(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572315
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する方法
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20190826BHJP
H02P 101/10 20150101ALN20190826BHJP
【FI】
H02P9/04 A
H02P101:10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-540902(P2017-540902)
(86)(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公表番号】特表2018-531567(P2018-531567A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】KR2017002200
(87)【国際公開番号】WO2017164531
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2018年4月18日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0033663
(32)【優先日】2016年3月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517266768
【氏名又は名称】ウィン ワールド シーオー., エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】WIN WORLD CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】カン、スドク
【審査官】
村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−070633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
H02P 101/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均流入流量に合わせて駆動トルクが設定された小水力発電設備の発電機を制御する装置であって、
水車により回転する発電機の回転軸に設けられて発電機の回転軸の回転数を感知するエンコーダー(10)において感知された発電機の回転数に合わせて制御手段(20)が発電機のトルクを制御し、
前記制御手段(20)は、水車に供給される流入流量に応じて変化する発電機の回転軸の回転数をパルスの形で出力するエンコーダー(10)のパルスを計数することにより回転軸の回転数を感知し、既に設定された基準回転数及び感知された回転数を比較して、基準回転数と感知された回転数との割合に応じて発電機の駆動トルクを比例制御することを特徴とする系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置を用いた発電機の制御方法であって、
平均流入流量により供給されるトルクに合わせて駆動トルクが設定された発電機を制御し、
エンコーダーを用いて実際の流入流量の変化に応じて変化する発電機の回転軸の回転数を感知し、感知された回転数をパルスの形で出力してパルスを計数することにより回転軸の回転数を感知し、既に設定された基準回転数及び感知された回転数を比較して、基準回転数と感知された回転数との割合に応じて発電機の駆動トルクを比例制御して、流入流量が変化しても発電機が止まることなく作動され続けるようにすることを特徴とする系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小水力発電機のトルク制御方法に係り、更に詳しくは、流入流量が変化しても脱調現象が生じることなく持続的に電力系統に電力を供給できるようにした系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会にとって電気は欠かせないもののーつである。
【0003】
このような電気を生産するための発電施設としては各種多様なものが挙げられるが、その中には、小水力発電設備がある。
【0004】
小水力発電とは、設備容量が 15,000Kw未満の小規模の水力発電設備のことを言うが、韓国では普通10,00Kw未満を小水力発電と呼んでいる。小水力発電は、一般的な大規模水力発電とは原理面では大差ないが、大規模の水力発電が環境に影響を与えないというメリットがあり、大規模の水力発電に比べて公害のないクリーンエネルギーであることが知られている。
【0005】
このような小水力発電は純粋な自然エネルギーであり、環境公害を発生させる問題がないクリーンなエネルギーであって、韓国の技術により開発を誘導可能な最善の資源であるため現時点から積極的な開発が求められている。
【0006】
小水力発電は、様々な個所に適切に配設されて効果を発揮している。例えば、下水処理場において処理された放流水を用いた小水力発電は、一般河川のダムの建設などにかかる土木工事費がほとんどないことから、初期の投資費を節減することができて、河川を用いて発電することに比べて経済性に富んでおり、安定的な流量が確保可能であることから、システムの高効率発電が可能であり、河川の2倍近くまで発電量が増えるなどのメリットを有している。
【0007】
他の小水力発電設備の例としては、取水ダムから受入槽まで自然流下させる淨水場 に設けたものが挙げられる。淨水場の場合でも、取水ダムと受入槽との間の落差を用いて水力発電が可能である。淨水場の場合でも、下水処理場と同様に、流量が一定であり、年間稼動率が90%以上になるので、通常の小水力発電に比べて経済性に富んでおり、投資費の回収期間を大幅に短縮させることができるというメリットがある。加えて、農業用貯水池及び堰に灌漑用水の流れ及び落差を用いた小水力発電も可能である。
【0008】
このような小水力発電は、上述したように、環境に影響を与えない発電方法であるといわれており、最近多用されている。
【0009】
このような小水力発電及び制御技術と関連して様々な技術があり、その例として、特許文献1から3に記載のものが挙げられる。
【0010】
特許文献1に記載のものは、下水処理場の放流口に連設された貯水槽と、ハブの外周面にピッチ角が可変となる複数のブレードを有し 、貯水槽の下部に配置された水車と、貯水槽から水車まで繋がる送り管と、 水車の上流端側に設けられて送り管の流路を開閉する入り口弁と、入り口弁 を開閉するとともに、ブレードのピッチ角を調節する油圧駆動部と、油圧駆動部の作動を制御する制御ユニットと、水車に連結された発電機と、水車の回転速度が定格速度に達すると作動して発電機の出力端子を韓電系統に接続する電磁開閉器と、 を備えるものである。
【0011】
特許文献2に記載のものは、小水力発電機が作動するステップと、小水力発電機が弁(Wicket Gate or Guide Vane)を上下に駆動して水車に流入する流量が変化して変動される発電機出力電流及び電圧をCT(計器用変流器)及びPT(計器用変圧器)を用いて計測するステップと、小水力発電機が計測された出力値を収集してデータ化させ、スキャンして最大値を抽出するステップと、小水力発電機が抽出した最大値に出力値を設定して弁(Wicket Gate or Guide Vane)を駆動するステップと、小水力発電機が発電機の出力電流及び電圧をCT(計器用変流器)及びPT(計器用変圧器)を用いて計測し、再びスキャンするステップと、小水力発電機が再びスキャンした出力値と既に抽出した最大値とが一致するか否かを判断するステップと、出力値及び最大値の判断ステップにおける判断の結果、再びスキャンした出力値と既に抽出した最大値とが一致する場合、小水力発電機が弁の駆動を停止し、最大値で発電機を運転するステップと、を含む小水力発電機の最大出力の制御方法に関するものである。
【0012】
特許文献3に記載のものは、送り管の一方の側に形成された貯水槽から流体が流入すると、送り管の他方の側に形成された水車が駆動されて電力を生産する小水力発電装置に適用可能であり、貯水槽の水位を感知する感知ステップ及び感知された水位が既に設定された範囲内に収まるように、送り管に流入する流体の流入量を制御する制御ステップを含み、制御ステップにおいて貯水槽の水位に応じて水車に形成されたブレードの既に設定されたピッチ角を調節できるようにした小水力発電機の制御方法に関するものである。
【0013】
しかしながら、このような従来の小水力発電設備や制御技術は、発電装置を駆動するための水の流量の変動が激しいため、その流量の変動により発電される電力量の変動が激しく、これにより、その発電効率が大幅に低下してしまうという欠点があった。
【0014】
すなわち、通常の小水力発電機は誘導発電機(籠型/巻線型)又はDC電源供給装置を必要とする同期発電機を用いて発電を行っており、これらはトルク(Torque)を制御することなく、同期rpmによる周波数同期化により発電された出力を系統電力に送電していた。
【0015】
このとき、発電量のうち30%に近い無効電力が発生し、これをコンデンサーを用いて補償する。
【0016】
このような小水力発電設備の発電方式は、安定的な流入流量が保証される場合に限って系統周波数と同期化されて安定的な電力を系統に送電することができるが、上述したように、小水力発電設備に供給される流入流量は変動が激しく、流入流量の変動は、周波数の同期化が正常に行われないことにより発電機を停止させてしまう脱調現象の原因となって、安定的な出力を系統電力に送電することができないという不都合がある。
【0017】
例えば、落差20M、流入流量1.0m
3/sec、800rpm/minの400Kwの誘導発電機を用いて小水力発電設備を構成する場合、誘導発電機は59〜61hzで系統に強制的に併入されて、今後、系統周波数に追従する。
【0018】
強制併入に際して線路インピーダンスによる電圧の降下が約6%発生する。
【0019】
もし、いきなり流入流量が0.50m
3/secに変わるならば、発電機のRPMが大幅に低下して発電電力は系統周波数から外れてしまう。
【0020】
これは、系統に非常に悪い影響を及ぼす。すなわち、電力系統の定周波数の維持に反作用してしまう。これにより、小水力発電機は系統電力から離脱し、発電が行われなくなる。
【0021】
すなわち、通常の小水力発電設備の発電機には定格流量に合わせて発電機が駆動可能な トルクが設けられているため、供給される流量が定格流量に達しない場合には発電機が作動できず、これにより、少量の流量が供給されるときには水がそのまま排出されて費やされてしまうという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10−1268137号
【特許文献2】大韓民国登録特許第10−1369332号
【特許文献3】大韓民国登録特許第10−1455033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は上述したような従来の技術の問題を解消するために開発されたものであり、供給される流量に応じて発電機が駆動可能なトルクを制御して流量の変動に合わせて発電機が駆動できるようにした系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するための本発明に係る系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する装置は、平均流入流量に合わせて駆動トルクが設定された小水力発電設備の発電機を制御する装置であって、水車により回転する発電機の回転軸に設けられて発電機の回転軸の回転数を感知するエンコーダーと、前記エンコーダーにおいて感知された発電機の回転数に合わせて発電機の駆動トルクを制御するが、感知された回転数に応じて駆動トルクを比例制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
前記制御手段は、プログラミング可能なシーケンス制御装置(PLC:Programable Logic Control)からなることが好ましい。
【0026】
本発明の他の態様による発電機制御方法は、平均流入流量により供給されるトルクに合わせて駆動トルクが設定された発電機を制御するが、実際の流入流量の変化による発電機の回転軸の回転数の変化を感知して流入流量の変化を感知し、感知された回転軸の回転数に対応するように発電機の駆動トルクを調節して、流入流量が変化しても発電機が止まることなく作動され続けるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように、本発明に係る系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する方法は、通常の水力発電方式よりも高い発電利用率を得ることができるという効果がある。
【0028】
すなわち、小水力発電設備における電力系統との同期の脱調による発電機の停止時間がないので、水さえ流入すれば、たとえ流入流量の流動幅が大きくても常に発電機が作動し、発電された出力を系統電力に送ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する装置の構成図である。
【
図2】本発明に係る系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する装置の一例の写真である。
【
図3】本発明に係る系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する装置のトルク制御画面である。
【
図4】本発明に係る系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は様々な変更を加えることができ、種々の実施形態を有し得るが、特定の実施形態を図面に例示し、詳細な説明の欄において詳細に説明する。しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態により限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術の範囲に含まれるあらゆる変更、均等物又は代替物を網羅するものと理解されるべきである。
【0031】
各図面について説明するに当たって、類似の参照符号を類似の構成要素に附した。本発明について説明するに当たって、関連する公知の技術についての具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にする虞があると認められる場合にはその詳細な説明を省略する。
【0032】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0033】
本発明は、小水力発電機の駆動トルクを制御して系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して発電機が駆動できるようにする。
【0034】
このような本発明に係る系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する装置は、
図1及び
図2に示すように、平均流入流量に合わせて駆動トルクが設定された小水力発電設備の発電機を制御する装置であって、水車により回転する発電機の回転軸に設けられて発電機の回転軸の回転数を感知するエンコーダー10と、前記エンコーダーにおいて感知された発電機の回転数に合わせて発電機のトルクを制御するが、感知された回転数に応じて設定された駆動トルクを比例制御する制御手段20と、を備える。
【0035】
前記エンコーダー10は、水車に供給される流入流量に応じて変化する発電機の回転軸の回転数を感知するための手段であり、回転数をパルスの形で出力し、このパルスを計数することにより回転軸の回転数を感知することができ、回転軸の回転数を感知することにより流入流量の変化を感知することができる。
【0036】
前記エンコーダー10において感知された回転軸の回転数は前記制御手段20に引き渡されて発電機の駆動トルクを調節するための基礎情報となる。
【0037】
前記制御手段20は、エンコーダーにおいて感知された回転軸の回転数から流入流量を感知し、感知された流入流量に合わせて発電機の駆動トルクを制御する手段であって、通常のプログラミング可能なシーケンス制御装置(PLC:Programable Logic Control)からなることが好ましい。
【0038】
前記制御手段20にはエンコーダーにおいて感知された回転軸の回転数と比較される基準回転数が設定されており、この基準回転数と比較することにより現在発電機に供給される流入流量の変化を認知することができる。
【0039】
上述したように、前記制御手段20は、感知された発電機の回転軸の回転数に対応するように発電機の駆動トルクを制御するための演算処理手段を備えており、演算処理方法は、感知された回転軸の回転数が減速された割合に見合う分だけ初期に設計された発電機の駆動トルクを比例して下げる。
【0040】
一例を挙げると、下記表に示すように、感知された回転軸の回転数に応じて設定された駆動トルクで発電機の駆動を制御するのである。
【0041】
例えば、すなわち、50KW/650RPMに設計された発電機があるとしたとき、定格トルクは788N.mである。
【0042】
正常に発電機が駆動されると、エンコーダーにおいて感知された回転数は650rpmであり、このときにはトルクを100%印加し、流入流量が減ってエンコーダーにおいて感知された回転数が50%減速されて325rpmであるときには、トルクを50%印加する。
【0043】
もちろん、感知された回転数が500rpmである場合には、定格トルクの70%に相当する駆動トルクを印加する。
【0044】
上述したように構成された系統周波数同期の脱調なしに流入流量の変動に対応して小水力発電機のトルクを制御する装置を用いた発電機のトルク制御方法は、上述したように、発電機が流入流量が変化しても止まることなく持続的に駆動できるようにするためのものであり、平均流入流量により供給されるトルクに合わせて駆動トルクが設定された発電機を制御するが、実際の流入流量の変化による発電機の回転軸の回転数の変化を感知して流入流量の変化を感知し、感知された回転軸の回転数に対応するように発電機の駆動トルクを調節して、流入流量が変化しても発電機が止まることなく持続的に作動され続けるようにしたものである。
【0045】
このような本発明において調節された駆動トルクは、感知された発電機の回転軸の回転数に応じて比例制御される。すなわち、感知された回転数が減速されると、減速された割合に見合う分だけ最初に設計されたトルクよりも下げた駆動トルクに再設定した状態で発電機を駆動するのである。
【0046】
このように発電機の駆動トルクを制御すると、発電機は流体の流入変動量に応じてリアルタイムにて100〜1000rpm/minの区間を往復しながら止まることなく持続的に駆動され続けて発電が行われるのである。
【0047】
このとき、出力周波数は6hz〜60hzであり、発電機の出力電圧は10Vから500Vに至るまでそれぞれ異なるが、これをインバーターにおいて切り換えて電力系統周波数と同期化させて系統に送電する。
【符号の説明】
【0048】
10 エンコーダー
20 制御手段