(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る集電部材を用いたセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、セルスタック装置100の斜視図である。
図2は、セルスタック装置100の断面図である。
【0010】
図1及び
図2に示すように、セルスタック装置100は、燃料マニホールド200と、複数の燃料電池セル300とを備える。
【0011】
[燃料マニホールド]
図3は、燃料マニホールド200の斜視図である。
【0012】
図3に示すように、燃料マニホールド200は、燃料ガス(例えば、水素など)を各燃料電池セル300に分配するように構成されている。燃料マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。燃料マニホールド200の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスが供給される。燃料マニホールド200は、互いに間隔をあけて並ぶ複数の挿入孔202を有している。各挿入孔202は、燃料マニホールド200の天板203に形成されている。各挿入孔202は、燃料マニホールド200の内部空間と外部に連通する。
【0013】
[燃料電池セル]
図2に示すように、各燃料電池セル300は、燃料マニホールド200から延びている。詳細には、各燃料電池セル300は、燃料マニホールド200の天板203から上方(x軸方向)に延びている。すなわち、各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)は、上方に延びている。各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)の長さは、100〜300mm程度とすることができる。
【0014】
各燃料電池セル300の基端部は、燃料マニホールド200の挿入孔202に挿入されている。各燃料電池セル300は、接合材101によって挿入孔202に固定されている。燃料電池セル300は、挿入孔202に挿入された状態で、接合材101によって燃料マニホールド200に固定されている。接合材101は、燃料電池セル300と挿入孔202の隙間に充填される。接合材101としては、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、及びセラミックスなどが挙げられる。結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスである。このような結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、又はSiO
2−MgO系が挙げられる。
【0015】
各燃料電池セル300は、長手方向(x軸方向)及び幅方向(y軸方向)に広がる板状に形成されている。各燃料電池セル300は、配列方向(z軸方向)に間隔をあけて配列されている。隣り合う2つの燃料電池セル300の間隔は特に制限されないが、1〜5mm程度とすることができる。隣り合う2つの燃料電池セル300は、集電部材301によって電気的に接続されている。複数の燃料電池セル300が集電部材301で接続されることによってセルスタックが形成されている。集電部材301の構成については後述する。
【0016】
燃料電池セル300は、複数の発電素子部10と、支持基板20とを備える。
【0017】
[支持基板]
図4は、燃料電池セル300の斜視図である。
図5は、燃料電池セル300の断面図である。
【0018】
図4に示すように、支持基板20は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に沿って延びる複数のガス流路21を内部に有している。各ガス流路21は、支持基板20の基端側から先端側に向かって延びている。各ガス流路21は、互いに実質的に平行に延びている。なお、基端側とは、ガス流路のガス供給側を意味する。具体的には、燃料マニホールド200に燃料電池セル300を取り付けた場合において、その燃料マニホールド200に近い側を意味する。また、先端側とは、ガス流路のガス供給側とは反対側を意味する。具体的には、燃料電池セル300を燃料マニホールド200に取り付けた場合において、その燃料マニホールド200から遠い側を意味する。例えば、
図2に示す例では、下側が基端側であり、上側が先端側となる。
【0019】
図5に示すように、支持基板20は、複数の第1凹部22を有する。本実施形態において、各第1凹部22は、支持基板20の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各第1凹部22は支持基板20の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0020】
支持基板20は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板20は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板20は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板20の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0021】
[発電素子部]
各発電素子部10は、支持基板20に支持されている。本実施形態において、各発電素子部10は、支持基板20の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各発電素子部10は、支持基板20の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル300は、いわゆる横縞型の燃料電池である。長手方向に隣り合う発電素子部10は、インターコネクタ31によって互いに電気的に接続されている。
【0022】
発電素子部10は、燃料極4、電解質5、及び空気極6を有している。また、発電素子部10は、反応防止膜7をさらに有している。
【0023】
[燃料極]
燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極4は、燃料極集電部41と燃料極活性部42とを有する。
【0024】
燃料極集電部41は、第1凹部22内に配置されている。詳細には、燃料極集電部41は、第1凹部22内に充填されており、第1凹部22と同様の外形を有する。燃料極集電部41は、第2凹部411及び第3凹部412を有している。第2凹部411内には、燃料極活性部42が配置されている。また、第3凹部412には、インターコネクタ31が配置されている。
【0025】
燃料極集電部41は、電子伝導性を有する。燃料極集電部41は、燃料極活性部42よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。燃料極集電部41は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0026】
燃料極集電部41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部41は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部41の厚さ、及び第1凹部22の深さは、50〜500μm程度である。
【0027】
燃料極活性部42は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。燃料極活性部42は、燃料極集電部41よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、燃料極活性部42における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、燃料極集電部41における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0028】
燃料極活性部42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部42は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部42の厚さは、5〜30μmである。
【0029】
[電解質]
電解質5は、燃料極4上を覆うように配置されている。詳細には、電解質5は、あるインターコネクタ31から隣のインターコネクタ31まで長手方向に延びている。すなわち、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、電解質5とインターコネクタ31とが交互に連続して配置されている。電解質5は、支持基板20の第1主面23a及び第2主面23bを覆うように構成されている。
【0030】
電解質5は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質5は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質5は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質5の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0031】
[反応防止膜]
反応防止膜7は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜7は、電解質5と空気極活性部61との間に配置されている。反応防止膜7は、電解質5内のYSZと空気極6内のSrとが反応して電解質5と空気極6との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0032】
反応防止膜7は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0033】
[空気極]
空気極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極6は、電解質5を基準にして、燃料極4と反対側に配置されている。空気極6は、空気極活性部61と空気極集電部62とを有している。
【0034】
空気極活性部61は、反応防止膜7上に配置されている。空気極活性部61は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。空気極活性部61は、空気極集電部62よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、空気極活性部61おける、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、空気極集電部62における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0035】
空気極活性部61は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極活性部61は、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極活性部61は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部61の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0036】
空気極集電部62は、空気極活性部61上に配置されている。また、空気極集電部62は、空気極活性部61から、隣の発電素子部に向かって延びている。燃料極集電部41と空気極集電部62とは、発電領域から互いに反対側に延びている。発電領域とは、燃料極活性部42と電解質5と空気極活性部61とが重複する領域である。
【0037】
空気極集電部62は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部62は、空気極活性部61よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。空気極集電部62は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0038】
空気極集電部62は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部62は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部62は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部62の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0039】
[インターコネクタ]
インターコネクタ31は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に隣り合う発電素子部10を電気的に接続するように構成されている。詳細には、一方の発電素子部10の空気極集電部62は、他方の発電素子部10に向かって延びている。また、他方の発電素子部10の燃料極集電部41は、一方の発電素子部10に向かって延びている。そして、インターコネクタ31は、一方の発電素子部10の空気極集電部62と、他方の発電素子部10の燃料極集電部41とを電気的に接続している。インターコネクタ31は、燃料極集電部41の第3凹部412内に配置されている。詳細には、インターコネクタ31は、第3凹部412内に埋設されている。
【0040】
インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ31は、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0041】
[集電部材の全体構成]
図6は、
図2の部分拡大図である。
図6では、セルスタック装置100のうち各燃料電池セル300の基端部付近が図示されている。
【0042】
図6に示すように、隣接する2つの燃料電池セル300(第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300b)は、集電部材301によって電気的に接続される。集電部材301は、本発明に係る「電気化学セル用金属部材」の一例である。
【0043】
集電部材301は、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの間に配置される。集電部材301は、支持基板20の両主面に配置された複数の発電素子部10のうち、最も基端側に配置された基端側発電素子部10aよりも基端側に配置されている。
【0044】
集電部材301は、第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300bそれぞれの基端側に接合される。詳細には、集電部材301は、導電性接合材102を介して、第1燃料電池セル300aの基端側発電素子部10aから延びる電気的接続部110と、第2燃料電池セル300bの基端側発電素子部10aから延びる空気極集電部62とに接合される。なお、この第1燃料電池セル300aと、導電性接合材102と、集電部材301とによって、本発明に係る電気化学セル組立体が構成される。
【0045】
導電性接合材102としては、周知の導電性セラミックス等を用いることができる。例えば、導電性接合材102は、(Mn,Co)
3O
4、(La,Sr)MnO
3、及び(La,Sr)(Co,Fe)O
3などから選ばれる少なくとも1種によって構成することができる。
【0046】
ここで、
図7は、集電部材301の斜視図であり、
図8は、
図7のA−A断面図である。
図7では、集電部材301が第1燃料電池セル300aに接合された状態が示されている。
図7では、第2燃料電池セル300bが省略されているが、実際には第1燃料電池セル300aと対向するように第2燃料電池セル300bが配置されている。
【0047】
集電部材301は、第1接合部a1、第2接合部a2、第1連結部b1、及び第2連結部b2を有する。
【0048】
第1接合部a1は、第1燃料電池セル300aに接合される。詳細には、第1接合部a1は、導電性接合材102によって、第1燃料電池セル300aの基端側発電素子部10a(
図6参照)から延びる電気的接続部110に接合される。なお、電気的接続部110は、第1接続部111と第2接続部112を有している。第1接続部111は、上述したインターコネクタ31と同様の構成及び材質とすることができる。また、第2接続部112は、上述した空気極集電部62と同様の材料から構成することができる。第2接続部112は、第1接続部111と電気的に接続されており、下方へと延びている。
図8に示すように、第1接合部a1は、第1燃料電池セル300aの外表面Taと対向する主面Saを有する。
【0049】
第1接合部a1は、平板状に形成される。z軸方向における第1接合部a1の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜2.0mmとすることができる。本実施形態において、第1接合部a1は、幅方向に延びる矩形に形成されているが、第1接合部a1の形状に特に制限はなく、三角以上の多角形、円形、楕円形、或いは、これら以外の複雑形状であってもよい。
【0050】
第1接合部a1には、複数の第1貫通孔c1が形成される。
図8に示すように、各第1貫通孔c1は、主面Saに連なる内壁面Scを有する。各第1貫通孔c1には、導電性接合材102が充填されている。これによって、第1燃料電池セル300aに対する第1接合部a1の接合力を向上させることができる。導電性接合材102は、各第1貫通孔c1から外側に突出していてもよく、さらに第1接合部a1の外表面上に広がっていてもよい。
【0051】
本実施形態において、各第1貫通孔c1は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、各第1貫通孔c1の形状に特に制限はなく、円形、楕円形、三角以上の多角形、又は、これら以外の複雑形状であってもよい。また、本実施形態では、3個の第1貫通孔c1が設けられているが、第1貫通孔c1の個数及び位置は適宜変更可能である。
【0052】
第2接合部a2は、第1接合部a1と電気的に接続される。第2接合部a2は、第2燃料電池セル300bに接合される。詳細には、第2接合部a2は、導電性接合材102によって、第2燃料電池セル300bの基端側発電素子部10a(
図6参照)から延びる空気極集電部62に接合される。第2接合部a2は、配列方向において第1接合部a1と対向する。
【0053】
第2接合部a2は、平板状に形成される。z軸方向における第2接合部a2の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜2.0mmとすることができる。本実施形態において、第2接合部a2は、第1接合部a1と同様の形状を有しているが、第1接合部a1と異なる形状であってもよい。第2接合部a2の形状に特に制限はなく、三角以上の多角形、円形、楕円形、或いは、これら以外の複雑形状であってもよい。
【0054】
第2接合部a2には、複数の第2貫通孔c2が形成される。各第2貫通孔c2には、導電性接合材102が充填されている。これによって、第2燃料電池セル300bに対する第2接合部a2の接合力を向上させることができる。導電性接合材102は、各第2貫通孔c2から外側に突出していてもよく、さらに第2接合部a2の外表面上に広がっていてもよい。
【0055】
本実施形態において、各第2貫通孔c2は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、各第2貫通孔c2の形状に特に制限はなく、円形、楕円形、三角以上の多角形、又は、これら以外の複雑形状であってもよい。また、本実施形態では、3個の第2貫通孔c2が設けられているが、第2貫通孔c2の個数及び位置は適宜変更可能である。
【0056】
第1及び第2連結部b1,b2は、それぞれ第1接合部a1と第2接合部a2とに連結される。本実施形態において、第1及び第2連結部b1,b2は、それぞれ湾曲しているが、これに限られない。第1及び第2連結部b1,b2は、それぞれ平板状であってもよいし、少なくとも1箇所で屈曲する形状であってもよい。
【0057】
また、本実施形態では、第1及び第2連結部b1,b2が、集電部材301の両端部に配置されているが、第1及び第2連結部b1,b2の位置は特に制限されない。
【0058】
[集電部材の内部構成]
次に、集電部材301(具体的には、第1接合部a1)の詳細な構成について、図面を参照しながら説明する。
図9は、
図8の領域R1の拡大図である。
【0059】
集電部材301は、本体部302と、被覆膜303とを有する。
【0060】
本体部302は、第1主面S1、第2主面S2、側面S3、及び複数の凹部S4を有する。なお、
図9では、複数の凹部S4のうち1つの凹部S4だけが図示されている。
【0061】
第1主面S1は、第1燃料電池セル300a側を向いている。すなわち、第1主面S1は、第1燃料電池セル300aと対向する。第1主面S1は、x−y平面に沿って広がる。第1接合部311の第1主面S1は、第1燃料電池セル300aに導電性接合材102を介して接合される。
【0062】
第2主面S2は、第1主面S1と反対側を向いている。すなわち、第2主面S2は、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bとの間の空間を向いている。従って、燃料電池セル300の外側面に空気などの酸化剤ガスを流す際、第2主面S2は、この酸化剤ガスが流れる空間を向いている。第2主面S2は、x−y平面に沿って広がる。
【0063】
側面S3は、第1主面S1と第2主面S2とに連なる。側面S3は、第1接合部311の厚さ方向(z軸方向)に延びる面である。側面S3は、y−z平面に沿って広がる。側面S3は、略平面である。「略平面」とは、物理的に厳密な意味で平らな面だけでなく、微小な凹凸が存在する場合や、全体的或いは部分的に微小な歪みがある場合をも含むことを意味する。側面S3は、第1主面S1及び第2主面S2のそれぞれに対して傾斜していてよいし、第1主面S1及び第2主面S2のそれぞれに対して略垂直であってもよい。
【0064】
凹部S4は、側面S3に形成される。凹部S4には、被覆膜303の一部が入り込んでいる。側面S3に垂直な方向(x軸方向)における凹部S4の深さは、均一であってもよいし、不均一であってもよい。凹部S4の最大深さは特に制限されないが、0.5〜50μmとすることができ、1〜45μmが好ましい。側面S3の平面視における凹部S4の形状及びサイズについては後述する。
【0065】
本体部302は、基材302aと、酸化クロム膜302bとによって構成される。
【0066】
基材302aは、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)及びNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。基材302aにおけるCrの含有率は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。
【0067】
基材302aは、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。基材302aにおけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。基材302aにおけるAlの含有率は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。基材302aは、TiをTiO
2(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl
2O
3(アルミナ)として含有していてもよい。
【0068】
酸化クロム膜302bは、基材302a上に形成される。酸化クロム膜302bは、基材302aを被覆する。酸化クロム膜302bは、基材302aの一部を被覆していてもよいし、基材302aの全体を被覆していてもよい。従って、第1主面S1、第2主面S2、及び側面S3それぞれは、全面が酸化クロム膜302bの外表面であってもよいし、一部が酸化クロム膜302bの外表面であり、かつ、残りの部分が基材302aの外表面であってもよい。
【0069】
酸化クロム膜302bは、酸化クロムによって構成される。酸化クロム膜302bの厚みは特に制限されないが、例えば0.5〜10μmとすることができる。
【0070】
被覆膜303は、酸化クロム膜302b上に形成される。被覆膜303は、本体部302を被覆する。具体的には、被覆膜303は、基材302a上に形成された酸化クロム膜302bを被覆している。被覆膜303は、本体部302の一部を被覆していてもよいし、本体部302の全体を被覆していてもよい。被覆膜303は、本体部302のうちセルスタック装置100の作動中に酸化剤ガスと接触する領域を被覆していることが好ましい。
【0071】
被覆膜303は、基材302aからのCrの揮発を抑えることによって、各燃料電池セル300の空気極6におけるCr被毒を抑制する。被覆膜303を構成する材料としては、セラミックス材料を用いることができる。セラミックス材料の具体的な種類は、適用箇所に応じて適宜選択することができる。本実施形態では、集電部材301に導電性が求められるため、セラミックス材料としては、LaおよびSrを含有するペロブスカイト形複合酸化物、Mn,Co,Ni,Fe,Cu等の遷移金属から構成されるスピネル型複合酸化物などを用いることができる。ただし、被覆膜303は、Crの揮発を抑制できればよく、その構成材料はセラミックス材料に限られない。被覆膜303の厚みは特に制限されないが、例えば1〜200μmとすることができる。
【0072】
被覆膜303は、側面S3に形成された複数の凹部S4に入り込んでいる。そのため、被覆膜303のうち各凹部S4に入り込んだ部分が凹部S4に係止されることによってアンカー効果が生じて、本体部302に対する被覆膜303の密着力が向上する。その結果、被覆膜303が本体部302から剥離することを抑制できる。被覆膜303は、各凹部S4の全体に充填されていることが好ましいが、各凹部S4の一部だけに入り込んでいてもよい。
【0073】
[複数の凹部]
次に、複数の凹部S4の構成について、図面を参照しながら説明する。
図10は、集電部材301を
図9に示す矢印Xの方向から見た図であり、側面S3の平面図に相当する。ただし、
図10では、被覆膜303が省略されている。
【0074】
複数の凹部S4は、本体部302の側面S3に形成される。複数の凹部S4は、側面S3の平面視において、所定の方向に沿って並んでいる。これによって、被覆膜303に所定の方向又は所定の方向に対して垂直な方向に応力がかかった場合に、各凹部S4に入り込んだ被覆層303に生じるアンカー効果で当該応力に耐えることができるため、被覆膜303の剥離を抑制することができる。
【0075】
本実施形態において、「所定の方向」とは、第1主面S1と側面S3との境界線L13に略平行な方向であり、
図10ではy軸方向である。境界線L13は、平面視した側面S3の下辺である。ただし、境界線L13は、複数の凹部S4が広がって配置される方向を規定できる程度の形状であればよく、直線状であってもよいし、部分的或いは全体的に湾曲及び/又は屈曲していてもよい。
【0076】
本実施形態において、「所定の方向に沿って並ぶ」とは、複数の凹部S4が所定の方向と平行な一直線上に配置される場合だけでなく、複数の凹部S4が全体として所定の方向に広がるように配置される場合をも含むことを意味する。従って、
図10に示すように、複数の凹部S4は、y軸方向において互いに重なっていてもよいし、y軸方向において互いに重ならないようにz軸方向にずれていてもよい。各凹部S4は、側面S3の平面視において、所定の方向において互いに離れていることが好ましい。ただし、各凹部S4は、2以上の凹部が連結することによって構成されていてもよい。この場合、連結した2つの凹部は、互いに深さ、平面視形状、及び平面視サイズが異なっていてもよい。
【0077】
各凹部S4の平面形状は特に制限されず、矩形、三角以上の多角形、円形、楕円形、或いは、これら以外の複雑形状であってもよい。
【0078】
各凹部S4は、側面S3の平面視において、所定の方向(
図10では、y軸方向)と交差する方向(
図10では、z軸方向)に延びていることが好ましい。これによって、所定の方向に多くの凹部S4を並べるとともに、各凹部S4におけるアンカー効果を向上させることができる。各凹部S4が延びる方向は、所定の方向に対して垂直な方向であってもよい。各凹部S4は、互いに異なる方向に延びていてもよいし、同じ方向に延びていてもよい。
【0079】
所定の方向(
図10では、y軸方向)における各凹部S4の全幅W1は特に制限されないが、5〜100μmとすることができる。所定の方向に垂直な方向(
図10では、z軸方向)における各凹部S4の全高H1は特に制限されないが、5〜300μmとすることができる。
【0080】
ここで、側面S3は、
図10に示すように、第1主面S1側の第1領域S31と、第2主面S2側の第2領域S32とを有する。第1領域S31は、第1主面S1と第2領域S32とに連なる。第2領域S32は、第2主面S2と第1領域S31とに連なる。すなわち、第1領域S31は、側面S3のうち第1燃料電池セル300aに近い領域であり、第2領域S22は、側面S3のうち第1燃料電池セル300aから離れた領域である。第1領域S31は、特に限定されるものではないが、例えば、側面S3のうち、10〜90%程度の範囲を占めている。第2領域S32は、特に限定されるものではないが、例えば、側面S3のうち、10〜90%程度の範囲を占めている。第1領域S21と第2領域S22との境界は、第1主面S1と側面S3との境界線L13に対して略平行な方向(すなわち、y軸方向)に沿った線で規定される。
【0081】
複数の凹部S4は、
図10に示すように、側面S3のうち第1領域S31に配置されることが好ましい。すなわち、複数の凹部S4は、側面S3のうち第1燃料電池セル300aに近い領域に配置されることが好ましい。これによって、側面S3のうち第1燃料電池セル300aに近い領域における被覆膜303の剥離を抑制できるため、第1燃料電池セル300aへのCr被毒を効果的に抑制することができる。
【0082】
なお、凹部S4の形成方法は、特に限定されない。例えば、各凹部S4は、酸化クロム膜302bが形成される前の基材302a、又は、酸化クロム膜302bが形成された本体部302の側面に対して、サンドブラストを吹き付けることによって、或いは、エッチングを施すことによって形成することができる。
【0083】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0084】
[変形例1]
上記実施形態では、本発明に係る電気化学セル用金属部材の実施形態である集電部材301を横縞型の燃料電池セルに適用した場合について説明したが、いわゆる縦縞型の燃料電池セルなどにも適用することができる。縦縞型の燃料電池セルは、導電性の支持基板と、支持基板の一主面上に配置される発電部(燃料極、固体電解質層及び空気極)と、支持基板の他主面上に配置されるインターコネクタとを備える。また、本発明に係る電気化学セル用金属部材は、燃料電池のほか、固体酸化物型の電解セルを含む固体酸化物型の電気化学セルにも適用可能である。また、本発明に係る電気化学セル用金属部材は、燃料電池のほか、固体酸化物型の電解セルを含む固体酸化物型の電気化学セルにも適用可能である。
【0085】
[変形例2]
上記実施形態では、
図7を参照しながら集電部材301の構成について説明したが、集電部材301の具体的な構成は適宜変更可能である。例えば、集電部材301は、3以上の接合部を有していてもよいし、接合部には貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0086】
[変形例3]
上記実施形態では、側面S3に形成された各凹部S4には、被覆層303の一部が入り込むこととしたが、側面S3には被覆層303が入り込んでいない凹部が形成されていてもよい。
【0087】
[変形例4]
上記実施形態において、複数の凹部S4は、側面S3のうち第1領域S31に配置されることしたが、複数の凹部S4の一部が、側面S3のうち第2領域S32に配置されていてもよい。
【0088】
[変形例5]
上記実施形態において、複数の凹部S4は、側面S3のうち第1領域S31に配置されることとしたが、側面S3のうち第2領域S32に配置されていてもよい。
【0089】
[変形例6]
上記実施形態において、複数の凹部S4は、側面S3の平面視において、第1主面S1と側面S3との境界線L13に略平行な方向(すなわち、y軸方向)に沿って並ぶこととしたが、これに限られない。複数の凹部S4は、側面S3の平面視において、第1主面S1から第2主面S2に向かう方向(すなわち、z軸方向)に沿って並んでいてもよい。この場合には、被覆膜303にz軸方向又はz軸方向に対して垂直な方向に応力がかかった場合に、各凹部S4に入り込んだ被覆層303に生じるアンカー効果で当該応力に耐えることができるため、被覆膜303の剥離を抑制することができる。なお、複数の凹部S4は、y軸方向及びz軸方向に限らず、例えばy軸方向に対して傾斜した方向に並んでいてもよい。
【0090】
[変形例7]
第2領域S32における表面粗さは、第1領域S31における表面粗さよりも大きくすることができる。この構成によれば、集電部材301の側面S3のうち、第1領域S31よりも第2領域S32の方に重点的に被覆膜303が形成されやすくなる。この結果、第2領域S32は確実に被覆膜303によって覆われるため、第1燃料電池セル300aの外側面に酸化剤ガスが供給されても、第2領域S32における酸化を抑制することができる。
【0091】
本変形例において、第2領域S32における被覆膜303の厚さは、第1領域S31における被覆膜303の厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、酸化剤ガスに晒され易い領域で、さらに酸化を抑制することができる。また、第1領域S31における被覆膜303の厚さは、第2領域S32における被覆膜303の厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、本体部302がクロムを含む金属の場合に、第1燃料電池セル300aに近い側の領域において本体部302からのクロムの揮発をより抑制することによって、第1燃料電池セル300aにおけるクロム被毒をより抑制することができる。また、第2領域S32における表面粗さは、第1及び第2主面S2における表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0092】
[変形例8]
第1領域S31における表面粗さは、第2領域S32における表面粗さよりも大きくすることができる。この構成によれば、集電部材301の側面S3のうち、第1領域S31における表面粗さが第2領域S32における表面粗さよりも大きいため、第1領域S31において被覆膜303の剥離を抑制することができる。また、第2領域S32の表面粗さが第1領域S31の表面粗さよりも小さいため、第1燃料電池セル300aの外側面に酸化剤ガスを流したときに酸化され易い第2領域S32の表面積を小さくして酸化を抑制できる。
【0093】
本変形例において、第1領域S31における被覆膜303の厚さは、第2領域S32における被覆膜303の厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、本体部302がクロムを含む金属の場合に、本体部302からのクロムの揮発をより抑制することによって、第1燃料電池セル300aにおけるクロム被毒をより抑制することができる。また、第2領域S32における被覆膜303の厚さは、第1領域S31における被覆膜303の厚さよりも厚いことが好ましい。このように構成することで、酸化剤ガスに晒され易い領域で、さらに酸化を抑制することができる。また、第1領域S31における表面粗さは、第1及び第2主面S2における表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0094】
[変形例9]
第2主面S2の面積は、第1主面S1の面積よりも小さくすることができる。この構成によれば、集電部材301の一対の主面のうち、酸化剤ガスに晒される側にある第2主面S2は、第1主面S1よりも面積が小さくなっている。このため、従来のように第1主面S1と同じ面積の第2主面S2を有する集電部材301に比べて、第2主面S2をより確実に被覆膜303で覆うことができる。また、第1主面S1は第2主面S2よりも面積を大きいため、集電部材301と第1燃料電池セル300aとの接合面積が大きくなり、電気抵抗を小さくすることができる。
【0095】
本変形例において、第1主面に垂直な断面において、一対の側面S3は、第2主面S2に向かって互いに近付くように傾斜することが好ましい。この構成によれば、一対の側面S3は、傾斜していない場合に比べて被覆膜303との接合面積が大きくなるため、被覆膜303との接合強度を向上させることができる。また、第2主面S2と少なくとも一方の側面S3とがなす角度は、鈍角であることが好ましい。第2主面S2と側面S3との境界部である角部は、第1燃料電池セル300aの外側面に流れる酸化剤ガスに露出され易い位置に配置される。この第2主面S2と側面S3との角部の角度を鈍角とすることによって、この角部への被覆膜303の形成を容易にし、より確実に被覆膜303を形成することができる。
【0096】
[変形例10]
本体部302は、第1主面S1と側面S3とがなす角部から第1主面S1が向く方向に突出する突起部と、第2主面S2と側面S3とを連結する湾曲面とをさらに有していてもよい。この構成によれば、本体部302は第1燃料電池セル300a側に突出する突起部を有しているため、本体部302と被覆膜303との密着性を向上させることができる。この結果、被覆膜303が剥離することを抑制することができる。また、突起部とは反対側の角部は、湾曲面によって形成されているため、被覆膜303の形成が容易となり、被覆膜303をより確実に形成することができる。
【0097】
[変形例11]
本体部302は、第2主面S2と側面S3とがなす角部から第2主面S2が向く方向に突出する突起部と、第1主面S1と側面S3とを連結する湾曲面とをさらに有していてもよい。この構成によれば、第1燃料電池セル300a側において、湾曲面によって第1主面S1と側面S3とを連結しているため、第1主面S1と側面S3とが直接連結されて角部を構成する従来の本体部302に比べて、電流が集中することを抑制することができる。この結果、この部分における酸化を抑制することができる。また、第2主面S2と側面S3とがなす角部から第2主面S2が向く方向に突起部が突出しているため、この突起部が優先的に酸化されて他の部分の酸化を抑制することができる。
【0098】
[変形例12]
側面S3は、第1領域S31と第2領域S32との間に形成される段差部を有していてもよい。この構成によれば、段差部が被覆膜303との密着性を向上させることができるため、本体部302からの被覆膜303の剥離を抑制することができる。
【0099】
本変形例において、段差部は、第2主面S2が向く方向を向いていることが好ましい。この場合、第1主面に垂直な断面において、本体部302の一対の側面S3は、第2主面S2に向かって互いに近付くように傾斜することが好ましい。段差部が向く方向と第2主面S2が向く方向とがなす角度が45度以内であれば、段差部は第2主面S2が向く方向を向いていると言える。また、段差部は、第1主面S1が向く方向を向いている。この場合、本体部302の一対の側面S3は、第1主面S1に向かって互いに近付くように傾斜することが好ましい。段差部が向く方向と第1主面S1が向く方向とがなす角度が45度以内であれば、段差部は第1主面S1が向く方向を向いていると言える。
【0100】
本変形例において、側面S3と直交する方向に沿って側面S3を見た場合において、第1領域S31の第2主面S2側の端部と、第2領域S32の第1主面S1側の端部とが互いに重複するように段差部が構成されることが好ましい。この構成によれば、段差部と被覆膜303との密着性がより向上するため、本体部302からの被覆膜303の剥離をより確実に抑制することができる。
【解決手段】集電部材301は、本体部302と、被覆膜303とを有する。本体部302は、第1主面S1、第2主面S2、側面S3、及び複数の凹部S4を有する。被覆膜303は、複数の凹部S4それぞれに入り込んでいる。複数の凹部S4は、側面S3の平面視において、所定の方向に沿って並ぶ。