(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572235
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】湿潤天然繊維およびデンプンを熱可塑性プラスチック中に混入する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20190826BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20190826BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20190826BHJP
C08L 3/02 20060101ALI20190826BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
C08J3/20 BCEP
C08J3/20CER
C08J3/20CEZ
C08L101/00
C08L1/02
C08L3/02
C08K5/053
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-560986(P2016-560986)
(86)(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公表番号】特表2017-516882(P2017-516882A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】CA2015050200
(87)【国際公開番号】WO2015154175
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2018年3月7日
(31)【優先権主張番号】61/977,972
(32)【優先日】2014年4月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507171683
【氏名又は名称】エフピーイノベイションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、チールン
(72)【発明者】
【氏名】パレオロゴウ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】メン、キンカイ
(72)【発明者】
【氏名】マオ、シャンビン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ユンリ
【審査官】
大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0096236(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102153804(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102161796(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102229750(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0021534(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
C08J 5/00−5/24
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維/デンプン熱可塑性プラスチック複合材料の製造方法であって:
ある総量の天然繊維を含む湿潤天然繊維を提供するステップと;
ある総量のデンプンを含むデンプンを提供するステップと;
ある総量の可塑剤を含む可塑剤を提供するステップと;
ある総量の熱可塑性プラスチックを含む熱可塑性プラスチックを提供するステップと;
前記湿潤天然繊維、前記デンプン、および前記可塑剤を水と混合して、ペーストを形成するステップであって、前記水がある総量の水を含むステップと、
前記ペーストを前記熱可塑性プラスチックと配合して前記複合材料を形成するステップとを含む、上記方法。
【請求項2】
前記湿潤天然繊維、前記デンプン、および前記可塑剤を前記水と混合して、前記ペーストを形成する前記ステップが、重量比WRpaste=(乾燥重量基準の天然繊維の総量+乾燥重量基準のデンプンの総量+可塑剤の総量)/水の総量=0.1〜5となることに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペーストを乾燥してフィルムにするステップ、前記熱可塑性プラスチックと配合する前に前記フィルムを切断してストリップを得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ストリップをペレット化するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性プラスチックが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、およびそれらの組合せから選択され、前記熱可塑性プラスチックが、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、およびそれらの組合せの少なくとも1種類でそれぞれがグラフトされたポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルの少なくとも1種類をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性プラスチックがポリプロピレンおよび無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記可塑剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記可塑剤がグリセロールである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記グリセロールが前記複合材料中に31重量%存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
天然繊維/デンプン熱可塑性プラスチック複合材料の製造方法であって:
ある総量の天然繊維を含む湿潤天然繊維を提供するステップと;
ある総量のデンプンを含むデンプンを提供するステップと;
ある総量の可塑剤を含む可塑剤を提供するステップと;
ある総量の熱可塑性プラスチックを含む熱可塑性プラスチックを提供するステップと;
前記湿潤天然繊維、前記デンプン、および前記可塑剤を水と混合して、ペーストを形成するステップであって、前記水がある総量の水を含むステップと、
前記ペーストを乾燥させてフィルムにするステップと、
前記熱可塑性プラスチックと配合する前に、前記フィルムをストリップに切断するステップと、
前記ペーストを前記熱可塑性プラスチックと配合して前記複合材料を形成するステップとを含む、上記方法。
【請求項11】
前記湿潤天然繊維、前記デンプン、および前記可塑剤を前記水と混合して、前記ペーストを形成する前記ステップが、重量比WRpaste=(乾燥重量基準の天然繊維の総量+乾燥重量基準のデンプンの総量+可塑剤の総量)/水の総量=0.1〜5となることに基づいている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性プラスチックが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、およびそれらの組合せから選択され、前記熱可塑性プラスチックが、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、およびそれらの組合せでグラフトされたポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルの少なくとも1種類をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記熱可塑性プラスチックがポリプロピレンおよび無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレンである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記可塑剤がグリセロールである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
天然繊維/デンプン熱可塑性プラスチック複合材料であって、
50重量%の天然繊維/デンプン、およびエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの組合せからなる群から選択される可塑剤と;
50重量%の熱可塑性プラスチックとを含み;
引張弾性率が1450MPa以上であり、かつ
引張強度が41MPa以上である、上記複合材料。
【請求項16】
前記熱可塑性プラスチックがポリプロピレンおよび無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレンである、請求項15に記載の複合材料。
【請求項17】
前記可塑剤がグリセロールである、請求項15に記載の複合材料。
【請求項18】
前記グリセロールが前記複合材料中に31重量%存在する、請求項17に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現在は、天然繊維およびデンプンを熱可塑性プラスチック中に混入する方法、および製造された天然繊維/デンプン熱可塑性プラスチック複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性デンプンは、容易に利用可能な材料である低コストの代替生分解性プラスチックとなりうるが、機械的性質が不十分であり、水の影響を受けやすいため、現在使用されるポリマーとの実際の置き換えは制限される。最も豊富な天然資源の1つとして、天然繊維が、過去数十年で従来の石油系ポリマーの向上のために研究されてきた。しかし、木繊維の親水性挙動のため、ポリマーマトリックスを木繊維と相溶化させ、損傷を最小限にしながら木繊維をポリマーマトリックス中に均一に分散させることは困難である。天然繊維と熱可塑性プラスチックとの間の相溶性が不十分なため、天然繊維は熱可塑性プラスチック中で凝集物を形成しやすく、それが応力弱点として機能し、その結果として機械的性質が低下する。天然繊維/ポリマー複合材料の従来の製造の場合、天然繊維は配合前に十分に乾燥させるべきであるが、典型的なポリマー処理装置中にふわふわして絡み合った繊維を供給することは非常に困難である。
【0003】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、およびポリ(塩化ビニル)(PVC)などの合成熱可塑性プラスチックは、現代社会において広く使用されている。合成熱可塑性プラスチックの使用に関する問題、たとえば長期の環境汚染および高い原材料費を回避するため、生体材料を利用する複合材料が集中的に研究されており、多くの用途で利用されている。木繊維などの天然繊維は、コスト削減のためのフィラーとして通常は使用されているが、主として疎水性ポリマーマトリックスと親水性天然繊維との間の非相溶性、および繊維の損傷のために、熱可塑性プラスチック中への天然繊維の混入によって、通常は機械的性質が低下する。
【0004】
広く使用されている熱可塑性プラスチックの1つはポリプロピレン(PP)である。これは、良好な電気絶縁性、化学的不活性、耐湿性、および適度な機械的性質のために世界中で広く使用されている。しかし、PPを消費する産業は、常にその高コストに、特に原油価格の上昇時に苦慮している。低コストで高い生分解性の新しい材料を得るために、デンプン粒および熱可塑性デンプン(TPS)とPPとのブレンドが試みられている。デンプン粒はPPマトリックス中の有機フィラーとして直接使用されているが、その結果、デンプン粒含有量が増加すると、親水性デンプンと疎水性PPとの間の不十分な相溶性のために得られる複合材料の引張強度が低下することが示されている[Roy,S.B.,et al.,Polypropylene and potato starch biocomposites:Physicomechanical and thermal properties.Journal of Applied Polymer Science,2011.120(5):p.3078−3086]。ポリオレフィンとの相溶性および加工性を改善するために、デンプン粒はポリオレフィンとブレンドする前に可塑化されている。しかし、TPS/PPブレンドの破断時応力は、依然としてTPS含有量の増加とともに低下する[Kaseem,M.,K.Hamad,and F.Deri,Thermoplastic starch blends:A review of recent works.Polymer Science Series A,2012.54(2):p.165−176.]。走査型電子顕微鏡法(SEM)の研究より、機械的結果が確認され、調製されたブレンド中のPPとTPSとの間の不十分な接着および界面相互作用が観察された。
【0005】
木材、亜麻、ラミー、ジュート、および市販の再生セルロース繊維などの天然繊維も、補強材および代用材料としてポリプロピレンとブレンドされている。これらの繊維は再生可能であり、天然に豊富であり、したがって天然繊維のコストはポリプロピレンよりもはるかに安い。さらに、天然繊維は非摩耗性であるので、製造中に機械を激しく摩耗させることなく比較的高濃度でポリオレフィン中に混入可能である[Woodhams,R.T.,G.Thomas,and D.K.Rodgers,Wood fibers as reinforcing fillers for polyolefins.Polymer Engineering & Science,1984.24(15):p.1166−1171]。軽量で、費用対効果が大きく、環境に優しく、持続可能な複合材料製品およびブレンドに対する要求も高まっている。従来の強化用ガラス繊維と比較して、天然繊維は、低密度であり、比強度が高く、改善された健全性および取扱安全性を有する。木繊維は、製造に必要なエネルギーが最大60%少なく、カーボンニュートラルである。全世界のプラスチック市場は、2010年で約300百万トンと推定されており、その中の構造用複合材料(主として自動車、包装、建築)中の強化材としてのガラス繊維の市場は4〜5百万と推定され、潜在的年間成長率は6%を超える。
【0006】
通常、生産コストを最小限にするために、工業規模では50重量%を超える天然繊維の混入が望ましい。しかし、天然繊維の分率を増加させると、複合材料の一部の性質が大幅に低下することに留意すべきである。たとえば、サーモメカニカルパルプで強化されたPP複合材料の引張強度および衝撃強度は、繊維含有量が0から60重量%まで増加すると、それぞれ約30MPaおよび51J/mから約14MPaおよび31J/mまで低下した[Mantia,F.P.L.,M.Morreale,and Z.A.M.Ishak,Processing and mechanical properties of organic filler−polypropylene composites.Journal of Applied Polymer Science,2005.96(5):p.1906−1913]。この性質の低下は、マトリックス中への不十分な分散、および繊維とマトリックスとの間の弱い界面接着、および繊維の損傷のためである[Bledzki,A.K.,S.Reihmane,and J.Gassan,Thermoplastics Reinforced with Wood Fillers:A Literature Review.Polymer−Plastics Technology and Engineering,1998.37(4):p.451−468]。特に10重量%を超える水分を含有する繊維の場合の、繊維が自己凝集する傾向のため、疎水性マトリックス中での均一な分散が困難となる。現在のところ、ポリオレフィンとブレンドする前の天然繊維は、繊維の自己凝集を減少させるために、1重量%未満の水分まで乾燥させる必要があり[Karmarkar,A.,et al.,Mechanical properties of wood−fiber reinforced polypropylene composites:Effect of a novel compatibilizer with isocyanate functional group.Composites Part A:Applied Science and Manufacturing,2007.38(2):p.227−233.]、これには乾燥装置が必要であり、多量のエネルギーを消費する。繊維のペレット化は、繊維の供給および分散を容易にする別の方法である。ペレット化方法は、繊維の含水量を60〜70%まで増加させるステップと、メッシュおよび回転ナイフを用いてペレット化するステップと、1%未満の水分まで乾燥させるステップとを含み、これは明らかにコストが増加し、繊維の損傷は回避できない。たとえば、ケミサーモメカニカルパルプ繊維の長さおよびアスペクト比は、ペレット化の後に、それぞれ1.50mmおよび42から0.84mmおよび23.9まで減少した[Nygard,P.,et al.,Extrusion−based wood fibre−PP composites:Wood powder and pelletized wood fibres−a comparative study.Composites Science and Technology,2008.68(15−16):p.3418−3424]。押出成形中に激しい繊維の損傷が通常は観察された。たとえば、La Mantia et al.(上記文献)には、二軸スクリュー押出後に、60重量%の繊維を含有するポリプロピレン複合材料中の木繊維の長さが80%を超えて減少することが報告されている。最小限の繊維の損傷でポリマーマトリックス中に天然繊維を均一に分散させることは依然として大きな課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、最小限の繊維の損傷、および純ポリマーよりも改善された引張特性で、湿潤天然繊維を均一にポリマーマトリックス中に分散させる方法を提供することである。湿潤繊維を使用することで、繊維の乾燥に必要なエネルギーに関する製造コストの低減も期待される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、天然繊維/デンプン熱可塑性プラスチック複合材料の製造方法であって:ある総量の天然繊維を含む湿潤天然繊維を提供するステップと;ある総量のデンプンを含むデンプンを提供するステップと;ある総量の可塑剤を含む可塑剤を提供するステップと;ある総量の熱可塑性プラスチックを含む熱可塑性プラスチックを提供するステップと;湿潤天然繊維、デンプン、および可塑剤を水と混合してペーストを形成するステップであって、水がある総量の水を含むステップと、ペーストを熱可塑性プラスチックと配合して複合材料を形成するステップとを含む、方法が提供される。
【0009】
本明細書に記載の方法の別の一態様では、湿潤天然繊維、デンプン、および可塑剤を水と混合してペーストを形成するステップは、重量比WR
paste=(乾燥重量基準での天然繊維の総量+乾燥重量基準でのデンプンの総量+可塑剤の総量)/水の総量=約0.5〜1となることに基づいている。
【0010】
本明細書に記載の方法の別の一態様では、ペーストを乾燥させてフィルムにするステップ、熱可塑性プラスチックと配合する前にフィルムを切断してストリップにするステップをさらに含むこと。
【0011】
本明細書に記載の方法の別の一態様では、熱可塑性プラスチックは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、およびそれらの組合せから選択され、熱可塑性プラスチックは、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、およびそれらの組合せの少なくとも1種類でそれぞれがグラフトされたポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルの少なくとも1種類をさらに含む。
【0012】
本明細書に記載の方法の別の一態様では、熱可塑性プラスチックは、ポリプロピレン、および無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレンである。
【0013】
本明細書に記載の方法の別の一態様では、可塑剤はグリセロールである。
【0014】
本発明の別の一態様では、天然繊維/デンプン熱可塑性プラスチック複合材料の製造方法であって:ある総量の天然繊維を含む湿潤天然繊維を提供するステップと;ある総量のデンプンを含むデンプンを提供するステップと;ある総量の可塑剤を含む可塑剤を提供するステップと;ある総量の熱可塑性プラスチックを含む熱可塑性プラスチックを提供するステップと;湿潤天然繊維、デンプン、および可塑剤を水と混合してペーストを形成するステップであって、水がある総量の水を含むステップと、ペーストを乾燥させてフィルムにするステップと、熱可塑性プラスチックと配合する前にフィルムをストリップに切断するステップと、およびペーストを熱可塑性プラスチックと配合して複合材料を形成するステップとを含む、方法が提供される。
【0015】
少なくとも本明細書のパラグラフ0に記載の方法の別の一態様では、湿潤天然繊維、デンプン、および可塑剤を水と混合してペーストを形成するステップは、重量比WR
paste=(乾燥重量基準での天然繊維の総量+乾燥重量基準でのデンプンの総量+可塑剤の総量)/水の総量=約0.5〜1となることに基づいている。
【0016】
本明細書に記載の方法の別の一態様では、熱可塑性プラスチックは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、およびそれらの組合せから選択され、熱可塑性プラスチックは、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、およびそれらの組合せの少なくとも1種類でそれぞれがグラフトされたポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルの少なくとも1種類をさらに含む。
【0017】
本明細書に記載の方法の別の一態様では、熱可塑性プラスチックは、ポリプロピレン、および無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレンである。
【0018】
本明細書に記載の方法の別の一態様では、可塑剤はグリセロールである。
【0019】
本発明のさらなる一態様では、50重量%の天然繊維/デンプンおよび可塑剤と、50重量%の熱可塑性プラスチックとを含み、引張弾性率が1450MPaを超え、引張強度が41MPaを超える、天然繊維/デンプン熱可塑性プラスチック複合材料が提供される。
【0020】
本明細書に記載の複合材料の別の一態様では、熱可塑性プラスチックは、ポリプロピレン、および無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレンである。
【0021】
本明細書に記載の複合材料の別の一態様では、可塑剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0022】
本明細書に記載の複合材料の別の一態様では、可塑剤はグリセロールである。
【0023】
本明細書に記載の複合材料の別の一態様では、グリセロールは複合材料中31重量%である。
【0024】
本発明によると、繊維中の水は、デンプンを可塑化するために使用され、一方、繊維は熱可塑性デンプンの性質を向上させる。得られた熱可塑性デンプンは、次に、複合材料中への繊維の供給および均一な分散を促進する繊維担体として使用され、複合材料製造プロセス中の繊維の損傷を防止する。湿潤繊維中の水分、およびグリセロールなどの少量の可塑剤は、デンプンを可塑化するために使用される。このようにして天然繊維は、おそらくは多糖および植物繊維と化学的に類似しているため可塑化したデンプン中に均一に分散することができ、互いの相溶性を増加させることができる。調製された複合材料は、50重量%を超える繊維/デンプン含有量において、通常のポリマーよりも高い引張特性を示す。湿潤繊維を用いて調製された複合材料は、乾燥繊維を用いて調製された複合材料よりも高い強度特性も有する。
【0025】
この新規方法は、セルロースナノ結晶、セルロースフィラメント、微結晶性セルロースなどの別のセルロース系生成物にも使用することができる。これらのセルロース生成物中の水はデンプンを可塑化するために使用することができ、他方、セルロース系生成物はデンプンの性質を向上させる。さらに、デンプンは、これらのセルロース系生成物をポリマー複合材料中に均一に分散させるための担体として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態による天然繊維/デンプンを熱可塑性プラスチック中に混入する方法を示すブロック図である。
【
図2】本発明の別の一実施形態による天然繊維/デンプンを熱可塑性プラスチック中に混入する方法を示すブロック図である。
【
図3(a)】本発明の一実施形態による、50%のTMP/TPS分率でTMP/TPS(サーモメカニカルパルプ/熱可塑性デンプン)強化PP複合材料の引張弾性率(MPa)の変化をグリセロールおよびMAPPの含有量の関数として示す棒グラフである。
【
図3(b)】
図1(a)の実施形態による、50%のTMP/TPS分率におけるTMP/TPS強化PP複合材料の引張弾性率(MPA)の変化をグリセロールおよびMAPPの含有量の関数として示す棒グラフである。
【
図4】PP分率100%と比較した強化(TMP/TPS)/(PP)複合材料のTMP/TPS(湿潤繊維を有する)6試料の引張弾性率(MPa)、引張強度(MPa)の変化を示す棒グラフであり、(TPM/TPS)/(PP)は、10/90%;25/75%;35/65%;50/50%;65/35%から75/25%(すべての%は重量パーセント値である)であり、本発明の一実施形態による一段階方法によって作製した。
【
図5(a)】ある繊維含有量(0、10、および25重量%)における(TPM/TPS)/PPの引張弾性率(MPa)を示しており、本発明の別の一実施形態により作製した繊維強化熱可塑性デンプン複合材料に対する製造方法(乾燥繊維または湿潤繊維を用いる)の影響を示している棒グラフである。
【
図5(b)】ある繊維含有量(0、10、および25重量%)における(TPM/TPS)/PPの引張強度(MPa)を示しており、本発明の別の一実施形態により作製した繊維強化熱可塑性デンプン複合材料に対する製造方法(乾燥繊維または湿潤繊維を用いる)の影響を示している棒グラフである。
【
図6】ニートのPP、ならびにホットポット法および一段階方法によって作製したTMP/TPS強化PP複合材料の引張特性である。
【
図7a】湿潤繊維を用いてマスターバッチ法で作製したドッグボーン型複合材料試験試料を示している。
【
図7b】乾燥繊維を用いて作製した本発明の一実施形態による天然繊維/デンプン熱可塑性プラスチック複合材料を示している。
【
図8(a)】湿潤繊維を用いて作製した本発明の一実施形態による
図7aのドッグボーン型複合材料の顕微鏡画像である。
【
図8(b)】乾燥繊維を用いて作製した本発明の一実施形態による
図7bのドッグボーン型複合材料の顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、湿潤天然繊維または別のセルロース系生成物を熱可塑性プラスチック中に均一に混入する方法に関し、結果として向上した熱可塑性プラスチックが得られる。
【0028】
湿潤繊維は、後述するような一段階プロセス、または「ホットポット」方法とも呼ばれる二段階マスターバッチプロセスのいずれかによって熱可塑性プラスチック中に混入することができる。一段階プロセスでは、同じポリマー加工装置を用いて連続方法で複合材料材料が製造され:最初に湿潤パルプ繊維がデンプン粒およびグリセロールと混合され、次にある条件下でデンプンが可塑化され、最後に、可塑化デンプンがポリマーおよび相溶化剤と混合されて、複合材料が形成される。
【0029】
二段階方法(ホットポット方法)では、多量の水の存在下でホットポット中のデンプン懸濁液中に天然繊維を分散させた。天然繊維を高温のデンプン懸濁液中に分散させてデンプンを可塑化させた。ポリマー加工装置中で熱可塑性プラスチックとブレンドする前に、天然繊維が中に均一に分散した可塑化デンプンスラリーを対流オーブン中で乾燥させた。湿潤繊維を用いて製造した複合材料と、乾燥繊維を用いて製造した複合材との間で比較すると、本発明の湿潤繊維プロセスによって、均一な繊維の分散および最小限の繊維の損傷を実現できることが示される。
【0030】
天然繊維は、非常に低い固形分(8〜10%)で水溶液中でゲルを形成する傾向にある。蒸発による除去が非常に困難である、ゲル内部の水。本明細書に記載の方法では、天然繊維中の水が利用され、および/またはデンプンの可塑剤として天然繊維を分散させるために使用した。1種類以上のさらなる可塑剤を有する湿潤繊維およびデンプンの混合物/ペーストは、任意の残留水と熱機械的にブレンドすることで、繊維の分散およびデンプンの可塑化をさらに向上させることができる。可塑化デンプン中の任意の残留水は、ポリマーの加工中に容易に蒸発させることができる。この天然繊維を含有する熱可塑性デンプン(TPS)は、次に熱可塑性ポリマーとブレンドすることで、物理的性質が向上した生体高分子複合材料を得ることができる。
【0031】
本明細書に記載の方法は、最小限の繊維の損傷で、配合前に繊維を乾燥する必要なく、湿潤天然繊維を熱可塑性プラスチック複合材料中に均一に混入するという利点を有し、したがって従来技術の欠点が克服される。得られるTPS/繊維/熱可塑性プラスチック複合材料は、対応するニートポリマー複合材料または乾燥させた繊維を用いて作製した複合材料よりも高い強度を有する。
【0032】
湿潤繊維は、一段階方法または二段階マスターバッチ法のいずれかによって、熱可塑性プラスチック中に導入することができる。
【0033】
本明細書に記載のこの方法は、セルロースナノ結晶、セルロースフィラメント、微結晶性セルロースなどの他のセルロース系生成物の場合にも使用でき、これらのセルロース生成物中の水はデンプンの可塑化に使用することができ、他方、セルロース系生成物はデンプンの性質を向上させる。さらに、デンプンは、これらのセルロース系生成物をポリマー複合材料中に均一に分散させるための担体として機能する。
【0034】
図1は、本発明による湿潤状態の(乾燥していない)天然繊維を熱可塑性プラスチック中に混入する「一段階」プロセス10の一実施形態を示している。このプロセスは、天然繊維12、デンプン14、および可塑剤16、および水18の混合/ブレンド11から始まる。ある総量または分量(重量)の天然繊維12、デンプン14、および可塑剤16、および水18のそれぞれが供給される。
【0035】
重量比WR
paste、これは乾燥重量基準の繊維 デンプンおよび可塑剤の総量の合計をペーストに加えた水の総量で割ったものである。
【0036】
WR
paste=(繊維+デンプン+可塑剤)/水は約0.5〜1であり、ここで繊維およびデンプンは乾燥重量基準である。可塑剤が粉末の場合、WR
pasteの計算に使用される可塑剤の総量も乾燥基準となる。
【0037】
好ましい一実施形態では、重量比WR
pasteは約0.1〜5、好ましくは0.2〜2、最も好ましくは0.5〜1である。
【0038】
繊維/デンプン/可塑剤/水/はブレンドされてTPS/TMPペースト22となり、これは加熱21が行われると、一般に水蒸気24が放出される。ある総量または分量(重量)の熱可塑性プラスチックが供給される。TPS/TMPペースト22/熱可塑性プラスチック(TP)34の重量比、すなわちWR
compositeは変動させることができ、この比は25/75(0.25)、35/65(0.5375)であってよく、最も好ましくは50/50(1)であってよい。WR
compositeは、TPS/TMPペースト22の乾燥基準の重量を、熱可塑性プラスチック34の乾燥基準の重量で割ることによって計算される。
【0039】
TPS/TMPペースト32と熱可塑性プラスチック34との混合/ブレンドは配合31と呼ばれる。より高温が一般に使用され、それによって成分の粘度が低下し、熱可塑性プラスチック(TP)34およびTPS/TMPペースト32の均一な配合が促進される。ここでTPS/TMP/熱可塑性プラスチック複合材料42は、複合材料物体への成形41が行える状態にある。
【0040】
「天然繊維」は、特に木材、亜麻、大麻、ジュート、綿、サイザル、ケナフ、籐、つる植物、竹、草、およびそれらのあらゆる組み合わせのあらゆる天然繊維として本明細書において規定される。好ましい一実施形態では、天然繊維は、その自然状態または未乾燥形態で使用される針葉樹サーモメカニカルパルプ(TMP)である。
【0041】
「デンプン」は、グリコシド結合−O−によって互いに結合した複数のグルコース単位で構成される複合炭水化物として本明細書において規定される。好ましい一実施形態では、デンプンは、(微粉末としてではなく)ペレット形態であり、小麦を主成分とする。
【0042】
「可塑剤」は、材料の流動性/可塑性を増加させる化合物として本明細書において規定される。本明細書の説明において、可塑剤は、ペーストの流動性を改善する。好ましい一実施形態では、可塑剤は、ジ−、トリ−ヒドロキシド、エーテル、またはカルボン酸エステルである。好ましい一実施形態では、可塑剤は、フタル酸ジエチル、フタル酸ジソブチル(disobutyl)、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジイソブチル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの組合せからなる群から選択される。好ましい一実施形態では、可塑剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、およびそれらの組合せからなる群から選択される。特に好ましい一実施形態では、可塑剤はグリセロールである。
【0043】
「熱可塑性プラスチック」は、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、およびそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーとして本明細書において規定される。特に好ましい一実施形態では、熱可塑性プラスチックは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの組合せである。好ましい一実施形態では、熱可塑性プラスチックは、熱可塑性プラスチックにグラフトした可塑剤部分で官能化することができ、好ましい一実施形態では、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルに、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、およびそれらの組合せがグラフトされる。特に好ましい一実施形態では、熱可塑性プラスチックは、ポリプロピレン、および無水マレイン酸をグラフトしたポリプロピレンである。
【0044】
「複合材料」は、成形できる状態または成形後の、天然繊維/デンプン、および可塑剤、ならびに熱可塑性プラスチックの混合物と理解される。
【0045】
「乾燥重量基準」は、完全に乾燥したときの原材料の重量(質量)と理解される。
【0046】
図2は、天然繊維を熱可塑性プラスチック134中に混入する「二段階」プロセス101または「ホットポット方法」の一実施形態を示している。最初に、水118および可塑剤116の混合111が行われて、水溶液/懸濁液115が形成される。天然繊維112が溶液/懸濁液115に加えられ、繊維混合物125が形成される。加熱131が行われながら、繊維混合物125がデンプン114と混合され、水蒸気124が一般に放出され、繊維/デンプン混合物135が形成される。さらなる処理の前に混合物135の乾燥141が行われ、さらに水蒸気126が放出される。繊維/デンプン乾燥プロセス141は、一般に対流オーブン中のメッシュ上で行われ、繊維/デンプンフィルム層145が形成される。
【0047】
繊維/デンプンを形成するための乾燥151は、一般に少なくとも12時間、好ましくは12〜24時間の間、より好ましくは24時間の長さである。151のプロセス中の乾燥温度は、60℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは45℃未満、最も好ましくは40℃である。
【0048】
次に繊維/デンプンフィルム145は、フィルム145を巨視的な断片155に切断または裁断することによる準備151が行われる。巨視的な断片155をペレットにするためにペレット化プロセスを使用することもできる。断片/ペレット155は約160℃の加熱容器に移され、そこで断片155と熱可塑性プラスチック134との配合161が行われる。配合されたTPS/TMP/TP165は、次に取り出して、成形171を行うことができる。成形171は一般に圧縮成形である。
【実施例】
【0049】
使用した場合の以下の原材料/化学物質:針葉樹(スプルース)サーモメカニカルパルプ(TMP)、顆粒形態の小麦デンプン、グリセロール、ポリプロピレン(PP)、および無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(MAPP)。
【0050】
デンプン/PP複合材料の強化材として使用した針葉樹TMP繊維は、平均で、2.02mmの繊維長さおよび66%の含水量を有した。小麦デンプン粒は25%のアミロースおよび10%の水分を含有した。
【0051】
使用されるデンプン用可塑剤は、試薬グレードのグリセロールであった。
【0052】
メルトフローインデックスが13g/10分であるポリプロピレンホモポリマーPP1024E4をExxonMobilより購入した。このPPのグレードは、自動車、キャストフィルム、配合、包装、および医療/健康管理産業の用途用と記載されている。
【0053】
使用したMAPPは、酸価および分子量がそれぞれ15mgKOH/gおよび47,000g/molであった。
【0054】
一段階プロセスの概念は、工業規模で使用されるような二軸スクリュー押出機中の連続処理を模倣する密閉式バッチミキサー(Thermo Scientific Haake Polylab QC Internal mixer)を用いて確認した。この密閉式ミキサーは約30cm
3のチャンバーおよび3つの発熱体を有した。実施例の一段階プロセスにおいて、すべての原材料は、予備処理を実質的に行わずに実質的にそれらの自然状態で使用される。「予備処理なし」は、本発明による処理の前に乾燥、粉砕、濾過を実質的に行わないことを意味するものと理解されたい。
【0055】
デンプン粒、グリセロール、およびパルプ繊維を、水の存在下で手作業で混合して、ドウ状の混合物を形成した。使用した水の量は、乾燥デンプン、乾燥パルプ繊維、およびグリセロールの全重量と同量であった。密閉式ミキサーはあらかじめ165℃に加熱し、100rpmに設定した。ドウ状混合物を密閉式ミキサーに入れ、約6分間ブレンドし、その間水蒸気を排出する必要があった。次にチャンバー温度を160℃で制御し、PPおよびMAPPを加え、60rpmで10分間混合した。処理の終了後、複合材料を取り出し、圧縮成形してドッグボーン型に成形された試料を得た。
【0056】
ホットポット混合方法(
図2に示される)では、2リットルの容量のバレル型容器、容器底部に取り付けられた発熱体、温度制御装置、熱電対、および出力が1HPであり直径8cmの多歯混合ブレードを有する実験室用ミキサーの単純な装置一式を使用する。すべての原材料は入手した状態で使用した。最初に、800mLの水道水、および特定の量のグリセロールを容器中で混合しながら、混合物を約40℃に加熱した。
【0057】
湿潤パルプ繊維を容器に入れ、水およびグリセロールと混合し、パルプ繊維が十分に膨潤し、水/グリセロール混合物中に分散するまで5分間混合した。デンプン粒を徐々に加え、40℃で5分間混合した。次に混合物全体を約2.5℃/分の加熱速度で90℃の温度まで加熱した。加熱中、混合物の粘度の変化により回転速度を制御した。上記温度に到達してから、さらに3分間の混合を行い、次に、得られたペースト混合物をシリコーン容器中に排出した。ペースト混合物を40℃の対流オーブン中で24時間乾燥させた。こうして形成されたTMP/TPSバイオ複合材料を約5×5×5mm
3のサイズのペレットに切断した。表1は、両方の方法で作製した一部の前駆混合物(TPS)およびTMP/TPSバイオ複合材料の組成を示している。
【0058】
【表1】
【0059】
密閉式ミキサーを用いてTMP/TPSバイオ複合材料をPPと配合した。TMP/TPSバイオ複合材料をPPと配合するために、密閉式ミキサーをあらかじめ165℃に加熱し、回転速度を50rpmに設定した。最初にパルプ繊維を含有するTMP/TPSバイオ複合材料を密閉式ミキサーに加えてブレンドし、温度を160℃に到達させてから、PPおよびMAPPを同時に加え、60rpmの速度でさらに12分間混合した。密閉式ミキサーから取り出した複合材料試料を圧縮成形してドッグボーン型試料を得た。
【0060】
23%、31%、および38%のグリセロール重量%を有する試料を作製した。これらの同じ試料を6.25%、3.75%、および1.875%のMAPPの重量%で作製し、引張弾性率(MPa)および引張強度(MPa)の引張特性をそれぞれ
図3(a)および3(b)に示している。
図3(a)および3(b)に示されるすべての試料は、ホットポット方法により作製し、50/50の比率でPPと配合したTMP/TPSバイオ複合材料を有した。
【0061】
グリセロールおよびMAPPの含有量の変化は、最終複合材料の引張特性に影響を与えた。すべてのMAPP量において、31重量%のグリセロール含有量で、23および38重量%と比較して最も高い引張特性が得られた。3.75重量%のMAPP含有量では、他の2つの使用量よりも高い引張特性が得られた。したがって、引き続く以下の実施例では31重量%のグリセロール、20重量%のパルプ繊維、および3.75重量%のMAPPを選択した。
【0062】
一段階方法で作製した種々のTMP/TPS含有量(0、10、25、35、50、65、および75重量%)におけるTMP/TPS/PP複合材料の引張特性を
図4に示している。ニートPPの引張弾性率および引張強度は、それぞれ約920および32MPaであった。TMP/TPS含有量を(0から75%まで)増加させると、引張弾性率は約81%だけ大きく増加し、引張強度はピーク値に到達し、これはTMP/TPS含有量50%においてニートPPよりも約23%大きかった。75%のTMP/TPSにおいて、複合材料はニートPPよりもわずかに高い引張強度を依然として有した。これらの結果は、La Mantia[上記文献]に報告される結果よりも優れている。La Mantiaは、天然繊維で強化したPP複合材料の引張強度は、繊維含有量の増加とともに低下し、繊維含有量60重量%において、引張強度はニートPPよりも約50%低下したと報告している。通常、La Mantia[上記文献]で使用された射出成形方法によって作製された試験試料は、圧縮成形によって作製された試料よりも高い引張強度を示すが、その理由は射出中に流動方向に繊維が配向するためである。したがって、本発明の湿式混合方法では、おそらくは繊維の分散がより良好であり繊維の損傷がより少ないため、複合材料の強度が改善される。
【0063】
図5(a)および5(b)は、湿潤繊維または乾燥繊維のいずれかを用いて一段階方法で作製したTMP/TPSバイオ複合材料の引張特性を比較している。TMP/TPS中の繊維は、0から25%w/wまで変化させた。図示されるように、パルプ繊維含有量の増加によって、引張弾性率および引張強度が改善され、これによってTPSに対する繊維の強化効果が示された。しかし、10および25重量%の湿潤繊維を用いて作製したTMP/TPSバイオ複合材料は、乾燥繊維を用いて作製した試料よりも高い引張強度を有する。視覚的に、湿潤繊維を用いた試験試料は、乾燥繊維を用いた試料よりも繊維がより均一に分散することが示され、このことがより高い引張強度に寄与している。
【0064】
図6は、ホットポット方法および一段階方法(湿潤繊維および乾燥繊維)によって作製した異なる試料の引張特性を示している。最終複合材料中の50%のPPの代わりにTMP/TPSを使用した(複合材料の最終組成は、複合材料の全重量を基準として、10%の木繊維、15%のグリセロール、25%のデンプン、および50%のPPである)。湿潤繊維を用いて一段階方法で得られた複合材料は、ホットポット方法で得られた試料と同等の引張特性を有することが明らかに示されている。これらの結果は、一段階方法中の湿潤繊維が、ホットポット方法における湿潤繊維と非常に類似した繊維の分散を有することを示している。乾燥繊維を用いて一段階方法によって作製した複合材料は、湿潤繊維を用いて作製した複合材料よりも低い引張弾性率および引張強度を示した。これらの結果は、湿潤繊維を用いることによって均一な繊維の分散および最小限の繊維の損傷が実現されたことを裏付けている。
【0065】
図7(a)および7(b)は、(a)湿潤繊維、(b)乾燥繊維を用いてマスターバッチ方法で作製したドッグボーン型複合材料の試験試料である。最終複合材料中の50%のPPの代わりにTMP/TPSを使用し、最終複合材料の組成は、複合材料の全重量を基準として、10%の木繊維、15%のグリセロール、25%のデンプン、および50%のPPである)。
図7(a)および7(b)は、湿潤繊維を用いた複合材料が、複合材料中の繊維のより均一な分散を示し、乾燥繊維を用いた試料は複合材料中に多数の繊維の束を依然として有する(試料全体にわたってより明るい領域として見られる)ことを示している。
【0066】
図8(a)および8(b)は、(a)湿潤繊維および(b)乾燥繊維を用いた
図7(a)および7(b)の複合材料試料の顕微鏡画像である。これらの写真は、湿潤繊維方法によって均一な複合材料が製造され、複合材料マトリックス中に繊維が十分に分散していることをさらに明確に示している。対照的に、乾燥繊維方法の複合材料中には多数の繊維の束が存在する(この場合も試料全体のより明るい領域としてみることができる)。本発明者らは、湿潤繊維中の水がデンプンの可塑化を促進し、デンプンのみが複合材料中に使用される場合の強度低下を補償すると考えている。他方、可塑化したデンプンは、繊維担体として機能し、繊維の損傷を最小限にし、複合材料製造プロセス中の繊維の分散を促進する。
【0067】
予備的な結果として、0.5重量%のセルロースナノ結晶(CNC)を20%熱可塑性デンプン(TPS)/80%LDPEポリマー複合材料に加えることで、引張強度が、CNCを含まない20%TPS/80%LDPE複合材料よりも40%、100%LDPEポリマーよりも30%が改善されることも示された。さらに、0.5重量%のCNCを20%TPS/80%LDPEに加えても、CNCを含まない20%TPS/80%LDPE複合材料と比較して破断時伸びの変化は得られなかった。しかし、このポリマー複合材料の破断時伸びは、100%LDPEポリマーよりも25%大きかった。