特許第6572350号(P6572350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6572350
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/58 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   B25B13/58
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-122851(P2018-122851)
(22)【出願日】2018年6月28日
【審査請求日】2018年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】神保 伸二
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−111879(JP,A)
【文献】 実開昭49−071898(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0031359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/00−13/58
B25F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合部材を締め付け又は緩める工具において、
前記結合部材を挟持する一対の挟持部を備え、
前記挟持部は、
少なくとも2つの挟持面の表面形状が互いに異なる複数の挟持面を備え、前記結合部材に対していずれかの挟持面を選択可能に回転し、
工具本体の先端に設けられた支持軸に嵌合し、前記支持軸の軸方向に引き上げ、回転され引き下げられた後に固定されることを特徴とする工具。
【請求項2】
前記挟持部は、
前記挟持部と前記支持軸とを結合する螺子の頭部に支えられた弾性体の付勢により引き下げられることを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項3】
結合部材を締め付け又は緩める工具において、
前記結合部材を挟持する一対の挟持部を備え、
前記挟持部は、
少なくとも2つの挟持面の表面形状が互いに異なる複数の挟持面を備え、前記結合部材に対していずれかの挟持面を選択可能に回転し、
工具本体の先端に設けられた支持軸に嵌合し、回転された後に、弾性体の付勢により前記支持軸の内部から側面に押圧される球体により固定されることを特徴とする工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合部材を締め付け又は緩める工具の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信局等の建物内にはガス配線等を壁面に固定するためにボルトやナット等の結合部材が用いられており、結合部材を締め付け又は緩める締緩作業を行う場合、レンチやスパナ等の工具(以下、締緩工具)が用いられる。
【0003】
締緩工具は、結合部材を挟持する一対の挟持部(上顎と下顎)を備え、一対の挟持部によって形成される開口部に結合部材の頭部を差し込み、自締緩工具の操作主体であるハンドル部を一定方向へ回すことにより、結合部材の締緩作業を行うことができる。
【0004】
また、締緩工具は、締緩作業時に結合部材に傷が付き、損傷して結合部材の頭部にナメが生じる等の状態を回避するため、通常、結合部材の頭部形状や頭部側面の表面形状に応じて、挟持部の形状が異なるものを使い分けて用いられる。例えば、ボルトの頭部形状の種類が六角頭であれば、六角頭の頭部側面と接触する挟持面が平面の挟持部を備えるレンチAが用いられ、刻み付き頭であれば、挟持面に刻み形状が形成された挟持部を備えるレンチBが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】“パイプレンチ兼用モンキーレンチ”、バーコ、[online]、[平成30年6月22日検索]、<URL:https://www.monotaro.com/p/3290/8102/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の締緩工具は、結合部材を挟持する一対の挟持部がハンドル部等他の部位とともに一体的に形成されているため、保守等の作業員は、挟持部の形状が異なる複数の締緩工具(レンチA,レンチB,…)を揃える必要があることから、作業現場での作業効率が低下するという課題があった。
【0007】
また、作業現場の移動を伴う場合、持参した締緩工具が移動先の結合部材の形状に合わないこともあり、適合する締緩工具を取りに戻る、又は近くの工具販売店で購入する等、非効率な作業状況が生じるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、結合部材を締め付け又は緩める工具の利便性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の工具は、結合部材を締め付け又は緩める工具において、前記結合部材を挟持する一対の挟持部を備え、前記挟持部は、少なくとも2つの挟持面の表面形状が互いに異なる複数の挟持面を備え、前記結合部材に対していずれかの挟持面を選択可能に回転し、工具本体の先端に設けられた支持軸に嵌合し、前記支持軸の軸方向に引き上げ、回転され引き下げられた後に固定される
【0011】
上記工具において、前記挟持部は、前記挟持部と前記支持軸とを結合する螺子の頭部に支えられた弾性体の付勢により引き下げられる。
【0012】
本発明の工具結合部材を締め付け又は緩める工具において、前記結合部材を挟持する一対の挟持部を備え、前記挟持部は、少なくとも2つの挟持面の表面形状が互いに異なる複数の挟持面を備え、前記結合部材に対していずれかの挟持面を選択可能に回転し、工具本体の先端に設けられた支持軸に嵌合し、回転された後に、弾性体の付勢により前記支持軸の内部から側面に押圧される球体により固定される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、結合部材を締め付け又は緩める工具の利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係るモンキーレンチの外観を示す図である。
図2図1に示したレンチ本体の先端構造を示す図である。
図3図1に示した第1の挟持部の内部構造を示す図である。
図4】第1の挟持部の挟持面の変更方法を示す図である。
図5】第1の挟持部の挟持面の変更前及び変更後の状態を示す図である。
図6】第2の実施形態に係るモンキーレンチの外観を示す図である。
図7図6に示したレンチ本体の先端構造を示す図である。
図8図6に示した第1の挟持部の内部構造を示す図である。
図9】第3の実施形態に係るモンキーレンチの外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。各実施形態では、結合部材を締め付け又は緩める工具の例として、モンキーレンチを用いる。
【0016】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態及び後述する第2の実施形態では、ボルトやナット等を締め付けるモンキーレンチの刃先、つまり結合部材を挟持する挟持部を回転式にすることを特徴とする。これにより、複数の刃先を自在に変更可能とし、モンキーレンチの数を削減可能となり、1つのモンキーレンチで複数の締緩作業を行うことができる。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係るモンキーレンチ1の外観を示す図である。モンキーレンチ1は、結合部材を挟持し、結合部材に対してそれぞれ回転可能な着脱式の一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bと、第1の挟持部11aを先端に有するレンチ本体12と、レンチ本体12に形成され、使用者が握るハンドル部13と、レンチ本体12にスライド可能に装着され、第2の挟持部11bを有するスライド体14と、スライド体14をスライド可能に操作するウォームギア15と、を備えて構成される。
【0018】
また、図1に示すように、第1の挟持部11aとレンチ本体12とは、第1の挟持部11aの回転動作を固定(ロック)するための第1の固定部16aを備える。同様に第2の挟持部11bとスライド体14とは、第2の挟持部11bの回転動作を固定するための第2の固定部16bを備える。
【0019】
図2は、図1に示したレンチ本体12の先端構造を示す図である。レンチ本体12は、第1の挟持部11aと結合する先端において、先端の支持面17の中央で第1の挟持部11aを内側から支える円柱状の支持軸18と、支持面17の中央から一方向に向けて伸びる半円柱状の立体形状を持つツメ19と、を備える。支持軸18の上端面には、雌螺子20が形成されている。
【0020】
図3は、図1に示した第1の挟持部11aの内部構造を示す図である。第1の挟持部11aは、表面形状が互いに異なる4つの挟持面21を有する四角柱体で構成される。
【0021】
第1の挟持部11aは、図2に示したレンチ本体12の支持軸18に嵌合する円柱状の下内空間22と、支持軸18の軸方向(図3の垂直方向)に沿って雄螺子23及びスプリング24を挿入する円柱状の上内空間25と、を備える。上内空間25と下内空間22との間には、雄螺子23の胴部を挿通させる円柱状の挿通孔26が形成されている。また、第1の挟持部11aは、レンチ本体12の支持面17に向かい合う対向面27に、対向面27の中央から四方向に向けて伸びる半円柱状の固定溝28が形成されている。
【0022】
図2図3に示した第1の挟持部11a及びレンチ本体12において、第1の挟持部11aの下内空間22にレンチ本体12の支持軸18を挿入して嵌合し、スプリング24を介して雄螺子23を支持軸18上端面の雌螺子20に締める。これにより、第1の挟持部11aとレンチ本体12とが互いに結合され一体化される。
【0023】
また、第1の挟持部11aの下内空間22の径は、レンチ本体12の支持軸18の径よりも僅かに大きく、下内空間22と支持軸18は、いずれも円柱状の形状を持つ。それ故、第1の挟持部11aは、支持軸18を中心にして回転する。
【0024】
また、第1の挟持部11aを回転させた後、第1の挟持部11aの固定溝28をレンチ本体12のツメ19の位置に合わせて入れ込むことにより、第1の挟持部11aの回転動作は固定される。
【0025】
また、スプリング24の径は、雄螺子23の頭部の径よりも僅かに小さく、雄螺子23は、胴部の一部を残して雌螺子20に結合される。それ故、スプリング24は、上端部が雄螺子23の頭部で支えられるとともに、雌螺子20に結合されない雄螺子23の胴体一部23aで伸びた状態で収容される。そのため、レンチ本体12から第1の挟持部11aを上方向へ引き上げると、その引き上げに伴いスプリング24が上方向へ縮み、スプリング24が下方向へ反発する付勢により、第1の挟持部11aは下方向へ自律的に押し下げられる。
【0026】
ここまで、第1の挟持部11a及びレンチ本体12について説明したが、図1に示したスライド体14も、第2の挟持部11bと結合する部分において、図2に示したレンチ本体12の先端構造と同様の構造を持つ。また、図1に示した第2の挟持部11bも、図3に示した第1の挟持部11aの内部構造と同様の構造を持つ。
【0027】
従い、一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bは、それぞれ、結合部材に対して、表面形状が互いに異なる複数の挟持面のうちいずれかの挟持面を選択可能に回転する機能を持ち、回転後に固定する機能を持つ。それ故、使用者は、作業対象の結合部材の形状に応じて、第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bの挟持面を変更(選択,交換)すること、つまりモンキーレンチの種類を1つのモンキーレンチで使い分けることができる。
【0028】
次に、モンキーレンチ1の操作方法について説明する。図4は、第1の挟持部11aの挟持面の変更方法を示す図であり、図1に示したモンキーレンチ1の側面図である。図5(a)は、挟持面の変更前の状態を示し、図5(b)は、変更後の状態を示す。
【0029】
手順0;
現在、図4(a)と図5(a)に示すように、頭部側面が平面の六角ナット51を締め付ける作業を行っており、第1の挟持部11aにおいて、六角ナット51に接触する挟持面として平面の挟持面21aが選択されている。
【0030】
手順1;
次に、図5(b)に示すように、頭部側面がギザギザ状の凹凸ある刻み付き丸ナット52を締め付ける作業を行う場合、図4(b)に示すように、使用者は、レンチ本体12を片方の手で把持して固定した状態で、もう片方の手で第1の挟持部11aを上方向へ3mm程度引き上げる。このとき、第1の挟持部11aの引き上げにより、スプリング24は、雄螺子23の頭部を下支えとして、挿通孔26を形成する第1の挟持部11a内の挿通孔段29による押し上げによって上方向へ縮むことになる。
【0031】
手順2;
次に、図4(c)に示すように、新規作業対象である刻み付き丸ナット52の側面形状に対応するため、使用者は、第1の挟持部11aを回転させ、横方向に溝のある挟持面21bを刻み付き丸ナット52に対向させる。
【0032】
手順3;
最後に、図4(d)に示すように、手順1で縮んでいたスプリング24の下方向へ伸びる付勢を利用して第1の挟持部11aを下方向へ引き下げ、使用者は、第1の挟持部11aの固定溝28をレンチ本体12のツメ19に固定(ロック)する。
【0033】
第2の挟持部11bについても手順1〜手順3と同様の手順を行うことにより、第2の挟持部11bの挟持面を回転させ、回転後に第2の挟持部11bを固定する。これにより、図5(b)に示したように、刻み付き丸ナット52に接触する第1の挟持部11aと第2の挟持部11bの両挟持面を、いずれも横方向に溝のある挟持面21bに変更することができる。
【0034】
以上より、第1の実施形態によれば、モンキーレンチ1において、結合部材を結合する一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bは、表面形状が互いに異なる4つの挟持面を備え、結合部材に対して4つの挟持面のうちいずれかの挟持面を選択可能に回転するので、利用者は、挟持面(モンキーレンチの刃先)を簡単に変更できる。また、モンキーレンチ本体の交換を必要としないので、モンキーレンチの数を削減できる。更に、複数のモンキーレンチを1つのモンキーレンチに集約できるので、工具の購入経費を削減できる。その他、高い場所でもモンキーレンチ本体を交換する必要がなく、工具の移動も楽になるという効果もある。
【0035】
また、第1の実施形態によれば、モンキーレンチ1において、結合部材を結合する一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bは、レンチ本体12の先端に設けられた支持軸18に嵌合し、支持軸18の軸方向に引き上げ、回転され引き下げられた後に、レンチ本体12又はスライド体14のツメ19と第1の挟持部11a又は第2の挟持部11bの固定溝28とでそれぞれ固定されるので、モンキーレンチ1の使用時に横ブレや捻じれが生じる不具合を抑制でき、締緩作業を安全に行うことができる。
【0036】
また、第1の実施形態によれば、モンキーレンチ1において、結合部材を結合する一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bは、支持軸18の軸方向に引き上げ、回転され引き下げられた後に、第1の挟持部11a又は第2の挟持部11bと支持軸18とを結合する雄螺子23の頭部に支えられたスプリング24の付勢により引き下げられるので、スプリング24の反発する付勢により第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bを下方向へ自律的に押し下げることができ、使用者は下方向へ押し下げる力を加えなくても挟持面を簡単に変更できる。それ故、片手による挟持面の変更を可能とし、高い場所や狭小スペースで効率よく締緩作業を行うことができる。
【0037】
(変形例1)
第1の実施形態では、第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bがそれぞれ4つの挟持面を有する四角柱体である場合について説明したが、例えば三角柱体や六角柱体等、少なくとも2つの挟持面を有する角柱体であればよい。また、4つの挟持面のうち少なくとも2つの挟持面の表面形状が異なればよい。更に、挟持面の表面形状及び材質は、使用者が任意に形成又は選択可能であり、例えば、平面、凹凸面、曲面、ゴム面等があり、凹凸又は曲面の大きさは表面内で規則的又は不規則的であってもよい。
【0038】
(変形例2)
第1の実施形態では、レンチ本体12のツメ19を支持面17の中央から一方向に向けて伸びるように構成したが、支持面17の中央から垂直二方向に向けて伸びるように構成してもよい。その他、雄螺子23とスプリング24との間にワッシャーを挟むことにより、スプリング24の抜けを防止する等、様々な種類の補助材を追加してもよい。
【0039】
(変形例3)
第1の実施形態では、第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bの各個体が、それぞれ1つ用意されている場合について説明したが、挟持部は着脱式であることから、それぞれの個体をn個用意してもよい。nは2以上の自然数である。これにより、1つの挟持部が4つの挟持面を備える場合、4面×n個の挟持面を持つことになり、より多くの種類の結合部材に対応できる。
【0040】
(変形例4)
第1の実施形態では、モンキーレンチを用いて説明したが、一対の挟持部がいずれも固定された非スライド式の一般的なレンチやスパナ等にも適用可能である。
【0041】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態では、第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bの固定方法の別例について説明する。
【0042】
図6は、第2の実施形態に係るモンキーレンチ1の外観を示す図である。モンキーレンチ1は、第1の実施形態と同様に、結合部材を挟持し、結合部材に対してそれぞれ回転可能な脱着式の一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bを備える。また、図6に示すように、第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bは、それぞれ、4つの挟持面にベアリングを輪止めする球止孔30を備える。
【0043】
図7は、図6に示したレンチ本体12の先端構造を示す図である。レンチ本体12は、第1の挟持部11aと結合する先端において、先端の支持面17の中央に第1の挟持部11aを内側から支える円柱状の支持軸18を備える。支持軸18は、内部から側面に向けてスプリング32及びベアリング33を挿通し、スプリング32の一方の端部を固定する挿通孔31が形成されている。スプリング32の他方の端部には小球体であるベアリング33が摺動可能に配置される。
【0044】
図8は、図6に示した第1の挟持部11aの内部構造を示す図である。第1の挟持部11aは、表面形状が互いに異なる4つの挟持面21を有する四角柱体で構成される。また、第1の挟持部11aは、図7に示したレンチ本体12の支持軸18に嵌合する円柱状の内空間34を備える。第1の挟持部11aには、4つの挟持面21にベアリング33を輪止めする球止孔30がそれぞれ形成されており、内空間34を形成する第1の挟持部11aの内表面には、4つの球止孔30を通るように、ベアリング33が通過する凹凸ある輪状の通過溝35が形成されている。
【0045】
図7図8に示した第1の挟持部11a及びレンチ本体12において、第1の挟持部11aの内空間34にレンチ本体12の支持軸18を挿入して嵌合し、ベアリング33を通過溝35に収める。これにより、第1の挟持部11aとレンチ本体12とが互いに結合され一体化される。
【0046】
また、第1の挟持部11aの内空間34の径は、レンチ本体12の支持軸18の径よりも僅かに大きく、内空間34と支持軸18は、いずれも円柱状の形状を持つ。それ故、第1の挟持部11aは、支持軸18を中心にして回転する。
【0047】
また、ベアリング33の径は、球止孔30の径よりも僅かに大きい。それ故、第1の挟持部11aを回転させると、スプリング32が反発する付勢によりベアリング33を通過溝35に押した状態で、ベアリング33が通過溝35を転がり、ベアリング33の球面一部が第1の挟持部11aの球止孔30の円枠で止まり、第1の挟持部11aの回転動作は固定される。
【0048】
また、第1の挟持部11aの内表面に形成された通過溝35により、ベアリング33を通過溝35に沿わせて第1の挟持部11aを回転可能となり、第1の挟持部11aが支持軸18の軸方向にずれることはない。
【0049】
次に、モンキーレンチ1の操作方法について説明する。第1の挟持部11aを回転させ始めると、所定の挟持面21の球止孔30で輪止めされていたベアリング33の一部が挿通孔31の内部に向けて押し込まれ、スプリング32の付勢により第1の挟持部11a内表面の通過溝35で留まる状態になる。そして、所望の挟持面21が表れるまで第1の挟持部11aを引き続き回転させると、ベアリング33は通過溝35に沿って通過溝35を押しつつ転がり、スプリング32の押圧による付勢により所望の挟持面21の球止孔30で輪止めされる。
【0050】
以上より、第2の実施形態によれば、モンキーレンチ1において、結合部材を結合する一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bは、レンチ本体12の先端に設けられた支持軸18に嵌合し、回転された後に、スプリング32の付勢により支持軸18の内部から側面に押圧されるベアリング33により固定されるので、モンキーレンチ1の使用時に横ブレや捻じれが生じる不具合を抑制でき、締緩作業を安全に行うことができる。
【0051】
〔第3の実施形態〕
第1の実施形態及び第2の実施形態では、本発明の目的を達成するため、挟持部を回転式にする方法について説明した。一方、第3の実施形態では、その目的の達成度を更に高めるため、モンキーレンチ1のハンドル部13に2つの接続部(関節部)を設けて二軸化することを特徴とする。
【0052】
図9は、第3の実施形態に係るモンキーレンチ1の外観を示す図である。モンキーレンチ1は、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様に、結合部材を挟持し、結合部材に対してそれぞれ回転可能な着脱式の一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bを備える。
【0053】
また、モンキーレンチ1は、モンキーレンチ1のレンチ本体12とハンドル部13とを連結する連結部36と、連結部36と可動可能に接続された第1の接続部71を備えるレンチ本体12と、連結部36と可動可能に接続された第2の接続部72を備えるハンドル部13と、を備え、第1の接続部71が回転する回転軸と第2の接続部72が回転する回転軸は、互いに直交し、いずれか一方の回転軸は、モンキーレンチ1の使用時にレンチ本体12が回転する軸に対して、直交する構成を備える。
【0054】
連結部36は、レンチ本体12とハンドル部13とを連結する平板形状の連結棒である。連結部36の一方の端部はレンチ本体12に可動可能に接続され、他方の端部はハンドル部13に可動可能に接続される。連結部36とレンチ本体12とハンドル部13とは、それぞれ別々のパーツで構成されており、連結部36を挟んで直列に連結することで、モンキーレンチ1本体において2つの接続部が形成される。つまり、レンチ本体12は、連結部36と可動可能に接続される第1の接続部71を備え、ハンドル部13は、連結部36と可動可能に接続される第2の接続部72を備えることになる。
【0055】
図9に示したように、第1の接続部71が回転する第1の回転軸(レンチ本体12に対して連結部36が回転する回転軸)と、第2の接続部72が回転する第2の回転軸(ハンドル部13に対して連結部36が回転する回転軸)とは、互いに直交する。また、第1の回転軸は、モンキーレンチ1の使用時にレンチ本体12が回転する回転軸(結合部材を挟持した状態で第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bを回転させたときの回転軸)に対して、直交する。
【0056】
具体的には、モンキーレンチ1の使用時にレンチ本体12(第1の挟持部11a及び第2の挟持部11b)が回転する回転軸をx軸とすると、第1の回転軸は、そのx軸に対して直交するy軸となる。また、第2の回転軸は、第1の回転軸が回転することにより、x軸に対してz軸(直交軸)又はx軸(平行軸)となる。
【0057】
このように、モンキーレンチ1は、第1の接続部71が回転する第1の回転軸と第2の接続部72が回転する第2の回転軸とが直交する二軸構造を持つ。第1の回転軸と第2の回転軸とが直交するので、一軸の工具と同程度の作業性を備えることができ、結合部材に対するモンキーレンチ1の締緩作業を確実に行うことができる。
【0058】
また、第1の回転軸は常にモンキーレンチ使用時の回転軸に直交するので、モンキーレンチ1の使用時において、第1の回転軸の回転方向には力が加わらないようにすることができる。それ故、二軸化により自在変形を可能としつつも、第2の回転軸の回転方向にのみ力を加えることができ、一定以上の締め付け強度を結合部材に伝えることができる。
【0059】
以上より、第3の実施形態によれば、2つの回転軸が直交関係にある2軸構造を備え、少なくとも一方の回転軸がモンキーレンチ本体の回転方向に直交する構造を備えるので、モンキーレンチ自体の変形の自由度を高め、狭小なスペースであってもボルトやナット等に工具先端を確実に嵌め込むことができ、狭い場所でも確実な作業を可能とし、十分な締め付け強度を維持することができる。これにより、結合部材を締め付け又は緩める工具の利便性を更に向上できる。
【0060】
なお、レンチ本体12の回転軸に対して第1の回転軸が直交する場合について説明したが、第2の回転軸を直交させる構成でもよい。すなわち、第1の回転軸と第2の回転軸が互いに直交し、いずれか一方の回転軸が、工具の使用時にレンチ本体12が回転する軸に対して、直交する構成であればよい。
【符号の説明】
【0061】
1…モンキーレンチ
11a…第1の挟持部
11b…第2の挟持部
12…レンチ本体
13…ハンドル部
14…スライド体
15…ウォームギア
16a…第1の固定部
16b…第2の固定部
17…支持面
18…支持軸
19…ツメ
20…雌螺子
21,21a,21b…挟持面
22…下内空間
23…雄螺子
24…スプリング
25…上内空間
26…挿通孔
27…対向面
28…固定溝
29…挿通孔段
30…球止孔
31…挿通孔
32…スプリング
33…ベアリング
34…内空間
35…通過溝
36…連結部
51…六角ナット
52…刻み付き丸ナット
71…第1の接続部
72…第2の接続部
【要約】
【課題】結合部材を締め付け又は緩める工具の利便性を改善する。
【解決手段】モンキーレンチ1において、結合部材を結合する一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bは、表面形状が互いに異なる4つの挟持面を備え、結合部材に対して4つの挟持面のうちいずれかの挟持面を選択可能に回転する。また、一対の第1の挟持部11a及び第2の挟持部11bは、レンチ本体12の先端に設けられた支持軸18に嵌合し、支持軸18の軸方向に引き上げ、回転され引き下げられた後に、レンチ本体12又はスライド体14のツメ19と第1の挟持部11a又は第2の挟持部11bの固定溝28とでそれぞれ固定される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図7
図8
図9