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特許6572326セキュリティ検査機器及び放射線検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572326
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】セキュリティ検査機器及び放射線検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/20 20180101AFI20190826BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20190826BHJP
   G01N 23/20008 20180101ALI20190826BHJP
【FI】
   G01N23/20 380
   G01N23/04 330
   G01N23/20008
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-567657(P2017-567657)
(86)(22)【出願日】2016年8月8日
(65)【公表番号】特表2018-523117(P2018-523117A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】CN2016093889
(87)【国際公開番号】WO2017092395
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2018年2月8日
(31)【優先権主張番号】201510885398.6
(32)【優先日】2015年12月4日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503414751
【氏名又は名称】同方威視技術股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲錦▼
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 斌
(72)【発明者】
【氏名】▲譚▼ ▲賢▼▲順▼
(72)【発明者】
【氏名】王 虹
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2001/0016028(US,A1)
【文献】 特開昭63−025537(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/014225(WO,A1)
【文献】 米国特許第05764683(US,A)
【文献】 特開平02−218990(JP,A)
【文献】 特開2008−111837(JP,A)
【文献】 特表2012−513023(JP,A)
【文献】 特表2010−507811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ検査機器であって、
放射線放出装置と、
前方散乱検出器を含む放射線検出器であって、該前方散乱検出器及び前記放射線放出装置は、検出すべき物体の両側に位置する、放射線検出器と、
を含み、
前記放射線検出器は、
前記放射線放出装置と前記検出すべき物体との間に位置する後方散乱検出器又は
透過検出器であって、該透過検出器及び前記放射線放出装置は前記検出すべき物体の両側に位置する、透過検出器
のうちの少なくとも一方をさらに含み、
前記放射線放出装置は、
前記放射線放出装置の中心に位置する線源と、
前記線源及び前記後方散乱検出器の間に位置する空間モジュレータと、
を含み、
前記空間モジュレータは、
前記線源によって放出される放射線が所定の方向に且つ所定の角度で放出されるようにする固定シールドプレートと、
前記検出すべき物体及び前記固定シールドプレートの間に位置し、2つ以上のスロットと2つ以上の貫通孔とを含む回転シールドとを含む、セキュリティ検査機器。
【請求項2】
前記放射線放出装置は放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを放出するために用いられる、請求項1に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項3】
前記透過検出器は複数の検出器モジュールを含み、各前記検出器モジュールの配置の角度は、前記透過検出器における各前記検出器モジュールの位置に応じて放射線入射方向に適合されている、請求項1に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項4】
放射線入射方向に適合された前記検出器モジュールの配置の角度は前記放射線入射方向に対して垂直な前記検出器モジュールの検出面を含む、請求項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項5】
前記透過検出器は、平行に配置された所定数の検出器モジュールで構成される複数の検出器ユニットを含み、
前記透過検出器における各前記検出器モジュールの位置に応じて放射線入射方向に適合された各前記検出器モジュールの配置の角度は、前記透過検出器における各前記検出器ユニットの位置に応じることを含み、前記検出器ユニットの検出面の方向は前記放射線入射方向に適合されることを含む、請求項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項6】
前記透過検出器は前記検出すべき物体の反対側の方に突出した円弧状又はフラットプレート状である、請求項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項7】
前記放射線放出装置及び前記放射線検出器を保持及び移動するための輸送設備をさらに含む、請求項1に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項8】
カンチレバーをさらに含み、
前記カンチレバーの一端は前記透過検出器及び前記前方散乱検出器に接続され、前記カンチレバーの他端は前記輸送設備に接続され、前記輸送設備は内部に前記放射線放出装置を保持し、前記輸送設備の側面は前記後方散乱検出器に接続されている、請求項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項9】
前記カンチレバーは、前記カンチレバーの折り畳み及び回転を行うために折り畳み機構及び回転機構を含む、請求項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項10】
前記前方散乱検出器、前記後方散乱検出器及び前記透過検出器から検出信号を受信するとともに、前記検出すべき物体を分析するように構成されたプロセッサをさらに含む、請求項1に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項11】
前記カンチレバーの折り畳み及び回転を制御するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項12】
放射線放出装置を用いることによって、放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを検出すべき物体に放出するステップと、
放射線検出器により検出データを取得するステップであって、
前方散乱検出器により前記検出すべき物体の前方散乱データを取得することと、
透過検出器により前記検出すべき物体の透過データを取得すること又は後方散乱検出器により前記検出すべき物体の後方散乱データを取得することのうちの少なくとも一方と、
を含む、ステップと、
前記前方散乱データと、前記後方散乱データ又は前記透過データのうちの少なくとも一方とに基づいて検出情報を取得するステップと、
を含み、
前記放射線放出装置は、
前記放射線放出装置の中心に位置する線源と、
前記線源及び前記後方散乱検出器の間に位置する空間モジュレータと、
を含み、
前記空間モジュレータは、
前記線源によって放出される放射線が所定の方向に且つ所定の角度で放出されるようにする固定シールドプレートと、
前記検出すべき物体及び前記固定シールドプレートの間に位置し、2つ以上のスロットと2つ以上の貫通孔とを含む回転シールドとを含む、放射線検出方法。
【請求項13】
前記放射線放出装置を用いることによって、放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを検出すべき物体に放出するステップは、
放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを交互に放出する放射線放出装置を用いることにより前記検出すべき物体に放射線を放出することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記検出情報に従って検出画像を表示するステップ又は前記検出情報に従って前記検出すべき物体における禁制品をマーキングするか又は警告するステップのうちの少なくとも一方をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はセキュリティ検査の分野に関し、具体的にはセキュリティ検査機器及び放射線検出方法(radiation detection method)に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展に伴って、現在セキュリティ検査機器は空港、税関、地下鉄等で幅広く用いられている。高速道路のセキュリティ検査のために、X線透過装置が物品を走査するのにしばしば利用されている。X線透過装置では、X線源から放出されるX線がコリメータを通じて走査セクタを形成し、検出物品に照射されたX線を検出器が受信し、検出された物品の内部情報が処理を通じて得られる。この種のセキュリティ検査モードは幅広く用いられており、構造が簡素で且つ操作が容易であるが、撮像のためにX線透過原理を用いることにより、低密度の物質、例えば爆発物や薬物等を検出するのが困難である。
【0003】
しかしながら、X線後方散乱法(X-ray backscattering technique)は低密度の物質を良好に検出することができる。既存のX線後方散乱検査機器は、ペンシルビームを形成するために線源の対象の中心の周りを回転するフライホイールを有し、検出された物体にペンシルビームがかかって(falls over)フライングスポットを形成する。後方散乱検出器は任意の時に後方散乱されたX線を回収し、処理の後に物質の情報を取得し、継続的に走査した後に検査した物品全体の内部情報の取り扱い及び取得ができ、とりわけ、爆発物や薬物等の原子数の小さい物質の情報を明らかにすることができる。この技術では、装置の撮像原理は撮像のために後方散乱されたX線を吸収することであるため、秘密の物質の後ろに隠された爆発物又は薬物を効果的に検査することができない。爆発物がスチール板の後ろに置かれている場合、後方散乱されたX線はスチール板によってブロックされ、後方散乱検出器に到達できない。金属製の武器を効果的に表示することもできない。さらに、片側(one-sided)の後方散乱撮像の結果は検査された物品の反対側の内部情報を観察するのに不十分であり、検査された物品の両側を効果的に観察するには、2度の検査が必要になる。これは比較的煩雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、より信頼性が高いセキュリィティ検査機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、セキュリティ検査機器が提案される。セキュリティ検査機器は、放射線放出装置(ray emitter)と、前方散乱検出器を含む放射線検出器であって、該前方散乱検出器は、放射線抄出装置に対して、検出すべき物体の反対側に位置する、放射線検出器と、を含み、前記放射線検出器は、前記放射線放出装置と前記検出すべき物体との間に位置する後方散乱検出器又は前記放射線放出装置に対して、前記検出すべき物体の反対側に位置する透過検出器のうちの少なくとも一方をさらに含む。
【0006】
あるいは、前記放射線放出装置は放射線のファンビーム(fan beam of rays)及び放射線のフライングスポットビーム(flying spot beam of rays)を放出するために用いられる。
【0007】
あるいは、前記放射線放出装置は、前記放射線放出装置の中心に位置する線源と、前記線源及び前記後方散乱検出器の間に位置する空間モジュレータ(space modulator)と、を含み、前記空間モジュレータは、固定シールドプレートと、前記検出すべき物体及び該固定シールドプレートの間にある回転シールドとを含む。
【0008】
あるいは、前記回転シールドは2つ以上のスロットと2つ以上の貫通孔とを含む。
【0009】
あるいは、前記透過検出器は複数の検出器モジュールを含み、各前記検出器モジュールの配置の角度は、前記透過検出器における各前記検出器モジュールの位置に応じて放射線入射方向に適合されている。
【0010】
あるいは、放射線入射方向に適合された前記検出器モジュールの配置の角度は前記放射線入射方向に対して垂直な前記検出器モジュールの検出面を含む。
【0011】
あるいは、前記透過検出器は、平行に配置された所定数の検出器モジュールで構成される複数の検出器ユニットを含み、前記透過検出器における各前記検出器モジュールの異なる位置に応じて放射線入射方向に適合された各前記検出器モジュールの配置の角度は、前記透過検出器における各前記検出器ユニットの位置に応じることを含み、前記検出器ユニットの検出面の方向は前記放射線入射方向に適合される。
【0012】
あるいは、前記透過検出器は前記検出すべき物体の反対側の方に突出した円弧状又はフラットプレート状である。
【0013】
あるいは、セキュリティ検査機器は前記放射線放出装置及び前記放射線検出器を保持及び移動するための輸送設備(transportation facility)をさらに含む。
【0014】
あるいは、セキュリティ検査機器はカンチレバーをさらに含み、前記カンチレバーの一端は前記透過検出器及び前記前方散乱検出器に接続され、前記カンチレバーの他端は前記輸送設備に接続され、前記輸送設備は内部に前記放射線放出装置を保持し、前記輸送設備の側面は前記後方散乱検出器に接続されている。
【0015】
あるいは、前記カンチレバーは、前記カンチレバーの折り畳み及び回転を行うために折り畳み機構及び回転機構を含む。
【0016】
あるいは、セキュリティ検査機器は前記前方散乱検出器、前記後方散乱検出器及び前記透過検出器から検出信号を受信するとともに、前記検出すべき物体を分析するように構成されたプロセッサをさらに含む。
【0017】
あるいは、セキュリティ検査機器は前記カンチレバーの折り畳み及び回転を制御するように構成されたコントローラをさらに含む。
【0018】
そのようなセキュリティ検査機器は、検出の死角を低減するために後方散乱検出器と共に用いることができる前方散乱検出器を有するため、線源の反対側の内部情報の検出を最適化することができる。前方散乱検出器は透過検出器と共に用いることができるため、高密度の物質及び低密度の物質を同時に検出することを実現できる。前方散乱検出器は後方散乱検出器及び透過検出器と共に用いることができるため、高密度の物質及び低密度の物質を同時に検出することを実現しつつ、検出の死角が低減され、検出すべき物体の検出効果をさらに最適化でき、検出の精度を改善できる。
【0019】
本開示の別の態様によれば、放射線検出方法が提案される。放射線検出方法は、放射線放出装置を用いることによって、放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを検出すべき物体に放出するステップと、放射線検出器により検出データを取得するステップであって、前方散乱検出器により前記検出すべき物体の前方散乱データを取得することと、透過検出器により前記検出すべき物体の透過データを取得すること又は後方散乱検出器により前記検出すべき物体の後方散乱データを取得することのうちの少なくとも一方と、を含む、ステップと、前記前方散乱データと、前記後方散乱データ又は前記透過データのうちの少なくとも一方とに基づいて検出情報を取得するステップと、を含む。
【0020】
あるいは、前記放射線放出装置を用いることによって、放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを検出すべき物体に放出するステップは、放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを交互に放出する放射線放出装置を用いることにより前記検出すべき物体に放射線を放出することを含む。
【0021】
あるいは、放射線検出方法は、前記検出情報に従って検出画像を表示するステップをさらに含む。
【0022】
あるいは、放射線検出方法は、前記検出情報に従って前記検出すべき物体における禁制品をマーキングするか又は警告するステップをさらに含む。
【0023】
このように、前方散乱データと共に後方散乱データが取得され、検出の死角を低減するのに用いることができる。そのため、線源の反対側の内部情報の検出を最適化することができる。前方散乱データと共に透過データが取得されるため、高密度の物質及び低密度の物質を同時に検出することを実現することができる。前方散乱データ、後方散乱データ及び透過データを包括的に考慮に入れることができるため、高密度の物質及び低密度の物質を同時に検出することを実現しつつ、検出の死角を低減することができる。このように、検出すべき物体の検出効果が最適化され、検出の精度が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本願で説明する添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために用いられ、本願の一部を構成する。本開示の例示の実施形態及びその説明は本開示を解説するために用いるに過ぎず、本開示の不適切な限定として見なすべきでない。添付の図面は以下のものを示す。
図1図1は、本開示に係るセキュリティ検査機器の一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、本開示に係るセキュリティ検査機器内の放射線放出装置の一実施形態を示す概略図である。
図3A図3Aは、本開示に係る透過検出器の一実施形態を示す概略図である。
図3B図3Bは、本開示に係る透過検出器の別の実施形態を示す概略図である。
図3C図3Cは、本開示に係る透過検出器のさらなる実施形態を示す概略図である。
図3D図3Dは、本開示に係る透過検出器の再度さらなる実施形態を示す概略図である。
図4図4は、本開示に係るセキュリティ検査機器の別の実施形態を示す概略図である。
図5図5は、本開示に係るセキュリティ検査機器のさらなる実施形態を示す概略図である。
図6図6は、本開示に係る放射線検出方法の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面及び実施形態を通じて、本開示の技術的な解決手段を以下でさらに詳細に説明する。
【0026】
図1は、本開示に係るセキュリティ検査機器の一実施形態を示す概略図である。図1に示すように、放射線放出装置1は検出すべき物体5に放射線を放出する。セキュリティ検査機器の放射線検出器は、放射線放出装置1に対して、検出すべき物体5の反対側に位置するとともに前方散乱データを取得可能な前方散乱検出器4を含む。放射線検出器はさらに、放射線放出装置に対して、検出すべき物体の反対側に位置するとともに透過データを取得可能な透過検出器4をさらに含み得る。放射線検出器は、検出すべき物体5と、放射線放出装置1との間に位置するとともに、後方散乱データを取得可能な後方散乱検出器2をさらに含み得る。
【0027】
そのようなセキュリティ検査機器は前方散乱検出器を有する。前方散乱検出器は、後方散乱検出器と組み合わせて用いて検出の死角を低減すことができる。そのため、線源の反対側の内部情報の検出を最適化できる。前方散乱検出器は、透過検出器と組み合わせて用いることができるため、高密度の物質及び低密度の物質の同時検出を実現することができる。前方散乱検出器は、後方散乱検出器及び透過検出器と組み合わせて用いることができるため、高密度の物質及び低密度の物質の同時検出を実現しつつ検出の死角を低減でき、検出すべき物体の検出効果をさらに最適化でき、検出の精度を改善できる。
【0028】
一実施形態では、放射線放出装置は放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを放出することができる。放射線のファンビームは、透過検出器が透過データを得ることができるように検出すべき物体を通過して透過検出器に至る。放射線のフライングスポットビームは、検出すべき物体により散乱された後で前方散乱検出器及び後方散乱検出器に到達するため、前方散乱データ及び後方散乱データが取得される。
【0029】
そのようなセキュリティ検査機器は2種類の放射線のビームを放出でき、それらのビームが透過検出器及び散乱検出器のそれぞれに提供されて透過データ及び散乱データが取得される。そのため、検出速度が高まり、検出効果が最適化される。
【0030】
図2は、本開示に係るセキュリティ検査装置における放射線放出装置を示す概略図である。線源11は、検出すべき物体の方に放射線を放出するために放射線放出装置の中心に位置している。放射線放出装置は、線源と後方散乱検出器との間に位置するとともに、線源11により放出される放射線を調節することにより放射線放出装置によって放出される放射線を制御することができる空間モジュレータをさらに含む。一実施形態では、空間モジュレータは固定シールドプレート12及び回転シールド13を含む。固定シールドプレート12は、線源11によって放出される放射線が所定の方向に且つ所定の角度で放出されるようにする。所定の角度は120°であり得る。回転シールドは検出すべき物体と固定シールドプレートとの間に位置している。回転シールドはスロット15及び貫通孔14を含み、回転シールドは所定の速度で回転する。放射線が貫通孔14を通過すると、放射線のフライングスポットビームが形成される。放射線がスロット15を通過すると、放射線のファンビームが形成される。放射線放出装置から放出される放射線は時間と共に変化する。一実施形態では、回転シールドは2つ以上のスロット及び2つ以上の貫通孔を含む。スロット及び貫通孔の数は必要に応じて設定することができる。
【0031】
そのようなセキュリティ検査機器を用いることにより、放射線放出装置は透過検出及び散乱検出のそれぞれのために放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを周期的に形成することができる。即ち、2種類の放射線のビームの放出を実現するために1つの放射線放出装置が用いられ得る。これによりセキュリティ検査機器の体積が軽減され、透過データ及び散乱データを同時取得するための条件ができる。
【0032】
一実施形態では、本開示に係る透過検出器は複数の検出器モジュールを含む。透過検出器における各検出器モジュールの異なる位置に応じて、各検出器モジュールの配置の角度が放射線入射方向に適合される。一実施形態では、検出器モジュールの検出面は放射線入射方向に対して垂直になるよう調節される。そのような透過検出器は、順番且つ平行に配置されていた以前の検出器モジュールとは異なる。そして、異なる検出器モジュールを異なる角度の配置で設置することによって、検出すべき物体を通過する放射線を検出の死角を低減できるように良好に受け取ることができる。
【0033】
一実施形態における透過検出器の概略図を図3Aに示す。放射線6は検出すべき物体を通過して透過検出器3に到達する。フラットプレート型の透過検出器3は複数の検出器モジュール31を含み、検出器モジュール31はそれらの高さ及び位置に応じて異なる角度で傾斜されている。そのような透過検出器はフラットプレート型であり、全体として設置が便利である。そして、検出器モジュールをユニットとして調節することで透過検出器の角度を内部的に調節できるため、検出の死角を可能な限り低減することができる。
【0034】
一実施形態における透過検出器の概略図を図3Bに示す。透過検出器3は、平行に配置されたいつかの検出器モジュール31で構成される複数の検出器ユニット32を含む。各検出器ユニット32における検出器モジュール31は同じ角度で傾斜されているが、検出器ユニットは、検出器ユニットの異なる位置及び高さに応じて異なる角度で傾斜されている。そのような透過検出器は全体として設置に便利なフラットプレート型であり、検出器ユニットをユニットとして調節することにより透過検出器の角度が内部的に調節されるため、透過検出器の設置及び調節が容易になる。
【0035】
一実施形態における透過検出器の概略図を図3Cに示す。透過検出器3は全体として円弧状であり、検出すべき物体の反対側の方に突出し、複数の検出器モジュール31を内部に含む。そのような透過検出器は、透過検出器の表面を通過して検出器モジュールに至る放射線の距離の差を低減できるため、検出の精度を改善することができる。
【0036】
一実施形態における透過検出器の概略図を図3Dに示す。透過検出器3は全体として円弧状であり、検出すべき物体の反対側の方に突出し、平行に配置されるいくつかの検出器モジュール31で構成される複数の検出器ユニット32を内部に含む。各検出器ユニット32における検出器モジュール31は同じ角度で傾斜されているが、検出器ユニットは検出器ユニットの異なる位置及び高さに応じて異なる角度で傾斜されている。そのような透過検出器は、透過検出器を通過して検出器モジュールに至る放射線の距離差を低減できるため、検出の精度を改善することができ、検出器ユニットでユニットとして内部的に角度を調節することにより透過検出器の設置及び調節が容易になる。
【0037】
図4は、本開示のセキュリティ検査機器の別の実施形態を示す概略図である。前方散乱検出器2及び放射線放出装置が輸送設備7に設置又は配置されている。そのようなセキュリティ検査機器は設置面積が小さく、搬送が容易で、より柔軟であり、緊急事態に対処するために柔軟に予定を組むことができる(scheduled)。
【0038】
図5は、本開示のセキュリティ検査機器のさらなる実施形態を示す概略図である。セキュリティ検査機器はカンチレバー8をさらに含む。カンチレバー8の一端は透過検出器及び前方散乱検出器に接続され、カンチレバーの他端は輸送設備に接続されている。輸送設備は内部に放射線放出装置を保持し、検出すべき物体に対向する輸送設備の側面は後方散乱検出器を有する。
【0039】
そのようなセキュリティ検査機器は輸送設備によって完全に保持されるため、より便利に搬送でき、柔軟に予定を組むことができる。大きく且つ動かすのが困難な検出すべき物体の場合、輸送設備を動かすことで物体を検出することができるため、セキュリティ検査機器の体積を軽減することができるとともに該装置の利用シナリオを広げることができる。
【0040】
一実施形態では、カンチレバー8はカンチレバーの折り畳み及び回転を行うために折り畳み機構及び回転機構を含む。そのような構造により、セキュリティ検査機器は、一方で、搬送の利便性及び第2の展開のために、装置を動かす間にカンチレバーを折り畳み、車両駆動と同じ方向に回転させることができる。他方で、セキュリティ検査機器は利用シナリオに従ってカンチレバーの伸縮自在の長さ(telescopic length)を調節できる。これは、セキュリティ検査機器の利用シナリオを広げる。そのようなセキュリティ検査機器は重要な大型、中型及び小型のセキュリティ現場並びに一時的な現場に展開するのに適しており、検出すべき多数の物体を長距離で連続的に走査でき、処理能力が高く且つ検出速度が速く、緊急事態に対処するために柔軟に予定を組むことができ、金属製の武器、爆発物、薬物を含む様々な禁制品を同時に検出することができる。
【0041】
一実施形態において、セキュリティ検査機器はカンチレバーの折り畳み及び回転を制御するように構成されたコントローラを含み得る。コントローラは輸送設備内に位置することができ、有線信号又は無線信号を通じてカンチレバーの回転及び折り畳みを制御することができる。そのようなセキュリティ検査機器はコントローラを通じてカンチレバーの回転及び折り畳みを制御することができ、操作をより便利に且つ分かり易く行うことができる。
【0042】
一実施形態において、セキュリティ検査機器は、前方散乱検出器、後方散乱検出器及び透過検出器からの検出データを処理するためのプロセッサをさらに含み得る。プロセッサは検出データから検出画像を生成しオペレータに該画像を示すことができる。プロセッサは検出結果に従って危険な物質を特定し、対応するマーキング又は警告を行うこともできる。一実施形態では、プロセッサはコンピュータであり得る。プロセッサは輸送設備に設置してもよく、有線信号又は無線信号を通じて透過検出器の検出データを取得できる。そのようなセキュリティ検査機器は検出データをリアルタイムで処理することができるプロセッサを有するため、危険な禁止物品がより素早く検出され、安全が改善される。
【0043】
本開示の一実施形態に係る放射線検出方法のフローチャートを図6に示す。該方法は、
放射線放出装置を用いることにより、放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを検出すべき物体に放出するステップ601と、
X線検出器により検出データを取得するステップ602であって、検出データは前方散乱データと、後方散乱データ又は透過データの少なくとも一方とを含む、ステップ602と、
前方散乱データと、後方散乱データ又は透過データのうちの少なくとも一方とを分析することにより、検出情報を取得するステップ603と、
を含む。
【0044】
このように、前方散乱データと共に後方散乱データが取得され、検出の死角を低減するのに用いることができる。そのため、線源の反対側の内部情報の検出を最適化することができる。前方散乱データと共に透過データが取得されるため、高密度の物質及び低密度の物質を同時に検出することを実現することができる。前方散乱データ、後方散乱データ及び透過データを包括的に考慮に入れることができるため、高密度の物質及び低密度の物質を同時に検出することを実現しつつ、検出の死角を低減することができる。このように、検出すべき物体の検出効果が最適化され、検出の精度が改善される。
【0045】
一実施形態では、放射線のファンビーム及び放射線のフライングスポットビームを交互に放出する放射線放出装置を用いることによって、検出すべき物体に放射線が放出される。そのような方法では、一方で、1つの放射線放出装置を用いることによって2種類の放射線のビームの放出を実現できるため、セキュリティ検査機器の体積を軽減することができ、他方で、透過データ及び散乱データを同時に取得することができるため、検出速度を高めることができるとともに、検出効果を最適化することができる。
【0046】
一実施形態では、検出情報に従って検出画像を表示することができ、検出情報に従って検出すべき物体における禁制品をマーキングすることにより又は警告することによりオペレータが警告され得る。検出の間、オペレータは検出画像を観察し、遠隔的に操作及び命令することができる。そのような方法では、検出結果をリアルタイムに処理して適時に表示することができる。これは、オペレータの使用に便利であり、安全を改善することができる。
【0047】
最後に、上記の実施形態は本開示の技術的な解決手段を限定するためのものではなく、それらを説明するために用いたにすぎない。好ましい実施形態を参照しながら本開示を詳細に説明したが、本開示の技術的な解決手段の精神から逸脱することなく、本開示の実施形態に従って技術的な解決手段の一部を変更又は同等な置換を行うことが依然可能であり、これらの変更及び置換の全ては、本開示において保護を求める技術的な解決手段の範囲内にあることを当業者は理解すべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6