(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外筒体と、該外筒体内に配置されている内筒体と、該内筒体内に収められた線状物と、前記線状物の遠位側に接続されて、体内留置用クリップを保持するための挟持部と、を含む内視鏡用クリップ装置であって、
前記挟持部は、2つの挟持基材を有しており、
前記挟持基材の遠位端には、前記挟持基材に対して内方に形成されている羽根部が設けられて、前記挟持基材よりも前記羽根部のヤング率が小さいことを特徴とする内視鏡用クリップ装置。
外筒体と、該外筒体内に配置されている内筒体と、該内筒体内に収められた線状物と、前記線状物の遠位側に接続されて、体内留置用クリップを保持するための挟持部と、を含む内視鏡用クリップ装置であって、
前記挟持部は、2つの挟持基材を有しており、
前記挟持基材の遠位端には、前記挟持基材に対して内方に形成されている羽根部が設けられて、該羽根部は、前記挟持基材よりも幅が小さいことを特徴とする内視鏡用クリップ装置。
一方の前記挟持基材の先端に設けられる前記羽根部と、他方の前記挟持基材の先端に設けられる前記羽根部が互い違いに配置されている請求項1又は2に記載の内視鏡用クリップ装置。
前記体内留置用クリップには、前記内筒体の内径よりも外径が大きく、軸方向に移動可能な締結具が設けられている請求項1〜6のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載されたクリップ装置は、クリップを体内に留置する際に牽引部材や操作ワイヤを一旦前方に押し込み、牽引部材や把持部材とクリップとの固定を解除した後、後方に引きこむ必要があり、クリップ装置とクリップとの固定を解除する方法が煩雑であった。
そこで本発明は、体内留置用クリップを容易に取り外すことのできる内視鏡用クリップ装置を提供することを目的とする。
また本発明は、内視鏡用クリップ装置から体内留置用クリップを容易に取り外すことのできる、体内留置用クリップの取り付け方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得た本発明の内視鏡用クリップ装置とは、外筒体と、外筒体内に配置されている内筒体と、内筒体内に収められた線状物と、線状物の遠位側に接続されて、体内留置用クリップを保持するための挟持部と、を含む内視鏡用クリップ装置であって、挟持部は、2つの挟持基材を有しており、挟持基材の遠位端には、挟持基材に対して内方に形成されている羽根部が設けられて、挟持基材よりも羽根部のヤング率が小さい点に要旨を有するものである。本発明の内視鏡用クリップ装置の羽根部はヤング率が小さく弾性変形し易いため、挟持部によって保持された体内留置用クリップと挟持部とが離間する方向に引張荷重を負荷すれば、内視鏡用クリップ装置から体内留置用クリップを容易に取り外すことができる。
【0008】
また、本発明の内視鏡用クリップ装置とは、外筒体と、外筒体内に配置されている内筒体と、内筒体内に収められた線状物と、線状物の遠位側に接続されて、体内留置用クリップを保持するための挟持部と、を含む内視鏡用クリップ装置であって、挟持部は、2つの挟持基材を有しており、挟持基材の遠位端には、挟持基材に対して内方に形成されている羽根部が設けられて、羽根部は、挟持基材よりも幅が小さいことを特徴とするものでもある。本発明の内視鏡用クリップ装置は羽根部の幅が小さいため、内視鏡用クリップ装置から体内留置用クリップを取り外す際に、羽根部に負荷される引張荷重を低減することができる。
【0009】
上記内視鏡用クリップ装置において、一方の挟持基材の先端に設けられる羽根部と、他方の挟持部材の先端に設けられる羽根部が互い違いに配置されていることが好ましい。羽根部が互い違いに配置されることで、挟持部はクリップを固定し易いため保持状態を維持しやすく、内視鏡用クリップ装置から体内留置用クリップが脱落し難くなる。
【0010】
上記内視鏡用クリップ装置において、挟持部は体内留置用クリップを確実に保持するために、羽根部は挟持基材に対して90度よりも大きく180度よりも小さい角度をなしていることが好ましい。
【0011】
上記内視鏡用クリップ装置において、挟持基材と羽根部が一体的に形成されていることが好ましい。一体的に形成することで、ねじ、カシメ等による機械的固定、溶接、接着等を用いて挟持基材と羽根部を接合しなくてよいため、挟持部の製造工程を簡略化することができる。
【0012】
上記内視鏡用クリップ装置において、羽根部の材料がNi−Ti合金又はステンレス鋼であることが好ましい。Ni−Ti合金は強度、生体適合性、耐食性の点で優れているだけでなく、超弾性合金で高い形状回復特性を有している。このため、内視鏡用クリップ装置は、クリップの保持および解除動作を繰り返し行っても、元の形状に復元されやすい。また、ステンレス鋼は生体適合性、耐食性の点で優れている。
【0013】
上記内視鏡用クリップ装置に用いられる体内留置用クリップには、内筒体の内径よりも外径が大きく、軸方向に移動可能な締結具が設けられていることが好ましい。手技中に挟持部を内筒体の近位側に引き込んでも締結具が内筒体の遠位端に引っ掛かるため、内筒体内に体内留置用クリップが収納されるのを防止できるからである。
【0014】
本発明には、内筒体の近位側に接続されて、外筒体に対して軸方向に移動可能な第1ハンドルと、線状物の近位側に接続されて、外筒体に対して軸方向に移動可能な第2ハンドルと、が設けられる内視鏡用クリップ装置も含まれる。このようにハンドルが設けられれば、内筒体や線状物の移動操作がし易くなる。
【0015】
上記内視鏡用クリップ装置において、羽根部の長さが内筒体の内径の半分以下であることが好ましい。内視鏡用クリップ装置から体内留置用クリップを取り外す際に羽根部に負荷される引張荷重を低減できる。
【0016】
上記内視鏡用クリップ装置において、羽根部は挟持基材よりも肉厚が小さいことが好ましい。羽根部の肉厚が小さいほど羽根部は変形し易いため、内視鏡用クリップ装置から体内留置用クリップを容易に取り外すことができる。
【0017】
上記内視鏡用クリップ装置において、挟持基材の少なくとも一部区間に、挟持部の内方に凸となる湾曲部が形成されていることが好ましい。このように挟持基材に湾曲部が設けられれば挟持基材が撓みやすくなるだけでなく、挟持部の遠位側が外方に拡がりやすくなるため、挟持部で体内留置用クリップを保持しやすくなる。
【0018】
さらに本発明は、外筒体と、外筒体内に配置されている内筒体と、内筒体内に収められた線状物と、線状物の遠位側に接続されて、体内留置用クリップを保持するための挟持部と、を含み、挟持部は、2つの挟持基材を有しており、挟持基材の遠位端には、挟持基材に対して内方に形成されている羽根部が設けられている内視鏡用クリップ装置の体内留置用クリップの取り付け方法において、体内留置用クリップで留置対象物を保持するステップと、その後、線状物を、内筒体に対して遠位端側に押し出すことなく、近位端側に引き込むことにより、体内留置用クリップが羽根部を乗り越えて、体内留置用クリップが挟持部から取り外されるステップと、を有することを特徴とする体内留置用クリップの取り付け方法も提供する。本発明の体内留置用クリップの取り付け方法は、体内留置用クリップで病変等の留置対象物を保持した後、体内に留置する段階で挟持部を内筒体に対して遠位端側に押し出す動作が不要であるため、挟持部から体内留置用クリップを容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の内視鏡用クリップ装置の羽根部はヤング率が小さく弾性変形し易いため、挟持部によって保持された体内留置用クリップと挟持部とが離間する方向に引張荷重を負荷すれば、内視鏡用クリップ装置から体内留置用クリップを容易に取り外すことができる。
また、本発明の内視鏡用クリップ装置は羽根部の幅が小さいため、内視鏡用クリップ装置から体内留置用クリップを取り外す際に、羽根部に負荷される引張荷重を低減することができる。
さらに本発明の体内留置用クリップの取り付け方法は、体内留置用クリップで病変等の留置対象物を保持した後、体内に留置する段階で挟持部を内筒体に対して遠位端側に押し出す動作が不要であるため、挟持部から体内留置用クリップを容易に取り外すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.内視鏡用クリップ装置
本発明の内視鏡用クリップ装置は、外筒体と、外筒体内に配置されている内筒体と、内筒体内に収められた線状物と、線状物の遠位側に接続されて、体内留置用クリップを保持するための挟持部と、を含む内視鏡用クリップ装置であって、挟持部は、近位側において互いに近接している2つの挟持基材を有しており、挟持基材の遠位端には、挟持基材に対して内方に形成されている羽根部が設けられて、挟持基材よりも羽根部のヤング率が小さい。本発明の内視鏡用クリップ装置の羽根部はヤング率が小さく弾性変形し易いため、挟持部によって保持された体内留置用クリップと挟持部とが離間する方向に引張荷重を負荷すれば、内視鏡用クリップ装置から体内留置用クリップを容易に取り外すことができる。
【0022】
体内留置用クリップは、早期がんの内視鏡下での処置の際、止血、縫合、マーキング等のために体内組織を摘まむための器具であり、本明細書では単に「クリップ」と記載することもある。手技の種類に依るが、例えば一手技あたり十数個程のクリップが用いられることもあるため、処置時間の増加に伴う患者の負担を軽減するために、クリップによる病変等の留置対象物の保持操作や、後述する内視鏡用クリップ装置からクリップを取り外す操作は効率良く行われることが望ましい。
【0023】
内視鏡用クリップ装置は、上述したクリップの開閉を制御して病変等の留置対象物を保持したり、保持が完了したクリップを内視鏡用クリップ装置から取り外すために用いられる。なお、本明細書では内視鏡用クリップ装置を単に「クリップ装置」と記載することもある。
【0024】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0025】
本発明において軸方向とは内筒体の長軸方向を指し、軸方向において近位側とは術者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向を指す。また、本発明において径方向とは内筒体の径方向を指し、径方向において内方とは内筒体の中心側に向かう方向を指し、外方とは内筒体の放射方向を指す。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る内視鏡用クリップ装置10の遠位側の平面図(一部断面図)を表し、
図2は同実施形態に係る内視鏡用クリップ装置10の遠位側の側面図(一部断面図)を表す。内視鏡用クリップ装置10は、外筒体70と、外筒体70内に配置されている内筒体80と、内筒体80内に収められた線状物50と、線状物50の遠位側に接続されて、体内留置用クリップ100を保持するための挟持部20と、を含むものである。
【0027】
外筒体70は、内腔に内筒体80と体内留置用クリップ100を収めるものであり、内筒体80は、内腔に線状物50と線状物50に接続される挟持部20を収めるものである。外筒体70および内筒体80はいずれも内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内を通って体内留置用クリップ100を患者の留置対象組織に搬送するまでの間に、クリップ100や挟持部20が内視鏡内の鉗子口、鉗子チャンネル内、非留置対象組織等を傷付けることを防止する。
【0028】
内筒体80は体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、留置対象組織まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えていることが望ましい。内筒体80としては、例えば金属材料をコイル状に形成した筒体や、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の合成樹脂から形成された筒体を用いることができるが、中でも高い強度を有する金属コイルや合成樹脂から形成された筒体が用いられるのが好ましい。
【0029】
内視鏡の管部の湾曲等の動きに対する追従性を向上させるために、外筒体70はPTFE、ポリプロピレン等の合成樹脂から形成されることがより好ましい。
【0030】
線状物50は、遠位側に挟持部20の近位端31が接続されて、挟持部20を軸方向に進退可能にするものである。線状物50からの挟持部20の脱落を防止するために、線状物50と挟持部20の接続方法は、ねじ、カシメ等の接続部材55による機械的な固定の他、溶接や接着も用いることができる。線状物50も外筒体70や内筒体80と同様に可撓性を有していることが好ましいため、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属線材、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン等の合成樹脂繊維を用いることができる。
【0031】
図3(a)は本実施形態に係る挟持基材30a,30bに湾曲部35を設けない場合の挟持部20の斜視図を表し、
図3(b)は挟持基材30a,30bの一部区間に湾曲部35を設けた場合の挟持部20の斜視図を表す。
挟持部20は体内留置用クリップ100を保持するものであり、
図3(a)および
図3(b)のように挟持部20は近位側において互いに近接している2つの挟持基材30a,30bを有している。挟持基材30a,30bの遠位端32a,32bには、挟持基材30a,30bに対して内方(
図3ではX方向)に形成されている羽根部40a,40bがそれぞれ設けられており、挟持基材30a,30bの近位端31には接続部材55を介して線状物50が接続される。
【0032】
線状物50を近位側に引き込むと挟持部20は内筒体80の内腔形状に沿って開度が小さくなる。すなわち挟持基材30a,30bに内筒体80からX方向に押力が負荷されて羽根部40aと40bが接近するため、クリップ100は挟持部20によって保持される。他方、線状物50を遠位側に押し込むと挟持部20は内筒体80による拘束から解放されて外方に拡がる。すなわち挟持基材30a,30bに対してX方向に負荷される押力が弱まるにつれて羽根部40aと40bは離間し、挟持部20に保持されていたクリップ100がクリップ装置10から取り外される。
【0033】
2つの挟持基材30a,30bは近位側において互いに近接しているが、
図3(a)および
図3(b)のように一体的に形成された挟持基材30を屈曲させることにより形成してもよい。また、図示はしていないが、個別に挟持基材30a,30bを製造した後、ねじ、カシメ等による機械的固定、溶接、接着等の方法で挟持基材同士を接合してもよい。
【0034】
図3(a)に示すように2つの挟持基材30a,30bは軸方向に対称な形状にすることもできる。これにより、2つの挟持基材30a,30bが径方向に拡縮するタイミングを合わせることができるため、挟持部20によるクリップ100の保持操作を行いやすくなる。
【0035】
また、
図3(b)に示すように、挟持基材30a,30bの少なくとも一部区間には、挟持部の内方(X方向)に凸となる湾曲部35を形成することもできる。このように挟持基材30a,30bに湾曲部35が設けられれば挟持基材30a,30bが撓みやすくなるだけでなく、挟持部20の遠位側が外方に拡がりやすくなるため、体内留置用クリップ100を保持しやすくなる。
ここで、挟持基材30a,30bの区間とは、挟持基材30a,30bの遠位端32a,32bから近位端31までの道のりを指す。
【0036】
患者への身体的負担を軽減するためには、一手技当たりに要する時間は短い方がよいことから、手技は効率良くなされることが望まれている。従って、挟持部20からクリップ100が容易に取り外されるように羽根部40が弾性変形しやすいことが好ましい。挟持基材30としては、例えばステンレス鋼、Ni−Ti合金等の高弾性の金属材料が使用されることが好ましい。
【0037】
羽根部40a,40bは、挟持基材30a,30bに対して内方(
図3のX方向)に形成されており、挟持基材30a,30bよりも羽根部40a,40bのヤング率が小さいものである。羽根部40はクリップ100を直接保持する部材であり、ヤング率が小さいことから引張荷重が付与されると弾性変形しやすい。このため、挟持部20によって保持されたクリップ100をクリップ装置10から容易に取り外すことができる。
【0038】
一方、挟持基材30a,30bは羽根部40a,40bよりもヤング率が大きいため、引張荷重が付与されても弾性変形しにくい。従って、軸方向における挟持部20の挟持基材30a,30bは変形しにくいものであるから、クリップ装置10によってクリップ100の保持および解除操作を繰り返しても、軸方向における挟持部20の保持位置がずれることを防止できる。
【0039】
ヤング率は、ISO14577に準拠したナノインデーション法により得られた除荷曲線を用いて算出する。ナノインデーション法は、押し込み硬さ試験方法の一種であり、具体的には試験片に荷重P(N)でダイヤモンド圧子を押し付けたときに圧子が試験片に侵入する深さh(m)を垂直変位計により測定する方法である。試料と圧子の複合ヤング率Erは、荷重開始から除荷までの押し込み深さを連続的に測定することで得られる除荷曲線(P−h曲線)の最大荷重Pmaxにおける傾きを用いて数式1のとおり算出される。なお、数式1においてAは荷重負荷時の圧子と試験片との接触面積であり、βは圧子の形状により決まる定数で一般にナノインデンターで用いられるバーコビッチ等の三角錐圧子ではβ=1.034である。
【0041】
また複合ヤング率Erは、試料のヤング率Es、圧子のヤング率Ei、試料のポアソン比νs、圧子のポアソン比νiを用いて数式2のとおり表されることから、試料のヤング率Esは数式1および数式2から算出される。
【0043】
クリップ装置10からクリップ100を容易に取り外すためには、引張荷重を低減しても弾性変形しやすい形状に羽根部40を構成することも重要である。従って、本発明のクリップ装置10の羽根部40は挟持基材30よりも幅が小さいものでもある。なお、
図1のクリップ装置10では、羽根部40の幅は挟持基材30の幅の半分以下としている。
【0044】
クリップ100を保持するために羽根部40は挟持基材30に対して内方に形成されているが、このときに羽根部40と挟持基材30のなす角度θとすると、角度θは挟持基材30に対して鈍角であることが好ましい。つまり羽根部40と挟持基材30のなす角度θは90度よりも大きく180度よりも小さいことが好ましい。これにより、クリップ100の保持をより確実にすることができる。羽根部40と挟持基材30のなす角度θの上限は、150度以下であることがより好ましく、130度以下であることがさらに好ましい。また、羽根部40と挟持基材30のなす角度θの下限は100度以上であることがより好ましく、110度以上であることがさらに好ましい。
【0045】
挟持基材30と羽根部40は一体的に形成されていることが好ましい。「一体的に形成する」とは、例えば、上述した2つの挟持基材30a,30bの接合と同様に、一部材を所望の位置で屈曲させて挟持基材30a,30bの遠位側に羽根部40a,40bを形成する方法である。このような方法は、挟持基材30a,30bをねじ、カシメ等による機械的固定、溶接、接着等を用いて接合しなくてよいため、挟持部20の製造工程を簡略化することができる。機械的固定、溶接、接着による接合も勿論可能であるが、異部材の境界では応力が集中し易いため、繰り返し使用可能な回数を確保したい場合には一体的に形成する方が望ましい。
【0046】
図4(a)〜
図4(d)はクリップ装置10を軸方向から見た平面図を表し、羽根部40の形状の一例を示したものである。
図4(a)のように、2つの羽根部40a,40bがそれぞれ挟持基材30a,30bと略同幅であり、2つの羽根部40a,40bの長さが内筒体80の内径の半分以下であることが好ましい。挟持基材30と羽根部40が略同幅であるため製造が容易であり、羽根部40の長さが内筒体80の内径の半分以下であるため、羽根部40に対する引張荷重を低減することができる。
【0047】
図4(b)のように、2つの羽根部40a,40bの幅が挟持基材30a,30bの幅よりも小さく、2つの羽根部40a,40bの長さが内筒体80の内径の半分以下であることも好ましい。2つの羽根部40a,40bの幅が挟持基材30a,30bの幅よりも小さく、また羽根部40の長さが内筒体80の内径の半分以下であるため、羽根部40に対する引張荷重を低減することができる。
【0048】
図4(c)のように、2つの羽根部40a,40bの幅が挟持基材30a,30bの幅よりも小さく、2つの羽根部40a,40bの長さを内筒体80の内径の半分以上とすることも好ましい。2つの羽根部40a,40bの幅が挟持基材30a,30bの幅よりも小さいため、羽根部40に対する引張荷重を低減でき、また羽根部40が長いため、挟持部20の保持位置を確認しやすくなる。
【0049】
また、
図4(d)に示すように、一方の挟持基材30aの先端に設けられる羽根部40aと、他方の挟持基材30bの先端に設けられる羽根部40bが互い違いに配置されていることも好ましい。ここで「互い違いに配置されている」とは、2つの挟持基材30a,30bの先端にそれぞれ設けられる羽根部40a,40bが、羽根部40a,40bの幅方向に交互に位置していることを意味する。羽根部40a,40bが互い違いに配置されることで、挟持部20はクリップ100を固定し易いため保持状態を維持しやすく、クリップ装置10からクリップ100が脱落し難い。
【0050】
図4(d)に示すように、羽根部40a,40bにそれぞれ切り欠き43a,43bを形成して、さらに挟持部20がクリップ100を保持しやすくすることもできる。
【0051】
挟持基材30よりも羽根部40の肉厚を小さくすることが好ましい。羽根部40の肉厚が小さいほど弾性変形し易いため、羽根部40に対する引張荷重を低減することができる。
【0052】
羽根部40は高弾性材料から形成されていることが好ましく、中でもNi−Ti合金により形成されることがより好ましい。Ni−Ti合金は強度、生体適合性、耐食性の点で優れているだけでなく、超弾性合金で高い形状回復特性を有しているからである。このため、クリップ100の保持および解除動作を繰り返し行っても、元の形状に復元されやすい。また、羽根部40はステンレス鋼から形成されることも好ましい。ステンレス鋼は生体適合性、耐食性の点で優れているからである。なお、Co、V、Crのいずれか一種以上を1%〜5%含むNi−Ti合金又はステンレス鋼を羽根部40の材料として用いれば、さらにヤング率が低く弾性変形しやすい羽根部40を得ることができる。
【0053】
本発明には、内筒体80の近位側に接続されて、外筒体70に対して軸方向に移動可能な第1ハンドル90と、線状物50の近位側に接続されて、外筒体70に対して軸方向に移動可能な第2ハンドル91と、が設けられる内視鏡用クリップ装置10も含まれる。
図5は、本発明の実施形態に係る内視鏡用クリップ装置10の近位側の平面図を表す。
図5において、第1ハンドル90は最も近位側に配置されており、次いで第2ハンドル91が配置されている。また、第1ハンドル90を外筒体70に対して近位側に移動させると、これに伴い内筒体80が近位側に移動する。また、第2ハンドル91を外筒体70に対して近位側に移動させると、これに伴い線状物50および挟持部20が近位側に移動する。このように第1ハンドル90および第2ハンドル91が設けられれば、内筒体80や線状物50の移動操作がし易くなる。
【0054】
図5に示すように、第1ハンドル90と第2ハンドル91は弾性部材93を介して接続されていることが好ましい。第2ハンドル91を近位側に移動させると弾性部材93であるコイルスプリングは近位側に圧縮されて弾性エネルギーが蓄積されるため、第2ハンドル91を遠位側に戻す場合にコイルスプリングの復元力を利用することができるからである。
【0055】
外筒体70内に内筒体80を挿入しやすくするために、
図5に示すように、外筒体70の近位側の外側には保持部材95が設けられてもよい。この保持部材95の外側面には内筒体80内に液体を注入するための開口部97が設けられてもよい。
【0056】
図6は2つの腕部120a,120bと、腕部120a,120bに対して内方(
図6のY方向)に形成されている先端部123a,123bを有する体内留置用クリップ100の斜視図を表す。クリップ100は腕部120a,120bの開閉度を制御することにより、先端部123a,123bで病変等の留置対象物を摘まむものである。なお、
図6では腕部120a,120bの遠位側に孔125a,125bがそれぞれ形成されているが、これにより手技中にクリップ100が変形しやすくなるため、留置対象物を容易に摘まむことができる。
【0057】
また、
図6ではクリップ100の先端部123a,123bは腕部120a,120bの遠位端122a,122bと略同幅に形成されているが、腕部120a,120bの遠位端122a,122bより先端部123a,123bの幅が狭いクリップや、先端部123a,123bに切り欠きが設けられたクリップも勿論好適に用いることができる。
【0058】
クリップ100には、内筒体80の内径よりも外径が大きく、軸方向に移動可能な締結具110が設けられている。この締結具110は、クリップ100の外側に設けられて、クリップ100の開閉状態をコントロールするものである。締結具110の形状としては、例えば円筒体、角筒体等にすることができる。クリップ100の近位側がクリップ装置10の挟持部20により保持されるが、締結具110の外径が挟持部20を収納する内筒体80の内径よりも大きければ、挟持部20が近位側に引き込まれても、締結具110の近位端と内筒体80の遠位端が当接するため、クリップ100が内筒体80内に引き込まれることがない。仮にクリップ100が内筒体80内に引き込まれると体内にクリップ100を留置できなくなるため、円滑な手技の遂行が困難になる。
【0059】
2.体内留置用クリップの取り付け方法
クリップ装置10を用いたクリップ100の取り付け方法について、
図7〜11を用いて詳細に説明する。本説明に使用するクリップ装置10は、外筒体70、内筒体80、線状物50、挟持部20を含むものであり、挟持部20は、近位側において互いに近接している2つの挟持基材30a,30bを有しており、挟持基材30a,30bの遠位端には羽根部40a,40bが設けられている。羽根部40a,40bは挟持基材30a,30bの幅の半分以下の幅を有し、挟持基材30a,30bよりもヤング率が小さい。また、クリップ100は、腕部120a,120bと、腕部120a,120bに対して内方に形成されている先端部123a,123bを有しており、クリップ100の外側には締結具110が設けられている。
【0060】
(ステップ1)クリップ装置とクリップの位置合わせ
まず、クリップ装置10とクリップ100との位置合わせを行う。第2ハンドル91を遠位側に押し出し、
図7に示すようにクリップ装置10の挟持部20の遠位端を内筒体80の外に露出させる。具体的には線状物50および挟持部20を遠位側に移動させると、内筒体80の内腔によって内方(
図3のX方向)に押力が付与されていた羽根部40a,40bおよび挟持基材30a,30bは外方に互いに離間していき、挟持部20の開度は徐々に増していく。
【0061】
2つの羽根部40a,40bの遠位端41a,41b間の距離がクリップ100の近位側の幅よりも大きくなり挟持部20の開度が得られたら、軸方向における羽根部40a,40bの位置を体内留置用クリップ100の近位端126に合わせる。このときクリップ100の締結具110は近位側に配置されている。
【0062】
(ステップ2)クリップ装置によるクリップの保持
次に、挟持部20を内筒体80内に収納するために、第2ハンドル91を近位側に引き込む。開状態の挟持部20は、挟持基材30a,30bの近位側の縁部が内筒体80の内側面に当接している。線状物50とともに挟持部20が近位側に引き込まれると、遠位側の縁部が内筒体80に当接する。内筒体80から露出している挟持部20の部分が少なくなるにつれて羽根部40a,40bの開度は低下するため、羽根部40a,40bによって体内留置用クリップ100は保持される。なお、体内に留置する前段階においてクリップ100が閉状態になることを防ぐため、挟持部20の内筒体80内への引き込みは体内留置用クリップ100の遠位側までにとどめておく。
【0063】
内視鏡の鉗子チャンネル内にクリップ装置10およびクリップ100を挿入するが、鉗子チャンネル等を傷つけないように、外筒体70内に内筒体80およびクリップ100を収納する。第1ハンドル90および第2ハンドル91を一緒に外筒体70に対して遠位側に少しずつ動かし、
図8に示すように外筒体70からクリップ100が露出しない位置まで移動させる。このとき、クリップ100は外筒体70内に徐々に収納されていくため、挟持部20と同様にクリップ100の腕部120a,120bおよび先端部123a,123bの開度は低下する。
【0064】
(ステップ3)留置対象物の保持
外筒体70内にクリップ100および内筒体80が収納されたクリップ装置10を内視鏡の鉗子口から挿入し、外筒体70の遠位端を患者の病変付近まで到達させる。このとき、術者は内視鏡から取得した映像で病変の位置や病変の状況等を観察しながら、第1ハンドル90および第2ハンドル91を軸方向に回転させて、病変に対するクリップ100の先端部123a,123bの保持方向を調整する。外筒体70に対して、第1ハンドル90および第2ハンドル91を遠位側に一緒に押し出すと、
図9に示すように挟持部20は内筒体80に収納された状態でクリップ100の一部が外筒体70から露出する。つまり、外筒体70の内腔形状によって拘束されていたクリップ100の腕部120a,120bが外筒体70から露出されるのに伴い、クリップ100の開度は次第に大きくなる。
【0065】
図10に示すように、病変をクリップ100で保持するために、第2ハンドル91を第1ハンドル90に対して近位側に移動させ、線状物50を近位側に引き込む。そうすると、クリップ100の開度は徐々に小さくなっていき、クリップ100は近位端から順に内筒体80内に収納されていく。クリップ100に設けられた締結具110の外径は内筒体80の内径よりも大きいため、締結具110は内筒体80内に引き込まれない。また、クリップ100の腕部120a,120b間の距離が最も大きい最外径部に締結具110が引っ掛かるため、クリップ100は病変を保持した状態で締結具110によって固定される。
【0066】
(ステップ4)挟持部からの体内留置用クリップの取り外し
最後に、クリップ装置10からクリップ100を取り外して、体内にクリップ100を留置する。クリップ装置10の挟持部20を近位側に引き込むために外筒体70に対して第2ハンドル91を近位側に移動させる。そうすると、羽根部40a,40bに対して引張荷重が負荷されるため、挟持基材30a,30bと羽根部40a,40bのなす角度θは大きくなり、羽根部40a,40bが外方に開く。このため、
図11に示すようにクリップ装置10の挟持部20で保持していたクリップ100が羽根部40a,40bを乗り越えてクリップ装置10から取り外される。本発明の体内留置用クリップ100の取り付け方法は、クリップ100によって病変等の留置対象物を保持した後、クリップ100を体内に留置する段階で挟持部20の内筒体80に対して遠位端側に押し出す動作が不要である。すなわち、クリップ100で留置対象物を保持した後は挟持部20を近位端側に引き込む操作のみを実施すればよいため、クリップ装置10からクリップ100を容易に取り外すことができる。なお、本発明のクリップ装置10の羽根部40は、挟持基材30よりも幅が小さく、また挟持基材30よりもヤング率が小さいため、弾性変形しやすいものでもある。
【0067】
本願は、2014年10月24日に出願された日本国特許出願第2014−217255号に基づく優先権の利益を主張するものである。2014年10月24日に出願された日本国特許出願第2014−217255号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。