(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
[二次電池の基本構造]
図1A,1Bは、本発明を採用した積層型のリチウムイオン二次電池の構成の一例を模式的に示している。本発明のリチウムイオン二次電池100は、正極(正極シート)1と負極(負極シート)6とが、セパレータ20を介して交互に複数層積層された電極積層体(電池素子)を備えている。この電極積層体は電解液12と共に、可撓性フィルム30からなる外装容器に収納されている。電極積層体の正極1には正極端子11の一端が、負極6には負極端子16の一端がそれぞれ接続されており、正極端子11の他端側および負極端子16の他端側は、それぞれ可撓性フィルム30の外部に引き出されている。
図1Bでは、電極積層体を構成する各層の一部(厚さ方向の中間部に位置する層)を図示省略して、電解液を示している。
【0019】
正極1は、正極集電体3とその正極集電体3に形成された正極活物質層2とを含み、正極集電体3の表面と裏面には、正極活物質層2が形成された塗布部と正極活物質層2が形成されていない未塗布部とが、長手方向に沿って並んで位置する。同様に、負極6は、負極集電体8とその負極集電体8に形成された負極活物質層7とを含み、負極集電体8の表面と裏面には塗布部と未塗布部とが、長手方向に沿って並んで位置する。未塗布部との境界部分における塗布部(正極活物質層2)の端部(外縁部)は、僅かに傾斜していてもよいが、正極集電体3に対して実質的に垂直に切り立っていてもよい。負極6においても同様に、塗布部(負極活物質層8)の端部は、僅かに傾斜していても、負極集電体7に対して実質的に垂直に切り立っていてもよい。
【0020】
正極1と負極6のそれぞれの未塗布部は、電極端子(正極端子11または負極端子16)と接続するためのタブとして用いられる。正極1に接続される正極タブ同士は正極端子11上にまとめられ、正極端子11とともに超音波溶接等で互いに接続される。負極6に接続される負極タブ同士は負極端子16上にまとめられ、負極端子16とともに超音波溶接等で互いに接続される。そのうえで、正極端子11の他端部および負極端子16の他端部は外装容器の外部にそれぞれ引き出されている。
【0021】
図2に示すように、正極1の塗布部と未塗布部の間の境界部分4aを覆うように、負極端子16との短絡を防止するための絶縁部材40が形成されている。この絶縁部材40は境界部分4aを覆うように、正極タブ(正極集電体の正極活物質2が塗布されていない部分)と正極活物質2の双方にまたがって形成されることが好ましい。
【0022】
負極6の塗布部(負極活物質層7)の外形寸法は正極1の塗布部(正極活物質層2)の外形寸法よりも大きく、セパレータ20の外形寸法よりも小さい。そして、負極活物質層7は、外周部分の少なくとも一部、本例では塗布部の外縁部に位置する、厚さが薄くかつ密度が高い高密度部7aを含んでいる。正極1の絶縁部材40と負極6の負極活物質層7の高密度部7aについては後述する。
【0023】
この二次電池において、正極活物質層2を構成する材料としては、例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
(1-x)CoO
2、LiNi
x(CoAl)
(1-x)O
2、Li
2MnO
3−LiMO
2(ここで、Mは遷移金属であり、例としてNi、Co、Fe、Crなどが挙げられる)、LiNi
xCo
yMn
(1-x-y)O
2などの層状酸化物系材料や、LiMn
2O
4、LiMn
1.5Ni
0.5O
4、LiMn
(2-x)M
xO
4などのスピネル系材料、LiMPO
4などのオリビン系材料、Li
2MPO
4F、Li
2MSiO
4Fなどのフッ化オリビン系材料、V
2O
5などの酸化バナジウム系材料などが挙げられ、これらのうちの1種、または2種以上の混合物を使用することができる。
【0024】
負極活物質層7を構成する材料としては、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどの炭素材料や、リチウム金属材料、シリコンやスズなどの合金系材料、Nb
2O
5やTiO
2などの酸化物系材料、あるいはこれらの複合物を用いることができる。
【0025】
正極活物質層2および負極活物質層7を構成する材料は、結着剤や導電助剤等を適宜加えた合剤であってよい。導電助剤としては、カーボンブラック、炭素繊維、または黒鉛などのうちの1種、または2種以上の組み合せを用いることができる。また、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、変性アクリロニトリルゴム粒子などを用いることができる。
【0026】
正極集電体3としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金等を用いることができ、特にアルミニウムが好ましい。負極集電体8としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金を用いることができる。
【0027】
また、電解液12としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類や、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類や、脂肪族カルボン酸エステル類や、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類や、鎖状エーテル類、環状エーテル類、などの有機溶媒のうちの1種、または2種以上の混合物を使用することができる。さらに、これらの有機溶媒にリチウム塩を溶解させることができる。
【0028】
セパレータ20は主に樹脂製の多孔膜、織布、不織布等からなり、その樹脂成分として、例えばポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、またはナイロン樹脂等を用いることができる。特にポリオレフィン系の微多孔膜は、イオン透過性と、正極と負極とを物理的に隔離する性能に優れているため好ましい。また、必要に応じて、セパレータ20には無機物粒子を含む層を形成してもよく、無機物粒子としては、絶縁性の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物などを挙げることができ、なかでもTiO
2やAl
2O
3を含むことが好ましい。
【0029】
外装容器には可撓性フィルム30からなるケースや缶ケース等を用いることができ、電池の軽量化の観点からは可撓性フィルム30を用いることが好ましい。可撓性フィルム30には、基材となる金属層の表面と裏面に樹脂層が設けられたものを用いることができる。金属層には、電解液12の漏出や外部からの水分の浸入を防止する等のバリア性を有するものを選択することができ、アルミニウム、ステンレス鋼などを用いることができる。金属層の少なくとも一方の面には、変性ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂層が設けられる。可撓性フィルム30の熱融着性樹脂層同士を対向させ、電極積層体を収納する部分の周囲を熱融着することで外装容器が形成される。熱融着性の樹脂層が形成された面と反対側の面となる外装容器表面にはナイロンフィルム、ポリエステルフィルムなどの樹脂層を設けることができる。
【0030】
正極端子11には、アルミニウムやアルミニウム合金で構成されたもの、負極端子16には銅や銅合金あるいはそれらにニッケルメッキを施したものなどを用いることができる。それぞれの端子11,16の他端部側は外装容器の外部に引き出される。それぞれの端子11,16の、外装容器の外周部分の熱溶着される部分に対応する箇所には、熱融着性の樹脂をあらかじめ設けることができる。
【0031】
正極活物質2の塗布部と未塗布部の境界部分4aを覆うように形成される絶縁部材40には、ポリイミド、ガラス繊維、ポリエステル、ポリプロピレン、あるいはこれらを含む材料を用いることができる。テープ状の樹脂部材に熱を加えて境界部分4aに溶着させたり、ゲル状の樹脂を境界部分4aに塗布してから乾燥させたりすることで絶縁部材40を形成することができる。
【0032】
[正極および負極の詳細な構造]
図2は、本発明におけるリチウムイオン二次電池の一実施形態を説明するための概略断面図であり、電極積層体の一部分のみを拡大して模式的に記載している。
【0033】
図1A,1Bでは図示省略したが、負極集電体8の表裏両面において、負極活物質層7の塗布部の外周部分の一部(未塗布部に隣接する外縁部)は、塗布部の他の部分(層厚部)7bに比べて厚さが薄く、かつ密度が高い高密度部7aになっている。一例としては、負極活物質層7の高密度部7a以外の層厚部7bの厚さが50μm以上70μm以下、平均密度が1.4g/cm
3(1400kg/m
3)以上1.5g/cm
3(1500kg/m
3)以下である。高密度部7aの厚さは、それ以外の部分7bの厚さよりも薄くかつ41.5μm以上67.5μm以下で、平均密度は1.55g/cm
3(1550kg/m
3)以上1.75g/cm
3(1750kg/m
3)以下である。層厚部7bの密度は、電池として良好に機能するためのリチウムイオン保持量と活物質量とを実現できるように設定されている。一方、高密度部7aの密度は、リチウムイオンの進入抑制の効果が得られることと、再加圧工程で負極活物質層7の圧縮が良好に実施できる範囲(作業に不都合がない範囲)として設定されている。ただしこれは、主に炭素を含む負極活物質層7を形成した場合の条件である。炭素に代えてSiまたはSnを含む負極活物質層7を形成する場合には、層厚部7bの平均密度を1.3g/cm
3(1300kg/m
3)程度、高密度部7aの平均密度を1.5g/cm
3(1500kg/m
3)程度にしてもよい。いずれの場合であっても、高密度部7aの平均密度が、層厚部7bの平均密度の110%以上125%以下(1.1倍以上1.25倍以下)であることが好ましい。
【0034】
この高密度部7aは、正極1に取り付けられた絶縁部材40の一部、具体的には絶縁部材40の塗布部(正極活物質層2)上に位置する部分と平面的に重なる位置に設けられている。言い換えると、正極1の絶縁部材40は、負極6のうち負極活物質層6の層厚部7bに対向する位置には存在せず、厚さの薄い高密度部7aと非塗布部とに対向する位置にある。従って、絶縁部材40を設けることによる厚さの増加分は、高密度部7aによる負極活物質7の厚さの減少によって吸収(相殺)され、絶縁部材40によって電極積層体が部分的に厚くなることが防げる。それにより、電極積層体を均等に押さえて保持することができ、電気特性のばらつきやサイクル特性の低下などの品質低下を抑えることができる。
【0035】
さらに、本実施形態においては、高密度部7aによって二次電池の性能向上が図れる。この点について
図3A,3Bを参照して説明する。
図3A,3Bは、セパレータ20を介して対向する正極活物質層2と負極活物質層7において、電解液12中のイオン(Liイオン)12aを模式的に示している。正極活物質層2上に絶縁部材40が配置されている部分2aは絶縁部材40に覆われているため、この絶縁部材40を介してイオン12aを出入りさせることはできない。従って、正極活物質層2の絶縁部材40に覆われている部分(「絶縁部材被覆部分」という)2aと、それに対向する負極活物質層7の部分(「絶縁部材対向部分」という)7a’は、充放電に寄与することはなく電池として作用し得ない。仮に、
図3Aに示すように負極活物質層7の絶縁部材対向部分7a’にイオン(Liイオン)12aが進入した場合、前記した通りこの絶縁部材対向部分7a’は電池として機能しない。しかも、絶縁部材対向部分7a’内に一旦拡散したイオンが、逆戻りして、絶縁部材40と対向しない部分(絶縁部材非対向部分)7b’に戻ることはできず、この絶縁部材対向部分7a’内に保持されたままである。すなわち、外装容器内に収容された電解液12のうちの一部のイオンは、絶縁部材対向部分7a’内で電池機能に全く寄与せず無駄になる。図示しないが、特許文献2のように正極活物質層2の絶縁部材被覆部分2aが薄型化されている構成の場合も同様に、負極活物質層7の絶縁部材対向部分7a’内にイオンが拡散することによって電解液の無駄が増えるという問題がある。
【0036】
そこで本実施形態では、
図2,3Bに示すように、正極活物質層2の絶縁部材被覆部分2aに対向して電池機能に寄与しない部分を、密度の高い高密度部7aにしている。高密度部7aは、密度が高いためイオン12aが進入可能な空隙が少なく、イオン12aがあまり入り込まない。従って、本実施形態によると、負極活物質7の電池機能に寄与しない部分にはイオンがあまり入り込まないため、無駄になる電解液12の量を低減できる。そのことは、電解液12の利用効率を高めて、電気特性の向上や電池の長寿命化を可能にするという効果をもたらす。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によると、負極活物質層7の外周部分の一部(高密度部)7aを薄型化することによって電池素子全体の厚さの増大を抑えて、体積あたりのエネルギー密度を高めるとともに、電池素子を均等に押さえることを可能にして電気特性のばらつきやサイクル特性の低下などを防ぐ。その上、本実施形態は、この部分(高密度部)7aを高密度化することによって、この高密度部7aへのイオン12aの進入を物理的に抑制するという、全く新規な技術的思想を有しており、それにより、電解液12の無駄を防ぎ、電気特性の向上や電池の長寿命化を可能にするというさらなる利点が得られる。
【0038】
なお、負極6の長手方向(
図1A〜3Bの左右方向)に沿う高密度部7aの長さは、2mm以上5mm以下程度であることが好ましい。正極1に取り付けられる絶縁部材40の長さは通常は3mm程度であるので、高密度部7aの長さが2mmよりも小さいと、位置ずれによって絶縁性が保てなくなる可能性があり、高密度部7aの長さが5mmよりも大きいと、電池容量の無駄が大きくなるからである。
【0039】
[二次電池の製造方法]
図1A〜2に示す二次電池の製造方法について説明する。
【0040】
まず、
図4に示すように、複数の正極(正極シート)1を製造するための長尺の帯状の正極集電体3の表面に、間欠的に正極活物質層2を形成する。そして、
図5に示すように、一端40aが各塗布部(正極活物質層2)上に位置し、他端40bが各非塗布部(正極集電体3)上に位置するように、絶縁部材40を配置する。同様にして、正極集電体3の裏面にも、間欠的に正極活物質層2を形成し、一端40aが各塗布部上に位置し、他端40bが各非塗布部上に位置するように、絶縁部材40を配置する。
【0041】
絶縁部材40の厚さが小さいと、絶縁性を十分に確保できないおそれがあるので、厚さは10μm以上であることが好ましい。また、絶縁部材40の厚さが大き過ぎると、本発明による電極積層体の厚さの増大を抑制する効果が十分に発揮されないため、絶縁部材40は正極活物質層2の平均厚さよりも小さい方が良い。好ましくは、絶縁部材40の厚さは正極活物質層2の平均厚さの90%以下、より好ましくは60%以下である。
【0042】
その後、個々の積層型電池に使用する正極1を得るために、
図6Aに破線で示す切断線90に沿って正極集電体3を裁断して分割し、
図6Bに示す所望の大きさの正極1を得る。切断線90は仮想的な線であって実際には形成されない。
【0043】
また、
図7に示すように、複数の負極(負極シート)6を製造するための長尺の帯状の負極集電体8の表面に、間欠的に負極活物質層7を形成する。同様に、負極集電体8の裏面にも、負極活物質層7を間欠的に形成する。そして、
図2に示すように、負極活物質層7の一部の厚さを薄くかつ密度を高くして高密度部7aを形成する。具体的には、
図8に示すように、負極集電体8の両面の負極活物質層7の全体を、押圧手段13によって同時に加圧して圧縮させる。この時点で負極活物質層7の厚さを50μm以上70μm以下にし、平均密度を1.4g/cm
3以上1.5g/cm
3以下にする(好ましくは層厚部の平均密度の110%以上125%以下にする)。
【0044】
次いで、
図9に示すように、負極活物質層7(塗布部)の外周部分の一部を、押圧手段14によってさらに加圧して圧縮させ、高密度部7aを形成する。この加圧によって、高密度部7aの厚さを、それ以外の部分(再加圧しない層厚部)7bの厚さよりも薄く、かつ41.5μm以上67.5μm以下にし、高密度部7aの平均密度を1.55g/cm
3以上1.75g/cm
3以下にする。高密度部7aが形成される位置(再加圧する位置)は、後述する電池素子の完成時に、正極1に設けられた絶縁部材40の正極活物質層2上に位置する部分に対向する位置である。
【0045】
その後、個々の積層型電池に使用する負極6を得るために、
図10Aに破線で示す切断線91に沿って負極集電体8を裁断して分割し、
図10Bに示す所望の大きさの負極6を得る。切断線91は仮想的な線であって実際には形成されない。
【0046】
このようにして形成された、
図6Bに示す正極1と
図10Bに示す負極6とを、セパレータ20を介して交互に積層し、正極端子11および負極端子16を接続することにより、
図2に示す電極積層体が形成される。この電極積層体を電解液12とともに、可撓性フィルム30からなる外装容器に収容し、封止することによって、
図1A,1Bに示す二次電池100が形成される。このようにして形成した本発明の二次電池100では、絶縁部材40は正極1の塗布部と非塗布部にまたがって設けられており、その一方の端部40aは、正極活物質層2上であって負極活物質層7の高密度部7aと対向する位置にあり、他端部40bは正極集電体3上(非塗布部上)にある。高密度部7aによる負極活物質層7の厚さの減少量、すなわち、高密度部7aと層厚部7bとの厚さの差は、絶縁部材40の厚さ以上であることが好ましい。
【0047】
負極活物質層7(塗布部)の外周部分の少なくとも一部を再加圧して高密度部7aを形成する工程と、負極集電体8を裁断して分割する工程とを、同時に実施することもできる。例えば、
図11に示すように、再加圧用の加圧部15aと裁断用のカッター部15bとを有する押圧手段15によって、負極集電体8の両面の負極活物質層7の外周部分の一部を再加圧して高密度部7aを形成すると同時に、製造すべき負極6の輪郭に沿って負極集電体8を裁断する。このように、負極の形成のための必須の工程である裁断工程と同時に、本発明による新規な特徴である再加圧工程を行うと、前記した本発明の効果を発揮でき、しかも、再加圧によって工程数が増加することがないため、負極6の形成に要する作業時間や製造コストの増大を防ぐことができる。
【0048】
図11に示す例では、長尺の負極集電体8において互いに隣り合う負極活物質層7は、非塗布部同士が互いに向かい合うように配置されている。ただし、このような配置に限定されず、
図10Aに記載されている構成と同様に各負極活物質層7がいずれも同じ方向を向くように配置されている場合であっても、押圧手段15の構成を一部変更することによって、再加圧工程と裁断工程を同時に実施できるようにすることもできる。
【0049】
[変形例]
図12A〜13に本実施形態の変形例を示している。この変形例では、正極端子11と負極端子16を外装容器から、
図1A〜2に示す構成のように同じ方向に突出するのではなく、互いに反対向きに突出している。この構成では、正極1の非塗布部が設けられている領域に平面的に重なる領域に負極活物質層7の非塗布部が設けられることはないので、短絡のおそれなく正極端子11と負極端子16を大面積にすることができ、電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0050】
[他の実施形態]
図1A〜13に示す実施形態では、負極活物質層(塗布部)7の外縁部(端部)に高密度部7aが設けられている。しかし、
図14に示すように、負極活物質層7の外縁部に、厚さは高密度部7aと同程度に薄いが高密度化されていない非高密度部7cを設け、塗布部の外周部分の一部であって外縁部の非高密度部7cよりも内側に、厚さが薄く密度が高い高密度部7aを設けることもできる。一例としては、負極活物質層7の層厚部(高密度部7aおよび非高密度部7c以外の部分)7bの厚さが50μm以上70μm以下、平均密度が1.4g/cm
3以上1.5g/cm
3以下である。高密度部7aの厚さは、層厚部7bの厚さよりも薄くかつ41.5μm以上67.5μm以下で、平均密度は1.55g/cm
3以上1.75g/cm
3以下である。そして、塗布部の外縁部に位置する非高密度部7cの厚さは、67.5μm以下であって高密度部7aの厚さ以下であり、平均密度は層厚部7cと同程度の1.4g/cm
3以上1.5g/cm
3以下である。
【0051】
本実施形態においても、負極活物質層7の外周部分の一部(高密度部7aおよび非高密度部7c)の厚さが薄いため、絶縁部材40による厚さの増大を吸収(相殺)することができる。従って、電池素子全体の厚さの増大を抑えて、体積あたりのエネルギー密度を高めるとともに、電池素子を均等に押さえることを可能にして電気特性のばらつきやサイクル特性の低下などを防ぐことができる。また、高密度部7aによってイオン12aの進入が抑制されるため、高密度部7aを通って非高密度部7cにイオン12aが進入することはなく、前記した実施形態と同様に電解液12の無駄を防ぎ、電気特性の向上や電池の寿命の長期化が可能になる。言い換えると、高密度部7aが塗布部(負極活物質層7)の外縁部ではなく僅かに内側に入り込んだ位置に設けられた場合であっても、外縁部の厚さが層厚部7cよりも薄ければ、本発明の効果を奏することができる。
【0052】
具体的には、本実施形態の非高密度部7cは、負極活物質層7の製造時に塗布部の外縁部が傾斜状に形成された場合などに、再加圧時に押圧部材に当接しないことにより生じることがある。
【実施例】
【0053】
図4〜11を参照して説明した製造方法に従って、リチウムイオン二次電池を製造した 。
【0054】
<正極>
まず、正極活物質層2を構成する材料としてLiMn
2O
4とLiNi
0.8Co
0.1Al
0.1O
2との混合活物質を用い、導電剤としてカーボンブラック、バインダーとしてPVDFを用い、これらの合剤を有機溶媒中に分散したスラリーを準備した。このスラリーを、
図4に示すように厚さ20μmのアルミニウムを主成分とする正極集電体3の一方の面に間欠的に塗布して乾燥し、厚さ80μmの正極活物質層2を形成した。スラリーを間欠的に塗布することで、正極活物質層2の塗布部と未塗布部が、正極集電体3の長手方向に沿って交互に存在する状態にした。同様に、正極集電体3の他方の面にも、厚さ80μmの正極活物質層2を形成した。正極集電体3上へのスラリーの塗布は、ドクターブレードや、ダイコータや、グラビアコータや、転写方式や蒸着方式などの様々な塗布装置を用いて行うことができる。このようにして正極集電体3上に正極活物質層2を形成した後に、
図5に示すように境界部分4aを覆う厚さ30μmのポリプロピレン製の絶縁テープ(絶縁部材)40を貼り付けた。そして、
図6A,6Bに示すように、切断線90に沿って裁断して個々の正極1を得た。
【0055】
<負極>
負極活物質層7を構成する材料として、表面を非晶質で被覆した黒鉛を用い、バインダーとしてPVDFを用い、これらの合剤を有機溶媒中に分散したスラリーを準備した。
図7に示すように、スラリーを、負極集電体8である厚さ15μmの銅箔に間欠的に塗布して乾燥し、正極1と同様に負極活物質層7の塗布部と、塗布しない未塗布部が、負極集電体8の長手方向に沿って交互に存在する状態にした。負極6のスラリーの具体的な塗布方法は、前記した正極1のスラリーの塗布方法と同様である。
【0056】
そして、
図8に示すように負極活物質層7全体を加圧し、さらに、
図9に示すように部分的に(外周部分の一部を)再加圧して薄型化かつ高密度化して高密度部7aを形成した。そして、
図10A,10Bに示すように、切断線91に沿って裁断して個々の負極6を得た。または、
図11に示すように負極活物質層7の再加圧と同時に裁断を行って、
図10Bに示す個々の負極6を得た。
【0057】
<積層型電池の作製>
前記したようにして得られた正極20(
図6B参照)と負極21(
図10B参照)とを、厚さ25μmのポリプロピレンからなるセパレータ20を介して積層し、これらに負極端子16と正極端子11を取り付け、可撓性フィルム30からなる外装容器に収容することで、積層型電池を得た。正極1と負極6の積層時には、絶縁部材40の正極活物質層2上に位置する部分が負極6の高密度部7aと対向するように、あるいは、非高密度部7cが存在する場合には高密度部7aまたは非高密度部7cと対向するように、正極1と負極6を位置合わせした。
【0058】
以上の各実施例では、正極活物質2および負極活物質7は間欠的な塗布(間欠塗布)により形成しているが、
図15〜17Bに示すように、複数の電極形成部分に亘って隙間のない活物質層を形成するような連続的な塗布(連続塗布)によって形成してもよい。活物質層を連続塗布で形成する場合には、
図17Aの切断線90に沿って裁断する前に
図18に示すように電極ロールとして保管できる。
図15〜18は正極1について示しているが、負極6に関しても同様に電極ロールを形成することができる。ただし、負極6の場合には、絶縁部材40が設けられず、高密度部7aと場合によっては非高密度部7cが形成された状態で、ロール状にされる。
【0059】
なお、前記した各実施形態は、正極1に絶縁部材40が設けられた構成であるが、負極6に絶縁部材40が設けられた構成にすることもできる。その場合、絶縁部材40の負極活物質層7上に位置する部分は高密度部7a上に、あるいは、非高密度部7cが形成されている場合には高密度部7aまたは非高密度部7cの上に配置される。
【0060】
本発明はリチウムイオン二次電池の電極の製造および当該電極を用いたリチウムイオン二次電池の製造に有用であるが、リチウムイオン電池以外の二次電池に適用しても有効である。
【0061】
以上、いくつかの実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態の構成に限られるものではなく、本発明の構成や細部に、本発明の技術的思想の範囲内で、当業者が理解し得る様々な変更を施すことができる。
【0062】
本出願は、2014年2月28日に出願された日本特許出願2014−38063号を基礎とする優先権を主張し、日本特許出願2014−38063号の開示の全てをここに取り込む。