特許第6572303号(P6572303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許6572303-電気モータを備える変速機 図000002
  • 特許6572303-電気モータを備える変速機 図000003
  • 特許6572303-電気モータを備える変速機 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572303
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】電気モータを備える変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20190826BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20190826BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20190826BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20190826BHJP
【FI】
   F16H3/66 Z
   B60K6/36ZHV
   B60K6/26
   B60K6/40
【請求項の数】22
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-510737(P2017-510737)
(86)(22)【出願日】2015年4月9日
(65)【公表番号】特表2017-516045(P2017-516045A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2015057651
(87)【国際公開番号】WO2015169523
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2018年2月15日
(31)【優先権主張番号】102014208799.6
(32)【優先日】2014年5月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ツィーマー
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0267378(US,A1)
【文献】 特開2007−153335(JP,A)
【文献】 特開2010−76680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
B60K 6/26
B60K 6/36
B60K 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライブトレイン用の電気モータ(EM)を備える変速機(1)であって、
入力軸接続領域(ANA)を有する入力軸(AN)と、
出力軸接続領域(ABA)を有する出力軸(AB)と、
第1遊星歯車セット(PS1)および第2遊星歯車セット(PS2)により形成されるメイン歯車セット(HRS)と、
シフト要素の第1グループ(A, B, C, D, E)と、を備え、そのうち該第1グループの各シフト要素(A, B, C, D, E)は、シフト要素作動ユニット(SB1, SB2, SB3)の第1グループのシフト要素作動ユニット(SB1, SB2, SB3)により作動可能であり、
前記電気モータ(EM)は、ロータ(R)ならびにステータ(S)を備え、
前記電気モータ(EM)は、前記入力軸接続領域(ANA)および前記出力軸接続領域(ABA)の間に配置され、
前記電気モータ(EM)はシリンダ状体積を包囲し、該シリンダ状体積の側面は、前記電気モータ(EM)の内側側面により画定され、前記シリンダ状体積の前記側面の直径は、前記電気モータ(EM)の内径に対応し、
前記シフト要素の第1グループ(A, B, C, D, E)は、前記電気モータ(EM)に対して隣接し、および軸方向で前記入力軸(AN)に沿って前記入力軸接続領域(ANA)の方向へ前記電気モータ(EM)に対してオフセット配置されるか、または少なくともセクションごとに前記シリンダ状体積の内部に配置され、前記シリンダ状体積の側面は、前記電気モータ(EM)の内側側面により画定され、
各シフト要素作動ユニット(SB1, SB2, SB3)は、シフトフォーク(SBG1, SBG2, SBG3)および作動モジュール(SBM1, SBM2, SBM3, SBM4, SMB5)により形成され、
前記シフト要素作動ユニットの第1グループ(SB1, SB2, SB3)の前記シフトフォーク(SBG1, SBG2, SBG3)は、前記シフト要素の第1グループ(A, B, C, D, E)に対して隣接し、および軸方向で前記入力軸(AN)に沿って前記入力軸接続領域(ANA)の方向へ前記シフト要素の第1グループ(A, B, C, D, E)に対してオフセット配置され、
前記メイン歯車セット(HRS)は、少なくともセクションごとに、前記電気モータ(EM)の前記内側側面により側面が画定される前記シリンダ状体積の内部に配置されるか、または前記電気モータ(EM)に対して隣接し、および軸方向で前記入力軸(AN)に沿って前記出力軸接続領域(ABA)の方向へ前記電気モータ(EM)に対してオフセット配置されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機(1)であって、前記電気モータ(EM)は内部ロータとして形成され、および前記電気モータ(EM)の内径は、前記電気モータ(EM)の前記ロータ(R)の内径に対応することを特徴とする変速機(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の変速機(1)であって、前記電気モータ(EM)は外部ロータとして形成され、および前記電気モータ(EM)の内径は、前記電気モータ(EM)の前記ステータ(S)の内径に対応することを特徴とする変速機(1)。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の変速機(1)であって、シフト要素の第1グループ(A, B, C, D, E)は、形状結合型シフト要素、特に噛合型シフト要素として形成されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の変速機(1)であって、前置切換え歯車セット(VRS)を備え、該前置切換え歯車セット(VRS)は、更なる遊星歯車セット(PS3)により形成されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の変速機(1)であって、前記前置切換え歯車セット(VRS)は、少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置され、該シリンダ状体積の側面は、電気モータ(EM)の内側側面により画定されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項7】
請求項5に記載の変速機(1)であって、前記前置切換え歯車セット(VRS)は、軸方向で入力軸接続領域(ANA)の方向へ、電気モータ(EM)に対してオフセット配置され、ならびに軸方向で入力軸(AN)に沿って出力軸接続領域(ABA)の方向へ、シフト要素作動ユニットの第1グループ(SB1, SB2, SB3)のシフトフォーク(SBG1, SBG2, SBG3)に対してオフセット配置されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか一項に記載の変速機(1)であって、シフト要素の第1グループ(A, B, C, D, E)は、少なくともセクションごとに、更なる遊星歯車セット(PS3)の太陽歯車(SO3)により包囲されるシリンダ状体積の内部に配置され、該シリンダ状体積の側面は、前記更なる遊星歯車セット(PS3)の前記太陽歯車(SO3)の内側側面により画定され、前記シリンダ状体積の前記側面の直径は、前記更なる遊星歯車セット(PS3)の前記太陽歯車(SO3)の内径に対応することを特徴とする変速機(1)。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか一項に記載の変速機(1)であって、シフト要素の第1グループ(A, B, C, D, E)は、少なくともセクションごとに中空シリンダ状体積の内部に配置され、該中空シリンダ状体積の内側側面は、更なる遊星歯車セット(PS3)の内歯車(HO3)の外側側面により限定され、前記中空シリンダ状体積の前記内側側面の直径は、前記更なる遊星歯車セット(PS3)の前記内歯車(HO3)の外径に対応することを特徴とする変速機(1)。
【請求項10】
請求項5〜9の何れか一項に記載の変速機(1)であって、シフト要素の第1グループ(A, B, C, D, E)は、前置切換え歯車セット(VRS)に対して隣接し、および軸方向で入力軸(AN)に沿って出力軸接続領域(ABA)の方向へ前記前置切換え歯車セット(VRS)に対してオフセット配置されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の変速機(1)であって、該変速機(1)は、電気モータ(EM)とメイン歯車セット(HRS)の間の結合要素として補助歯車セット(ZRS)を備え、該補助歯車セット(ZRS)は、補助的な遊星歯車セット(PS4)により形成されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項12】
請求項11に記載の変速機(1)であって、前記補助歯車セット(ZRS)は、少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置され、該シリンダ状体積の側面は、前記電気モータ(EM)の内側側面により画定されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項13】
請求項11に記載の変速機(1)であって、前記補助歯車セット(ZRS)は、前記電気モータ(EM)に対して隣接し、および軸方向で入力軸(AN)に沿って出力軸接続領域(ABA)の方向へ前記電気モータ(EM)に対してオフセット配置され、および軸方向で前記入力軸(AN)に沿って入力軸接続領域(ANA)の方向へ前記メイン歯車セット(HRS)に対してオフセット配置されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の変速機(1)であって、該変速機(1)はシフト要素の第2グループ(F)を備え、該シフト要素の第2グループ(F)は、シフト要素作動ユニットの対応する第2グループ(SB4)を備えることを特徴とする変速機(1)。
【請求項15】
請求項14に記載の変速機(1)であって、前記シフト要素の第2グループ(F)は、電気モータ(EM)に対して隣接し、および軸方向で入力軸(AN)に沿って出力軸接続領域(ABA)の方向へ前記電気モータ(EM)に対してオフセット配置されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項16】
請求項14または15に記載の変速機(1)であって、前記シフト要素の第2グループ(F)は、少なくともセクションごとに中空シリンダ状体積の内部に配置され、該中空シリンダ状体積の内側側面は、第1遊星歯車セット(PS1)の内歯車(HO1)の外側側面により限定され、前記中空シリンダ状体積の前記内側側面の直径は、前記第1遊星歯車セット(PS1)の前記内歯車(HO1)の外径に対応することを特徴とする変速機(1)。
【請求項17】
請求項11〜15の何れか一項に記載の変速機(1)であって、前記シフト要素の第2グループ(F)は、少なくともセクションごとに中空シリンダ状体積の内部に配置され、該中空シリンダ状体積の内側側面は、補助的な遊星歯車セット(PS4)の内歯車(HO4)の外側側面により限定され、前記中空シリンダ状体積の前記内側側面の直径は、前記補助的な遊星歯車セット(PS4)の前記内歯車(HO4)の外径に対応することを特徴とする変速機(1)。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか一項に記載の変速機(1)であって、ハウジング(G)は、前記変速機(1)の構成要素を、入力軸接続領域(ANA)および出力軸接続領域(ABA)を除いて包囲し、および鉢状に形成され、前記ハウジング(G)は中心軸を備え、該中心軸は前記出力軸(AB)に対して同軸であり、および前記出力軸(AB)は、前記中心軸に沿って前記ハウジング(G)から導出されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項19】
請求項18に記載の変速機(1)であって、電気モータ(EM)のロータ(R)は、軸受用シールド(L)により支持され、該軸受用シールド(L)は、シフト要素作動ユニットの第1グループ(SB1, SB2, SB3)のシフトフォーク(SBG1, SBG2, SBG3)に対して隣接し、および軸方向で前記入力軸(AN)に沿って前記出力軸接続領域(ABA)の方向へ前記シフト要素作動ユニットの第1グループ(SB1, SB2, SB3)の前記シフトフォーク(SBG1, SBG2, SBG3)に対してオフセット配置されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項20】
請求項18に記載の変速機(1)であって、前記ハウジング(G)は、該ハウジング(G)と結合可能なカバー(GD)を備え、該カバー(GD)は、シフト要素作動ユニットの第1グループ(SB1, SB2, SB3)のシフトフォーク(SBG1, SBG2, SBG3)に対して隣接し、および軸方向で前記入力軸(AN)に沿って前記入力軸接続領域(ANA)の方向へ前記シフト要素作動ユニットの第1グループ(SB1, SB2, SB3)の前記シフトフォーク(SBG1, SBG2, SBG3)に対してオフセット配置され、前記入力軸(AN)は前記カバー(GD)により支持されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項21】
請求項1〜20の何れか一項に記載の変速機(1)であって、該変速機(1)は補助的な電気モータ(EMZ)を備え、該補助的な電気モータ(EMZ)は、入力軸(AN)と結合可能であるか、または結合されることを特徴とする変速機(1)。
【請求項22】
請求項1〜21の何れか一項に記載の変速機(1)であって、該変速機(1)はオイルポンプ(P)を備え、該オイルポンプ(P)は、メイン歯車セット(HRS)に対して隣接し、および軸方向で入力軸(AN)に沿って出力軸接続領域(ABA)の方向へ前記メイン歯車セット(HRS)に対してオフセット配置され、およびハウジング(G)の内部に配置される変速機(1)において、前記オイルポンプ(P)は、出力軸(AB)と作動結合し、および前記出力軸(AB)により作動可能であることを特徴とする変速機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の特徴を備えた、車両のドライブトレイン用の電気モータを備える変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドライブトレインで使用される変速機は、遊星歯車セットを備えることが多い。遊星歯車セットは、例えばクラッチであるシフト要素を介して互いに結合可能であり、様々な変速比を変速機の入力軸と出力軸の間で実現する。この場合変速機は、予め定義された個数の、互いに対して段階的な変速段を備える。通常は、始動要素が遊星歯車セットに連結される。始動要素は、例えば流体力学的または電気力学的な始動要素とすることが可能である。
【0003】
従来技術から、電気モータを備える多様な変速機が知られている。これらの変速機においては、電気モータが変速機の出力軸と、直接に、または変速比が固定された遊星歯車セットおよび/またはシフト要素を介して結合可能である。これらの変速機は、異なる変速機フロー図およびシフトロジック説明図、ならびに切換え可能な異なる個数の変速段を備える。しかしながら変速機は、構造スペースおよび構成のための労力の点で効率的に構成されておらず、変速機フロー図によっては、スペース内での変速機要素の互いに対する正確な配置のみが示される場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、例えば遊星歯車セット、遊星歯車セットの要素、シフト要素、シフト要素作動ユニットおよび電気モータ等である変速機の構成要素を、変速機の製造段階の間に、必要な構造スペースおよび構成のための労力を僅かとし、ならびに可及的に僅かな費用で製造可能であるよう配置した、上述の種類の変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題に対して、請求項1に記載の特徴を有する変速機を提供する。更なる好適な実施形態および発展形態は,従属請求項より明らかとなる。
【0006】
車両のドライブトレイン用の電気モータを備える変速機は、入力軸接続領域を有する入力軸と、出力軸接続領域を有する出力軸と、第1遊星歯車セットおよび第2遊星歯車セットにより形成されるメイン歯車セットと、シフト要素の第1グループと、を備え、そのうち第1グループの各シフト要素は、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフト要素作動ユニットにより作動可能である。
【0007】
変速機は、多段自動変速機として形成される、多段自動変速機は、作動時に変速比を自動で変更可能な変速機として定義される。多段自動変速機は、予め定義された個数の切換え可能な変速段を備える。つまり、入力軸と出力軸の間の変速比であって、変速機に属する遊星歯車セットの少なくとも2つの部品による、入力軸と出力軸の間の作動結合により実現可能な変速比を、予め決定する。
【0008】
軸とは、専ら、例えばシリンダ状の回転可能に支承されたトルクを伝達するための機械要素に限ると理解されるのではなく、この場合にはむしろ、単一の構成要素を互いに結合する一般的な結合要素を含み、特に複数の構成要素を回転不能に互いに結合する結合要素を含む。構成要素は、この場合変速機構成部品であり、例えば遊星歯車セット、遊星歯車セットの要素、シフト要素、シフト要素作動ユニット、ハウジングおよび電気モータ等である。
【0009】
入力軸は、変速機と、例えば内燃エンジンである駆動源の間に結合手段を構成し、および駆動源のトルクを変速機に導入する役割を果たす。この場合入力軸は、駆動源により発生された回転数を有する。この場合回転数は、入力軸接続領域を介して直接に入力軸と結合されるか、またはクラッチにより、入力軸接続領域を介して入力軸と結合可能である。しかしながら入力軸は、駆動源が供給する回転数から逸脱する回転数を有することも、同様に可能である。
【0010】
これに対して出力軸は、変速機により変換されたトルクを、変速機から導出し、およびその際に、変速機により変速された回転数を有する。変速機の変速比は、入力軸回転数の出力軸回転数に対する比率として定義される。出力軸は、その出力軸接続領域を介して、例えば軸、クラッチまたは発電機等である他の構成要素と結合可能であるため、変換されたトルクは、これらの他の構成要素へ伝達可能である。入力軸および出力軸は、例えば互いに同軸であり、その際入力軸接続領域および出力軸接続領域は、反対の変速機側に位置可能である。
【0011】
回転数の変速およびトルクの変換は、変速機の遊星歯車セットを介して実行される。遊星歯車セットは、幾つかの遊星歯車が回転可能に支持された1つのみのキャリアと、1つのみの太陽歯車と、1つのみの内歯車と、を備えた単純な遊星歯車機構として定義される。従って各遊星歯車セットの要素は、対応する遊星歯車セットの太陽歯車、キャリアおよび内歯車である。遊星歯車セットの太陽歯車ならびに内歯車は、複数のセグメントに分割可能である。例えば遊星歯車が、互いに結合されていない、2つの太陽歯車セグメント、または2つの内歯車セグメントと噛み合うことも可能である。回転数比率は、太陽歯車の両セグメント、または内歯車の両セグメントにおいて、あたかもそれらのセグメントが互いに結合されているかのように同一である。
【0012】
メイン歯車セットの両遊星歯車セットは、互いに結合される。つまり、両遊星歯車セットは作動結合されるため、入力軸のトルクを遊星歯車セットにより変換可能である。この場合2つの構成要素は、構成要素の間に、固定された、特に回転不能な結合が存在する場合、互いに結合されている、と称する。そのような結合された構成要素は、特に同一の回転数で回転する。対照的に2つの構成要素は、これらの構成要素の間に、解除可能で回転可能な結合が存在する場合、結合可能、と称する。こうした結合が存在する場合、そのような構成要素は、特に同一の回転数で回転する。変速機の様々な構成要素は、この場合軸またはシフト要素を介して結合可能であるが、例えば溶接、プレス成形または他の結合によって、互いに直接に結合可能でもある。
【0013】
変速機における、2つの結合可能な構成要素が互いに作動結合に至るよう、例えばシフト要素作動ユニットにより作動可能なシフト要素を使用する。この場合各シフト要素は、2つの作動側を備える。このうち各作動側は、少なくとも1つの軸と結合される。この軸は、今度は結合される構成要素と結合される。この場合シフト要素は、変速機の2つの構成要素の間の、切換え可能な結合と定義される。これら両構成要素の間で伝達されるトルクは、例えばディスククラッチ、ディスクブレーキ、バンドブレーキ、コーンクラッチ、コーンブレーキ等における牽引力によって、または例えば噛合型クラッチ、噛合型ブレーキまたはツースクラッチ等における形状結合によって、伝達される。換言するとシフト要素は、2つの構成要素の間に作動結合を構築するのである。
【0014】
クラッチはシフト要素であり、クラッチの作動状態に対応して、2つの構成要素の間の相対移動を可能とするか、またはトルクを伝達するために結合を構成する。相対運動とは、例えば2つの構成部品の回転と理解され、第1構成部品の回転数および第2構成部品の回転数は互いに異なる。さらに、両構成部品のうちの一方の構成部品の回転もまた考慮可能であり、一方、他方の構成部品は静止しているか、または反対方向に回転する。
【0015】
シフト要素作動ユニットは、シフト要素を作動する役割を果たす。各シフト要素は、シフト要素作動ユニットにより作動可能、つまり締結または開放可能である。シフト要素作動ユニットは、複数のシフト要素に対して割り当て可能である。例えばシフト要素作動ユニットは、一方のシフト要素を作動する方向に移動可能であり、および他方のシフト要素を作動する、他の方向に移動可能である。さらにシフト要素作動ユニットは、回転不能なシフトフォークおよび回転可能な作動モジュールから形成された構成要素である。さもなければシフト要素作動ユニットは、分解不能な単一構成要素として一個部品の構成要素とすることが可能である。
【0016】
開放されているクラッチとは、作動されていないクラッチ、と理解される。これは、両構成要素の間の相対運動が可能であることを意味する。クラッチが作動されている、または締結されている場合、それに応じて両構成要素は、同一の回転数で同じ方向に回転する。
【0017】
ブレーキとは、一方の側で固定構成要素、例えば変速機のハウジングと結合されているシフト要素、と理解される。作動されていないブレーキは、解放されているブレーキ、と理解される。これは、回転可能な構成要素が自由走行状態にある、つまり好適には、ブレーキが回転可能な構成要素の回転数に対して影響しないことを意味する。ブレーキが作動、または締結されると、回転可能な構成要素の回転数は静止状態にまで低減される、つまり、回転可能な構成要素および固定構成要素の間に結合が構成可能である。
【0018】
本発明に従い、電気モータは、ロータならびにステータを備える。電気モータは、入力軸接続領域と出力軸接続領域の間に配置され、およびシリンダ状体積を包囲し、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定され、シリンダ状体積の側面の直径は、電気モータの内径に対応する。電気モータの内径は、電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する構成部品の内径、と定義される。つまり、シリンダ状体積は、直線の円柱である幾何形状を有し、および構成スペースとして使用可能な材料の存在しない体積であり、その体積の形状およびサイズは、変速機構成要素の受容に適する。換言すると、電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する構成部品は、電気モータの回転軸の周りに、電気モータにより包囲されたシリンダ状の空洞を備える。シリンダ状体積のカバー面は、電気モータの磁気回路のこの構成部品のカバー面と同一の面にある。この場合、電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する構成部品とは、電気モータのロータおよびステータである。
【0019】
本発明に従い、シフト要素の第1グループは、電気モータに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って入力軸接続領域の方向へ電気モータに対してオフセット配置されるか、または少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置され、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定される。シフト要素の第1グループは、電気モータに対して直接的に隣接するか、または電気モータに対して間接的に隣接して配置される。従ってシフト要素の第1グループは、電気モータよりも入力軸接続領域に近接して位置する。
【0020】
この場合、2つの構成要素が互いに隣接する位置とは、両構成要素が互いに並列して配置されている、つまり順に互いに連続するよう、互いが位置する両構成要素の位置、と定義される。構成要素は、互いに境を接する、つまり接触するか、または、例えば空間により互いに分離可能である。これを、直接的に隣接する位置、と称する。直接的に隣接する構成要素の間には、追加的な構成要素を配置できない。しかしながら2つの構成要素は、間接的に隣接する位置を、互いに取ることも可能である。この場合、追加的なまたは複数の追加的な構成要素は、2つの構成要素の間に配置可能である。つまり例えば、追加的な構成要素が、間接的に隣接する両構成要素に対して、直接的に隣接するのである。
【0021】
構成要素は、単一構成部品として実現可能であり、または類似の単一構成部品のグループとして、つまり互いに直接的に隣接する類似の複数の単一構成部品の配置として実現可能である。例えば、シフト要素の第1グループは、個別のシフト要素作動ユニットを備える。シフト要素作動ユニットは、互いに異なるシフト要素を作動するが、直接的に互いに隣接して配置され、および同一の基本機能、つまりシフト要素の作動機能を有する。
【0022】
入力軸の長手方向の回転軸は幾何的な中心軸を構成し、この中心軸に沿って、変速機の個別の構成要素が長手方向に配置される。この場合変速機構成要素の互いの順番は、対応する構成要素の入力軸接続領域または出力軸接続領域に対する近接性、および個別の変速機構成要素の互いの隣接性により、決定される。しかしながら構成要素は、中心軸に対して同一の間隔を有する必要はない。
【0023】
シフト要素の第1グループは、電気モータに対して隣接し、および軸方向で電気モータに対するオフセット配置に対して代替的に、少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置可能であり、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定される。シフト要素の第1グループを全体的にシリンダ状体積内に配置することも可能である。シフト要素の第1グループをこのようにシリンダ状体積の内部に配置する、つまりこのような入れ子型構成により、変速機の全長を、非入れ子型構成と比較して、低減可能である。
【0024】
シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、シフト要素の第1グループに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って入力軸接続領域の方向へシフト要素の第1グループに対してオフセット配置される。従ってシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、入力軸接続領域に最も近接する。この場合シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、直接的に、またそうでなければ間接的に、シフト要素の第1グループに対して隣接して配置可能である。シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、シフト要素の第1グループよりも入力軸接続領域に対して近接して位置する。
【0025】
本発明に従い、メイン歯車セットは、少なくともセクションごとに、電気モータの内側側面により側面が画定されるシリンダ状体積の内部に配置されるか、または電気モータに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ電気モータに対してオフセット配置される。メイン歯車セットは、2つの遊星歯車セットにより形成され、セクションごとに電気モータにより包囲されたシリンダ状体積の内部に配置可能である。この場合、第1遊星歯車セットは全体的または部分的にシリンダ状体積内に、および/または第2遊星歯車セットは全体的または部分的に、シリンダ状体積の内部に配置可能である。従って、メイン歯車セットの要素を互いに結合する軸は、同様に少なくともセクションごとに、電気モータに包囲されるシリンダ状体積内に配置可能である。代替的にメイン歯車セットは、電気モータに対して軸方向でオフセット配置を有し、および直接的に、またそうでなければ間接的に、電気モータに対して隣接可能である。メイン歯車セットは、電気モータよりも、出力軸接続領域に対してより近接して配置される。
【0026】
第1実施形態に従い、電気モータは内部ロータとして形成され、および電気モータの内径は、電気モータのロータの内径に対応する。電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する部品は、シリンダ状の空洞を備え、電気モータが内部ロータとして形成されている場合には、ロータである。内部ロータは、ロータおよびステータの互いに対する配置により画定される。回転し、および電気モータの磁気回路においてエネルギー供給に活発に関与する部品であるロータは、固定されて電気モータの磁気回路においてエネルギー供給に活発に関与するステータにより包囲される。電気モータのロータは、更にシリンダ状体積を包囲する。
【0027】
更なる実施形態に従い、電気モータは外部ロータとして形成され、および電気モータの内径は、電気モータのステータの内径に対応する。電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する部品は、シリンダ状の空洞を備え、電気モータが外部ロータとして形成されている場合には、ステータである。外部ロータは、ロータおよびステータの互いに対する配置により画定される。回転し、および電気モータの磁気回路においてエネルギー供給に活発に関与する部品であるロータは、固定されて電気モータの磁気回路においてエネルギー供給に活発に関与するステータを包囲する。電気モータのステータは、更にシリンダ状体積を包囲する。
【0028】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第1グループは、形状結合型シフト要素、特に噛合型シフト要素として形成される。シフト要素は、例えば噛合型クラッチ、ツースクラッチ、同期ユニットまたは噛合型ブレーキとして形成可能である。形状結合型シフト要素を使用することで、開放された状態の形状結合型シフト要素の引きずり損失が、例えば摩擦結合型シフト要素を使用した場合と比較して、低減される。
【0029】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機は前置切換え歯車セットを備える。前置切換え歯車セットは、更なる遊星歯車セットにより形成される。前置切換え歯車セットは、変速機において、メイン切換え歯車セットのみを備える実施形態よりも、多くのギヤ数を得る役割を果たす。前置切換え歯車セットは入力軸と結合され、および例えば少なくとも1つの、シフト要素の第1グループのシフト要素により、メイン歯車セットと作動結合可能である。前置切換え歯車セットの太陽歯車は、例えば直に変速機の入力軸と結合可能である。前置切換え歯車セットの内歯車は、例えば回転不能とすることが可能である。前置切換え歯車セットの太陽歯車または内歯車が、変速機の更なる構成要素と他の結合をすることも、同様に可能である。
【0030】
変速機の更なる実施形態に従い、前置切換え歯車セットは、少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置され、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定される。前置切換え歯車セットは、部分領域において、すなわち前置切換え歯車セットの1セクションのみが、電気モータにより包囲可能であるか、または全体が、電気モータにより包囲されるシリンダ状体積内に配置可能である。前置切換え歯車セットと結合される軸は、シリンダ状体積から導出されるため、電気モータにより包囲されるシリンダ状体積の内部には存在しない変速機構成要素とも、作動結合を構築可能である。
【0031】
変速機の更なる実施形態に従い、前置切換え歯車セットは、軸方向で入力軸接続領域の方向へ、電気モータに対してオフセット配置され、ならびに軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対してオフセット配置される。従って前置切換え歯車セットは、電気モータよりも入力軸接続領域に対して近接し、およびシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークよりも出力軸接続領域に対して近接して位置する。換言すると前置切換え歯車セットは、電気モータと、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークの間に配置される。前置切換え歯車セットの、電気モータならびにシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対する間隔は、変速機の各実施形態用に個別に決定可能である。前置切換え歯車セットは、電気モータに直接的に隣接して配置可能である。これによりシフト要素の第1グループが、電気モータに対して直接的に隣接する位置を取ることが可能である。
【0032】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第1グループは、少なくともセクションごとに、更なる遊星歯車セットの太陽歯車により包囲されるシリンダ状体積の内部に配置され、シリンダ状体積の側面は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の内側側面により画定され、シリンダ状体積の側面の直径は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の内径に対応する。電気モータの内側側面により、側面が画定されるシリンダ状体積と同様に、前置切換え歯車セットを形成する更なる遊星歯車セットは、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の形状およびサイズが、変速機構成要素を受容するのに適するよう形成可能であり、シリンダ状体積は、直線の円柱形状を有する。従って更なる遊星歯車セットの太陽歯車は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の回転軸の周りに、構成スペースとして使用可能な材料の存在しない、直線の円柱の形状の空洞を備える。空洞の直径は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の内径である。シリンダ状空洞の側面、つまり更なる遊星歯車セットの太陽歯車の内側側面は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車により包囲されるシリンダ状体積の側面に対応する。このシリンダ状体積のカバー面は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車のカバー面と同一の面にある。更なる遊星歯車セットの太陽歯車は、シフト要素の第1グループを、部分的または全体として包囲可能である。つまりシフト要素の第1グループは、更なる遊星歯車セットによる入れ子型構成を備える。換言すると、シフト要素の第1グループの個々のシフト要素が全体またはセクションで、またはシフト要素の第1グループの複数のシフト要素が全体またはセクションで、またはシフト要素の第1グループの全てのシフト要素が全体またはセクションで、更なる遊星歯車セットの太陽歯車により包囲されるシリンダ状体積の内部に配置可能である。このような入れ子型構成により、変速機の全長を、非入れ子型構成より短くすることが可能である。
【0033】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第1グループは、少なくともセクションごとに中空シリンダ状体積の内部に配置され、中空シリンダ状体積の内側側面は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定され、中空シリンダ状体積の内側側面の直径は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外径に対応する。このシリンダ状体積は、直線の円柱である幾何形状を有し、および構成スペースとして使用可能な材料の存在しない体積であり、その体積の形状およびサイズは、変速機構成要素の受容に適する。中空シリンダ状体積の内側側面は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外側側面と同一の直径を有する。更なる遊星歯車の内歯車の外径は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外側側面上で、歯部ラインに最も近接する、歯部ラインと平行する直径である。中空シリンダ状体積のカバー面は、更なる遊星歯車セットの内歯車のカバー面と同一の面に配置される。シフト要素の第1グループは、少なくともセクションごとに、この中空シリンダ状体積の内部に配置可能であり、またはそれに対して代替的に全体として、この中空シリンダ状体積の内部に配置可能である。つまり、シフト要素の第1グループの個々のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第1グループの複数のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第1グループの全てのシフト要素がセクションまたは全体で、中空シリンダ状体積の内部に配置可能であり、中空シリンダ状体積の内側側面は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定される。このような配置は、入れ子型構成を構成する。換言すると更なる遊星歯車セットは、少なくとも領域的セクションにおいて、シフト要素の第1グループにより包囲される。
【0034】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第1グループは、前置切換え歯車セットに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ前置切換え歯車セット対してオフセット配置される。これにより前置切換え歯車セットは、シフト要素の第1グループよりも入力軸接続領域に対して近接し、従ってシフト要素の第1グループは、前置切換え歯車セットよりも、出力軸接続領域に対して少ない間隔を有する。変速機の個々の構成要素の互いに対する正確な間隔は、変速機の構成に応じて、個別に決定可能である。シフト要素の第1グループは、直接的に、またそうでなければ間接的に、前置切換え歯車セットに対して隣接して配置される。
【0035】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機は、電気モータとメイン歯車セットの間の結合要素として補助歯車セットを備える。補助歯車セットは、補助的な遊星歯車セットにより形成される。この場合結合要素は、それを介して2つの構成要素の間に作動結合を構築可能な特別な構成要素として定義される。結合要素は、結合要素と結合された構成要素の回転数を変更可能である。
【0036】
補助歯車セットは、補助的な遊星歯車セットにより形成される。補助歯車セットは、例えば電気モータから供給されたトルクを変更する役割を果たす。電気モータは、補助歯車セットを介して残余の変速機構成要素に対して作動結合を構築することにより、例えばよりコンパクトでより軽量のサイズとすることが可能である。これは、電気モータにより供給されたトルクを変更することで、電気モータのロータにかかるトルクが、補助歯車セットがない構成よりも低減されるためである。補助的な遊星歯車セットの太陽歯車は、例えば直に、または更なるシフト要素を介して電気モータのロータと結合可能である。補助的な遊星歯車セットの内歯車は、例えば直に、または他のシフト要素を介して、メイン歯車セットのキャリアと結合可能であり、および/または補助的な遊星歯車セットのキャリアは、例えば第1遊星歯車セットの太陽歯車および第2遊星歯車セットの太陽歯車と結合可能である。
【0037】
変速機の更なる実施形態に従い、補助歯車セットは、少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置され、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定される。換言すると補助歯車セットは、電気モータによる入れ子型構成を備える。この場合補助歯車セットは、セクションごと、または全体が、このシリンダ状体積内に配置可能である。補助歯車セットと結合される軸は、このシリンダ状体積から導出されるため、変速機の他の構成要素と作動結合を構築可能である。補助歯車セットおよび電気モータをこのような入れ子型構成にすることにより、変速機の全長を、非入れ子型構成より短くすることが可能である。電気モータ、補助歯車セットおよびメイン歯車セットの間に作動結合を構築する軸は、入れ子構成によって長さが低減されるため、変速機を構成する労力および変速機の重量が、非入れ子構成に比べて低減される。
【0038】
変速機の更なる実施形態に従い、補助歯車セットは、電気モータに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ、電気モータに対してオフセット配置され、および軸方向で入力軸に沿って入力軸接続領域の方向へ、メイン歯車セットに対してオフセット配置される。従って補助歯車セットは、電気モータよりも出力軸接続領域に対して近接して位置し、およびメイン歯車セットよりも入力軸接続領域に対して近接して位置する。換言すると補助歯車セットは、電気モータとメイン歯車セットの間に配置される。補助歯車セットは直接的に、またそうでなければ間接的に、電気モータに対して隣接可能である。補助歯車セットは直接的に、またそうでなければ間接的に、メイン歯車セットに対して隣接可能である。
【0039】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機はシフト要素の第2グループを備える。シフト要素の第2グループは、シフト要素作動ユニットの対応する第2グループを備える。この場合シフト要素の第2グループは、例えば噛合型クラッチである形状結合型クラッチとして、または好適には、例えば噛合型ブレーキである形状結合型ブレーキとして構成されたシフト要素から構成可能である。この場合シフト要素作動ユニットの第2グループは、シフト要素の第2グループを作動する役割を果たす。シフト要素作動ユニットの第2グループの各シフト要素作動ユニットは、シフトフォークおよび作動モジュールから形成される。シフト要素の第2グループは、シフト要素作動ユニットの第2グループにより作動可能、つまり締結されることが可能であり、および作動された状態から再び非作動の状態、つまり開放に至ることが可能である。シフト要素作動ユニットの第2グループは、シフト要素作動ユニットの第1グループと作動結合可能であり、またそうでなければ部分的に、シフト要素作動ユニットの第1グループにより構成可能である。つまり例えば、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、シフト要素作動ユニットの第2グループの作動モジュールと作動結合可能であり、およびシフト要素の第1グループならびに第2グループのためのシフト要素作動ユニットを構成可能である。
【0040】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第2グループは、電気モータに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ電気モータに対してオフセット配置される。従ってシフト要素の第2グループは、電気モータよりも出力軸接続領域に対して近接して配置され、および直接的に、またそうでなければ間接的に、電気モータに対して隣接して配置可能である。シフト要素の第2グループは、例えばメイン歯車セットの要素と作動結合することが可能であるため、この要素を固定可能である。シフト要素の第2グループは、前置切換え歯車セットまたは補助歯車セットの要素と作動結合することも可能である。
【0041】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第2グループは、少なくともセクションごとに中空シリンダ状体積の内部に配置され、中空シリンダ状体積の内側側面は、第1遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定され、中空シリンダ状体積の内側側面の直径は、第1遊星歯車セットの内歯車の外径に対応する。このシリンダ状体積は、直線の円柱である幾何形状を有し、および構成スペースとして使用可能な材料の存在しない体積であり、その体積の形状およびサイズは、変速機構成要素の受容に適する。中空シリンダ状体積の内側側面は、第1遊星歯車セットの内歯車の外側側面と同一の直径を有する。第1遊星歯車の内歯車の外径は、第1遊星歯車セットの内歯車の外側側面上で、歯部ラインに最も近接する、歯部ラインと平行な直径である。中空シリンダ状体積のカバー面は、第1遊星歯車セットの内歯車のカバー面と同一の面に配置される。シフト要素の第2グループは、少なくともセクションごとに第1遊星歯車セットを包囲可能である。つまり、シフト要素の第2グループの個々のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第2グループの複数のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第2グループの全てのシフト要素がセクションまたは全体で、中空シリンダ状体積の内部に配置可能であり、中空シリンダ状体積の内側側面は、第1遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定される。追加的なシリンダ状外形体積から導出される、シフト要素の第2グループと結合される軸を介して、変速機の他の構成要素と作動結合を構築可能である。
【0042】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第2グループは、少なくともセクションごとに中空シリンダ状体積の内部に配置され、中空シリンダ状体積の内側側面は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定され、中空シリンダ状体積の内側側面の直径は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外径に対応する。この中空シリンダ状体積は、直線の中空円柱である幾何形状を有し、および構成スペースとして使用可能な材料の存在しない体積であり、その体積の形状およびサイズは、変速機構成要素の受容に適する。中空シリンダ状体積の内側側面は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外側側面と同一の直径を有する。補助的な遊星歯車セットの内歯車の外径は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外側側面上で、歯部ラインに最も近接する、歯部ラインと平行な直径である。中空シリンダ状体積のカバー面は、補助的な遊星歯車セットの内歯車のカバー面と同一の面に配置される。従ってシフト要素の第2グループは、少なくともセクションごとに、または全体で、補助的な遊星歯車セットを包囲可能である。つまり、シフト要素の第2グループの個々のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第2グループの複数のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第2グループの全てのシフト要素がセクションまたは全体で、中空シリンダ状体積の内部に配置可能であり、中空シリンダ状体積の内側側面は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定される。追加的なシリンダ状外形体積から導出される、シフト要素の第2グループと結合される軸を介して、変速機の他の構成要素と作動結合を構築可能である。
【0043】
変速機の更なる実施形態に従い、ハウジングは変速機の構成要素を、入力軸接続領域および出力軸接続領域を除いて包囲する。ハウジングは鉢状に形成され、および中心軸を備え、中心軸は出力軸に対して同軸である。および出力軸は、中心軸に沿ってハウジングから導出される。ハウジングは鉢に似せて構成され、鉢の形状およびサイズは、変速機の構成要素の受容に適する。鉢状は、費用対効果に優れて実現される変速機の構成である。
【0044】
鉢状のハウジングは、ハウジング底部を備える。ハウジング底部は、出力軸接続領域に最も近接する変速機側に配置される。ハウジング底部は、変速機のハウジングと堅固に結合される。ハウジングおよびハウジング底部は、例えば鋳造プロセスにおいて1つの個体から製造可能であるため、ハウジングおよびハウジング底部は、分離不能に互いに結合される。
【0045】
さらにハウジングの中心軸は、変速機の幾何的な中心軸と平行する、ハウジングの長手方向の幾何的な軸として定義される。しかしながらハウジングの中心軸および変速機の中心軸は、同軸とすることも可能である。ハウジングの中心軸はハウジング底部を通って走る。ハウジング底部は、中心軸の周りに配置された、出力軸のための開口部を備える。ハウジングの外部にある出力軸の領域は、出力軸接続領域である。
【0046】
変速機の更なる実施形態に従い、電気モータのロータは軸受用シールドにより支持される。軸受用シールドは、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対してオフセット配置される。従って軸受用シールドは、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークよりも出力軸接続領域に対して近接する。軸受用シールドは、ロータを支持するよう、電気モータのロータおよび変速機のハウジングと結合される。軸受用シールドは、好適には一個部品の構成要素として形成され、この構成要素は単一の部品として製造される。電気モータのロータは、軸受により、入力軸回転軸と同軸である回転軸の周りでのみ回転可能であり、他の動きまたは力の作用に対して、出来る限り保護される。ロータを、時間および費用対効果に優れた手段で製造される軸受用シールドを介して支持することで、軸受に関する費用対効果の問題を解決する。
【0047】
変速機の更なる実施形態に従い、ハウジングは、ハウジングと結合可能なカバーを備える。カバーは、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対して隣接し、および軸方向で前記入力軸に沿って入力軸接続領域の方向へシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対してオフセット配置される。入力軸は、カバーにより支持される。カバーは、好適には一個部品の構成要素として、つまり個別の部品から製造された単一構成部品として、または複数個部品、つまり複数の単一部品からなる構成要素として形成可能である。ハウジングおよびカバーは、互いに結合可能である。この結合は、解除可能な結合、例えばねじ式または挿入式の結合により実現可能である。
【0048】
カバーは、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークよりも入力軸接続領域に対して近接して位置する。従ってカバーは、入力軸接続領域に対して最も近接し、およびハウジングを、入力軸接続領域の側で閉鎖する。入力軸は、カバーの開口部を通りハウジングから導出される。ハウジングの外部に配置された入力軸の領域は、入力軸接続領域である。入力軸はカバーにより支持されるため、入力軸の回転軸の周りでのみ回転可能である。入力軸は、カバーにより、他の形態の動きおよび力の作用に対して、出来る限り保護される。入力軸を、時間および費用対効果に優れた手段で製造されるカバーを介して支持することで、軸受に関する費用対効果の問題を解決する。
【0049】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機は補助的な電気モータを備える。補助的な電気モータは、入力軸と結合可能であるか、または結合される。補助的な電気モータは、入力軸接続領域に近接し、および入力軸と結合される。その際、軸により直に作動結合するか、またはクラッチによる作動結合を構築可能である。補助的な電気モータのロータを介して、トルクを入力軸に付与可能であり、およびそれにより、例えば内燃エンジンである駆動源が始動される。これには、自動者が電気モータのみで駆動される電気的な走行モードが同時である場合に、電気的な走行モードに影響を与えずに始動可能である、という利点がある。この場合、補助的な電気モータはコンバータに結合可能である。コンバータを介して、補助的な電気モータは蓄電ユニットに結合される。さらに、蓄電ユニットは各形状、特に電気化学式、静電式、油圧式および機械式の蓄電ユニットが適合する。
【0050】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機はオイルポンプを備える。オイルポンプは、メイン歯車セットに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へメイン歯車セットに対してオフセット配置され、およびハウジングの内部に配置される。オイルポンプは、出力軸と作動結合し、および出力軸により作動可能である。オイルポンプは、ハウジングの内部で、メイン歯車セットよりも出力軸接続領域に対して近接し、およびハウジング底部に近接して位置可能である。有利なことに、出力軸がオイルポンプを作動可能であるため、オイルポンプ用に追加の作動ユニットが不要である。
【0051】
以下に詳説する図面を参考に、本発明の異なる実施形態およびその詳細について詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】変速機の実施形態の断面図である。
図2図1の変速機の歯車セットの例示的な概略図である。
図3図1の変速機の実施形態の概略的な配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、変速機1の実施形態の断面図である。変速機1は、縦軸方向断面図で示される。回転対称であることを理由に、変速機1の中心軸で分割された変速機部分のみが示される。変速機1の中心軸は、ここでは一点鎖線で示される。変速機1は入力軸ANを備える。入力軸ANは中心軸に沿って走り、中心軸は同様に入力軸ANの回転軸を構成する。入力軸ANは、入力軸接続領域ANAを備え、この領域を介して、駆動源つまり内燃エンジンにより発生されたトルクを変速機1へと導入可能である。従って、入力軸接続領域ANAは変速機の入力部を示す。出力軸ABは、入力軸ANに対して同軸に配置される。出力軸ABは同様に、変速機1の中心軸に沿って走る。出力軸ABは、出力軸接続領域ABAを備え、この領域を介して、変速機1内で変換されたトルクを変速機1から導出する。従って、出力軸接続領域ABAは変速機出力部を示し、および入力軸接続領域ANAに対して、変速機1の反対側に位置する。
【0054】
変速機1は外側に向かい、ハウジングGにより限定される。ハウジングは、変速機1が備える他の全ての構成要素を、入力軸接続領域ANAおよび出力軸接続領域ABAを除いて包囲する。従って変速機1は、更なるドライブトレイン要素、例えば内燃エンジンのような駆動源に対して、この場合入力軸接続領域ANAにおいて接続可能である。
【0055】
変速機1に含まれる電気モータは内部ロータであり、ハウジングGに包囲される。電気モータEMはロータRおよびステータSを備える。ステータSはハウジングGと結合されているため、ハウジングGに対して回転不能である。電気モータEMは、縦軸方向の変速機部分で見ると、中心軸に沿い、変速機の中央領域において、入力軸接続領域ANAと出力軸接続領域ABAの間に配置されている。ロータRは、ロータRが中心軸の周りの回転運動のみを実行可能であるよう、軸受用シールドLに支持される。ロータRは、ステータSと反対側のロータRの内側側面で、シリンダ状体積の側面を画定する。シリンダ状体積は、直線の円柱である幾何形状を有し、その直径は、電気モータEMの内径、つまり電気モータEMのロータRの内径に対応する。このシリンダ状体積のカバー面は、ロータRのカバー面により画定される。ロータRの第1カバー面は入力軸接続領域ANA側を向き、ロータRの第2カバー面は出力軸接続領域ABA側を向く。シリンダ状体積は、変速機1の構成要素を受容するのに適した形状およびサイズとする。
【0056】
変速機1の構成要素は、既述の構成要素に加えて、メイン歯車セットHRS、前置切換え歯車セットVRS、補助歯車セットZRS、第1シフト要素A、第2シフト要素B、第3シフト要素C、第4シフト要素Dおよび第5シフト要素Eからなるシフト要素の第1グループ、シフト要素Fからなるシフト要素の第2グループ、3つのシフト要素作動ユニットSB1, SB2, SB3であって、そのうち各々が、シフトフォークSBG1, SBG2, SBG3および2つの作動モジュールSBM1, SBM2, SBM3, SBM4, SBM5, FMから形成される3つのシフト要素作動ユニットSB1, SB2, SB3、カバーGD、軸受用シールドL、オイルポンプPおよび補助的な電気モータEMZである。シフト要素の第1グループの各シフト要素A; B; C, D, Eおよびシフト要素の第2グループのシフト要素Fは、2つの構成要素の間の結合を2本の軸を介して構築可能である。従って、各シフト要素A, B, C, D, Eは、合計2つの作動側を備える。そのうちの各作動側は、結合される軸のうちの1本の軸と結合される。メイン歯車セットHRSは、第1遊星歯車セットPS1および第2遊星歯車セットPS2を備える。第1遊星遊星歯車セットPS1は、2つのセグメントからなる内歯車HO1、キャリアST1および太陽歯車SO1を備え、および第2遊星歯車セットPS2は、内歯車HO2、キャリアST2および太陽歯車SO2を備える。前置切換え歯車セットは、更なる遊星歯車セットPS3を備える。更なる遊星歯車セットPS3はまた、内歯車HO3、キャリアST3および太陽歯車SO3を有する。補助歯車セットZRSは、補助的な遊星歯車セットPS4を備え、補助的な遊星歯車セットPS4は内歯車HO4、キャリアST4および太陽歯車SO4を備える。
【0057】
以下において、軸方向では常に中心軸を基準とし、中心軸に沿って対応する構成要素が、入力軸接続領域ANAまたは出力軸接続領域ABAに近接して位置を取ることが可能である。以下において、径方向では常にこの中心軸を基準とする。対応する構成要素は、入力軸AN、つまり中心軸に近接する位置、または中心軸から離れ、従ってハウジングGに近接する位置を取ることが可能である。
【0058】
第3シフト要素Cは、電気モータEMのロータRに対して、中心軸から径方向に見て、最も近接して位置する。第3シフト要素Cは、ロータRにより側面が限定されるシリンダ状体積の内部で、シリンダ状体積の入力軸接続領域ANAを向いた側に配置される。第3シフト要素Cは、図示の位置において開放され、およびハウジングGと補助歯車セットZRSのキャリアST4、ならびにハウジングGとメイン歯車セットHRSの太陽歯車SO1, SO2の間に作動結合を構築可能である。第3シフト要素Cの第1作動側は、軸を介してハウジングGと結合可能である。つまり、第3シフト要素Cはブレーキ、この実施形態においては噛合型ブレーキを形成する。第3シフト要素Cの第2作動側および第2シフト要素Bの第1作動側は、共通軸上に配置される。第2シフト要素Bおよび第3シフト要素Cのこの共通軸は、ロータRにより側面が限定されるシリンダ状体積の内部で、シリンダ状体積の入力軸接続領域ANAを向いた側に配置される。
【0059】
第2シフト要素Bは、中心軸に対して径方向に、第3シフト要素Cに最も近接して位置する。第2シフト要素Bは同様にロータRにより限定されるシリンダ状体積の内部で、シリンダ状体積の入力軸接続領域ANAを向いた側に配置される。第2シフト要素Bは、軸方向で第3シフト要素Cよりも更に入力軸接続領域ANAから離れ、および径方向で第3シフト要素Cよりも中心軸に近接して配置される。図示の位置において、第2シフト要素Bは開放される。第2シフト要素Bは、締結された状態において、メイン歯車セットHRSの太陽歯車SO1, SO2と前置切換え歯車セットVRSのキャリアST3の間に作動結合を構築可能である。第2シフト要素Bは、この実施形態においては噛合型クラッチを形成する。
【0060】
第2シフト要素Bの第1作動側は、複数の単一部分から構成された軸を介して、メイン歯車セットHRSと堅固に結合される。この軸は、まずロータRにより側面が限定されるシリンダ状体積の内部を走り、および出力軸接続領域ABAを向いた側で、中心軸に平行してシリンダ状体積を出る。
【0061】
第4シフト要素Dは、径方向で第2シフト要素Bよりも中心軸に近接して配置される。第4シフト要素Dは、ロータRにより側面が限定されるシリンダ状体積の内部で、シリンダ状体積の入力軸接続領域ANAを向いた側に配置される。第4シフト要素Dは、第2シフト要素Bに対して平行に配置される。第2シフト要素Bの第2作動側は、第4シフト要素Dの第1作動側と同一の軸と結合され、および図示の状態で、直に互いに相対する。換言すると第2シフト要素Bと第4シフト要素Dは、入力軸接続領域ANAに対して、軸方向で同一の位置にある。
【0062】
第4シフト要素Dは、図示の位置において開放され、および締結された状態において、前置切換え歯車セットVRSのキャリアST3とメイン歯車セットHRSの第2遊星歯車セットPS2のキャリアST2の間に作動結合を構築可能である。これは、複数の単一部分から構成された軸により達成される。この軸上に、第4シフト要素Dの第2作動側が配置され、第4シフト要素Dの第2作動側は、ロータRにより側面が画定されるシリンダ状体積の内部に配置される。この軸上に、同様に第5シフト要素Eの第1作動側が配置される。この軸は、まずロータRにより側面が限定されるシリンダ状体積内で中心軸に平行に走り、および入力軸接続領域ANAと反対側で、出力軸接続領域ABAの方向へ、中心軸に平行してシリンダ状体積を出る。第4シフト要素Dは、この実施形態においては噛合型クラッチを形成する。
【0063】
第5シフト要素Eは、中心軸に対して径方向で第4シフト要素Dよりも中心軸に近接して配置される。第5シフト要素Eは、ロータRにより側面が限定されるシリンダ状体積の内部で、第4シフト要素Dに対して平行に配置され、シリンダ状体積の入力軸接続領域ANAを向いた側に配置される。換言すると第5シフト要素Eは、軸方向に第4シフト要素Dと同一の位置を取る。第5シフト要素Eは、第5シフト要素Eの第1作動側が、第4シフト要素Dの第2作動側と共通の軸上に配置される。第5シフト要素Eは、第5シフト要素Eの第2作動側が、セクション的に中心軸に平行に走る、垂直に続く軸を介して、前置切換え歯車セットVRSおよび入力軸ANと直に結合される。第5シフト要素Eにより、締結された状態において、前置切換え歯車セットVRSの太陽歯車SO3、太陽歯車SO3と結合された入力軸AN、およびメイン歯車セットHRSの第2遊星歯車セットPS2のキャリアST2の間に、作動結合が構築可能である。図示の第5シフト要素Eは、開放状態で示され、および噛合型クラッチとして形成される。
【0064】
第1シフト要素Aは、中心軸に対して径方向で最も近接して位置する。第1シフト要素Aは、ロータRにより限定されるシリンダ状体積の外部に、軸方向で電気モータEMおよび第3シフト要素Cよりも入力軸接続領域ANAに近接して配置される。第1シフト要素Aは、第1シフト要素Aの第1作動側が、直に入力軸ANと結合され、これに対して第2作動側は、まずは中心軸に平行に走る複数の単一部分から形成された軸を介して、メイン歯車セットHRSと結合される。従って第1シフト要素Aは、締結された状態で、入力軸ANと、メイン歯車セットHRSの第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1の間に作動結合を構築可能である。図示に示す位置で第1シフト要素Aは、開放された状態を示し、および噛合型クラッチとして形成される。
【0065】
ロータRにより側面が限定されるシリンダ状体積内で、径方向で電気モータEMから中心軸の方向で、シフト要素B, C, D, Eの順番で配置される。第3シフト要素Cは、電気モータEMに最も近接して位置し、それに続いて第2シフト要素Bが、その後第4シフト要素Dが、そして第5シフト要素Eが続く。第1シフト要素Aは中心軸に最も近接して位置し、第1シフト要素Aは、シリンダ状体積の外部に配置される。
【0066】
シフト要素の第1グループの各シフト要素A, B, C, D, Eおよびシフト要素の第2グループのシフト要素Fは、シフト要素作動ユニットSB1, SB2, SB3により作動可能である。第1シフト要素作動ユニットSB1は、中心軸に垂直に走る第1シフトフォークSBG1、中心軸に平行に走る第1作動モジュールSBM1、および中心軸に垂直に走る、シフト要素の第2グループのシフト要素Fの作動モジュールFMにより、形成される。シフト要素作動ユニットの第1グループSB1, SB2, SB3のシフトフォークSBG1, SBG2, SBG3の第1シフトフォークSBG1は、軸方向で入力軸接続領域ANAに最も近接し、ならびに径方向で中心軸に最も近接して配置される。第1シフト要素作動ユニットSB1のシフトフォークSBG1は、中心軸に対して平行に移動可能である。全ての作動モジュールSBM1, SBM2, SBM3, SBM4, SBM5, FMのうちの第1作動モジュールSBM1は、中心軸に対して径方向で最も近接して配置される。シフト要素の第2グループのシフト要素Fの作動モジュールFMは、径方向で中心軸から最も離れて配置される。
【0067】
第1作動モジュールSBM1は、第1作動モジュールSBM1の入力軸接続領域ANAを向いた側で第1シフトフォークSBG1と、およびその出力軸接続領域ABAを向いた側で第1シフト要素Aと結合される。シフト要素の第2グループのシフト要素Fの作動モジュールFMは、第1シフトフォークSBG1およびシフト要素Fと結合される。従って第1シフト要素作動ユニットSB1は、第1シフト要素Aおよびシフト要素Fを、開放または締結する。第1シフトフォークSBG1は始端位置を取ることが可能である。この始端位置において、第1シフト要素Aは完全に開放され、シフト要素Fは完全に締結され、および第1シフトフォークSBG1は、第1シフトフォークSBG1に対して可能な位置において、軸方向で入力軸接続領域ANAから最も離れて位置する。第1シフトフォークSBG1は終端位置を取ることが可能である。この終端位置において、第1シフト要素Aは完全に締結され、シフト要素Fは完全に開放され、および第1シフトフォークSBG1は、第1シフトフォークSBG1に対して可能な位置において、軸方向で入力軸接続領域ANAに最も近接して位置する。第1シフトフォークSBG1は、その始端位置と終端位置の間を移動可能である。換言すると第1シフト要素Aは、シフト要素Fとは決して同時には締結されない。
【0068】
第2シフト要素作動ユニットSB2は、中心軸に垂直に走る第2シフトフォークSBG2、中心軸に平行に走る第2作動モジュールSBM2、および中心軸に平行に走る第3作動モジュールSBM3により、形成される。第2シフトフォークSBG2は、軸方向で第1シフトフォークSBG1よりも入力軸接続領域ANAから離れて配置され、ならびに径方向で第1シフトフォークSBG1よりも中心軸から離れて配置される。第2シフトフォークSBG2は、中心軸に対して平行に移動可能である。
【0069】
第2作動モジュールSBM2は、径方向で第1作動モジュールSBM1よりも更に中心軸から離れて配置される。第2作動モジュールSBM2は、第2作動モジュールSBM2の入力軸接続領域ANAを向いた側で第2シフトフォークSBG2と、およびその出力軸接続領域ABAを向いた側で第5シフト要素Eと結合される。第3作動モジュールSBM3は、径方向で第2作動モジュールSBM2よりも更に中心軸から離れて配置される。第3作動モジュールSBM3は、第3作動モジュールSBM3の入力軸接続領域ANAを向いた側で第2シフトフォークSBG2と、およびその出力軸接続領域ABAを向いた側で第4シフト要素Dと結合される。
【0070】
第2シフトフォークSBG2は始端位置を取ることが可能である。この始端位置において、第4シフト要素Dは締結され、第5シフト要素Eは開放され、および第2シフトフォークSBG2は、入力軸接続領域ANAに対して、第2シフトフォークSBG2に対して可能な位置において、軸方向で最も近接して位置する。第2シフトフォークSBG2は終端位置を取ることが可能である。この終端位置において、第4シフト要素Dは開放され、第5シフト要素Eは締結され、および第2シフトフォークSBG2は、第2シフトフォークSBG2に対して可能な位置において、軸方向で入力軸接続領域ANAから最も離れて位置する。第2シフトフォークSBG2は、その始端位置と終端位置の間を移動可能である。換言すると第4シフト要素Dは、第5シフト要素Eとは決して同時には締結されない。
【0071】
第3シフト要素作動ユニットSB3は、中心軸に垂直に走る第3シフトフォークSBG3、中心軸に平行に走る第4作動モジュールSBM4、および中心軸に平行に走る第5作動モジュールSBM5により、形成される。第3シフトフォークSBG3は、軸方向で第2シフトフォークSBG2よりも入力軸接続領域ANAから更に離れて配置され、ならびに径方向で第2シフトフォークSBG2よりも中心軸から更に離れて配置される。第3シフトフォークSBG3は、中心軸に対して平行に移動可能である。
【0072】
第5作動モジュールSBM5は、径方向で第3作動モジュールSBM3よりも更に中心軸から離れて配置される。第5作動モジュールSBM5は、第5作動モジュールSBM5の入力軸接続領域ANAを向いた側で第3シフトフォークSBG3と、およびその出力軸接続領域ABAを向いた側で第2シフト要素Bと結合される。第4作動モジュールSBM4は、径方向で第5作動モジュールSBM5よりも更に中心軸から離れて配置される。第4作動モジュールSBM4は、第4作動モジュールSBM4の入力軸接続領域ANAを向いた側で第3シフトフォークSBG3と、およびその出力軸接続領域ABAを向いた側で第3シフト要素Cと結合される。
【0073】
第3シフトフォークSBG3は始端位置を取ることが可能である。この始端位置において、第2シフト要素Bは締結され、第3シフト要素Cは開放され、および第3シフトフォークSBG3は、入力軸接続領域ANAに対して、第3シフトフォークSBG3に対して可能な位置において、軸方向で最も近接して位置する。第3シフトフォークSBG3は終端位置を取ることが可能である。この終端位置において、第2シフト要素Bは開放され、第3シフト要素Cは締結され、および第3シフトフォークSBG3は、第3シフトフォークSBG3に対して可能な位置において、軸方向で入力軸接続領域ANAから最も離れて位置する。第3シフトフォークSBG3は、その始端位置と終端位置の間を移動可能である。換言すると第2シフト要素Bは、第3シフト要素Cとは決して同時には締結されない。
【0074】
回転可能で電気モータEMの活性電磁化部分を構成する電気モータEMのロータRは、軸受用シールドにより支持される。軸受用シールドLは、軸方向で第3シフト要素作動ユニットSB3の第3シフトフォークSBG3よりも入力軸接続領域ANAから離れて配置されるが、電気モータEMよりは入力軸接続領域ANAに近接して配置される。換言すると軸受用シールドLは、軸方向で電気モータEMと第3シフトフォークSBG3の間に配置される。軸受用シールドLは、セクションごとに中心軸に対して垂直に走り、およびハウジングGと結合される。
【0075】
前置切換え歯車セットVRSは、直に、電気モータEMのロータRにより側面が限定されるシリンダ状体積の、入力軸接続領域ANAを向いた側の上に、境を接するシリンダ状体積の外部に配置される。更なる遊星歯車セットPS3により形成される前置切換え歯車セットVRSは、太陽歯車SO3、内歯車HO3およびキャリアST3を備える。太陽歯車SO3は第5シフト要素Eの第2作動側と同一の面に、内歯車HO3は第2シフト要素Bおよび第3シフト要素Cの共通軸と同一の面に配置され、およびキャリアST3は、太陽歯車SO3および内歯車HO3と噛み合う遊星歯車を支承する。前置切換え歯車セットVRSの更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3は、第5シフト要素Eの第2作動側ならびに入力軸ANと結合される。前置切換え歯車セットVRSは、軸方向で入力軸接続領域ANAの方向に、ロータRにより側面が限定されるシリンダ状体積に対してオフセット配置され、および軸方向で出力軸接続領域ABAの方向に、第3シフト要素作動ユニットSB3に対してオフセット配置される。つまり前置切換え歯車セットVRSは、軸方向に見て、第3シフト要素作動ユニットSB3と、入力軸接続領域ANA側にある、ロータRにより側面が画定されるシリンダ状体積のカバー面の間に配置される。さらに前置切換え歯車セットVRSは、径方向で第3シフト要素Cよりも中心軸に近接して配置される。
【0076】
更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3の内側側面は、シリンダ状体積の側面を画定する。これは、シリンダ状体積において、その側面が電気モータEMのロータRにより確定されるのと同様の原理に従うものである。更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3の内側側面の直径は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車SO3の内径に対応し、およびこのシリンダ状体積のカバー面は、更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3のカバー面により画定される。更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3の第1カバー面は入力軸接続領域ANA側を向き、更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3の第2カバー面は出力軸接続領域ABA側を向く。このシリンダ状体積の内部に、第1シフト要素Aが配置される。。第2作動モジュールSBM2は、同様にこのシリンダ状体積を通って走るため、第2シフト要素作動ユニットSB2は、第5シフト要素Eと結合される。入力軸ANのセクションが、同様にこのシリンダ状体積を通って走る。
【0077】
更なる遊星歯車セットPS3の内歯車HO3の外側側面は、その直径が更なる遊星歯車セットPS3の内歯車HO3の外径と対応し、中空シリンダ状体積の内側側面を画定する。中空シリンダ状体積のカバー面は、更なる遊星歯車セットPS3の内歯車HO3のカバー面により画定される。更なる遊星歯車セットPS3の内歯車HO3の第1カバー面は入力軸接続領域ANA側を向き、更なる遊星歯車セットPS3の内歯車HO3の第2カバー面は出力軸接続領域ABA側を向く。第4作動モジュールSBM4のセクションは、この中空シリンダ状体積を通って走る。第3シフト要素Cの第1作動側は、同様にこの中空シリンダ状体積内に配置される。
【0078】
補助歯車セットZRSは補助的な遊星歯車セットPS4により形成される。補助的な遊星歯車セットPS4は、内歯車HO4、キャリアST4および太陽歯車SO4を備える。補助歯車セットZRSは、軸方向で出力軸接続領域ABAの方向に、電気モータEMに最も近接し、および径方向で第1シフト要素Aよりも中心軸から更に離れて配置される。補助歯車セットZRSは、軸を介して直に電気モータEMのロータRと結合される。この軸は、補助的な遊星歯車セットPS4の太陽歯車SO4と結合される。補助的な遊星歯車セットPS4のキャリアST4は、補助的な遊星歯車セットPS4の太陽歯車SO4および内歯車HO4と噛み合う遊星歯車を支承する。補助的な遊星歯車セットPS4の内歯車HO4は、第3シフト要素Cと同一の面にあり、および直に、第1遊星歯車セットPS1のキャリアST1、メイン歯車セットHRSの第2遊星歯車セットPS2の内歯車HO2および出力軸ABと、結合される。
【0079】
補助的な遊星歯車セットPS4の内歯車HO4の外側側面は、外側側面の直径が補助的な遊星歯車セットPS4の内歯車HO4の外径と対応し、中空シリンダ状体積の内側側面を画定する。中空シリンダ状体積のカバー面は、補助的な遊星歯車セットPS4の内歯車HO4のカバー面により画定される。補助的な遊星歯車セットPS4の内歯車HO4の第1カバー面は入力軸接続領域ANA側を向き、補助的な遊星歯車セットPS4の内歯車HO4の第2カバー面は出力軸接続領域ABA側を向く。この中空シリンダ状体積内に、シフト要素の第2グループのシフト要素Fおよび第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1の第2セグメントのセクションが配置される。
【0080】
シフト要素の第2グループのシフト要素Fは、軸方向で補助歯車セットZRSよりも出力軸接続領域ABAに近接し、および径方向で第3シフト要素Cよりも中心軸から更に離れて配置される。シフト要素Fは、シフト要素Fの第1作動側で、メイン歯車セットHRSの第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1の第2セグメントと直に結合される。シフト要素Fは、シフト要素Fの第2作動側で、軸を介して、ハウジングGおよびシフト要素の第2グループのシフト要素Fの作動モジュールFMと、結合される。シフト要素Fは、図示の位置において開放され、および第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1を固定する。つまりシフト要素Fは、ブレーキ、この実施形態においては噛合型ブレーキとして形成される。作動モジュールFMは、第1シフトフォークSBG1を介して、中心軸に平行に移動可能である。
【0081】
第1遊星歯車セットPS1および第2遊星歯車セットPS2により形成されるメイン歯車セットHRSは、軸方向でシフト要素Fよりも出力軸接続領域ABAに近接し、および径方向で第1シフト要素Aよりも更に中心軸から離れるが、径方向で補助歯車セットZRSの太陽歯車SO4よりは中心軸に近接して配置される。第1遊星歯車セットPS1は、軸方向で第2遊星歯車セットPS2より入力軸接続領域ANAに近接して配置される。これら両遊星歯車セットPS1およびPS2は、互いに平行に配置される。つまり、第1遊星歯車セットPS1の構成要素は、第2遊星歯車セットPS2の対応する構成要素と同一の面にある。例えば、第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1は、第2遊星歯車セットPS2の内歯車HO2と同一の面に、第1遊星歯車セットPS1の太陽歯車SO1は、第2遊星歯車セットPS2の太陽歯車SO2と同一の面に、第1遊星歯車セットPS1のキャリアST1は、第2遊星歯車セットPS2のキャリアST2と同一の面にある。第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1は、シフト要素Fにより回転不能に固定可能であるか、または第1シフト要素Aにより入力軸ANと結合可能である。第1遊星歯車セットPS1のキャリアST1は、第1遊星歯車セットPS1の太陽歯車SO1および内歯車HO1と噛み合う遊星歯車を支承する。第2遊星歯車セットPS2のキャリアST2は、第2遊星歯車セットPS2の太陽歯車SO2および内歯車HO2と噛み合う遊星歯車を支承する。
【0082】
第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1の外側側面は、外側側面の直径が第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1の外径と対応し、中空シリンダ状体積の内側側面を画定する。中空シリンダ状体積のカバー面は、第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1のカバー面により画定される。第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1の第1カバー面は入力軸接続領域ANA側を向き、第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1の第2カバー面は出力軸接続領域ABA側を向く。この中空シリンダ状体積内には軸が配置される。この軸は、シフト要素の第2グループのシフト要素FをハウジングGと結合する。さらに、第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1を入力軸ANと結合する軸のセクションがこの中空シリンダ状体積内を走り、ならびに更なる軸は、第1遊星歯車セットPS1のキャリアST1を出力軸ABと結合する。
【0083】
オイルポンプPは、軸方向でメイン歯車セットHRSの第2遊星歯車セットPS2よりも出力軸接続領域ABAに近接して配置される。換言するとオイルポンプPは、変速機1の全ての構成要素のうちで、ハウジングG内部で出力軸接続領域ABAに対して最も近接して配置される。オイルポンプPは、径方向で第5シフト要素Eよりも中心軸に近接して配置される。オイルポンプPは出力軸ABと結合され、および出力軸ABを介して作動される。
【0084】
補助的な電気モータEMZは、軸方向で第1シフト要素作動ユニットSB1よりも入力軸接続領域ANAに近接して配置され、および径方向で電気モータEMのロータRよりも更に中心軸から離れて配置される。補助的な電気モータEMZは、変速機1のハウジングGと結合されると共に、減衰要素DEを介して入力軸ANと結合される。補助的な電気モータEMZは、駆動源のためのスタータとして機能する。駆動源は例えば内燃エンジンであり、内燃エンジンは入力軸接続領域ANAと接続される。
【0085】
ハウジングGのカバーGDは、軸方向で第1シフト要素作動ユニットSB1のシフトフォークSBG1よりも入力軸接続領域ANAに近接して配置されるが、補助的な電気モータEMZよりは、更に入力軸接続領域ANAから離れて配置される。換言するとカバーGDは、補助的な電気モータEMZと第1シフトフォークSBG1の間に配置される。カバーGDは入力軸ANと結合され、入力軸を介して、カバーGDが支持される。従ってカバーGDは、径方向で中心軸からハウジングGまで延在する。
【0086】
図2は、図1の変速機の例示的な概略図である。補助的な電気モータおよび減衰要素は、見易さに配慮し、図示しない。従来技術から既知のフロー図により、例えば一例として、変速機1の単一の構成要素の互いの固定結合および可能な結合が単純化されて概観可能とはなるが、全ての構成要素の具体的な配置を、空間的および相関的に示すことができない。電気モータEMは、電気モータEMのステータSによりハウジングGと堅固に結合される。電気モータEMのロータRは、直に、補助歯車セットZRSの補助的な遊星歯車セットPS4の太陽歯車SO4と結合される。補助的な遊星歯車セットPS4のキャリアST4は、第3シフト要素Cを介してハウジングGと結合され、つまり回転不能に固定される。補助的な遊星歯車セットPS4のキャリアST4は、第1遊星歯車セットPS1の太陽歯車SO1および第2遊星歯車セットPS2の太陽歯車SO2と結合されている。補助的な遊星歯車セットPS4の内歯車HO4は、第1遊星歯車セットPS1のキャリアST1と堅固に結合されている。
【0087】
前置切換え歯車セットVRSは、更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3により、直に入力軸ANと結合される。第1シフト要素Aにより、入力軸ANを介して、更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3と第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1の間に、作動結合を構築可能である。さらに第5シフト要素Eにより、更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3と第2遊星歯車セットPS2のキャリアST2の間に、作動結合を構築可能である。第4シフト要素Dにより、更なる遊星歯車セットPS3のキャリアST3と第2遊星歯車セットPS2のキャリアST2の間に、作動結合を構築可能である。第2シフト要素Bにより、更なる遊星歯車セットPS3のキャリアST3、第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1および第2遊星歯車セットPS2の内歯車HO2の間に、作動結合を構築可能である。更なる遊星歯車セットPS3の内歯車HO3は、回転不能にハウジングGと結合される。
【0088】
第1遊星歯車セットPS1の太陽歯車SO1は、第2遊星歯車セットPS2の太陽歯車SO2と堅固に結合される。第1遊星歯車セットPS1のキャリアST1は、第2遊星歯車セットPS2の内歯車HO2および出力軸ABと、堅固に結合される。第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1は、2つの部分から形成される。第1部分はシフト要素Fと結合され、およびハウジングと結合可能、つまりハウジングに固定可能である。第2部分はシフト要素Aと結合される。第1遊星歯車セットPS1の内歯車HO1は、シフト要素Fにより固定可能であるか、または第1シフト要素Aにより入力軸ANと結合可能である。
【0089】
第2遊星歯車セットPS2のキャリアST2は、第4シフト要素Dにより更なる遊星歯車セットPS3のキャリアST3と作動結合可能であるか、または第5シフト要素Eにより更なる遊星歯車セットPS3の太陽歯車SO3と作動結合可能である。第2遊星歯車セットPS2の内歯車HO2は出力軸ABと結合されている。
【0090】
図3は、図1の変速機1の実施形態の概略的な配置図である。簡素化を理由に、構成要素の互いに配置の点で重要な、変速機1の構成要素のみを示す。単一の構成要素の互いに対する間隔は純粋に概略的であり、図1に示す間隔には対応しない。入力軸ANは、一点鎖線で示す中心軸に沿って走る。入力軸ANの入力軸接続領域ANAは、変速機1の配置図の第1サイドを限定する。出力軸ABは、入力軸ANに対して同軸に配置される。出力軸ABの出力軸接続領域ABAは、変速機1の配置図において、第1サイドと反対方向の第2サイドを限定する。補助的な電気モータEMZは、軸方向で入力軸接続領域ANAに最も近接して配置される。補助的な電気モータは、径方向で中心軸に対して間隔を有する。カバーGDは、軸方向で補助的な電気モータEMZよりも入力軸接続領域ANAから更に離れて配置される。換言するとカバーGDは、補助的な電気モータEMZに、軸方向で直接的に隣接する。カバーGDは、径方向で直に入力軸ANと接続し、従って中心軸に近接して位置する。
【0091】
シフトフォークのグループSBG1, SBG2, SBG3は、軸方向でカバーGDよりも入力軸接続領域ANAから離れて配置され、径方向で中心軸に近接して位置する。シフトフォークのグループSBG1, SBG2, SBG3は、軸方向でカバーGDに直接的に隣接する。軸受用シールドLは、軸方向でシフトフォークのグループSBG1, SBG2, SBG3よりも入力軸接続領域ANAから更に離れて配置される。軸受用シールドLは、径方向で中心軸に対して間隔を有する。前置切換え歯車セットVRSは、軸方向で軸受用シールドLよりも入力軸接続領域ANAから更に離れて配置される。前置切換え歯車セットVRSは、径方向で中心軸に近接して配置されるため、前置切換え歯車セットVRSのセクションが、入力軸ANと軸受用シールドLの間に配置される。
【0092】
シフト要素の第1グループA, B; C, Dの第1シフト要素Aは、径方向で入力軸ANと前置切換え歯車セットVRSの間に配置される。第1シフト要素Aは、軸方向で前置切換え歯車セットVRSよりも入力軸接続領域ANAに対して近接して配置される。電気モータEMは、軸方向で軸受用シールドLよりも入力軸接続領域ANAから更に離れて配置される。しかし前置切換え歯車セットVRSのセクションは、電気モータEMのロータにより側面が画定されるシリンダ状体積の内部に配置される。シフト要素の第1グループA,B, C, D, Eの残りのシフト要素B, C, D, Eは全体的にシリンダ状体積の内部に配置され、シリンダ状体積の側面は、電気モータEMのロータにより画定される。
【0093】
シフト要素の第2グループのシフト要素Fおよびそれに関連する作動モジュールFMは、軸方向で電気モータEMよりも更に入力軸接続領域ANAから離れて配置され、および径方向で中心軸に対して間隔を有する。補助歯車セットZRSは、軸方向で電気モータEMよりも入力軸接続領域ANAから更に離れて配置されるが、軸方向でシフト要素の第2グループのシフト要素Fおよびそれに関連する作動モジュールFMよりも電気モータEMに対して近接して配置される。補助歯車セットZRSは、径方向で入力軸ANに近接して配置される。
【0094】
メイン歯車セットHRSは、軸方向で補助歯車セットZRSよりも入力軸接続領域ANAから更に離れて配置され、および径方向で入力軸ANに近接して位置する。換言するとメイン歯車セットHRSは、補助歯車セットZRSに直接的に隣接する。シフト要素の第2グループのシフト要素Fおよびそれに関連する作動モジュールFMは、そのセクションで、メイン歯車セットHRSを包囲する。つまりシフト要素Fおよび作動モジュールFMは、中空シリンダ状体積の内部に配置される。中空シリンダ状体積の内側側面は、メイン歯車セットHRSの第1遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定される。オイルポンプPは、軸方向でメイン歯車セットHRSよりも入力軸接続領域ANAから更に離れて配置され、および径方向で出力軸ABに近接して位置する。従ってオイルポンプは、出力軸接続領域ABAに最も近接する。
【0095】
本明細書に記載の実施形態は、単に例示的に選択されたものである。例えば、変速段を他の個数および段付けにするために、様々な遊星歯車セットを、互いに他の態様で切換える可能性も実現できる。また、例えば各シフトフォークの始端位置を終端位置に、および同様に終端位置を対応するシフトフォークの始端位置とすることも可能である。さらに、本明細書で記載した変速機の構成要素の配置を可及的に保持しつつ、内部ロータに替えて外部ロータとして電気モータを実現可能であるため、本発明の利点を保持可能である。外部ロータの場合、外部ロータのステータを、軸受用シールドを介して支持可能である。外部ロータのステータは同一のロータにより包囲される。従ってその場合、外部ロータのステータはシリンダ状体積を包囲し、シリンダ状体積の形状およびサイズは、変速機の構成要素の受容に適する。メイン歯車セット、補助歯車セットおよび前置切換え歯車セット、ならびにシフト要素作動ユニットおよびシフト要素の互いに対する配置は、可及的に保持可能である。例えば、補助歯車セットは、同様に軸方向で出力軸接続領域の方向に電気モータに最も近接させて配置可能である。メイン歯車セットは、軸方向で補助歯車セットに続くことができる。オイルポンプは、出力軸接続領域に最も近接して位置可能である。また例えば、出力軸および入力軸を、出力軸接続領域および入力軸接続領域が変速機の同一側にあり、および互いに平行して位置するよう配置可能である。
【0096】
異なる実施形態は、全体としてまたは単一の特徴に関して組み合わせ可能である。実施形態はまた,更なる実施形態の1つまたは複数の特徴により補完可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 変速機
A シフト要素の第1グループの第1シフト要素
AB 出力軸
ABA 出力軸接続領域
AN 入力軸
ANA 入力軸接続領域
B シフト要素の第1グループの第2シフト要素
C シフト要素の第1グループの第3シフト要素
D シフト要素の第1グループの第4シフト要素
DE 減衰要素
E シフト要素の第1グループの第5シフト要素
EM 電気モータ
EMZ 補助的な電気モータ
F シフト要素の第2グループのシフト要素
FM シフト要素Fの作動モジュール
G ハウジング
GD カバー
HO1 第1遊星歯車セットの内歯車
HO2 第2遊星歯車セットの内歯車
HO3 更なる遊星歯車セットの内歯車
HO4 補助的な遊星歯車セットの内歯車
HRS メイン歯車セット
L 軸受用シールド
P オイルポンプ
PS1 第1遊星歯車セット
PS2 第2遊星歯車セット
PS3 更なる遊星歯車セット
PS4 補助的な遊星歯車セット
R ロータ
S ステータ
SB1 第1シフト要素作動ユニット
SB2 第2シフト要素作動ユニット
SB3 第3シフト要素作動ユニット
SBG1 第1シフトフォーク
SBG2 第2シフトフォーク
SBG3 第3シフトフォーク
SBM1 第1作動モジュール
SBM2 第2作動モジュール
SBM3 第3作動モジュール
SBM4 第4作動モジュール
SBM5 第5作動モジュール
SO1 第1遊星歯車セットの太陽歯車
SO2 第2遊星歯車セットの太陽歯車
SO3 更なる遊星歯車セットの太陽歯車
SO4 補助的な遊星歯車セットの太陽歯車
ST1 第1遊星歯車セットのキャリア
ST2 第2遊星歯車セットのキャリア
ST3 更なる遊星歯車セットのキャリア
ST4 補助的な遊星歯車セットのキャリア
VRS 前置切換え歯車セット
ZRS 補助歯車セット
図1
図2
図3