【実施例】
【0052】
ベンゾピナコールのチタンアルコキシド開始剤の合成
テトラブチルチタネート0.053モル(18.02g)、ベンゾピナコール0.053モル(19.4g)、および、へキシレングリコール0.027モル(3.127g)を酢酸エチル250gおよびトルエン250gに溶解し、室温で約2時間混合した。黄褐色の液体に濃縮されるまで酢酸エチル、トルエン、および、発生したブタノールを50℃で真空蒸留(ロータリーエバポレーターを使用)により除去した。トルエン500gを添加し、ロータリーエバポレーター処理を繰り返した。トルエン500gを更に添加し、ロータリーエバポレーター処理を再度繰り返したところ、黄褐色の液体/ペースト状物質が得られ、40℃で乾燥して若干粘性のあるペーストにした。
【0053】
ベンゾピナコールのジルコニウムアルコキシド開始剤の合成
テトライソプロピルジルコネート0.053モル(17.3g)、ベンゾピナコール0.053モル(19.4g)、および、へキシレングリコール0.027モル(3.127g)を酢酸エチル250gおよびトルエン250gに溶解し、室温で約2時間混合した。透明な液体に濃縮されるまで酢酸エチル、トルエン、および、発生したi−プロパノールを50℃で真空蒸留(ロータリーエバポレーターを使用)により除去した。トルエン500gを添加し、ロータリーエバポレーター処理を繰り返した。トルエン500gを更に添加し、ロータリーエバポレーター処理を再度繰り返したところ、無色の固体が得られ、40℃で乾燥した。
【0054】
比較重合例1
コールズブレード(cowles blade)を使用して、ベンゾピナコールをPedigree 600Sに分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いで、得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表1に示す。このサンプルは80℃で1時間後、未硬化であった。
【0055】
比較重合例2
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。次いで、得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表1に示す。このサンプルは80℃で1時間後、未硬化であった。
【0056】
比較重合例3
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ベンゾピナコールをこの混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いで、得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表1に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、軟らかくかつ部分的に硬化しているのみであり、表面が非常に粘着質であった。
【0057】
比較重合例4
t−ブチルペルオキシベンゾエート(TBP)を、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。次いで、得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表1に示す。このサンプルは80℃で1時間後、未硬化であった。
【0058】
比較重合例5
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、t−ブチルペルオキシベンゾエートを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いで、得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表1に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、未硬化であった。
【0059】
比較重合例6
テトラブチルチタネート(TNBT)を、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、t−ブチルペルオキシベンゾエートを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いで、得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表1に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、未硬化であった。
【0060】
比較重合例7
テトラブチルチタネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いで、得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表1に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、軟らかくかつ部分的に硬化しているのみであり、表面が非常に粘着質であった。
【0061】
重合例1
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.50%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、t−ブチルペルオキシベンゾエートを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表1に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面に粘着性はなかった。
【0062】
重合例2
テトラブチルチタネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、t−ブチルペルオキシベンゾエートを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を90℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表1に示す。このサンプルは、90℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(わずかに粘着性あり)。
【0063】
表1は、TBP(t
1/2 142℃)のような熱的に安定なペルオキシエステル開始剤を使用して、ベンゾピナコールおよびチタンのような第4族遷移金属の存在下で、モノマーおよび不飽和ポリエステルを低温硬化することができることを実証している。Ti(IV)還元の触媒的なサイクルはベンゾピナコールによるTi(III)への還元により促進される。次いでこれが、TBPをフリーラジカル重合の促進に非常に効率的なペルオキシラジカルに還元する。これらの比較例は、TBP、ベンゾピナコールまたはチタン種を単独でまたは2種の混合物として使用することは、完全な低温硬化を促進しないことを実証している。ベンゾピナコールおよびチタンは低温硬化(DSC)を開始させるが、空気阻害および低反応エンタルピー(DSC)により完全な硬化が妨害される。
【0064】
【表1】
【0065】
重合例3
テトラブチルチタネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を90℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表2に示す。このサンプルは、90℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0066】
重合例4
テトラブチルチタネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで2%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を90℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表2に示す。このサンプルは、90℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0067】
重合例5
テトラブチルチタネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に0.5%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を90℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表2に示す。このサンプルは、90℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(わずかに粘着性あり)。
【0068】
重合例6
テトラブチルチタネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.1%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を90℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表2に示す。このサンプルは、90℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(わずかに粘着性あり)。
【0069】
重合例7
テトラブチルチタネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.1%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで2%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を90℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表2に示す。このサンプルは、90℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(わずかに粘着性あり)。
【0070】
重合例8
テトラブチルチタネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を90℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表2に示す。このサンプルは、90℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(わずかに粘着性あり)。
【0071】
表2に示す実施例3〜8は、ジクミルペルオキシド(t
1/2 154℃)のような熱的に安定なジアルキルペルオキシド開始剤を使用して、ベンゾピナコールおよびチタンのような第4族遷移金属の存在下で、これらが触媒量であっても、モノマーおよび不飽和ポリエステルを低温硬化することができることを実証している。Ti(IV)還元の触媒的なサイクルはベンゾピナコールによるTi(III)への還元により促進される。次いでこれが、ジクミルペルオキシドをフリーラジカル重合の促進に非常に効率的なペルオキシラジカルに還元する。ベンゾピナコールは少量で使用することができるが(実施例5)、若干硬化が少ない物質が生じた。また、性質改善は観察されなかったものの、ペルオキシドの量をより多くすることもできる(実施例4および7)。
【0072】
【表2】
【0073】
比較重合例8
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いで、得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表3に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、未硬化であった。
【0074】
重合例9
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を80℃で1時間硬化させ、また、Q200 Modulated DSCで試験した。結果を表2に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0075】
重合例10
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に0.5%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表2に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0076】
重合例11
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.25%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表2に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0077】
重合例12
テトラブチルチタネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルヒドロペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表2に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0078】
重合例13
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルヒドロペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表2に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0079】
重合例14
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.25%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ジクミルヒドロペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。ベンゾピナコールをこの混合物に1.0%濃度で添加し、均質になるまで混合した。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表2に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0080】
表3に示す実施例9〜14は、ジクミルペルオキシド(t
1/2 154℃)のような熱的に安定なジアルキルペルオキシド開始剤およびクメンヒドロペルオキシド(t
1/2 195℃)のようなヒドロペルオキシドを使用して、ベンゾピナコールおよびチタンのような第4族遷移金属の存在下で、これらが触媒量であっても、モノマーおよび不飽和ポリエステルを低温硬化することができることを実証している。Ti(IV)還元の触媒的なサイクルはベンゾピナコールによるTi(III)への還元により促進される。次いでこれが、ジクミルペルオキシドまたはクミルヒドロペルオキシドをフリーラジカル重合の促進に非常に効率的なペルオキシラジカルに還元する。比較例8は、ベンゾピナコールが存在しないと、Ti(IV)がTi(III)に還元する触媒的なサイクルが崩壊し低温硬化が起こらないことを実証している。
【0081】
【表3】
【0082】
比較重合例9
Luprox 101を、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表4に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、未硬化であった。
【0083】
比較重合例10
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。次いで、コールズブレードを使用して、Luprox 101を、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表4に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、軟らかくかつ部分的に硬化しており、表面は粘着質であった。
【0084】
重合例15
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、Luprox 101を、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表4に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0085】
重合例16
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、Luprox 101を、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、分散液が得られるまでこの混合物に0.5%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表4に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0086】
表4に示す実施例15および16は、Luprox 101(t
1/2 164℃)のようなもう一つの熱的に安定なジアルキルペルオキシド開始剤を使用して、ベンゾピナコールおよびチタンのような第4族遷移金属の存在下で、これらが触媒量であっても、モノマーおよび不飽和ポリエステルを低温硬化することができることを実証している。Ti(IV)還元の触媒的なサイクルはベンゾピナコールによるTi(III)への還元により促進される。次いでこれが、Luprox 101をフリーラジカル重合の促進に非常に効率的なペルオキシラジカルに還元する。比較例9および10は、ベンゾピナコールが存在しないと、Ti(IV)がTi(III)に還元する触媒的なサイクルが崩壊し低温硬化が起こらないことを再度実証している。
【0087】
【表4】
【0088】
重合例17
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、AIBNを、この混合物に分散液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。コールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、分散液が得られるまでこの混合物に1%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表5に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0089】
表5に示す実施例17は、AIBN(t
1/2 101℃)のようなジアゾ開始剤を使用して、ベンゾピナコールおよびチタンのような第4族遷移金属の存在下で、モノマーおよび不飽和ポリエステルを低温硬化することができることを実証している。Ti(IV)還元の触媒的なサイクルはベンゾピナコールによるTi(III)への還元により促進される。次いでこれが、AIBNをフリーラジカル重合の促進に非常に効率的なアルキルラジカルに還元する。
【0090】
【表5】
【0091】
比較重合例11
アルミニウムアセチルアセトネートを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表6に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、未硬化であった。
【0092】
比較重合例12
ホウ酸トリイソプロピルを、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表6に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、未硬化であった。
【0093】
比較重合例13
【化11】
の構造を有するニッケル系開始剤(開始剤1)を、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ジクミルペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表6に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、未硬化であった。
【0094】
重合例18
【化12】
の構造を有するジルコニウム系開始剤(開始剤2)を、Pedigree 600Sに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ジクミルヒドロペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表6に示す。このサンプルは、80℃で1時間後、完全に硬化しており、表面は硬かった(粘着性なし)。
【0095】
表6に示す実施例10および18は、ジクミルペルオキシド(t
1/2 154℃)のような熱的に安定なジアルキルペルオキシド開始剤およびクメンヒドロペルオキシド(t
1/2 195℃)のようなヒドロペルオキシドを使用して、ベンゾピナコールならびにチタンまたはジルコニウムのような第4族遷移金属の存在下で、これらが触媒量であっても、モノマーおよび不飽和ポリエステルを低温硬化することができることを実証している。Ti(IV)またはZr(IV)還元の触媒的なサイクルはベンゾピナコールによるTi(III)またはZr(III)への還元により促進される。次いでこれが、Dicup(ジクミルペルオキシド)またはクミルヒドロペルオキシドをフリーラジカル重合の促進に非常に効率的なペルオキシラジカルに還元する。比較例11〜13は、非第4族金属は、ベンゾピナコールおよびペルオキシドと組み合わせて使用した場合に低温硬化を加速しないことを実証している。
【0096】
【表6】
【0097】
重合例19〜22
UPE 600Sを等重量となるように2つに分けた。コールズブレードを使用して、一方に、ベンゾピナコールおよびペルオキシドを、溶液が得られるまでそれぞれ1%濃度で混合した。他方にオルガノチタン(IV)種であるTyzor GBAを混合した。両者は何日も室温で安定であった。そして、両者を混合して室温(25℃)で硬化させた。結果を表7に示す。これらのサンプルは、25℃で3時間後、硬化し、表面および下面は硬かった。また実施例22では上面が乾燥していた。
【0098】
表7に示す実施例19〜22は、ジクミルペルオキシド(t
1/2 154℃)のような熱的に安定なジアルキルペルオキシド開始剤およびt−ブチルヒドロペルオキシド(t
1/2 207℃)のようなヒドロペルオキシドを使用して、ベンゾピナコールおよびTyzor GBAのような第4族遷移金属の存在下で、モノマーおよび不飽和ポリエステルを低温かつ短時間で硬化することができることを実証している。Tyzor GBAおよびチタノセンなどのチタネート種の組み合わせを使用することで、硬く硬化した物質だけでなく、乾燥した、粘着性のない表面を得ることができる。これらの実施例はまた、室温での硬化であっても、混合したときに高い反応性を示す2つの安定な溶液を使用することができることを実証している。
【0099】
【表7】
【0100】
比較重合例14および15
表8に示すペルオキシドを、Pedigree 70VTに均質な混合液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表8に示す。これらのサンプルは、80℃で1時間後、未硬化であった。
【0101】
重合例23〜27
チタノセンジクロリドを、Pedigree 70VTに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ペルオキシドを、この混合物に分散液が得られるまで1%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、この混合物に溶液が得られるまで1%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表8に示す。これらのサンプルは、80℃で1時間後、粘着性あり〜粘着性なしで完全に硬化した。
【0102】
表8に示す実施例23〜27は、ビニルトルエンモノマーもスチレンとまったく同様に低温硬化可能であることを実証している。比較例14および15は、ベンゾピナコールが存在しないと、Ti(IV)がTi(III)に還元する触媒的なサイクルが崩壊し低温硬化が起こらないことを再度実証している。
【0103】
【表8】
【0104】
重合例28〜32
チタノセンジクロリドを、Pedigree 600 Acrylateに均質な混合液が得られるまで0.5%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ペルオキシドを、この混合物に溶液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。次いでコールズブレードを使用して、ベンゾピナコールを、この混合物に溶液が得られるまで1.0%濃度でブレンドした。得られた物質を80℃で1時間硬化させた。結果を表9に示す。これらのサンプルは、80℃で1時間後、注釈を付けたものを除き、粘着性あり〜粘着性なしで完全に硬化した。ジクミルペルオキシドおよびLuperox 101はヒドロペルオキシドほどの効果はなかったものの、若干高温では硬化させた。
【0105】
表9に示す実施例28〜32は、アクリレートモノマーもスチレンとまったく同様に低温硬化可能であることを実証している。全てのペルオキシドが等価であるわけではないが、当業者は、使用するモノマーに関係なく所望の温度で硬化を行うために配合を最適化することができる。
【0106】
【表9】
【0107】
上記重合開始剤システムは、重合反応のための2成分キットとして提供され得る。この2成分キットは、別々の第1の成分および第2の成分を含む。ある実施形態によれば、上記キットは、ピナコール化合物と第4族遷移金属または第4族遷移金属含有化合物との混合物またはブレンドを含む第1の成分と、重合開始可能なラジカルを発生させる電子受容種または化合物を含む第2の成分とを含む。他の例示的な実施形態によれば、上記キットは、ピナコールと重合開始可能なラジカルを発生させる電子受容種または化合物とを含む第1の成分と、第4族遷移金属または第4族遷移金属含有化合物を含む第2の成分とを含む。したがって、「キット」とは、別々に梱包された第1の成分および第2の成分の両方が1つのオーバーパック内に含まれている場合;別々に梱包された第1の成分および第2の成分が別々のパッケージに保持され、セットにされてキットとなっている場合;または、別々に梱包された第1の成分および第2の成分が別々のパッケージに保持され、オーバーパック容器内に含まれたり、セットにされていない成分のキットとして単に一緒に販売される場合、を包含する。
【0108】
以上、調製方法および使用方法を様々な例示的な実施形態に関連して説明したが、本願明細書に開示した機能を行うために、本願明細書から逸脱しない範囲で他の類似する実施形態を採用してもよいこと、また、上述の実施形態に変更および追加を行ってもよいことを理解されたい。また、様々な実施形態を組み合わせて所望の特性を得てもよいため、上述の実施形態は必ずしも選択的ではない。よって、上記調製および方法は如何なる単一の実施形態に限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきである。