【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題に対して、請求項1に記載の特徴を有する変速機を提供する。更なる好適な実施形態および発展形態は,従属請求項より明らかとなる。
【0006】
車両のドライブトレイン用の電気モータを備える変速機は、入力軸接続領域を有する入力軸と、出力軸接続領域を有する出力軸と、第1遊星歯車セットおよび第2遊星歯車セットにより形成されるメイン歯車セットと、シフト要素の第1グループと、を備え、そのうち第1グループの各シフト要素は、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフト要素作動ユニットにより作動可能である。
【0007】
変速機は、多段自動変速機として形成される、多段自動変速機は、作動時に変速比を自動で変更可能な変速機として定義される。多段自動変速機は、予め定義された個数の切換え可能な変速段を備える。つまり、入力軸と出力軸の間の変速比であって、変速機に属する遊星歯車セットの少なくとも2つの部品による、入力軸と出力軸の間の作動結合により実現可能な変速比を、予め決定する。
【0008】
軸とは、専ら、例えばシリンダ状の回転可能に支承されたトルクを伝達するための機械要素に限ると理解されるのではなく、この場合にはむしろ、単一の構成要素を互いに結合する一般的な結合要素を含み、特に複数の構成要素を回転不能に互いに結合する結合要素を含む。構成要素は、この場合変速機構成部品であり、例えば遊星歯車セット、遊星歯車セットの要素、シフト要素、シフト要素作動ユニット、ハウジングおよび電気モータ等である。
【0009】
入力軸は、変速機と、例えば内燃エンジンである駆動源の間に結合手段を構成し、および駆動源のトルクを変速機に導入する役割を果たす。この場合入力軸は、駆動源により発生された回転数を有する。この場合回転数は、入力軸接続領域を介して直接に入力軸と結合されるか、またはクラッチにより、入力軸接続領域を介して入力軸と結合可能である。しかしながら入力軸は、駆動源が供給する回転数から逸脱する回転数を有することも、同様に可能である。
【0010】
これに対して出力軸は、変速機により変換されたトルクを、変速機から導出し、およびその際に、変速機により変速された回転数を有する。変速機の変速比は、入力軸回転数の出力軸回転数に対する比率として定義される。出力軸は、その出力軸接続領域を介して、例えば軸、クラッチまたは発電機等である他の構成要素と結合可能であるため、変換されたトルクは、これらの他の構成要素へ伝達可能である。入力軸および出力軸は、例えば互いに同軸であり、その際入力軸接続領域および出力軸接続領域は、反対の変速機側に位置可能である。
【0011】
回転数の変速およびトルクの変換は、変速機の遊星歯車セットを介して実行される。遊星歯車セットは、幾つかの遊星歯車が回転可能に支持された1つのみのキャリアと、1つのみの太陽歯車と、1つのみの内歯車と、を備えた単純な遊星歯車機構として定義される。従って各遊星歯車セットの要素は、対応する遊星歯車セットの太陽歯車、キャリアおよび内歯車である。遊星歯車セットの太陽歯車ならびに内歯車は、複数のセグメントに分割可能である。例えば遊星歯車が、互いに結合されていない、2つの太陽歯車セグメント、または2つの内歯車セグメントと噛み合うことも可能である。回転数比率は、太陽歯車の両セグメント、または内歯車の両セグメントにおいて、あたかもそれらのセグメントが互いに結合されているかのように同一である。
【0012】
メイン歯車セットの両遊星歯車セットは、互いに結合される。つまり、両遊星歯車セットは作動結合されるため、入力軸のトルクを遊星歯車セットにより変換可能である。この場合2つの構成要素は、構成要素の間に、固定された、特に回転不能な結合が存在する場合、互いに結合されている、と称する。そのような結合された構成要素は、特に同一の回転数で回転する。対照的に2つの構成要素は、これらの構成要素の間に、解除可能で回転可能な結合が存在する場合、結合可能、と称する。こうした結合が存在する場合、そのような構成要素は、特に同一の回転数で回転する。変速機の様々な構成要素は、この場合軸またはシフト要素を介して結合可能であるが、例えば溶接、プレス成形または他の結合によって、互いに直接に結合可能でもある。
【0013】
変速機における、2つの結合可能な構成要素が互いに作動結合に至るよう、例えばシフト要素作動ユニットにより作動可能なシフト要素を使用する。この場合各シフト要素は、2つの作動側を備える。このうち各作動側は、少なくとも1つの軸と結合される。この軸は、今度は結合される構成要素と結合される。この場合シフト要素は、変速機の2つの構成要素の間の、切換え可能な結合と定義される。これら両構成要素の間で伝達されるトルクは、例えばディスククラッチ、ディスクブレーキ、バンドブレーキ、コーンクラッチ、コーンブレーキ等における牽引力によって、または例えば噛合型クラッチ、噛合型ブレーキまたはツースクラッチ等における形状結合によって、伝達される。換言するとシフト要素は、2つの構成要素の間に作動結合を構築するのである。
【0014】
クラッチはシフト要素であり、クラッチの作動状態に対応して、2つの構成要素の間の相対移動を可能とするか、またはトルクを伝達するために結合を構成する。相対運動とは、例えば2つの構成部品の回転と理解され、第1構成部品の回転数および第2構成部品の回転数は互いに異なる。さらに、両構成部品のうちの一方の構成部品の回転もまた考慮可能であり、一方、他方の構成部品は静止しているか、または反対方向に回転する。
【0015】
シフト要素作動ユニットは、シフト要素を作動する役割を果たす。各シフト要素は、シフト要素作動ユニットにより作動可能、つまり締結または開放可能である。シフト要素作動ユニットは、複数のシフト要素に対して割り当て可能である。例えばシフト要素作動ユニットは、一方のシフト要素を作動する方向に移動可能であり、および他方のシフト要素を作動する、他の方向に移動可能である。さらにシフト要素作動ユニットは、回転不能なシフトフォークおよび回転可能な作動モジュールから形成された構成要素である。さもなければシフト要素作動ユニットは、分解不能な単一構成要素として一個部品の構成要素とすることが可能である。
【0016】
開放されているクラッチとは、作動されていないクラッチ、と理解される。これは、両構成要素の間の相対運動が可能であることを意味する。クラッチが作動されている、または締結されている場合、それに応じて両構成要素は、同一の回転数で同じ方向に回転する。
【0017】
ブレーキとは、一方の側で固定構成要素、例えば変速機のハウジングと結合されているシフト要素、と理解される。作動されていないブレーキは、解放されているブレーキ、と理解される。これは、回転可能な構成要素が自由走行状態にある、つまり好適には、ブレーキが回転可能な構成要素の回転数に対して影響しないことを意味する。ブレーキが作動、または締結されると、回転可能な構成要素の回転数は静止状態にまで低減される、つまり、回転可能な構成要素および固定構成要素の間に結合が構成可能である。
【0018】
本発明に従い、電気モータは、ロータならびにステータを備える。電気モータは、入力軸接続領域と出力軸接続領域の間に配置され、およびシリンダ状体積を包囲し、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定され、シリンダ状体積の側面の直径は、電気モータの内径に対応する。電気モータの内径は、電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する構成部品の内径、と定義される。つまり、シリンダ状体積は、直線の円柱である幾何形状を有し、および構成スペースとして使用可能な材料の存在しない体積であり、その体積の形状およびサイズは、変速機構成要素の受容に適する。換言すると、電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する構成部品は、電気モータの回転軸の周りに、電気モータにより包囲されたシリンダ状の空洞を備える。シリンダ状体積のカバー面は、電気モータの磁気回路のこの構成部品のカバー面と同一の面にある。この場合、電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する構成部品とは、電気モータのロータおよびステータである。
【0019】
本発明に従い、シフト要素の第1グループは、電気モータに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って入力軸接続領域の方向へ電気モータに対してオフセット配置されるか、または少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置され、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定される。シフト要素の第1グループは、電気モータに対して直接的に隣接するか、または電気モータに対して間接的に隣接して配置される。従ってシフト要素の第1グループは、電気モータよりも入力軸接続領域に近接して位置する。
【0020】
この場合、2つの構成要素が互いに隣接する位置とは、両構成要素が互いに並列して配置されている、つまり順に互いに連続するよう、互いが位置する両構成要素の位置、と定義される。構成要素は、互いに境を接する、つまり接触するか、または、例えば空間により互いに分離可能である。これを、直接的に隣接する位置、と称する。直接的に隣接する構成要素の間には、追加的な構成要素を配置できない。しかしながら2つの構成要素は、間接的に隣接する位置を、互いに取ることも可能である。この場合、追加的なまたは複数の追加的な構成要素は、2つの構成要素の間に配置可能である。つまり例えば、追加的な構成要素が、間接的に隣接する両構成要素に対して、直接的に隣接するのである。
【0021】
構成要素は、単一構成部品として実現可能であり、または類似の単一構成部品のグループとして、つまり互いに直接的に隣接する類似の複数の単一構成部品の配置として実現可能である。例えば、シフト要素の第1グループは、個別のシフト要素作動ユニットを備える。シフト要素作動ユニットは、互いに異なるシフト要素を作動するが、直接的に互いに隣接して配置され、および同一の基本機能、つまりシフト要素の作動機能を有する。
【0022】
入力軸の長手方向の回転軸は幾何的な中心軸を構成し、この中心軸に沿って、変速機の個別の構成要素が長手方向に配置される。この場合変速機構成要素の互いの順番は、対応する構成要素の入力軸接続領域または出力軸接続領域に対する近接性、および個別の変速機構成要素の互いの隣接性により、決定される。しかしながら構成要素は、中心軸に対して同一の間隔を有する必要はない。
【0023】
シフト要素の第1グループは、電気モータに対して隣接し、および軸方向で電気モータに対するオフセット配置に対して代替的に、少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置可能であり、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定される。シフト要素の第1グループを全体的にシリンダ状体積内に配置することも可能である。シフト要素の第1グループをこのようにシリンダ状体積の内部に配置する、つまりこのような入れ子型構成により、変速機の全長を、非入れ子型構成と比較して、低減可能である。
【0024】
シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、シフト要素の第1グループに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って入力軸接続領域の方向へシフト要素の第1グループに対してオフセット配置される。従ってシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、入力軸接続領域に最も近接する。この場合シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、直接的に、またそうでなければ間接的に、シフト要素の第1グループに対して隣接して配置可能である。シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、シフト要素の第1グループよりも入力軸接続領域に対して近接して位置する。
【0025】
本発明に従い、メイン歯車セットは、少なくともセクションごとに、電気モータの内側側面により側面が画定されるシリンダ状体積の内部に配置されるか、または電気モータに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ電気モータに対してオフセット配置される。メイン歯車セットは、2つの遊星歯車セットにより形成され、セクションごとに電気モータにより包囲されたシリンダ状体積の内部に配置可能である。この場合、第1遊星歯車セットは全体的または部分的にシリンダ状体積内に、および/または第2遊星歯車セットは全体的または部分的に、シリンダ状体積の内部に配置可能である。従って、メイン歯車セットの要素を互いに結合する軸は、同様に少なくともセクションごとに、電気モータに包囲されるシリンダ状体積内に配置可能である。代替的にメイン歯車セットは、電気モータに対して軸方向でオフセット配置を有し、および直接的に、またそうでなければ間接的に、電気モータに対して隣接可能である。メイン歯車セットは、電気モータよりも、出力軸接続領域に対してより近接して配置される。
【0026】
第1実施形態に従い、電気モータは内部ロータとして形成され、および電気モータの内径は、電気モータのロータの内径に対応する。電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する部品は、シリンダ状の空洞を備え、電気モータが内部ロータとして形成されている場合には、ロータである。内部ロータは、ロータおよびステータの互いに対する配置により画定される。回転し、および電気モータの磁気回路においてエネルギー供給に活発に関与する部品であるロータは、固定されて電気モータの磁気回路においてエネルギー供給に活発に関与するステータにより包囲される。電気モータのロータは、更にシリンダ状体積を包囲する。
【0027】
更なる実施形態に従い、電気モータは外部ロータとして形成され、および電気モータの内径は、電気モータのステータの内径に対応する。電気モータの磁気回路において、エネルギー供給に活発に関与する部品は、シリンダ状の空洞を備え、電気モータが外部ロータとして形成されている場合には、ステータである。外部ロータは、ロータおよびステータの互いに対する配置により画定される。回転し、および電気モータの磁気回路においてエネルギー供給に活発に関与する部品であるロータは、固定されて電気モータの磁気回路においてエネルギー供給に活発に関与するステータを包囲する。電気モータのステータは、更にシリンダ状体積を包囲する。
【0028】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第1グループは、形状結合型シフト要素、特に噛合型シフト要素として形成される。シフト要素は、例えば噛合型クラッチ、ツースクラッチ、同期ユニットまたは噛合型ブレーキとして形成可能である。形状結合型シフト要素を使用することで、開放された状態の形状結合型シフト要素の引きずり損失が、例えば摩擦結合型シフト要素を使用した場合と比較して、低減される。
【0029】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機は前置切換え歯車セットを備える。前置切換え歯車セットは、更なる遊星歯車セットにより形成される。前置切換え歯車セットは、変速機において、メイン切換え歯車セットのみを備える実施形態よりも、多くのギヤ数を得る役割を果たす。前置切換え歯車セットは入力軸と結合され、および例えば少なくとも1つの、シフト要素の第1グループのシフト要素により、メイン歯車セットと作動結合可能である。前置切換え歯車セットの太陽歯車は、例えば直に変速機の入力軸と結合可能である。前置切換え歯車セットの内歯車は、例えば回転不能とすることが可能である。前置切換え歯車セットの太陽歯車または内歯車が、変速機の更なる構成要素と他の結合をすることも、同様に可能である。
【0030】
変速機の更なる実施形態に従い、前置切換え歯車セットは、少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置され、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定される。前置切換え歯車セットは、部分領域において、すなわち前置切換え歯車セットの1セクションのみが、電気モータにより包囲可能であるか、または全体が、電気モータにより包囲されるシリンダ状体積内に配置可能である。前置切換え歯車セットと結合される軸は、シリンダ状体積から導出されるため、電気モータにより包囲されるシリンダ状体積の内部には存在しない変速機構成要素とも、作動結合を構築可能である。
【0031】
変速機の更なる実施形態に従い、前置切換え歯車セットは、軸方向で入力軸接続領域の方向へ、電気モータに対してオフセット配置され、ならびに軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対してオフセット配置される。従って前置切換え歯車セットは、電気モータよりも入力軸接続領域に対して近接し、およびシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークよりも出力軸接続領域に対して近接して位置する。換言すると前置切換え歯車セットは、電気モータと、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークの間に配置される。前置切換え歯車セットの、電気モータならびにシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対する間隔は、変速機の各実施形態用に個別に決定可能である。前置切換え歯車セットは、電気モータに直接的に隣接して配置可能である。これによりシフト要素の第1グループが、電気モータに対して直接的に隣接する位置を取ることが可能である。
【0032】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第1グループは、少なくともセクションごとに、更なる遊星歯車セットの太陽歯車により包囲されるシリンダ状体積の内部に配置され、シリンダ状体積の側面は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の内側側面により画定され、シリンダ状体積の側面の直径は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の内径に対応する。電気モータの内側側面により、側面が画定されるシリンダ状体積と同様に、前置切換え歯車セットを形成する更なる遊星歯車セットは、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の形状およびサイズが、変速機構成要素を受容するのに適するよう形成可能であり、シリンダ状体積は、直線の円柱形状を有する。従って更なる遊星歯車セットの太陽歯車は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の回転軸の周りに、構成スペースとして使用可能な材料の存在しない、直線の円柱の形状の空洞を備える。空洞の直径は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車の内径である。シリンダ状空洞の側面、つまり更なる遊星歯車セットの太陽歯車の内側側面は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車により包囲されるシリンダ状体積の側面に対応する。このシリンダ状体積のカバー面は、更なる遊星歯車セットの太陽歯車のカバー面と同一の面にある。更なる遊星歯車セットの太陽歯車は、シフト要素の第1グループを、部分的または全体として包囲可能である。つまりシフト要素の第1グループは、更なる遊星歯車セットによる入れ子型構成を備える。換言すると、シフト要素の第1グループの個々のシフト要素が全体またはセクションで、またはシフト要素の第1グループの複数のシフト要素が全体またはセクションで、またはシフト要素の第1グループの全てのシフト要素が全体またはセクションで、更なる遊星歯車セットの太陽歯車により包囲されるシリンダ状体積の内部に配置可能である。このような入れ子型構成により、変速機の全長を、非入れ子型構成より短くすることが可能である。
【0033】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第1グループは、少なくともセクションごとに中空シリンダ状体積の内部に配置され、中空シリンダ状体積の内側側面は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定され、中空シリンダ状体積の内側側面の直径は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外径に対応する。このシリンダ状体積は、直線の円柱である幾何形状を有し、および構成スペースとして使用可能な材料の存在しない体積であり、その体積の形状およびサイズは、変速機構成要素の受容に適する。中空シリンダ状体積の内側側面は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外側側面と同一の直径を有する。更なる遊星歯車の内歯車の外径は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外側側面上で、歯部ラインに最も近接する、歯部ラインと平行する直径である。中空シリンダ状体積のカバー面は、更なる遊星歯車セットの内歯車のカバー面と同一の面に配置される。シフト要素の第1グループは、少なくともセクションごとに、この中空シリンダ状体積の内部に配置可能であり、またはそれに対して代替的に全体として、この中空シリンダ状体積の内部に配置可能である。つまり、シフト要素の第1グループの個々のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第1グループの複数のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第1グループの全てのシフト要素がセクションまたは全体で、中空シリンダ状体積の内部に配置可能であり、中空シリンダ状体積の内側側面は、更なる遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定される。このような配置は、入れ子型構成を構成する。換言すると更なる遊星歯車セットは、少なくとも領域的セクションにおいて、シフト要素の第1グループにより包囲される。
【0034】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第1グループは、前置切換え歯車セットに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ前置切換え歯車セット対してオフセット配置される。これにより前置切換え歯車セットは、シフト要素の第1グループよりも入力軸接続領域に対して近接し、従ってシフト要素の第1グループは、前置切換え歯車セットよりも、出力軸接続領域に対して少ない間隔を有する。変速機の個々の構成要素の互いに対する正確な間隔は、変速機の構成に応じて、個別に決定可能である。シフト要素の第1グループは、直接的に、またそうでなければ間接的に、前置切換え歯車セットに対して隣接して配置される。
【0035】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機は、電気モータとメイン歯車セットの間の結合要素として補助歯車セットを備える。補助歯車セットは、補助的な遊星歯車セットにより形成される。この場合結合要素は、それを介して2つの構成要素の間に作動結合を構築可能な特別な構成要素として定義される。結合要素は、結合要素と結合された構成要素の回転数を変更可能である。
【0036】
補助歯車セットは、補助的な遊星歯車セットにより形成される。補助歯車セットは、例えば電気モータから供給されたトルクを変更する役割を果たす。電気モータは、補助歯車セットを介して残余の変速機構成要素に対して作動結合を構築することにより、例えばよりコンパクトでより軽量のサイズとすることが可能である。これは、電気モータにより供給されたトルクを変更することで、電気モータのロータにかかるトルクが、補助歯車セットがない構成よりも低減されるためである。補助的な遊星歯車セットの太陽歯車は、例えば直に、または更なるシフト要素を介して電気モータのロータと結合可能である。補助的な遊星歯車セットの内歯車は、例えば直に、または他のシフト要素を介して、メイン歯車セットのキャリアと結合可能であり、および/または補助的な遊星歯車セットのキャリアは、例えば第1遊星歯車セットの太陽歯車および第2遊星歯車セットの太陽歯車と結合可能である。
【0037】
変速機の更なる実施形態に従い、補助歯車セットは、少なくともセクションごとにシリンダ状体積の内部に配置され、シリンダ状体積の側面は、電気モータの内側側面により画定される。換言すると補助歯車セットは、電気モータによる入れ子型構成を備える。この場合補助歯車セットは、セクションごと、または全体が、このシリンダ状体積内に配置可能である。補助歯車セットと結合される軸は、このシリンダ状体積から導出されるため、変速機の他の構成要素と作動結合を構築可能である。補助歯車セットおよび電気モータをこのような入れ子型構成にすることにより、変速機の全長を、非入れ子型構成より短くすることが可能である。電気モータ、補助歯車セットおよびメイン歯車セットの間に作動結合を構築する軸は、入れ子構成によって長さが低減されるため、変速機を構成する労力および変速機の重量が、非入れ子構成に比べて低減される。
【0038】
変速機の更なる実施形態に従い、補助歯車セットは、電気モータに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ、電気モータに対してオフセット配置され、および軸方向で入力軸に沿って入力軸接続領域の方向へ、メイン歯車セットに対してオフセット配置される。従って補助歯車セットは、電気モータよりも出力軸接続領域に対して近接して位置し、およびメイン歯車セットよりも入力軸接続領域に対して近接して位置する。換言すると補助歯車セットは、電気モータとメイン歯車セットの間に配置される。補助歯車セットは直接的に、またそうでなければ間接的に、電気モータに対して隣接可能である。補助歯車セットは直接的に、またそうでなければ間接的に、メイン歯車セットに対して隣接可能である。
【0039】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機はシフト要素の第2グループを備える。シフト要素の第2グループは、シフト要素作動ユニットの対応する第2グループを備える。この場合シフト要素の第2グループは、例えば噛合型クラッチである形状結合型クラッチとして、または好適には、例えば噛合型ブレーキである形状結合型ブレーキとして構成されたシフト要素から構成可能である。この場合シフト要素作動ユニットの第2グループは、シフト要素の第2グループを作動する役割を果たす。シフト要素作動ユニットの第2グループの各シフト要素作動ユニットは、シフトフォークおよび作動モジュールから形成される。シフト要素の第2グループは、シフト要素作動ユニットの第2グループにより作動可能、つまり締結されることが可能であり、および作動された状態から再び非作動の状態、つまり開放に至ることが可能である。シフト要素作動ユニットの第2グループは、シフト要素作動ユニットの第1グループと作動結合可能であり、またそうでなければ部分的に、シフト要素作動ユニットの第1グループにより構成可能である。つまり例えば、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークは、シフト要素作動ユニットの第2グループの作動モジュールと作動結合可能であり、およびシフト要素の第1グループならびに第2グループのためのシフト要素作動ユニットを構成可能である。
【0040】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第2グループは、電気モータに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へ電気モータに対してオフセット配置される。従ってシフト要素の第2グループは、電気モータよりも出力軸接続領域に対して近接して配置され、および直接的に、またそうでなければ間接的に、電気モータに対して隣接して配置可能である。シフト要素の第2グループは、例えばメイン歯車セットの要素と作動結合することが可能であるため、この要素を固定可能である。シフト要素の第2グループは、前置切換え歯車セットまたは補助歯車セットの要素と作動結合することも可能である。
【0041】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第2グループは、少なくともセクションごとに中空シリンダ状体積の内部に配置され、中空シリンダ状体積の内側側面は、第1遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定され、中空シリンダ状体積の内側側面の直径は、第1遊星歯車セットの内歯車の外径に対応する。このシリンダ状体積は、直線の円柱である幾何形状を有し、および構成スペースとして使用可能な材料の存在しない体積であり、その体積の形状およびサイズは、変速機構成要素の受容に適する。中空シリンダ状体積の内側側面は、第1遊星歯車セットの内歯車の外側側面と同一の直径を有する。第1遊星歯車の内歯車の外径は、第1遊星歯車セットの内歯車の外側側面上で、歯部ラインに最も近接する、歯部ラインと平行な直径である。中空シリンダ状体積のカバー面は、第1遊星歯車セットの内歯車のカバー面と同一の面に配置される。シフト要素の第2グループは、少なくともセクションごとに第1遊星歯車セットを包囲可能である。つまり、シフト要素の第2グループの個々のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第2グループの複数のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第2グループの全てのシフト要素がセクションまたは全体で、中空シリンダ状体積の内部に配置可能であり、中空シリンダ状体積の内側側面は、第1遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定される。追加的なシリンダ状外形体積から導出される、シフト要素の第2グループと結合される軸を介して、変速機の他の構成要素と作動結合を構築可能である。
【0042】
変速機の更なる実施形態に従い、シフト要素の第2グループは、少なくともセクションごとに中空シリンダ状体積の内部に配置され、中空シリンダ状体積の内側側面は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定され、中空シリンダ状体積の内側側面の直径は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外径に対応する。この中空シリンダ状体積は、直線の中空円柱である幾何形状を有し、および構成スペースとして使用可能な材料の存在しない体積であり、その体積の形状およびサイズは、変速機構成要素の受容に適する。中空シリンダ状体積の内側側面は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外側側面と同一の直径を有する。補助的な遊星歯車セットの内歯車の外径は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外側側面上で、歯部ラインに最も近接する、歯部ラインと平行な直径である。中空シリンダ状体積のカバー面は、補助的な遊星歯車セットの内歯車のカバー面と同一の面に配置される。従ってシフト要素の第2グループは、少なくともセクションごとに、または全体で、補助的な遊星歯車セットを包囲可能である。つまり、シフト要素の第2グループの個々のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第2グループの複数のシフト要素がセクションまたは全体で、またはシフト要素の第2グループの全てのシフト要素がセクションまたは全体で、中空シリンダ状体積の内部に配置可能であり、中空シリンダ状体積の内側側面は、補助的な遊星歯車セットの内歯車の外側側面により限定される。追加的なシリンダ状外形体積から導出される、シフト要素の第2グループと結合される軸を介して、変速機の他の構成要素と作動結合を構築可能である。
【0043】
変速機の更なる実施形態に従い、ハウジングは変速機の構成要素を、入力軸接続領域および出力軸接続領域を除いて包囲する。ハウジングは鉢状に形成され、および中心軸を備え、中心軸は出力軸に対して同軸である。および出力軸は、中心軸に沿ってハウジングから導出される。ハウジングは鉢に似せて構成され、鉢の形状およびサイズは、変速機の構成要素の受容に適する。鉢状は、費用対効果に優れて実現される変速機の構成である。
【0044】
鉢状のハウジングは、ハウジング底部を備える。ハウジング底部は、出力軸接続領域に最も近接する変速機側に配置される。ハウジング底部は、変速機のハウジングと堅固に結合される。ハウジングおよびハウジング底部は、例えば鋳造プロセスにおいて1つの個体から製造可能であるため、ハウジングおよびハウジング底部は、分離不能に互いに結合される。
【0045】
さらにハウジングの中心軸は、変速機の幾何的な中心軸と平行する、ハウジングの長手方向の幾何的な軸として定義される。しかしながらハウジングの中心軸および変速機の中心軸は、同軸とすることも可能である。ハウジングの中心軸はハウジング底部を通って走る。ハウジング底部は、中心軸の周りに配置された、出力軸のための開口部を備える。ハウジングの外部にある出力軸の領域は、出力軸接続領域である。
【0046】
変速機の更なる実施形態に従い、電気モータのロータは軸受用シールドにより支持される。軸受用シールドは、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対してオフセット配置される。従って軸受用シールドは、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークよりも出力軸接続領域に対して近接する。軸受用シールドは、ロータを支持するよう、電気モータのロータおよび変速機のハウジングと結合される。軸受用シールドは、好適には一個部品の構成要素として形成され、この構成要素は単一の部品として製造される。電気モータのロータは、軸受により、入力軸回転軸と同軸である回転軸の周りでのみ回転可能であり、他の動きまたは力の作用に対して、出来る限り保護される。ロータを、時間および費用対効果に優れた手段で製造される軸受用シールドを介して支持することで、軸受に関する費用対効果の問題を解決する。
【0047】
変速機の更なる実施形態に従い、ハウジングは、ハウジングと結合可能なカバーを備える。カバーは、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対して隣接し、および軸方向で前記入力軸に沿って入力軸接続領域の方向へシフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークに対してオフセット配置される。入力軸は、カバーにより支持される。カバーは、好適には一個部品の構成要素として、つまり個別の部品から製造された単一構成部品として、または複数個部品、つまり複数の単一部品からなる構成要素として形成可能である。ハウジングおよびカバーは、互いに結合可能である。この結合は、解除可能な結合、例えばねじ式または挿入式の結合により実現可能である。
【0048】
カバーは、シフト要素作動ユニットの第1グループのシフトフォークよりも入力軸接続領域に対して近接して位置する。従ってカバーは、入力軸接続領域に対して最も近接し、およびハウジングを、入力軸接続領域の側で閉鎖する。入力軸は、カバーの開口部を通りハウジングから導出される。ハウジングの外部に配置された入力軸の領域は、入力軸接続領域である。入力軸はカバーにより支持されるため、入力軸の回転軸の周りでのみ回転可能である。入力軸は、カバーにより、他の形態の動きおよび力の作用に対して、出来る限り保護される。入力軸を、時間および費用対効果に優れた手段で製造されるカバーを介して支持することで、軸受に関する費用対効果の問題を解決する。
【0049】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機は補助的な電気モータを備える。補助的な電気モータは、入力軸と結合可能であるか、または結合される。補助的な電気モータは、入力軸接続領域に近接し、および入力軸と結合される。その際、軸により直に作動結合するか、またはクラッチによる作動結合を構築可能である。補助的な電気モータのロータを介して、トルクを入力軸に付与可能であり、およびそれにより、例えば内燃エンジンである駆動源が始動される。これには、自動者が電気モータのみで駆動される電気的な走行モードが同時である場合に、電気的な走行モードに影響を与えずに始動可能である、という利点がある。この場合、補助的な電気モータはコンバータに結合可能である。コンバータを介して、補助的な電気モータは蓄電ユニットに結合される。さらに、蓄電ユニットは各形状、特に電気化学式、静電式、油圧式および機械式の蓄電ユニットが適合する。
【0050】
変速機の更なる実施形態に従い、変速機はオイルポンプを備える。オイルポンプは、メイン歯車セットに対して隣接し、および軸方向で入力軸に沿って出力軸接続領域の方向へメイン歯車セットに対してオフセット配置され、およびハウジングの内部に配置される。オイルポンプは、出力軸と作動結合し、および出力軸により作動可能である。オイルポンプは、ハウジングの内部で、メイン歯車セットよりも出力軸接続領域に対して近接し、およびハウジング底部に近接して位置可能である。有利なことに、出力軸がオイルポンプを作動可能であるため、オイルポンプ用に追加の作動ユニットが不要である。
【0051】
以下に詳説する図面を参考に、本発明の異なる実施形態およびその詳細について詳述する。