(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572391
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】誘電体フィルタ、トランシーバ、および基地局
(51)【国際特許分類】
H01P 1/205 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
H01P1/205 B
H01P1/205 K
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-530953(P2018-530953)
(86)(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公表番号】特表2018-526949(P2018-526949A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】CN2015095791
(87)【国際公開番号】WO2017088174
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2018年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲暁▼▲峰▼
(72)【発明者】
【氏名】袁 本▲貴▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 止▲愚▼
(72)【発明者】
【氏名】沈 振
【審査官】
岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−019201(JP,A)
【文献】
特開昭62−161202(JP,A)
【文献】
特開平10−093311(JP,A)
【文献】
米国特許第05608363(US,A)
【文献】
国際公開第99/012224(WO,A1)
【文献】
特開2000−252703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルタであって、
前記誘電体フィルタの本体には、
少なくとも3つの共振空洞であり、各共振空洞はデバッグホールを含み、前記デバッグホールは前記本体に配置されている、共振空洞が形成されており、
互いに隣接しない2つの共振空洞の間に配置されたブラインドホールであり、該ブラインドホールは前記デバッグホールに接続されておらず、クロスカップリングを実施するように構成されている、ブラインドホールが形成されており、
前記ブラインドホールの深さは、前記誘電体フィルタのクロスカップリングの極性を決定し、かつ、
前記クロスカップリングの前記極性は、誘導結合または容量結合を含み、
前記ブラインドホールの前記深さが増加する場合に、前記クロスカップリングの前記極性が誘導結合から容量結合へ変化する、
誘電体フィルタ。
【請求項2】
前記ブラインドホールの前記深さは、前記誘電体フィルタの伝達ゼロの周波数に関連する、
請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項3】
前記ブラインドホールは、円柱形状、溝形状、ストリップ形状、または穴形状、のうち一つの形状である、
請求項1または2に記載の誘電体フィルタ。
【請求項4】
前記ブラインドホールの幅は、前記伝達ゼロの周波数に関連する、
請求項2に記載の誘電体フィルタ。
【請求項5】
前記ブラインドホールの幅が前記伝達ゼロの周波数に関連することは、
より大きい前記ブラインドホールの幅は、相対的により低い前記伝達ゼロの周波数を示すこと、および、前記伝達ゼロの周波数は、前記誘電体フィルタの中心周波数より大きいこと、を含む、
請求項4に記載の誘電体フィルタ。
【請求項6】
前記デバッグホールの深さは、前記デバッグホールに対応している共振空洞の共振周波数を決定するために使用される、
請求項1乃至5いずれか一項に記載の誘電体フィルタ。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の誘電体フィルタを含む、トランシーバ。
【請求項8】
請求項7に記載のトランシーバを含む、基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器コンポーネントに関する。そして、特定的には、誘電体フィルタ、トランシーバ、および基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体フィルタは、現代の移動通信技術において不可欠なパーツになっており、そして、通信信号周波数以外の雑音波または干渉信号をフィルタを通して除去するために、様々な移動通信システムに対して広く適用されている。
【0003】
金属フィルタと同様に、誘電体フィルタの高い選択性を実現するために、誘電体フィルタはクロスカップリング(cross coupling)を使用する必要がある。クロスカップリングは、2つの形態を有している。容量結合(capacitive coupling)と誘導結合(inductive coupling)である。容量結合においては、誘電体フィルタ
応答の下端(low end)で高い選択性を形成するように、誘電体フィルタ応答の下端に伝達ゼロ(transmission zero)が形成されている。誘導結合においては、誘電体フィルタ
応答の上端(high end)で高い選択性を形成するように、誘電体フィルタ応答の上端に伝達ゼロが形成されている。現在、業界で一般的に使用されている誘電体フィルタにおいて、誘電体フィルタの伝達ゼロは、たいてい誘導結合だけを実施することができる。誘電体フィルタの容量結合を実施するためには、PCBまたはケーブルといった追加の構造体が誘電体に対してブリッジされる必要があり、または、非クロスカップリング(non-cross coupling)のニアキャビティ構造が使用されることを必要とする。これらの追加的な構造体は、誘電体フィルタの工程、組み立て、およびチューニングに対して不便をもたらす。
【0004】
加えて、無線通信技術のますます高まる開発は、基地局と基地局における誘電体フィルタの両方の小型化を必要とする。しかしながら、容量結合を実施するためには、追加の構造体が既存の誘電体フィルタに対してカスケード接続される(cascaded)必要がある。その結果、既存の誘電体フィルタは、既存の通信技術における基地局の小型化の要求を満たすことができない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、容量結合を実施することができる既存の誘電体フィルタが大きな空間を占めるという従来技術の問題を解決するための、誘電体フィルタを提供する。
【0006】
第1態様に従って、この出願の一つの実施形態は、本体及び少なくとも3つの共振空洞を含む誘電体フィルタを提供する。ここで、各共振空洞はデバッグホールを含み、前記デバッグホールは前記本体に配置されており、各デバッグホールと該デバッグホールの周りの前記本体が単一の共振空洞を形成している。互いに隣接しない2つの前記共振空洞の間にブラインドホールが配置さており、該ブラインドホールは前記デバッグホールに接続されておらず、かつ、該ブラインドホールはクロスカップリングを実施するように構成されている。
【0007】
一つの可能なデザインにおいて、前記ブラインドホールの深さは、前記誘電体フィルタの伝達ゼロに関連する。
【0008】
一つの可能なデザインにおいて、前記ブラインドホールの前記深さは、前記誘電体フィルタのクロスカップリングの極性を決定し得る。かつ、前記クロスカップリングの前記極性は、誘導結合または容量結合を含む。
【0009】
一つの可能なデザインにおいて、前記ブラインドホールの前記深さは、前記誘電体フィルタの前記クロスカップリングの程度を決定し得る。
【0010】
一つの可能なデザインにおいて、前記ブラインドホールの前記深さは、前記誘電体フィルタの前記クロスカップリングの前記極性に関連し、かつ、前記ブラインドホールの前記深さが増加する場合に、前記クロスカップリングの前記極性が誘導結合から容量結合へ変化し得る。
【0011】
一つの可能なデザインにおいて、前記ブラインドホールは、以下の形状のうち一つである。円柱形状、溝形状、ストリップ形状、または穴形状。
【0012】
一つの可能なデザインにおいて、前記ブラインドホールの幅は、前記伝達ゼロに関連する。特定的には、より大きい前記ブラインドホールの幅は、前記伝達ゼロのより小さい相対的な位置を示し、かつ、前記誘電体フィルタの中心周波数の位置に対する前記伝達ゼロの前記相対的な位置は1より大きい。
【0013】
一つの可能なデザインにおいて、前記デバッグホールの深さは、前記デバッグホールに対応している共振空洞の共振周波数を決定するために使用され得る。デバッグホールは、特定的なシナリオに従って各デバッグホールの対応する共振空洞について別個の共振周波数が設定され得るよう、または、全ての共振周波数を同じくし得るように、互いに異なる深さを有してよい。
【0014】
別の態様に従って、本発明の一つの実施形態は、前述の可能なデザインのいずれか1つで説明された誘電体フィルタを含むトランシーバを提供する。
【0015】
別の態様に従って、本発明の一つの実施形態は、上述のトランシーバを含む基地局をさらに提供する。
【0016】
本発明の実施形態において提供される誘電体フィルタ、トランシーバ、および基地局の内部の新しい構造は、容量結合を実施するために使用される。このことは、製造工程を簡素化し、そして、さらに誘電体フィルタの構造を最小化する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の実施形態における又は先行技術における技術的ソリューションをより明確に説明するため、以降に、実施形態または従来技術を説明するために必要な添付の図面を簡単に説明する。
【
図1】
図1は、本発明の一つの実施形態に従った、誘電体フィルタ構造の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一つの実施形態に従った、誘電体フィルタ構造の上面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一つの実施形態に従った、誘電体フィルタ構造の底面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一つの実施形態に従った、誘電体フィルタの誘導結合に係るシミュレーション図である。
【
図5】
図5は、本発明の一つの実施形態に従った、誘電体フィルタの容量結合に係るシミュレーション図である。
【
図6】
図6は、本発明の一つの実施形態に従った、誘電体フィルタ構造の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の一つの実施形態に従った、誘電体フィルタ構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に従った技術的ソリューションが、添付の図面を参照して、以下に明確に、かつ、完全に説明される。明らかに、説明される実施形態は、単にいくらかの本発明の実施形態であるが、全てではない。創作努力なしに本発明の実施形態に基づいて当業者によって獲得される他の全ての実施形態は、本発明の保護範囲内に入るものとする。
【0019】
本発明の実施形態において説明される構造及びアプリケーションシナリオは、本発明の実施形態における技術的ソリューションをより明確に説明するように意図されており、そして、本発明の実施形態において提供される技術的ソリューションについて限定を構成するものではない。当業者であれば、通信技術の発展を伴って、本発明の実施形態において提供される技術的ソリューションは、また、同様の技術的問題に対しても適用可能であることを知ることができる。
【0020】
背景技術において述べた既存の誘電体フィルタの問題を解決するために、本発明の実施形態は、誘電体に付加的な構造体をカスケード接続することなく容量結合を実施するために、誘電体フィルタの新規な構造を創造的に提案している。添付図面を参照して、以下に本発明の実施形態が詳細に説明される。本発明の実施形態において提供される添付の図面は、本発明の実施形態を説明するために使用される単なる例であり、そして、本発明の保護範囲を限定するように意図されていないことに留意すべきである。
【0021】
図1に示されるように、誘電体フィルタは、少なくとも3つの共振空洞(resonant cavities)を含んでいる。本発明の一つの実施形態において、例えば、誘電体フィルタは、4つの共振空洞を含んでいる。誘電体
フィルタ(dielectric
filter)の主な構造は、本体(1)を含んでいる。4つのデバッグホール(11、12、13、および14)が、本体(1)の4つの隅にそれぞれ配置されている。スルーホール(101、102)が隣接するデバッグホールの間に配置されている。スルーホールは、本体(1)の上面および下面を通じて配置されている。この実施形態において、両方のスルーホール(101と102)は、ストリップ形状(strip shape)であるようにデザインされており、そして、スルーホールの2つの端部は、隣接する2つのデバッグホールの間のどこかに向けて(towards somewhere)それぞれに折り曲げられている。スルーホール(101)は、一つの例として使用されている。スルーホール(101)はストリップ形状であり、そして、本体(1)の上面および下面を通じて配置されている。スルーホール(101)のストリップ形状の一端(1011)は、デバッグホール(11)とデバッグホール(12)との間のどこかに向けて折り曲げられており、かつ、他端は、デバッグホール(11)とデバッグホール(14)との間のどこかに向けて折り曲げられている。スルーホール(101)は、共振空洞がデバッグホール(11)の周りに形成されるように、デバッグホール(11)を別のデバッグホール(12および14といったもの)から分離する。同様に、スルーホール(101)とスルーホール(102)は、各デバッグホールの周りに単一の共振空洞が個別に形成されるように、一緒に4つのデバッグホールを分離している。従って、
図1に示される誘電体
フィルタは、4つの共振空洞を含んでいる。各デバッグホールの一端は、本体(1)の上面を通じて配置されており、そして、他端は、凹部(concavity)を形成するように、本体(1)の中へ深く入り込んでいる。デバッグホールの深さは、必要性に応じてデザインされ、かつ、製造されてよい。そして、デバッグホールについて異なる深さを設定することによって、形成された共振空洞において異なる共振周波数を獲得することができる。デバッグホールの深さは、特定のアプリケーションのシナリオに応じて全て設定されてよく、そして、深さは、同じ又は異なるように設定されてよい。
【0022】
図1に示されるように、デバッグホール(12)の周りに形成された共振空洞およびデバッグホール(14)の周りに形成された共振空洞は、互いに隣接していない。互いに隣接していないこれら2つの共振空洞について、ブラインドホール(blind hole)(100)が
図1に示される位置に配置されている。ブラインドホール(100)は、デバッグホール(12)とデバッグホール(14)との間に配置されている。この実施形態におけるブラインドホール(100)は、ストリップ形状であるようにデザインされている。ブラインドホール(100)の上端は、本体(1)の上面を通じて配置されており、そして、ブラインドホールの下端は、要求される深さに応じて設定されてよい。ブラインドホール(100)の一端は、デバッグホール(12)によって形成される共振空洞の近くにあり、そして、他端は、デバッグホール(14)によって形成される共振空洞の近くにある。ブラインドホール(100)の2つの端部のいずれもが、デバッグホール(12)およびデバッグホール(14)と連通していない。ブラインドホール(100)は、ブラインドホール(100)の2つの側に配置されたスルーホール(101、102)のいずれとも連通していない。
【0023】
本発明の実施形態におけるスルーホール、デバッグホール、およびブラインドホールは、正方形、円形、ストリップ形状、楕円形、または別の平面形状であってよい。これは、本発明に係るこの実施形態において限定されるものではない。
【0024】
本体(1)は、一般的に、固体誘電材料、好ましくはセラミクス(ceramics)から成る。比較的に高い誘電率(dielectric constant)、比較的に優れた硬度および耐熱性を有するので、セラミクスは、誘電体フィルタの分野において一般的な固体誘電材料となってきている。確かに、当業者に知られているガラスおよび電気絶縁高分子ポリマーといった別の材料が、誘電材料として代替的に選択されてよい。
【0025】
デザインおよび製造の最中に、以下の方法において誘電体フィルタが獲得され得る。デバッグホール、スルーホール、およびブラインドホールを伴うオールインワン(all-in-one)の本体(1)を形成すること、次いで、本体上で表面めっき(surface plating)といった表面メタライゼーション(metallization)を実行すること、である。このように、誘電体フィルタに含まれる誘電体
フィルタの本体は連続している。統合された形成方法において誘電体フィルタが獲得される場合には、誘電体フィルタの製造工程をより簡素にすることができる。
【0026】
より多くの空洞(cavity)を伴う誘電体フィルタが
図7に示されている。より多くの共振空洞を伴う誘電体フィルタは、3つの空洞(
図6に示されるように)または4つの空洞を伴う固定の構造体にカスケード接続することによって形成され得る。より多くの空洞を伴う誘電体フィルタについて、クロスカップリング(cross coupling)を実施するために、ブラインドホールは隣接していない共振空洞の間に配置されている。3つまたはそれ以上の共振空洞を含む誘電体フィルタの構造の実施については前述の実施形態を参照されたい、そして、ここにおいて詳細は繰り返されない。
【0027】
ブラインドホール(100)は、誘電体フィルタのカップリングに関係している。誘電体フィルタのクロスカップリング形態は、ブラインドホール(100)の深さを決定することによって決定され得る。ブラインドホールの深さは、ここにおいて、ブラインドホールが誘電体フィルタの上面から誘電体フィルタの本体(1)の中へ到達する深さである。ブラインドホールの深さが増加する場合、誘電体フィルタのクロスカップリングの極性は、誘導結合から容量結合に変化し得る。ブラインドホールの深さは、クロスカップリングの程度が変化するように、実際のアプリケーションシナリオにおける必要性に応じて設定されてよい。
【0028】
デザインおよび製造の最中に、ブラインドホールの深さは、実際のアプリケーションシナリオにおける必要性に応じてブラインドホールの深さが決定された後で、たいてい固定される。特定的には、対応する所望の誘導結合の程度といった、誘電体フィルタの所望のクロスカップリング特性に応じてブラインドホールの対応する深さが決定された後で、ブラインドホールの深さが固定される。これに対応して、ブラインドホールの深さは、代替的に、対応する所望の容量結合の程度が決定された後で固定されてよい。固定のブラインドホール深さの実施は、製造の最中の品質を確保することができ、そして、パラメータが逸脱しないので、後に続く使用において品質を安定に保つことができる。実施において、誘電体フィルタのブラインドホールの深さは、代替的に、異なるパラメータを必要とするアプリケーションシナリオに適合するために調整可能であるようにデザインされてよい。
【0029】
ブラインドホールの深さは、実際のアプリケーションシナリオにおける必要性に応じて設定されてよい。伝達ゼロの周波数、もしくは、誘導結合または容量結合の所望の程度といったものである。これは、ここにおいて限定されるものではない。
【0030】
図1においては、2つの隣接しない共振空洞の間に1つのブラインドホール(100)が存在する。しかし、より多くのブラインドホールが代替的にデザインされてよい。ブラインドホールの量、位置、深さ、等は、実際に必要とされる伝達ゼロの量及び/又は周波数に応じて決定され得る。
【0031】
ブラインドホール(100)の幅は、伝達ゼロに関連する。特定的には、より大きいブラインドホールの幅は、伝達ゼロのより小さい相対的な位置を示し、そして、誘電体フィルタの中心周波数の位置に対する伝達ゼロの相対的な位置は1より大きい。
【0032】
ブラインドホール自体も、また、共振周波数を有している。ブラインドホールの共振周波数は、たいてい、フィルタ本体の通過帯域の共振のために使用されない。すなわち、ブラインドホールの共振周波数は、フィルタの通過帯域の共振周波数よりも高くてよく、または、フィルタの通過帯域の共振周波数よりも低くてよい。ブラインドホールの共振周波数が誘電体フィルタの通過帯域の共振周波数よりも高い場合に、クロスカップリングは誘導結合である。ブラインドホールの共振周波数が誘電体フィルタの通過帯域の共振周波数よりも低い場合に、クロスカップリングは容量結合である。ブラインドホールの共振周波数は、ブラインドホールの深さによって決定され得る。ブラインドホールの深さが増加するにつれて、ブラインドホールの共振周波数は徐々に減少する。周波数がフィルタの通過帯域の上端から下端まで低下する場合、クロスカップリングは誘導結合から容量結合へ切り替わる。特定的な実施形態においては、4つの共振空洞を含む誘電体フィルタにおいて、ブラインドホールの深さが誘電体フィルタの全体高さの2/5である場合に、クロスカップリングは誘導結合であり、そして、
図4に示されるように、伝達ゼロが通過帯域の右側に存在する。ブラインドホールの深さが全体高さの3/5に変化する場合に、クロスカップリングは容量結合であり、そして、
図5に示されるように、伝達ゼロが通過帯域の左側に存在している。
【0033】
導電層が誘電体
フィルタの表面に取り付けられており、そして、導電層は、また、ブラインドホール、スルーホール、およびデバッグホールの凹面(concave surface)に取り付けられてもよい。
【0034】
本発明のこの実施形態において提供される誘電体フィルタにおいては、ブラインドホールが、隣接しない共振空洞の間に配置されている。このようにして、誘電体フィルタの小型化が実施されるように、追加的な外部構造体をカスケード接続することなく誘電体
フィルタの内部で容量結合が実施され得る。加えて、追加的な外部構造体をカスケード接続することによって容量結合を実施する誘電体フィルタと比較して、このソリューションは、クロスカップリングを実施する構造体の製造プロセスを簡素化する。
【0035】
本発明に係るこの実施形態において提供される誘電体フィルタは、高出力無線通信基地局の無線周波数フロントエンド(radio frequency front end)に対して主に適用される。
【0036】
本発明に係る一つの実施形態は、さらに、トランシーバを提供する。前述の実施形態において提供された誘電体フィルタがトランシーバにおいて使用される。誘電体フィルタは、無線周波数信号をフィルタするように構成され得る。
【0037】
本発明に係る一つの実施形態は、さらに、基地局を提供する。前述の実施形態において提供されたトランシーバが基地局において使用される。
【0038】
本発明の目的、技術的ソリューション、および利点は、前述の特定的な実施形態においてさらに詳細に説明されている。前述の説明は、本発明の単なる特定的な実施形態であり、しかし、本発明の保護範囲を限定するように意図されていないことが理解されるべきである。本発明の精神および原理の範囲内でなされた変更、均等な置換、または改良は、本発明の保護範囲内にあるものとする。