(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハイサイドのノーマリオン型の主スイッチング素子とローサイドのノーマリオフ型の副スイッチング素子とが直列に接続されてなるスイッチ部をオン/オフ制御するゲート駆動回路であって、
前記主スイッチング素子の駆動制御端子と前記副スイッチング素子のローサイド端子との間に挿入された駆動制御用のスイッチング素子と、
前記駆動制御用のスイッチング素子の両端子間に接続された定電圧素子と、
"H"レベルと"L"レベルを交互に繰り返すスイッチングパルスを前記主スイッチング素子、前記副スイッチング素子および前記駆動制御用のスイッチング素子の各駆動制御端子に対して出力する制御部とを備え、
さらに、
前記制御部における前記スイッチングパルスの出力端子と前記主スイッチング素子、前記副スイッチング素子および前記駆動制御用のスイッチング素子の各駆動制御端子との間にはそれぞれ第1の抵抗素子、第2の抵抗素子および第3の抵抗素子が挿入され、
前記第1の抵抗素子の抵抗値は、前記第2の抵抗素子および前記第3の抵抗素子の抵抗値に比べてより高い値に設定されているゲート駆動回路。
【背景技術】
【0002】
近時、GaN(窒化ガリウム)を用いた電界効果トランジスタ(FET)が着目されている。GaNはバンドギャップが広いことからワイドギャップ半導体とも呼ばれる。GaNを用いたトランジスタは良好な高周波特性と低オン抵抗特性とを有し、将来的に有力なパワーデバイスと見なされている。GaNの一般的な性質はノーマリオン動作を伴うことである。ノーマリオン型は駆動制御端子(ゲート)に電圧を印加していない状態でも両端子間(ドレイン・ソース間)に電流が流れてしまう。これに対して、ノーマリオフ型は機器の安全性を確保する上で優れた特性をもつ。しかし、GaNの場合は、高周波特性と低オン抵抗特性に優れているものの、ノーマリオフ型のトランジスタは作りにくいという性質を有しており、機器の安全性の面で工夫を必要としている。
【0003】
すなわち、良好な高周波特性と低オン抵抗特性を活かしつつ、実質的なノーマリオフ動作による安全性を確保する目的で、ノーマリオン型の半導体スイッチング素子と一般的なノーマリオフ型の半導体スイッチング素子とを直列に接続(カスコード接続)したスイッチ部を構成することが行われている。
【0004】
図4はこのようなカスコード接続にかかわる従来例1を示す(例えば特許文献1参照)。すなわち、ノーマリオン型のスイッチング素子110とノーマリオフ型で電力MOS型のスイッチング素子112とがカスコード接続されている。良好な高周波特性と低オン抵抗特性については上段のノーマリオン型のスイッチング素子110が担い、安全性確保については下段のノーマリオフ型のスイッチング素子112が担っている。
【0005】
図5は別の従来例2において開示されたノーマリオン型のGaNトランジスタのゲート電圧・ドレイン電流特性の例である。A1,B1はリセス構造(凹構造)を持たないタイプ、A2,B2はリセス構造を有するタイプである。例えばタイプA1では順ゲートバイアス1[V]の場合のドレイン電流はゲート電圧0[V]の場合の約1.25倍に増大でき、タイプB1では順ゲートバイアス2[V]の場合のドレイン電流はゲート電圧0[V]の場合の約1.9倍に増大できることが分かる。
【0006】
図6はノーマリオン型のトランジスタとノーマリオフ型のトランジスタをカスコード接続した場合の従来例3のゲート駆動回路を示す(例えば特許文献3参照)。ノーマリオン型の主スイッチング素子Q1とノーマリオフ型でSi−MOS型の副スイッチング素子Q2とが直列に接続され、等価的にノーマリオフ動作するスイッチ部が構成されている。
【0007】
スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とは背反動作する。スイッチング素子Q3がターンオンするとスイッチング素子Q4はターンオフし、逆に、スイッチング素子Q3がターンオフするとスイッチング素子Q4はターンオンする。
【0008】
スイッチング素子Q3がターンオンし、スイッチング素子Q4がターンオフすると、主スイッチング素子Q1のローサイド端子(ソース)に現れる比較的高い電圧(ドレイン電圧)がオン状態のスイッチング素子Q3を介して主スイッチング素子Q1の駆動制御端子(ゲート)に印加され、主スイッチング素子Q1がターンオンする。
【0009】
逆に、スイッチング素子Q3がターンオフし、スイッチング素子Q4がターンオンすると、主スイッチング素子Q1の駆動制御端子(ゲート)には副スイッチング素子Q2の両端子間電圧(ドレイン・ソース間電圧)が逆バイアスで印加され、主スイッチング素子Q1はターンオフする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図6に示す従来例3のゲート駆動回路においては、主スイッチング素子Q1の順バイアスは副スイッチング素子Q2のオン時の両端子間電圧(ソース・ドレイン間電圧)で、この値は通常0.1[V]以下である。
【0012】
しかし、ノーマリオン型トランジスタA1,B1の望ましい順バイアスは
図5を参照すれば1〜2[V]であることから、
図6の場合、主スイッチング素子Q1に対して適切な順バイアスを供給していないことになる。
【0013】
図6のゲート駆動回路によれば、主スイッチング素子Q1のターンオフ時にスイッチング素子Q3,Q4のスイッチング動作が副スイッチング素子Q2の動作より遅れた場合、副スイッチング素子Q2のオフ時の高いドレイン電圧(5V程度)がスイッチング素子Q3を介して主スイッチング素子Q1の駆動制御端子(ゲート)に印加されるため、主スイッチング素子Q1のターンオフが遅れ、その期間、オフ状態の副スイッチング素子Q2に主電流が流れてしまい、副スイッチング素子Q2の損失を増加させるという問題がある。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、ゲート駆動回路に関して、導通状態から遮断状態への切り替え時に副スイッチング素子での損失を抑制するとともに、遮断状態から導通状態への切り替え時に主スイッチング素子での導通損失を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0016】
本発明によるゲート駆動回路は、
ハイサイドのノーマリオン型の主スイッチング素子とローサイドのノーマリオフ型の副スイッチング素子とが直列に接続されてなるスイッチ部をオン/オフ制御するゲート駆動回路であって、
前記主スイッチング素子の駆動制御端子と前記副スイッチング素子のローサイド端子との間に挿入された駆動制御用のスイッチング素子と、
前記駆動制御用のスイッチング素子の両端子間に接続された定電圧素子と、
"H"レベルと"L"レベルを交互に繰り返すスイッチングパルスを前記主スイッチング素子、前記副スイッチング素子および前記駆動制御用のスイッチング素子の各駆動制御端子に対して出力する制御部とを備え
、
さらに、
前記制御部における前記スイッチングパルスの出力端子と前記主スイッチング素子、前記副スイッチング素子および前記駆動制御用のスイッチング素子の各駆動制御端子との間にはそれぞれ第1の抵抗素子、第2の抵抗素子および第3の抵抗素子が挿入され、
前記第1の抵抗素子の抵抗値は、前記第2の抵抗素子および前記第3の抵抗素子の抵抗値に比べてより高い値に設定されていることを特徴としている。
【0017】
上記構成の本発明のゲート駆動回路においては、駆動制御用のスイッチング素子のオン状態で主スイッチング素子の駆動制御端子に対して副スイッチング素子のオフ状態での両端子間電圧を逆バイアスで印加する一方、駆動制御用のスイッチング素子のオフ状態で主スイッチング素子の駆動制御端子に対して定電圧素子による定電圧を順バイアスで印加する。すなわち、スイッチ部を導通状態から遮断状態へ切り替えるときの主スイッチング素子の駆動制御端子に逆バイアスの電圧の電源と、スイッチ部を遮断状態から導通状態へ切り替えるときの順バイアスの電源とを異ならせている。前者の逆バイアスはオフ状態での副スイッチング素子の両端子間電圧であり、後者の順バイアスは定電圧素子による定電圧である。
【0018】
前記において、逆バイアス印加により主スイッチング素子を高速でターンオフさせることができ、オフ状態での副スイッチング素子における損失を抑制することが可能となる。また、順バイアスでの印加電圧を定電圧素子による定電圧とするので、充分に高い電圧の順バイアス印加が可能となり、主スイッチング素子の導通損失を低減することが可能となる。
さらに、前記制御部における前記スイッチングパルスの出力端子と前記主スイッチング素子、前記副スイッチング素子および前記駆動制御用のスイッチング素子の各駆動制御端子との間にはそれぞれ第1の抵抗素子、第2の抵抗素子および第3の抵抗素子が挿入されている。この構成により、制御部から出力する同じスイッチングパルスを用いて主スイッチング素子、副スイッチング素子および駆動制御用のスイッチング素子の3者を制御し、上記本発明の効果を奏させる上で基本的で簡単な回路構成となる。
また、前記第1の抵抗素子の抵抗値は、前記第2の抵抗素子および前記第3の抵抗素子の抵抗値に比べてより高い値に設定されている。この構成によって、スイッチ部を遮断状態から導通状態へ切り替える際に、副スイッチング素子のターンオン動作を主スイッチング素子のターンオン動作よりも高速化する。これととともに、スイッチ部を導通状態から遮断状態へ切り替える際に、駆動制御用のスイッチング素子のターンオン動作を主スイッチング素子のターンオフ動作よりも高速化することができる。その結果として、オフ状態での副スイッチング素子における損失を抑制することや、主スイッチング素子の導通損失を低減することに有効に作用する。
【0019】
上記構成のゲート駆動回路は、さらに次のように構成されることが好ましい。
【0024】
前記第2の抵抗素子と前記副スイッチング素子の駆動制御端子とを接続する第1の接続ノードと、前記スイッチングパルスの出力端子との間には、そのハイサイド端子を前記出力端子側にして接続された第1の一方向性通電素子と前記第1の一方向性通電素子に直列接続された第4の抵抗素子とからなる直列回路が、前記第2の抵抗素子と並列に接続されている、という構成は好ましい。ここでは、第1の一方向性通電素子と第4の抵抗素子の接続順序に関しては、いずれをスイッチングパルスの出力端子の側に配置しても構わない。第1の一方向性通電素子の通電方向に関しては、そのハイサイド端子がスイッチングパルスの出力端子の側となることが要件となっている。
【0025】
このように構成すれば、第2の抵抗素子に第4の抵抗素子を並列接続することにより合成抵抗値を低減して、副スイッチング素子の遮断状態から導通状態への切り替え動作をより高速化し、副スイッチング素子での損失をより低減することができる。
【0026】
また、追加した並列のラインにおいて、制御部から副スイッチング素子に向かう側に通電の方向性を定める状態で第1の一方向性通電素子を挿入することにより、副スイッチング素子の動作の高速化をオフ状態からオン状態への切り替え時に限定し、この切り替え時における副スイッチング素子での損失低減をより有効化することができる。
【0027】
また、前記第3の抵抗素子と前記駆動制御用のスイッチング素子の駆動制御端子とを接続する第2の接続ノードと、前記スイッチングパルスの出力端子との間には、そのハイサイド端子を前記第2の接続ノード側にして接続された第2の一方向性通電素子と前記第2の一方向性通電素子に直列接続された第5の抵抗素子とからなる直列回路が、前記第3の抵抗素子と並列に接続されている、という構成は好ましい。ここでは、第2の一方向性通電素子と第5の抵抗素子の接続順序に関しては、いずれをスイッチングパルスの出力端子の側に配置しても構わない。第2の一方向性通電素子の通電方向に関しては、そのハイサイド端子が第2の接続ノード側(ローサイド端子がスイッチングパルスの出力端子の側)となることが要件となっている。
【0028】
このように構成すれば、第3の抵抗素子に第5の抵抗素子を並列接続することにより合成抵抗値を低減して、駆動制御用のスイッチング素子のオフ状態からオン状態への切り替え動作の高速化を通じて、主スイッチング素子のオン状態からオフ状態への切り替え動作を高速化するので、副スイッチング素子での損失をより低減することができる。
【0029】
また、追加した並列のラインにおいて、駆動制御用のスイッチング素子から制御部に向かう側に通電の方向性を定める状態で第2の一方向性通電素子を挿入することにより、駆動制御用のスイッチング素子の動作の高速化をオフ状態からオン状態への切り替え時に限定し、この切り替え時における副スイッチング素子での損失低減をより有効化することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、スイッチ部を導通状態から遮断状態へ切り替える際には、オフ状態での副スイッチング素子の両端子間電圧を逆バイアスで主スイッチング素子の駆動制御端子に印加することにより主スイッチング素子を高速でターンオフさせるため、オフ状態での副スイッチング素子における損失を抑制することができる。また、スイッチ部を遮断状態から導通状態へ切り替える際には、定電圧素子による定電圧を順バイアスで主スイッチング素子の駆動制御端子に印加することにより充分に高い電圧の順バイアス印加が可能で、主スイッチング素子の導通損失を低減することができる。
さらに、抵抗値の設定を通じて副スイッチング素子や駆動制御用のスイッチング素子のターンオン動作の高速化を図り、損失低減を一層促進することが可能となっている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、上記構成の本発明のゲート駆動回路につき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0033】
〔第1の実施例〕
図1は本発明の第1の実施例におけるゲート駆動回路の構成を示す回路図である。
【0034】
図1において、11はハイサイドのノーマリオン型の主スイッチング素子Q01とローサイドのノーマリオフ型の副スイッチング素子Q02とが直列に接続されてなるスイッチ部、Q03は主スイッチング素子Q01の駆動制御端子であるゲートと副スイッチング素子Q02のローサイド端子であるソースすなわちグランドラインGLとの間に挿入された駆動制御用のスイッチング素子、ZD1は駆動制御用のスイッチング素子Q03の両端子間(ドレイン・ソース間)に接続された定電圧素子としてのツェナーダイオード、12は"H"レベルと"L"レベルを交互に繰り返すスイッチングパルスを主スイッチング素子Q01、副スイッチング素子Q02および駆動制御用のスイッチング素子Q03の各駆動制御端子(ゲート)に対して出力する制御部としてのICで構成された制御回路である。
【0035】
主スイッチング素子Q01はGaN(窒化ガリウム)で構成されたノーマリオン型(デプレッション型)でNチャンネル型の接合型FETである。副スイッチング素子Q02は通常の低耐圧のSi(シリコン)で構成されたノーマリオフ型(エンハンスメント型)でNチャンネル型のMOSFETである。主スイッチング素子Q01はそのハイサイド端子(ドレイン)が出力端子OUT1に接続され、そのローサイド端子(ソース)が副スイッチング素子Q02のハイサイド端子(ドレイン)に接続され、副スイッチング素子Q02のローサイド端子(ソース)は出力端子OUT2およびグランドラインGLに接続されている。
【0036】
駆動制御用のスイッチング素子Q03はノーマリオン型(デプレッション型)でPチャンネル型の接合型FETである。このスイッチング素子Q03はボディダイオード(ソース・ドレイン間の寄生ダイオード)をもたない横型のFETである(例えば2SJ103)。駆動制御用のスイッチング素子Q03はそのハイサイド端子(ソース)が主スイッチング素子Q01の駆動制御端子(ゲート)に接続され、そのローサイド端子(ドレイン)が副スイッチング素子Q02のローサイド端子(ソース)およびグランドラインGLに接続されている。
【0037】
ツェナーダイオードZD1はそのハイサイド端子(カソード)が駆動制御用のスイッチング素子Q03のハイサイド端子(ソース)に接続され、そのローサイド端子(アノード)がスイッチング素子Q03のローサイド端子(ドレイン)およびグランドラインGLに接続されている。
【0038】
主スイッチング素子Q01の駆動制御端子(ゲート)と駆動制御用のスイッチング素子Q03のハイサイド端子(ソース)との接続ノードN01が第1の抵抗素子R01を介して制御回路12におけるスイッチングパルスの出力端子に接続されている。
【0039】
副スイッチング素子Q02の駆動制御端子(ゲート)は抵抗素子R11を介してグランドラインGLに接続され、その駆動制御端子と抵抗素子R11の接続ノードN02は第2の抵抗素子R02を介して制御回路12の出力端子に接続されている。
【0040】
駆動制御用のスイッチング素子Q03の駆動制御端子(ゲート)は抵抗素子R12を介してグランドラインGLに接続され、その駆動制御端子と抵抗素子R12の接続ノードN03は第3の抵抗素子R03を介して制御回路12の出力端子に接続されている。
【0041】
第1の抵抗素子R01は、第2の抵抗素子R02や第2の抵抗素子R03に比べてより高い抵抗値をもっている(例えば10[kΩ])。
【0042】
なお、C01は制御回路12に電源電圧を供給するための平滑コンデンサである。
【0043】
また、R12は駆動制御用のスイッチング素子Q03の誤動作防止用の抵抗素子である。この抵抗素子R12は通常ゲート・ソース間に接続されるが、本実施例の回路ではドレインが接続されるグランドラインGLが最も低電位なので、誤りのターンオフを防ぐために、ゲート・ドレイン間に接続している。
【0044】
以上のような構成を有する第1の実施例のゲート駆動回路は、主スイッチング素子Q01、副スイッチング素子Q02および駆動制御用のスイッチング素子Q03の各駆動制御端子(ゲート)のそれぞれに対して、第1ないし第3の抵抗素子R01,R02,R03を介して制御回路12の出力端子から交互に“H”レベル、“L”レベルを繰り返すスイッチングパルスを供給して、スイッチ部11をオン/オフ制御することにより図示しない負荷回路の駆動を制御するようになっている。
【0045】
図2(a)は制御回路12から出力されるスイッチングパルスの電圧波形を示し、
図2(b)は主スイッチング素子Q01の駆動制御端子(ゲート)に印加される電圧波形(ゲート・ソース間波形)を示す。
図2(a)に示すスイッチングパルスの“L”レベルは0[V]となっている。
図2(b)に示す主スイッチング素子Q01の駆動制御端子への印加電圧は、その“H”レベルの順バイアス電圧はツェナーダイオードZD1のツェナー電圧V
ZD1 であり、その“L”レベルの逆バイアス電圧はオフ状態での副スイッチング素子Q02のハイサイド端子(ドレイン)に対する駆動制御端子(ゲート)の電圧(ドレイン・ソース間電位)に相当する負電位となる。
【0046】
ツェナーダイオードZD1によるツェナー電圧V
ZD1 としては1〜2[V]の確保が容易であり、
図6の従来例3の場合の0.1〜0.5[V]に比べて充分に高い電圧が期待される。この順バイアス電圧を高くできることがオン状態における主スイッチング素子Q01の導通損失の低減に繋がる。
【0047】
次に、上記のように構成された本実施例のゲート駆動回路の動作を説明する。
【0048】
スイッチ部11における主スイッチング素子Q01はノーマリオン型であるため、駆動制御端子(ゲート)に印加される電圧が0[V]のときにオン状態にあり、その電圧が逆バイアスの負電位のときはオフ状態となる。主スイッチング素子Q01がオフ状態であれば、副スイッチング素子Q02のオン状態・オフ状態の如何にかかわらず、スイッチ部11は全体として遮断状態となる。逆に、主スイッチング素子Q01がオン状態にあるときは、副スイッチング素子Q02がオン状態であればスイッチ部11は全体として導通状態であるが、副スイッチング素子Q02がオフ状態であればスイッチ部11は全体として遮断状態となる。
【0049】
いま、制御回路12から出力されるスイッチングパルスが“L”レベルにあるとする。このとき、スイッチ部11における主スイッチング素子Q01(Nチャンネル型)および副スイッチング素子Q02(Nチャンネル型)はともにオフ状態にある。駆動制御用のスイッチング素子Q03(Pチャンネル型)はオン状態となっている。スイッチ部11は全体として遮断状態にある。
【0050】
〔1〕スイッチ部11の遮断状態から導通状態への切り替え動作
次に、制御回路12から出力されるスイッチングパルスが“L”レベルから“H”レベルに遷移すると、まず副スイッチング素子Q02(Nチャンネル型)がターンオンし、主スイッチング素子Q01(Nチャンネル型)もターンオンする。さらに、駆動制御用のスイッチング素子Q03(Pチャンネル型)はターンオフする。スイッチング素子Q03がターンオフすると、ツェナーダイオードZD1が降伏して電流が流れ、接続ノードN01の電位がツェナーダイオードZD1のツェナー電圧V
ZD1 となり、この電位が主スイッチング素子Q01のゲート電圧をさらに深い(0[V]からマイナス側により離れた)オン状態とする電圧にし、主スイッチング素子Q01をより低抵抗にターンオンさせる。すでに副スイッチング素子Q02(Nチャンネル型)がターンオンしているので、主スイッチング素子Q01と副スイッチング素子Q02の直列回路からなるスイッチ部11は全体として反転動作して導通状態となる。
【0051】
図2(b)を参照すると、主スイッチング素子Q01のオン状態で駆動制御端子(ゲート)に印加される順バイアス電圧はツェナーダイオードZD1によるツェナー電圧V
ZD1 であり、1〜2[V]の比較的高い値である。
図6の従来例3の場合の順バイアス電圧が0.1〜0.5[V]と低かったのに比べると、本実施例では充分に高いオン電圧を印加できるので、オン状態における主スイッチング素子Q01の導通損失を大幅に低減させることができる。
【0052】
スイッチ部11の遮断状態から導通状態への切り替えにおいては、第1の抵抗素子R01が比較的高抵抗であり、より抵抗値の低い第2の抵抗素子R02が駆動制御端子(ゲート)に接続された副スイッチング素子Q02のターンオン動作に比べて主スイッチング素子Q01の方が早めにターンオン動作することはない。すなわち、主スイッチング素子Q01がターンオン動作を開始するタイミングではすでに副スイッチング素子Q02がターンオンを済ませている。
【0053】
そして、主スイッチング素子Q01の駆動制御端子(ゲート)に比較的高めの順バイアス電圧であるツェナーダイオードZD1によるツェナー電圧V
ZD1 を印加させることができるので、オン状態における主スイッチング素子Q01の導通損失を低減することができる。
【0054】
〔2〕スイッチ部11の導通状態から遮断状態への切り替え動作
次いで、制御回路12から出力されるスイッチングパルスが“H”レベルから“L”レベルに遷移すると、駆動制御用のスイッチング素子Q03(Pチャンネル型)はターンオンし、副スイッチング素子Q02(Nチャンネル型)がターンオフする。さらに、主スイッチング素子Q01がターンオフする。主スイッチング素子Q01または/および副スイッチング素子Q02のターンオフの結果、スイッチ部11は反転動作して遮断状態となる。
【0055】
スイッチ部11の導通状態から遮断状態への切り替え動作は、主スイッチング素子Q01または/および副スイッチング素子Q02のターンオフと駆動制御用のスイッチング素子Q03のターンオンに伴うものであるが、このとき仮に、駆動制御用のスイッチング素子Q03のターンオンが副スイッチング素子Q02のターンオフより遅れたとする。しかし、制御回路12から出力されるスイッチングパルスの電位はすでに“L”レベル(=0[V])となっているので、主スイッチング素子Q01や副スイッチング素子Q02の駆動制御端子(ゲート)に印加される電圧は“L”レベル(0[V])であり、駆動制御用のスイッチング素子Q03がたとえ動作遅延のためにオフ状態のままであったとしても、スイッチ部11が誤動作で導通状態を継続するといった弊害は生じない。
【0056】
ちなみに、主スイッチング素子Q01の駆動制御端子(ゲート)に“H”レベルとしてのツェナーダイオードZD1のツェナー電圧V
ZD1 が印加されているためには、駆動制御用のスイッチング素子Q03がオフ状態であって、ツェナーダイオードZD1に電流が流れていることが条件となる。そして、駆動制御用のスイッチング素子Q03がオフ状態となっているためには、制御回路12のスイッチングパルスの電位が“H”レベルであることが求められる。しかるに、上記のとおり、導通状態にあったスイッチ部11を遮断状態に遷移させるための起点動作として、制御回路12のスイッチングパルスを“H”レベルから“L”レベルに切り替えることが既に行われており、これが第1の抵抗素子R01を介して主スイッチング素子Q01の駆動制御端子(ゲート)に印加されているので、駆動制御用のスイッチング素子Q03の遅れたターンオンタイミングよりも先に主スイッチング素子Q01はターンオフすることになる。
【0057】
以上詳しく説明したように、本実施例の場合、駆動制御用のスイッチング素子Q03がたとえ動作遅延を生じたとしても、スイッチ部11が誤動作(導通状態を継続(過剰延長))するといった弊害は生じない。
【0058】
〔第2の実施例〕
図3は本発明の第2の実施例におけるゲート駆動回路の構成を示す回路図である。
【0059】
第2の実施例のゲート駆動回路は、
図1に示す第1の実施例において、一方向性通電素子としての第1および第2の整流ダイオードD01,D02と電流制限用の抵抗素子R04,R05が追加されたものである。副スイッチング素子Q02の駆動制御端子(ゲート)と制御回路12の出力端子との間に挿入された第2の抵抗素子R02に対して、第1の整流ダイオードD01と抵抗素子R04の直列回路(第1の直列回路)が並列に接続されている。第1の整流ダイオードD01は、そのハイサイド端子(アノード)が抵抗素子R04の一端に接続され、そのローサイド端子(カソード)が接続ノードN11に接続され、抵抗素子R04の他端が第2の抵抗素子R02と制御回路12の出力端子との接続ノードN12に接続されている。また、第2の整流ダイオードD02は、そのローサイド端子(カソード)が抵抗素子R05の一端に接続され、そのハイサイド端子(アノード)が接続ノードN21に接続され、抵抗素子R05の他端が第3の抵抗素子R03と制御回路12の出力端子との接続ノードN22に接続されている。
【0060】
もしも、主スイッチング素子Q01がすでにターンオンしているにもかかわらず、副スイッチング素子Q02が誤動作のために未だターンオンしていなくてオフ状態のままであれば、オフ状態となっている副スイッチング素子Q02において損失が増大する。
【0061】
これに対して、第2の実施例においては、副スイッチング素子Q02の駆動制御端子(ゲート)に接続の第2の抵抗素子R02に対して第1の整流ダイオードD01と抵抗素子R04の直列回路を並列接続してあるので、制御回路12から“H”レベルのスイッチングパルスを出力してスイッチ部11を遮断状態から導通状態へ切り替える際に、副スイッチング素子Q02のターンオン動作を主スイッチング素子Q01のターンオン動作よりも高速化することができる。それは、第2の抵抗素子R02と抵抗素子R04の並列接続により合成抵抗値を低減させるとともに、第1の整流ダイオードD01によって副スイッチング素子Q02の駆動制御端子(ゲート)に電圧を印加する動作を高速化しているからである。また、主スイッチング素子Q01の駆動制御端子(ゲート)に接続された第1の抵抗素子R01の抵抗値を高く設定して、主スイッチング素子Q01の動作速度を低めにしてあることも寄与する。
【0062】
副スイッチング素子Q02のターンオン動作が早めに行われると、主スイッチング素子Q01がターンオンしたタイミングではすでに副スイッチング素子Q02が導通していてインピーダンス成分として機能することは回避されるため、副スイッチング素子Q02での損失の問題は避けることができる。
【0063】
このように第2の実施例によれば、スイッチ部11を遮断状態から導通状態へ切り替える際の、主スイッチング素子Q01のターンオン完了時に副スイッチング素子Q02が誤動作のためにオフ状態を継続していることに起因する、副スイッチング素子Q02における損失の問題を解消することができる。
【0064】
第1の整流ダイオードD01を挿入する理由は次のとおりである。もしも、第1の整流ダイオードD01がないとすると、副スイッチング素子Q02はそのターンオフ動作も高速化され、主スイッチング素子Q01がターンオフするまでの間、すなわち、主スイッチング素子Q01が未だオン状態のままにある期間において、副スイッチング素子Q02での損失が増加する。
【0065】
これに対して、整流ダイオードD01を挿入しておくと、主スイッチング素子Q01より早く副スイッチング素子Q02がターンオフすることを回避し、副スイッチング素子Q02での損失増加を抑制することが可能となる。
【0066】
また、もしも、副スイッチング素子Q02がすでにターンオフしているにもかかわらず、主スイッチング素子Q01が誤動作のために未だターンオフしていなくてオン状態のままであれば、オフ状態となっている副スイッチング素子Q02において損失が増大化する(オフ状態のスイッチング素子はインピーダンス成分である)。ここでは、主スイッチング素子Q01の誤動作(オン状態過剰延長)の要因として、駆動制御用のスイッチング素子Q03のターンオン動作の遅延を想定している。
【0067】
これに対して、第2の実施例においては、駆動制御用のスイッチング素子Q03の駆動制御端子(ゲート)に接続の第3の抵抗素子R03に対して第2の整流ダイオードD02と抵抗素子R05の直列回路(第2の直列回路)を並列接続してあるので、制御回路12から“L”レベルのスイッチングパルスを出力してスイッチ部11を導通状態から遮断状態へ切り替える際に、駆動制御用のスイッチング素子Q03のターンオン動作を主スイッチング素子Q01のターンオフ動作よりも高速化することができる。それは、第3の抵抗素子R03と抵抗素子R05の並列接続により合成抵抗値を低減させるとともに、第2の整流ダイオードD02によって駆動制御用のスイッチング素子Q03の駆動制御端子(ゲート)の電圧を引き込む動作を高速化しているからである。また、主スイッチング素子Q01の駆動制御端子(ゲート)に接続された第1の抵抗素子R01の抵抗値を高く設定して、主スイッチング素子Q01の動作速度を低めにしてあることも寄与する。
【0068】
駆動制御用のスイッチング素子Q03のターンオン動作が早めに行われると、接続ノードN01の電位が逆バイアス電圧へと降下するタイミングも早まり、主スイッチング素子Q01のターンオフ動作を確実化することができるのである。すなわち、先にオフした副スイッチング素子Q02の比較的高いレベルの両端子間電圧(ドレイン・ソース間電圧)が主スイッチング素子Q01の駆動制御端子(ゲート)に印加されてしまって、主スイッチング素子Q01のターンオフ動作が阻害されることの弊害を避けることができる。
【0069】
このように第2の実施例によれば、スイッチ部11を導通状態から遮断状態へ切り替える際の、主スイッチング素子Q01のターンオフ動作の遅延に起因する、先にターンオン動作した副スイッチング素子Q02における損失の問題を解消することができる。
【0070】
第2の整流ダイオードD02を挿入する理由は次のとおりである。もしも、第2の整流ダイオードD02がないとすると、駆動制御用のスイッチング素子Q03はそのターンオフ動作も高速化され、ツェナーダイオードZD1によるツェナー電圧V
ZD1 の立ち上がりが早まり、主スイッチング素子Q01のターンオン動作が早まる。主スイッチング素子Q01のターンオン動作が完了したタイミングで副スイッチング素子Q02のターンオン動作が遅れ、副スイッチング素子Q02が未だオフ状態のままであれば、副スイッチング素子Q02での損失が増加する。
【0071】
これに対して、第2の整流ダイオードD02を挿入しておくと、副スイッチング素子Q02より早く主スイッチング素子Q01がターンオンすることを回避し、副スイッチング素子Q02での損失増加を抑制することが可能となる。
【0072】
なお、上記第2の実施例においては、第2の抵抗素子R02に対して、第1の整流ダイオードD01と抵抗素子R04の直列回路(第1の直列回路)を並列に接続するとともに、第3の抵抗素子R03に対して、第2の整流ダイオードD02と抵抗素子R05の直列回路(第2の直列回路)を並列に接続しているが、必ずしも第1の直列回路と第2の直列回路の両方を付加する必要はない。すなわち、副スイッチング素子Q02のターンオン動作を主スイッチング素子Q01のターンオン動作より確実に早くする観点からは、第1の直列回路のみを付加してもよいし、駆動制御用のスイッチング素子Q03のターンオン動作を主スイッチング素子Q01のターンオフ動作より確実に早くする観点からは、第2の直列回路のみを付加してもよい。また、第1の直列回路において、第1の整流ダイオードD01と抵抗素子R04の配置が入れ替え可能であり、第2の直列回路において、第2の整流ダイオードD02と抵抗素子R05の配置が入れ替え可能であることは言うまでもない。