(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572210
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】電気化学装置用のシール、シールを製造及び嵌合するための方法並びにこの装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0271 20160101AFI20190826BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20190826BHJP
C25B 9/00 20060101ALI20190826BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
H01M8/0271
H01M8/12 101
C25B9/00 A
C25B13/02 302
H01M8/12 102A
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-531989(P2016-531989)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-504929(P2017-504929A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】IB2014066518
(87)【国際公開番号】WO2015083076
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年11月27日
(31)【優先権主張番号】1362100
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディ イオリオ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】オレスィク、ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】プティ、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】レイティエール、マガリ
【審査官】
近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−082145(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0048137(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第1246283(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0271
C25B 9/00
C25B 13/02
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に固体酸化物形燃料電池(SOFC)型又は固体酸化物形高温水蒸気電解槽(SOEC)型の電気化学装置(1)の2つの金属範囲(7、8、9、10、11、12、28及び29)と接触して装着されるために使用されるシール・ガスケット(13、14、15、20、30、40、50、60、70、80)であって、
ガラス又はガラスセラミック型の少なくとも1つの材料を備える、前記ガスケットの封止手段(21)と、
前記封止手段を支持し、且つ2つの平行主面(22及び23)と、外周縁(22a)と、内周縁(23a)とを有する電気絶縁性の支持手段(24、34、44、54、64、74、84)であって、前記ガスケットが、前記封止手段で少なくとも部分的に覆われた前記主面を通して前記範囲に対して装着されることが可能である、支持手段と
を備え、
前記封止手段が、前記主面の一方から他方まで前記支持手段を通して連続的に延在することによって前記内周縁と前記外周縁との間で前記支持手段を分割して、前記封止手段が、前記範囲を互いに直接接続し、
前記支持手段(24、34、44、54、64、74、84)が、多孔質材料の一体フレームを備え、前記フレームが、前記封止手段(21)を受ける所定の幾何学的形状を持つ少なくとも1つの貫通溝(25及び26、35及び36)を形成する前記フレームを通しての穿孔表面を画定するように機械加工され、前記少なくとも1つの溝が、前記主面の一方(22)から他方(23)まで連続的に延在する少なくとも1つの封止隔壁(27、37及び38、47及び48、57及び58、67及び68、77、87)を形成している前記封止手段で充填されていることを特徴とする、ガスケット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの溝(25及び26、35及び36)の前記表面が、前記主面(22及び23)に対して全般的に垂直であり、且つ前記内(23a)及び外(22a)周縁と全般的に同心の周方向に、前記周方向に沿って連続的に又は不連続的に延在し、前記フレーム(24、34、44、54、64、74、84)から成るタブ(33、43、53、63、83)が、前記少なくとも1つの溝の各々の側に、前記溝を前記フレームの残りに又は別の所謂隣接する溝に接続するために形成され、各タブが前記少なくとも1つの溝よりも小さい体積を有することを特徴とする、請求項1に記載のガスケット(13、14、15、20、30、40、50、60、70、80)。
【請求項3】
前記タブ(43、63)が、前記範囲によって形成されるインタコネクタ(28及び29)によって分配されたガスの経路長及び/又は前記フレーム(44、64)の前記多孔質材料を通してのこれらのガスの圧力低下を最大化するように、前記少なくとも1つの溝(25、26)の各々の側で、例えば千鳥配列に沿って径方向に角度的にずらされることを特徴とする、請求項2に記載のガスケット(40、60)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの封止隔壁(87)が前記周方向に連続的に延在し、前記タブ(83)がそれぞれ前記外周縁(22a)に向けて及び前記内周縁(23a)に向けて前記少なくとも1つの溝の各々の側で延在していることを特徴とする、請求項2又は3に記載のガスケット(80)。
【請求項5】
前記放射タブ(83)を通して互いにペアで接続された少なくとも2つの前記同心の封止隔壁(27)を備えることを特徴とする、請求項4に記載のガスケット(20)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの封止隔壁(47及び48、57及び58、67及び68、77)が前記少なくとも1つの周方向に不連続的に延在し、複数の分割部分(47及び48、57及び58、67及び68、77)を形成していることを特徴とする、請求項2又は3に記載のガスケット(30、40、50、60、70)。
【請求項7】
前記フレーム(34、44、54、64)を横断する前記溝に収容された前記複数の分割部分(47及び48、57及び58、67及び68)が各々形成された少なくとも2つの所謂封止隔壁(47及び48、57及び58、67及び68)を備え、前記溝が、曲線、直線、波形幾何学的形状に従って及び/又は断続線として機械加工され、且つ前記封止手段(21)で充填され、前記分割部分が、前記タブ(33、43、53、63)を通して前記周方向に互いにペアで接続されていることを特徴とする、請求項6に記載のガスケット(30、40、50、60)。
【請求項8】
前記フレーム(74)を横断する多数の穴(75)、例えば円筒状の穴がそれぞれ形成され、前記内周縁(23a)と前記外周縁(22a)との間に一定の間隔で機械加工された前記溝(75)を形成し、且つ前記封止手段(21)で充填された多数の前記封止隔壁(77)を備えることを特徴とする、請求項6に記載のガスケット(70)。
【請求項9】
前記封止手段(21)がガラス又はガラスセラミックに基づき、且つ前記支持手段(24、34、44、54、64、74、84)が多孔質セラミック及び多孔質鉱物、好ましくはマイカによって形成された群から選択された多孔質材料の機械加工された薄板から成ることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のガスケット(13、14、15、20、30、40、50、60、70、80)。
【請求項10】
特に固体酸化物形燃料電池(SOFC)型又は固体酸化物形高温水蒸気電解槽(SOEC)型の電気化学装置(1)内の請求項1から9までのいずれか一項に記載のガスケット(13、14、15、20、30、40、50、60、70、80)を製造して組み立てるための方法であって、
a)前記主面の一方(22)から他方(23)まで前記支持手段(24、34、44、54、64、74、84)を通して連続的に延在する、前記内周縁(23a)と前記外周縁(22a)との間の前記少なくとも1つの溝(25及び26、35及び36)を穿孔するために、前記支持手段を機械加工するステップと、
b)組立て前に前記ガスケットのブランクを得るために、ガラス・ペーストなどの前記封止手段(21)を前記主面上及び前記少なくとも1つの溝内に付着させるステップと、
c)前記封止手段を溶解させると共にそれを適所に配置するために、600℃と900℃との間に含まれる温度で且つ数kPaの印加圧力下で、前記ガスケットを前記装置の少なくとも1つのセル(2)のスタック内で組み立てるステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
固体酸化物形燃料電池(SOFC)型又は固体酸化物形高温水蒸気電解槽(SOEC)型の電気化学装置(1)であって、
水素電極−電解質−酸素電極接合体を備え、且つ2つのチャンバ(5及び6)の境界を定める少なくとも1つのセル(2)と、
前記電極と接触してそれぞれ位置決めされた、前記少なくとも1つのセルを有する少なくとも2つの電気接点要素(3及び4)と、
前記少なくとも1つのセルに、電流、並びに水蒸気、二酸素、二水素及び任意選択でキャリア・ガスなどのガスを分配し、且つ幾つかの前記セルの場合、その間の接合を確保するインタコネクタを形成している少なくとも2つの金属範囲(7、8、9、10、11、12、28及び29)と、
一対の前記インタコネクタと接触して各々装着されたシール・ガスケット(13、14、15、20、30、40、50、60、70、80)と
を備え、
前記ガスケットの少なくとも1つが請求項1から9までのいずれか一項に係るものであることを特徴とする、装置。
【請求項12】
前記ガスケット(13、14、15、20、30、40、50、60、70、80)の全体が、電気絶縁性であり、且つ前記少なくとも1つのセル(2)の前記チャンバ間の封止を確保する第1のガスケット(13)と、入口ガス及び出口ガスのそれぞれの供給間の封止を確保する第2のガスケット(14)と、外部雰囲気との前記少なくとも1つのセルの封止を確保する第3のガスケット(15)とを備え、前記第2及び第3のガスケットが請求項1から9までのいずれか一項に係るものであることを特徴とする、請求項11に記載の電気化学装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置に使用されてよい封止ガスケット、この装置内のガスケットを製造して組み立てるための方法、並びにそのような装置に関する。本発明は、固体酸化物を持つ燃料電池(「固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell)」を表すSOFC)、及び固体酸化物が高温である水蒸気電解槽(「固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolyzer Cell)」の頭字語であるSOEC)であって、それぞれ「高温電解(High Temperature Electrolysis)」又は「高温水蒸気電解(High Temperature Steam Electrolysis)」の頭字語である「HTE」又は「HTSE」の下に一般的に知られている電解槽である固体酸化物形電解槽を形成する装置に特に適用される。
【背景技術】
【0002】
知られている方法では、SOEC及びSOFC型の電気化学装置は、機能するために、それらを含む異なるチャンバ内に高品質シールを必要とする。シールが良質であれば、送られるガスの全体がSOEC装置によって使用され、生成ガスの全体がSOECのために回収され、そして更にこれらの装置の性能及び耐久性の大きな不利益であろう、使用又は生成されるガスの混合がこれらの装置では回避される。
【0003】
これらの電気化学装置は、通常、
− 水素電極−電解質−酸素電極接合体から成り、且つ2つのチャンバを画定する少なくとも1つのセルと、
− 各セルとの少なくとも2つの電気接点要素と、
− 電流を伝導し、そしてガス(例えば水蒸気、二酸素、二水素、二酸化炭素、及び任意選択で二窒素又は空気などのキャリア・ガス)を電極に分配し、且つ2つの隣接するセル間の接合を確保する少なくとも2つの金属インタコネクタと、
− 各セルの両チャンバ間の封止を確保する第1のガスケットと、入口ガス及び出口ガスの供給間の封止を確保する第2のガスケットと、外側との装置の封止を確保する第3のシールとを備える、いかなる短絡も回避するための電気絶縁シール・ガスケットとを備える。
【0004】
SOEC型の電気化学装置では、水分子が水素電極(カソード)で二水素に解離され、O
2イオンが電解質を通って移動して酸素電極(アノード)の側で二酸素に再結合する。上記又は各SOECセルはしたがって水分子を解離させることによって二水素を生成する。
【0005】
SOFC型の電気化学装置では、酸素が酸素電極(カソード)で還元され、O
2イオンが電解質を通って移動する。酸化反応が次いで水素電極(アノード)で起こり、上記又は各SOFCセルはしたがって二水素及び二酸素を結合することによって電気及び水を生成する。
【0006】
SOEC及びSOFC装置のシールはしたがって運転の最も重大な点の1つである。実際、SOEC装置で生成される水素の一部分が、例えば封止不良の理由で全体として回収される代わりに装置の外側に向かって部分的に閉じれば、装置の歩留まりが低下される。
【0007】
更に、SOEC又はSOFC装置の1つのセルの両チャンバが互いに連通すれば、発生するガスの混合が装置の効率の損失に、温点に及びそれらの寿命時間の低下に至る。
【0008】
SOEC装置に関して、シールは生成される二水素の97%が装置の出口で回収されると充分である、この回収レベルが99%であると良好である、そしてこのレベルが99.9%よりも大きいと優れていると考えられてよい。
【0009】
回収レベルに加えて、シールの品質は過圧に対するその抵抗を考慮することによって評価されてよい。50ミリバール(すなわち5,000Pa)に抵抗力があるシールが適切であり、それが200ミリバール(すなわち20,000Pa)に耐えると良好であり、そして500ミリバール(すなわち50,000Pa)であると優れている。この抵抗の存続時間も重要なパラメータであり、数分間耐えるだけのシールはあまり興味を引かず、目標とされる存続時間はおよそ数千時間程度であることが規定される。
【0010】
SOEC又はSOFC装置用のシールは、圧縮ガスケット、すなわちそれらの封止機能を達成するためにはこれらのガスケットを変形させる圧縮力を受けなければならず、それらが適所に配置されると封止をもたらすガスケットによって達成されてよいことが知られている。ガスケットのこの変形は可逆(例えば低温用の弾性ポリマー・ガスケット)又は不可逆(例えば金属材料の塑性変形)でよい。これらの圧縮継手はほとんどは密であり、それらはこの場合にはポリマー又は金属ガスケット、そうでなければ例えばマイカ・ガスケットなど多孔質でよく、圧縮力は後者の場合には多孔質材料の厚さにおける漏洩を回避するために、その開いた内部細孔を充填することができる。
【0011】
金属型の圧縮ガスケットの大きな欠点は、それらが金属インタコネクタ間の電気絶縁を保証しない、そして特にそれらが効率的であるためには非常に高い充電レベルを必要とすることである。マイカ・ガスケットなどの多孔質電気絶縁圧縮ガスケットに関しては、それらは充分な封止を得るためには、SOFC及びSOECスタックによって許容されるものを上回る圧縮応力を必要とするという欠点を有し、且つそれらの厚さにおいて漏洩防止ではない。更に、これらのマイカ・ガスケットに関しては、互いにできるだけ接近しているべきである接触した材料の膨張係数の問題が引き起こされる。
【0012】
その上、シールはガラスから成るガスケットによって達成されてよいことが知られている。SOEC及びSOFC用途のための特別に開発されたガラスは特にG018系(Schottによって市場に出される)からのものであり、適所に配置され、そしてスタックの運転温度を上回る温度で結晶化される。温度は次いで運転温度に低下され、その結果ガラス・ガスケットは再びより剛性になり、これによってそれは運転の間の圧力に耐えることができるようになる。
【0013】
SOEC及びSOFC装置におけるガラス・ガスケットの使用の大きな欠点は、これらのガスケットがとても大きい厚さを有するとしても、それらは高過圧を支えないであろう(数ミリバール−すなわち数百Pa−がおよそ1mm程度の厚さを持つガラス・ガスケットの流動を生じさせるために十分である)ことである。実際、ガラス・ガスケットはその使用温度の理由で圧力下のその流動を制限するために、可能な限り小さい厚さを有するべきであることが考えられ、このガスケットのガラスは決して完全には固体化されず、これによってそれは高流量及び従って過圧に対する短期間の抵抗を持つ2つの壁間の流体の流動の法則によって圧力の影響下で流動し(すなわち「追い出され」)、次いで封止の損失に至ることがある。結論として、同じ過圧に対しては、ガラス・ガスケットの寿命時間は、その厚さが減少されてその支持表面が著しい程それだけ長くなるであろう。実際には、ガラス・ガスケットの寸法制御は、電流の良好な循環、すなわちインタコネクタ、電気接点要素及びセルを許容すべく、スタックの部分を互いに接触させて保つことも根本的であるので複雑である。
【0014】
これらの知られているガラス・ガスケットの別の欠点は、非特許文献1に示されるように、ガスケットのガラスが2つの金属範囲間の封止をもたらすが、しかしとても小さい厚さである場合、ガラスがその範囲の金属と反応して、導電性となることがある酸化物を形成するので、装置に短絡の危険性があることである。
【0015】
特許文献1に記載されるように、時間とともに結晶化してよく、それによってガラスの剛性を増加させることになる構造を有するガラスセラミック・ガラスを代わりに使用することが可能である。しかしながら、この解決策は、これらのガラスセラミック・ガスケットの過圧に対する抵抗が不十分であることがあるので最適ではない。
【0016】
ガラス・ガスケットの寸法設計の上述の問題の解決策を提供するために、最近、必要とされる圧縮制約を低減させる且つ/又は単一の圧縮材料から成るガスケットと比較して得られる結果を向上させるため、同じ複合ガスケットにガラス・シール層及びマイカなどの圧縮材料を組み合わせることが試みられた。
【0017】
例えば、その接点に付着されるガラスで封止されるマイカから成る電気化学装置用の複合ガスケットを開示する特許文献2について述べることができる。この複合ガスケットの欠点は、マイカの厚さにおける観察される漏洩、寸法変動を受けやすい金属範囲間の高さがガラスの広がりを条件づけるので、付着されるべきガラス量を制御するのが困難であること、及び一般にあまり抵抗力がないマイカ上のガラスの密着性にある。
【0018】
ガラスがマイカに浸透される複合ガスケットを有し、それによってマイカの圧縮ガスケットの性質を向上させるが、しかし複雑な方法を必要とし、且つ既に成形されたマイカの細孔にガラスを浸透させることを困難にするマイカの細孔の減少した大きさの理由で適用するのが非常に困難であるという欠点を有する特許文献3についての言及もなされてよい。
【0019】
その主面の両方がガラスで覆われるセラミックの塊状の連続コアから成る複合ガスケットを図示する特許文献4について述べることができ、更に、板の主面の両方をガラスが覆うだけであり、これらの面の両方の表面が任意選択で機械加工されるガラス/例えばマイカ支持板複合ガスケットを示す特許文献5について述べることができる。後者の継手の欠点は、それがその厚さにおけるガス漏洩を遮断する可能性を与えないことである。
【0020】
最後に、繊維及びセラミック、ガラス粉末及び結合剤などの様々な構成要素を持つ複合ガスケットを図示する特許文献6について述べることができる。このガスケットの欠点は、それが成形され、且つ封止されるべきチャンバを汚染することがあり、またその多様性が無制御の膨張係数及び故障の危険性をガスケットに与える構成要素から成るように長い一連のステップを必要とすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2522639号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0311570号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/024280号
【特許文献4】国際公開第2013/144167号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0068602号明細書
【特許文献6】国際公開第2004/059761号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】V. A. C. Haanappel et al., Behavior of various glass-ceramic sealants with ferritic steels under simulated SOFC stack conditions, Journal of Power Sources 150 (2005) 86-100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、SOFC又はSOEC型の電気化学装置の2つの金属範囲と接触して装着されるように使用されてよい封止ガスケットであって、
− ガラス又はガラスセラミック型の少なくとも1つの材料を備える、ガスケットを封止するための手段と、
− 封止手段を支持し、且つ2つの平行主面と、外周縁と内周縁とを有する電気絶縁支持手段とを備え、ガスケットが、封止手段で少なくとも部分的に覆われるこれらの主面を通してこれらの範囲に対して装着されることが可能であり、
これにより、特に上述の問題の適用し易く安価な実際的な解決策を表し、且つ特に例えばおよそ120×120〜150×150mm
2程度の大きい表面領域を持ち、そして800と900°C間に典型的に構成される運転温度を持つセルのための優れたシールを得る可能性を与えることによって、上述の欠点の全体を矯正する、ガスケットを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的のために、本発明に係るガスケットは、封止手段が上記主面の一方から他方まで支持手段を通して連続的に延在することによって上記内周縁と上記外周縁との間で支持手段を分割し、その結果封止手段はこれらの範囲を互いに直接接続する。
【0025】
「内周縁」及び「外周縁」によって、本説明において、互いに独立して楕円形(これらが円周縁であれば、例えば円形)又は多角形(例えば正方形)でよい内外周に沿って延在する縁が非制限例としてそれぞれ意味される。
【0026】
したがって互いに向き合うこれらの範囲の両方に支持される封止手段による支持手段を完全に通してのこの横分割が、ガスケットの厚さにおけるガス漏洩を封止する、これらのあふれを扱うことによって付着されるガラス型の材料の量を制御する、この材料をそれが必要とされる所に正確に位置決めする、且つ最後に優れた品質のガラス/金属型の金属/材料シールを生成する可能性を与えることに留意されたい。支持手段のこの封止分割によって、以下で説明されるように、支持手段を多孔質材料などの非封止材料とすることが可能である。
【0027】
本発明に係るガスケットのこの構造が、電気化学装置内のそれらの適用の大きな単純性を可能にし、また有利には、熱サイクルで得られる封止に対する不利益ではないという利点を有する、膨張係数が金属範囲のそれに非常に近いガラス型の上記材料である、充分な封止を提供する単一の構成要素を必要とすることにも留意されたい。
【0028】
この封止分割が、支持手段の材料の縁におけるガス漏洩を抑制する、且つガラス又はガラスセラミック型の材料の厚さが大きいので装置の短絡を引き起こすことがある隣接する金属範囲の酸化を防止する可能性を与えることに更に留意されたい。
【0029】
本発明の別の特徴によれば、支持手段は、封止手段を受ける所定の幾何学的形状を持つ少なくとも貫通溝を形成するフレームを通しての穿孔表面を画定するように機械加工される多孔質材料の一体フレームを備えてよく、上記少なくとも1つの溝が上記主面の一方から他方まで連続的に延在する少なくとも1つの封止隔壁を形成する封止手段で充填される。
【0030】
上記又は各それによって機械加工された溝が、有利にはこの一体フレームから成る支持手段内で封止手段のガラス型の材料を最適構成に従って(すなわち正確に必要とされる所定の位置に)正確に位置決めする可能性を与えることに留意されたい。このガラス状(又はガラスセラミック、したがって部分的に結晶性)材料は次いで金属範囲に優れた方式で付着する封止隔壁を形成し、これは上記又は各隔壁の抵抗を増加させる。上記又は各シール隔壁の寸法(すなわちフレームの主面に垂直に測定される横高さ及びこれらの面と平行に測定される幅)は、それらがフレームに最初に作られた孔又は切欠きのそれらに対応するので、完全に制御下であり、そしてしたがって各々幾つかの封止隔壁の形成について低い嵩張りを提供する小さな幅(典型的に1mm)を有する隔壁を生成することが可能である。
【0031】
上記又は各封止隔壁が支持フレームの材料(例えばマイカ)によって含まれ、それは必然的に流動するためにはこのフレームと対向する金属範囲との間に滑り込まれるべきであることにも留意されたい。この滑りは非常に困難であるので、ガラス型の封止手段の封じ込めがそれによって得られ、これは優れたシールを提供し、1バールを上回る(すなわち10
5Paよりも大きい)圧力に維持することが可能である。フレームの上記又は各穿孔溝は、本発明に係るSOEC又はSOFC装置の上記又は各ガスケットを運転時の温度を上回る温度で適所に配置するための段階の間、封止手段のあふれを受けるように適合され、このあふれが両金属範囲間に上述の封止隔壁を形成する。
【0032】
以下で更に詳細に説明されるように、本発明に係るガスケットは装置の、そしてその任意選択のセルの積み重ねの装着の前に準備されてよいことに更に留意されたい。
【0033】
本発明の別の特徴によれば、上記少なくとも1つの溝の上記表面は、上記主面に対して全般的に垂直で、且つ上記内外周縁と全般的に同心の周方向に、上記周方向に沿って連続的に又は不連続的に延在してよく、上記フレームから成るタブが、上記少なくとも1つの溝の各々の側に、溝をフレームの残りに又は別の所謂隣接する溝に接続するために形成されてよく、各タブは上記少なくとも1つの溝の体積よりも小さい体積を有する。
【0034】
「全般的に同心の周方向」によって、本説明において、その主面に対する平行フレームに内部の平面における断面図で見て(すなわち、フレーム内部の中間水平面で見て)、1つ又は幾つかの直線(例えば破線及び/又は点線として)、湾曲して及び/又は断続的の形態でフレームの上記内周縁を取り囲む方向が意味される。
【0035】
これらのタブは、このフレームを単一の部品に維持する可能性を与える、切られていないフレーム部分から成り、それによって互いに対する正確な位置決めは不可能であろう幾つかのブロックの組立てを回避することに留意されたい。これらのタブは、フレームの機械的保持及びその内部のガス漏洩の最小化を両方とも許容するように適切に位置決めされる。
【0036】
好ましくは、上記タブは、上記範囲によって形成されるインタコネクタによって分配されるガスの経路長及び/又は上記フレームの上記多孔質材料を通してのこれらのガスの圧力低下を最大化するように、上記少なくとも1つの溝の各々の側に、例えば千鳥配列に従って径方向に角度的にずらされる。
【0037】
「径方向」によって、本説明において、実質的にフレームの中央を通り且つこのフレームの対称軸に対して垂直であるフレーム内の方向が意味される。
【0038】
本発明の第1の実施例によれば、上記少なくとも1つの封止隔壁は上記周方向に連続的に延在し(フレームに内部の水平面で見て)、上記タブがそれぞれ上記外周縁に向けて及び上記内周縁に向けて上記少なくとも1つの溝の各々の側で延在する。
【0039】
この第1の実施例によれば、本発明に係るガスケットは、有利には上記放射タブを通して互いにペアで接続される少なくとも2つの所謂同心の封止隔壁を備えてよい。
【0040】
本発明の第2の実施例によれば、上記少なくとも1つの封止隔壁は上記少なくとも1つの周方向に不連続的に延在する(フレームに内部の水平面で見て)と共に、上記タブによってこの周方向に互いにペアで接続されてよい複数の分割部分を形成する。
【0041】
この第2の実施例によれば、本発明に係るガスケットは、有利には、
− 上記フレームを横断する上記溝に収容される上記複数の分割部分が各々形成される少なくとも2つの上記封止隔壁であって、上記フレームが、曲線、直線(例えば上述の破線のような)、波形幾何学的形状に従って及び/又は断続線として機械加工され、且つ封止手段で充填される、そうでなければ代替処理される、封止隔壁と、
− それぞれ上記フレームを横断する多数の、例えば円筒状の、穴(例えば上述の点線のような)が形成され、上記内周縁と上記外周縁との間に一定の間隔で機械加工される所謂溝を形成し、且つ封止手段で充填される多数の上記封止隔壁とを備えてよい。
【0042】
この第2の実施例を参照して、多くの線構成、特にフレームの厚さにおいて循環するガスの経路長を最大化する可能性を与える任意のパターン、又はフラクタル型のパターンさえ使用されてよいことに留意されたい。
【0043】
本発明の別の優先的特徴によれば、上記封止手段はガラス又はガラスセラミック(すなわち大部分が重量で又は排他的にガラス・ペーストを含む)に基づいており、そして上記支持手段が、上記フレームを形成する且つ多孔質セラミック及び多孔質鉱物、好ましくはマイカによって形成される群から選択される多孔質材料の機械加工された薄板から成る。
【0044】
本発明に係るフレームの封止分割によって、このフレームは漏出防止であることが必要ではなく、一般的な多孔質材料、例えば以下のものの使用が可能になることに留意されたい。
− 多孔質セラミック(例えば多孔質アルミナであるMacor)。実際、多孔質セラミックの利点は、それらが容易に機械加工可能であり、またそれらが100%稠密でないときに一般により低価格であることであり、又は
− マイカなどの無機多孔質材料、これらは知られている方式では層状組織を有するアルミノケイ酸塩鉱物の群を含み(マイカは温度において比較的安定で、機械加工が簡単であり、安価で、電気絶縁性である)、且つ多数の化合物の下に存在し、その最も一般によくあるものがバイオタイプ(例えば公式K
2(Mg,Fe)
2(OH)
2(AlSi
3)
10)、フクサイト(すなわち鉄が豊富なバイオタイプ)、レピドライト(例えば化学式LiKAl
2(OH,F)
2(Si
2O
6)
2)、マスコバイト(例えば化学式KAl
2(OH)
2(AlSi
3O
10))そしてフロゴパイト(例えば化学式(KMg
3Al).(OH)Si
4O
10)。
【0045】
本発明による、特に固体酸化物形燃料電池(SOFC)型又は固体酸化物形高温水蒸気電解槽(SOEC)型の電気化学装置内の上述のようなガスケットを製造して組み立てるための方法は、
a)上記主面の一方から他方まで支持手段を通して連続的に延在する、上記内周縁と上記外周縁との間の上記少なくとも1つの溝を穿孔するために、支持手段を機械加工することと、
b)組立て前にガスケットのブランクを得るために、ガラス・ペースト(更に「ガラススラリー」と呼ばれる)などの封止手段を上記主面上及び上記少なくとも1つの溝内に付着させることと、
c)封止手段を溶解させると共にそれを適所に維持するために、600℃と900℃との間に含まれる温度で且つ数kPaの印加圧力下で、ガスケットを装置の少なくとも1つのセルのスタック内で組み立てることとを備える。
【0046】
各封止ガスケットを形成する単一の部品の本発明に係る使用が、本発明の電気化学装置の装着の間、積み重ね段階の殆ど全てのガスケットを共に単一のステップで適所に配置する可能性を与えることに留意されたい。
【0047】
本発明に係る固体酸化物形の燃料電池(SOFC)又は固体酸化物形の高温水蒸気電解槽(SOEC)の電気化学装置は、
− 水素電極−電解質−酸素電極接合体を備え、且つ2つのチャンバの境界を定める少なくとも1つのセルと、
− 上記電極と接触してそれぞれ位置決めされる、上記少なくとも1つのセルとの少なくとも2つの電気接点要素と、
− 上記少なくとも1つのセルに電流、並びに水蒸気、二酸素、二水素及び任意選択でキャリア・ガスなどのガスを分配し、且つ幾つかの所謂セルの場合、その間の接合を確保するインタコネクタを形成する少なくとも2つの金属範囲と、
− 一対の上記インタコネクタと接触して各々装着されるシール・ガスケットとを備え、
そして、この装置は少なくとも1つのこれらのガスケットが本発明に関連して上記定めた通りであることを特徴とする。
【0048】
有利には、上記ガスケットの全体が電気絶縁性であり、これらのガスケットは上記少なくとも1つのセルのチャンバ間の封止を確保する第1のガスケットと、入口ガスの及び出口ガスのそれぞれの供給間の封止を確保する第2のガスケットと、外部雰囲気との上記少なくとも1つのセルの封止を確保する第3のガスケットとを備え、上記第2及び第3のガスケットは上記定めた通り本発明に係るものである。
【0049】
本発明の他の特徴、利点及び詳細は、限定としてではなく例示として与えられる、本発明の幾つかの例証的な実施例の以下の説明を読むことで明らかになるであろう。当該説明を添付の図面を参照しつつ行う。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】電気化学装置SOEC又はSOFCにおける本発明に係るシール・ガスケットの典型的な例証的な位置を図示する、この装置(鉛直面における)部分概略片側横断面図である。
【
図2】例えば
図1の装置に含まれ且つ2つのインタコネクタと接触して装着される本発明に係る複合ガスケットの準備の第1の段階を図示する部分概略片側横断面図である。
【
図3】2つのインタコネクタと接触する
図2のガスケットの準備のその後の段階を図示する部分概略片側横断面図である。
【
図4】上記第2の実施例に係るガスケットの、ガスケットの主要面に平行であるその内部の断面における概略水平断面図である。
【
図5】本発明の上記第1の実施例に係るガスケットの半分の写真であり、支持フレームの円形溝を封止手段で充填することを図示する。
【
図6】本発明の上記第1の実施例に係るガスケットの半分の写真であり、別の隣接する溝を充填することを図示する。
【
図7】
図6と同一の写真であるが、ガスケットを通してガス経路のために角度的にずらされるフレームのタブの利益を矢印によって更に概略的に例示する。
【
図8】本発明の上記第2の実施例に係るガスケットの様々な代替例の、ガスケットの主要面に平行であるその内部の断面における概略水平断面図である。
【
図9】本発明の上記第2の実施例に係るガスケットの様々な代替例の、ガスケットの主要面に平行であるその内部の断面における概略水平断面図である。
【
図10】本発明の上記第2の実施例に係るガスケットの様々な代替例の、ガスケットの主要面に平行であるその内部の断面における概略水平断面図である。
【
図11】本発明の上記第2の実施例に係るガスケットの様々な代替例の、ガスケットの主要面に平行であるその内部の断面における概略水平断面図である。
【
図12】本発明の上記第1の実施例に係るガスケットの代替例の、ガスケットの主要面に平行であるその内部の断面における概略水平断面図である。
【
図13】ガラスで充填されるマイカ・フレームを持つ
図2に係るガスケットが装備される120x120mm
2のセルを持つSOEC装置の試験の電流ー電圧(IV)曲線を図示するグラフである。
【
図14】SOECセルに対する500ミリバール(50,000Pa)の過圧下で、
図12のこのマイカ/ガラス・ガスケットによる、時間の経過につれて生成された二水素及び回収された二水素の質量流量を図示するグラフである。
【
図15】
図12のものに同様のガスケットの内部の、このガスケットの両ガラス隔壁の二酸素及び二水素ガスに対する障壁効果を例示するための、その運転後のSOECセルの分解後の水平断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1の実例において部分的に例示する電気化学装置1は、
− 各々水素電極−電解質−酸素電極接合体(不図示)から成るセル2と、
− セルのための2つのチャンバ5及び6の境界を定める各セル2との電気接点要素3及び4と、
− 電流を導き、そしてガス(例えば水蒸気、二酸素、二水素、及び任意選択で二窒素又は空気などのキャリア・ガス)を電極に分配し、且つ両隣接するセル2間の接合を確保する金属インタコネクタ7、8、9、10、11、12と、
− 各セル2の両チャンバ5及び6間の封止を確保する第1のガスケット13と、入口及び出口ガス供給間の封止を確保する第2のガスケット14と、外側との装置の封止を確保する第3のガスケット15とを備える、いかなる短絡も回避するために電気絶縁性である封止ガスケット13、14、15とを備える。
【0052】
図2及び3に見えるように、本発明に係るガスケット20は、例えばマイカの薄板の形態の電気絶縁一体フレーム24の両平行主面22及び23上に(フレーム24の面22及び23は外周縁22a及び内周縁23aを通して共に接続される)、有利にはガラス・ペーストから成る封止手段21を付着させることによって作られる。本発明によれば、この薄板24は、そこに1つ又は幾つかの貫通孔25、26をこれらの面22及び23の両方に開放する所定の幾何学的形状で経路付けるように事前に機械加工される。それによって付着されたガラス21は、
図1の装置1に関して初期に言及したものなどのインタコネクタ28及び29に支持される封止ガラス隔壁27をそこに形成するようにフレーム24の孔25、26を充填するであろう。
【0053】
図4に見えるように、本発明に係るフレーム34に対するガスケット30の切欠きされない部分(空白線に見える)から成るタブ33がフレーム34を一体に維持する可能性を与える。切り欠くこと(矩形の区画が封止ガラス37、38で充填された孔35、36によって白に例示される)が連続的であれば、本例証的な実施例においては、実際のところ1つだけの代わりに組み立てられるべき6つの部品があり、それらの互いに対する正確な位置決めは不可能であろう。タブ33はフレーム34の機械的保持及びその内部のガス漏洩の最小化を両方とも許容するために適切に位置決めされ、そしてこれらのタブ33はこのフレーム34を組み込むガスケット30の周及び/又は横方向に孔35、36を充填する封止ガラス隔壁37、38の不連続を生じさせる。
【0054】
フレーム34のために優先して使用される材料(例えばマイカ)が多孔質であるので、各タブ33はフレーム34の厚さにおけるガス漏洩の中心でよく、これを出願人は
図15の写真に実証した。実際、この
図15は、タブが小さい程、ガスのための通過区画は小さくなり、そしてこれらのガスの漏洩はそれだけ少なくなることを図示する。しかし、タブ33はフレーム34の取扱いの間に破損しないように、小さすぎる必要はない(すなわち薄すぎも、狭すぎもない)ことが留意されるべきである。この文脈において、
図4に図示する幾何学的形状は、ガスケット30の漏洩を最小化するために各タブ33の幅を最小化する可能性を与える例証的な実施例である。
【0055】
図5〜7の写真に例示するように、本発明に係るガスケット用のフレームは周方向(例えば円周方向)に少なくとも1つの連続又は不連続線に従って、また好ましくはガラスで(白く)充填された後で、ガスの通過を全体として防止するように同数のシール隔壁として画定する(
図6参照)溝を形成する複数の線で穿孔される。更に、それらの間に溝を接続するタブはずれた状態で角度的に位置決めされ(すなわち千鳥状にされ)て、フレームにおけるガスの経路長を最大化する(これらのタブを通してのガスの波状経路を概略的に例示する
図7の矢印参照)且つガスケット内の圧力低下を増加させる。
【0056】
したがって、そして
図8及び9を参照すると、不連続な封止分割部分47、48間に周方向に作られる千鳥状タブ43を伴って
図8の実例に従って作られるフレーム44を持つガスケット40は、同じく不連続な封止分割部分57、58間の径方向に整列されるタブ53を伴って
図9に従って作られるフレーム54を持つガスケット50のそれらよりも非常によいガスに対する封止結果を有する。
【0057】
図10に例示するように、本発明に係るガスケット60のフレーム64に、各々付属タブ63と非直線(例えば断続的又は波状)である幾つかの列の全般的に同心の溝が、これらの溝を充填してフレーム64の機械的強度を増加させる封止隔壁67、68の大きさを増加させるために、代わりに提供されてよい。
【0058】
図11に例示するように、切欠き線を有する代わりに、規則的に離間され且つ例えば円形断面である多数の横穴75が穿孔されるフレーム74を持つガスケット70を有することが可能である。これらのガラス穴75は、例えば多数の同心の列に沿った同数の整列される封止隔壁77として形成するように充填される。これらの穴75は、作るのが及び規則的な列として配置するのが容易である利点を有する。各穴75の制限大きさはガラスの毛細管現象によって与えられ、それは表面に残ることなく穴75を充填しなければならない。
【0059】
本発明の上述の方法及び例証的な実施例の全体を参照して、ロボット及び空気シリンジによって使用される封止手段は、有利には市販のガラス粉末の混合物である、例えばG018型のガラス・ペースト(例えば、エタノール型の溶媒と及びテルピネオール型の結合剤と混合されるSchott G018−311型のガラス粉末)として付着される。ガラス・ペーストは実験室でこの市販のガラス粉末から調製され、そしてそれは2つの穿孔間のフレームの固体部分上に付着され、これは一方ではガラスが制御あふれに従ってフレームの孔又は溝へあふれることを許容し、他方では付着を容易にして、そしてこの付着後のフレームの取扱いを許容する。ガラスは、それが電気化学装置のスタックのガスを供給する領域へあふれ出ることがあるので、他の場所には付着されない。容易に扱われてよいので、ガラス・ペーストの付着の前後に容易にフレームを量ることが可能であり、これはそれによって付着されるガラスの量を容易に且つ正確に定量する可能性を与える。
【0060】
付着されるガラスのこの量は、支持フレームの孔又は溝を充填するために必要とされる量に対応するため、できるだけ適正に計算される。充填されるべき孔又は溝の体積が計算され、そしてこの充填のために必要とされる正確な量のガラスが付着される。
【0061】
しばしば、インタコネクタ間の間隔の公差はおよそ50μm程度である。一切穴のないマイカ・フレームに関して、100μmのガラス高さに対する50μmの高さの不確実性は、それが望ましくない位置であふれをもたらす50%であるので、非常に重大である。本発明の溝に関しては、これらの溝に付着されるガラス体積が著しいので、これらの50μmは約数%のガラスの超過に至るだけであろう。したがって、本発明は、一連の側で高さ変動をそれ程重大ではない範囲に収める。
【0062】
出願人はその上、マイカ・フレームの部分を交差方式で切り欠くのではなく、このフレームに凹ませて(すなわち横方向に行き止まり)、本発明に準拠しない比較試験を行った。これらの比較試験はそれによってこれらの凹部を充填して得られる「制御」ガスケットをもたらし、実験結果は明らかにそれ程良好ではなかった、すなわち0.2バール(すなわち20,000Pa)にすぎない圧力に対する最大抵抗及び熱サイクルに対しては抵抗力がない。
【0063】
本発明に係るガスケットを製造するために、例えば以下の連続するステップを適用することが可能である:
− フレームを電気絶縁体、例えば薄板厚さが0.1mmと数mmとの間に含まれるマイカ薄板(例えばFlexitallicからのthermiculite866(登録商標)の商品名をもつ)とすること。代わりに、このフレームは任意の他の機械加工可能な電気絶縁材料から成ってよい;
− ミリングによって、又は代わりに例えばレーザ、ダイスタンプ法で、又はカッタでなど、良好な表面状態を与える任意の他の手段によって、薄板の一方の主面から他方まで貫通孔を作ること;
− フレーム、ガラス・ペースト及びセル・ペースト(ガラス・ペーストは例えばSchott G018−311ガラス粉末、エタノール型の溶媒、及びテルピネオール型の結合剤の混合物である)を組み立てることであって、ガラスがロボットによってフレーム上で、第1の面に対しては2つの溝間に構成される領域上に付着されること、且つ数時間の自由空気中での乾燥後、ガラスが第2の面上に付着されることが規定され;
− ガラスを溶解させて、それを適所に配置するために、およそ900℃程度の温度(この温度は選択されたガラス、ガラス製造者によって与えられる、使用されるべき温度範囲に依存する)で、それによって得られたガスケットを電気化学装置(
図1参照)のスタック内に装着すること。この目的のために、数kPaの負荷が、
図1の接点要素3及び4を適所に配置するように温度調整の前か又は後にスタックに均等に加えられる。ガラスはこれらの温度ではあまり剛性ではないためにそれは圧潰に対して極めて低い抵抗を提供するだけであるので、この負荷の僅かな部分はガラスを適所に配置するために使用される。負荷は試験の継続の全期間維持され、そしてその運転を可能にするために、次いでスタックはその運転温度(例えば800℃)に冷却される。
【0064】
決定した切欠きに従うフレームの使用が、本発明に係るガスケットを形成するガラスに基づく封止手段を支持するコアを容易に得る可能性を与え、そしてこれが特に各ガラス隔壁の高さを低減させることによって、そしてしたがってより大きいガラス高さで得られるものと比較して、得られるガスに対する封止に関してガスケットの効率を向上させることによって、その高さを微細に制御する可能性を与えることに留意されたい。
【0065】
更に、本発明に係る支持フレームの使用は、ガラス隔壁から、そして次いでガラス−マイカ複合材から成る障壁の交互配列を可能にする。出願人は、連続する障壁が、それらがガスケットの全体で一切封止の損失のない障壁の損失を許容するという点で、ガスに対する封止への確実な作用を有することを示した。
【0066】
図12は、120×120mm
2のセルを持つSOEC装置に行われる本発明による試験を例示し、これはこのセルを含むSOEC装置に電流を印加することにあり、セルは封止ガラス隔壁87及びタブ83を一体化するフレーム84を持つ本発明に係るガスケット80が設けられた。得られる優れた封止は、ガスの100%がセルに送られる可能性を与えた。したがって、電流電圧曲線が得られ、
図13に見られる。送られるガスの一部分がセルに到達しなければ、
図13に図示するものとは異なり、曲線IVは線形ではないであろうことが留意されるべきである。
【0067】
印加電流に従って生成される二水素(H
2)の理論量が容易に計算され、また二水素の回収量が測定された。
図14に見えるように、500ミリバール(すなわち50,000Pa)の過圧下で生成された二水素でさえ100%が回収されたことが見いだされる。この試験は400運転時間以上の間200ミリバール以上の(すなわち20,000Pa以上)の下で行われ、そして封止はそれが変更されることなくこの期間の間維持された。得られた封止はしたがって優れていた。更に、これらの封止は数時間の間500ミリバール以上の(すなわち50,000Pa以上)の過圧に耐えた。50,000Paが任意の封止の損失をもたらしたことによって、したがって試験はこの過圧外では停止された。
図14に図示するように、50,000Paの過圧下のIV試験の間に生成された二水素の100%が回収された。
【0068】
出願人は、この試験のために使用されるセルの分解の間に本発明のこの実例に係るマイカ−ガラス複合ガスケットの「障壁」効果を
図15の写真に示した。実際のところ、この
図15では:
− 二水素はマイカを灰色/白色に着色すること。したがって、白色マイカは水素化雰囲気の証拠であり;そして
− 二水素は保持タブにおける第1のガラス障壁を通過するが、第2の障壁を通過しないので、H
2及びO
2チャンバは共に実際には互いに対して漏出防止である(二水素漏洩が存在した場合、マイカは完全に着色され、二水素は非常に容易に拡散する)ことが分かる。