(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リッジ型光導波路の前記入射面における水平方向のニアフィールド径が前記光源の出射面における水平方向のニアフィールド径よりも大きいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載のデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1,
図5に模式的に示す光学デバイスは、半導体レーザ光を発振する光源1と、グレーティング素子3と、光伝送素子10とを備えている。本例では、光伝送素子10として光導波路素子を使用していきるが、光伝送素子の光導波路を光ファイバに変更できる。
【0026】
光源1とグレーティング素子3とは、図示しない共通基板上に実装されていてよい。また、グレーティング素子3と光伝送素子10とは、図示しない別体の基板上に実装されていてよい。
【0027】
光源1は、半導体レーザ光を発振する活性層2を備えている。活性層2の外側端面2aには、
図5に示す反射膜14を設けることもできる。活性層2のグレーティング素子側の端面には、
図5に示す無反射膜または反射膜15Aを形成することもできる。
【0028】
グレーティング素子3には、半導体レーザ光Aが入射する入射面5aと所望波長の出射光Bを出射する出射面5bを有するリッジ型光導波路5が設けられている。光導波路5内には、ブラッググレーティング6が形成されている。光導波路5の入射面5aとブラッググレーティング6との間には、回折格子のない入射側伝搬部7が設けられており、入射側伝搬部7が活性層5と間隙17を介して対向している。光導波路5の入射面5a側には、無反射膜または反射膜15Bが設けられていてよく、出射面5b側に
は、無反射膜または反射膜15Cが設けられていて良い。
【0029】
無反射層15A、15B、15Cの反射率は、グレーティング反射率よりも小さい値であればよく、さらに0.1%以下が好ましい。しかし、端面における反射率がグレーティング反射率よりも小さい値であれば、無反射層はなくてもよく、反射膜であってもよい。この場合、光源1は単独でレーザ発振ができるものといえる。
【0030】
レーザ光の発振波長は、グレーティングにより反射される波長で決定される。グレーティングによる反射光と活性層のグレーティング素子側の端面からの反射光がレーザのゲイン閾値を上回れば、発振条件を満足する。これにより波長安定性の高いレーザ光を得るこ
とができる。
【0031】
波長安定性をより高くするには、グレーティングからの帰還量を大きくすればよく、この観点からグレーティングの反射率は活性層2の端面における反射率よりも大きくする方が好ましい。これによりもともとの半導体レーザの共振器で得られるゲインよりもグレーティングによる共振器で得られるゲインの方が大きくなり、グレーティングによる共振器で安定なレーザ発振が可能となる。
【0032】
本例では、光導波路5の出射面5bとブラッググレーティング6との間に、回折格子のない出射側伝搬部8が設けられている。出射側伝搬部8は、光伝送素子10の光導波路11の入射面12と対向している。13は、光導波路11の出射面である。
【0033】
本例では、出射側伝搬部8は、ブラッググレーティング6の末端から連続する連結部8a、光導波路の出射面に連続する出射部8c、および連結部と出射部との間に設けられたテーパ部8bを備えている。そして、出射面5bにおける光導波路の幅W
outが、ブラッググレーティング6における光導波路の幅W
grよりも大きくなっている。また、出射側伝搬部8が、光導波路の幅W
mがブラッググレーティング側から出射面側へと向かって大きくなるテーパ部8bを含む。なお、本例では、連結部8aにおける光導波路の幅はW
grであってかつ一定であり、出射部8cにおける光導波路の幅W
outも一定である。また、W
mは、連結部8aとの境界で最小値W
grとなり、出射部8cとの境界で最大値W
outとなる。
【0034】
ブラッググレーティングにおける光導波路の幅W
grは、半導体レーザ光源との結合効率を高めるために、レーザのニアフィールドパターンと同等になるように設定する。半導体レーザのニアフィールドの水平方向の大きさは、例えば2μmから7μmになっていることがある。この場合、光導波路の幅W
grは2μmから7μmに設定している。
【0035】
ここで、本実施形態では、出射側伝搬部の出射面における光導波路幅W
outを相対的に大きくすることによって、出射面における光ビームのモードフィールドのニアフィールド径(水平方向)B
outを大きくすることができる。この結果、グレーティング素子から出射する光ビーム密度を下げ、この出射光が光伝送素子に結合する際の水平方向の寸法の裕度を向上させることができる。これによって、グレーティング素子と光伝送素子とを光学的に組み付ける際の生産性が著しく向上する。
【0036】
本例では、光伝送素子の光伝送部、例えば光導波路11の入射面12におけるモードフィールドパターンのニアフィールド径(水平方向(D
in)を、光導波路5の出射面における光ビームのモードフィールドのニアフィールド径(水平方向)B
outよりも大きくしている。これによって、アライメント時の光軸ズレに対する裕度が一層向上する。
【0037】
ただし、光伝送部11の入射部11aにおけるニアフィールド径Dinを大きくしてアライメント時の光軸ズレに対する裕度を向上させた場合、光伝送素子から外部に出射するときのニアフィールド径が大きくなりすぎることがある。この場合には、本例のように、よりニアフィールド径Doutの小さい出射部11cを設けることができる。この場合、入射部11aと出射部11cとの間に、ニアフィールド径が徐々に小さくなるテーパ部11bを設けることが、損失低減の観点からは好ましい。
【0038】
図2の光学デバイスは、
図1の光学デバイスとほぼ同様のものであるが、ただしリッジ型光導波路5Aの形態が異なる。
【0039】
すなわち、光導波路5A内には、ブラッググレーティング6が形成されている。光導波路5Aの入射面5aとブラッググレーティング6との間には、回折格子のない入射側伝搬部7Aが設けられており、入射側伝搬部7Aが活性層2と間隙17を介して対向している。光導波路5の出射面5bとブラッググレーティング6との間に、回折格子のない出射側伝搬部8Aが設けられている。出射側伝搬部8Aは、光伝送素子10の光導波路11の入射面12と対向している。
【0040】
本例では、出射側伝搬部8Aは、ブラッググレーティング6の末端から連続する連結部8a、光導波路の出射面に連続する出射部8dを備えている。そして、出射面5bにおける光導波路の幅W
outが、ブラッググレーティング6における光導波路の幅W
grよりも大きくなっている。また、出射部8dにおいては、光導波路の幅W
mがブラッググレーティング側から出射面側へと向かって大きくなる。本例では、連結部8aにおける光導波路の幅はW
grであってかつ一定である。W
mは、連結部8aとの境界で最小値W
grとなり、出射面において最大値W
outとなる。
【0041】
ここで、本実施形態では、出射側伝搬部の出射面5bにおける光導波路幅W
outを相対的に大きくすることによって、出射面における光ビームのモードフィールドのニアフィールド径(水平方向)B
outを大きくする。同時に、光伝送素子の光伝送部、例えば光導波路11の入射面12におけるモードフィールドパターンのニアフィールド径(水平方向)D
inを、出射面における光ビームのモードフィールドのニアフィールド径(水平方向)B
outよりも大きくしている。
【0042】
また、本例では、入射側伝搬部7Aは、ブラッググレーティング6の末端から連続する連結部7c、光源と対向する入射部7a、および連結部と入射部との間に設けられたテーパ部7bを備えている。そして、入射面5aにおける光導波路の幅W
inが、ブラッググレーティング6における光導波路の幅W
grよりも大きくなっている。また、テーパ部7bにおいては、光導波路の幅が、入射部7aから連結部7cへと向かって徐々に小さくなっている。
【0043】
こうした構造の入射側伝搬部によって、ブラッググレーティングにおけるシングルモード伝搬を確保しつつ、光源の活性層とグレーティング素子の入射面5aとの間のアライメント時の光軸ずれに対する裕度を改善することができる。
【0044】
図3の光学デバイスは、
図1の光学デバイスとほぼ同様のものであるが、ただしリッジ型光導波路5Bおよび光伝送部11Aの形態が異なる。
【0045】
すなわち、光導波路5B内には、ブラッググレーティング6が形成されている。光導波路5の入射面5aとブラッググレーティング6との間には、回折格子のない入射側伝搬部7が設けられている。光導波路5の出射面5bとブラッググレーティング6との間に、回折格子のない出射側伝搬部8Bが設けられている。
【0046】
本例では、出射側伝搬部8Bは、ブラッググレーティング6の末端から連続する連結部8a、出射面5bを有する出射部8f、および連結部8aと出射部8fとの間の連結部8eを備えている。そして、出射面5bにおける光導波路の幅W
outが、ブラッググレーティング6における光導波路の幅W
grよりも小さくなっている。また、テーパ部8eにおいては、光導波路の幅W
mがブラッググレーティング側から出射面側へと向かって徐々に小さくなっている。本例では、連結部8aにおける光導波路の幅はW
grであってかつ一定である。W
mは、連結部8aとの境界で最大値W
grとなり、出射部8fとの境界において最小値W
outとなる。
【0047】
また、本例では、光伝送素子の光伝送部11Aの入射面12におけるモードフィールドパターンのニアフィールド径(水平方向)D
inを、光導波路5Bの出射面における光ビームのモードフィールドのニアフィールド径(水平方向)B
outよりも大きくしている。これによって、アライメント時の光軸ズレに対する裕度が一層向上する。更に、よりニアフィールド径D
outの小さい出射部11cを設けることができる。この場合、入射部11aと出射部11cとの間に、ニアフィールド径が徐々に小さくなるテーパ部11bを設けることが、損失低減の観点からは好ましい。
【0048】
図4の光学デバイスは、
図1に示したデバイスと同様のものであるが、入射側伝搬部7Aおよび出射側伝搬部8Aの形態が異なる。入射側伝搬部7Aの形態は、
図2に示したものと同じである。一方、出射側伝搬部8Aの形態は、
図2に示したものと同じである。
【0049】
また、光伝送素子10の光伝送部11Aの形態は、
図3に示したものと同様である。ただし、本例では、光伝送素子の光伝送部11Aの入射面12におけるモードフィールドパターンのニアフィールド径(水平方向)Dinを、光導波路5Cの出射面における光ビームのモードフィールドのニアフィールド径(水平方向)Boutよりも小さくしている。しかし、この場合にも、Boutを十分に大きくすれば、アライメント時の光軸ズレに対する裕度を向上させることができる。
【0050】
以下、リッジ型光導波路の断面構造について例示する。
図6(a)に示す例では、基板29上に下側バッファ層20を介して光学材料層4が形成されている。光学材料層4には例えば一対のリッジ溝22が形成されており、リッジ溝の間にリッジ型の光導波路5が形成されている。下側バッファ層20および雰囲気がクラッドとして機能する。この場合、ブラッググレーティングは光学材料層の平坦面側に形成していてもよく、リッジ溝側に形成していてもよい。ブラッググレーティングおよびリッジ溝の形状ばらつきを低減するという観点では、ブラッググレーティングを平坦面側に形成することによって、ブラッググレーティングとリッジ溝とを光学材料層の反対側に設けることが好ましい。
【0051】
本例のように、雰囲気が直接グレーティングに接することができる。これによりグレーティング溝が有る無しで屈折率差を大きくすることができ、短いグレーティング長で反射率を大きくすることができる。
【0052】
図6(b)の例では、光学材料層4上に、クラッドとして機能する上側バッファ層26を形成している。
また、
図6(c)の例では、基板29上に下側バッファ層20を介して光学材料層4が形成されている。光学材料層4には例えば一対のリッジ溝22が形成されており、リッジ溝の間にリッジ型の光導波路5が形成されている。本例ではリッジ溝22が下側バッファ層側に形成されている。そして、光学材料層4上に上側バッファ層26が形成されている。
下側バッファ層と基板との間には接着層を設けることができる。
【0053】
好適な実施形態においては、リッジ型光導波路が、光学材料からなるコアからなり、コアの周りをクラッドが包囲している。このコアの横断面(光の伝搬方向と垂直な方向の断面)形状は凸図形となるようにする。
凸図形とは、コアの横断面の外側輪郭線の任意の二点を結ぶ線分が、コアの横断面の外側輪郭線の内側に位置することを意味する。凸図形は、一般的な幾何学用語である。このような図形としては、三角形、四角形、六角形、八角形などの多角形、円形、楕円形などを例示できる。四角形としては、特に、上辺と下辺と一対の側面を有する四角形が好ましく、台形が特に好ましい。
【0054】
たとえば
図7(a)に示す素子39Aでは、基板29上に下側バッファ層20を介して、光学材料よりなるコアからなる光導波路31が形成されている。この光導波路31の下側には、クラッドとして機能する下側バッファ層20が存在している。光導波路31の側面および上面には上側バッファ層が設けられていない。このため、光導波路31の側面および上面は雰囲気に露出しており、雰囲気がクラッドとして機能する。光導波路31の横断面形状は台形であり、上面31aが下面31bよりも狭い。なお、バッファ層20と支持基板29との間に接着層を形成することもできる。
【0055】
図7(b)に示す素子39Bでは、基板29上にバッファ層32内が設けられており、バッファ層32内に、光学材料よりなるコアからなる光導波路32が埋設されている。バッファ層32は、光導波路の上面を被覆する上面被覆部32b、光導波路の側面を被覆する側面被覆部32cおよび光導波路の底面を被覆する底面被覆部32aを有する。
【0056】
図7(c)に示す素子39Cでは、基板29上にバッファ層32内が設けられており、バッファ層32内に、光学材料よりなるコアからなる光導波路31Aが埋設されている。バッファ層32は、光導波路の上面を被覆する上面被覆部32b、光導波路の側面を被覆する側面被覆部32cおよび光導波路の底面を被覆する底面被覆部32aを有する。
【0057】
また、
図8(a)に示す素子39Dでは、基板29上に下側バッファ層20を介して、光学材料よりなるコアからなる光導波路31が形成されている。光導波路31の側面および上面31aには、やはりクラッドとして機能する上側バッファ層33が形成され、光導波路31を被覆している。上側バッファ層33は、光導波路31の側面を被覆する側面被覆部31bおよび上面を被覆する上面被覆部31aを有する。
【0058】
また、
図8(b)に示す素子39Eでは、光学材料よりなるコアからなる光導波路31Aが形成されている。光導波路31Aの横断面形状は台形であり、下面が上面よりも狭い。上側クラッド層33は、光導波路31Aの側面を被覆する側面被覆部33bおよび上面を被覆する上面被覆部33aを有する。
【0059】
なお、例えば
図6〜
図8に示すように、光導波路の幅Wは、横断面において光導波路の幅の最小値を意味する。光導波路の形状が上面が狭い台形の場合には、光導波路の幅Wは上面の幅であり、光導波路の形状が下面が狭い台形の場合には、光導波路の幅Wは下面の幅である。なお、Wは、W
in、W
out、W
grを包含する概念である。また、T
sは光導波路(層)の厚さである。
【0060】
光源としては、高い信頼性を有するGaAs系やInP系材料によるレーザが好適である。本願構造の応用として、例えば、非線形光学素子を利用して第2高調波である緑色レーザを発振させる場合は、波長1064nm付近で発振するGaAs系のレーザを用いることになる。GaAs系やInP系のレーザは信頼性が高いため、一次元状に配列したレーザアレイ等の光源も実現可能である。スーパールミネッセンスダイオードや半導体光アンプ(SOA)であってもよい。また、活性層の材質や波長も適宜選択できる。
なお、半導体レーザとグレーティング素子との組み合わせでパワー安定化を行う方法は、下記に開示されている。
(非特許文献3: 古河電工時報 平成12年1月 第105号 p24-29)
【0061】
リッジ型の光導波路は、例えば外周刃による切削加工やレーザアブレーション加工することによって物理的に加工し、成形することによって得られる。
【0062】
ブラッググレーティングは以下のようにして物理的、あるいは化学的なエッチングにより形成することができる。
具体例として、Ni、Tiなどの金属膜を高屈折率基板に成膜し、フォトリソグラフィーにより周期的に窓を形成しエッチング用マスクを形成する。その後、反応性イオンエッチングなどのドライエッチング装置で周期的なグレーティング溝を形成する。最後に金属マスクを除去することにより形成できる。
【0063】
光導波路中には、光導波路の耐光損傷性を更に向上させるために、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スカンジウム(Sc)及びインジウム(In)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含有させてもよく、この場合、マグネシウムが特に好ましい。また結晶中には、ドープ成分として、希土類元素を含有させることができる。希土類元素としては、特にNd、Er、Tm、Ho、Dy、Prが好ましい。
【0064】
接着層の材質は、無機接着剤であってよく、有機接着剤であってよく、無機接着剤と有機接着剤との組み合わせであってよい。
【0065】
また、光学材料層4は、支持基板上に薄膜形成法によって成膜して形成してもよい。こうした薄膜形成法としては、スパッタ、蒸着、CVDを例示できる。この場合には、光学材料層4は支持基板に直接形成されており、上述した接着層は存在しない。
【0066】
支持基板の具体的材質は特に限定されず,ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、石英ガラスなどのガラスや水晶、Siなどを例示することができる。
【0067】
無反射層の反射率は、グレーティング反射率以下である必要があり、無反射層に成膜する膜材としては、二酸化珪素、五酸化タンタル、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどの酸化物で積層した膜や、金属類も使用可能である。
【0068】
また、光源素子、グレーティング素子の各端面は、それぞれ、端面反射を抑制するために斜めカットしていてもよい。また、グレーティング素子と支持基板の接合は、接着固定でも直接接合でもよく、支持基板上に成膜して形成してもよい。
【0069】
本発明の観点からは、出射面における光導波路の幅W
outは、5μm以上が好ましく、7μm以上が更に好ましく、10μm以上が最もよい。また、W
outは、20μm以下が好ましい。また、W
out/W
grは、1.6以上が好ましく、2.5以上が更に好ましい。一方、W
out/W
grは、7以下が好ましい。
【0070】
本発明の観点からは、出射面におけるニアフィールド径(水平方向)B
outは、5μm以上が好ましく、7μm以上が更に好ましく、10μm以上が最もよい。また、B
outは、20μm以下が好ましい。
【0071】
本発明の観点からは、光伝送部におけるニアフィールド径(水平方向)D
inは、5μm以上が好ましく、7μm以上が更に好ましい。
D
in/W
outは、グレーティング素子からの出射光を光伝送素子10に結合させるという観点からは、1.1以上が好ましく、1.2以上が更に好ましい。
一方、たとえば
図4に示すように、出射側伝搬部8Aの出射面5bにおける光導波路幅W
outをブラッググレーティングにおける光導波路幅W
grよりも大きくする実施形態においては、D
in/W
outは、0.9以下が好ましく、また、0.83以上が好ましい。
【0072】
本発明の観点からは、グレーティング素子の出射面におけるニアフィールド径(垂直方向)は、大きいほど好ましく、0.5μm以上が好ましく、1μm以上が更に好ましい。また、グレーティング素子の出射面におけるニアフィールド径(垂直方向)は、5μm以下が好ましい。
【0073】
本発明の観点からは、光伝送部におけるニアフィールド径(垂直方向)は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上が更に好ましい。光伝送部におけるニアフィールド径(垂直方向)/グレーティング素子の出射面におけるニアフィールド径(垂直方向)は、1.1以上が好ましく、1.2以上が更に好ましい。
【0074】
レーザ光の水平方向、垂直方向のニアフィールド径は、以下のようにして測定する。
レーザ光の光強度分布を測定して、その強度分布が最大値(通常はコアの中心部分に相当)に対して1/e2(eは自然対数の底: 2.71828)になるところの幅のことを、一般的に、ニアフィールド径と定義する。レーザ光の場合、ニアフィールドはレーザ素子の水平方向と垂直方向で大きさが異なるために、それぞれ定義する。光ファイバのように同心円である場合には直径として定義される。
光強度分布の測定は、一般的に近赤外カメラを利用したビームプロファイル測定やナイフエッジによる光強度測定によりレーザ光のスポットの光強度分布を得ることができる。
【0075】
光源とグレーティング素子との光軸合わせ時の位置ズレに対する裕度を向上させるという観点からは、グレーティング素子のリッジ型光導波路の入射面におけるニアフィールド径(水平方向)Binは、4μm以上とすることが好ましく、6μm以上とすることが更に好ましい。
【0076】
半導体レーザとの結合の観点からは、ブラッググレーティングにおける光導波路の幅W
grは、2μm以上が好ましく、2.5μm以上が更に好ましい。また、同様の理由から、ブラッググレーティングにおける光導波路の幅W
grは、7μm以下が好ましく、6.5μm以下が更に好ましい。
【0077】
半導体レーザとの結合トレランスを向上するために、グレーティング素子の光導波路の入力部にテーパ構造を設けることで光導波路の入射部における幅を広げることができる。この場合には、グレーティングにおける光導波路幅を更に小さくしても、光源との結合効率を保持することができるので、ブラッググレーティングにおける光導波路の幅W
grはシングルモード性の観点で1μm以上としてもよい。このようにすることにより、波長安定性が向上しパワー安定性を向上させることが可能となる。
【0078】
光伝送素子は、光導波路素子であってよく、光ファイバアレイであってよい。この光伝送素子は、第二高調波発生素子などの高調波発生素子であってよく、また光変調素子、偏光素子、光増幅器、光遅延素子、光メモリ、等の光制御素子であってよい。
【0079】
以下、本発明のデバイスの好適な実施形態について更に述べる。
グレーティング素子に関して、一般的に、ファイバグレーティングを使用する場合に、石英は屈折率の温度係数が小さいのでdλ
G/dTが小さく、|dλ
G/dT―dλ
TM/dT|が大きくなる。このためモードホップがおこる温度域△Tが小さくなってしまう傾向がある。
【0080】
このため、好適な実施形態においては、グレーティングが形成される導波路基板の屈折率が1.7以上、好ましくは1.8以上の材料を使用する。これにより屈折率の温度係数を大きくでき、dλ
G/dTが大きくできるので、|dλ
G/dT―dλ
TM/dT|を小さくでき、モードホップがおこる温度域△Tを大きくできる。
【0081】
そして、好適な実施形態においては、これを前提として、当業者の常識に反して、ブラッグ反射率のピークにおける半値全幅△λ
Gを大きめに設定する。その上で、モードホップが起こりにくいようにするために、位相条件を満足する波長間隔(縦モード間隔)を大きくする必要がある。このため、共振器長を短くする必要があるので、ブラッググレーティングの長さLbを300μm以下と短くした。
【0082】
その上で、ブラッググレーティングを構成する凹凸の深さtdを20nm以上、250nm以下の範囲内で調節することによって、△λ
Gを0.8nm以上、6nm以下にすることができ、この△λ
Gの範囲内に縦モードの数を2〜5に調節できる。すなわち、位相条件を満足する波長は離散的であり、△λ
Gの中に縦モードの数が2以上、5以下存在しているときには、△λ
Gの中でモードホップを繰り返し、この外にはずれることはない。このため大きなモードホップが起きないので、波長安定性を高くし、光パワー変動を抑制できる。
【0083】
以下、
図12に示すような構成において、本実施形態の条件の意味について更に述べる。
ただし、数式は抽象的で理解しにくいので、最初に、従来技術の典型的な形態と本実施形態とを端的に比較し、本実施形態の特徴を述べる。次いで、本実施形態の各条件について述べていくこととする。
【0084】
まず、半導体レーザの発振条件は、下式のようにゲイン条件×位相条件で決まる。
【0086】
ゲイン条件は、(2-1)式より下式となる。
【数2】
【0087】
ただし、α
a、α
g、α
wg、α
grは、それぞれ、活性層、半導体レーザと導波路間のギャップ、入力側のグレーティング未加工導波路部、グレーティング部の損失係数であり、L
a、L
g、L
wg、L
grは、それぞれ、活性層、半導体レーザと導波路間のギャップ、入力側のグレーティング未加工導波路部、グレーティング部の長さであり、r1、r2は、ミラー反射率(r2はグレーティングの反射率)であり、C
outは、グレーティング素子と光源との結合損失であり、ζ
t g
thは、レーザ媒体のゲイン閾値であり、φ
1は、レーザ側反射ミラーによる位相変化量であり、φ
2は、グレーティング部での位相変化量である。
【0088】
(2-2)式より、レーザ媒体のゲインζ
tg
th(ゲイン閾値)が損失を上回れば、レーザ発振することを表す。レーザ媒体のゲインカーブ(波長依存性)は、半値全幅は50nm以上あり、ブロードな特性をもっている。また、損失部(右辺)は、グレーティングの反射率以外はほとんど波長依存性がないので、ゲイン条件はグレーティングにより決まる。このため、比較表では、ゲイン条件はグレーティングのみで考えることができる。
【0089】
一方、位相条件は(2-1)式から、下式のようになる。ただし、φ1については零となる。
【数3】
【0090】
外部共振器型レーザは、外部共振器として、石英系ガラス導波路、FBGを用いたものが製品化されている。従来の設計コンセプトは、
図9と
図10に示すように、グレーティングの反射特性は△λ
G=0.2nm程度、反射率10%となっている。このことから、グレーティング部の長さは1mmとなっている。一方、位相条件については、満足する波長は離散的になり、△λ
G内に、(2-3)式が2〜3点あるように設計されている。このため、レーザ媒体の活性層長さが長いものが必要になり、1mm以上のものが使用されている。
【0091】
ガラス導波路やFBGの場合、λgの温度依存性は非常に小さく、dλ
G/dT=0.01nm/℃程度となる。このことから、外部共振器型レーザは、波長安定性が高いという特徴をもつ。
しかし、位相条件を満足する波長の温度依存性は、これに比してdλ
s/dT=0.05nm/℃と大きく、その差は0.04nm/℃となる。
【0092】
一般的に、モードホップが起こる温度T
mhは、非特許文献1より下式のように考えることができる(Ta=Tfとして考える)。
ΔG
TMは、外部共振器レーザの位相条件を満足する波長間隔(縦モード間隔)である。
【0094】
これより従来の場合、T
mhは5℃程度となる。このためモードホップが起こりやすい。したがって、モードホップが起こってしまうと、グレーティングの反射特性に基づきパワーが変動し、5%以上変動することになる。
【0095】
以上から、実動作において、従来のガラス導波路やFBGを利用した外部共振器型レーザは、ペルチェ素子を利用して温度制御を行っていた。
【0096】
これに対し、本実施形態では、前提条件として(2-4)式の分母が小さくなるグレーティング素子を使用するものである。(2-4)式の分母は、0.03nm/℃以下にすることが好ましく、具体的な光学材料層としては、ガリウム砒素(GaAs)、ニオブ酸リチウム(LN)、タンタル酸リチウム(LT)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミナ(Al
2O
3)が好ましい。
【0097】
位相条件を満足する波長は、△λ
G内に5点以下存在していれば、モードホップが起こったとしても、安定なレーザ発振条件で動作が可能であることがわかった。
【0098】
すなわち、本実施形態では、例えば、ニオブ酸リチウムのz軸の偏光を使用する場合に温度変化に対して、発振波長はグレーティングの温度特性に基づき0.1nm/℃で変化するが、モードホップは起こしてもパワー変動が起こりにくくすることが可能である。本願構造は、△λ
Gを大きくするためにグレーティング長Lbは例えば100μmとし、△G
TMを大きくするためにLaは例えば250μmとしている。
【0099】
なお、特許文献1との相違についても補足する。
本願は、グレーティング波長の温度係数と半導体のゲインカーブの温度係数を近づけることを前提としている。このことから屈折率が1.7以上(好ましくは1.8以上)の材料を使用することとしている。さらにグレーティングの溝深さtdを20nm以上、250nm以上とし、反射率を3%以上、60%以下で、かつその半値全幅△λ
Gを0.8nm以上、250nm以下としている。これらにより共振器構造をコンパクトにでき、かつ付加するものをなくして温度無依存性が実現できる。特許文献1では、各パラメータは以下のように記載されており、いずれも従来技術の範疇となっている。
△λ
G=0.4nm
縦モード間隔△G
TM=0.2nm
グレーティング長Lb=3mm
LD活性層長さLa=600μm
伝搬部の長さ=1.5mm
【0100】
以下各条件について更に具体的に述べる。
0.8nm≦△λ
G≦6.0nm・・・(1)
10μm≦L
b≦300μm ・・・(2)
20nm≦td≦250nm ・・・(3)
n
b≧1.7 ・・・(4)
【0101】
式(4)において、ブラッググレーティングを構成する材質の屈折率n
bは1.7以上とする。
従来は石英などの、より屈折率の低い材料が一般的であったが、本発明の思想では、ブラッググレーティングを構成する材質の屈折率を高くする。この理由は、屈折率が大きい材料は屈折率の温度変化が大きいからであり、(2-4)式のT
mhを大きくすることができ、さらに前述のようにグレーティングの温度係数dλ
G/dTを大きくできるからである。この観点からは、n
bは、1.8以上であることが好ましく、1.9以上であることが更に好ましい。また、n
bの上限は特にないが、グレーティングピッチが小さくなりすぎて形成が困難になることから4以下が好ましい。
【0102】
ブラッグ反射率のピークにおける半値全幅△λ
Gを0.8nm以上とする(式1)。λ
Gはブラッグ波長である。すなわち、
図9、
図10に示すように、横軸にブラッググレーティングによる反射波長をとり、縦軸に反射率をとったとき、反射率が最大となる波長をブラッグ波長とする。またブラッグ波長を中心とするピークにおいて、反射率がピークの半分になる二つの波長の差を半値全幅△λ
Gとする。
【0103】
ブラッグ反射率のピークにおける半値全幅△λ
Gを0.8nm以上とする(式(1))。これは、反射率ピークをブロードにするためである。この観点からは、半値全幅△λ
Gを1.2nm以上とすることが好ましく、1.5nm以上とすることが更に好ましい。また、半値全幅△λ
Gを6nm以下とするが、3nm以下とすることが更に好ましく、2nm以下とすることが好ましい。
複数の周期の異なるグレーティングを形成する場合は、合成したグレーティング反射特性の半値全幅△λ
Gnが、20nm以下であることが好ましい。
【0104】
ブラッググレーティングの長さL
bは300μm以下とする(式2)。ブラッググレーティングの長さL
bは、光導波路を伝搬する光の光軸の方向におけるグレーティング長である。ブラッググレーティングの長さL
bを300μm以下と従来に比べて短くすることは、本実施形態における設計思想の前提となる。すなわち、モードホップをしにくくするために位相条件を満足する波長間隔(縦モード間隔)を大きくする必要がある。このためには、共振器長を短くする必要がありグレーティング素子の長さを短くする。この観点からは、ブラッググレーティングの長さL
bを200μm以下とすることがいっそう好ましい。
【0105】
グレーティング素子の長さを短くすることは、損失を小さくすることになりレーザ発振の閾値を低減できる。この結果、低電流、低発熱、低エネルギーで駆動が可能となる。
【0106】
また、グレーティングの長さL
bは、3%以上の反射率を得るためには、5μm以上が好ましく、5%以上の反射率を得るためには、10μm以上が更に好ましい。
【0107】
式(3)において、tdは、前記ブラッググレーティングを構成する凹凸の深さである。20nm≦td≦250nmとすることで、△λ
Gを0.8nm以上、250nm以下とすることができ、縦モードの数を△λ
Gの中に2以上、5以下に調整することができる。こうした観点からは、tdは、30nm以上が更に好ましく、また、200nm以下が更に好ましい。半値全幅を3nm以下とするには150nm以下が好ましい。
【0108】
好適な実施形態においては、レーザ発振を促進するために、グレーティング素子の反射率は3%以上、40%以下に設定することが好ましい。この反射率は、より出力パワーを安定させるために5%以上が更に好ましく、また、出力パワーを大きくするためには25%以下が更に好ましい。
【0109】
レーザ発振条件は、
図12に示すように、ゲイン条件と位相条件から成立する。位相条件を満足する波長は離散的であり、たとえば
図11に示される。すなわち、本構造ではゲインカーブの温度係数(GaAsの場合0.3nm/℃)とグレーティングの温度係数dλ
G/dTを近づけることにより、発振波長を△λ
Gの中に固定することができる。さらに△λ
Gの中に縦モードの数が2以上、5以下存在するときには、発振波長は△λ
Gの中でモードホップを繰り返し、△λ
Gの外でレーザ発振する確率を低減できることから大きなモードホップが起こることがなく、さらに波長が安定で、出力パワーが安定に動作できる。
【0110】
好適な実施形態においては、活性層の長さL
aも500μm以下とする。この観点からは、活性層の長さL
aを300μm以下とすることが更に好ましい。また、レーザの出力を大きくするという観点では活性層の長さL
aは、150μm以上とすることが好ましい。
【0111】
【数5】
式(6)において、dλ
G/dTは、ブラッグ波長の温度係数である。
また、dλ
TM/dTは、外部共振器レーザの位相条件を満足する波長の温度係数である。
ここで、λ
TMは、外部共振器レーザの位相条件を満足する波長であり、つまり前述した(2.3式)の位相条件を満足する波長である。これを本明細書では「縦モード」と呼ぶ。
【0112】
以下、縦モードについて補足する。
(2.3)式の中のβ=2πneff/λであり、neffはその部の実効屈折率であり、これを満足するλがλ
TMとなる。φ2は、ブラッググレーティングの位相変化である。
【0113】
△G
TMは、外部共振器レーザの位相条件を満足する波長間隔(縦モード間隔)である。λ
TMは、複数存在するので、複数のλ
TMの差を意味する。
したがって、式(6)を満足することで、モードホップが起こる温度を高くし、事実上モードホップを抑制することができる。式(6)の数値は、0.025以下とすることが更に好ましい。
【0114】
好適な実施形態においては、グレーティング素子の長さL
WGも600μm以下とする。L
WGは400μm以下が好ましく、300μm以下が更に好ましい。また、L
WGは50μm以上が好ましい。
好適な実施形態においては、光源の出射面と光導波路の入射面との距離L
gは、1μm以上、10μm以下とする。これによって安定した発振が可能となる。ただし、入射側伝搬部は設けなくとも良い。
【0115】
次いで、光学デバイスの製造方法について更に述べる。
好適な実施形態においては、グレーティング素子および光伝送素子を実装する共通基板を備えている。
図13のデバイスは、この実施形態に係るものである。
図13(a)は、デバイス30Aを模式的に示す平面図であり、
図13(b)は、デバイス30Aを示す側面図である。
【0116】
光源1は実装基板31上に実装されている。また、別体の実装基板32上には、光伝送素子10が実装されている。これと共に、実装基板32には加工によって段差部Sおよび実装面32aが形成されており、この実装面32a上にグレーティング素子3が実装されている。実装基板31と実装基板32とは接着、はんだ等によって一体化されている。24、36は上側バッファ層である。
【0117】
また、好適な実施形態においては、グレーティング素子を実装する基板と光伝送素子を実装する基板とが別体である。
図14のデバイスは、この実施形態に係るものである。
図14(a)は、デバイス30Bを模式的に示す平面図であり、
図14(b)は、デバイス30Bを示す側面図である。
【0118】
光源1は実装基板31上に実装されている。また、別体の実装基板35上には、光伝送素子10が実装されている。これと共に、別体の実装基板29上にはグレーティング素子3が実装されている。本例の実装基板29は支持基板を兼ねている。実装基板31と実装基板29とは接着、はんだ等によって一体化されており、実装基板29と35とは接着等によって一体化されている。
【0119】
図15(a)は、他の光学デバイス30Cを模式的に示す平面図であり、
図15(b)は光学デバイス30Cの側面図である。光源1は実装基板31上に実装されている。また、別体の実装基板43上には、光伝送素子40が実装されている。本例の光伝送素子40には光ファイバ41が固定されている。また、実装基板43には加工によって段差部Sおよび実装面43aが形成されており、この実装面43a上にグレーティング素子3が実装されている。光ファイバ42はリッジ型光導波路に対して光軸合わせされている。実装基板43上には上側クラッド基板50が更に接合されている。また、実装基板43と実装基板32とは接着、はんだ等によって一体化されている。
【0120】
好適な実施形態においては、光伝送素子を実装する基板の幅とグレーティング素子の幅とが同じである。これによって、光伝送素子を実装する実装基板の外形に対してグレーティング素子の外形を合わせてアライメントすることが可能となる。
【0121】
好適な実施形態においては、グレーティング素子と光伝送素子とをアライメントするためのマーキングがされている。すなわち、
図13〜
図15においては、グレーティング素子側のマーキング33と光伝送素子側のマーキング34とが形成されており、各マーキングを位置合わせすることによってアライメントを行う。
【0122】
図16〜
図19は、本発明製法の第一実施形態に係るものである。
まず、
図16(a)に示すように、複数の光伝送部11を有する第一の母材55を製造する。本例では、支持基板45上に基板46Aを形成しており、基板46A上に所定の光伝送部11が形成されている。また、本例では上側クラッド36Aによって光伝送部11を被覆している。
図16(a)では、複数の光伝送部11が一列配列されているが、複数の光伝送部11を縦横に二次元的に配列したウエハーであってもよい。
【0123】
第一の母材を加工することによって、第二の母材を実装するための実装面を形成する。すなわち、
図16(b)に示すように、母材を加工することによって、母材55Aに段差部Sおよび実装面32aを形成する。
【0124】
また、複数のリッジ型光導波路を有する第二の母材を製造する。すなわち、
図17に示す例では、支持基板29A上に複数のリッジ型光導波路5およびリッジ溝22が形成されている。このリッジ型光導波路内には所定のブラッググレーティングが形成されている。なお、本例では、第二の母材には、複数のリッジ型光導波路5が一列に配列されている。24Aは上側バッファ層である。
【0125】
次いで、第二の母材56を第一の母材55Aの実装面に実装して複合体61Aを得る。すなわち、
図18に示すように、第二の母材を第一の母材Sの段差部に収容し、実装面上に実装して一体化する。この際、リッジ型光導波路5の出射面を光伝送部の入射面にアライメントする。こうして得られた複合体を点線Xに沿って切断し、
図19に示すような光学デバイスのチップ30Aを得ることができる。
【0126】
なお、本例では、第二の母材56においてはリッジ型光導波路が一列に一次元的に配列されている。一方、第一の母材55Aにおいては、光伝送部が一列に一次元的に配列されていてよい。あるいは、一つの第一の母材55Aに複数個の段差部および実装面を加工によって形成したあと、複数個の段差部および実装面にそれぞれ別体の第二の母材56を実装することもできる。
【0127】
図20〜
図22は、本発明製法の第二形態に係るものである。
まず、複数の光伝送部を有する第一の母材を製造する。すなわち、
図20(a)に示すように、基板35A上に複数の光伝送部11を有する第一の母材55Bを製造する。この時点では、最初にウエハーに多数の光伝送部11を縦横に二次元的に形成したあと、ウエハーを切断することで、複数の光伝送部11が一列に一次元的に配列された母材を得る。36Aは上側バッファ層であるが、上側バッファ層は設けなくともよい。
【0128】
また、複数のリッジ型光導波路を有する第二の母材を製造する。すなわち、
図20(b)に示すように、支持基板29A上に複数のリッジ型光導波路5を一列、一次元的に配列する。この時点では、最初にウエハーに多数の光導波路5を縦横に二次元的に形成したあと、ウエハーを切断することで、複数の光導波路5が一列に一次元的に配列された母材56Aを得る。
【0129】
次いで、第一の母材と第二の母材とを接合して複合体を得る。この際、リッジ型光導波路の出射面を光伝送部の入射面にアライメントする。すなわち、
図21に示すように、第一の母材55Bの支持基板35Aと第二の母材56Aの支持基板29Aとを接合し、一体化する。このとき、各リッジ型光導波路の出射面と各光伝送部の入射面とのアライメントを行う。次いで、点線Xに沿って複合体61Bを切断することによって、
図22に示すような光学デバイスチップ30Bを得る。
【実施例】
【0130】
(実施例1)
図1および
図5を参照しつつ説明した光学デバイスを製造した。デバイスの横断面構造は
図6(a)に示すものとした。
具体的には、石英からなる支持基板29にスパッタ装置にてSiO
2からなる下側バッファ層20を1μm成膜し、さらにTa
2O
5からなる光学材料層4を2μm成膜した。次いで、光学材料層4上にTiを成膜して、フォトリソグラフィ技術によりグレーティングパターンを作製した。その後、Tiパターンをマスクにしてフッ素系の反応性イオンエッチングにより、ピッチ間隔Λ205.4nm、長さLb 25μmのブラッググレーティング6を形成した。グレーティングの溝深さt
dは100nmとした。
【0131】
次いで、光導波路のパターンをフォトリソグラフィ技術にてパターニングして反応性イオンエッチングにより、リッジ溝およびリッジ型光導波路を形成した。光導波路の入射面からブラッググレーティング6までの長さLmは25μmとした。リッジ溝の深さは1.2μmである。その後、切断して端面を鏡面加工して、素子サイズを幅1mm、長さL
WG100μmとした。両端面には単層のARコートを成膜した。
【0132】
グレーティング素子の光学特性は、広帯域波長光源であるスーパ・ルミネッセンス・ダイオード(SLD)を使用して、グレーティング素子にTEモードの光を入力して出力光を光スペクトルアナライザで分析することにより、その透過特性から反射特性を評価した。測定した素子の反射中心波長は850nmであった。
【0133】
次に、光導波路素子としてPPLN波長変換素子を下記のように製造した。
具体的には、MgOドープした5°オフカットのyニオブ酸リチウム基板に周期分極反転構造を形成した。その後、周期ドメイン反転したニオブ酸リチウム基板表面に、SiO
2からなる下側バッファ層をスパッタ成膜し、ブラックLN基板に貼り合わせを行い、精密研磨加工により1μm厚とした。次に、光導波路を形成するために、Ta
2O
5上にTiを成膜して、EB描画装置により導波路パターンを作製した。その後、Tiパターンをマスクにしてフッ素系の反応性イオンエッチングにより、上記と同様な方法で反応性イオンエッチングし、光導波路を形成した。エッチング溝の両サイドは光導波路を残してニオブ酸リチウムを完全に切り込むようにエッチングした。光導波路の厚さは1μmである。最後に、上側クラッドとなるSiO
2を光導波路を覆うように2μmスパッタにて形成した。
【0134】
ただし、グレーティング素子および波長変換素子の各パラメーターは以下のとおりとする。
光源活性層の出射面におけるニアフィールド径(水平方向): 5.0μm
入射面5aにおけるニアフィールド径(水平方向)B
in: 2.9μm
光導波路の入射面5aにおける光導波路幅W
in: 3μm
グレーティング6における光導波路幅W
gr: 3μm
光導波路の出射面5bにおける光導波路幅W
out: 15μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(水平方向)B
out: 14.8μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(垂直方向):1.9μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(水平方向)D
in:19μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(垂直方向):
0.9μm
光伝送部の出射面におけるニアフィールド径(水平方向)D
out: 2.9μm
【0135】
上記のグレーティング素子と波長変換素子の軸ずれによる結合効率を評価するために別途波長変換素子を切断して、両端面を鏡面加工、ARコートを成膜した。結合効率は波長850nmにて水平方向、垂直方向それぞれ調芯装置にて光量変動を測定した。
【0136】
その結果、結合効率50%以上を確保できる領域は水平方向にて±4.5μm、垂直方向では±0.4μmであった。
【0137】
次いで、
図1、
図5に示すようにレーザモジュールを実装した。光源素子は通常のGaAs系レーザを使用した。
光源素子仕様:
中心波長: 847nm
出力: 50mW
半値幅: 0.1nm
レーザ素子長 250μm
実装仕様:
L
g: 1μm
【0138】
モジュール実装後、ペルチェ素子を使用することなく電流制御(ACC)で駆動したところ、グレーティングの反射波長に対応した中心波長850nmで発振し、出力はグレーティング素子がない場合よりも小さくなるが27mWのレーザ特性であった。また動作温度が20℃から40℃の温度範囲でレーザ発振波長の温度依存性とパワー変動を測定した。その結果、発振波長の温度係数は0.05nm/℃であった。また導波路素子からの出力光のパワー変動は±1%以下であった。
【0139】
また軸ずれトレランスが広いことは温度変化によって軸がずれても光量変化を抑制でき、パワー変動の小さい光源モジュールを実現することができる。
【0140】
(実施例2)
実施例1と同様にして光学デバイスを作製した。
ただし、実施例1において、以下のパラメーターを採用した。
光源活性層の出射面におけるニアフィールド径(水平方向): 5.0μm
入射面5aにおけるニアフィールド径(水平方向)B
in:2.9μm
光導波路の入射面5aにおける光導波路幅W
in: 3μm
グレーティング6における光導波路幅W
gr: 3μm
光導波路の出射面5bにおける光導波路幅W
out: 6μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(水平方向)B
out: 5.8μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(垂直方向): 1.9μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(水平方向)D
in: 9μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(垂直方向):0.9μm
光伝送部の出射面におけるニアフィールド径(水平方向)D
out: 2.9μm
【0141】
実施例1と同様にして、波長850nmにて水平方向、垂直方向それぞれ調芯装置にて光量変動を測定した。
その結果、結合効率50%以上を確保できる領域は水平方向にて±2μm、垂直方向では±0.3μmであった。
【0142】
次いで、実施例1と同様にして、モジュール実装後、ペルチェ素子を使用することなく電流制御(ACC)で駆動したところ、グレーティングの反射波長に対応した中心波長850nmで発振し、出力はグレーティング素子がない場合よりも小さくなるが25mWのレ
ーザ特性であった。また動作温度が20℃から40℃の温度範囲でレーザ発振波長の温度依存性とパワー変動を測定した。その結果、発振波長の温度係数は0.05nm/℃であった。また導波路素子からの出力光のパワー変動は±3%以下であった。
【0143】
(比較例1)
実施例1と同様にして光学デバイスを作製した。
ただし、実施例1において、以下のパラメーターを採用した。
光源活性層の出射面におけるニアフィールド径(水平方向): 5.0μm
入射面5aにおけるニアフィールド径(水平方向)B
in:2.9μm
光導波路の入射面5aにおける光導波路幅W
in: 3μm
グレーティング6における光導波路幅W
gr: 3μm
光導波路の出射面5bにおける光導波路幅W
out: 3μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(水平方向)B
out: 2.9μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(垂直方向): 1.9μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(水平方向)D
in: 1.9μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(垂直方向): 0.9μm
光伝送部の出射面におけるニアフィールド径(水平方向)D
out: 2.9μm
【0144】
実施例1と同様にして、波長850nmにて水平方向、垂直方向それぞれ調芯装置にて光量変動を測定した。
その結果、結合効率50%以上を確保できる領域は水平方向にて±1μm、垂直方向では±0.3μmであった。
【0145】
次いで、実施例1と同様にして、モジュール実装後、ペルチェ素子を使用することなく電流制御(ACC)で駆動したところ、グレーティングの反射波長に対応した中心波長850nmで発振し、出力は30mWであった。また動作温度が20℃から40℃の温度範囲でレーザ発振波長の温度依存性とパワー変動を測定した。その結果、発振波長の温度係数は0.05nm/℃であった。また導波路素子からの出力光のパワー変動は±10%以下であった。
【0146】
(実施例3)
実施例1と同様にして光学デバイスを作製した。
ただし、実施例1において、以下のパラメーターを採用した。
光源活性層の出射面におけるニアフィールド径(水平方向): 5.0μm
入射面5aにおけるニアフィールド径(水平方向)B
in: 2.9μm
光導波路の入射面5aにおける光導波路幅W
in: 3μm
グレーティング6における光導波路幅W
gr: 3μm
光導波路の出射面5bにおける光導波路幅W
out: 20μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(水平方向)B
out: 18.5μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(垂直方向): 1.9μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(水平方向)D
in: 14.7μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(垂直方向):0.9μm
光伝送部の出射面におけるニアフィールド径(水平方向)D
out: 2.9μm
【0147】
実施例1と同様にして、波長850nmにて水平方向、垂直方向それぞれ調芯装置にて光量変動を測定した。
その結果、結合効率50%以上を確保できる領域は水平方向にて±4.5μm、垂直方向では±0.4μmであった。
【0148】
次いで、実施例1と同様にして、モジュール実装後、ペルチェ素子を使用することなく電流制御(ACC)で駆動したところ、グレーティングの反射波長に対応した中心波長850nmで発振し、出力はグレーティング素子がない場合よりも小さくなるが25mWのレーザ特性であった。また動作温度が20℃から40℃の温度範囲でレーザ発振波長の温度依存性とパワー変動を測定した。その結果、発振波長の温度係数は0.05nm/℃であった。また導波路素子からの出力光のパワー変動は±1%以下であった。
【0149】
(実施例4)
実施例1と同様にして光学デバイスを作製した。
ただし、実施例1において、以下のパラメーターを採用した。
光源活性層の出射面におけるニアフィールド径(水平方向): 5.0μm
入射面5aにおけるニアフィールド径(水平方向)B
in: 2.9μm
光導波路の入射面5aにおける光導波路幅W
in: 3μm
グレーティング6における光導波路幅W
gr: 3μm
光導波路の出射面5bにおける光導波路幅W
out: 3μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(水平方向)B
out: 2.9μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(垂直方向): 1.9μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(水平方向)D
in: 6.5μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(垂直方向):0.9μm
光伝送部の出射面におけるニアフィールド径(水平方向)D
out: 2.9μm
【0150】
実施例1と同様にして、波長850nmにて水平方向、垂直方向にそれぞれ調芯装置にて光量変動を測定した。
その結果、結合効率50%以上を確保できる領域は水平方向にて±1.3μm、垂直方向では±0.3μmであった。
【0151】
次いで、実施例1と同様にして、モジュール実装後、ペルチェ素子を使用することなく電流制御(ACC)で駆動したところ、グレーティングの反射波長に対応した中心波長850nmで発振し、出力はグレーティング素子がない場合よりも小さくなるが25mWのレーザ特性であった。また動作温度が20℃から40℃の温度範囲でレーザ発振波長の温度依存性とパワー変動を測定した。その結果、発振波長の温度係数は0.05nm/℃であった。また導波路素子からの出力光のパワー変動は±6%以下であった。
【0152】
(実施例5)
実施例1と同様にして、
図4に示す光学デバイスを作製した。
ただし、実施例1において、以下のパラメーターを採用した。
光源活性層の出射面におけるニアフィールド径(水平方向): 5.0μm
入射面5aにおけるニアフィールド径(水平方向)B
in:6.5μm
光導波路の入射面5aにおける光導波路幅W
in: 7μm
グレーティング6における光導波路幅W
gr: 3μm
光導波路の出射面5bにおける光導波路幅W
out: 6μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(水平方向)B
out: 5.8μm
光導波路の出射面5bにおけるニアフィールド径(垂直方向): 1.9μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(水平方向)D
in: 3μm
光伝送部の入射面12におけるニアフィールド径(垂直方向):0.9μm
光伝送部の出射面におけるニアフィールド径(水平方向)D
out: 2.9μm
【0153】
実施例1と同様にして、波長850nmにて水平方向、垂直方向それぞれ調芯装置にて光量変動を測定した。
その結果、グレーティング素子の光源側、光伝送部側それぞれに対して、結合効率50%以上を確保できる領域は水平方向にて±2μm、垂直方向では±0.3μmであった。
【0154】
次いで、実施例1と同様にして、モジュール実装後、ペルチェ素子を使用することなく電流制御(ACC)で駆動したところ、グレーティングの反射波長に対応した中心波長850nmで発振し、出力はグレーティング素子がない場合よりも小さくなるが25mWのレーザ特性であった。また動作温度が20℃から40℃の温度範囲でレーザ発振波長の温度依存性とパワー変動を測定した。その結果、発振波長の温度係数は0.05nm/℃であった。また導波路素子からの出力光のパワー変動は±1%以下であった。