(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
(表面実装機の全体構成)
図面を参照して実施形態を説明する。本実施形態では、
図1に示す表面実装機1について例示する。表面実装機1は、基台10と、プリント基板(基板の一例)B1を搬送するための搬送コンベア(基板搬送装置の一例)20と、プリント基板B1上に電子部品(部品の一例)E1を実装するための部品実装装置30と、部品実装装置30に電子部品E1を供給するための部品供給装置40等とを備えている。
【0022】
基台10は、平面視長方形状をなすとともに上面が平坦とされる。また、基台10における搬送コンベア20の下方には、プリント基板B1上に電子部品E1を実装する際にそのプリント基板B1をバックアップするための図示しないバックアッププレート等が設けられている。以下の説明では、基台10の長辺方向(
図1の左右方向)及び搬送コンベア20の搬送方向をX軸方向とし、基台10の短辺方向(
図1の上下方向)をY軸方向とし、基台10の上下方向(
図2の上下方向)をZ軸方向とする。
【0023】
搬送コンベア20は、Y軸方向における基台10の略中央位置に配置され、プリント基板B1を搬送方向(X軸方向)に沿って搬送する。搬送コンベア20は、搬送方向に循環駆動する一対のコンベアベルト22を備えている。プリント基板B1は、両コンベアベルト22に架設する形でセットされる。プリント基板B1は、搬送方向の一方側(
図1で示す右側)からコンベアベルト22に沿って基台10上の作業位置(
図1の二点鎖線で囲まれる位置)に搬入され、作業位置で停止して電子部品E1の実装作業がされた後、コンベアベルト22に沿って他方側(
図1で示す左側)に搬出される。
【0024】
部品供給装置40は、フィーダ型とされ、搬送コンベア20の両側(
図1の上下両側)においてX軸方向に並んで2箇所ずつ、計4箇所に配されている。これらの部品供給装置40には、複数のフィーダ42が横並び状に整列して取り付けられている。各フィーダ42は、複数の電子部品E1が収容された部品供給テープ(不図示)が巻回されたリール(不図示)、及びリールから部品供給テープを引き出す電動式の送出装置(不図示)等を備えており、搬送コンベア側に位置する端部に設けられた部品供給位置から電子部品E1が一つずつ供給されるようになっている。
【0025】
部品実装装置30は、基台10及び後述する部品供給装置40等の上方に設けられる一対の支持フレーム32と、ロータリー型の実装ヘッド50と、実装ヘッド50を駆動する実装ヘッド駆動機構とから構成される。各支持フレーム32は、それぞれX軸方向における基台10の両側に位置しており、Y軸方向に延びている。支持フレーム32には、実装ヘッド駆動機構を構成するX軸サーボ機構及びY軸サーボ機構が設けられている。実装ヘッド50は、X軸サーボ機構及びY軸サーボ機構によって、一定の可動領域内でX軸方向及びY軸方向に移動可能とされている。
【0026】
Y軸サーボ機構は、Y軸ガイドレール33Yと、図示しないボールナットが螺合されたY軸ボールねじ34Yと、Y軸サーボモータ35Yとを有している。各Y軸ガイドレール33Yには、ボールナットに固定されたヘッド支持体36が取り付けられている。Y軸サーボモータ35Yが通電制御されると、Y軸ボールねじ34Yに沿ってボールナットが進退し、その結果、ボールナットに固定されたヘッド支持体36、及び後述する実装ヘッド50がY軸ガイドレール33Yに沿ってY軸方向に移動する。
【0027】
X軸サーボ機構は、X軸ガイドレール(不図示)と、図示しないボールナットが螺合されたX軸ボールねじ34Xと、X軸サーボモータ35Xとを有している。X軸ガイドレールには、その軸方向に沿って実装ヘッド50が移動自在に取り付けられている。X軸サーボモータ35Xが通電制御されると、X軸ボールねじ34Xに沿ってボールナットが進退し、その結果、ボールナットに固定された実装ヘッド50がX軸ガイドレール33Xに沿ってX軸方向に移動する。
【0028】
(実装ヘッドの構成)
続いて実装ヘッド50の構成について詳しく説明する。実装ヘッド50は、
図2に示すように、本体であるヘッド本体部52がカバー53、54によって覆われたアーム状をなしており、部品供給装置40によって供給される電子部品E1を吸着してプリント基板B1上に実装する。本実施形態の実装ヘッド50は、ロータリー型であり、計18本のノズルシャフト55が回転体60によってZ軸方向(上下方向)に移動可能に保持されている(
図4参照)。
【0029】
回転体60は、
図4に示すように、Z軸方向に沿って軸状をなす軸部62と、実装ヘッド50の下端部において軸部62の周りに設けられ、軸部62より大径な略円柱状をなすシャフト保持部64と、を有している。回転体60の軸部62は、ヘッド本体部52によって当該軸部62の軸線周りに回転可能に支持されている。軸部62は二重構造となっており、内側の軸部62の上部には当該軸部62の軸線周りにN軸被駆動ギヤ62Nが設けられ、外側の軸部62の上部には当該軸部62の軸線周りにR軸被駆動ギヤ62Rが設けられている(
図4参照)。
【0030】
実装ヘッド50のZ軸方向における略中央部には、回転体60を回転駆動するための図示しないN軸駆動装置が配されている。N軸駆動装置は、N軸サーボモータ35N(
図7参照)と、N軸サーボモータ35Nの出力軸周りに設けられたN軸駆動ギヤ(不図示)と、を有している。N軸駆動ギヤはN軸被駆動ギヤ62Nと噛み合わされており、N軸サーボモータ35Nが通電制御されると、N軸駆動ギヤ及びN軸被駆動ギヤ62Nの回転駆動を介して、回転体60がZ軸方向に沿った軸線周りに任意の角度で回転される。
【0031】
回転体60のシャフト保持部64には、周方向に等間隔で、貫通孔が18個形成されている。そして、各貫通孔には、筒状のシャフトホルダ57を介して、軸状をなすノズルシャフト55が、シャフト保持部64を貫通しつつZ軸方向に沿って延びる形で保持されている。そして、各ノズルシャフト55のうちシャフト保持部64から下方に突出する下端部には、
図4及び
図5に示すように、電子部品E1を吸着する吸着ノズル56がそれぞれ設けられている。
【0032】
各吸着ノズル56には、負圧又は正圧が供給されるようになっている。各吸着ノズル56は、負圧によってその先端部に電子部品E1を吸着して保持するとともに、正圧によってその先端部に保持した電子部品E1を解放する。N軸駆動装置によって回転体60が回転されると、各ノズルシャフト55と共に各ノズルシャフト55に設けられた各吸着ノズル56が回転体60の軸線周りに旋回させられる。
【0033】
また、実装ヘッド50のZ軸方向における略中央部には、
図2に示すように、各ノズルシャフト55をその軸線周りに回転駆動するためのR軸駆動装置70が配されている。R軸駆動装置70は、R軸サーボモータ35Rと、R軸サーボモータ35Rの出力軸周りに設けられ、R軸被駆動ギヤ62Rと噛み合わされたR軸駆動ギヤ72R(
図3参照)と、を有している。R軸被駆動ギヤ62Rが設けられた外側の軸部62において、R軸被駆動ギヤ62Rよりも下部には、図示しない共通ギヤが設けられている。
【0034】
一方、
図4に示すように、各シャフトホルダ57の外周部にはそれぞれノズルギヤ57Rが設けられている。各シャフトホルダ57に設けられたノズルギヤ57Rは、上記共通ギヤと噛み合わされている。R軸サーボモータ35Rが通電制御されると、R軸駆動ギヤ72R及びR軸被駆動ギヤ62Rの回転駆動を介して、共通ギヤが回転する。共通ギヤが回転すると、ノズルギヤ57Rとの噛み合いにより、各シャフトホルダ57が回転する。そして、各シャフトホルダ57と各ノズルシャフト55は、ボールスプライン結合していることから、共通ギヤの回転に伴って、18本のノズルシャフト55がその軸線周りにおいて同方向及び同角度に一斉に回転する。
【0035】
また、各ノズルシャフト55の上端部には、ばね止めボルト58が螺合されている。各ノズルシャフト55の外面側には、巻ばね59が配されている。巻ばね59は、ばね止めボルト58とシャフトホルダ57との間にて圧縮された状態で配されており、各ノズルシャフト55は、この巻ばね59の弾性力によって上方に付勢されている。
【0036】
また、実装ヘッド50は、
図2から
図4に示すように、18本のノズルシャフト55のうち特定の位置にあるノズルシャフト55を、回転体60に対して当該回転体60の軸部62に沿った方向(Z軸方向、上下方向)に昇降させるための2つのZ軸駆動装置80を備えている。両Z軸駆動装置80は、各ノズルシャフト55の上方において、回転体60の軸部62を挟んで実装ヘッド50の左右両側に対称配置されている(
図5参照)。
【0037】
Z軸駆動装置80は、
図3から
図5に示すように、箱状をなすZ軸駆動源82と、Z軸駆動源82から動力を得てZ軸方向(上下方向)に移動するZ軸可動部84と、を有している。Z軸駆動源82の内部には、Z軸可動部84をリニアモータ駆動するためのZ軸リニアモータ35Z(
図7参照)が設けられている。
【0038】
Z軸駆動装置80におけるZ軸可動部84の下端部には、
図4及び
図5に示すように、カムフォロア86(以下、「Z軸カムフォロア86」と称する)がX軸方向に沿った軸周りに回転可能に取り付けられている。Z軸可動部84は、その上昇端位置においてZ軸カムフォロア86が特定の位置にあるノズルシャフト55の上端部(ばね止めボルト58)と近接するような配置で、Z軸駆動源82により位置保持されている(
図5参照)。このため、Z軸可動部84が上昇端位置にある状態では、各ノズルシャフト55の軸部62周りの旋回が許容される。
【0039】
Z軸駆動源82によってZ軸可動部84が上昇端位置から下降されると、Z軸カムフォロア86が特定の位置にあるノズルシャフト55の上端部に当接し、当該ノズルシャフト55が巻ばね59の弾性力に抗って下降される。ノズルシャフト55が下降されると、そのノズルシャフト55に設けられた吸着ノズル56が下降され、吸着ノズル56の先端部が部品供給装置40の部品供給位置や作業位置にあるプリント基板B1に近接する。この状態からZ軸可動部84が上昇されると、巻ばね59の弾性力復帰力によってノズルシャフト55及び吸着ノズル56が上昇する。
【0040】
さらに、実装ヘッド50は、
図4及び
図5に示すように、各吸着ノズル56に供給される圧力を負圧と正圧との間で切り替えるための切替装置90を備えている。切替装置90は、各吸着ノズル56(各ノズルシャフト55)に対応する形で計18個設けられている。各切替装置90は、円周状に配された各ノズルシャフト55の外側において、隣接する2つのノズルシャフト55の間に位置する形で、各ノズルシャフト55と同様に、シャフト保持部64の外周に沿って円周状に等間隔でそれぞれ設けられている(
図4参照)。
【0041】
各切替装置90は、
図4及び
図5に示すように、軸状をなすバルブスプール(軸状部材の一例)92と、バルブスプール92の下側部分が収容される筒状のスリーブ(収容部材の一例)94と、を有している。
【0042】
各スリーブ94は、シャフト保持部64に設けられた各取り付け孔に取り付けられている。具体的には、上端に設けられた大径部98を除く、スリーブ94の全体を、取り付け孔の内部に挿入するようにして取り付けられている。スリーブ94には、シャフト保持部64から露出する上端部の開口からバルブスプール92の下側部分(バルブスプール92の当接部93を除く大部分)がその軸方向に沿って移動可能に収容される。
【0043】
各バルブスプール92は、その軸方向がZ軸方向(上下方向)に沿った形で配されており、その軸方向に沿って移動することで、各吸着ノズル56に供給される圧力を負圧と正圧との間で切り替える。
【0044】
各バルブスプール92は、
図5及び
図6に示すように、その上側部分に、横向きの略U字状をなす当接部93を有している。当接部93は、バルブスプール92の軸方向(Z軸方向)と直交する方向に延びるとともに互いに対向する形で軸方向(Z軸方向)に離間して設けられた一対の対向部93Aと、一対の対向部93Aを連結する連結部93Bを有する(
図6参照)。当接部93は、スリーブ94から露出して上方に突出している。各バルブスプール92は、略U字状をなす当接部93について、その開いた側を外側(軸部62側とは反対側)に向けた形でそれぞれ配されている(
図4参照)。
【0045】
各切替装置90は、スリーブ94に収容されたバルブスプール92が、
図8にて二点鎖線で示す上昇端位置(以下、「負圧供給位置」と称する)に移動することで、スリーブ94内に負圧が供給される。また、バルブスプール92が、
図8にて実線で示す下降端位置(以下、「正圧供給位置」と称する)に移動することで、スリーブ94内に正圧が供給される。各スリーブ94内に供給された負圧又は正圧は、図示しない供給路を経て、当該スリーブ94と対応する吸着ノズル56に供給される。
【0046】
ここで、実装ヘッド50において、各スリーブ94内に負圧又は正圧を供給するための供給経路、及び負圧又は正圧の供給態様について説明する。各スリーブ94には、
図6に示すように、負圧が入力される負圧入力ポート94Aと、正圧が入力される正圧入力ポート94Bと、負圧入力ポート94A又は正圧入力ポート94Bから入力された負圧又は正圧が出力される出力ポート(不図示)とが設けられている。出力ポートは、対応する吸着ノズル56と連通している。
【0047】
また、内側の軸部62の内部には、負圧が供給される第1負圧供給路62Aが設けられており、回転体60の外側には、正圧が供給される第1正圧供給路62Bが設けられている(
図2参照)。そして、シャフト保持部64内には、各スリーブ94に対応して負圧が供給される複数の第2負圧供給路64Aが設けられている。また、シャフト保持部64の外周側に設けられた外環部材65には、第1正圧供給路62Bと連通され、正圧が供給される2つの第2正圧供給路65Aとが設けられている。
【0048】
第1負圧供給路62Aは、軸部62の回転の有無に拘わらず、その下端部において全ての第2負圧供給路64Aと常時連通する構成とされている。また、各第2負圧供給路64Aは、バルブスプール92が負圧供給位置にある状態において、そのバルブスプール92が収容されるスリーブ92の負圧入力ポート94Aと連通する。従って、バルブスプール92が負圧供給位置にある状態では、各吸着ノズル56が回転体60の軸線周りに旋回中であるか否かに拘わらず、そのバルブスプール92(切替装置90)と対応する吸着ノズル56に常時負圧が供給される。
【0049】
2つの第2正圧供給路65Aは、シャフト保持部64の外周側に設けられた外環部材65うち、各Z軸駆動装置80によってノズルシャフト55がZ軸方向に昇降される上記特定の位置と対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、両第2正圧供給路65Aは、上記特定の位置にある吸着ノズル56と対応するバルブスプール92が正圧供給位置にある状態において、そのバルブスプール92が収容されるスリーブ94の正圧入力ポート94Bと連通する。従って、バルブスプール92が正圧供給位置にある状態では、そのバルブスプール92と対応する吸着ノズル56が上記特定の位置にある場合にのみ、出力ポートから当該吸着ノズル56に正圧が供給される。
【0050】
実装ヘッド50では、上述したように、負圧供給位置にあるバルブスプール92と対応する吸着ノズル56に常時負圧が供給されることで、複数の吸着ノズル56に吸着された電子部品E1が実装ヘッド50の移動時等に落下することが抑制される。また、上述したように、正圧供給位置にあるバルブスプール92と対応する吸着ノズル56に所定の場合にのみ正圧が供給されることで、実装対象となる電子部品E1のみを正圧によってプリント基板B1上に実装することができる。
【0051】
なお、
図8に示すように、各スリーブ94の外周面側には、外側シール部材96がZ軸方向に間隔を空けて複数配されている。外側シール部材96は、ゴムなどの弾性体からなる環状のリングであり、シャフト保持部64の取り付け孔との間をシールする機能を果たしている。また、スリーブ94の内周側には、内側シール部材97が軸方向に沿って複数箇所(図中では下部の1か所だけを示す)に配置されている。内側シール部材97は、ゴムなどの弾性体からなる環状のリングであり、
図8に示すように、バルブスプール92の外面に取り付けられている。内側シール部材97は、スリーブ94の内周面とバルブスプール92との間をシールする機能を果たしている。その結果、負圧入力ポート94A、正圧入力ポート94B、及び出力ポートの間での負圧、正圧の漏れが抑制されている。また、内側シール部材97は、その摩擦力によって、負圧供給位置又は正圧供給位置に移動されたバルブスプール92がその位置において保持されるようになっている。
【0052】
また、実装ヘッド50は、
図2から
図4に示すように、各切替装置90のバルブスプール92をZ軸方向(上下方向)に沿って負圧供給位置と正圧供給位置との間で移動させるための2つのV軸駆動装置(駆動装置の一例)100を備えている。2つのV軸駆動装置100は、2つのZ軸駆動装置80とZ軸方向において対応する位置にそれぞれ設けられており(
図5参照)、上記特定の位置にある吸着ノズル56と対応する切替装置90のバルブスプール92を移動させる。従って、2つのV軸駆動装置100についても、2つのZ軸駆動装置80と同様に、回転体60の軸部62を挟んで実装ヘッド50の左右両側に対称配置されている。
【0053】
V軸駆動装置100は、
図3から
図5、
図9、
図10に示すように、箱状をなすV軸駆動源(駆動源の一例)102と、V軸駆動源102から動力を得てZ軸方向(上下方向)に移動するV軸可動部(可動部の一例)104と、を有している。V軸駆動源102の内部には、V軸可動部104をリニアモータ駆動によって駆動するためのV軸リニアモータ35V(
図7参照)が設けられている。
【0054】
また、V軸可動部104には、
図4及び
図5に示すように、カムフォロア支持部139を介して、カムフォロア106(以下、「V軸カムフォロア106」と称する)がX軸方向に沿った軸周りに回転可能に取り付けられている。V軸カムフォロア(ピンの一例)106は、V軸駆動装置100が通電されている状態では、上記特定の位置にあるノズルシャフト55と対応するバルブスプール92に対して、そのバルブスプール92に設けられた一対の対向部93Aの間に位置するように、V軸可動部104により位置保持される(
図5参照)。
【0055】
そのため、V軸駆動源102によってV軸可動部104が上方に移動されると、V軸カムフォロア106がその両側に位置する一対の対向部93Aのうち、上側の対向部93Aに当接してバルブスプール92を押し上げ、バルブスプール92が負圧供給位置に移動する。一方、V軸駆動源102によってV軸可動部104が下方に移動されると、V軸カムフォロア106がその両側に位置する一対の対向部93Aのうち、下側の対向部93Aに当接してバルブスプール92を押し下げ、バルブスプール92が正圧供給位置に移動する。なお、V軸駆動装置100におけるリニアモータ駆動の駆動機構については、後で詳しく説明する。
【0056】
ここで、V軸カムフォロア106の回転軸がX軸方向に沿っていることから、V軸カムフォロア106の回転方向は、回転体60によって旋回される各ノズルシャフト55の円周状をなす軌跡の接線方向とほぼ一致する。このため、V軸カムフォロア106によるバルブスプール92の昇降動作中に回転体60が回転された場合、V軸カムフォロア106が一対の対向部93Aに当接された状態が維持されながらV軸カムフォロア106が一対の対向部93Aとの間の摩擦力によって回転するので、各ノズルシャフト55を旋回させながらバルブスプール92の昇降動作を実行することができる。
【0057】
また、バルブスプール92が負圧供給位置と正圧供給位置の中間の高さ位置近傍に位置する状態では、V軸カムフォロア106はバルブスプール92の両対向部93Aに当接しないようになっている。このため、V軸カムフォロア106が、バルブスプール92が負圧供給位置とされる位置と正圧供給位置とされる位置の中間の高さとなるように、V軸可動体104を位置保持すると、V軸カムフォロア106がバルブスプール92に干渉せず、回転体60を回転させることができる。
【0058】
なお、実装ヘッド50には、基板認識カメラC1(
図7参照)が設けられている。基板認識カメラC1は、実装ヘッド50とともに一体的に移動することで、作業位置に停止したプリント基板B1上の任意の位置の画像を撮像する。また、基台10上における作業位置の近傍には、部品認識カメラC2(
図1参照)が固定されている。部品認識カメラC2は、吸着ノズル56によって部品供給装置40の部品供給位置から吸着された電子部品E1の画像を撮像する。
【0059】
(表面実装機の電気的構成)
次に、表面実装機1の電気的構成について、
図7を参照して説明する。表面実装機1の本体は、制御部110によってその全体が制御統括されている。制御部110は、CPU等により構成される演算制御部111を備えている。演算制御部111には、モータ制御部112と、記憶部113と、画像処理部114と、外部入出力部115と、フィーダ通信部116と、表示部117と、入力部118と、がそれぞれ接続されている。
【0060】
モータ制御部112は、後述する実装プログラム113Aに従って部品実装装置30のX軸サーボモータ35X及びY軸サーボモータ35Yを駆動させるとともに、実装ヘッド50のN軸サーボモータ35N、R軸サーボモータ35R、Z軸リニアモータ35Z、及びV軸リニアモータ35Vをそれぞれ駆動させる。また、モータ制御部112は、実装プログラム113Aに従って搬送コンベア20を駆動させる。
【0061】
記憶部113は、CPUを制御するプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)や装置の動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等から構成されている。記憶部113には、次述する実装プログラム113Aと各種データ113Bとが記憶されている。
【0062】
記憶部113に記憶される実装プログラム113Aには、具体的には、実装対象となるプリント基板B1の生産台数に関する基板情報、プリント基板B1に実装される電子部品E1の個数や種類等を含む部品情報、プリント基板B1上の電子部品E1の実装位置に関する実装情報等が含まれている。記憶部113に記憶される各種データ113Bには、部品供給装置40の各フィーダ42に保持された電子部品E1の数や種類に関するデータ等が含まれている。
【0063】
画像処理部114には、基板認識カメラC1及び部品認識カメラC2から出力される撮像信号がそれぞれ取り込まれるようになっている。画像処理部114では、取り込まれた各カメラC1,C2からの撮像信号に基づいて、部品画像の解析並びに基板画像の解析がそれぞれ行われるようになっている。
【0064】
外部入出力部115は、いわゆるインターフェースであって、表面実装機1の本体に設けられる各種センサ類115Aから出力される検出信号が取り込まれるように構成されている。また、外部入出力部115は、演算処理部111から出力される制御信号に基づいて、各種アクチュエータ類115Bに対する動作制御を行うように構成されている。
【0065】
フィーダ通信部116は、部品供給装置40に取り付けられた各フィーダ42の制御部と接続されており、各フィーダ42を統括して制御する。各フィーダ42の制御部は、部品供給テープを送出するためのモータの駆動を制御する。
【0066】
表示部117は、表示画面を有する液晶表示装置等から構成され、表面実装機1の状態等を表示画面上に表示する。入力部118は、キーボード等から構成され、手動による操作によって外部からの入力を受け付けるようになっている。
【0067】
以上のような構成とされた表面実装機1では、自動運転中において、搬送コンベア20によるプリント基板B1の搬送作業を行う搬送状態と、基台10上の作業位置に搬入されたプリント基板B1上への電子部品E1の実装作業を行う実装状態と、が交互に実行される。
【0068】
(V軸駆動装置におけるリニアモータ駆動の駆動機構)
次に、V軸駆動装置100におけるリニアモータ駆動の駆動機構について、
図9及び
図10を参照して説明する。
図9に示すように、箱状のV軸駆動源102は、リニアモータ駆動による駆動機構が設けられた板状のV軸本体部112と、V軸本体部112に取り付けられて上記駆動機構を外部から保護するV軸カバー114と、を備えている。V軸カバー114はV軸本体部112を完全には覆っておらず、V軸カバー114の前方には、V軸駆動源102の内部に熱が籠らないようにするための冷却開口114Aが設けられている。
【0069】
V軸駆動装置100では、V軸駆動源102にリニアモータの固定子120が設けられ、V軸可動部104にリニアモータの可動子130が設けられている。V軸駆動源102では、
図10に示すように、V軸本体部112の板面上に、V軸可動部104の移動方向(Z軸方向、上下方向)に沿って並列配置された3つの電機子コイル122からなる固定子120と、V軸可動部104の移動方向に沿って延びるレール124と、鉄片(磁性体の一例)126と、がそれぞれ設けられている。
【0070】
固定子120は、V軸駆動源102の前方側(
図10における左側)に設けられている。レール124は、固定子120との間にV軸可動部104が配される形でV軸可動部104の後方側(
図10における右側)に設けられている。レール124は、その内側にレール124の延在方向に沿って延びるレール溝(不図示)が設けられている。鉄片126は、固定子120との間に所定の間隔を空けて固定子120の下方に設けられている。鉄片126は、V軸本体部112に対してボルト締めされており、ボルトを緩めることで、Z軸方向やY軸方向の位置を調整することが出来る。
【0071】
一方、V軸可動部104は、
図10に示すように、両板面を前後方向に向けた形でV軸可動部104の移動方向に延びる厚板状のヨーク132と、ヨーク132の前面に設けられ、複数の永久磁石134からなる可動子130と、ヨーク132の前面に設けられ、1つの永久磁石からなる位置保持磁石136と、ヨーク132の後面に設けられたレールガイド138と、ヨーク132の上端部に取り付けられたカムフォロア支持部139と、を有している。なお、上記鉄片126と位置保持磁石136は、位置保持部の一例である。
【0072】
ヨーク132は、その下端部が後方側に屈曲され、その先端部がレール124の下端部の後方に至るまで伸びている。可動子130を構成する複数の永久磁石134は、異なる磁極が交互に並ぶように等間隔で直線状に配置されている。位置保持磁石136は、ヨーク132の下端部の前面であって可動子130を構成する複数の永久磁石134の下側に設けられている。複数の永久磁石134の表面と位置保持磁石136の表面は、同一平面上に位置している。
【0073】
レールガイド138は、ヨーク132の延伸方向に沿って溝状に設けられ、レール124に対してヨーク132の延伸方向(V軸可動部104の移動方向、Z軸方向、上下方向)に沿って移動可能に嵌合されている。カムフォロア支持部139は、ヨーク132の上端部に設けられ、V軸カムフォロア106が回転可能に支持されている。ヨーク132が移動すると、ヨーク132と共にカムフォロア支持部139及びV軸カムフォロア106が移動する。
【0074】
V軸駆動装置100では、複数の永久磁石134と固定子120、及び位置保持磁石136と鉄片126がいずれも近接した状態でV軸可動部104のレール124がレールガイド138に嵌合されており、複数の永久磁石134と固定子120との間の距離、及び位置保持磁石136と鉄片126との間の距離は略等しくされている。一方、
図10に示すように、位置保持磁石136と、可動子130を構成する複数の永久磁石134との間の間隔D1は、可動子130が有する複数の永久磁石134の間隔D2よりも大きくされている。尚、間隔D1は、位置保持磁石136から見て最も近くにある永久磁石134(
図10では最下端に位置する永久磁石134)と、位置保持磁石136と、の間隔である。
【0075】
V軸駆動装置100では、V軸駆動源102とV軸可動部104が上記のような構成とされていることで、固定子120の電機子コイル122が通電されると、固定子120と可動子130との間にV軸可動部104をZ軸方向(上下方向)に移動させるリニアモータ駆動の推進力が働く。このような推進力を付与する固定子120及び可動子130は、V軸リニアモータ35Vとされ、上記制御部110によって制御される。
【0076】
そして、V軸駆動装置100では、位置保持磁石136と鉄片126が磁気ばねを構成しており、電機子コイル122への通電が遮断された時(V軸駆動源102が停止した時)に、磁気ばねの磁気吸引力により、位置保持磁石136が鉄片126の正面の位置に引き寄せられる。これにて、バルブスプール92が負圧供給位置及び正圧供給位置のどちらの位置にあっても、V軸可動部104がバルブスプール92に対して干渉しない非干渉位置に、磁気ばね(位置保持磁石136、鉄片126)が、V軸可動部104を位置保持する構造になっている。
【0077】
より具体的に説明すると、V軸可動部104のV軸カムフォロア106が、
図8に示すF範囲、すなわち正圧供給位置にあるバルブスプール92の上側の対向部93A1と、負圧供給位置にあるバルブスプール92の下側の対向部93A2の間に位置するように、磁気ばね(位置保持磁石136、鉄片126)がV軸可動部104を位置保持する。また、
図8では、上下の対向部93Aを区別するため、上側の対向部に対して93A1の符合を付し、下側の対向部に対して93A2の符合を付している。
【0078】
また、可動子130を構成する複数の永久磁石134の磁力は、位置保持磁石136の磁力よりも大きくされており、リニアモータ駆動によるV軸駆動源102の移動は、位置保持磁石136の影響を受けないようになっている。
【0079】
(実施形態の効果)
本実施形態に係る実装ヘッド50は、位置保持磁石136と鉄片126からなる磁気ばねが、負圧供給位置及び正圧供給位置にあるバルブスプール92に対してV軸可動部104が干渉しない非干渉位置にV軸可動部104を位置保持する。具体的には、負圧供給位置や正圧供給位置に位置するバルブスプール92の対向部93Aに対して、V軸カムフォロア106が干渉しない位置に、V軸可動部104を位置保持する。
【0080】
そのため、V軸駆動装置100を含む各装置の電源を落として、実装ヘッド50のメンテナンスのため実装ヘッド50の回転体60を回転させた時に、負圧供給位置や正圧供給位置に位置するバルブスプール92の対向部93Aに対して、V軸カムフォロア106が干渉することを避けることが出来る。そのため、実装ヘッド50のメンテナンス性を向上させることができる。
【0081】
さらに上記の実装ヘッド50では、上記のように位置保持磁石136と鉄片126からなる磁気ばねが、負圧供給位置及び正圧供給位置にあるバルブスプール92と干渉しない位置に、V軸可動部104を位置保持する。そのため、吸着ノズル56が部品を吸着した状態で電源が停止するなどして実装ヘッド50が非常停止となった場合に、V軸カムフォロア106が、負圧供給位置にある下側の当接部93A2を下方に押して、バルブスプール92を負圧供給位置から正圧供給位置に切り換えることを抑制できる。そのため、吸着ノズル56から部品が落下することを抑制することができる。その結果、装置の信頼性を向上させることができる。
【0082】
また、V軸カムフォロア106は、正圧供給位置にあるバルブスプール92の上側の対向部93A2と負圧供給位置にあるバルブスプール92の対向部93A1の中間位置に保持することが好ましい。そのようにすることで、負圧供給位置側、正圧供給位置側のどちらに位置するバルブスプール92の対向部93Aに対しても、V軸カムフォロア106が干渉し難くなる。
【0083】
また、本実施形態の実装ヘッド50では、V軸可動部104を位置保持する位置保持部を、磁気ばねにより構成している。
【0084】
例えば、位置保持部を、コイルばねなどの巻ばねで構成する場合、V軸可動部140の保持位置を調整することは難く、また、巻ばねの弾性劣化により、位置保持力が低下する虞がある。磁気ばねは、鉄片126の位置調整により、V軸可動部140の保持位置(Z軸方向の保持位置)を調整することが可能である。そのため、V軸可動部140を高い位置精度で位置保持することが出来、かつ劣化が少なく耐久性もよい。
【0085】
また、本実施形態の実装ヘッド50では、上述したように、位置保持磁石136と可動子130を構成する複数の永久磁石134との間の間隔D1は、可動子130が有する複数の永久磁石134の間隔D2よりも大きくされている。このような構成とされていることで、上記間隔D1が上記間隔D2よりも小さくされている場合又は上記間隔D1と上記間隔D2が等しくされている場合と比べて、鉄片126の影響が可動子130を構成する複数の永久磁石134に及び難い。このため、可動子130を構成する複数の永久磁石134が、鉄片126に引き寄せられることを抑制することができる。その結果、磁気ばねによるV軸可動部104の位置保持機能を有しながら、リニアモータ駆動によるV軸可動部104の駆動機能を好適に維持することができる。
【0086】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記既述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)上記の実施形態では、V軸可動部104を位置保持する位置保持部の一例として、位置保持磁石136と鉄片126からなる磁気ばねを例示したが、例えば、V軸本体部112の板面上に取り付けられた巻ばねによってV軸可動部104の位置が保持される構成であってもよい。
【0087】
(2)上記の実施形態では、磁気ばねが鉄片126と位置保持磁石136によって構成される例を示したが、鉄片126に限定されず、他の磁性体であってもよい。
【0088】
(3)上記の実施形態では、位置保持部を構成する鉄片126と位置保持磁石136が固定子120の下側及び可動子130の下側に設けられた構成を例示したが、鉄片126と位置保持磁石136は、V軸駆動源102が停止した状態で、V軸可動部104の位置が保持されるような場所に設けられていればよく、鉄片126と位置保持磁石136が配置される場所については限定されない。
【0089】
(4)上記の実施形態では、ロータリー型の実装ヘッド50を例示したが、複数のノズルシャフト50が直線状に配置されたインライン型の実装ヘッドであってもよい。この場合、各ノズルシャフト50と対応する形でバルブスプール92が設けられ、特定の位置にあるバルブスプール92がその軸方向に移動されるものであってもよい。
【0090】
(5)上記の実施形態では、V軸カムフォロア106がバルブスプール92の各対向部93Aに当接することでバルブスプール92がその軸方向に移動される構成を例示したが、バルブスプール92に当接する部材はカムフォロア106に限定されず、例えば、非回転の固定ピンでもよい。
【0091】
(6)上記の実施形態では、V軸カムフォロア106が、バルブスプール92が負圧供給位置とされる位置と正圧供給位置とされる位置の中間の高さ位置で保持される構成を例示したが、中間近傍の高さ位置で保持されればよく、中間からわずかにずれた位置に保持される構成であってもよい。
【0092】
(7)上記の実施形態では、実装ヘッド50を備える表面実装機1について例示したが、上記の実施形態で例示される実装ヘッド50は、表面実装機以外の装置についても適用可能である。
【0093】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。