(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、少なくとも前記容器内において前記第1ポンプ室及び前記第2ポンプ室に面する領域も、前記樹脂でコーティングされていることを特徴とする請求項3に記載の液体供給システム。
前記第2ベローズに対して伸縮方向に直列に配置される第3ベローズであって、外側が前記第2のポンプ室となり、内側が前記容器の外部に開放されるように、一方の端部が前記容器に固定されるとともに、他方の端部が前記第2ベローズの前記第2端部に連結され、前記第2ベローズの伸縮にともなって伸縮する第3ベローズをさらに備え、
前記軸は、前記第3ベローズの内側を挿通されて前記第2端部に連結され、
前記第3ベローズにおいて前記第2ポンプ室に面する領域も、前記樹脂でコーティングされることを特徴とする請求項3または4に記載の液体供給システム。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導ケーブルなどを超低温状態に維持するため、液体窒素などの超低温の液体を超電導ケーブルなどが収容された真空断熱管に供給する技術が知られている。超低温液体の液体供給(循環)システムは、真空断熱管の内部に超電導ケーブルが備えられた被冷却装置に対して、超電導ケーブルを超電導可能な状態で維持させるために、真空断熱管内に超低温の液体を常時供給するものである。
【0003】
従来、超低温の液体循環システムは、液体のみを循環させることを想定して使用されるケースが多く、その場合のポンプ機構として、代表的には遠心ポンプが採用されることが多かった。しかし、用途としては、金属粉、石、セラミックなどの固体粒子を含んだ超低温スラリー液を移送することも考えられ、これに対応した超低温液体循環システムが要求される。
【0004】
遠心ポンプは吐出圧が比較的低いため、高濃度のスラリーを供給することが難しい。また、インペラなどの回転部品はスラリーに対する相対速度が大きいため、摩擦力が大きく磨耗しやすい。また、回転部の隙間に固体粒子を噛み込んで、ロックしやすくなる。また、遠心ポンプよりも高い吐出圧を実現できるポンプ構成として、金属製のベローズ部材を用いた極低温用ベローズポンプが知られている(特許文献1)。しかし、送液対象がスラリーを含む液体の場合、スラリーが金属製のベローズに当たることで損傷したり、蛇腹部分に噛み込むことで金属材料を損傷する恐れがある。
【0005】
スラリー等の沈殿物質を含む移送液を使用する液体供給システムとして、樹脂製のベローズを用いたものが知られている(特許文献2)。しかし、樹脂製ポンプの場合、金属材に比べ、柔軟性が悪く、ストローク量が確保できないため、多くの流量を供給するのに必要なポンプ性能が得にくく、また、金属材に比べ、座屈する可能性がある。
【0006】
また、スラリー対策として、従来からゴムなどの弾力性を有するエラストマーによって、液体供給システムの接液箇所を被覆する方法が知られている。弾力性を有する被覆により固体粒子などのスラリーの衝撃が緩和されるため、室温近傍ではスラリーに対して耐摩耗性を示す。しかし、ガラス転移点以下となる超低温環境下では、ゴムはガラス状になり弾力を失うため、超低温スラリーに対して耐摩耗性を有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、スラリーを含む超低温の液体を送液対象とする場合でも、安定したポンプ動作を実現することができる液体供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明における液体供給システムは、
ベローズの伸縮によって、スラリー成分を含む超低温の液体を供給する液体供給システムであって、
前記ベローズにおいて少なくとも前記液体が接触する領域が、低温脆化温度が液体供給システムの使用温度以下の樹脂でコーティングされていることを特徴とする。
【0010】
ベローズにおいて超低温の液体が接触する領域が、システム使用温度よりも低温脆化温度の低い樹脂でコーティングされている。これにより、システムの液体供給動作においてベローズが伸縮する際に、液体の含まれるスラリーとベローズ表面との衝突や、ベローズ蛇腹部へのスラリーの噛み込みによってベローズが損傷することが抑制される。すなわち、ベローズの接液領域をコーティングする樹脂は、低温脆化温度がシステム使用温度よりも低いので、使用時おいて弾性を維持することができ、衝突したり噛み込んだスラリーに対して変形することにより、ベローズが損傷することを抑制することができる。
なお、超低温の液体としては、液体窒素や液体ヘリウムが挙げられる。
【0011】
本発明における液体供給システムは、
システムの外部と通じる第1通路から液体を吸入し、かつ吸入した液体をシステムの外部と通じる第2通路に送出するように構成された容器と、
前記容器の内部に伸縮方向に直列に配置された第1ベローズ及び第2ベローズであって、互いに近接する側のそれぞれの第1端部がそれぞれ前記容器の内壁に固定され、互いに遠い側のそれぞれの第2端部がそれぞれ伸縮方向に移動可能に構成された第1ベローズ及び第2ベローズと、
前記容器の内部に挿通されて前記第1ベローズ及び前記第2ベローズの前記第2端部がそれぞれ固定され、駆動源によって前記伸縮方向に往復移動することにより、前記第1ベローズ及び第2ベローズを伸縮させる軸と、
を備える液体供給システムであって、
前記容器内のうち前記第1ベローズの外側は第1ポンプ室となっており、該第1ポンプ室には、前記第1通路から液体を第1ポンプ室内に吸入する第1吸入口、及び吸入した液体を第1ポンプ室内から前記第2通路に送出する第1送出口が設けられ、
前記容器内のうち前記第2ベローズの外側は第2ポンプ室となっており、該第2ポンプ室には、前記第1通路から液体を第2ポンプ室内に吸入する第2吸入口、及び吸入した液体を第2ポンプ室内から前記第2通路に送出する第2送出口が設けられ、
前記第1ベローズ及び第2ベローズの内側は、密閉空間が形成され、
少なくとも前記第1ベローズにおいて前記第1ポンプ室に面する領域及び前記第2ベローズにおいて前記第2ポンプ室に面する領域が、低温脆化温度が液体供給システムの使用温度以下の樹脂でコーティングされているとよい。
【0012】
本発明は、軸の往復移動によって第1ベローズ及び第2ベローズの第2端部がベローズの伸縮方向に一体的に移動する構成となっており、軸の一方向の移動により、第1ベローズ及び第2ベローズのうち一方は縮んで他方は伸び、第1ポンプ室及び第2ポンプ室のうち一方に第1通路から液体が吸入され、他方から液体が第2通路に送出される。ここで、本発明では、第1ベローズ、第2ベローズにおける接液箇所、すなわち、各ポンプにおいて第1ポンプ室、第2ポンプ室に面する領域が、システム使用温度よりも低温脆化温度の低い樹脂でコーティングされている。これにより、液体にスラリーが含まれる場合であって、ポンプ動作においてベローズが伸縮する際に、液体の含まれるスラリーとベローズ表面との衝突や、ベローズ蛇腹部へのスラリーの噛み込みによってベローズが損傷することが抑制される。すなわち、ベローズの接液領域をコーティングする樹脂は、低温脆化温度がシステム使用温度よりも低いので、使用時おいて弾性を維持することができ、衝突したり噛み込んだスラリーに対して変形することにより、ベローズが損傷することを抑制することができる。
【0013】
また、ベローズが金属製の場合、金属製のベローズが直接液体と接触するよりも、コーティング樹脂が接触する方が、液体へ熱が伝わり難く、送液対象が超低温液体の場合においては、液体の昇温を抑制して低温状態に維持することができる。
【0014】
また、本発明によれば、軸の往復移動によって液体を第1ポンプ室及び第2ポンプ室から交互に連続的に供給することができ、脈動を抑制した液体供給が可能である。このポンプ動作において、第1ベローズ及び第2ベローズの内側(内周面)に作用する圧力が変化しない場合は、ベローズに座屈が発生することを抑制することができ、より安定したポンプ動作を実現することができる。
【0015】
さらに、少なくとも前記容器内において前記第1ポンプ室及び前記第2ポンプ室に面する領域も、前記樹脂でコーティングされているとよい。
【0016】
これにより、容器内壁においても、液体に含まれるスラリーとの衝突による損傷、伝熱を抑制することができる。
【0017】
前記第2ベローズに対して伸縮方向に直列に配置される第3ベローズであって、外側が前記第2のポンプ室となり、内側が前記容器の外部に開放されるように、一方の端部が前記容器に固定されるとともに、他方の端部が前記第2ベローズの前記第2端部に連結され、前記第2ベローズの伸縮にともなって伸縮する第3ベローズをさらに備え、
前記軸は、前記第3ベローズの内側を挿通されて前記第2端部に連結され、
前記第3ベローズにおいて前記第2ポンプ室に面する領域も、前記樹脂でコーティングされるとよい。
【0018】
これにより、軸と容器との間に摺動部位を形成することなく、軸と各ベローズの第2端部とを連結し、各ベローズを伸縮させることができ、軸の摺動摩擦による発熱のない構成とすることができる。そして、かかる構成においても、コーティングした樹脂により、液体に含まれるスラリーとの衝突による損傷、伝熱を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スラリーを含む超低温の液体を送液対象とする場合でも、安定したポンプ動作を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
(実施例1)
図1を参照して、本発明の実施例に係る液体供給システムについて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る液体供給システムの概略構成図である。
【0023】
液体供給システム10は、低温流体用のポンプ装置であり、樹脂製の容器31の内部に超電導ケーブル32が備えられた被冷却装置30に対して、超電導ケーブル32を超伝導可能な状態で維持させるために、容器31内に超低温の液体Lを常時供給するものである。超低温の液体Lの具体例としては、液体窒素や液体ヘリウムを挙げることができ、それらが液体になる温度以下の温度を有する液体も挙げることができる。
【0024】
液体供給システム10は、概略、内部が真空にされた第1容器(外側容器)11と、第1容器11の内部に真空空間で囲まれるように配置される第2容器12とを備えている。第2容器12は、概略、内部に3つのべローズ41、42、43がそれぞれの伸縮方向に直列に配置され、これらベローズ41〜43により容器内部が3つの密閉空間に仕切られている。第2容器12は、第1容器11の外部から第1容器11の内部に挿通された支持部材51によって第1容器11の内部で支持されている。
【0025】
第1ベローズ41と第2ベローズ42は、同径であり、軸中心を一致させてそれぞれの伸縮方向に互いに直列に並んで配置されている。第1ベローズ41と第2ベローズ42は、互いに近接する側のそれぞれの端部(第1端部)41b、42bが、第2容器12の内壁に固定されている。また、第1ベローズ41と第2ベローズ42において互いに遠い側のそれぞれの端部(第2端部)41a、42aは、後述する軸15が固定されることで一体化されており、それぞれの伸縮方向に移動可能に構成されている。
【0026】
また、第3ベローズ43は、第2ベローズ42に対して第1ベローズ41とは反対側に直列に並んで配置されている。第3ベローズ43は、外径が第2ベローズ42の内径よりも小さく、伸縮方向において一部が第2ベローズ42の内側に入り込むように配置されている。第3ベローズ43の一方の端部43bは、第3ベローズ43の内側が第2容器12の外部に開放されるように第2容器12の内壁に固定されている。第3ベローズ43の他方の端部43aは、第2ベローズ42の端部42aと連結されており、第3ベローズ43は、第2ベローズ42の伸縮にともなって伸縮する。
【0027】
第1ベローズ41の端部41aは塞がっており、第2容器12内のうち第1ベローズ41の外側の領域によって形成される密閉空間が、第1ポンプ室P1を構成している。第2容器12内のうち第2ベローズ42及び第3ベローズ43の外側の領域によって形成される密閉空間が、第2ポンプ室P2を構成している。第2ベローズ42の端部42aと第3ベローズ43の端部43aとの間は塞がっており、第1ベローズ41の端部41bと第2ベローズ42の端部42bとの間は開放されており、第2容器12内において、第1ベローズ41の内側の領域と第2ベローズ42の内側の領域とが1つの密閉空間R1を構成している。
【0028】
第2容器12には、液体Lをシステムの外部と通じる戻り通路(戻り管)K2から第1ポンプ室P1内に吸入する第1吸入口21と、吸入した液体Lを第1ポンプ室P1内からシステムの外部に通じる供給通路(供給管)K1に送出する第1送出口22とが設けられている。また、第2容器12には、液体Lを戻り通路K2から第2ポンプ室P2内に吸入する第2吸入口23と、吸入した液体Lを第2ポンプ室P2内から供給通路K1に送出する第2送出口24も設けられている。また、第1吸入口21及び第2吸入口23には、それぞれ逆止弁100a、100cが設けられており、第1送出口22及び第2送出口24にも、それぞれ逆止弁100b、100dが設けられている。
【0029】
また、駆動源としてのリニアアクチュエータ14によって往復移動するように構成された軸15が、第1容器11の外部から第3ベローズ43の内側を通って第2容器12の密閉空間R1の内部に入り込み、第1ベローズ41の端部41aと第2ベローズ42の端部42aがそれぞれ固定されている。これにより、軸15が往復移動することによって、各ベローズが伸縮する。
【0030】
軸15は、第1容器11に設けられたベローズ52を介して、第1容器11の外部から内部に挿通された構成となっている。ベローズ52は、一端が第1容器11に固定され、他端が軸15に固定されており、軸15の往復移動に伴って伸縮するように構成されている。
【0031】
図2を参照して、液体供給システム10の動作について説明する。
図2は、本発明の実施例に係る液体供給システムの動作を説明する模式図である。
図2(a)は、ベローズ41、42が伸びる方向にも、縮む方向にも変位していない状態の第2容器12の内部を示す図である。
図2(b)は、第1ポンプ室P1に戻り通路(第1通路)K2から液体Lが吸入されるとともに、第2ポンプ室P2から供給通路(第2通路)K1に液体Lが送出されるときの状態、つまり、第1ベローズ41が最大に縮んだ状態、及び第2ベローズ42が最大に伸びた状態の第2容器12の内部を示す図である。
図2(c)は、第2ポンプ室P2に戻り通路(第1通路)K2から液体Lが吸入されるとともに、第1ポンプ室P1から供給通路(第2通路)K1に液体Lが送出されるときの状態、つまり、第1ベローズ41が最大に伸びた状態、及び第2ベローズ42が最大に縮んだ状態の第2容器12の内部を示す図である。
【0032】
第1ベローズ41が縮み、第2ベローズ42が伸びるように、軸15が移動すると(
図2(a)→
図2(b))、第2送出口24を介して第2ポンプ室P2内から液体Lが供給通路K1に送出され、かつ第1吸入口21を介して液体Lが第1ポンプ室P1内に吸入される。また、第1ベローズ41が伸び、第2ベローズ42が縮むように、軸15が移動すると(
図2(b)→
図2(a)→
図2(c))、第2吸入口23を介して液体Lが第2ポンプ室P2内に吸入され、かつ第1送出口22を介して第1ポンプ室P1内から液体Lが供給通路K1に送出される。このように、軸15が往復移動する際のいずれの方向においても液体Lが供給通路K1に送出される。
【0033】
図3の上段は、実施例1に係る液体供給システムの第2ベローズ42にかかる圧力の変動を概略的に示す図であり、
図3の下段は、第1ベローズ41にかかる圧力の変動を概略的に示す図である(ポンプ室から液体が吐出されていないときの圧力は説明の便宜上無視する)。本実施例では、密閉空間R1を真空空間としている。したがって、本実施例に係る液体供給システム10の第2ベローズ42にかかる圧力は、軸15の往復移動による各ベローズの伸縮にともない、
図3に示すように、ゼロと最大吐出圧(P吐)との間の交互に行き来するように変動する。ここでは、最大吐出圧(P吐)が1MPaの場合の圧力変動を示す。また、
図3において、(a)は
図2(a)の軸15の変位位置に対応し、(b)は
図2(b)の軸15の変位位置に対応し、(c)は
図2(c)の軸15の変位位置に対応する。ベローズ41,42にかかる圧力はベローズ外部の圧力とベローズ内部の圧力との差圧であり、本装置起動前の軸15の変位が無い状態ではポンプ室内に液体を吸入、吐出しておらず、ベローズ41,42の外部圧力と内部圧力の差は無いため、ベローズにかかる圧力は0であり、(b)の状態に近づく(第1ポンプ室P1が吐出し、第2ポンプ室P2が吸入を行う)につれ、第2ベローズ42にかかる圧力が大きくなり、ベローズ外部が最大吐出圧(P吐)になった際、第2ベローズ42にかかる圧力は最大(P吐)になる。また、(c)の状態に近づく(第1ポンプ室P1が吸入し、第2ポンプ室P2が吐出を行う)につれ、第2ベローズ42にかかる圧力は小さくなり、吸入圧は0であるため、第2ベローズ42にかかる圧力は0になる。尚、この圧力変動は第1ベローズ41でも位相が異なるのみで、同様の挙動を示す。
【0034】
以上のように、液体供給システム10においては、軸15の往復移動及び各ベローズの伸縮動作の繰り返しによって、供給通路K1を通じて、液体Lが被冷却装置30に供給される。また、液体供給システム10と被冷却装置30とを繋ぐ戻り通路K2を通じて、被冷却装置30に供給された分だけ、液体供給システム10に液体Lが戻るように構成されている。また、供給通路K1の途中には液体Lを超低温の状態まで冷却する冷却機20が設けられている。このような構成により、冷却機20によって超低温まで冷却された液体Lは、液体供給システム10と被冷却装置30との間を循環する。
【0035】
以上説明したように、2つのポンプ室を有し、その2つのポンプ室から交互に流体を供給するため、各ベローズが縮む際、及び伸びる際のいずれにおいても液体Lが供給通路K1に送出され、各ベローズの伸縮動作による液体供給量を、例えば、第1ポンプ室P1のみでポンプ機能を発揮させた場合に比べて2倍にすることができる。そのため、所望の供給量に対して、第1ポンプ室P1のみでポンプ機能を発揮させた場合に比べて、一回分の供給量を半分にすることができ、供給通路K1内における液体の最大圧力を半分程度にすることができる。したがって、供給される液体の圧力変動(脈動)による悪影響を抑制することができる。
【0036】
また、第1ベローズ41と第2ベローズ42の内側に形成される密閉空間R1は、第1ベローズ41と第2ベローズ42が伸縮しても容積が変化せず(両ベローズの伸縮部分の内部空間の断面積が等しいため)、第1ベローズ41と第2ベローズ42に作用する内圧(それぞれの内周面に作用する圧力)が変化しない空間となっている。すなわち、本実施例に係る液体供給システム10は、ポンプ室が各ベローズの外側に配置され、ベローズの内圧変動による座屈の発生が生じない構成となっている。したがって、ベローズの耐圧設計において、内圧座屈を考慮する必要がなくなるため、設計自由度が高められ、吐出圧の高圧化を図ることができる。この本実施例の利点について、
図5及び
図6を参照し、従来例と比較して説明する。
【0037】
図5は、従来例に係る液体供給システムの動作を説明する模式図である。
図5に示すように従来例に係る液体供給システムにおいては、ベローズ61の内側と外側にそれぞれ2つのポンプ室P1、P2が形成された構成となっている。すなわち、軸15の移動によってベローズ61、62が縮むと(
図2(a)→
図2(b))、第2送出口24を介して第2ポンプ室P2内から液体Lが供給通路K1に送出され、かつ第1吸入口21を介して液体Lが第1ポンプ室P1内に吸入される。また、軸15の移動によってベローズ61、62が伸びると(
図2(b)→
図2(a)→
図2(c))、第2吸入口23を介して液体Lが第2ポンプ室P2内に吸入され、かつ第1送出口22を介して第1ポンプ室P1内から液体Lが供給通路K1に送出される。
【0038】
図6は、従来例に係る液体供給システムの吐出圧の変動を示す図である。尚、図において、ベローズ61の外向き方向にかかる圧力を正、ベローズ61の内向き方向にかかる圧力を負とする(ポンプ室から液体が吐出されていないときの圧力は説明の便宜上無視する)。
図6に示すように、従来例の構成では、第1ポンプ室P1と第2ポンプ室P1から交互に液体Lを吐出する際に、ベローズ61の内側と外側にそれぞれ交互に同じ大きさの吐出圧(P吐)が作用することになる。つまりベローズの内向き方向、外向き方向、に吐出圧(P吐)がかかることになる。したがって、本実施例と同じ最大吐出圧(1MPa)を得るための構成を考えると、その圧力変動は、本実施例の構成の2倍となる(
図3、
図6)。そのため、ベローズ61に要求される耐圧性能も、本実施例のベローズの2倍となる。また、従来例は、ベローズ61に内圧が作用する構成となっているため、吐出圧を高めようとするとベローズ61に作用する内圧も高くなってしまい、ベローズ61に座屈が発生しやすくなってしまう。一般的に、ベローズは外圧に対しては強いが内圧に対しては弱く、高い内圧が作用すると座屈を生じやすい。
【0039】
このように、本実施例によれば、各ベローズに作用する圧力が外圧のみとなることで、ベローズに内圧が作用する従来例の構成と比べて、ポンプ吐出圧の高圧化を図ることができるとともに、ベローズの伸縮動作の安定性を向上させることができる。したがって、ケーブルに配置するサーキュレータの台数を少なくすることができる。また、地形に高低差があっても液体を供給することができるので、ケーブル敷設の自由度が向上する。
【0040】
さらに、本実施例では、第2容器12の周囲を第1容器11により真空空間で囲む構造を採用している。したがって、第2容器12を囲む真空空間が伝熱を妨げる機能を発揮するため、リニアアクチュエータ14で発生する熱や大気熱が液体Lまで伝わってしまうことを抑制することができる。すなわち、液体Lの熱交換は、真空断熱容器である第1容器11の壁面からの熱輻射と、第2容器12の支持部材51や各通路を介した伝熱に限定され、液体Lへの侵入熱を少なくすることができる。また、仮に液体Lまで熱が伝わって気化したとしても、常に新しい液体Lが供給され、冷却効果もあるため、ポンプ室内部において液体Lが気化する温度まで上昇することを抑制することができる。したがって、ポンプ機能を低下させることもない。
【0041】
また、本実施例では、軸15が、第3ベローズ43における第2容器12に固定された端部43bとは反対側の端部43aを介して第2容器12の内部に挿通されて各ベローズと連結され、第3ベローズ43が軸15の往復移動に伴って伸縮するように構成されている。したがって、軸15と第2容器12との間に摺動部位を形成することなく、各ポンプ室P1、P2、密閉空間R1が形成されるため、摺動による摩擦抵抗に伴って、熱が発生してしまうということはない。
【0042】
また、本実施例では、第3ベローズ43は、外径が第2ベローズ42の内径よりも小さく、少なくとも一部が第2ベローズ42の内側に入り込むように配置され、入り込んだ部分もポンプ空間として使用することが出来るため、その分、空間を大きくする必要が無く第2容器12のサイズダウンを図ることができる。
【0043】
ここで、本実施例では、密閉空間R1を真空空間としているため、第2容器12の周りの真空空間と連通する構成としてもよい。
【0044】
また、本実施例では、密閉空間R1を真空空間としているが、密閉空間R1を気体で満たす構成を採用してもよい。
【0045】
密閉空間R1に封入する気体としては、例えば、ネオンガスやヘリウムガスなど、本システムの使用環境において液化、凍結などの状態変化が生じ難い気体を用いる。そして、密閉空間R1に封入する気体の圧力は、真空(−100kPa)から所望の吐出圧までの範囲(好ましくは、吐出圧の1/2)とする。
【0046】
図4は、変形例に係る液体供給システムの吐出圧の変動を概略的に示す図であり、上段が第2ベローズ42にかかる圧力変動、下段が第1ベローズ41にかかる圧力変動をそれぞれ示している。
図4は、密閉空間R1に吐出圧(P吐)の1/2の圧力の気体を封入した場合の吐出圧の変動を示している(ポンプ室から液体が吐出されていないときの圧力は説明の便宜上無視する)。吐出圧の変動幅は、上記実施例1と同じ1MPaであるが、ピーク値は、実施例1の1/2となっている。ベローズにかかる圧力は密閉空間R1の内部圧力とポンプ室P1,P2各々の空間との差圧であるため、密閉空間R1に吐出圧の1/2の圧力の気体を封入した場合、ベローズに係る圧力は、ポンプ室の最大圧力がP吐であるため、
P吐−(1/2)P吐
から、(1/2)P吐となる。また、密閉空間R1の圧力は(1/2)P吐だけでなく、2つのベローズの大きさ、2つのポンプ室の大小、等、仕様により適宜設定することができる。このように、ベローズ41、42内側に対して、封入気体で加圧することにより、ベローズ41、42に作用する圧力のピーク値を低減することができる。したがって、ポンプ吐出圧を高める高圧設計における設計自由度を高めることができる。
【0047】
ここで、
図7及び
図8を参照して、本実施例の特徴的構成について説明する。
図7は、本発明の実施例に係る液体供給システムにおける接液領域を示す模式図である。
図8は、本発明の実施例に係る液体供給システムにおける樹脂コーティング領域を示す模式図である。
図7において、ハッチングで示した領域が、本実施例に係る液体供給システム10における液体Lの流通領域である。また、
図8において、太線で示した領域が、本実施例に係る液体供給システム10における液体Lとの接液領域(樹脂コーティング領域C)である。
【0048】
本実施例に係る液体供給システム10は、システムの各構成における接液箇所を樹脂でコーティングしたことを特徴としている。コーティングする樹脂は、超低温環境下においても耐摩耗性を発揮できるもの、すなわち、システム使用温度よりも低温脆化温度が低いものを採用する。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミドなどが挙げられる。
【0049】
上記樹脂でコーティングされる箇所は、第1〜第3の各ベローズ41〜43のそれぞれの蛇腹部の外周面、第2容器12の内壁面全域から、各吸入口21、23、送出口22、24を介して、供給通路K1、戻り通路K2、逆止弁100a〜100dにおける接液面、また、軸15において、第1ベローズ41の端部41aが固定された第1フランジ部15a、第2ベローズ42の端部42aが固定された第2フランジ部15b、第3ベローズ43の端部43aが固定された第3フランジ部15cにおける接液面などとなる。コーティング領域に樹脂材料を吹き付けて塗布するなど、従来手法によりコーティングを施す。
【0050】
コーティング領域は、液体Lと接触する可能性がある箇所全ての領域とするのが好ましいが、少なくとも、システムにおける可動箇所、すなわち、システムにおいてスラリーを含む液体Lとの相対移動が積極的に生じる箇所はカバーするのがよい。
【0051】
本実施例によれば、システムの接液領域をコーティングする樹脂は、低温脆化温度がシステム使用温度よりも低いので、使用時において弾性を維持することができ、液体Lとの相対移動により衝突等するスラリーに対して変形することにより、システムの各構成が損傷することを抑制することができる。特に、ポンプ動作において各ベローズが伸縮する際に、液体Lの含まれるスラリーとベローズ表面との衝突や、ベローズ蛇腹部へのスラリーの噛み込みによってベローズが損傷することが抑制される。
【0052】
また、ベローズが金属製の場合、金属製のベローズが直接液体Lと接触するよりも、コーティング樹脂が接触する方が、液体Lへ熱が伝わり難く、送液対象が超低温液体の場合においては、液体Lの昇温を抑制して低温状態に維持することができる。
【0053】
なお、樹脂コーティング層は、被覆箇所に対して密着している必要はなく、特に、ベローズの金属表面との間には空隙があってもよい。すなわち、スラリーとの接触、衝突によるシステム各構成へのダメージを和らげることができればよい。したがって、システムにおける接液領域を全て樹脂コーティングした場合には、樹脂の袋の中を液体Lが流通するような構成となる。
【0054】
また、
図5に示す従来のポンプ構成では、ベローズ蛇腹部の内周面側にも樹脂コーティングが必要となるのに対し、本実施例におけるポンプ構成では、ベローズの接液箇所がベローズ蛇腹部の外周面のみとなるので、樹脂コーティングも蛇腹部外周面のみでよい。