセンサ出力値の取得数が第1の数N
1よりも少ない第2の数N
2に達した時にレベリングアクチュエータ226を駆動させる。これにより、レベリングアクチュエータ226の駆動回数の増加を抑制する場合であっても、光軸角度θoの補正の実行時間が遅延することを抑制することができる。したがって、オートレベリング制御の精度を高めることができる。
【0068】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態と変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0069】
上述した実施の形態に係るレベリングECU100は、オートレベリング制御として、車両停止中の合計角度θの変化に対して光軸調節を実施し、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸角度を維持する第1の制御を基本制御として実行し、走行中の加速度センサ110の出力値から導出される直線等の傾きを用いて光軸調節を実施する第2の制御を補正処理として実行する。しかしながら、特にこの構成に限定されず、レベリングECU100は、第2の制御を基本制御として実行してもよい。
【0070】
なお、上述した実施の形態に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
光軸を調節可能な車両用灯具と、
加速度センサと、
上述した車両用灯具の制御装置と、
を備えることを特徴とする車両用灯具システム。