【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明に従えば、医療用器具、特に歯科用又は外科用器具を振動回転運動させるための(機械的)駆動装置により解決される。この振動回転運動では、器具を、第1回転方向に第1回転角だけ回転させると共に、前記第1回転方向とは実質的に異なる第2回転方向に第2回転角だけ交互に回転させ、第1回転角及び第2回転角を互いに異ならせて、器具を、第1及び第2回転方向に複数回、連続的に回転させれば、所望方向への累積的な回転運動が生じる構成とする。この場合に駆動装置は、第1回転軸線周りに回転すると共に、駆動運動、特に単方向回転運動を伝達するよう構成される駆動軸と、器具を振動回転運動させ、かつ第2軸線周りに回転可能な出力軸と、駆動軸を出力軸に結合する偏心ギヤユニットとを備える。この偏心ギヤユニットは、少なくとも1個の偏心ピンと、この偏心ピン用の少なくとも1個の収容又はキャリアユニットを含む。これら偏心ピン及び収容又はキャリアユニットは互いに協働させて、出力軸及びこの出力軸に結合可能な器具に振動回転運動を生じさせる。
【0006】
このことは、以下に詳述するように、駆動軸からの駆動運動、特に単方向回転運動を振動回転運動に変換するのに1個のギヤユニット、特に1個の偏心ギヤユニットだけが必要なことを意味する。偏心ギヤユニットは、好適には、駆動軸からの駆動運動又は単方向回転運動を振動回転運動に変換し、特に他のギヤユニットを必要とせずに出力軸に伝達するよう構成される。本発明に係る偏心ギヤユニットの構成には、省スペース化及び安価に製造可能という点で従来の伝達ユニットに比べて大きな利点がある。なぜなら、従来の伝達ユニットでは、振動回転運動を生じるために、往復運動しか生じない偏心ギヤユニットに加えて第2ギヤユニットも必要とされるからである。
【0007】
偏心ギヤユニットは、好適には、駆動軸上及び/又は出力軸上に設けられた軸受、とりわけローラ軸受又はボール軸受によって支持される。偏心ギヤユニットは、好適には、金属及び/又はプラスチックで構成される。偏心ギヤユニットには、好適には、駆動軸の第1回転軸線及び/又は出力軸の第2回転軸線が通過する。
【0008】
偏心ピン用の収容ユニットは、好適には、第1回転軸線又は第2回転軸線を包囲するほぼ円筒状の表面上に設けられるか、又は第2回転軸線を包囲する円筒体の一部として構成される。収容ユニット又はキャリアユニットは、好適には、少なくとも1つの凹部又は溝を含む。特に好適には、偏心ピン用の収容ユニットは、第1回転軸線又は第2回転軸線周りに自己完結(無端)トラック若しくはガイドを含むか、又は収容ユニット自体によって第1回転軸線周り若しくは第2回転軸線周りにそのような自己完結(無端)トラック若しくはガイドが構成される。特に好適には、収容ユニット、とりわけトラック又はガイドは、第1回転軸線周り又は第2回転軸線周りに、第1回転軸線又は第2回転軸線を包囲するほぼ円筒状の表面上で波形状又は曲線状に延びる構成とする。収容ユニット又はキャリアユニットは、好適には、出力軸の第2回転軸線に対してほぼ軸線方向に延びる少なくとも1つのセクション又は溝を含む。収容ユニット、特に出力軸の第2回転軸線に対してほぼ軸線方向に延びる上記溝は、好適には、少なくとも1つのセクションにて、出力軸の第2回転軸線方向に傾斜させた底面を有する。これにより収容ユニット又は溝は、好適には、特に収容ユニット又は溝が設けられたほぼ円筒状の表面又は外面に対して、少なくとも1つのセクションにて深さが異なる。
【0009】
一実施形態において、偏心ピン用の収容ユニット又はキャリアユニット又はトラックは、互いに角度付きで配置される複数のセクションを含む。この場合に収容ユニットは、好適には、ほぼY字状に形成されると共に、特にY字の側方アーム端で互いに結合される複数のセクションを含む。Y字におけるこれら側方アームは、好適には、互いに若干ずらせて及び/又はY字における垂直又は第3アームに対してずらせて配置される。
【0010】
偏心ピン用のキャリアユニット又は収容ユニットは、好適には、出力軸を第1回転方向に回転させるよう形成される少なくとも1つのセクションと、出力軸を第2回転方向に回転させるよう形成される少なくとも1つのセクションとを含む。特に好適には、出力軸を第1回転方向に回転させるよう形成される第1セクションは、互いに角度付きで配置される複数のサブセクションを有する。好適には、第1セクション及び第2セクションは異なる長さを有する。特に、出力軸を所望方向に回転運動させるセクションは、出力軸を所望方向とは逆方向に回転させるセクションに比べてより長い。所望方向とは逆方向に出力軸の回転運動を生じさせるセクションは、好適には、収容ユニットに形成されるY字状セクションの側方アームにおける少なくとも1つの端部に配置される。
【0011】
偏心ピン用の収容ユニット又はキャリアユニット、特に溝は、好適には、出力軸の第2回転軸線とほぼ平行に配置される少なくとも1つのセクションを含む。特にこのセクションは、収容ユニットに関して上述したY字状セクションにおける垂直方向アームに相当する。特にこのセクションを起点として、出力軸の第2回転軸線とほぼ平行に配置される第1アームが第1方向に延びると共に、第2アームが第1方向とは異なる第2方向に延びる。Y字におけるこれら2つのアーム又は側方アーム間の角度は、好適には90°よりも大きい。
【0012】
特に好適には、第1アームは、第1エッジを含み、また第2アームは、第2エッジを含む。この場合にこれらエッジは、接点で合流する。この接点は、中心軸の第2回転軸線周りと平行に配置されるセクションの中心軸線から離間させるか、又は水平方向にずらせて配置されるか、又は上記セクションの外側に配置される。この接点の配置により、所望方向への偏心ピン又は偏心ギヤユニットの回転が規定されるか、又は特に所望方向とは逆方向への偏心ピン又は偏心ギヤユニットの回転が抑止されるか若しくは抑制される。各アームにおける2つのエッジにより、好適にはこれらアームが画定され、特にこれらエッジにより、アーム又は溝の上端部が画定される。特に2つのアームは、それぞれ、アーム又は溝の下端部を画定する更なるエッジを有する。各下端部は、好適には、出力軸の第2回転軸線とほぼ平行に配置されるセクションか、又は収容ユニットにおけるY字状セクションの垂直方向アームに移行する。
【0013】
この実施形態において、偏心ギヤユニットは、偏心ピンが、収容ユニット又はキャリアユニットに形成される溝又はガイド又はトラック内を移動する。この場合、上述した溝又はガイド又はトラックの形状により、特に収容ユニットに直接又は一体的に結合される出力軸に振動回転運動を生じさせることができる。
【0014】
代替的な実施形態において、偏心ギヤユニットは、第1収容ユニット又はキャリアユニットが割り当てられた第1偏心ピンと、第2収容ユニット又はキャリアユニットが割り当てられた第2偏心ピンを含む。この場合に偏心ギヤユニットは、好適には、偏心ピン及びこの偏心ピンに割り当てられた収容ユニットが出力軸を第1方向、例えば所望方向に回転させ、他方の偏心ピン及びこの偏心ピンに割り当てられた収容ユニットが出力軸を第1方向又は所望方向とは異なる第2方向に回転させる。偏心ギヤユニットは更に、好適には、2個の収容ユニットによる回転角が異なる値を有し、従って出力軸全体に振動回転運動を生じさせる。
【0015】
第1偏心ピン及び第2偏心ピンは、好適には、駆動軸の第1回転軸線に対して距離を異ならせて配置される。駆動軸は、好適には、出力軸を指向する端面を有し、この端面の外縁部又は外縁部近傍に偏心ピンが配置される。これら2個の偏心ピンは、好適には、駆動軸の第1回転軸線に対してほぼ直交する共通線上に設けられる。
【0016】
第1収容ユニット及び第2収容ユニットは、好適には互いに離間させ、特に出力軸の第2回転軸線に対して、互いに軸線方向に離間させる。この場合に第1及び第2収容ユニットは、好適には、凹部によって互いに離間させる。
【0017】
好適には、第1収容ユニットは複数の第1溝を含み、第2収容ユニットは複数の第2溝を含む。これら第1及び/又は第2溝は、好適には、出力軸の第2回転軸線とほぼ平行に配置される。更に、第1及び第2溝は、好適には互いにずらせて配置されるため、第1溝及び第2溝が交互に設けられる。
【0018】
第1収容ユニット及び第2収容ユニットは、好適には、出力軸の第2回転軸線をほぼ円形状に包囲する。特に好適には、第1収容ユニット及び/又は第2収容ユニットは、ディスク状又はプレート状の要素として構成され、出力軸がその中央部を通過する。特に好適には、第1収容ユニット及び/又は第2収容ユニットは、ディスク状又はプレート状の要素として構成され、第1及び第2溝がその外周面又は外面に配置される。特に好適には、少なくとも1個の収容ユニットは、出力軸と一体的に構成される。
【0019】
第1収容ユニットの第1溝及び第2収容ユニットの第2溝は、好適には、円形状に配置により第2回転軸線及び/又は出力軸を包囲する。この場合、収容ユニットの各溝は、好適には、収容ユニットの外周周り及び/又は出力軸の第2回転軸線周りに均等に配置されるか、及び/又は互いに均等に離間させる。
【0020】
偏心ギヤユニットは、好適には、第1偏心ピンが第1収容ユニット又はキャリアユニットに、また第2偏心ピンが第2収容ユニット又はキャリアユニットに交互に係合するよう構成される。代替的又は付加的には、偏心ギヤユニットは、一方の偏心ピンが、対応する収容ユニットに係合することにより出力軸を回転させる間、他方の偏心ピンは出力軸の回転を生じさせない箇所に位置するよう構成される。
【0021】
他の実施形態において、偏心ギヤユニットは、複数個の偏心ピンを含み、これら偏心ピンの少なくとも2個は、駆動軸の第1回転軸線及び/又は出力軸の第2回転軸線に対して距離を異ならせて配置される。この場合に第1回転軸線及び/又は第2回転軸線は、好適には、複数個の偏心ピンの中央部に配置される。特に好適には、偏心ギヤユニットは、複数個の偏心ピンを含み、これら偏心ピンの少なくとも2個は、互いに離間させた軌道上を移動することができる。この場合に第1回転軸線又は第2回転軸線は、好適には、これら軌道の少なくとも1つにおける中心点、特に両方の軌道の中心点を形成する。
【0022】
キャリアユニットは、好適にはタペットを含み、偏心ピンがタペットに交互に係合するか及び/又は交互に接触する。このタペットは、特に互いに分離した複数のセクションを有し、これらセクションにより偏心ピンが係合する。これらセクションは、例えば、駆動軸又は出力軸におけるセットバック、凹部、又はチャンバにより形成される。この場合にセットバック、凹部、又はチャンバは、特に壁によって互いに分離させる。
【0023】
タペットの少なくとも一部、特に互いに分離させたセクションの少なくとも一部は、複数個の偏心ピンの少なくとも2個が移動する軌道上の間に配置される。特に好適には、タペットの回転軸線は、複数個の偏心ピンの少なくとも2個が移動する軌道上の間に配置される。代替的には、上記2つの軌道は、キャリアユニット又はタペットにおける特に互いに反対側に配置される領域又はセクションと交差させてもよい。
【0024】
タペットに連続的に係合及び/又は接触する偏心ピンは、好適には、タペットの異なるセクション、特にタペットのセットバック又はチャンバに連続的に係合又は接触するよう配置される。
【0025】
タペットに連続的に係合及び/又は接触する偏心ピンは、好適には、タペットを、互いに逆の回転方向及び/又は異なる回転角によって連続的に移動するよう配置される。
【0026】
タペットのセクション数及び偏心ピンの個数は、それぞれ2〜12とするのが好適である。第1回転軸線及び/又は第2回転軸線に対して距離を異ならせて配置される偏心ピンは、同数とするのが好適である。例えば、2個又は4個の偏心ピンは第1回転軸線に対してより近傍に配置され、やはり2個又は4個は第1回転軸線に対してより離間して配置される。互いに分離させた軌道上を移動することができるか又は配置される偏心ピンの個数は、同数とするのが好適である。例えば、2個又は4個の偏心ピンは第1軌道上に配置され、やはり2個又は4個の偏心ピンは第2軌道上に配置される。タペットにおいて、互いに分離させたセクション数及び偏心ピンの個数は、好適には同数とする。
【0027】
キャリアユニット又はタペットは、好適には、出力軸の一端に設けられる。出力軸は、好適には、複数部分で構成されると共に駆動運動を器具に伝達するための軸アセンブリの一部を構成する。特に好適には、キャリアユニット又はタペットとは反対側における出力軸の端部には、振動回転運動を器具に伝達するための歯車が設けられる。この歯車により、振動回転運動が器具用の器具保持装置に伝達される。
【0028】
駆動軸の第1回転軸線及び出力軸の第2回転軸線は、好適には、互いに角度付きで配置される。この場合の角度は0°よりも大きく、好適には5°〜45°とする。代替的には、駆動軸の第1回転軸線及び出力軸の第2回転軸線は、互いにほぼ平行に配置し及び/又は2つの回転軸線間の角度は0°とする。
【0029】
医療用器具、特に歯科用又は外科用治療装置、好適には歯内治療用として構成される医療用又は歯科用若しくは外科用ハンドグリップ要素は、好適には、駆動装置を備える。この駆動装置は、駆動軸からの駆動運動、特に単方向回転運動を振動回転運動に変換し、特に他のギヤユニットを必要とせずに出力軸に伝達する偏心ギヤユニットを備える。特に好適には、駆動装置は、駆動軸の第1回転軸線及び出力軸の第2回転軸線が互いに角度付きで配置されるよう治療装置内又はハンドグリップ要素内に設けられる。この場合の角度は0°よりも大きく、特に90°〜100°とする。
【0030】
上記治療装置又はハンドグリップ要素は、好適には、器具用の器具保持装置を含むヘッド部を備える。一実施形態に従えば、この器具保持装置の少なくとも一部は、出力軸上に配置される。特に好適には、グリップ部がヘッド部に隣接して設けられる。この場合、偏心ギヤユニットの少なくとも一部は、ヘッド部内及び/又はグリップ部内及び/又はヘッド部をグリップ部に結合する領域内に配置される。
【0031】
他の実施形態において、偏心ギヤユニットは、グリップ部、特にグリップ部における曲げ部又は角度付き領域に配置される。他の実施形態においては、医療用器具、特に歯科用又は外科用器具を振動回転運動させるための(機械的)駆動装置が設けられる。この振動回転運動では、器具を、第1回転方向に第1回転角だけ回転させると共に、第1回転方向とは実質的に異なる第2回転方向に第2回転角だけ交互に回転させ、第1回転角及び第2回転角を好適には互いに異ならせて、器具を、第1及び第2回転方向に複数回、連続的に回転させれば、所望方向への累積的な回転運動が生じる構成とする。この場合に上記駆動装置は、第1回転軸線周りに回転すると共に、駆動運動、特に単方向回転運動を伝達するよう構成される駆動軸アセンブリと、振動回転運動を生じるよう構成され、かつ第2軸線周りに回転可能な出力軸と、駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達することにより、出力軸及びこの出力軸に結合可能な器具に振動回転運動を生じさせる伝達ユニットとを備える。この伝達ユニットは、少なくとも1個の駆動側伝達要素及び少なくとも1個の出力側伝達要素を含む。少なくとも1個の駆動側伝達要素は、駆動軸アセンブリにより、第1回転軸線周りに回転させることができる。少なくとも1個の駆動側伝達要素及び少なくとも1個の出力側伝達要素の間で駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合は、少なくとも1個の駆動側伝達要素が駆動軸アセンブリの第1回転軸線周りに一回転するときに所定時間だけ生じる。ここに「一回転」とは、360°の回転を意味するものである。
【0032】
伝達ユニットは、出力側第1伝達要素及び出力側第2伝達要素を含むと共に、少なくとも1個の駆動側伝達要素及び出力側第1伝達要素の間と、少なくとも1個の駆動側伝達要素及び出力側第2伝達要素の間とで、駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合を交互に生じさせるよう構成される。
【0033】
代案として、伝達ユニットは、好適には、駆動側第1伝達要素及び駆動側第2伝達要素を含むと共に、少なくとも1個の出力側伝達要素及び駆動側第1伝達要素の間と、少なくとも1個の出力側伝達要素及び駆動側第2伝達要素の間とで、駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合を交互に生じさせるよう構成される。
【0034】
代案として、伝達ユニットは、特に第2ギヤユニットを構成する駆動側第1伝達要素及び出力側第1伝達要素と、特に第1ギヤユニットを構成する出力側第2伝達要素及び駆動側第2伝達要素(以下に偏心ギヤユニットと称される)を含む。この場合、駆動側第1及び出力側第1伝達要素は出力軸を第1回転方向に回転させ、駆動側及び出力側第2伝達要素は出力軸を第2回転方向に回転させるよう構成される。これら駆動側伝達要素は、駆動軸アセンブリにより、第1回転軸線周りに回転させることができる。少なくとも駆動側及び出力側第1伝達要素、又は駆動側及び出力側第2伝達要素、又は第1ギヤユニット若しくは第2ギヤユニットにより、駆動側及び出力側第1伝達要素の間、又は駆動側及び出力側第2伝達要素の間で、駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合が、駆動軸アセンブリの第1回転軸線周りに駆動側伝達要素が一回転するときに所定時間だけ生じる。
【0035】
言うまでもなく、伝達ユニットは、駆動側及び出力側第1伝達要素の間と、駆動側及び出力側第2伝達要素の間とで、駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合が、駆動軸アセンブリの第1回転軸線周りに駆動側伝達要素が一回転するときに所定時間だけ生じるよう構成することもできる。伝達ユニットは、好適には、(第2ギヤユニットの)駆動側及び出力側第1伝達要素と、(第1ギヤユニット又は偏心ギヤユニットの)駆動側及び出力側第2伝達要素との間で、駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合を交互に又は時間をずらせて生じさせるよう構成される。
【0036】
少なくとも1個の駆動側伝達要素又は少なくとも1個の出力側伝達要素は、好適には、対応する駆動側伝達要素又は出力側伝達要素に作動結合できることにより、駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達可能な第1セクションと、駆動側伝達要素及び出力側伝達要素の間の作動結合が解除される第2セクションとを含み、この第2セクションにより、駆動軸アセンブリからの駆動運動が出力軸に伝達されることがない。駆動側及び出力側伝達要素、並びに第1及び第2セクションの好適な実施形態については、以下に記載する偏心ギヤユニット及び第2ギヤユニットを備える駆動装置に関する実施形態を参照されたい。
【0037】
伝達ユニットは、好適には、複数個の駆動側伝達要素を含む。この場合、駆動軸アセンブリにより、これら複数個の駆動側伝達要素の幾つかが同時に駆動される。更に、駆動軸アセンブリにより、これら複数個の駆動側伝達要素の幾つかが同一回転方向に回転する。何れの構成も、構成が簡略であるだけでなく、特にモータ駆動部が1個のみ必要であるという利点を有する。
【0038】
伝達ユニットは、好適には、少なくとも1個の駆動側伝達要素及び少なくとも1個の出力側伝達要素の間で作動結合が生じるよう構成され、これにより駆動軸アセンブリからの駆動運動が出力軸に伝達される。この場合の作動結合により、少なくとも1個の更なる出力側伝達要素、特に第2ギヤユニットの運動が生じる。特に伝達ユニットは、この運動により、更なる駆動側伝達要素(とりわけ第2ギヤユニット)及び更なる出力側伝達要素の間の作動結合が可能になるよう構成される。
【0039】
伝達ユニットは、好適には、複数個の駆動側伝達要素を含む。この場合、駆動軸アセンブリは、複数個の駆動側伝達要素の幾つかが配置される1個の駆動軸を含む。このことにより、有利には、駆動装置を極めて簡略化して構成することが可能である。
【0040】
代替的には、伝達ユニットは、複数個の駆動側伝達要素を含むことができる。この場合、駆動軸アセンブリは、好適には同軸状に配置される2個の駆動軸を含み、複数個の駆動側伝達要素の少なくとも1個は、第1駆動軸上に配置され、複数個の駆動側伝達要素の少なくとも1個は、第2駆動軸上に配置される。有利には、これにより、駆動軸アセンブリを介して異なる速度が伝達される。これら駆動軸の一方は、好適には中空軸として構成され、2個の駆動軸の他方がこの中空軸内に配置される。2個の駆動軸の間及び/又はこれら駆動軸上には、好適には、軸受要素及び/又は軸受箇所が設けられ、特に中空軸として構成される駆動軸内に設けられる。
【0041】
伝達ユニットは、好適には、複数個の駆動側伝達要素を含む。この場合、これら複数個の駆動側伝達要素の少なくとも2個は、駆動軸アセンブリの第1回転軸線に対して距離を異ならせて配置されるか、又は駆動軸アセンブリにより、異なる半径を有する軌道上を移動することができる。この点は、特に1個又は共通の駆動軸との関連で、特にコンパクトな構成を可能にする。特にギヤユニットが含む1個の駆動側伝達要素は、好適には、他のギヤユニットが含む駆動側伝達要素によって包囲されるか、又は他の駆動側伝達要素の特に半径方向の範囲内に配置される。
【0042】
伝達ユニットは、好適には、複数個の出力側伝達要素を含む。この場合、これら複数個の出力側伝達要素の幾つかは、第2軸線周りに同心円状に配置される。これら複数個の出力伝達要素は、好適には、特に第2軸線に対して互いに離間させて軸線方向に配置される。
【0043】
駆動軸アセンブリ及び出力軸は、好適には、互いに角度付きで配置されることにより、駆動軸アセンブリの第1回転軸線は、上記少なくとも1個の出力側伝達要素の第1セクション及び上記少なくとも1個の出力側伝達要素の第2セクションの間、又は伝達ユニットの第1出力側伝達要素の少なくとも1つのセクション及び伝達ユニットの第2出力側伝達要素の少なくとも1つのセクションの間で延びる。特に好適には、第1回転軸線は、上記少なくとも1個の出力側伝達要素におけるセクションの間で延び、出力側伝達要素におけるこれらセクションにより、異なる回転方向に運動が生じるか、又は駆動運動の伝達が生じるか、又は駆動側伝達要素及び出力側伝達要素の間で作動結合が生じる。
【0044】
第1ギヤユニットの駆動側伝達要素駆動側伝達要素及び出力側伝達要素、及び/又は、第2ギヤユニットの駆動側伝達要素及び出力側伝達要素は、好適には、駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達する作動結合が、第1ギヤユニットの駆動側伝達要素駆動側伝達要素及び出力側伝達要素の間と、第2ギヤユニットの駆動側伝達要素駆動側伝達要素及び出力側伝達要素の間とにおいてのみ生じる。特に好適には、駆動側伝達要素は、駆動軸アセンブリにより、異なる半径を有する軌道上で移動することができ、出力側伝達要素は、それぞれ、第1又は第2ギヤユニットにおける、対応する駆動側伝達要素の軌道上に配置される。
【0045】
伝達ユニット又は第1ギヤユニット及び/又は第2ギヤユニットは、好適には、形状係合的ギヤユニット、特に歯付きギヤユニット、偏心ギヤユニット、摩擦係合的ギヤユニット、又は磁気ギヤユニットとして構成される。伝達ユニット又は第1及び第2ギヤユニットは、特に異なるタイプ又は同一タイプのギヤユニットで構成することができる。例えば、第1ギヤユニット及び第2ギヤユニットは、それぞれ、歯付きギヤユニットで構成されるか、又は伝達ユニットは、歯付きギヤユニット及び偏心ギヤユニットで構成されるか、又は形状係合的ギヤユニット及び摩擦係合的ギヤユニットで構成される。基本的には、これらギヤユニットタイプは、同一ギヤユニットタイプ又は異なるギヤユニットタイプと組み合わせて、第1及び第2ギヤユニットを含む伝達ユニットを構成することができる。
【0046】
医療用器具、特に歯科用又は外科用治療装置、好適には歯内治療用として構成される医療用又は歯科用若しくは外科用ハンドグリップ要素は、好適には、駆動装置を備える。この駆動装置は、駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達することにより、出力軸及びこの出力軸に結合可能な器具に振動回転運動を生じさせる伝達ユニットを備え、伝達ユニットは、少なくとも1個の駆動側伝達要素及び少なくとも1個の出力側伝達要素を含む。少なくとも1個の駆動側伝達要素は、駆動軸アセンブリにより、第1回転軸線周りに回転させることができる。少なくとも1個の駆動側伝達要素及び少なくとも1個の出力側伝達要素の間で駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合は、少なくとも1個の駆動側伝達要素が、駆動軸アセンブリの第1回転軸線周りに完全に回転するときに所定時間だけ生じる。
【0047】
上記治療装置又はハンドグリップ要素は、器具用の器具保持装置を含むヘッド部を備える。この器具保持装置の少なくとも一部は、出力軸上に配置される。治療装置又はハンドグリップ要素は、器具用の器具保持装置を含むヘッド部と、このヘッド部に隣接するグリップ部とを備える。駆動装置は、グリップ部内に配置される。
【0048】
伝達ユニット、特に第1ギヤユニット及び第2ギヤユニットを備える駆動装置の好適な実施形態において、少なくとも1個の駆動側伝達要素及び少なくとも1個の出力側伝達要素の間で駆動軸アセンブリからの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合は、少なくとも1個の駆動側伝達要素が駆動軸アセンブリの第1回転軸線周りに完全に回転するときに所定時間だけ生じる。このように、本実施形態との関連で上述した特徴は、以下に記載する実施形態にも適用可能かつ組み合わせ可能である。
【0049】
この実施形態に従えば、医療用器具、特に歯科用又は外科用器具を振動回転運動させるための(機械的)駆動装置が設けられる。この振動回転運動では、器具を、第1回転方向に第1回転角だけ回転させると共に、第1回転方向とは実質的に異なる第2回転方向に第2回転角だけ交互に回転させ、第1回転角及び第2回転角を好適には互いに異ならせて、器具を、第1及び第2回転方向に複数回、連続的に回転させれば、所望方向への累積的な回転運動が生じる構成とする。この場合に上記駆動装置は、第1回転軸線周りに回転すると共に、駆動運動、特に単方向回転運動を伝達するよう構成される駆動軸と、振動回転運動を生じるよう構成され、かつ第2軸線周りに回転可能な出力軸と、駆動軸を出力軸に結合すると共に、出力軸及びこの出力軸に結合可能な器具に振動回転運動を生じさせる伝達ユニットとを備える。この伝達ユニットは、偏心ピンを有する偏心ギヤユニットと、偏心ピン用の収容ユニットと、第2ギヤユニットを含む。駆動軸上には、偏心ピン又は偏心ピン用の収容ユニット及び第2ギヤユニットの駆動側要素が設けられ、この第2ギヤユニットの駆動側要素は、駆動軸の第1回転軸線と同心円状に配置される。
【0050】
このように駆動装置は、有利には、駆動軸のみ、特に1個又は共通の駆動軸を備え、この駆動軸上に偏心ギヤユニットの(駆動側)伝達要素及び第2ギヤユニットの駆動側要素が固定される。従って、偏心ギヤユニットの(駆動側)伝達要素及び第2ギヤユニットの駆動側要素は、好適には、駆動軸により回転させることができる。
【0051】
偏心ギヤユニットの偏心ピンは、好適には、駆動軸上に設けられ、特に好適には、駆動軸の自由端又は端部に設けられる。特に好適には、偏心ピンは、駆動軸と一体的に形成される。この偏心ピンは、好適には、駆動軸により、第1軌道上に沿って回転させることができる。これら好適な実施形態は、上述した偏心ピンの実施形態にも適用可能である。
【0052】
偏心ピン用の収容ユニットは、好適には、出力軸上に設けられ、特に好適には、出力軸の第2回転軸線周りに同心円状に配置される。
【0053】
偏心ギヤユニットの収容ユニットは、好適には、互いに分離した複数個の収容要素を含み、偏心ピンがこれら収容要素に順次に係合する。特に好適には、各収容要素は、出力軸又は第2回転軸線から特に半径方向に突出した突起を有する。特に好適には、各収容要素、特に各突起は、偏心ピンが係合することのできる少なくとも1つのガイド又は溝を有する。特に好適には、各収容要素、特に各ガイド又は溝により、これらガイド又は溝の少なくとも1つに偏心ピンが係合したときに、出力軸及びこの出力軸に結合した任意の器具が第1又は第2回転方向に回転を生じる。
【0054】
特に好適には、各収容要素は、突出したこれら収容要素の間に形成される切欠き又は凹部によって互いに分離させる。特に好適には、切欠き又は凹部は、偏心ピンがこれら切欠き又は凹部を通過し、収容要素に順次に係合できるよう配置される。
【0055】
各収容要素における上記少なくとも1つの溝又はガイドは、好適には、互いに角度付きで配置・結合される複数の溝セクションを有する。特に好適には、上記少なくとも1つの溝又はガイドは、少なくとも1つのセクション、特に出力軸の第2回転軸線とほぼ平行に配置される少なくとも1つのセクションを有し、このセクションを起点として、第1アームが第1方向に延び、第2アームが第2方向に延び、更には特に第3アームが第3方向に延びる。この場合、これら第1,第2及び第3方向は、それぞれ異なる方向である。
【0056】
各収容要素、特に各収容要素における上記少なくとも1つの溝又はガイドは、偏心ピンが進入する入口開口と、偏心ピンが脱出する出口開口とを有する。特に好適には、入口開口及び出口開口は互いに離間させ、特に互いに収容要素の反対側に配置される。特に好適には、第1収容要素の入口開口は、第2収容要素の出口開口のほぼ反対側に配置され、特にこれら2つの収容要素の間の切欠き又は凹部によって分離させる。
【0057】
第2ギヤユニットは、好適には、出力軸に設けられ、かつ第2回転軸線周りに同心円状に配置される出力側要素を含む。この場合、第2ギヤユニットの駆動側要素及び出力側要素を作動振動回転運動ことにより、駆動軸からの駆動運動を出力軸に伝達することができる。特に好適には、第2ギヤユニットの出力側要素は、偏心ギヤユニットの出力側要素、特に偏心ピン用の収容ユニットから(第2回転軸線に対して)軸線方向に離間させる。
【0058】
第2ギヤユニットの駆動側要素と、駆動側要素、特に偏心ギヤユニットの偏心ピンは、好適には、互いに離間して配置されることにより、第2ギヤユニットの駆動側要素は、第2ギヤユニットの出力側要素にだけ結合し、また偏心ギヤユニットの駆動側要素は、偏心ギヤユニットの出力側要素にだけ結合し、駆動運動を伝達する作動結合が生じる。第2ギヤユニットの出力側要素と、出力側要素、特に偏心ギヤユニットが含む偏心ピン用の収容ユニットは、好適には、互いに離間して配置されることにより、第2ギヤユニットの駆動側要素だけが出力軸に結合し、また偏心ギヤユニットの駆動側要素は、偏心ギヤユニットの出力側要素にだけ結合し、駆動運動を伝達する作動結合が生じる。
【0059】
第2ギヤユニットの駆動側要素及び/又は出力側要素は、好適には、駆動側要素及び出力側要素の間で、駆動軸からの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合が、第1回転軸線周りに駆動側要素が一回転するときに所定時間だけ生じるよう構成される。特に好適には、同様のことが偏心ギヤユニットにも当てはまる。即ち、駆動側要素、特に偏心ピン及び/又は偏心ギヤユニットの出力側要素、特に偏心ピン用の収容ユニット又は収容要素は、駆動側要素及び出力側要素の間で、駆動軸からの駆動運動を出力軸に伝達するための作動結合が、第1回転軸線周りに駆動側要素が一回転するときに所定時間だけ生じるよう構成される。
【0060】
駆動側又は出力側要素は、好適には、出力側要素又は駆動側要素に作動結合できることにより、駆動軸からの駆動運動を出力軸に伝達可能な第1セクションと、駆動側伝達要素及び出力側要素の間の作動結合が解除される第2セクションとを含み、この第2セクションにより、駆動軸からの駆動運動が出力軸に伝達されることがない。このような構成は、例えば第2ギヤユニットの駆動側又は出力側要素に適用される。この場合、特に好適には、出力側要素は歯車又はピニオンとして構成され、駆動側要素の第1セクションには歯、特に円弧状部に歯が形成され、また駆動側要素の第2セクションには歯が形成されず、平坦面として形成される。歯が設けられる第1セクションは、歯が設けられない第2セクション上で、出力側歯車方向に突出している。代替的には、駆動側要素を歯車又はピニオンとして構成し、出力側要素が第1及び第2セクションを有するものとしてもよい。
【0061】
第2ギヤユニットの駆動側要素は、好適には、駆動軸上に設けられ、やはり駆動軸上又は偏心ピン用の収容ユニットに配置される偏心ピンを包囲する。特に駆動側要素は、駆動軸の第1回転軸線よりも、偏心ピン又は収容ユニット近傍に配置される。これにより、有利には、特にコンパクトな構成とすることが可能である。
【0062】
第2ギヤユニットは、好適には、形状係合的ユニット、特に歯付きギヤユニット、摩擦係合的ギヤユニット、又は磁気ギヤユニットとして構成される。
【0063】
摩擦係合的ギヤユニットとして構成される第2ギヤユニットは、好適には、駆動側及び出力側要素を含む。この場合、何れの要素も、互いに接触させることのできる摩擦係合面を有する。特に駆動側又は出力側要素は、出力側要素又は駆動側要素に作動結合できることにより、駆動軸からの駆動運動を出力軸に伝達可能な第1セクションと、駆動側伝達要素及び出力側要素の間の作動結合が解除される第2セクションとを含み、この第2セクションにより、駆動軸からの駆動運動が出力軸に伝達されることがない。特に好適には、第1セクションは、例えば平坦面として構成される第2セクション上で突出する、少なくとも1つの摩擦係合面を有するため、第1セクションの摩擦係合面だけが他方の要素の摩擦係合面に接触可能である。
【0064】
磁気ギヤユニットとして構成される第2ギヤユニットは、好適には、駆動側及び出力側要素を含む。この場合、何れの要素も、磁気領域又は磁気要素、特に永久磁石を有する。特に駆動側又は出力側要素は、出力側要素又は駆動側要素に作動結合できることにより、駆動軸からの駆動運動を出力軸に伝達可能な第1セクションと、駆動側伝達要素及び出力側要素の間の作動結合が解除される第2セクションとを含み、この第2セクションにより、駆動軸からの駆動運動が出力軸に伝達されることがない。特に好適には、第1セクションは、少なくとも1つの磁気領域又は磁気要素を有し、第2セクションは、特に少なくとも1つの非磁気領域又は(第1セクションの磁気領域に比べて)磁力がより小さい領域若しくは磁気要素が設けられない領域を有する。特に好適には、第1セクションは、第2セクション上で、第2要素の磁気領域方向に突出している。
【0065】
第2ギヤユニットは、好適には、器具を実質的に第1回転方向に回転させるよう構成され、偏心ギヤユニットは、器具を実質的に第2回転方向に回転させるよう構成される。
【0066】
伝達ユニットは、好適には、第2ギヤユニット又は偏心ギヤユニットが、駆動軸からの駆動運動を出力軸に交互に伝達するよう構成される。
【0067】
医療用器具、特に歯科用又は外科用治療装置、好適には歯内治療用として構成された医療用又は歯科用若しくは外科用ハンドグリップ要素は、駆動装置を備える。この駆動装置は、治療装置の駆動軸を出力軸に結合すると共に、出力軸及びこの出力軸に結合可能な器具に振動回転運動を生じさせる伝達ユニットを備える。この伝達ユニットは、偏心ピンを有する偏心ギヤユニットと、偏心ピン用の収容ユニットと、第2ギヤユニットを含む。駆動軸上には、偏心ピン又は偏心ピン用の収容ユニット及び第2ギヤユニットの駆動側要素が設けられ、この第2ギヤユニットの駆動側要素は、駆動軸の第1回転軸線と同心円状に配置される。
【0068】
特に好適には、上記治療装置、好適にはハンドグリップ要素は、器具用の器具保持装置を含むヘッド部を備える。一実施形態に従えば、この器具保持装置の少なくとも一部は、出力軸内に配置される。
【0069】
他の実施形態において提供される医療用又は歯科用若しくは外科用治療装置、好適には歯内治療用として構成された医療用器具、特に歯科用又は外科用ハンドグリップ要素は、医療用又は歯科用若しくは外科用の(機械的)駆動装置を備える。この駆動装置により、器具に振動回転運動が生じる。駆動装置は、第1回転軸線周りに回転すると共に、単方向回転運動を伝達するよう構成される駆動軸と、器具を振動回転運動させ、かつ第2軸線周りに回転可能な出力軸と、駆動軸を出力軸に結合するギヤユニットとを備える。このギヤユニットは、相互に係合する複数個の歯車と、これら歯車に作動結合される偏心ピンを含む。偏心ピンは、駆動軸の第1回転軸線に対して偏心状に駆動軸)に結合されることにより回転可能である。駆動装置は更に、互いに角度付きで配置される第1キャリアユニット及び第2キャリアユニットを備える。これら第1及び第2キャリアユニットは、互いに移動可能として、2個のキャリアユニットが形成する角度を可変とする。
【0070】
上記駆動装置は、遊星歯車及び偏心ギヤユニットを備える既知の駆動装置に比べて、構成要素がより少ないために簡略化されており、所要スペースがより小さい。
【0071】
第1キャリアユニット及び第2キャリアユニットは、好適には、例えば軸によって互いに移動可能に結合される。これら第1キャリアユニット及び第2キャリアユニットにより、特に好適には、継手又は継手結合部が形成される。2個のキャリアユニット又は継手結合部は、特にギヤユニット又は駆動装置の作動時に、所定の軌道上を移動するか又は所定の軌道上で移動可能に構成される。
【0072】
1個のキャリアユニット、特に1個のキャリアユニットの端部は、好適には、偏心ピン上に直接に設けられるか及び/又は偏心ピン上に移動可能若しくは回転可能に結合される。従って、特に好適には、2個のキャリアユニット又は継手結合部が移動する上記軌道及び/又は2個のキャリアユニットの相対運動は、偏心ピンの運動又は軌道によって規定される。
【0073】
第1キャリアユニット及び第2キャリアユニットは、好適には、軸によって(機械的に)結合される。この場合、特に好適には、複数個の歯車の少なくとも1個は、この軸上に配置される。これにより、有利には、ギヤユニットをよりコンパクトに構成することができる。特に好適には、上記軸上に配置される歯車は、少なくとも2個の他の歯車に係合させる。特に好適には、上記軸上に配置される歯車及び2個のキャリアユニットの少なくとも1個は互いに移動可能に構成されるか、及び/又は、上記軸上の歯車は2個のキャリアユニットの少なくとも1個に対して回転可能に構成される。好適には、第1キャリアユニット及び第2キャリアユニットは、これらユニットの一方の端部にて互いに結合される。
【0074】
2個のキャリアユニットの少なくとも1個は、好適には、細長及び/又はロッド状及び/又はプレート状の形状を有する。少なくとも1個のキャリアユニットは、好適には、例えば偏心ピン、2個のキャリアユニット用の結合軸、又は複数個の歯車の1個が配置される軸を保持する、少なくとも1つの孔又はレセプタクルを有する。
【0075】
2個のキャリアユニットは、好適には、(駆動軸の第1回転軸線又は出力軸の第2回転軸線に対して)軸線方向に互いにずらせるか又は重ねて配置される。これら2個のキャリアユニットは、好適には、互いにほぼ平行な1つ又は2つの平面内に配置される。これら平面は、第1回転軸線及び/又は第2回転軸線に対してほぼ直交する。上記2個のキャリアユニットは、好適には、装置の作動時に、互いにほぼ平行な1つ又は2つの平面内を移動する。これら平面は、第1回転軸線及び/又は第2回転軸線に対してほぼ直交する。
【0076】
少なくとも1個のキャリアユニットは、好適には、出力軸上に配置される歯車に直接に結合される。
【0077】
ギヤユニットは、好適には、互いに係合する3個又は4個の歯車を含む。このギヤユニットにより、好適には回転数、特に好適には駆動軸によって伝達される回転数を変化、とりわけ減少させることもできる。複数個の歯車の1個は、好適には、平歯車として構成され、特に好適には、歯車の幾つかは、ほぼ平行な中心又は回転軸線を有し、及び/又は、平歯車ギヤユニットを構成する。各歯車は、好適には他と分離した軸を有し、これら軸上に回転可能に固定及び/又は支持される。複数個の歯車の少なくとも1個は、好適には、第1回転軸線又は第2回転軸線に対して変位可能であるため、上記少なくとも1個の歯車及び第1回転軸線又は第2回転軸線の間の距離を可変とする。
【0078】
複数個の歯車のうち第1歯車は、好適には、偏心ピンに回転不能に結合される。特に好適には、この第1歯車は、偏心ピンの軌道に沿って移動するよう配置される。特に好適には、第1歯車は、特に自らの中心軸線周りに回転することなく、駆動軸の第1回転軸線周りに回転するよう構成又は配置される。特に好適には、偏心ピンに回転不能に結合される第1歯車は、以下の要素、即ち出力軸、出力軸の第2回転軸線、出力軸上に配置及び/又は固定される歯車、少なくとも1個のキャリアユニット、第1回転軸線及び第2回転軸線に対して距離が一定である少なくとも1個の歯車に対して変位可能として、第1歯車及びこれら要素の間の距離を可変とする。
【0079】
好適には、偏心ピンに回転不能に結合される第1歯車に係合する第2歯車が設けられる。この第2歯車は、好適には、キャリア要素の少なくとも1個に設けられる軸上に配置されるか、又は2個のキャリア要素を(機械的に)結合する軸上に配置される。第2歯車は、好適には、配置される軸上又はその回転軸線上で回転できるか、及び/又は、2個のキャリア要素の少なくとも1個に対して回転できる。特に好適には、第2歯車は、駆動軸及び/又は駆動軸の第1回転軸線に対して変位できるため、第2歯車及び駆動軸及び/又は第1回転軸線の間の距離は可変である。第2歯車及び第1歯車の間の距離、及び/又は、第2歯車及び第2歯車に係合する他の歯車の間の距離、及び/又は、第2歯車及び第1回転軸線並びに第2回転軸線に対して間隔が一定である歯車の間の距離、及び/又は、第2歯車の中心又は回転軸線及び上述した他の歯車の中心又は回転軸線の間の距離は、好適には一定である。
【0080】
第2歯車は、好適には、ほぼ円弧状の軌道に沿って前後に移動できるよう配置される。この軌道は、好適には、駆動軸及び出力軸の間に配置されると共に、駆動軸及び/又は出力軸に対してほぼ直交する平面内に配置される。
【0081】
好適には、第1回転軸線及び第2回転軸線に対して距離が一定である少なくとも第3歯車が設けられる。この歯車は、好適には、第2歯車に係合する。第2歯車又はその回転軸線に対する第3歯車又はその回転軸線の距離は、好適には一定である。第1歯車又はその回転軸線に対する第3歯車又はその回転軸線の距離は、好適には可変である。第3歯車は、好適には、出力軸上に回転不能に配置及び/又は固定される。代替的には、第3歯車は、出力軸上に回転不能に固定される第4歯車に結合させるか又は係合させる。第3歯車は、好適には、2個のキャリア要素の少なくとも1個に設けられ、特に回転可能である。
【0082】
少なくとも1個の歯車は、好適には、他の歯車に対して変位可能であるため、これら2個の歯車の間の距離は可変である。特に好適には、互いに距離を異ならせることのできる2個の歯車とは、第1歯車及び第3歯車である。特に好適には、互いに距離を異ならせることのできる2個の歯車は、(第1及び/又は第2回転軸線に対して)軸線方向に互いにずらせて配置されるため、これら2個の歯車は、駆動装置の作動時に、軸線方向において部分的にオーバーラップする位置に少なくとも一時的に移動可能である。これにより、ギヤによって生じる振動回転運動に際して、一方の回転方向(特に所望方向又は作業方向)に関して有利な回転角、例えば100°を超える回転角、好適には120°を超える回転角、特に約150°の回転角を得ることが可能である。
【0083】
互いに距離を異ならせることのできる2個の歯車は、好適には、互いにほぼ平行な平面内に配置される。この場合、これら平面は、第1回転軸線及び/又は第2回転軸線に対して角度付き、特にほぼ直交する。これら2つの平面は、好適には、(第1回転軸線又は第2回転軸線に対して)軸線方向に互いにずらせてある。複数個の歯車のうち、互いに距離を異ならせることのできる少なくとも1個の歯車、例えば第1歯車は、好適には、ギヤユニットの作動時に、上記平面内の1つにて、互いに距離を異ならせることのできる他の歯車、例えば第3歯車に対して移動可能である。
【0084】
互いに距離を異ならせることのできる2個の歯車の一方、特に第3歯車は、好適には、キャリア要素の一方に回転可能に結合される。この場合、歯車及びキャリア要素は互いに離間させるため、2個の歯車の他方(第1歯車)及び/又は(偏心ピンに設けられる)他方のキャリア要素は、駆動装置の作動時に、歯車及び歯車に結合されるキャリア要素の間で少なくとも一時的に回転可能に移動可能である。特に好適には、互いに距離を異ならせることのできる2個の歯車の一方、特に第3歯車及びキャリア要素の一方の間にはスペースが設けられるため、互いに距離を異ならせることのできる歯車の他方、特に第1歯車及び/又はキャリア要素の他方は、駆動装置の作動時に、上記スペース内に少なくとも部分的かつ一時的に移動可能である。
【0085】
第1歯車及び第2歯車は、好適には、第1キャリア要素に設けられる。特に好適には、第1歯車及び第2歯車の距離は一定である。第3歯車は、好適には、第2キャリア要素に設けられる。特に好適には、第2歯車及び第3歯車の距離は一定である。
【0086】
キャリア要素及び歯車の少なくとも幾つかによって形成されるキャリア要素又は継手結合部により、好適には、継手結合部の運動により歯車が変位するユニットが形成されるため、特に上述したように、歯車は、軌道に沿って又は平面内で変位させることができ及び/又は歯車の互いの距離を異ならせることができる。継手結合部又はユニットは、好適には、特に出力軸の第2回転軸線に配置されるか又は第2回転軸線と同一のピボット点若しくは回転軸線を有する。キャリア要素又は継手結合部は、特にその運動、とりわけ偏心ピンによって生じる運動により、器具又は器具保持装置を振動回転運動に際して第2回転方向(特に戻り方向)に回転させるよう構成される。
【0087】
ギヤユニットは、好適には、駆動軸上及び/又は出力軸上に設けられた軸受、とりわけローラ軸受又はボール軸受によって支持される。このギヤユニットは、好適には、金属及び/又はプラスチックで構成される。
【0088】
一実施形態において、治療装置又はハンドグリップ要素は、器具用の器具保持装置を含むヘッド部と、このヘッド部に隣接するグリップ部とを備える。この場合、駆動装置は、グリップ部、特にグリップ部の曲げ部領域に設けられる。器具保持装置及びギヤユニットは、好適には、例えば出力軸によって互いに機械的に結合することにより、ギヤユニットが生じる振動回転運動を器具保持装置に伝達可能とする。
【0089】
以下、本発明を好適な実施形態及び添付図面に基づいて説明する。