(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記比重分離後の泥水を前記比重分離部から排水管路を通して排出する際に、前記排水管路の上流側または前記比重分離部の下流側に配置された磁石により前記比重分離後の泥水から前記鉄粉を分離する請求項1に記載の汚染泥水の処理方法。
前記比重分離後の泥水を前記比重分離部から排水管路を通して排出する際に、前記排水管路の上流側または前記比重分離部の下流側に磁石を配置し、前記磁石により前記比重分離後の泥水から前記鉄粉を分離する請求項6に記載の汚染泥水の処理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3によれば、従来の泥水処理施設に加え、鉄粉を回収するための複雑な磁気分離装置や遠心分離装置が必要であり、処理費用が増大することが避けられない。また、大量の泥水を磁気分離や遠心分離により処理する場合、各機器の処理能力が小さいため機器の設置台数が多くなってしまう。また、磁気分離や遠心分離の機構が複雑なため、対象規模が大きくなる際に費用面でのスケールデメリットが大きい。また、鉄粉を含む泥水等を遠心分離する場合、装置の磨耗が大きくなることが予測される。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、従来の磁気分離や遠心分離と比較して装置構造が簡単になり、処理量の増大に対応が容易な汚染泥水の処理方法・システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための汚染泥水の処理方法は、処理対象の汚染泥水に鉄粉を混合する工程と、前記鉄粉混合泥水から比重分離により前記鉄粉を分離する工程と、前記分離された鉄粉を回収する工程と、を含み、前記鉄粉混合泥水を通水断面積の小さい送水管路を通して通水断面積の大きい比重分離部に送り、前記比重分離部において
上昇流を発生させ前記鉄粉混合泥水から前記鉄粉を沈降させることで前記比重分離を行うことを特徴とする。
【0007】
この汚染泥水の処理方法によれば、処理対象の汚染泥水に鉄粉を混合することで、泥水中に含まれる処理対象の砒素や重金属類を鉄粉に吸着させ、この鉄粉混合泥水を通水断面積の小さい送水管路を通して通水断面積の大きい比重分離部に送ると、比重分離部において鉄粉混合泥水の流速が低下し、比重の大きい鉄粉が比重の小さい土粒子よりも速い沈降速度で沈降することにより、鉄粉と土粒子とを比重分離することができる。このようにして砒素や重金属類を吸着した鉄粉を分離し回収することで、汚染泥水を非汚染泥水に処理することができる。比重分離部は、従来の磁気分離や遠心分離と比較して装置構造が簡単であり、また、比重分離部の容積を増やすだけで大量処理が可能であるので、汚染泥水の処理量の増大に容易に対応できる。
【0008】
上記汚染泥水の処理方法において、前記比重分離後の泥水を前記比重分離部から排水管路を通して排出する際に、前記排水管路の上流側または前記比重分離部の下流側に配置された磁石により前記比重分離後の泥水から前記鉄粉を分離することが好ましい。鉄粉のうち粒子の比較的小さいものは、比重分離後の泥水に含まれることが多いが、磁石によって簡単に分離し除去することができる。磁石を排水管路の上流側や比重分離部の下流側に配置するだけであるので、装置構造が複雑になることはない。
【0009】
また、前記比重分離部において上昇流を発生させるこ
とにより、分離した鉄粉へ土粒子が混入することを低減できる。この際の上昇流の速度(絶対値)は、土粒子の沈降速度よりも大きく、鉄粉の沈降速度よりも小さくすることで、混入低減効果が向上する。
【0010】
また、前記鉄粉の平均粒径が70〜300μmであることが好ましい。また、前記鉄粉を土粒子に対して重量比で1〜50%混合することが好ましい。
【0011】
また、前記回収された鉄粉を、そのまままたは再生して前記鉄粉混合工程で再使用することが好ましい。なお、鉄粉混合工程前に汚染泥水から礫分・砂分を除去することが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するための汚染泥水の処理システムは、処理対象の汚染泥水に鉄粉を混合する鉄粉混合部と、前記鉄粉混合泥水から比重分離により前記鉄粉を分離する比重分離部と、
前記比重分離部において上昇流を発生させる上昇流発生部と、前記分離された鉄粉を回収する回収手段と、を備え、前記鉄粉混合泥水を通水断面積の小さい送水管路を通して通水断面積の大きい前記比重分離部に送り、前記比重分離部において前記鉄粉混合泥水から前記鉄粉を沈降させることで前記比重分離を行うことを特徴とする。
【0013】
この汚染泥水の処理システムによれば、処理対象の汚染泥水に鉄粉を混合することで、泥水中に含まれる処理対象の砒素や重金属類を鉄粉に吸着させ、この鉄粉混合泥水を通水断面積の小さい送水管路を通して通水断面積の大きい比重分離部に送ると、比重分離部において鉄粉混合泥水の流速が低下し、比重の大きい鉄粉が比重の小さい土粒子よりも速い沈降速度で沈降することにより、鉄粉と土粒子とを分離することができる。このようにして砒素や重金属類を吸着した鉄粉を分離し回収することで、汚染泥水を非汚染泥水に処理できる。比重分離部は、従来の磁気分離や遠心分離と比較して装置構造が簡単であり、また、比重分離部の容積を増やすだけで大量処理が可能であるので、汚染泥水の処理量の増大に容易に対応できる。
【0014】
上記汚染泥水の処理システムにおいて、前記比重分離後の泥水を前記比重分離部から排水管路を通して排出する際に、前記排水管路の上流側または前記比重分離部の下流側に磁石を配置し、前記磁石により前記比重分離後の泥水から前記鉄粉を分離することが好ましい。鉄粉のうち粒子の比較的小さいものは、比重分離後の泥水に含まれることが多いが、磁石によって簡単に分離し除去することができる。磁石を排水管路の上流側や比重分離部の下流側に配置するだけであるので、装置構造が複雑になることはない。
【0015】
前記比重分離部において上昇流を発生させる上昇流発生部を有するこ
とにより、分離した鉄粉へ土粒子が混入することを低減できる。この際の上昇流の速度(絶対値)は、土粒子の沈降速度よりも大きく、鉄粉の沈降速度よりも小さくすることで、混入低減効果が向上する。なお、鉄粉混合部の上流側に汚染泥水から礫分・砂分を除去する礫分・砂分除去部を配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来の磁気分離や遠心分離と比較して装置構造が簡単になり、処理量の増大に対応が容易な汚染泥水の処理方法・システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態による汚染泥水の処理方法の各工程を説明するためのフローチャートである。
図2は
図1の汚染泥水の処理方法を実行可能な汚染泥水の処理システム10を概略的に示す側面図(a)および上面図(b)である。
【0019】
本実施形態による汚染泥水の処理方法の各工程S01〜S10について
図1、
図2(a)(b)を参照して説明すると、まず、シールドマシンによる掘削工程において汚染泥水が生じると(S01)、汚染泥水を振動篩からなる礫分除去装置(図示省略)に送り、汚染泥水から径2mm以上の礫分を除去し(S02)、さらにサイクロン付き篩からなる砂分除去装置(図示省略)で径75μm以上の砂分を除去する(S03)。除去された礫分・砂分のうち溶出量が土壌環境基準以下のものは非汚染の土砂として処分される(S04)。
【0020】
礫分・砂分が除去された泥水は、調泥槽11にいったん貯蔵される(S05)。なお、シールドマシンによる掘削工程で必要な泥水は、この調泥槽11から送られるようにしてもよい。
【0021】
次に、調泥槽11から砂分礫分除去後の泥水を攪拌・反応槽12に送り、この泥水に鉄粉を添加し、攪拌・反応槽12内で攪拌し混合して、泥水に含まれる砒素や重金属類を鉄粉に吸着させる(S06)。鉄粉は、
図2(a)(b)のように、鉄粉フレコンFEをクレーンCRで定量切り出しフィーダFDに投入し、一定量の鉄粉が攪拌・反応槽12に供給される。
【0022】
砒素・重金属類の吸着材として平均粒径70〜300μmの鉄粉を使用することが好ましい。鉄粉の混合量は、土粒子に対して重量比で1〜50%が好ましい。また、鉄粉としては砒素吸着能力の高いものを使用することが好ましく、たとえば、株式会社神戸製鋼から販売されている重金属汚染土壌・地下水浄化用鉄粉「エコメル」(登録商標)などを使用できる。
【0023】
次に、
図2(a)(b)のように、鉄粉混合泥水を攪拌・反応槽12から圧送ポンプ13でインバータによる流量調整をしながら攪拌・反応槽12から比重分離装置17の比重分離槽17aに供給する。この供給の途中で、流量計14,密度計15により鉄粉混合泥水の流量と密度を測定し、鉄粉混合泥水の供給量と鉄粉混合量を管理する。
【0024】
比重分離装置17は、その上流側の送水管16の管径よりも断面が大きく構成された比重分離槽17aと、比重分離槽17aに連通して下流側にほぼ鉛直に設けられた立ち上がり部17bと、立ち上がり部17bの上端に水平に接続された排水管20と立ち上がり部17bとの角部に配置された磁石19と、を有する。比重分離装置17は、比重分離槽27aの上流側上端に対し送水管16から泥水が流入し、立ち上がり部17bを設けたため送水管16よりも高い位置の排水管20から流出するようになっている。
【0025】
比重分離装置17の比重分離槽17a内で比重分離により鉄粉混合泥水から鉄粉を分離する(S07)。すなわち、鉄粉混合泥水は、送水管16の管径よりも断面が大きい比重分離槽17a内に流入した段階で流速が大きく低下し、鉄粉(密度7.87g/cm
3)と土粒子(密度2.66g/cm
3程度)との比重差のため沈降速度が大きい鉄粉を沈降させることで、鉄粉の分離が生じる。
【0026】
鉄粉が分離された泥水は比重分離槽17aから排水管20を通して流れて排出されるが、この泥水に鉄粉のうち粒子の比較的小さいものが含まれるため、この鉄粉を比重分離槽17aの排出側(下流側)の排水管路上流側に設置した磁石19により除去する(磁気分離)。このように磁石19を設置することにより、泥水の処理量を増やし流速を上げた場合でも砒素等が吸着した比較的小さい粒子の鉄粉を効率的に回収することができる。
【0027】
次に、鉄粉混合泥水から分離された鉄粉FEを比重分離槽17a内からバックホウBH等を用いて掻き出し回収鉄粉槽22へ移動させて回収する(S08)。
【0028】
上述のようにして鉄粉混合泥水から鉄粉を分離・回収することで、非汚染の泥水を得るが、かかる泥水は、排水管20を通して排出されて濁水槽21にいったん貯蔵されてから、脱水・濁水処理施設(図示省略)に送られ(S09)、脱水処理され、水分は放流され、溶出量が土壌環境基準以下の粘土分は非汚染の汚泥として処分される(S10)。
【0029】
本実施形態の汚染泥水の処理方法・システムによれば、処理対象の汚染泥水について礫分・砂分の除去処理後、汚染泥水に鉄粉を混合することで、泥水中に含まれる処理対象の砒素や重金属類を鉄粉に吸着させ、この鉄粉混合泥水を通水断面積の小さい送水管路を通して通水断面積の大きい比重分離槽に送ると、比重分離槽において鉄粉混合泥水の流速が低下し、比重の大きい鉄粉が比重の小さい土粒子よりも速い沈降速度で沈降することにより、鉄粉と土粒子とを比重分離することができる。このようにして重金属類を吸着した鉄粉を分離し回収することで、汚染泥水を非汚染泥水に処理することができる。
【0030】
次に、
図2の比重分離装置の別の例について
図3を参照して説明する。
図3は、
図2の汚染泥水の処理システムに適用可能な比重分離装置を概略的に示す側面図(a)〜(h)である。
【0031】
図3(a)の比重分離装置は、比重分離槽27aの上端に位置する送水管16から泥水が流入し、送水管16と同じ高さ位置の排水管20から流出するようになっている。鉄粉FEの沈降は主に比重分離槽27a内の送水管16側の上流〜中央近傍で優先的に生じる。なお、
図2(a)(b)の比重分離槽17aにおいても鉄粉FEの沈降は主に上流〜中央近傍で優先的に生じる。
【0032】
図3(b)の比重分離装置は、比重分離槽27bの下端に位置する送水管16から泥水が流入し、比重分離槽27bの上端に位置する排水管20から流出するようになっている。
【0033】
図3(c)の比重分離装置は、比重分離槽27cの底板から槽内部に鉛直に延びる送水管16から泥水が流入し、比重分離槽27cの上端に位置する排水管20から流出するようになっている。鉄粉FEの沈降は比重分離槽2cb内でほぼ均等に生じる。
【0034】
図3(d)〜(f)の比重分離装置は、排水管20の上流側に配置された磁石19に加えて比重分離槽27a〜27cの上端水平部(比重分離槽の下流側)に平板状の磁石25を配置したものである。磁石19,25に比較的小さい粒子の鉄粉FE’を吸着させて効率的に除去し回収することができる。
【0035】
図3(g)の比重分離装置は、
図2の比重分離槽17aの上方の立ち上がり部17bの上端水平部(比重分離槽の下流側)に平板状の磁石25を配置したものである。磁石19,25に比較的小さい粒子の鉄粉FE’を吸着させて効率的に除去し回収することができる。
【0036】
図3(h)の比重分離装置は、比重分離槽27dを下端に位置する送水管16から泥水が流入し、立ち上がり部27eの上端に位置する排水管20から流出するように構成し、磁石19に加えて、立ち上がり部27eの上端水平部(比重分離槽の下流側)に平板状の磁石25を配置したものである。磁石19,25に比較的小さい粒子の鉄粉FE’を吸着させて効率的に除去し回収することができる。
【0037】
図2,
図3(a)〜(g)の比重分離装置は、従来の磁気分離や遠心分離と比較して装置構造が簡単であり、また、比重分離槽の容積を増やすだけで大量処理が可能であるので、汚染泥水の処理量の増大に容易に対応できる。なお、
図2,
図3(a)〜(g)では、磁石19,25を装置外側に設置したが、装置内部に設置してもよい。また、磁石は、永久磁石や電磁石等を使用できる。
【0038】
次に、
図2の比重分離装置のさらに別の例について
図4を参照して説明する。
図4は、
図2の汚染泥水の処理システムに適用可能な上昇流発生部を有する比重分離装置を概略的に示す側面図(a)(b)である。
【0039】
図4(a)(b)の比重分離装置は、
図3(a)の比重分離槽27a、
図3(c)の比重分離槽27cにおいて、それらの底面から上昇流を発生させる上昇流発生部を設けたものである。かかる上昇流発生部として、たとえば、底板に配置した孔付き鋼管から外部のポンプ等により水流を上昇させるように構成できる。上昇流を槽底面から発生させることにより、分離した鉄粉へ土粒子が混入することを低減できる。この際の上昇流の速度(絶対値)は、土粒子の沈降速度よりも大きく、鉄粉の沈降速度よりも小さくすることで、混入低減効果が向上する。
【0040】
図1の鉄粉の回収工程S08における回収後の鉄粉は、砒素等に対する処理能力が残っている場合にはそのまま再利用し、能力が残っていない場合には酸等での洗浄による再生や場外処分等を行う。
【0041】
鉄粉の砒素吸着能力の判定は、鉄粉の吸着能力を事前に判定して処理前の泥水中の砒素濃度から計算する方法、鉄粉を砒素濃度が既知の溶液に浸し一定時間後に水溶液中の濃度を分析して余力を確認する方法、鉄粉表面の砒素濃度を分析する方法等によって行うことができる。
【0042】
また、分離後の鉄粉は、比重分離装置を停止させて回収する方法(たとえば、
図2(a)(b)のように、バックホーBHを用いて掻き出して回収する)、比重分離装置に排出装置を設置し鉄粉を連続的に回収する方法、比重分離装置を複数用意して交互に使用し、使用していない方の鉄粉を掻き出す方法等により回収することができる。
【0043】
図5(a)〜(c)に本実施形態による比重分離装置の具体例を示す。
図5(a)〜(c)の比重分離装置30は、
図2(a)(b)の比重分離装置を具体化したもので、比重分離槽31と、立ち上がり部32と、複数の槽架台33と、を有する。比重分離槽31は、
図3(c)の側面上部に配置された鉄粉混合泥水注入口31aと、槽の水平上面に配置された開閉可能な矩形状の蓋34と、槽内部を点検のために覗くための覗き窓36と、を有する。立ち上がり部32は、その上面に設けられた泥水排出口32aと、上部側面に設けられた複数の磁石挿入孔35と、を有する。磁石挿入孔35には、
図5(a)の破線のように、棒状体の磁石37が挿入され、磁石37は立ち上がり部32の内部上面近傍に水平に位置するようになっている。
【0044】
図5(a)〜(c)の比重分離装置30によれば、鉄粉混合泥水が注入口31aから比重分離槽31内に流入すると、比重分離により鉄粉が沈降するとともに、立ち上がり部32の内部上面近傍(比重分離槽の下流側)に配置された複数の棒状体の磁石37に比較的小さい粒子の鉄粉が吸着する。棒状体の磁石37に吸着した鉄粉は、磁石37を磁石挿入孔35から引き抜くときに、孔35の周囲に当たり落下することで、簡単に除去することができる。
【0045】
本実施形態の汚染泥水の処理システムによれば、磁気分離や遠心分離と比較して装置の構造が簡単であり、処理量を増やしたい場合、装置の大型化と台数増加の両方での対応が可能であり、低コストの簡便なシステムで汚染泥水の大量処理を行うことができる。
【0046】
また、比重分離装置内における鉄粉混合泥水の流速や泥水への加水(粘度の調整)等を設定することで、鉄粉の回収状況を調整することができる。たとえば、鉄粉混合泥水へ加水して粘度を低くして比重分離槽内における鉄粉の沈降比率を増やすことができる。
【0047】
以下、実験例1〜4により本実施形態の効果を確認した。実験例1は、鉄粉の粒径が鉄粉の吸着性に及ぼす影響を確認したものである。鉄粉の粒径を大きくすると単位重量あたりの表面積は減少し、砒素や重金属類との接触・反応効率は低下するが、鉄粉添加量の増加や反応時間の調整により重金属の除去能力を調整することができる。
【0048】
砒素を含むベントナイト泥水に粒径の異なる鉄粉を添加し混合し、鉄粉回収後に溶出試験を実施した結果を
図6に示す。
図6からわかるように、中央粒径150μmの鉄粉を10%混合した(ベントナイト土粒子に対する重量比)ケースは、中央粒径70μmの鉄粉を10%混合したケースと同様に、砒素溶出量が土壌環境基準以下となった。中央粒径300μmの鉄粉の場合、10%、30%の混合のケースでは土壌環境基準を超えたが、50%の混合のケースに土壌環境基準以下となった。鉄粉の粒径が比較的小さいと、砒素や重金属類に対する吸着性がよく、砒素や重金属類の除去能力が優れることがわかる。また、鉄粉の粒径を比較的大きくしても、鉄粉混合量の増加により砒素や重金属類の除去能力を調整できることがわかる。
【0049】
次に、実験例2により、反応時間が鉄粉の吸着性に及ぼす影響について調査した。中央粒径72μmの鉄粉を浚渫土に添加し混合し、所定の時間経過後に鉄粉を除去して溶出試験を実施した結果を
図7に示す。
図7からわかるように、鉄粉の混合量が1%、5%、10%のケースではともに10分経過した段階において、土壌環境基準以下となっているが、反応時間を30分とした場合には、1%添加の場合には溶出量の低下が見られた。すなわち、汚染濃度が低い場合、鉄粉の添加量を減らすことが可能であり、さらに反応時間を長くとることにより鉄粉の添加量を減らすことが可能であることはわかる。
【0050】
次に、実験例3により、
図3(c)のように比重分離槽の底面から泥水を流入させ上昇させた場合の上昇流速の影響について調査した。
図8(a)に上端(排水管上流端)に磁石を配置した円筒カラムからなる実験装置を示し、(b)に同じ構成であるが磁石を省略した実験装置を示す。
【0051】
図8(a)(b)に示す円筒カラムの底面より鉄粉混合泥水を供給し上昇させた場合の装置内の上昇流速と鉄粉の沈降率、流出率を
図9(磁石なし),
図10(磁石あり)に示す。この沈降率および流出率は混合した鉄粉に対して沈降・流出した鉄粉の重量比である。また、ここでの流速は円筒カラム内の流速であり、送泥水量と断面積とから算出した値である。
図9から、装置内の上昇流速を大きくすると、処理量を増やすことができるが、磁石がない場合、流出する鉄粉量が増え、磁石により回収する鉄粉量が減り、また、逆に流速を小さくすると、処理量は減るが流出鉄粉量を減らすことができる。また、
図10から、磁石を配置することで、装置内の上昇流速を大きくして処理量を増やしても、流出する鉄粉量がわずかに減少する程度であり、磁石配置の効果が確認できた。
【0052】
図8(a)の実験装置は、
図3(c)(f)の構成を模擬したもので、
図3(c)(f)の比重分離装置による効果を確認できたといえる。また、
図3(b)(e)の比重分離装置についても、鉛直方向の流速による分離状況は実験例3によって確認できたといえる。
【0053】
次に、実験例4により、
図8(a)の実験装置を用いて、鉄粉混合泥水の粘度の影響について調査した。鉄粉混合泥水に加水して粘性を調整し、上昇流速を三段階に変えた場合の鉄粉の沈降率、流出率を調べ、その結果を
図11に示す。
図11から、鉄粉混合泥水の粘度を低下させファンネル粘度の値を小さくすることで、いずれの流速でも鉄粉の沈降比率を増やし、磁気分離の負荷を減らす(磁石からの鉄粉の分離回収頻度を減らす)ことが可能であることがわかる。なお、鉄粉混合泥水のファンネル粘度は、(株)西日本試験機製のファンネル粘度計(S-251)を用いて測定した。
【0054】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態における処理対象の汚染泥水は、シールドマシンによる掘削工程において生じるものとしたが、本発明は、これに限定されず、他の汚染泥水にも適用できることはもちろんである。
【0055】
また、鉄粉を比重分離する比重分離装置は、槽構成に限定されず、たとえば、管路構成であってもよく、また、上部が開いた流路であってもよい。
【0056】
また、磁石に吸着した鉄粉は、
図5では、機械的構成により強制的に除去し回収するようにしたが、これに限定されず、たとえば、電磁石を使用しオン・オフの切替によって回収するようにしてもよい。また、
図2(a)、
図3(a)〜(c)における磁石の位置は、図示の位置に限定されず、たとえば、比重分離装置側の排水管近傍であってもよい。また、磁石は、
図3(d)〜(h)のように複数位置に配置してもよく、また、排水管側の複数位置に配置してもよい。
【0057】
また、自然由来の砒素や重金属類を含む浚渫土を埋立てに使用する場合、埋立て完了後に土壌環境基準を超過した地盤ができあがることになるが(埋立て段階では水底土砂基準以下であれば埋立ては可能である)、砒素等を含む浚渫土に本方法を適用することで、土壌環境基準以下の地盤とすることができる。このように浚渫土に適用する場合、たとえば、土運船内において鉄粉を添加・混合し、バージアンローダー船で埋立地に投入する直前に本方法・システムを用いて鉄粉を回収することができる。
【0058】
また、浚渫土中の砂鉄が多く、鉄粉とともに回収されて再利用する際に両者の区別が困難となることが予想される場合、本システムを2台使用し、1台目で前処理として砂鉄を回収した後に、鉄粉を加えて2台目で鉄粉を回収することが考えられる。