(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572312
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】内視鏡光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 23/26 20060101AFI20190826BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
G02B23/26 A
A61B1/00 732
A61B1/00 733
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-534799(P2017-534799)
(86)(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公表番号】特表2018-503125(P2018-503125A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2015002531
(87)【国際公開番号】WO2016110303
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】102015000050.0
(32)【優先日】2015年1月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】キードロウスキー,グレゴール
(72)【発明者】
【氏名】ショウヴィンク,ペーター
【審査官】
森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−129820(JP,A)
【文献】
特開昭59−71022(JP,A)
【文献】
特開平7−325258(JP,A)
【文献】
特開昭60−76712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24 − 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位に配置された対物レンズ(5)および近位に配置された観察装置(14)を備える、長く延びるシャフト管(7)の中に配置されたファイバ画像伝送体(2)と、前記ファイバ画像伝送体(2)の平面研削された近位の端面(9)であってその領域にマスク(13)が配置されているものと、前記ファイバ画像伝送体(2)の近位の端面(9)を接着剤で充填される間隔をおいて覆う透明なカバーディスクと、前記ファイバ画像伝送体の近位の端面(9)と前記観察装置(14)との間に配置されたモアレフィルタ(10)とを有する内視鏡光学系(1)において、前記カバーディスクがモアレフィルタ(10)として構成され、前記マスク(13)が前記モアレフィルタ(10)の遠位の端面(11)に蒸着された層である内視鏡光学系。
【請求項2】
前記モアレフィルタ(10)はその遠位の端面(11)と平行に配置された複数の複屈折性の層(10a,10b)からなり、該層は前記端面(11)と平行にそれぞれ異なる方向で不鮮明さを生成するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡光学系。
【請求項3】
前記モアレフィルタ(10)は3つの複屈折性の層を有することを特徴とする、請求項2に記載の内視鏡光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ファイバ画像伝送体を有する内視鏡光学系は、ファイバ画像伝送体によって引き起こされるラスター化を含んだ画像を生成する。たとえば細かくラスター化された表面を観察したときに生じるような画像中に現れるラスター化によって、さらに別のラスターが重なり合うように付け加わることがある。いずれの場合も、最終的には、現在普通の作業形態で内視鏡光学系の画像が撮影されるデジタルカメラのラスター化が顧慮される。
【背景技術】
【0002】
しかし複数のラスターが重ね合わされると、画像を評価するときに重大な支障をもたらすモアレ現象が起こることがある。特に医療用の光学系では、そのようなものは許容することができない。
【0003】
したがって内視鏡光学系では、定義された軽微な不鮮明さを生成するモアレフィルタが通常用いられる。それによってモアレも消失する。
【0004】
モアレフィルタは、通常、複屈折特性を有する晶質材料からなるプレートの形態で使用される。しばしばモアレフィルタはカメラに据え付けられ、たとえば高価値な消費財カメラの場合には、すでにそこにもともと設けられている。
【0005】
ファイバ画像伝送体はその近位の端面のところで汚れに敏感であり、たとえばガラス板の形態の防護カバーをそこに必要とする。そこには画像の一領域を覆う、たとえば縁部のところで周回するリングの形態のマスクもある。マスクはファイバ画像伝送体の近位の端面の領域に設けられるが、それは、通常の内視鏡光学系が鮮明な中間画像をそこに生成するからである。
【0006】
この領域における設計面の状況は複雑であり、高い製造コストをもたらす。さらに、カメラにおいてモアレフィルタを省こうとする尽力もなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上に説明した種類の内視鏡光学系において、ファイバ画像伝送体の近位の端面の領域での上述した設計上の問題を取り除くことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は請求項1の構成要件によって解決される。
【0009】
本発明によると、カバーディスクがモアレフィルタとして構成される。それにより、従来設けられていた2つのコンポーネント、すなわちモアレフィルタとカバーディスクとのうち一方が省かれる。それによって問題は生じない。通常のモアレフィルタは、もともとカバーの目的にも利用することができるプレートとして構成されているからである。
【0010】
請求項2に基づき、モアレフィルタは、それぞれ異なる方向で不鮮明さを生成するように配置された複数の複屈折性の層に下位区分されるのが好ましい。それにより、それぞれ異なる方向のラスター効果に対処することができる。
【0011】
このとき請求項3に基づき、3つの複屈折性の層が設けられるのが好ましい。それにより、不都合な傾斜角で構成されるラスター化であっても良好なモアレ対処が実現される。
【0012】
マスクは、鮮明な結像の必要性があることから、ファイバ画像伝送体の近位の端面の直接的な領域に取り付けられる。マスクはさまざまな目的に利用することができ、たとえば縁部区切りの環状の表示として、あるいは十字線またはそのようなものとしても利用できる。本発明によるとモアレフィルタは、遠位の端面がファイバ画像伝送体の近位の端面の近傍にある、ファイバ画像伝送体の近位の端面を覆うディスクを形成する。したがって、この面はマスクを取り付けるのに好適であり、このことは製造工学的に非常に単純な設計をもたらし、すなわちこの設計では、アライメント精度に関して困難な両方の部品すなわちマスクとモアレフィルタを、1つのコンポーネントとして正確に予備製作することができる。
【0013】
マスクは通常は薄い薄板から断裁され、このことは、正確な縁部構造を可能にする。しかしその場合、薄板をたとえばモアレフィルタの遠位の端面に取り付けなければならない。本発明はその際にも、請求項5に基づき、マスクがモアレフィルタの遠位の端面に蒸着されることによって製造を簡素化する。その場合、正確な製造および特に正確なアライメントを複雑さなしに実現可能である。
【0014】
周知の設計では、カバーディスクはファイバ画像伝送体の近位の端面に対して間隔をおいて配置される。このような分離された配置は、面倒なミスアライメントにつながりかねない。本発明によると、モアレフィルタはその遠位の端面がファイバ画像伝送体の近位の端面に接着される。このことは、これら両方の部品相互の非常に正確な取り付けをもたらし、それにより調節誤差が最初から回避される。さらにこの場合、ファイバ画像伝送体の近位の端面の鮮明に結像をする領域への、たとえばダストのような不純物の侵入が回避される。
【0015】
図面には本発明が一例として模式的に示されている。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による内視鏡光学系を示す部分破断した側面図である。
【
図2】
図1の2−2線に沿って大きく拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、個々のファイバ3が
図1に図示されているファイバ画像伝送体2から基本的に成り立つ内視鏡光学系1を示している。
【0018】
ファイバ画像伝送体2は、遠位の端面4のところで、たとえば図示するように傾斜した端面6を有する対物レンズ5と結合されている。
【0019】
図示している内視鏡光学系1は、通常、非常に長く延びる形態で、かつ外部への防護のために、剛直あるいは柔軟に構成されていてよいシャフト管7の中に配置される。
【0020】
ファイバ画像伝送体2の近位の端部領域8が、
図2に大きく拡大して断面図として示されている。
【0021】
平行に配置されたさまざまなファイバ3からなるファイバ画像伝送体2を見ることができる。図示しているファイバはそれぞれの遠位端のところで、すべて近位の端面9で終わっている。近位のほうに向かっては、
図2に示しているファイバ3の端部は途切れるように図示されている。
【0022】
ファイバ画像伝送体2の近位の端面9に対して間隔をおきながら、
図2に示すようにモアレフィルタ10が配置され、該モアレフィルタは平面平行なプレートとして構成されるとともに、その遠位の端面11がファイバ画像伝送体2の近位の端面9に対してわずかな間隔をおいている。
【0023】
モアレフィルタ10は複数の層、たとえば3つの層で成り立っていて、そのうち
図2には2つの層10aおよび10bが示されている。これらはたとえば複屈折性の石英でできていて、たとえば相互に60°をなすそれぞれ異なる角度で複屈折作用を生起する。3つの層により、困難なラスター化の場合にも良好なモアレ対処を保証することができる。
【0024】
図2に示すとおり、モアレフィルタ10の遠位の端面11と、ファイバ画像伝送体2の近位の端面9は、
図2に示すように接着剤12で充填されるわずかな相互間隔をおいている。この接着剤は、両方の図面に示すとおり、入念な封止を保証するために、縁部のところで若干突出している。接着剤は非常に固定的で安定的な結合のために作用する。
【0025】
モアレフィルタ10の遠位の端面11にはマスク13が配置され、該マスクはこの実施例では蒸着された金属膜として構成されていて、その厚みは
図2ではより良い図面表示のために大きく誇張されている。
【0026】
さらに
図2が示すとおり、マスク13は接着の前に装着されるので、接着剤12によって全面的に取り囲まれる。
【0027】
図1は、ファイバ画像伝送体2の近位の端部の手前で近位に間隔をおいて配置された接眼レンズ14を示している。これにより、ファイバ画像伝送体2の近位の端面9で生じる鮮明な画像を、たとえば裸眼やカメラによって観察することができる。
出願当初の特許請求の範囲の記載は、以下の通りであった。
請求項1:
遠位に配置された対物レンズ(5)および近位に配置された観察装置(14)を備える、長く延びるシャフト管(7)の中に配置されたファイバ画像伝送体(2)と、前記ファイバ画像伝送体(2)の平面研削された近位の端面(9)であってその領域にマスク(13)が配置されているものと、前記ファイバ画像伝送体(2)の近位の端面(9)をわずかな間隔をおいて覆う透明なカバーディスク(10)と、前記ファイバ画像伝送体の近位の端面(9)と前記観察装置(14)との間に配置されたモアレフィルタ(10)とを有する内視鏡光学系(1)において、前記カバーディスクがモアレフィルタ(10)として構成されている内視鏡光学系。
請求項2:
前記モアレフィルタ(10)はその遠位の端面(11)と平行に配置された複数の複屈折性の層(10a,10b)からなり、該層は前記端面(11)と平行にそれぞれ異なる方向で不鮮明さを生成するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡光学系。
請求項3:
前記モアレフィルタ(10)は3つの複屈折性の層を有することを特徴とする、請求項2に記載の内視鏡光学系。
請求項4:
前記マスク(13)は前記モアレフィルタ(10)の遠位の端面(11)に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の内視鏡光学系。
請求項5:
前記マスク(13)は前記モアレフィルタの遠位の端面に蒸着されることを特徴とする、請求項4に記載の内視鏡光学系。
請求項6:
前記モアレフィルタ(10)の遠位の端面(11)は前記ファイバ画像伝送体(2)の近位の端面(9)と接着されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の内視鏡光学系。
【符号の説明】
【0028】
1 内視鏡光学系
2 ファイバ画像伝送体
3 ファイバ
4 2の遠位の端面
5 対物レンズ
6 傾斜した端面
7 シャフト管
8 近位の端部領域
9 近位の端面
10 モアレフィルタ
10a 層
10b 層
11 10の遠位の端面
12 接着剤
13 マスク
14 接眼レンズ