(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子の受光状態に基づいて、前記上金型の影が前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大しているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のプレスブレーキ用光学式安全装置。
プレスブレーキにおける上部テーブルの長さ方向一方側に設けられかつ上金型の直下を通り前記上部テーブルの長さ方向他方側に向かって監視光を投光する投光器と、前記上部テーブルの長さ方向他方側に設けられかつ前記監視光を受光する受光器とを用い、前記受光器における複数の受光素子の受光状態に基づいて、前記上金型と下金型の間における異物の有無を監視する方法であって、
前記プレスブレーキにおける下部テーブルに対する前記上部テーブルの相対的な下降動作を開始する前に、前記受光器側に投影される前記監視光が屈折することにより、前記上金型の影が、前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大しているか否かを判定し、
前記上金型の影が前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大していると判定された場合に、その前記受光素子を無効化することを特徴とする光学式監視方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、夕方又は冬場等に工場内の環境温度が下がって、工場内の環境温度と上金型の部材温度との間に温度差が発生すると、上金型に遠い側の空気は冷たいものの、上金型に近い側の空気は上金型によって暖められる。そのため、
図1に示すように、上金型Pの周辺には、暖かい空気の領域HAと冷たい空気の領域CAが形成され、温度勾配のある空気の層が発生する。すると、監視光Bが温度勾配のある空気の層を通過する際に、空気の屈折率の違いにより冷たい空気の領域CA側に曲げられる。その結果、
図2(a)(b)に示すように、受光器RX側に投影される監視光Bによる上金型Pの影Sが拡大する。
【0006】
なお、
図1は、監視光Bが冷たい空気の領域CA側に曲げられる様子を示す模式図である。
図2(a)は、監視光Bが曲げられる前に、上金型Pの影Sが上金型Pの輪郭と同じ大きさになっている様子を示す模式図である。
図2(b)は、監視光Bが曲げられた後に、上金型Pの影Sが拡大した様子を示す模式図である。図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「U」は、上方向、「D」は、下方向をそれぞれ指している。
【0007】
監視光Bの曲がりによる上金型Pの影Sの拡大量は、監視光Bの光路長又は上金型Pの長さが短いと微小であるが、監視光Bの光路長及び上金型Pの長さが長くなると大きくなる。そのため、監視光Bの光路長の長いプレスブレーキ、換言すれば、全長の長いプレスブレーキに長い上金型Pを取付けた状態で曲げ加工を行う場合に、上金型Pの周辺に温度勾配のある空気の層が発生すると、上金型Pの影Sが受光素子RXaまで拡大することがある。このような場合には、上金型Pと下金型の間に異物が無いにも拘わらず、上金型Pの影Sによってプレスブレーキの制御装置が上金型Pと下金型の間における異物有りと誤検出して、上部テーブルの下降動作が停止してしまう。つまり、プレスブレーキが光学式安全装置を装備すると、プレスブレーキの加工効率(生産性)が低下するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成からなるプレスブレーキ用光学式安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様に係るプレスブレーキ用光学式安全装置は、プレスブレーキ用光学式安全装置は、プレスブレーキにおける上部テーブルの長さ方向一方側に設けられ、上金型の直下を通り前記上部テーブルの長さ方向他方側に向かって監視光を投光する投光器と、前記上部テーブルの長さ方向他方側に設けられ、前記監視光の受光量に応じた電気信号(電圧信号)を出力する複数の受光素子を有し、前記監視光を受光する受光器と、
前記プレスブレーキにおける下部テーブルに対する前記上部テーブルの相対的な下降動作を開始する前に、前記受光器側に投影される前記監視光
が屈折することにより、前記上金型の影が、前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大している
か否かを判定する判定部と、前記上金型の影が前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大していると判定された場合に、その前記受光素子を無効化する無効化部と、を備えたことであ
る。なお、前記上部テーブルは、前記プレスブレーキにおける下部テーブルに対して相対的に昇降可能である。
【0010】
本発明の実施態様に係るプレスブレーキ用光学式安全装置では、
前記判定部は、前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子の受光状態(受光結果)に基づいて、前記上金型の影が前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大しているか否かを判定してもよい。又は、前記上金型の影の拡大量を算出する算出部を備え、前記判定部は、算出された前記上金型の影の拡大量に基づいて、前記上金型の影が前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大しているか否かを判定しもよい。
【0011】
また、本発明の実施態様に係るプレスブレーキ用光学式安全装置では、前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子を無効化した状態に切り替えるための切替スイッチを備え、前記無効化部は、前記切替スイッチが切替操作された場合に、前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子を無効化してもよい。
【0012】
本発明の実施態様に係るプレスブレーキ用光学式安全装置によると、前記無効化部は、前記上金型の影が前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大している場合に、その前記受光素子を無効化する。これにより、前記上金型と前記下金型の間に異物が無いにも拘わらず、前記上金型の影によって前記プレスブレーキの制御装置が前記上金型と前記下金型の間における異物有りと誤検出することを十分に防止できる。
【0013】
本発明の実施態様に係るプレスブレーキは、本発明の一態様に係るプレスブレーキ用光学式安全装置を備えたことである。
【0014】
本発明の実施態様に係るプレスブレーキによると、本発明の一態様に係るプレスブレーキ用光学式安全装置による作用と同様の作用を奏する。
【0015】
本発明の実施態様に係る光学式監視方法は、プレスブレーキにおける上部テーブルの長さ方向一方側に設けられかつ上金型の直下を通り前記上部テーブルの長さ方向他方側に向かって監視光を投光する投光器と、前記上部テーブルの長さ方向他方側に設けられかつ前記監視光を受光する受光器とを用い、前記受光器における複数の受光素子の受光状態(受光結果)に基づいて、前記上金型と下金型の間における異物の有無を監視(検出)する方法であって、前記プレスブレーキにおける下部テーブルに対する前記上部テーブルの相対的な下降動作を開始する前に、前記受光器側に投影される前記監視光
が屈折することにより、前記上金型の影が、前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大しているか否かを判定し、前記上金型の影が前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大していると判定された場合に、その前記受光素子を無効化することである。
【0016】
本発明の実施態様に係る光学式監視方法によると、前記上金型の影が前記上金型の最近傍に位置する前記受光素子まで拡大している場合に、その前記受光素子を無効化する。これにより、前記上金型と前記下金型の間に異物が無いにも拘わらず、前記上金型の影によって前記プレスブレーキの制御装置が前記上金型と前記下金型の間における異物有りと誤検出することを十分に防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、全長の長い前記プレスブレーキに長い前記上金型を取付けた状態で曲げ加工を行う場合にも、前記上金型の影によって前記上部テーブルの相対的な下降動作が停止することを十分に防止できる。よって、本発明によれば、前記プレスブレーキが前記光学式安全装置を装備して、曲げ加工の作業の安全性を十分に確保した上で、前記プレスブレーキの加工効率(生産性)を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態及び実施形態の変形例について、
図3から
図8を参照して順次説明する。
【0020】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。「異物」とは、例えば、作業者の指及び工具等、ワーク以外の物体のことをいう。「長さ方向」とは、プレスブレーキの長さ方向のことをいい、本発明の実施形態においては、左右方向のことをいう。「長さ方向一方側」とは、プレスブレーキの長さ方向の一方側のことをいい、本発明の実施形態においては、右側のことをいう。「長さ方向他方側」とは、プレスブレーキの長さ方向の他方側のことをいい、本発明の実施形態においては、左側のことをいう。「奥行方向」とは、プレスブレーキの奥行方向のことをいい、本発明の実施形態においては、前後方向のことをいう。図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「U」は、上方向、「D」は、下方向をそれぞれ指している。
【0021】
(本発明の実施形態)
図3及び
図4に示すように、本発明の実施形態に係るプレスブレーキ10は、上金型12と下金型14の協働(係合)により板状のワーク(板金)Wの被加工部に対して曲げ加工を行う加工機である。また、プレスブレーキ10は、本体フレーム16を備えており、本体フレーム16は、長さ方向(左右方向)に離隔対向した一対のサイドプレート18と、一対のサイドプレート18を連結する複数の連結部材20とを有している。
【0022】
本体フレーム16の下部には、長さ方向に延びた下部テーブル22が設けられており、下部テーブル22、その上側に、下金型14を下金型ホルダ24を介して着脱可能に保持する。また、本体フレーム16の上部には、長さ方向に延びた上部テーブル26が昇降可能(上下方向へ移動可能)に設けられており、上部テーブル26は、下部テーブル22に上下に対向している。上部テーブル26は、その下側に、上金型12を上金型ホルダ28を介して着脱可能に保持する。更に、各サイドプレート18の上部には、上部テーブル26を昇降させる昇降アクチュエータとして油圧式の昇降シリンダ30が設けられている。
【0023】
なお、上部テーブル26を昇降可能に構成する代わりに、下部テーブル22を昇降可能に構成してもよい。昇降アクチュエータとして油圧式の昇降シリンダ30を用いる代わりに、昇降サーボモータ(図示省略)を用いてもよい。
【0024】
プレスブレーキ10は、上部テーブル26の高さ位置、換言すれば、上金型12の先端(下端)の高さ位置を検出するリニアエンコーダ32を備えている。リニアエンコーダ32は、片方のサイドプレート18に設けられかつ上下方向に延びたリニアスケール34と、上部テーブル26の適宜位置に設けられかつリニアスケール34の目盛を読み取る読取ヘッド(図示省略)とを有している。
【0025】
下部テーブル22の正面側(前方)には、作業者Mの足踏み操作によって所定の起動信号を出力する起動スイッチとしてのフットスイッチ36が設置されている。所定の起動信号とは、一対の昇降シリンダ30の駆動による上部テーブル26の下降動作を開始するための信号のことである。また、下部テーブル22の背面側(後方)には、ワークWを下金型14に対して奥行方向(前後方向)に位置決めするためのバックゲージ38が設けられている。バックゲージ38は、ワークWの端面を突き当て可能な突き当て部材40を有しており、突き当て部材40は、奥行方向へ位置調節可能である。
【0026】
プレスブレーキ10は、上金型12と下金型14の間へのワークW以外の異物の進入を監視する光学式安全装置42を備えている。そして、光学式安全装置(プレスブレーキ用光学式安全装置)42の具体的な構成は、次の通りである。
【0027】
図3及び
図4に示すように、上部テーブル26の長さ方向一方側(右側)には、上金型12の直下及びその前側近傍を通り上部テーブル26の長さ方向他方側(左方向)に向かって監視光として6本のレーザ光Bを投光する投光器44が第1支持機構46を介して設けられている。投光器44は、レーザ光Bを発光する発光素子として1つのレーザダイオード48と、レーザダイオード48の出射側に設けられかつ6つの開口部(図示省略)が形成されたマスク50とを有している。第1支持機構46は、例えば、前述の特許文献2に示す公知の構成からなり、上部テーブル26に対する投光器44の相対的な高さ位置は、上金型12の高さによって調節可能である。
【0028】
図3、
図4、及び
図5(a)に示すように、上部テーブル26の長さ方向他方側(左側)には、6本のレーザ光Bを受光する受光器52が第2支持機構54を介して設けられている。受光器52は、レーザ光Bの受光量に応じた電気信号(電圧信号)を出力する6つの受光素子としての6つのフォトダイオード56(56
1〜56
6)を有しており、各フォトダイオード56(56
1〜56
6)は、マスク50の対応する開口部に対向している。前側に位置する3つのフォトダイオード56
1〜56
3は、上金型12の直下の前側近傍を通り上部テーブル26の長さ方向他方側に向かって投光された3本のレーザ光Bを受光する。後側に位置する3つのフォトダイオード56
4〜56
6は、上金型12の直下を通り上部テーブル26の長さ方向他方側に向かって投光された3本のレーザ光Bを受光する。フォトダイオード56
4は、上金型12の最近傍に位置している。第2支持機構54は、例えば、前述の特許文献2に示す公知の構成からなり、上部テーブル26に対する受光器52の相対的な高さ位置は、上金型12の高さによって調節可能である。
【0029】
なお、1つのレーザダイオード48とマスク50によって生成するレーザ光Bの本数を適宜に変更してもよい。1つのレーザダイオード48とマスク50によって6本のレーザ光Bを生成する代わりに、6つ(レーザ光Bと同数)のレーザダイオード48によって6本のレーザ光Bを生成してもよい。マスク50を省略して、1本のレーザ光Bを6つのフォトダイオード56で受光してもよい。また、監視光は平行光であればよく、レーザ光Bに代えて、LED光を用いてもよい。この場合には、発光素子としてレーザダイオード48の代わりに発光ダイオード(図示省略)を用いる。
【0030】
図6に示すように、プレスブレーキ10は、加工プログラム及び監視プログラム等に基づいて、一対の昇降シリンダ30、バックゲージ38、及び光学式安全装置42等を制御する制御装置58を備えている。また、制御装置58は、1つ又は複数のコンピュータによって構成されており、制御装置58には、リニアエンコーダ32及びフットスイッチ36等が接続されている。
【0031】
制御装置58は、加工プログラム及び監視プログラム等を記憶するメモリ(図示省略)と、加工プログラム及び監視プログラム等を解釈して実行するCPU(図示省略)とを有している。制御装置58は、金型情報、ワーク情報、及び製品情報等を入力する入力部60と、金型情報、ワーク情報、及び製品情報等を常時する表示部62とを備えている。金型情報には、上金型12の形状、各寸法、及び受光器52から上金型12の端面までの距離等、並びに下金型14の形状及び各寸法等を表す情報が含まれている。ワーク情報には、ワークWの材質、形状、及び各寸法等を表す情報が含まれており、製品情報には、製品(図示省略)の形状及び各寸法等を表す情報が含まれている。
【0032】
図5(a)及び
図6に示すように、入力部60は、プレスブレーキ10のプログラム運転を開始するためのスタートボタン64を有している。また、入力部60は、前側に位置する3つのフォトダイオード56
1〜56
3を無効化した状態に切り替えるための第1切替スイッチ66と、上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4を無効化した状態に切り替えるための第2切替スイッチ68とを有している。
【0033】
制御装置58は、判定部70としての機能、無効化部72としての機能、検出部74としての機能、制御部76としての機能を有している。そして、判定部70、無効化部72、検出部74、及び制御部76の具体的な内容は、次の通りである。
【0034】
図5(a)(b)及び
図6に示すように、判定部70は、上部テーブル26の下降動作を開始する前(直前)に、上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4の受光状態(受光結果)に基づいて、受光器52側に投影されるレーザ光Bよる上金型12の影が、そのフォトダイオード56
4まで拡大しているか否かを判定する。具体的には、判定部70は、上部テーブル26の下降動作を開始する前に、そのフォトダイオード56
4の受光量(単位時間当たりの受光量)が所定の第1閾値以下になっているか否かを判定する。判定部70は、そのフォトダイオード56
4の受光量が所定の第1閾値以下である場合には、上金型12の影がフォトダイオード56
4まで拡大していると判定する。判定部70は、そのフォトダイオード56
4の受光量が所定の第1閾値を越えている場合には、上金型12の影がフォトダイオード56
4まで拡大していないと判定する。所定の第1閾値とは、上金型12の影がそのフォトダイオード56
4まで拡大しているか否かについて判定するために予め設定した値のことである。
【0035】
図5(b)(c)及び
図8に示すように、無効化部72は、上金型12の影が上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4まで拡大していると判定された場合には、そのフォトダイオード56
4を無効化する。また、無効化部72は、ワークWの箱曲げを行う場合であって、作業者Mによって第1切替スイッチ66が切替操作された場合に、前側に位置する3つのフォトダイオード56
1〜56
3を無効化する。無効化部72は、作業者Mによって第2切替スイッチ68が切替操作された場合に、上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4を無効化する。なお、
図5(c)において、上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4に付したハッチングは、そのフォトダイオード56
4が無効化された状態であることを示している。
【0036】
図3、
図5(a)、及び
図6に示すように、検出部74は、上部テーブル26の下降動作中に、有効な複数のフォトダイオード56の受光状態(受光結果)に基づいて、上金型12と下金型14の間における異物の有無を検出する。具体的には、検出部74は、上部テーブル26の下降動作中に、いずれかの有効なフォトダイオード56の受光量(単位時間当たりの受光量)が所定の第2閾値以下になっているか否かを検出する。検出部74は、いずれかの有効なフォトダイオード56の受光量が所定の第2閾値以下になっている場合には、上金型12と下金型14の間における異物有りを検出する。検出部74は、有効な全てのフォトダイオード56の受光量が所定の第2閾値を越えている場合には、上金型12と下金型14の間における異物無しを検出する。所定の第2閾値とは、上金型12と下金型14の間における異物の有無を検出するために予め設定した値のことであり、第1閾値と同じ値でもよい。
【0037】
制御部76は、フットスイッチ36から所定の起動信号が出力された場合に、上部テーブル26の下降動作を開始するように一対の昇降シリンダ30(昇降シリンダ30の油圧ユニット)を制御する。また、制御部76は、リニアエンコーダ32からの検出結果を監視しながら、上金型12の先端の高さ位置がワークWに接近した所定の高さ位置に位置した際に、上部テーブル26の下降速度を減速させるように一対の昇降シリンダ30を制御する。所定の高さ位置は、第1の高さ位置と、第1の高さ位置よりも高い第2の高さ位置のいずれかであり、通常の曲げ加工の場合には、第1の高さ位置が所定の高さ位置として選択(設定)される。前側に位置する3つのフォトダイオード56
1〜56
3及び上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4が無効化されている場合には、第2の高さ位置が所定の高さ位置として選択される。
【0038】
制御部76は、上金型12と下金型14の間における異物の有りと検出された場合に、上部テーブル26の下降動作を停止するように一対の昇降シリンダ30(昇降シリンダ30の油圧ユニット)を制御する。なお、制御部76は、上金型12の先端の高さ位置が所定の高さ位置に位置した後は、一対の昇降シリンダ30をそのように制御しなくてもよい。
【0039】
ここで、第1切替スイッチ66、第2切替スイッチ68、判定部70、無効化部72、及び検出部74は、光学式安全装置42の一部であるとみなすことができる。
【0040】
続いて、本発明の実施形態に係る光学式監視方法を含めて、本発明の実施形態の作用について
図7等を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る光学式監視方法は、投光器44と受光器52とを用い、受光器52における複数のフォトダイオード56の受光状態に基づいて、上金型12と下金型14の間における異物の有無を監視する方法である。本発明の実施形態に係る光学式監視方法は、判定ステップと、無効化ステップと、検出ステップと、停止ステップとを備えている。
【0041】
作業者Mがプレスブレーキ10の電源を投入して(
図7におけるステップS101)、スタートボタン64を押下操作する(
図7におけるステップS102)。すると、投光器44から上金型12の直下及びその前側近傍に向かって6本のレーザ光Bが投光される。そして、判定部70は、上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4の受光状態に基づいて、受光器52側に投影されるレーザ光Bよる上金型12の影が、そのフォトダイオード56
4まで拡大しているか否かを判定する(
図7におけるステップS103、判定ステップ)。
【0042】
無効化部72は、上金型12の影がそのフォトダイオード56
4まで拡大していると判定された場合(
図7におけるステップS103のYesの場合)には、そのフォトダイオード56
4を無効化する(
図7におけるステップS104、無効化ステップ)。なお、ワークWに対して箱曲げを行う場合であって、作業者Mによって第1切替スイッチ66が切替操作された場合に、無効化部72は、前側に位置する3つのフォトダイオード56
1〜56
3を無効化する。
【0043】
その後、作業者Mがフットスイッチ36の足踏み操作を行うと、フットスイッチ36から所定の起動信号が出力される(
図7のステップS105)。すると、制御部76は、一対の昇降シリンダ30を制御して上部テーブル26の下降動作を開始する(
図7におけるステップS106)。そして、検出部74は、有効な複数のフォトダイオード56の受光状態(受光結果)に基づいて、上金型12と下金型14の間における異物の有無を検出する(
図7におけるステップS107、検出ステップ)。
【0044】
上金型12と下金型14の間における異物無しと検出された場合(
図7におけるステップS107のNoの場合)には、上部テーブル26の下降動作が継続される。そして、制御部76は、上金型12の先端の高さ位置がワークWに接近した所定の高さ位置に位置した際に、一対の昇降シリンダ30を制御して上部テーブル26の下降速度を減速させる。これにより、上金型12と下金型14の協働(係合)によりワークWに対して曲げ加工を行うことができる(
図7のステップS108)。一方、制御部76は、上金型12と下金型14の間における異物有りと検出された場合(
図7におけるステップS107のYesの場合)には、一対の昇降シリンダ30を制御して上部テーブル26の下降動作を停止する(
図7におけるステップS109、停止ステップ)。
【0045】
制御装置58のCPUは、ワークWの曲げ加工後に、ワークWに曲げ加工される部位が残っていないと判断すると(
図7におけるステップS110のNoの場合)には、一連の処理を終了する。一方、制御装置58のCPUは、ワークWの曲げ加工後に、ワークWに曲げ加工される部位が残っていると判断すると(
図7におけるステップS110のYesの場合)には、
図7におけるステップS102の前に処理を戻す。
【0046】
なお、
図7におけるステップS102の処理(判定ステップ)を省略してもよい。そして、
図7におけるステップS103の処理では、無効化部72は、作業者Mによって第2切替スイッチ68が切替操作された場合に、上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4を無効化する。
【0047】
前述のように、無効化部72は、上金型12の影Sが上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4まで拡大している場合に、そのフォトダイオード56
4を無効化する。これにより、上金型12と下金型14の間に異物が無いにも拘わらず、上金型12の影Sによって検出部74が上金型12と下金型14の間における異物有りと誤検出することを十分に防止できる。
【0048】
従って、本発明の実施形態によれば、全長の長いプレスブレーキ10に長い上金型12を取付けた状態で曲げ加工を行う場合にも、上金型12の影Sによって上部テーブルの下降動作が停止することを十分に防止できる。よって、本発明の実施形態によれば、プレスブレーキ10が光学式安全装置42を装備して、曲げ加工の作業の安全性を十分に確保した上で、プレスブレーキ10の加工効率(生産性)を高めることができる。
【0049】
(本発明の実施形態の変形例)
本発明の実施形態の変形例について、前述の本発明の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
図8及び
図3に示すように、制御装置58には、上金型12の先端の部材温度を測定する第1温度センサ78、及び工場内の環境温度を測定する第2温度センサ80が接続されている。また、制御装置58は、判定部70としての機能の代わりに、算出部82としての機能及び判定部84としての機能を有している。そして、算出部82及び判定部84の具体的な内容は、次の通りである。
【0051】
図5(a)(b)及び
図8に示すように、算出部82は、第1温度センサ78からの測定結果である上金型12の先端の部材温度と、第2温度センサ80からの測定結果である工場内の環境温度と、上金型12の長さと、受光器52から上金型12の端面までの距離に基づいて、上金型12の影Sの拡大量を算出する。ここで、上金型12の影Sの拡大量とは、上金型12の影Sが上金型12の輪郭からはみ出る最大量のことをいう。算出部82は、受光器52から上金型12の端面までの距離を加味して、上金型12の影Sの拡大量を算出することが好ましい。なお、算出部82は、カメラ(図示省略)によって投光器44側から撮像した撮像画像に基づいて、上金型12の影Sの拡大量を算出してもよい。
【0052】
判定部84は、上部テーブル26の下降動作を開始する前(直前)に、算出された上金型12の影Sの拡大量に基づいて、上金型12の影Sが上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4まで拡大しているか否かを判定する。具体的には、判定部84は、上部テーブル26の下降動作を開始する前に、上金型12の影Sの拡大量が所定の拡大量以上であるか否かを判定する。判定部84は、上金型12の影Sの拡大量が所定の拡大量以上である場合には、上金型12の影がフォトダイオード56
4まで拡大していると判定する。判定部84は、上金型12の影Sの拡大量が所定の拡大量未満である場合には、上金型12の影がフォトダイオード56
4まで拡大していないと判定する。所定の拡大量とは、上金型12の影がそのフォトダイオード56
4まで拡大しているか否かについて判定するために予め設定した拡大量のことである。
【0053】
そして、本発明の実施形態の変形例においては、
図7におけるステップS103の処理の直前に、算出部82は、上金型12の影Sの拡大量を算出する(算出ステップ)。換言すれば、本発明の実施形態の変形例に係る光学式監視方法は、算出ステップを備えている。また、
図7におけるステップS103の処理では、判定部84は、算出された上金型12の影Sの拡大量に基づいて、上金型12の影Sが上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4まで拡大しているか否かを判定する(判定ステップ)。
【0054】
本発明の実施形態の変形例においても、前述の本発明の実施形態と同様の効果を奏するものである。
【0055】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、次のように種々の態様で実施可能である。
【0056】
判定部70は、上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4の受光状態だけでなく、3つのフォトダイオード56
1,56
2,56
5の受光状態に基づいて、金型12の影が4つのフォトダイオード56
1,56
2,56
4,56
5のいずれかまで拡大しているか否かを判定してもよい。同様に、判定部84は、算出された上金型12の影Sの拡大量に基づいて、上金型12の影Sが上金型12の最近傍に位置するフォトダイオード56
4だけでなく、フォトダイオード56
1,56
2,56
5のいずれかまで拡大しているか否かを判定してもよい。
【0057】
そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
を無効化する。検出部74は、上部テーブル26の下降動作中に、有効な複数のフォトダイオード56の受光状態に基づいて、上金型12と下金型14の間における異物の有無を検出する。