(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。本開示において述べる作用機序は推定を含んでおり、その正否は発明の範囲を制限するものではない。
【0014】
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0015】
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を示す。
【0016】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0017】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0018】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0019】
本開示において、「機械方向」とは、長尺状に製造される基材において長尺方向を意味し、「幅方向」とは、「機械方向」に直交する方向を意味する。本開示において、「機械方向」を「MD方向」ともいい、「幅方向」を「TD方向」ともいう。
【0020】
<クロマトグラフィー媒体用基材>
本開示は、イムノクロマトグラフ用ストリップ(immunochromatographic strip)が備えるクロマトグラフィー媒体(chromatography media)に用いるための基材(本開示において「クロマトグラフィー媒体用基材」という。)を提供する。
【0021】
本開示のクロマトグラフィー媒体用基材は、親水性のポリオレフィン微多孔膜からなり、少なくとも一方の面において滴下1秒後の水の接触角が0度〜60度であり、キャピラリーフロータイムが5秒/4cm〜300秒/4cmである。
【0022】
本開示によれば、キャピラリーフロータイムのばらつきが小さく、且つ、検査速度に優れたクロマトグラフィー媒体用基材が提供される。
【0023】
以下、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材の構成要素について詳細に説明する。
【0024】
[親水性のポリオレフィン微多孔膜]
本開示のクロマトグラフィー媒体用基材は、親水性のポリオレフィン微多孔膜からなる。親水性のポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィンを含んで構成された親水性の微多孔膜である。本開示においてポリオレフィン微多孔膜とは、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。
【0025】
ポリオレフィンは疎水性の樹脂であるので、ポリオレフィン微多孔膜そのものは疎水性である。本開示のクロマトグラフィー媒体用基材における親水性のポリオレフィン微多孔膜は、親水化処理により親水性を付与されたポリオレフィン微多孔膜である。ポリオレフィン微多孔膜の親水化処理の方法の詳細は後述する。
【0026】
本開示においてポリオレフィン微多孔膜が親水性であるとは、少なくとも一方の面において、滴下1秒後の水の接触角が60度以下であることを意味する。滴下1秒後の水の接触角は、後述する測定方法によって測定される値である。
【0027】
[接触角]
本開示のクロマトグラフィー媒体用基材(すなわち、親水性のポリオレフィン微多孔膜)は、少なくとも一方の面において、滴下1秒後の水の接触角が0度〜60度である。本開示のクロマトグラフィー媒体用基材がイムノクロマトグラフ用ストリップを構成する際、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材における滴下1秒後の水の接触角が0度〜60度である面が、被検出物質を含有する可能性のある液体状のサンプルを受容する側の面になる。本開示のクロマトグラフィー媒体用基材は、両面において、滴下1秒後の水の接触角が0度〜60度であることが好ましい。
【0028】
本開示のクロマトグラフィー媒体用基材(すなわち、親水性のポリオレフィン微多孔膜)の表面について、滴下1秒後の水の接触角は、下記の測定方法によって測定される値である。
【0029】
クロマトグラフィー媒体用基材を温度24℃且つ相対湿度60%の雰囲気に24時間以上放置して調湿した後、同じ温度及び湿度の雰囲気にて、クロマトグラフィー媒体用基材の表面に注射器で1μLの水滴を落とし、滴下1秒後の水の静的接触角を、全自動接触角計を用いてθ/2法により測定する。
【0030】
本開示のクロマトグラフィー媒体用基材(すなわち、親水性のポリオレフィン微多孔膜)は、少なくとも一方の面において、滴下1秒後の水の接触角が60度以下である。これによって、検査速度が向上し且つキャピラリーフロータイムのばらつきが低減される。この観点からは、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材の表面における滴下1秒後の水の接触角は50度以下であることが好ましく、40度以下であることがより好ましく、30度以下であることが更に好ましい。検査精度の向上の観点からは、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材の表面における滴下1秒後の水の接触角は1度以上であることが好ましく、5度以上であることがより好ましい。
【0031】
[キャピラリーフロータイム]
本開示のクロマトグラフィー媒体用基材(すなわち、親水性のポリオレフィン微多孔膜)は、キャピラリーフロータイムが5秒/4cm〜300秒/4cmである。本開示のクロマトグラフィー媒体用基材について、キャピラリーフロータイムは、下記の吸水試験によって測定される値である。
【0032】
吸水試験:クロマトグラフィー媒体用基材を、TD方向6cm且つMD方向1cmの長方形に切り出す。この切断片の長さ方向一端部に粘着テープを貼り付けて、ポリプロピレン製の板の上に切断片を固定する。切断片の長さ方向が鉛直方向に対して20度となるように板を傾け、水が入ったビーカーに、切断片を上側に配置した状態で板を差し込み、切断片の長さ方向他端部を水に1cm浸漬させる。この状態を大気中常圧下、温度24℃、相対湿度60%において維持する。切断片を水に浸漬させた時点を起点として、毛細管現象により水が切断片上を移動し、切断片における水で濡れた部分と濡れていない部分との界面の全てが、ビーカー内の水面から切断片の長さ方向4cmの位置に到達するまでの時間を測定する。この時間をキャピラリーフロータイムとする。
【0033】
本開示のクロマトグラフィー媒体用基材は、キャピラリーフロータイムが5秒/4cm以上であることによって、検査精度が向上する。この観点からは、クロマトグラフィー媒体用基材のキャピラリーフロータイムは10秒/4cm以上であることが好ましく、20秒/4cm以上であることがより好ましい。本開示のクロマトグラフィー媒体用基材は、キャピラリーフロータイムが300秒/4cm以下であることによって、検査速度に優れ且つキャピラリーフロータイムのばらつきが低減される。この観点からは、クロマトグラフィー媒体用基材のキャピラリーフロータイムは250秒/4cm以下であることが好ましく、200秒/4cm以下であることがより好ましい。
【0034】
本開示のクロマトグラフィー媒体用基材(すなわち、親水性のポリオレフィン微多孔膜)における水の接触角及びキャピラリーフロータイムを制御する方法としては、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造、孔径及び空孔率の調整;ポリオレフィン微多孔膜の親水化処理の方法及び程度;ポリオレフィン微多孔膜に付着させる界面活性剤の種類及び付着量;などが挙げられる。
【0035】
次に、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材である親水性ポリオレフィン微多孔膜、及び親水化処理前のポリオレフィン微多孔膜の特性について説明する。親水性ポリオレフィン微多孔膜と親水化処理前のポリオレフィン微多孔膜とに共通する特性については、単に「ポリオレフィン微多孔膜」と記載して特性を説明する。
【0036】
[平均流量孔径]
ポリオレフィン微多孔膜は、平均流量孔径が0.02μm〜5μmであることが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径が0.02μm以上であると、キャピラリーフロータイムがより好ましい範囲になり、検査速度がより向上し得る。この観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径は0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径が5μm以下であると、十分な検査精度を得やすい。この観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径は4μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。
【0037】
ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径は、PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200−AEXL)を用い、浸液にPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)を用いて、ASTM E1294−89に規定するハーフドライ法に基づき求める。
【0038】
[膜厚]
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は20μm〜450μmであることが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の膜厚が450μm以下であると、使用するサンプル量の低減又は検査精度の向上の観点から好ましい。この観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚が20μm以上であると、キャピラリーフロータイムがより好ましい範囲になり、検査速度が向上し得るため好ましい。この観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は25μm以上がより好ましく、30μm以上が更に好ましい。
【0039】
[空孔率]
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は70%〜95%であることが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の空孔率が70%以上であると、キャピラリーフロータイムがより好ましい範囲になり、検査速度が向上し得る点で好ましい。この観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は75%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率が95%以下であると、膜の力学強度が良好となりハンドリング性が向上する点で好ましい。この観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は93%以下がより好ましい。
【0040】
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率(%)は、下記の式により求める。
空孔率(%)={1−(Wa/xa+Wb/xb+Wc/xc+…+Wn/xn)/t}×100
ここに、ポリオレフィン微多孔膜の構成材料がa、b、c、…、nであり、前記構成材料の質量がそれぞれWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm
2)であり、前記構成材料の真密度がそれぞれxa、xb、xc、…、xn(g/cm
3)であり、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚がt(cm)である。
【0041】
[比表面積]
ポリオレフィン微多孔膜のBET比表面積は1m
2/g〜30m
2/gであることが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜のBET比表面積が30m
2/g以下であると、キャピラリーフロータイムがより好ましい範囲になり、検査速度が向上し得る点で好ましい。この観点からは、ポリオレフィン微多孔膜のBET比表面積は25m
2/g以下がより好ましく、20m
2/g以下が更に好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜のBET比表面積が1m
2/g以上であると、膜の力学強度が良好となりハンドリング性が向上する点で好ましい。この観点からは、ポリオレフィン微多孔膜のBET比表面積は2m
2/g以上がより好ましい。
【0042】
ポリオレフィン微多孔膜のBET比表面積は、マイクロトラック・ベル株式会社の比表面積測定装置(型式:BELSORP−mini)を用い、液体窒素温度下における窒素ガス吸着法にて、設定相対圧:1.0×10
−3〜0.35の吸着等温線を測定し、BET法で解析して求めた値である。
【0043】
[ポリオレフィン]
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンとポリエチレンとの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物等が好適である。ポリオレフィン微多孔膜としては、含まれるポリオレフィンがポリエチレンのみであるポリエチレン微多孔膜が好適である。
【0044】
ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン組成物(本開示において、2種以上のポリオレフィンを含む組成物を意味し、含まれるポリオレフィンがポリエチレンのみである場合はポリエチレン組成物という。)から構成されることが好ましい。ポリオレフィン組成物は、延伸時のフィブリル化に伴ってネットワーク構造を形成し、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率を増加させる効用がある。
【0045】
ポリオレフィン組成物としては、重量平均分子量が9×10
5以上である超高分子量ポリエチレンを5質量%〜30質量%含むポリオレフィン組成物が好ましく、超高分子量ポリエチレンを5質量%〜25質量%含むポリオレフィン組成物がより好ましく、超高分子量ポリエチレンを5質量%〜15質量%含むポリオレフィン組成物が更に好ましい。
【0046】
ポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン全体の重量平均分子量が2×10
5〜2×10
6であることが好ましい。ポリオレフィン組成物は、重量平均分子量が9×10
5以上である超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が2×10
5〜8×10
5で密度が0.92g/cm
3〜0.96g/cm
3である高密度ポリエチレンとが、質量比5:95〜30:70で混合したポリオレフィン組成物であることが好ましい。
【0047】
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンの重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜をo−ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(システム:Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム:GMH6−HT及びGMH6−HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定を行うことで得られる。分子量の校正には分子量単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いる。
【0048】
[ポリオレフィン微多孔膜の製造方法]
ポリオレフィン微多孔膜は、例えば、下記の工程(I)〜(IV)を含む製造方法で製造することができる。
【0049】
工程(I):ポリエチレンを含むポリオレフィン組成物と大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤とを含む溶液を調製する工程。
工程(II):前記溶液を溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押し出し、冷却固化して第一のゲル状成形物を得る工程。
工程(III):前記第一のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(一次延伸)し且つ溶剤の乾燥を行い第二のゲル状成形物を得る工程。
工程(IV):前記第二のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(二次延伸)する工程。
【0050】
工程(I)は、ポリオレフィン組成物と大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤とを含む溶液を調製する工程である。前記溶液は、好ましくは熱可逆的ゾルゲル溶液であり、ポリオレフィン組成物を溶剤に加熱溶解させることによりゾル化させ、熱可逆的ゾルゲル溶液を調製する。大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤としてはポリオレフィンを十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されない。前記揮発性の溶剤としては、例えば、テトラリン(206℃〜208℃)、エチレングリコール(197.3℃)、デカリン(デカヒドロナフタレン、187℃〜196℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃〜144℃)、ジエチルトリアミン(107℃)、エチレンジアミン(116℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)、ヘキサン(69℃)等が挙げられ、デカリン又はキシレンが好ましい(括弧内の温度は、大気圧における沸点である。)。前記揮発性の溶剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
工程(I)において調製する溶液は、ポリオレフィン微多孔膜のキャピラリーフロータイムを制御する観点から、ポリオレフィン組成物の濃度が10質量%〜40質量%であることが好ましく、15質量%〜35質量%であることがより好ましい。ポリオレフィン組成物の濃度が10質量%以上であると、ポリオレフィン微多孔膜の製膜工程において切断の発生を抑制することができ、また、ポリオレフィン微多孔膜の力学強度が高まりハンドリング性が向上する。ポリオレフィン組成物の濃度が40質量%以下であると、ポリオレフィン微多孔膜の空孔が形成されやすい。
【0052】
工程(II)は、工程(I)で調製した溶液を溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押し出し、冷却固化して第一のゲル状成形物を得る工程である。工程(II)は、例えば、ポリオレフィン組成物の融点乃至融点+65℃の温度範囲においてダイより押し出して押出物を得、次いで前記押出物を冷却して第一のゲル状成形物を得る。第一のゲル状成形物はシート状に賦形することが好ましい。冷却は、水又は有機溶媒への浸漬によって行ってもよいし、冷却された金属ロールへの接触によって行ってもよく、一般的には工程(I)に使用した揮発性の溶剤への浸漬によって行われる。
【0053】
工程(III)は、第一のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(一次延伸)し且つ溶剤の乾燥を行い第二のゲル状成形物を得る工程である。工程(III)の延伸工程は、二軸延伸が好ましく、縦延伸と横延伸とを別々に実施する逐次二軸延伸でもよく、縦延伸と横延伸とを同時に実施する同時二軸延伸でもよい。一次延伸の延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜のキャピラリーフロータイムを制御する観点から、1.1倍乃至3倍が好ましく、延伸時の温度は75℃以下が好ましい。工程(III)の乾燥工程は第二のゲル状成形物が変形しない温度であれば特に制限なく実施されるが、60℃以下で行われることが好ましい。
【0054】
工程(III)の延伸工程と乾燥工程とは、同時に行ってもよく、段階的に行ってもよい。例えば、予備乾燥しながら一次延伸し、次いで本乾燥を行ってもよいし、予備乾燥と本乾燥との間に一次延伸を行ってもよい。一次延伸は、乾燥を制御し、溶剤を好適な状態に残存させた状態でも行うことができる。
【0055】
工程(IV)は、第二のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸(二次延伸)する工程である。工程(IV)の延伸工程は、二軸延伸が好ましい。工程(IV)の延伸工程は、縦延伸と横延伸とを別々に実施する逐次二軸延伸;縦延伸と横延伸とを同時に実施する同時二軸延伸;縦方向に複数回延伸した後に横方向に延伸する工程;縦方向に延伸し横方向に複数回延伸する工程;逐次二軸延伸した後にさらに縦方向及び/又は横方向に1回又は複数回延伸する工程;のいずれでもよい。
【0056】
二次延伸の延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜のキャピラリーフロータイムを制御する観点から、好ましくは5倍〜65倍であり、より好ましくは8倍〜55倍である。延伸倍率を大きくすると、ポリオレフィン微多孔膜の製膜において切断の発生頻度が増加する傾向がある。延伸倍率を低くすると厚み斑が大きくなる傾向がある。延伸は、溶剤が除去された後に行われるが、乾燥を制御して、溶剤を好適な状態に残存させた状態で行うこともできる。二次延伸の延伸温度は、ポリオレフィン微多孔膜のキャピラリーフロータイムを制御する観点から、90℃〜135℃が好ましく、90℃〜125℃がより好ましい。
【0057】
工程(IV)に次いで熱固定処理を行ってもよい。熱固定温度は、ポリオレフィン微多孔膜のキャピラリーフロータイムを制御する観点から、120℃〜160℃が好ましく、125℃〜150℃がより好ましい。熱固定温度を高くすると、ポリオレフィン微多孔膜の製膜において切断の発生頻度が増加する。
【0058】
上記の製造方法により、高度な多孔質構造を有するポリオレフィン微多孔膜を製造することが可能になる。
【0059】
[ポリオレフィン微多孔膜の親水化処理]
ポリオレフィン微多孔膜の親水化処理方法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、界面活性剤又は親水性材料のコーティング、親水性モノマーのグラフト重合が挙げられる。
【0060】
検出精度の向上の観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の表面及び/又は空孔内表面にプラズマ処理を施すことが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜のキャピラリーフロータイムのばらつきを低減する観点からは、ポリオレフィン微多孔膜を界面活性剤により処理して、親水化することが好ましい。すなわち、ポリオレフィン微多孔膜のキャピラリーフロータイムのばらつきを低減する観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の表面及び/又は空孔内表面には界面活性剤が付着していることが好ましい。
【0061】
親水性のポリオレフィン微多孔膜の一実施形態として、ポリオレフィン微多孔膜の表面及び空孔内表面の少なくとも一方にプラズマ処理が施され、且つ、前記ポリオレフィン微多孔膜の表面及び空孔内表面の少なくとも一方に界面活性剤が付着した微多孔膜が挙げられる。本実施形態は、検出精度の向上とキャピラリーフロータイムのばらつきの低減とを共に実現する観点から好ましい形態である。
【0062】
ポリオレフィン微多孔膜を表面処理する界面活性剤としては、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0063】
陽イオン系界面活性剤としては、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0064】
陰イオン系界面活性剤としては、高級脂肪酸アルカリ塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。中でもアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)が好ましい。
【0065】
両性イオン系界面活性剤としては、アルキルベタイン系化合物、イミダゾリン系化合物、アルキルアミンオキサイド、ビスオキシボレート系化合物等が挙げられる。
【0066】
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0067】
ポリオレフィン微多孔膜をコーティングする親水性材料としては、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレン−ポリビニルアルコール共重合体、ポリウレタン、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0068】
ポリオレフィン微多孔膜の表面にグラフト重合する親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルスルホン酸等が挙げられる。
【0069】
<イムノクロマトグラフ用ストリップ>
本開示のイムノクロマトグラフ用ストリップは、被検出物質を含有する可能性のある液体状のサンプルを検査するためのイムノクロマトグラフ用ストリップである。
【0070】
本開示のイムノクロマトグラフ用ストリップの好ましい実施形態は、
前記サンプルを受け入れるサンプルパッドと、
前記被検出物質と特異的に結合する標識物質を含有するコンジュゲートパッドと、
前記被検出物質と特異的に結合する検出試薬が固定化されたクロマトグラフィー媒体と、を備えたイムノクロマトグラフ用ストリップである。
【0071】
本開示のイムノクロマトグラフ用ストリップの形状及び幅は、特に限定されず、操作しやすい形状及び幅であれば問題ない。
【0072】
図1に、本開示のイムノクロマトグラフ用ストリップの形態例を示す。イムノクロマトグラフ用ストリップAは、展開方向(
図1において矢印Xで示す方向)の上流から下流に向かって、滴下されたサンプルを受け入れるサンプルパッド2、標識物質を含有するコンジュゲートパッド3、被検出物質と特異的に結合する検出試薬が固定化されたクロマトグラフィー媒体1、余分なサンプルを吸収する吸収パッド4がこの順に、プラスチック等からなる長尺状の支持体板5上に固定されて構成されている。
【0073】
クロマトグラフィー媒体1は、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材と、当該クロマトグラフィー媒体用基材に設けられた検出部11とを備えている。検出部11は、被検出物質と特異的に結合する検出試薬が固定化された領域である。クロマトグラフィー媒体用基材は、フィルムによる裏打ち加工が行われた上で、クロマトグラフィー媒体1に用いられることが好ましい。
【0074】
クロマトグラフィー媒体1は、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材を含む。クロマトグラフィー媒体1の一例においては、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材のTD方向と、サンプルの展開方向(
図1において矢印Xで示す方向)とが一致する。クロマトグラフィー媒体1の別の一例においては、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材のMD方向と、サンプルの展開方向(
図1において矢印Xで示す方向)とが一致する。
【0075】
検出部11は、
図1に示すように、クロマトグラフィー媒体用基材の任意の位置において、展開方向に直交する方向に、直線状に形成されていることが好ましい。ただし、検出部11の形状は直線状に限定されず、例えば、円形のスポット、数字、文字、記号(例えば、+、−)等でもよい。
【0076】
イムノクロマトグラフ用ストリップAの使用方法について、
図2〜
図3を用いて説明する。
図2〜
図3はイムノクロマトグラフ用ストリップAの厚さ方向の断面を模式的に示した図である。被検出物質101を含む可能性のあるサンプルをサンプルパッド2上に滴下すると、測定に不要な成分が適宜除去された上で、コンジュゲートパッド3へとサンプルが移動する。コンジュゲートパッド3にはサンプル中の被検出物質101と結合可能な結合部(例えば、抗体)を含む標識物質102が含まれており、コンジュゲートパッド3において被検出物質101と標識物質102が結合して複合体103が形成される。複合体103を含んだサンプルが、コンジュゲートパッド3からクロマトグラフィー媒体1に移動する(
図3の(a)の状態)。クロマトグラフィー媒体1においてサンプルは、検出試薬104を含む検出部11へ向かって移動する。サンプル中に被検出物質101が含まれている場合は、検出部11において複合体103が検出試薬104に特異的に結合することにより、検出部11に標識物質102が濃縮される(
図3の(b)の状態)。濃縮された標識物質102が目視又は機器を用いて検出され、これにより、サンプル中に被検出物質101が存在することを定性的に及び定量的に分析することができる。その後、吸収パッド4において、余分なサンプルが吸収される。
【0077】
本開示のイムノクロマトグラフ用ストリップを用いたイムノクロマトグラフでは、必要であれば展開液を用いてもよい。展開液は、イムノクロマトグラフ法において移動相を構成する液体であり、クロマトグラフィー媒体を、被検出物質を含むサンプルと共に移動する。このような展開液であれば、どのような液体であってもよい。展開液は、サンプルが付与される経路と同じ経路でクロマトグラフィー媒体に付与されてもよく、サンプルが付与される経路とは別の経路でクロマトグラフィー媒体に付与されてもよい。
【0078】
イムノクロマトグラフ用ストリップの用途としては、インフルエンザ、B型肝炎、食中毒などの感染症診断;妊娠診断;心筋梗塞などの各種の疾患ごとのバイオマーカー診断;等が挙げられる。
【0079】
以下、イムノクロマトグラフで分析できるサンプル及びイムノクロマトグラフ用ストリップに含まれる部材について詳細に説明する。
【0080】
[サンプル]
本開示のイムノクロマトグラフ用ストリップで分析できるサンプルは、被検出物質を含む可能性のあるサンプルである限り限定されない。サンプルとしては、例えば、動物(特にヒト)の体液(例えば、血液、血清、血漿、髄液、涙液、汗、尿、膿、鼻水、喀痰);動物(特にヒト)の排泄物(例えば、糞便);動物(特にヒト)の臓器、組織、粘膜、皮膚、それらを含むと考えられる搾過検体、スワブ又はうがい液;動物又は植物それ自体;動物又は植物の乾燥体;植物の抽出液;食品の抽出液;などの生物学的試料が挙げられる。
【0081】
被検出物質としては、それに特異的に結合する物質が存在する被検出物質であれば特に限定されず、タンパク質、ペプチド、核酸、糖、糖タンパク質、糖脂質、複合糖質などが挙げられる。本開示において「特異的に結合する」とは、生体分子が持つ親和力に基づいて結合することを意味する。このような親和力に基づく結合としては、抗原と抗体との結合、糖とレクチンとの結合、ホルモンと受容体との結合、酵素と阻害剤との結合、相補的核酸同士の結合、核酸と核酸結合タンパク質との結合などが挙げられる。被検出物質が抗原性を有する場合、被検出物質に特異的に結合する物質としてはポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を例示することができる。被検出物質が糖又は糖タンパク質の場合、被検出物質に特異的に結合する物質としてはレクチンを例示することができる。具体的な被検出物質としては、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、HER2タンパク、前立腺特異抗原(PSA)、CA19−9、α−フェトプロテイン(AFP)、免疫抑制酸性蛋白(IAP)、CA15−3、CA125、トロポニンI、トロポニンT、CK−MB、C反応性蛋白(CRP)、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒトヘモグロビン、アルブミン、糖化アルブミン、便潜血、梅毒抗体、クラミジア抗原、A群β溶連菌抗原、HBs抗体、HBs抗原、インフルエンザウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
サンプルパッドに滴下するサンプルは、下記の(i)〜(v)のいずれでもよい。
【0083】
(i)生物学的試料それ自体。
(ii)生物学的試料から抽出用溶媒を用いて抽出した抽出液。
(iii)生物学的試料又は抽出液を希釈剤で希釈した希釈液。
(iv)生物学的試料又は抽出液を濃縮した濃縮液。
(v)(i)〜(iv)のいずれかに標識物質を混合し標識物質と被検出物質とを結合させてなる複合体を含む液体。
【0084】
抽出用溶媒又は希釈剤としては、通常の免疫学的分析法で用いられる溶媒(例えば、水、生理食塩液、緩衝液等)を用いることができる。
【0085】
[サンプルパッド]
サンプルパッドとしては、例えば、セルロース、ガラス、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、ポリオレフィン、綿等の各種繊維の1種又は2種以上からなる、不織布、織布、紙状体、微多孔膜が挙げられる。サンプルパッドは、サンプルを受け入れるだけでなく、サンプル中の不溶物粒子等を濾過する機能をも兼ねる。検査の際、サンプル中の被検出物質がサンプルパッドに非特異的に吸着し検査精度が低下することを抑制するため、サンプルパッドに対して予め非特異的吸着防止処理を施してもよい。サンプルパッドは、上記の不織布など単独のシートのみならず、上記の不織布などと血球分離膜などとを積層した積層体でもよい。
【0086】
[コンジュゲートパッド]
コンジュゲートパッドは、サンプル中の被検出物質と特異的に結合する標識物質を含む多孔質膜であることが好ましい。コンジュゲートパッドは、標識物質を含む懸濁液を多孔質膜に含浸させ、乾燥させて作製できる。コンジュゲートパッドを構成する多孔質膜としては、例えば、セルロース、ガラス、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、ポリオレフィン、綿等の各種繊維の1種又は2種以上からなる、不織布、織布、紙状体、微多孔膜が挙げられる。
【0087】
[標識物質]
標識物質は、被検出物質と特異的に結合する結合部と、目視又は機器により検出される標識部とを有する。
【0088】
標識物質の結合部は、対象とする被検出物質に応じて適宜選定すればよい。被検出物質と標識物質の結合部との組合せ(被検出物質/標識物質の結合部)としては、例えば、抗原/抗体、糖/レクチン、糖タンパク質/レクチン、ホルモン/ホルモン受容体、酵素/酵素阻害剤、核酸/相補的核酸、核酸/核酸結合タンパク質などが挙げられる。
【0089】
標識物質の標識部としては、不溶性担体、酵素等が挙げられ、目視で検出されやすい点で不溶性担体が好ましい。標識物質の標識部として不溶性担体を用いる場合は、結合部を不溶性担体に感作することにより標識物質を調製することができる。
【0090】
不溶性担体としては、金、銀、白金等のコロイド状金属粒子、酸化鉄等のコロイド状金属酸化物粒子、硫黄等のコロイド状非金属粒子、合成高分子からなるラテックス粒子などが挙げられる。不溶性担体としては、検出が簡便な観点から、金コロイドが好ましい。
【0091】
不溶性担体は、目視による検出を容易にする観点から、有色であることが好ましい。コロイド状金属粒子及びコロイド状金属酸化物粒子は、粒子自体が粒径に応じた特定の色を呈するので、その色彩を標識として利用することができる。
【0092】
コロイド状金属粒子又はコロイド状金属酸化物粒子としては、例えば、コロイド状金粒子、コロイド状銀粒子、コロイド状白金粒子、コロイド状酸化鉄粒子、コロイド状酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。コロイド状金属粒子又はコロイド状金属酸化物粒子の平均粒径は、強い色調が得られる観点から、1nm〜500nmが好ましく、10nm〜150nmがより好ましく、20nm〜100nmが更に好ましい。コロイド状金粒子とコロイド状銀粒子が、それぞれの適当な粒径において、コロイド状金粒子は赤色、コロイド状銀粒子は黄色を呈する点で好ましい。コロイド状金粒子は、市販の粒子でもよく、常法(例えば、塩化金酸をクエン酸ナトリウムで還元する方法)により調製した粒子でもよい。
【0093】
結合部をコロイド状金属粒子又はコロイド状金属酸化物粒子に感作する方法としては、物理吸着又は化学結合を応用した公知の方法が挙げられる。例えば、コロイド状金粒子に抗体を感作した標識物質は、金粒子がコロイド状に分散した分散液に抗体を加えて物理吸着させた後、牛血清アルブミン溶液を添加して抗体が未結合である粒子表面をブロッキングすることにより調製する。
【0094】
[クロマトグラフィー媒体]
クロマトグラフィー媒体は、クロマトグラフィー媒体用基材と、クロマトグラフィー媒体用基材に設けられた検出部であって、被検出物質と特異的に結合する検出試薬が固定化された検出部と、を備えている。検出部は、被検出物質と特異的に結合する検出試薬が固定化された領域である。被検出物質が複数種ある場合は、それぞれに対応した検出試薬を固定化して、クロマトグラフィー媒体用基材に複数の検出部を形成してもよい。
【0095】
検出試薬は、被検出物質と特異的に結合する物質である。被検出物質と、標識物質の結合部と、検出試薬との組合せ(被検出物質/標識物質の結合部/検出試薬)としては、例えば、抗原/抗原に対する第一の抗体/抗原に対する第二の抗体、糖/第一のレクチン/第二のレクチン、糖タンパク質/糖タンパク質に対する抗体/レクチン、糖タンパク質/レクチン/糖タンパク質に対する抗体、ホルモン/ホルモン受容体/ホルモンに対する抗体、ホルモン/ホルモンに対する抗体/ホルモン受容体、酵素/酵素阻害剤/酵素に対する抗体、酵素/酵素に対する抗体/酵素阻害剤、核酸/第一の相補的核酸/第二の相補的核酸、核酸/相補的核酸/核酸結合タンパク質、核酸/核酸結合タンパク質/相補的核酸などが挙げられる。
【0096】
検出試薬をクロマトグラフィー媒体用基材に固定化する方法としては、検出試薬をクロマトグラフィー媒体用基材に物理的又は化学的に直接固定化する方法と、検出試薬をラテックス粒子などの微粒子に物理的又は化学的に結合し、この微粒子をクロマトグラフィー媒体用基材に固定化する方法(すなわち、間接的な固定化方法)のいずれを用いてもよい。感度調整の容易さの観点からは、直接固定化が好ましい。
【0097】
検出試薬をクロマトグラフィー媒体用基材に直接固定化する方法としては、例えば、物理吸着、共有結合が挙げられる。共有結合によって検出試薬をクロマトグラフィー媒体用基材に固定化する場合、臭化シアン、グルタルアルデヒド、カルボジイミド等を結合剤として使用できる。
【0098】
検出試薬をクロマトグラフィー媒体用基材に間接的に固定化する方法としては、例えば、検出試薬を結合した不溶性微粒子をクロマトグラフィー媒体用基材に固定化する方法がある。不溶性微粒子としては、クロマトグラフィー媒体用基材に捕捉され移動することのできない粒径(例えば、平均粒径5μm程度以上)の微粒子を選択する。不溶性微粒子として抗原抗体反応に使用される粒子が種々知られており、例えば、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体等の有機高分子の微粒子;ゼラチン、ベントナイト、アガロース、架橋デキストラン等の微粒子;シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ等の無機酸化物粒子;無機酸化物粒子にシランカップリング剤等で官能基を導入した無機粒子;が挙げられる。
【0099】
検出試薬又は検出試薬を結合した不溶性微粒子をクロマトグラフィー媒体用基材へ付与する手段としては、例えば、マイクロシリンジ、調節ポンプ付きペン、インキ噴射印刷等の手段が挙げられる。
【0100】
検出試薬をクロマトグラフィー媒体用基材に固定化した後、非特異的な吸着により分析の精度が低下することを抑制するため、クロマトグラフィー媒体用基材に公知の方法でブロッキング処理を行ってもよい。一般的にブロッキング処理には、ウシ血清アルブミン、スキムミルク、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質が好適に用いられる。ブロッキング処理後、必要に応じて、Tween20、TritonX−100、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、SDBS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)等の界面活性剤でクロマトグラフィー媒体用基材を洗浄してもよい。
【0101】
クロマトグラフィー媒体は、検出部の下流に、標識物質に特異的に結合するコントロール用物質を固定化した領域であるコントロール部をさらに備えていてもよい。クロマトグラフィー媒体が検出部の下流にコントロール部を有する場合、サンプルが検出部を通過した後にコントロール部へ移動すると、検出部に捕捉されない標識物質(つまり、被検出物質が結合していない標識物質)がコントロール用物質に特異的に結合することにより、コントロール部に標識物質が濃縮される。これにより、目視又は適当な機器を用いてコントロール部までサンプルが移動したことを確認でき、検査の完了を把握できる。コントロール用物質としては、例えば、標識物質の結合部に対する抗体が挙げられる。
【0102】
[吸収パッド]
吸収パッドは、展開方向の下流に流れ着いたサンプルを吸収する部材である。吸収パッドとしては、例えば、濾紙、不織布、布、セルロースアセテート膜等の吸水性材料が用いられる。クロマトグラフィー媒体を移動しているサンプルの最先端部が吸収パッドに届いてからの展開速度は、吸収パッドの材質及び大きさにより異なるので、吸収パッドの材質及び大きさの選定により被検出物質の検出に適した展開速度を設定することができる。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を挙げて、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示のクロマトグラフィー媒体用基材の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0104】
<クロマトグラフィー媒体用基材の物性の測定方法>
クロマトグラフィー媒体用基材(以下「基材」ともいう。)に適用した測定方法は、以下のとおりである。
【0105】
[膜厚]
基材の膜厚は、接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にて20点測定し、これを平均することで求めた。接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状の端子を用いた。測定圧は0.1Nとした。
【0106】
[目付]
基材の目付(1m
2当たりの質量、g/m
2)は、基材を10cm×10cmの正方形に切り出し、質量を測定し、質量を面積で除算して求めた。
【0107】
[空孔率]
基材の空孔率ε(%)は下記の式により求めた。
ε={1−(Wa/xa+Wb/xb+Wc/xc+…+Wn/xn)/t}×100
ここに、構成材料がa、b、c、…、nであり、構成材料の質量がそれぞれWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm
2)であり、構成材料の真密度がそれぞれxa、xb、xc、…、xn(g/cm
3)であり、膜厚がt(cm)である。
【0108】
[ガーレ値]
JIS P8117:2009に従って、面積642mm
2の基材の空気透過時間T(秒/100mL)を測定し、下記の式により、厚さ1μmあたりの空気透過時間τ(秒/100mL/μm)を求めた。
τ=T/t
T:JIS P8117:2009に従い測定した空気透過時間(秒/100mL)、t:基材の膜厚(μm)。
【0109】
[BET比表面積]
基材に対する前処理として、測定前にマイクロトラック・ベル株式会社の吸着測定用前処理装置(Belprep vac−II)にて室温での真空脱気を行った。測定装置としてマイクロトラック・ベル株式会社の比表面積測定装置(型式:BELSORP−mini)を用い、液体窒素温度下における窒素ガス吸着法にて設定相対圧:1.0×10
−3〜0.35の吸着等温線を測定し、BET法で解析することで、基材のBET比表面積(m
2/g)を求めた。
【0110】
[平均流量孔径]
基材の平均流量孔径(μm)は、PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200−AEXL)を用い、浸液にPMI社製のガルウィック(表面張力15.9dyn/cm)を用いて、ASTM E1294−89に規定するハーフドライ法により求めた。測定温度は25℃であり、測定圧力は0〜150psiの範囲で変化させた。
【0111】
[接触角]
基材の表面における滴下1秒後の水の接触角を、協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DMs−401と解析ソフトウェアFAMAS(interFAce Measurement and Analysis System)とを用いて測定した。大気中常圧下、温度24℃、相対湿度60%の雰囲気において、1μLの水(イオン交換水)を基材に滴下し、滴下1秒後の静的接触角を測定した。水滴の形成には、SUS(ステンレス鋼)製の22G針を備えたシリンジを用いた。実施例8及び実施例9の基材については、プラズマ処理を行った側の面において水の接触角を測定した。
【0112】
[キャピラリーフロータイム]
以下の吸水試験により、基材のキャピラリーフロータイムを測定した。
図4が、吸水試験の模式図である。
【0113】
基材を、TD方向6cm且つMD方向1cmの長方形に切り出し、切断片(切断片6という。)を得た。切断片6の長さ方向一端部に粘着テープ8を貼り付けて、ポリプロピレン製の板7(長さ121mm、幅52mm)の上に切断片6を固定した。切断片6の長さ方向が鉛直方向に対して20度となるように板7を傾け、水10(イオン交換水)が入ったビーカー9に、切断片6を上側に配置した状態で板7を差し込み、切断片6の長さ方向他端部を水10に1cm浸漬させた。この状態を大気中常圧下、温度24℃、相対湿度60%において維持した。切断片6を水10に浸漬させた時点を起点として、毛細管現象により水が切断片6上を矢印Yの方向に移動し、切断片6における水で濡れた部分と濡れていない部分との界面の全てが、水10の水面から切断片6の長さ方向4cmの位置に到達するまでの時間を測定した。この時間をキャピラリーフロータイムとした。切断片6を5個準備し、それぞれについて吸水試験を実施し、キャピラリーフロータイムの平均値を求めた。
【0114】
[キャピラリーフロータイムのばらつき]
5個の切断片6の各キャピラリーフロータイムから、下記の式によりキャピラリーフロータイムのばらつきを求めた。
【0115】
【数1】
s:キャピラリーフロータイムのばらつき、n:キャピラリーフロータイムの測定点数、x
i:キャピラリーフロータイムの各測定値、バーを上に付したx:キャピラリーフロータイムの平均値。
【0116】
<クロマトグラフィー媒体用基材の作製>
[実施例1]
重量平均分子量460万の超高分子量ポリエチレン(以下「UHMWPE」という。)1.25質量部と、重量平均分子量56万且つ密度950kg/m
3の高密度ポリエチレン(以下「HDPE」という。)23.75質量部とを混合したポリエチレン組成物を用意した。ポリマー濃度が25質量%となるようにポリエチレン組成物とデカリンとを混合しポリエチレン溶液を調製した。ポリエチレン溶液を温度148℃でダイよりシート状に押出し、次いで押出物を水温20℃の水浴中で冷却し、第一のゲル状シートを得た。
【0117】
第一のゲル状シートを70℃の温度雰囲気下にて10分間予備乾燥し、次いで、MD方向に1.4倍で一次延伸をし、次いで、本乾燥を57℃の温度雰囲気下にて5分間行って、第二のゲル状シート(ベーステープ)を得た(第二のゲル状シート中の溶剤の残留量は1%未満とした。)。次いで二次延伸として、第二のゲル状シート(ベーステープ)をMD方向に温度100℃にて倍率3.0倍で延伸し引き続いてTD方向に温度125℃にて倍率9.0倍で延伸し、その後直ちに127℃で熱処理(熱固定)を行って、二軸延伸ポリエチレン微多孔膜を得た。
【0118】
上記のポリエチレン微多孔膜の両面に、プラズマ処理(Nordson MARCH社製AP−300:出力150W、処理圧力400mTorr、ガス流量160sccm、処理時間135秒)を施した。
【0119】
プラズマ処理後のポリエチレン微多孔膜にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1質量%の水溶液を含浸させ、常温で24時間乾燥させて、ポリエチレン微多孔膜にSDBSをコーティングした。
【0120】
上記のプラズマ処理及びSDBSコーティングを経て、親水性のポリエチレン微多孔膜、すなわちクロマトグラフィー媒体用基材を得た。
【0121】
上記のクロマトグラフィー媒体用基材の片面に、粘着剤の付いたPETフィルムを貼り合わせ、積層体を得た。
【0122】
[実施例2]
プラズマ処理後のポリエチレン微多孔膜にSDBSをコーティングしなかった以外は実施例1と同様にして、クロマトグラフィー媒体用基材及び積層体を作製した。
【0123】
[実施例3]
一次延伸におけるMD方向の延伸倍率を1.8倍、二次延伸におけるMD方向の延伸倍率を2.0倍、TD方向の延伸温度を120℃、TD方向の延伸倍率を4.4倍とした以外は実施例1と同様にして、クロマトグラフィー媒体用基材及び積層体を作製した。
【0124】
[実施例4]
一次延伸におけるMD方向の延伸倍率を1.2倍、二次延伸におけるMD方向の延伸温度を90℃、熱処理(熱固定)の温度を145℃とした以外は実施例1と同様にして、クロマトグラフィー媒体用基材及び積層体を作製した。
【0125】
[実施例5]
プラズマ処理後のポリエチレン微多孔膜にSDBSをコーティングしなかった以外は実施例4と同様にして、クロマトグラフィー媒体用基材及び積層体を作製した。
【0126】
[実施例6]
UHMWPE3.75質量部と、HDPE21.25質量部とを混合したポリエチレン組成物を用い、ダイの温度を152℃、一次延伸におけるMD方向の延伸倍率を1.2倍、二次延伸におけるMD方向の延伸温度を90℃、MD方向の延伸倍率を4.0倍、熱処理(熱固定)の温度を144℃とした以外は実施例1と同様にして、クロマトグラフィー媒体用基材及び積層体を作製した。
【0127】
[実施例7]
UHMWPE4.05質量部とHDPE22.95質量部とを混合したポリエチレン組成物を用意した。ポリマー濃度が27質量%となるようにポリエチレン組成物とデカリンとを混合しポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を用い、二次延伸におけるMD方向の延伸温度を90℃、熱固定の温度を144℃とした以外は実施例1と同様にして、クロマトグラフィー媒体用基材及び積層体を作製した。
【0128】
[実施例8]
ダイの温度を152℃、二次延伸におけるMD方向の延伸温度を90℃、熱固定の温度を145℃とし、プラズマ処理をポリエチレン微多孔膜の片面のみに施した以外は実施例1と同様にして、クロマトグラフィー媒体用基材を作製した。
【0129】
上記のクロマトグラフィー媒体用基材のプラズマ処理を施していない側の面に、粘着剤の付いたPETフィルムを貼り合わせ、積層体を得た。
【0130】
[実施例9]
プラズマ処理後のポリエチレン微多孔膜にSDBSをコーティングしなかった以外は実施例8と同様にして、クロマトグラフィー媒体用基材及び積層体を作製した。
【0131】
[比較例1]
UHMWPE7.5質量部と、HDPE17.5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用い、一次延伸におけるMD方向の延伸倍率を1.1倍、二次延伸におけるMD方向の延伸温度を90℃、MD方向の延伸倍率を6.5倍、TD方向の延伸温度を130℃、TD方向の延伸倍率を13.5倍、熱固定の温度を142℃とした以外は実施例1と同様にして、クロマトグラフィー媒体用基材及び積層体を作製した。
【0132】
[比較例2]
UHMWPE10.2質量部とHDPE6.8質量部とを混合したポリエチレン組成物を用意した。デカリン8質量部と流動パラフィン75質量部とを混合した混合溶剤を用意した。ポリマー濃度が17質量%となるようにポリエチレン組成物と混合溶剤とを混合しポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を温度153℃でダイよりシート状に押出し、ついで押出物を水温20℃の水浴中で冷却し、ゲル状シートを作製した。
【0133】
上記のゲル状シート(ベーステープ)をMD方向に温度90℃にて倍率3.0倍で延伸し、引き続いてTD方向に温度105℃にて倍率9.0倍で延伸し、その後直ちに141℃で熱処理(熱固定)を行った。次いで、シートを、2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。シートを塩化メチレン浴から搬出した後、40℃の温度雰囲気下で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、二軸延伸ポリエチレン微多孔膜を得た。
【0134】
上記のポリエチレン微多孔膜に、実施例1と同様にプラズマ処理及びSDBSコーティングを施し、クロマトグラフィー媒体用基材を得た。
【0135】
上記のクロマトグラフィー媒体用基材の片面に、粘着剤の付いたPETフィルムを貼り合わせ、積層体を得た。
【0136】
[比較例3]
UHMWPE3.4質量部とHDPE13.6質量部とを混合したポリエチレン組成物を用意した。デカリン45質量部と流動パラフィン38質量部とを混合した混合溶剤を用意した。ポリマー濃度が17質量%となるようにポリエチレン組成物と混合溶剤とを混合しポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を温度157℃でダイよりシート状に押出し、ついで押出物を水温20℃の水浴中で冷却し、ゲル状シートを作製した。
【0137】
上記のゲル状シートを95℃の温度雰囲気下にて10分間予備乾燥を行って、ベーステープを得た(ベーステープ中の溶剤の残留量は1%未満とした。)。次いで、二次延伸としてベーステープをMD方向に温度90℃にて倍率5.5倍で延伸し、引き続いてTD方向に温度105℃にて倍率10倍で延伸し、その後直ちに140℃で熱処理(熱固定)を行った。次いで、比較例2と同様に塩化メチレン浴への浸漬、乾燥処理及びアニール処理を行い、二軸延伸ポリエチレン微多孔膜を得た。
【0138】
上記のポリエチレン微多孔膜に、実施例1と同様にプラズマ処理及びSDBSコーティングを施し、クロマトグラフィー媒体用基材を得た。
【0139】
上記のクロマトグラフィー媒体用基材の片面に、粘着剤の付いたPETフィルムを貼り合わせ、積層体を得た。
【0140】
[比較例4]
実施例1において製造した親水化処理前のポリエチレン微多孔膜を、クロマトグラフィー媒体用基材とした。
【0141】
上記のクロマトグラフィー媒体用基材の片面に、粘着剤の付いたPETフィルムを貼り合わせ、積層体を得た。
【0142】
[比較例5]
市販されているイムノクロマトグラフ用ニトロセルロース膜(MILLIPORE社製、SHF1200425)を、クロマトグラフィー媒体用基材とした。当該市販品は、PETフィルムの片面にニトロセルロース膜が積層された積層体である。
【0143】
表1に、実施例1〜9及び比較例1〜4の各ポリエチレン微多孔膜の組成及び製造条件を示す。
【0144】
【表1】
【0145】
<イムノクロマトグラフ用ストリップの作製>
実施例1〜9又は比較例1〜5のクロマトグラフィー媒体用基材を用いて、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を被検出物質とするイムノクロマトグラフ用ストリップを以下の手順にしたがって作製した。
【0146】
(1)クロマトグラフィー媒体の作製
クロマトグラフィー媒体用基材(以下「基材」という。)とPETフィルムとの積層体を、基材のMD方向及びTD方向にしたがって、MD方向150mm且つTD方向25mmの長方形に切り出した。0.5mg/mLの抗hCG−αサブユニット抗体(マウスモノクローナル抗体)を含むリン酸緩衝液(pH7.2)を、切り出した積層体の基材側の面に、一方の長辺から8mmの位置に長辺に対して平行に直線状に塗布し(塗布量は1μL/cm)、温度50℃の雰囲気下で30分間乾燥させて検出部を形成した。
【0147】
(2)標識物質分散液の作製
粒子径40nmの金コロイド(標識部)を、50mMのKH
2PO
4緩衝液(pH7.0)で60μg/mLの濃度に希釈した分散液10mLに、抗hCG抗体(マウスモノクローナル抗体)(結合部)を1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、1質量%のポリエチレングリコール(PEG、重量平均分子量20,000)の水溶液0.5mLを金コロイド及び抗hCG抗体を含む分散液に加えて攪拌した後、10質量%のBSA(ウシ血清アルブミン)の水溶液1mLを加えてさらに攪拌した。次いで、遠心加速度7,000Gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した。次いで、沈殿物に、PEG(重量平均分子量20,000)を0.05質量%、NaClを0.009質量%、BSAを1質量%及びNaN
3を0.095質量%含む20mMのトリス塩酸緩衝液(Tris−HCl、pH8.2)を加え、標識物質(金コロイドによって標識された抗hCG抗体)を分散させた。以上の手順により、標識物質分散液を作製した。
【0148】
(3)コンジュゲートパッドの作製
上記で作製した標識物質分散液0.7mLに、PEG(重量平均分子量20,000)を0.05質量%及びスクロースを3.5質量%含むトリス塩酸緩衝液(Tris−HCl、pH8.2)を2.1mL加えて攪拌し、塗布液を得た。次いで、塗布液を150mm×8mm×400μmのグラスファイバー製のパッド(Ahlstrom製)に均等に塗布した後、真空乾燥機にて乾燥させ、コンジュゲートパッドを作製した。
【0149】
(4)サンプルパッドの作製
150mm×18mm×340μmのセルロース製のパッド(Ahlstrom製)に、トリス塩酸緩衝液(Tris−HCl、pH8.2)0.6mLを均等に塗布した後、温度50℃で1時間乾燥させ、サンプルパッドを作製した。
【0150】
(5)吸収パッドの用意
吸収パッドとして、150mm×20mmのろ紙(Lohmann製)を用意した。
【0151】
(6)イムノクロマトグラフ用ストリップの作製
片面に粘着剤が塗布されたバッキングシート(Lohmann製、150mm×60mm)に、上記で作製したクロマトグラフィー媒体、コンジュゲートパッド、サンプルパッド及び吸収パッドを、
図1に示す重なり方で貼り合せ、複合シートを得た。その際、サンプルパッドとコンジュゲートパッドの重なり幅は4mm、コンジュゲートパッドとクロマトグラフィー媒体の重なり幅は2mm、クロマトグラフィー媒体と吸収パッドの重なり幅は5mmとし、クロマトグラフィー媒体の検出部がコンジュゲートパッドよりも吸収パッドに近くなるようにした。複合シート全体を長さ方向に5mm幅ごとに切断して、
図1に示す形態のストリップ(展開方向の全長60mm、幅5mm。基材のTD方向がサンプルの展開方向である。)を得た。
【0152】
<イムノクロマトグラフ用ストリップの性能評価>
以下の性能評価試験は、温度24℃且つ相対湿度60%の雰囲気において行った。
【0153】
[検査速度]
hCG抗原(被検出物質)を16.7nkatになるように、BSAを1質量%及びNaN
3を0.095質量%含むリン酸緩衝液に希釈し、サンプルを作製した。サンプル100μLをイムノクロマトグラフ用ストリップのサンプルパッドに滴下して展開させ、検出部の発色を目視で確認した。サンプルをサンプルパッドに滴下した時点を起点として、検出部の発色(赤)を目視で確認した時点までの時間(検出時間という。)を測定し、下記の3段階に分類した。
【0154】
A:検出時間が60秒未満。
B:検出時間が60秒以上80秒未満。
C:検出時間が80秒以上。
【0155】
[検査精度]
検出時間の測定と同時に、検出部の発色(赤)の明瞭さを目視により判定し、下記の3段階に分類した。
【0156】
A:検出部に赤い線を明瞭に確認できる。
B:検出部に赤い線を確認できる。
C:検出部に赤い線を確認できるが不明瞭。
【0157】
表2に、実施例1〜9及び比較例1〜5の各ポリエチレン微多孔膜(PE微多孔膜)又はニトロセルロース膜(NC膜)の物性と、イムノクロマトグラフ用ストリップの評価結果を示す。
【0158】
【表2】
【0159】
2017年9月20日に出願された日本国出願番号第2017−180169号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0160】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。