(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを保持するワーク保持具と、加工具を駆動して前記ワーク保持具に保持されたワークを加工する加工ユニットと、前記加工ユニットを前記ワーク保持具に対して相対的に移動させて、前記加工具を加工位置に位置するよう制御する加工制御装置と、を備える機械加工装置を支援するシステムであって、
前記加工具により加工部位において前記ワークに作用する加工反力に抗するワーク支持力を発生するワーク支持力発生ユニットと、
前記ワーク支持力発生ユニットを支持しながら移動させる支持装置と、
前記加工反力に関連する加工反力関連データ及び前記加工具の加工位置に関連する加工位置関連データに基づいて、前記ワーク支持力発生ユニットが前記加工反力に抗する前記ワーク支持力を前記ワークに作用させるように前記ワーク支持力発生ユニット及び前記支持装置の動作を制御するワーク支持力制御装置と、を備え、
前記加工ユニットは、周面又は先端面に切削刃又は研削砥石が形成された円柱状又は円盤状の回転削具を中心軸の周りに回転させて前記ワーク保持具に保持されたワークを削り加工するよう構成され、
前記ワーク支持力発生ユニットは、円柱状の回転体と当該回転体を中心軸の周りに回転させる回転駆動装置を備え、
前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転削具の中心軸に平行であり、且つ当該回転体が前記回転削具により前記ワークに作用する切削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が回転して前記切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御するように構成されている、機械加工支援システム。
前記加工ユニットは、周面に切削刃が形成された円柱状の回転切削具を中心軸の周りに回転させて前記ワーク保持具に保持されたワークの側面を切削加工するよう構成され、
前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転切削具の中心軸に平行で当該回転体の周面が前記ワークを介して前記回転切削具の周面と対向し、且つ当該回転体の周面が前記回転切削具により前記ワークに作用する切削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が前記回転切削具の回転方向と同じ方向に回転して前記切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御するように構成されている、請求項1に記載の機械加工支援システム。
前記加工ユニットは、先端面に切削刃が形成された円柱状の回転切削具を中心軸の周りに回転させて前記ワーク保持具に保持されたワークの表面を切削加工するよう構成され、
前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転切削具の中心軸に平行で当該回転体の先端面が前記ワークを介して前記回転切削具の先端面と対向し、且つ当該回転体の先端面が前記回転切削具により前記ワークに作用する切削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が前記回転切削具の回転方向と逆方向に回転して前記切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御するように構成されている、請求項1に記載の機械加工支援システム。
前記加工ユニットは、周面に研削砥石が形成された円盤状の回転研削具を中心軸の周りに回転させて前記ワーク保持具に保持されたワークの側面を研削加工するよう構成され、
前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転研削具の中心軸に平行であり、且つ当該回転体が前記回転研削具により前記ワークに作用する研削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が回転して前記研削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御するように構成されている、請求項1に記載の機械加工支援システム。
前記ワーク表面の加工部位は、当該ワークの剛性を高め且つ当該ワークと一緒に加工することが可能な膜で覆われている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の機械加工支援システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、薄板、薄肉円筒等の剛性が低いワークの機械加工では、加工反力によるワークの振動、変形等による切込み不良等が発生しやすい。このため、切込み量や送り速度等の切削条件を下げる、同じ個所を二度削るゼロカットをする等の対策を講じることが考えられる。しかし、これらの方法では、機械加工の効率が下がるという課題がある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、低剛性ワークの機械加工において生産効率の低下を抑制しつつワークの変形による加工精度の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のある態様に係る機械加工支援システムは、ワークを保持するワーク保持具と、加工具を駆動して前記ワーク保持具に保持されたワークを加工する加工ユニットと、前記加工ユニットを前記ワーク保持具に対して相対的に移動させて、前記加工具を加工位置に位置するよう制御する加工制御装置と、を備える機械加工装置を支援するシステムであって、前記加工具により加工部位において前記ワークに作用する加工反力に抗するワーク支持力を発生するワーク支持力発生ユニットと、前記支持力発生ユニットを支持しながら移動させる支持装置と、前記加工反力に関連する加工反力関連データ及び前記加工具の加工位置に関連する加工位置関連データに基づいて、前記ワーク支持力発生ユニットが前記加工反力に抗する前記ワーク支持力を前記ワークに作用させるように前記ワーク支持力発生ユニット及び前記支持装置の動作を制御するワーク支持力制御装置と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、ワーク支持力発生ユニットが加工具により加工部位においてワークに作用する加工反力に抗するワーク支持力を発生し、支持装置が支持力発生ユニットを支持しながら移動させる。そして、ワーク支持力制御装置が、加工反力関連データ及び加工位置関連データに基づいて、ワーク支持力発生ユニットが加工反力に抗するワーク支持力をワークに作用させるようにワーク支持力発生ユニット及び支持装置の動作を制御する。従って、ワーク支持力を、加工反力に拮抗するように制御することによって、ワークが低剛性のものであっても、加工反力によるワークの変形を防止することができ、ひいてはワークの変形による加工精度の低下を防止することができる。また、加工条件を低下等させる必要がないので、生産効率の低下を抑制することができる。
【0009】
ここで加工反力とは、加工時に加工具からワークに作用する力をいう。例えば切削加工の場合にはワークから加工具に切削抵抗力が作用する。この場合には、加工具からワークに作用する切削抵抗に対する反力が加工反力(切削反力)である。
【0010】
前記加工ユニットは、周面又は先端面に切削刃又は研削砥石が形成された円柱状又は円盤状の回転削具を中心軸の周りに回転させて前記ワーク保持具に保持されたワークを削り加工するよう構成され、前記ワーク支持力発生ユニットは、円柱状の回転体と当該回転体を中心軸の周りに回転させる回転駆動装置とを備え、前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転削具の中心軸に平行であり、且つ当該回転体が前記回転削具により前記ワークに作用する切削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が回転して前記切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御するように構成されていてもよい。ここで削り加工は、切削加工及び研削加工を含む。
【0011】
上記構成によれば、機械加工装置が回転削具によるワークの削り加工を行う装置である場合には、ワーク支持力制御装置は、加工反力関連データ及び加工位置関連データに基づいて、支持装置を用いて、回転体の中心軸が回転削具の中心軸に平行であり、且つ当該回転体が回転削具によりワークに作用する切削反力に抗する押し付け力をワークに作用させるようワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、回転体が回転して切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクをワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御する。従って、機械加工装置が回転削具によるワークの削り加工を行う装置である場合において、ワークが低剛性のものであっても、生産効率の低下を抑制しつつ、ワークの変形による加工精度の低下を防止することができる。
(側面切削:エンドミル)
前記加工ユニットは、周面に切削刃が形成された円柱状の回転切削具を中心軸の周りに回転させて前記ワーク保持具に保持されたワークの側面を切削加工するよう構成され、
前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転切削具の中心軸に平行で当該回転体の周面が前記ワークを介して前記回転切削具の周面と対向し、且つ当該回転体の周面が前記回転切削具により前記ワークに作用する切削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が前記回転切削具の回転方向と同じ方向に回転して前記切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御するように構成されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、機械加工装置が回転切削具によるワーク側面の切削加工を行う装置である場合には、前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転切削具の中心軸に平行で当該回転体の周面が前記ワークを介して前記回転切削具の周面と対向し、且つ当該回転体の周面が前記回転切削具により前記ワークに作用する切削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が前記回転切削具の回転方向と同じ方向に回転して前記切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御する。従って、機械加工装置が回転切削具によるワーク側面の切削加工を行う装置である場合において、ワークが低剛性のものであっても、生産効率の低下を抑制しつつ、ワークの変形による加工精度の低下を防止することができる。
(正面切削:フライス、穴加工:ドリル)
前記加工ユニットは、先端面に切削刃が形成された円柱状の回転切削具を中心軸の周りに回転させて前記ワーク保持具に保持されたワークの表面を切削加工するよう構成され、
前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転切削具の中心軸に平行で当該回転体の先端面が前記ワークを介して前記回転切削具の先端面と対向し、且つ当該回転体の先端面が前記回転切削具により前記ワークに作用する切削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が前記回転切削具の回転方向と逆方向に回転して前記切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御するように構成されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、機械加工装置が回転切削具によるワーク表面のフライス加工又は穴加工を行う装置である場合には、前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転切削具の中心軸に平行で当該回転体の先端面が前記ワークを介して前記回転切削具の先端面と対向し、且つ当該回転体の先端面が前記回転切削具により前記ワークに作用する切削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が前記回転切削具の回転方向と逆方向に回転して前記切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御する。従って、機械加工装置が回転切削具によるワーク表面のフライス加工又は穴加工を行う装置である場合において、ワークが低剛性のものであっても、生産効率の低下を抑制しつつ、ワークの変形による加工精度の低下を防止することができる。
(研削加工)
前記加工ユニットは、周面に研削砥石が形成された円盤状の回転研削具を中心軸の周りに回転させて前記ワーク保持具に保持されたワークの側面を研削加工するよう構成され、前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転研削具の中心軸に平行であり、且つ当該回転体が前記回転研削具により前記ワークに作用する研削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が回転して前記研削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御するように構成されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、機械加工装置が回転砥石によるワーク側面の研削加工を行う装置である場合には、前記ワーク支持力制御装置は、前記加工反力関連データ及び前記加工位置関連データに基づいて、前記支持装置を用いて、前記回転体の中心軸が前記回転研削具の中心軸に平行であり、且つ当該回転体が前記回転研削具により前記ワークに作用する研削反力に抗する押し付け力を前記ワークに作用させるよう前記ワーク支持力発生ユニットの姿勢及び位置を制御し、且つ、前記回転体が回転して前記研削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを前記ワークに作用させるよう前記回転駆動装置の動作を制御する。従って、機械加工装置が回転砥石によるワーク側面の研削加工を行う装置である場合において、ワークが低剛性のものであっても、生産効率の低下を抑制しつつ、ワークの変形による加工精度の低下を防止することができる。
【0015】
前記ワークに作用する動力を検出する動力計を更に備え、前記加工反力関連データが、前記動力計により検出された動力であってもよい。
【0016】
上記構成によれば、加工中にワークに作用する動力が動力計によってリアルタイムで直接検出されるので、動力計により検出される動力を用いてワーク支持力を正確にフィードバック制御することができる。例えば切削加工の場合には、動力計によりワークに作用する動力を検出し、検出値がゼロに維持されるようにワーク支持力をフィードバック制御する。
【0017】
前記加工ユニットは、前記加工具と当該加工具を駆動するモータと、を備え、前記機械加工支援システムは、前記モータを流れる電流を検出する電流検出器を更に備え、前記加工反力関連データが、前記電流検出器により検出される前記モータを流れる電流値であってもよい。
【0018】
上記構成によれば、加工具を駆動するモータの電流値は加工反力に応じた値になる。従って、加工中にワークに作用する加工反力が電流検出器によりリアルタイムで間接的に検出されるので、電流検出器によって検出されるモータの電流値を用いてワーク支持力をフィードフォワード制御することができる。
【0019】
前記ワーク保持具に設けられ、当該ワーク保持具に保持されたワークの振動を計測する振動計を更に備え、前記加工反力関連データが前記振動計により計測された振動であってもよい。
【0020】
上記構成によれば、ワークの振動は、ワークに作用する加工反力に応じたものになる。従って、加工中にワークに作用する加工反力が振動計によって間接的にリアルタイムで計測されるので、振動計によって計測される振動を用いてワーク支持力をフィードバック制御することができる。また、それにより、ワークの振動を抑制することができる。(なお、びびり振動の振動数は加工位置ごとに異なるので加工位置に応じて支持力発生ユニットによる押し付け力の強さを変えてもよい。)
前記加工反力関連データを記憶するための記憶部を更に備え、前記ワーク支持力制御装置は、前記加工位置関連データ及び前記記憶部に記憶された加工反力関連データに基づいて、前記ワーク支持力発生ユニット及び前記支持装置の動作を制御してもよい。
【0021】
上記構成によれば、実験的に又は理論的に加工位置ごとの加工反力を事前に推定してワーク支持力を制御することができるので、加工反力を検出する機器を省略して機械加工支援システムを簡素化することができる。例えば切削加工において実験的に加工反力を推定する場合は事前に動力計により切削抵抗力を測定しておき、実験データに基づいて推定した切削抵抗反力を記憶しておいてもよい。
【0022】
前記支持装置が、前記ワーク支持力発生ユニットをハンドによって保持する多関節ロボットであり、前記ワーク支持力制御装置は、前記多関節ロボットの動作を制御し且つ前記ワーク支持力発生ユニットの動作を制御するよう構成されていてもよい。
【0023】
前記ワーク表面の加工部位が、当該ワークの剛性を高め且つ当該ワークと一緒に加工することが可能な膜で覆われていてもよい。この場合、加工前の事前の処理として、上記ワーク表面の加工部位を、例えば発泡樹脂や低融点合金等の膜で覆うような処理を施してもよい。上記構成によれば、ワーク表面の加工部位の剛性が高くなるので、加工時の振動を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、低剛性ワークの機械加工において生産効率の低下を抑制しつつワークの変形による加工精度の低下を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下では全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態における変形例には通し番号が付されている。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る機械加工支援システムの構成を示したブロック図である。
図1に示すように、機械加工支援システム1は、自動的にワークWの加工を行う機械加工装置2を支援するシステムである。
【0027】
まず、機械加工装置2の構成について説明する。機械加工装置2は、ワークWを保持するワーク保持具3と、加工ユニット4と、加工制御装置5とを備える。本実施の形態では、機械加工装置2は、例えば、目的に合わせて側面切削加工、正面切削加工、穴加工、研削加工等の異なる種類の加工を1台で行うことができるマシニングセンタ (machining center)である。
【0028】
ワーク保持具3は、ワークWを保持するものであればよい。ワーク保持具3は、例えば、基台及び当該基台上にワークWを固定する機構を有する。ワークWは特に限定されないが、剛性の低いものである程、本発明の作用効果が顕著なものになる。本実施の形態における機械加工の対象物であるワークWは、例えば、剛性の低い薄板形状を有する。ワークWは低剛性であれば薄肉円筒等のその他の形状を有してもよい。
【0029】
加工ユニット4は、加工具4aを駆動してワーク保持具3に保持されたワークWを加工する。本実施の形態では、加工ユニット4は、周面に切削刃が形成された円柱状の回転切削具4aを中心軸4cの周りに回転させてワーク保持具3に保持されたワークWの側面を切削加工するよう構成される。駆動装置4dは、例えば、内部にサーボモータを備え、主軸4bの軸心(回転切削部具4aの中心軸)4cを中心に回転切削具4aを回転駆動する。
【0030】
加工制御装置5は、加工ユニット4をワーク保持具3に対して相対的に移動させて、加工具4aを加工位置に位置するよう制御する。具体的には、加工制御装置5は、加工ユニット4をワーク保持具3に対して相対的に移動させる移動機構(図示せず)と、加工ユニット4のワーク保持具3に対する相対的な移動を制御する制御装置(図示せず)とを含む。本実施の形態では、ワーク保持具3は固定されていて、加工ユニット4が移動機構によって移動される。制御装置は、コンピュータ数値制御(CNC)により、移動機構によって加工ユニット4の位置を制御するとともに加工ユニット4の動作を制御して、回転切削具4aによるワークWに対する切削加工動作を制御する。加工位置関連データとは、加工位置そのもののデータと、加工位置との相関関係を有するデータとの双方を含む。
【0031】
次に、機械加工支援システム1の構成について
図1を用いて説明する。機械加工支援システム1は、ワーク支持力発生ユニット6と、支持装置7と、動力計9と、ワーク支持力制御装置8と、を備える。
【0032】
ワーク支持力発生ユニット6は、加工具4aにより加工部位においてワークWに作用する加工反力に抗するワーク支持力を発生する。本実施の形態では、ワーク支持力発生ユニット6は、円柱状の回転体6aと、基体6bと、回転駆動装置6dとを備える。円柱状の回転体6aは、例えば、弾性体で構成され、弾性体の弾性は、後述する押し付け力、ワークWのびびりの周波数等を考慮して適宜選択される。本実施の形態では、回転体6aは、ゴム製のローラである。回転体6aは軸線6cを中心軸とする回転軸(図示せず)を有し、この回転軸が軸受け(図示せず)を介して基体6bに回転自在に保持される。回転駆動装置6dは、基体6bに取り付けられ、ワーク支持力制御装置8からの回転トルク指令に応じて、軸線6cを中心に回転体6aを回転させる。回転駆動装置6dは、例えば、モータで構成され、このモータの主軸が回転体6aの回転軸に同軸状に接続される。本実施の形態では、モータは、例えば、サーボモータである。
【0033】
ここで加工反力とは、加工時に加工具からワークに作用する力をいう。本実施の形態における側面切削加工の場合にはワークWから加工具4aに切削抵抗力が作用する。この場合には、加工具4aからワークWに作用する切削抵抗に対する反力が加工反力(切削反力)である。
【0034】
支持装置7は、支持力発生ユニット6を支持しながら移動させるものであれば、特に限定されない。本実施の形態では、支持装置7は、例えば、動作に必要な複数の関節軸を備えた多関節ロボットである。多関節ロボット7は、アーム先端に設けられたハンド7aによってワーク支持力発生ユニット6の基体6bを保持する。
【0035】
動力計9は、ワークWに作用する動力を検出する。本実施の形態では、動力計9は、機械加工装置2のワーク保持具3の基台を支持するように設けられ、ワークWにかかる動力(負荷)を検出する。動力計9は、検出した動力を、加工反力関連データとしてワーク支持力制御装置8に出力する。加工反力関連データは、加工反力そのもののデータと加工反力と相関関係を有するデータとの双方をふくむ。動力計9が検出する動力は、ワークWに作用する加工反力と支持力発生ユニット6によってワークWに作用するワーク支持力との合力であるので、加工反力と相関関係を有するデータである。
【0036】
ワーク支持力制御装置8は、動力計9から受信した加工反力関連データ及び加工制御装置5から受信した加工位置関連データに基づいて、ワーク支持力発生ユニット6が加工反力に抗するワーク支持力をワークWに作用させるようにワーク支持力発生ユニット6及び支持装置7の動作を制御する。本実施の形態では、ワーク支持力制御装置8は、多関節ロボット7の動作を制御し且つワーク支持力発生ユニット6の動作を制御するよう構成されている。更に、ワーク支持力制御装置8は、後述するように、回転体6aが回転切削具4aによりワークWに作用する切削反力に抗する押し付け力をワークWに作用させるようワーク支持力発生ユニット6の姿勢及び位置を制御し、且つ、回転体6aが回転して切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクをワークWに作用させるよう回転駆動装置6dの動作を制御するように構成されている。
【0037】
図2は、ワーク支持力制御装置(以下、単に支持力制御装置ともいう)8の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、ワーク支持力制御装置8は、メモリ8aと、動力目標値設定部8bと、加減算器8cと、補償器8dと、分力演算部8eと、ロボット制御部8fを備える。ワーク支持力制御装置8は、例えば、マイクロコントローラ等の演算装置で構成され、メモリ8aはマイクロコントローラ等の内部メモリ等で構成される。また、上記ブロック8b〜8eは、マイクロコントローラがインストールされた所定のプログラムを実行することによって実現される機能ブロックである。
【0038】
メモリ8aは、動力の目標値(以下、動力目標値という)等の各種データを格納する。
【0039】
動力目標値設定部8bは、メモリ8aに記憶される動力目標値を読み出し、加減算器8cに出力する。本実施の形態では、動力目標値は、ゼロに設定され、動力計9で検出される動力(以下、動力検出値という)がゼロのときに適切な支持力がワークWに作用したことを意味する。
【0040】
加減算器8cは、動力目標値から動力検出値を減算した値である、動力検出値に対する目標動力値の偏差(以下、動力偏差という)を補償器8dへ出力する。
【0041】
補償器8dは、動力偏差に例えばPID補償を施して、補償された動力偏差を分力演算部8eに出力する。
【0042】
分力演算部8eは、補償された動力偏差に基づいて、回転体6aが回転切削具4aによりワークWに作用する切削反力に抗する押し付け力及び回転体6aが回転して切削反力により発生するトルクに抗する回転トルクを演算する。なお、切削反力は回転切削具4aの接線方向に発生する力である接線方向分力と、これに垂直に発生する垂直方向分力と、回転軸4 cの方向に発生する軸方向分力とに分けられるが、接線方向分力と垂直方向分力と軸方向分力の比率は、切削加工の形態により推定するか、動力計9により検知できるため、既知である。分力演算部8eは、この既知の比率に基づいて押し付け力及び回転トルクを演算する。更に、分力演算部8eは、演算した押し付け力の指令値をロボット制御部8fに出力するとともに、演算した回転トルクの指令値を回転駆動装置6dに出力する。
【0043】
ロボット制御部8fは、支持装置7としての多関節ロボットの動作を制御する。本実施の形態では、ロボット制御部8fは、加工制御装置5から取得した加工位置関連データに基づいて、支持力発生ユニット6が回転切削具4aによる加工位置に対応する位置となるように多関節ロボット7に動作制御信号を出力する。具体的には、例えば、ロボット制御部8fは、機械加工装置2の座標系で表された加工位置関連データを多関節ロボット7の座標系で表されたデータに変換し、この変換したデータを用いて、回転体6aの軸線6cが回転切削具4aの回転軸に平行となり、且つ、高さ方向における回転体6aの位置と回転切削具4aの送り方向における回転体6aの位置とが回転切削具4aによる加工位置に対応するように多関節ロボット7の動作を制御する。これにより、回転体6aが回転切削具4aによる加工位置の移動に追従して移動する。また、ロボット制御部8fは、分力演算部8eから取得した押し付け力の指令値に基づいて、支持力発生ユニット6の回転体6aを通じて、押し付け力をワークWに作用させるよう多関節ロボット7に動作制御信号を出力する。具体的には、ロボット制御部8fは、押し付け力の指令値に応じてワークWの厚み方向における回転体6aの位置及び押し付け力が変化するよう多関節ロボット7の動作を制御する。これにより、押し付け力の指令値に基づいた押し付け力が回転体6aによってワークWに作用する。
【0044】
一方、回転駆動装置6dは、分力演算部8eから取得した回転トルクの指令値に基づいた回転トルクを、ワークWに作用させるよう支持力発生ユニット6の回転体6aを制御する。具体的には、回転駆動装置6dは、回転トルクの指令値に応じた回転トルクで回転体6aを回転切削具4aの回転方向と同じ方向に回転させる。これにより、回転トルクの指令値に応じた回転トルクが回転体6aによってワークWに作用する。
【0045】
そして、回転体6aによる押し付け力及び回転トルクは、動力計9により検出される動力がゼロになるようにフィードバック制御される。その結果、ワークWに作用する加工反力に拮抗するワーク支持力がワークWの加工部位に作用して、加工反力によるワークの変形が防止される。なお、軽微なびびり振動は、回転体6aの弾性を適宜選択することにより、回転体6aにより吸収されて抑制される。
【0046】
図3は、機械加工支援システム1による側面切削加工時のワーク支持力(以下、単に支持力ともいう)を説明するための模式図である。
図3(a)の平面図及び
図3(b)の斜視図では、説明の都合上、加工ユニット4の回転切削具4aと、ワークWと、支持力発生ユニット6の回転体6aのみを示している。
図3(a)及び(b)に示すように、回転切削具4aの送り方向を紙面手前の方向としたとき、ワーク支持力制御装置8は、支持装置(多関節ロボット)7を用いて、回転体6aの軸線6cが回転切削具4aの中心軸4cに平行で当該回転体6aの周面がワークWを介して回転切削具4aの周面と対向し、且つ当該回転体6aの周面が回転切削具4aによりワークWに作用する切削反力の垂直方向分力F
2に抗する押し付け力F
’2をワークWに作用させるようワーク支持力発生ユニット6の姿勢及び位置を制御する。更にワーク支持力制御装置8は、回転体6aが回転切削具4aの回転方向と同じ方向(図中のカーブ矢印の方向)に回転して切削反力の接線方向分力F
1により発生するトルクに抗する回転トルクF
’1をワークWに作用させるよう回転駆動装置6dの動作を制御する。
【0047】
従って、本実施の形態1のように、機械加工装置2が回転切削具4aによるワーク側面の切削加工を行う装置である場合において、ワーク支持力が、加工反力に拮抗するように制御され、それによって、ワークWが低剛性のものであっても、加工反力によるワークWの変形を防止することができ、ひいてはワークWの変形による加工精度の低下を防止することができる。また、加工条件を低下等させる必要がないので、生産効率の低下を抑制することができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。以下では、実施の形態1と共通する構成については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0048】
図4は、本実施の形態2に係る機械加工支援システムの構成を示したブロック図である。
図4に示すように、機械加工支援システム1aは、加工ユニット4の駆動装置4dのモータを流れる電流を検出する電流センサ10を更に備え、加工反力関連データが、電流センサ10により検出されるモータを流れる電流値である点が実施形態1と異なる。ここで回転切削具4aを駆動するモータの電流値は加工反力に応じた値になる。
【0049】
図5は、
図4の機械加工支援システム1aにおけるワーク支持力制御装置8の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、本実施の形態では、ワーク支持力制御装置8が加工反力演算部8gを備える。メモリ8aには、事前に教示された回転体6aの位置等のデータが加工位置関連データとして格納される。ロボット制御部8fは、この事前に教示された加工位置関連データをメモリ8aから読み出してこれに基づいて、回転体6aが回転切削具4aによる加工位置の移動に追従して移動するよう多関節ロボット7の動作を制御する。
【0050】
また、メモリ8aには、例えば、予めモータの電流値とそれに対応する加工反力とがテーブルとして記憶される。そして、この加工反力演算部8gが、電流センサ10から加工反力関連データとしての電流値を受信し、上記テーブルを参照して、受信した電流値に対応する加工反力をメモリ8aから読み出して、加工反力を分力演算部8eに出力する。
【0051】
これにより、回転体6aによる押し付け力及び回転トルクが、加工ユニット4のモータの電流値に応じたものとなるようフィードフォワード制御される。その結果、ワークWに作用する加工反力に拮抗するワーク支持力がワークWの加工部位に作用して、加工反力によるワークの変形が防止される。
【0052】
従って、本実施の形態2によれば、加工中にワークWに作用する加工反力が電流センサ10によりリアルタイムで間接的に検出されるので、電流センサ10によって検出されるモータの電流値を用いてワーク支持力をフィードフォワード制御することができる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。以下では、実施の形態1と共通する構成については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0053】
図6は、本発明の実施の形態3に係る機械加工支援システムの構成を示したブロック図である。
図6に示すように、機械加工支援システム1bは、実施の形態1の動力計9に代えて、ワーク保持具3の基台に設けられ、加工中に発生したワークWの振動を計測する振動計11を備え、加工反力関連データが振動計11により計測された振動である点が実施形態1と異なる。ここでワークWの振動は、ワークWに作用する加工反力に応じたものになる。
【0054】
図7は、機械加工支援システム1bにおけるワーク支持力制御装置の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施の形態では、ワーク支持力制御装置8が振動目標値設定部8hを備える。そして、この振動目標値設定部8hは、メモリ8aに記憶される振動目標値を読み出し、加減算器8cに出力する。本実施の形態では、振動目標値は、ゼロに設定され、振動計11で計測される振動(以下、振動計測値という)がゼロのときに適切な支持力がワークWに作用したことを意味する。加減算器8cは、振動目標値から振動計測値を減算した値である、振動計測値に対する振動目標値の偏差(以下、振動偏差という)を補償器8dへ出力する。
【0055】
補償器8dは、振動偏差に例えばPID補償を施して、補償された振動偏差を分力演算部8eに出力する。
【0056】
分力演算部8eは、補償された振動偏差に基づいて、押し付け力の指令値及び回転トルクの指令値を出力する。これ以降の動作は実施の形態1と同じであるので、その説明を省略する。
【0057】
従って、本実施の形態3によれば、加工中にワークWに作用する加工反力が振動計11によって間接的にリアルタイムで計測されるので、振動計11によって計測される振動を用いてワーク支持力をフィードバック制御することができる。また、それにより、ワークWの振動を抑制することができる。
[変形例1]
図8は、本発明の実施の形態3の変形例1に係る機械加工支援システムの構成を示したブロック図である。
図8に示すように、回転駆動装置6dの基体6bは、振動を能動的に抑制するための加振器12に支持されている。加振器12は、公知のものを用いることができ、その構造は良く知られているので、簡単に説明する。加振器12は、例えば、基台(図示せず)に弾性的に支持された可動体(図示せず)と、この可動体を振動させる加振部(図示せず)とを備えている。そして、当該可動体によって回転駆動装置6dの基体6bが保持され、当該基台が多関節ロボット7のハンド7aにより保持されている。そして、ワーク支持力制御部8からの振動指令に基づいて、所定の振動を回転体6aに与えるように構成されている。加振器12は、例えば永久磁石式の電磁加振器である。
【0058】
図9は、
図8の機械加工支援システムにおけるワーク支持力制御装置の構成を示すブロック図である。
図9に示すように、本変形例では、ワーク支持力制御装置8が振動指令値演算部8jをさらに備える。そして、この振動指令値演算部8jは、振動計11から受信した振動計測値に基づいて振動指令値を演算し、加振器12に出力する。本実施の形態では、振動指令値演算部8jは、例えば、フーリエ解析機能を有していて、受信した振動計測値から主要な周波数成分の周波数及び振幅を算出し、これらの主要な周波数成分を打ち消すような振動指令値を生成して加振器12を出力する。加振器12は、この振動指令値に従って振動計測値の振動を打ち消すような振動を能動的に発生する。この振動は回転体6aを介して押し付け力に重畳されてワークWに伝達される。これにより、ワークWの振動の抑制効果をより高めることができる。
【0059】
一般に、加工中に発生するびびり振動の振動数は加工位置ごとに異なるので、加振器12を用いることなく、加工位置に応じて支持力発生ユニット6による押し付け力の強さを変えてもよい。また、ワークWの固有振動数に基づいて支持力発生ユニット6による押し付け力を周期的に変動させてもよい。また、回転体6aに動吸振器を設け、振動に応じて動吸振器の特性を変えてもよい。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。以下では、実施の形態1と共通する構成については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0060】
図10は、本実施の形態4に係る機械加工支援システム1cの構成を示したブロック図である。
図10に示すように、機械加工支援システム1cでは、加工反力を検出する動力計9、電流センサ10、振動計11等の機器を備えていない点が上記各実施の形態1〜3の構成と異なる。また、ワーク支持力制御装置8は、加工反力関連データを予め記憶しておくためのメモリを内部に備え、ワーク支持力制御装置8は、加工制御装置2から受信した加工位置関連データ及び内部に記憶された加工反力関連データに基づいて、ワーク支持力発生ユニット6及び支持装置7の動作を制御する点が実施形態1と異なる。
【0061】
図11は、
図10のワーク支持力制御装置8の構成を示すブロック図である。
図11に示すように、本実施の形態では、ワーク支持力制御装置8は、加工反力関連データを予め記憶しておくメモリ8aと、加工反力指令生成部8iを備える。そして、この加工反力指令生成部8iは、加工制御装置5から受信した加工位置関連データに基づいて、加工位置に対応する加工反力関連データをメモリ8aから読み出し、読み出した加工位置毎の加工反力を分力演算部8eに出力する。ここでメモリ8aには、実験的に又は理論的に加工位置ごとの加工反力を事前に推定したものが記憶されている。
【0062】
従って、本実施の形態4によれば、実験的に又は理論的に加工位置ごとの加工反力を事前に推定してワーク支持力を制御することができるので、加工反力を検出する機器を省略して機械加工支援システムを簡素化することができる。例えば切削加工において実験的に加工反力を推定する場合は事前に動力計により切削抵抗力を測定しておき、実験データに基づいて推定した切削抵抗反力をメモリ8aに記憶しておいてもよい。
【0063】
[変形例2]
図12は、本発明の実施の形態4の変形例2に係る機械加工支援システムの構成を示したブロック図である。
図12に示すように、機械加工支援システムは、ロボット7のアーム近傍に設けられたビジョンセンサ13により、加工位置関連データを取得する。
【0064】
図13は、
図12の機械加工支援システムにおけるワーク支持力制御装置の構成を示すブロック図である。
図13に示すように、本変形例では、ワーク支持力制御装置8は、加工反力関連データを予め記憶しておくメモリ8aと、加工反力指令生成部8iを備える。そして、この加工反力指令生成部8iは、ビジョンセンサ13から受信した加工位置関連データに基づいて、加工位置に対応する加工反力関連データをメモリ8aから読み出し、読み出した加工位置毎の加工反力を分力演算部8eに出力する。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。以下では、実施の形態1と共通する構成については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0065】
図14は、本発明の実施の形態5に係る機械加工支援システムによるフライス加工のワーク支持力を説明するための模式図である。
図14(a)の斜視図及び
図14(b)の側面図では、説明の都合上、加工ユニット4、ワークW、及び支持力発生ユニット6のみを示している。
【0066】
図14に示すように、本実施の形態5の機械加工支援システムの加工ユニット4は、先端面に切削刃40が形成された円柱状の回転切削具4aを中心軸4cの周りに回転させてワーク保持具3(図示せず)に保持されたワークWの表面を切削加工(フライス加工)するよう構成されている。
【0067】
また、ワーク支持力発生ユニット6は、円柱状の回転体6aと、当該回転体6aを軸線6cの周りに回転させる回転駆動装置6d(図示せず)とを備えている。
【0068】
本実施の形態5において、回転切削具4aの切削送り方向を紙面手前の方向としたとき、ワーク支持力制御装置8は、加工反力関連データ及び加工位置関連データに基づいて、支持装置7を用いて、回転体6aの中心軸6cが回転切削具4aの中心軸4cに平行で当該回転体6aの先端面がワークWを介して回転切削具4aの先端面と対向し、且つ当該回転体6aの先端面が回転切削具4aによりワークWに作用する切削反力Rの垂直方向F
2に抗する押し付け力F
’2をワークWに作用させるようワーク支持力発生ユニット6の姿勢及び位置を制御するように構成されている。更に、ワーク支持力制御装置8は、回転体6aが回転切削具4aの回転方向と逆方向に回転して研削反力Rの接線方向分力F
1により発生するトルクに抗する回転トルクF
’1をワークWに作用させるよう回転駆動装置6dの動作を制御するように構成されている。本実施の形態では、回転体6aの軸線6cは、回転切削具4aの中心軸4cとは同軸上に位置するように制御される。
【0069】
従って、本実施の形態5のように、機械加工装置が回転切削具4aによるワーク表面のフライス加工を行う装置である場合において、ワークWが低剛性のものであっても、生産効率の低下を抑制しつつ、ワークWの変形による加工精度の低下を防止することができる。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について説明する。以下では、実施の形態5と共通する構成については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態5と異なる点を中心に説明する。
【0070】
図15は、本実施の形態6に係る機械加工支援システムによる穴加工のワーク支持力を説明するための模式図である。
図15の上段(a)の斜視図及び下段(b)の側面図では、説明の都合上、加工ユニット4、ワークW、及び支持力発生ユニット6のみを示している。
図15に示すように、本実施の形態6に係る機械加工支援システムの加工ユニット4は、先端にドリルの刃41が形成された円柱状の回転切削具4aを中心軸4cの周りに回転させてワーク保持具3(図示せず)に保持されたワークWの表面を切削加工(ドリル加工)するよう構成されている。
【0071】
また、ワーク支持力発生ユニット6は、実施の形態5と同様に、円柱状の回転体6aと、当該回転体6aを中心軸6cの周りに回転させる回転駆動装置6d(図示せず)とを備えている。
【0072】
本実施の形態6において、ワーク支持力制御装置8は、加工反力関連データ及び加工位置関連データに基づいて、支持装置7を用いて、回転体6aの中心軸6cが回転切削具4aの中心軸4cに平行で当該回転体6aの先端面がワークWを介して回転切削具4aの先端のドリルの刃41面と対向し、且つ当該回転体6aの先端面が回転切削具4aによりワークWに作用する切削反力Rの垂直方向分力F
2に抗する押し付け力F
’2をワークWに作用させるようワーク支持力発生ユニット6の姿勢及び位置を制御するように構成されている。更に、ワーク支持力制御装置8は、回転体6aが回転切削具4aの回転方向と逆方向に回転して切削反力Rの接線方向分力F
1により発生するトルクに抗する回転トルクF
’1をワークWに作用させるよう回転駆動装置6dの動作を制御するように構成されている。本実施の形態でも、回転体6aの中心軸6cは、回転切削具4aの中心軸4cとは同軸上に位置するように制御される。
【0073】
従って、本実施の形態6のように、機械加工装置が回転切削具4aによるワーク表面のドリル加工を行う装置である場合において、ワークWが低剛性のものであっても、生産効率の低下を抑制しつつ、ワークの変形による加工精度の低下を防止することができる。
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7について説明する。以下では、実施の形態1と共通する構成については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0074】
図16は、本実施の形態7に係る機械加工支援システムによる研削加工のワーク支持力を説明するための模式図である。
図16の平面図では、説明の都合上、加工ユニット4、ワークW、及び支持力発生ユニット6のみを示している。
図16に示すように、加工ユニット4は、周面に研削砥石が形成された円盤状の回転研削具4aを中心軸4cの周りに回転させてワーク保持具3(図示せず)に保持されたワークWの側面を研削加工するよう構成されている。
【0075】
ワーク支持力発生ユニット6は、円柱状の回転体6aと、当該回転体6aを中心軸6cの周りに回転させる回転駆動装置6d(図示せず)とを備えている。
【0076】
回転切削具4aの研削送り方向を紙面手前の方向としたとき、ワーク支持力制御装置8は、支持装置7を用いて、回転体6aの軸線6cが回転研削具4aの中心軸4cに平行であり、且つ当該回転体6aが回転研削具4aによりワークWに作用する研削反力の垂直方向分力F
2に抗する押し付け力F
’2をワークWに作用させるようワーク支持力発生ユニット6の姿勢及び位置を制御するように構成されている。更に、ワーク支持力制御装置8は、回転体6aが回転砥石4aの回転方向と同じ方向に回転して研削反力の接線方向分力F
1により発生するトルクに抗する回転トルクF
’1をワークWに作用させるよう回転駆動装置6dの動作を制御するように構成されている。
【0077】
従って、本実施の形態7のように、機械加工装置2が回転砥石4aによるワークW側面の研削加工を行う装置である場合において、ワークWが低剛性のものであっても、生産効率の低下を抑制しつつ、ワークWの変形による加工精度の低下を防止することができる。
(実施の形態8)
次に、本発明の実施の形態8について説明する。以下では、実施の形態1〜7と共通する構成については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1〜7と異なる点を中心に説明する。実施の形態1〜7では、薄板形状、薄肉円筒等の剛性の低いワークWを機械加工の対象としたが、本実施形態のワークW表面の加工部位は、ワークWの剛性を高め且つ当該ワークWと一緒に加工することが可能な膜で覆われている。そのため、加工前にワークW表面の剛性を高めるための処理を行う。
図17は、本実施形態に係る機械加工支援システムによる加工前の処理の一例を説明するための模式図である。
図17(a)に示すように、機械加工支援システム1dは、ロボットのアーム15の先端部に吹付装置16を備える。吹付装置16は、先端のノズルから霧状のウレタン発泡樹脂17を噴出する。
図17(b)に示すように、ワークWにウレタン発泡樹脂17を吹き付けることにより、ワークW表面にウレタン発泡樹脂17からなる膜が形成される。これによりワークW表面の剛性が高くなるので、ワークW表面の加工部位をウレタン発泡樹脂17と一緒に加工することにより、加工時の振動を防止することができる。
また、加工前にワークW周辺に低融点合金を固着させることにより、低融点合金からなる膜でワークW表面の加工部位を覆い、一時的にワークWの剛性を高めてもよい。この場合は固着した合金を加工後に溶解させる処理を行う。その他、ワークW表面の加工部位を薄い粘土からなる膜で覆うことによりワークWの剛性を高めてもよい。
(その他の実施の形態)
その他の実施の形態として、加工反力関連データは、動力計9により検出される構成、モータの電流センサ10により検出される構成、振動計11により計測される構成、予めメモリ8aに記憶される構成のうち少なくとも2以上の構成を組み合わせてもよい。
【0078】
尚、上記各実施の形態の機械加工装置2においては、加工具4aを動かしてワーク保持具3によりワークWを固定するような構成について説明したが、これに限られるものではない。加工具を固定してワークWを動かすような構成であってもよい。
【0079】
尚、上記各実施の形態の支持装置7は、多関節ロボット7のアーム先端に設けられたハンド7aによってワーク支持力発生ユニット6を支持しながら移動させるような構成としたが、支持機構及び移動機構を備えた専用装置であってもよい。
【0080】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。